説明

液体燃料の製造方法

【課題】余剰汚泥を原料とした液体燃料の製造方法を提供する。
【解決手段】余剰汚泥を高分子凝集処理後に脱水して破砕し、破砕したものを沈降槽内で水に入れて撹拌し、凝集剤を入れて凝集沈降させて上層、中間層、下層の三層に分け、中間層を処理して液状油脂系物質である第1混合用物質、液状澱粉系物質である第2混合用物質、液状タンパク質系物質である第3混合用物質及び液状セルロース系物質である第4混合用物質を得て、これらを混合し乳化して液体燃料を得る、余剰汚泥を原料とした液体燃料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料の製造方法に関するものである。更に詳しくは、余剰汚泥を原料とした液体燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性汚泥法などの生物学的処理において生じた余剰汚泥や、業務用厨房に設置が義務づけられている油脂分離阻集器(グリストラップ)で補足された、その悪臭が問題となっている汚濁物質等を環境に悪影響を及ぼすことなく如何に処理し、さらには如何に有効に活用するかは、従来からの大きな社会的課題である。
【0003】
従来は、例えば余剰汚泥は焼却処分、海洋投棄等の各方法によって処理されていたが、近年の環境意識の高まりから縮小または禁止される方向にある。また、余剰汚泥を原料として各種処理を施して固形(固体)燃料化することや、気体燃料化とすることは既に知られている。気体燃料を製造するものとしては、例えば特許文献1に記載の「燃料ガスの製造方法」がある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−271078
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の「燃料ガスの製造方法」は、余剰汚泥を燃料として有効に活用できる点においては十分に有用であるが、燃料を気体ではなく、液体燃料として製造することができれば、例えば重油や灯油と同じように使用できて便利であり、余剰汚泥をさらに有効に活用できることは明らかである。
本発明者は、このような課題を解決すべく、余剰汚泥を原料として液体燃料を製造する技術の実現に向けて鋭意研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0006】
(本発明の目的)
本発明の目的は、余剰汚泥を原料とした液体燃料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
【0008】
(1)本発明は、
余剰汚泥を原料として使用した液体燃料の製造方法であって、
余剰汚泥を高分子凝集処理後に脱水して破砕し、
破砕したものを沈降槽内で水に入れて撹拌し、凝集剤を入れて凝集沈降させて上層、中間層、下層の三層に分け、
油脂系物質、澱粉系物質、タンパク質系物質及びセルロース系物質を含む前記中間層を処理槽に入れ、
処理槽内の物質を加熱・加圧すると共に油脂系用溶剤を入れて撹拌し、水分と油分を溜出させて取り出し、油分を冷却して得られた液状油脂系物質を第1混合用物質(A1)とし、
処理槽内の物質を減圧・冷却・撹拌し、澱粉系用溶剤を入れて澱粉を液状化して取り出し、取り出した液状澱粉系物質を第2混合用物質(A2)とし、
処理槽内の物質を加熱・加圧・撹拌し、タンパク質系溶剤を入れ、固形状のタンパク質系を液状化し、さらに溜出させて取り出し、取り出した液体にタンパク質系用溶剤を入れ、タンパク質系化合物内のリン酸化合物を分解し、得られた液状タンパク質系物質を第3混合用物質(A3)とし、
処理槽内の物質を加熱・加圧・撹拌し、セルロース系用溶剤を入れて液状化して取り出し、取り出した液状セルロース系物質を第4混合用物質(A4)とし、
前記第1混合用物質(A1)、第2混合用物質(A2)、第3混合用物質(A3)及び第4混合用物質(A4)を撹拌槽に入れて混合し、混合液にヒドロトロピック物質を入れて、混合液に含まれる澱粉系とセルロース系の固形分を溶解し、濾過して液体燃料を得る、
液体燃料の製造方法である。
【0009】
(2)本発明は、
余剰汚泥を原料として使用した液体燃料の製造方法であって、
余剰汚泥に高分子凝集剤を入れて凝集させて脱水し、
脱水したものを破砕し、
破砕したものを沈降槽の水に入れ、撹拌して懸濁液とし、
懸濁液に凝集剤を入れ、凝集沈降させて上層、中間層、下層の三層に分け、
中間層を構成する油脂系物質、澱粉系物質、タンパク質系物質及びセルロース系物質の各物質を処理槽に入れ、
処理槽内の中間層成分を加熱・加圧すると共に油脂系用溶剤(ジメチルエーテルとホルムアルデヒドを混合したもの等)を入れて撹拌し、水分と油分を溜出させて取り出し、油分を冷却して得られた液状油脂系物質を第1混合用物質(A1)とし、
前記油脂系の処理後に処理槽内に残った物質を減圧・冷却・撹拌し、澱粉系用溶剤(メタリン酸ナトリウム等)を入れて澱粉を液状化して取り出し、取り出した液状澱粉系物質を第2混合用物質(A2)とし、
前記澱粉系の処理後に処理槽内に残った物質を加熱・加圧・撹拌し、タンパク質系溶剤(塩酸グアニジン等)を入れ、固形状のタンパク質系を液状化し、さらに溜出させて取り出し、取り出した液体にタンパク質系用溶剤(クロロホルム、アセトアルデヒド等)を入れ、タンパク質系化合物内のリン酸化合物を分解し、さらに塩酸グアニジン中のリン化合物を分解し、得られた液状タンパク質系物質を第3混合用物質(A3)とし、
前記タンパク質系の処理後に処理槽内に残った物質を加熱・加圧・撹拌し、セルロース系用溶剤(シュウ酸ジエチル、トリエチレングリコール等)を入れて液状化して取り出し、取り出した液状セルロース系物質を第4混合用物質(A4)とし、
前記第1混合用物質(A1)、第2混合用物質(A2)、第3混合用物質(A3)及び第4混合用物質(A4)を撹拌槽に入れて混合し、混合液にヒドロトロピック物質(サリチル酸ナトリウム等)を入れて、混合液に含まれる澱粉系とセルロース系の固形分を溶解し、濾過して液体燃料を得る、
液体燃料の製造方法である。
【0010】
(3)本発明に係る液体燃料の製造方法においては、得られた液体燃料に、さらに乳化剤(ジメチルエーテル、ジメチルスルオキサイド等)を入れて混合撹拌して乳化させるのがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
(a)本発明によれば、余剰汚泥を原料として、例えば重油や灯油と同様に使用が可能で、使いやすく便利な液体燃料を製造することができる。
【0012】
(b)乳化剤を入れて混合撹拌して乳化させたものは、乳化することによって、発火点の異なる可燃性の液体がほぼ均一に分散するので、見かけ上同じ速さで燃焼可能で、燃焼カロリーも燃焼時間軸で平均化できる液体燃料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を図面に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1ないし図4は本発明に係る液体燃料の製造方法を示し、
図1は一次処理を示すチャート、
図2は二次処理における油脂系と澱粉系の処理を示すチャート、
図3は二次処理におけるタンパク質系とセルロース系の処理を示すチャート、
図4は三次処理を示すチャートである。
【0015】
図1ないし図4を参照し、本発明に係る余剰汚泥を原料として使用した液体燃料の製造方法の一実施例を説明する。
【0016】
(1)一次処理
図1を参照する。
先に汚泥沈降のために用いられた高分子凝集沈降剤を解膠する反応剤(解膠剤)としては、例えばアルキルスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ソーダ、アルボシキセルロース、ポリエチレンイミン等を適宜選択して使用する。
さらに高分子凝集剤を分散、可溶化するための反応剤としては、例えばプロピレンカーポネートまたはジメチルスルホキサイド等を適宜選択して使用する。
【0017】
(破砕工程)
破砕部に一般的なミルを設けた破砕装置を使用して、余剰汚泥を脱水した塊を速やかに破砕(粉砕)する。破砕助剤としては、例えば油脂類、グリセリン、ジエチレングリコール、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸、オレイン酸、ナフテン酸等を適宜選択して使用する。
なお、前記各破砕助剤は、いずれも単独で十分効果を発揮するが、適宜組合せ、かつ所要の混合割合で混合して使用することもできる。例えば、ジエチレングリコールとナフテン酸を混合した破砕助剤を、汚泥に対して0.5〜3重量%使用することができる。
【0018】
破砕助剤の添加によっても、例えばヒドロトロビックという難溶性物質等の溶解が万一不十分であった場合、それを水に容易に溶かすために、ヒドロトロビック反応物質として、例えば酪酸ナトリウム、サルチル酸ナトリウム、尿素、アセトアミド等を適宜選択して混合した溶剤を、汚泥に対して適宜量を追加して添加する。混合溶剤の添加量は、例えば0.5%重量程度でよいが、限定はしない。
【0019】
(懸濁化工程)
破砕し解膠、分散、可溶化した超微粒子汚泥を撹拌槽内へ投入して撹拌し、懸濁汚泥とする。懸濁汚泥内の粒子を十分に分散させるために、例えば撹拌機の撹拌軸に空気が最下段の底まで貫通できるように軸を囲む筒を設けて通気路を設け、曝気を行う。
汚泥を懸濁させる懸濁促進剤としては、例えばモノエチルアミン、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、やし油等を適宜選択して使用する。
懸濁が均一に実施されたことを確認して、この懸濁液を撹拌槽とは別の沈降槽に移す。
【0020】
(凝集・沈降工程)
さらに、この沈降槽内の懸濁液に凝集沈降剤及び沈降速度を速めるためのNNジメチルアクリルアミドを投入する。さらに、沈降速度を速める硫酸カルシウムと、沈降速度と浄化能力を増す硫酸カリウムを微少量添加し、撹拌する。
これにより、沈降槽内においては、前記凝集沈降剤と沈降速度を速める速度向上剤の作用によって、懸濁液が僅かな時間で上層、中間層、下層(図1では上段層、中断層、最下段層)の三層に分離される。
【0021】
なお、沈降槽には、槽内の液状物質の状況が見えるように槽内と連通する透明管が添設されている。そして、それぞれの層を沈降槽からポンプ等を使用して取り出して別の処理槽へ移す。各層の取り出しは、透明管の内部で各層を確認しながら、通常、下層から順に抜き取って行うが、限定はしない。
【0022】
(2)二次処理
図2を参照する。
(上層)
上層の物質は、水が主体で油、油脂系物質系が分散している液体であり、油水分離する必要がある。また、上層の水分は、循環して沈降槽で稀釈剤として再利用するか放流する。油分(油脂系物質X1)は取り出して、別の槽に保管しておき、製造される液体燃料に混合して利用する。
【0023】
(中間層:油脂系の処理)
中間層の物質は、本発明に係る液体燃料の原料の主体となるものである。中間層の物質は、真空、加圧、加熱、脱水、撹拌の各処理が可能な処理槽に移されている。なお、中間層の物質は、化学反応薬剤を用いて分散させてポンプにて回収するのが好ましい。
処理槽内の中間層の物質を加圧、加熱処理し、油脂系用溶剤(ジメチルエーテルとホルムアルデヒドを混合したもの等)を入れて撹拌し、水分と油分を溜出させて冷却槽へ移す。冷却槽内では、油脂系液体と水に分かれている。
【0024】
前記油脂系液体に、例えばメチルイソブチルケトン、硝酸3価アルコールエステル、酢酸エチレン、POEアルキルフェニールエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸、脂肪アルコール、POEドテシルフェニールエーテル等の脱油剤を適宜選択して添加し、分離して得られた液状油脂系物質を第1混合用物質A1とした。
【0025】
また、この際に前記液状油脂系物質と分離した分離水溶液に浄水剤を添加する。浄水剤(または反応浄澄剤、浄澄向上剤ともいう)としては、例えばヘキサメタリ酸ソーダ、硫酸カルシウム、シルカゲル、カルシウムミョウバン、塩化セチルピリジウム等を適宜選択して添加する。
これにより、分離水溶液の水質のSS、COD、BOD等を法的基準値以下に清澄することを基本とし、浄化し水質を向上させて前記撹拌槽へ循環させ、再利用するか、放流する。
【0026】
(中間層:澱粉系の処理)
前記油脂系の処理で処理層内に残った物質に澱粉分解剤(澱粉系用溶剤)を添加する。澱粉分解剤としては、例えばメタリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ホルムアミド等を適宜選択して使用する。これらの添加量は、例えばメタリン酸ナトリウムが5〜7重量%、リン酸カリウムが5〜7重量%、ホルムアミドが3〜5重量%等であるが、これに限定はされない。
【0027】
また、中間層の物質に含有されているリンまたはリン化合物は、燃焼させる場合に障害となる不燃物質であるため除去する必要がある。
リンまたはリン化合物の除去剤としては、例えば第2級アルコール、アセトアルデヒド、クロロホルム、ジメチルスルホキサイド、クエン酸水素アンモニア、3−メトキシブチルアセテート等を適宜選択して使用する。そして、それらを添加した物質をドロマイトプラスタ等の触媒と接触させてリンまたはリン化合物を除去し、得られた液状澱粉系物質を第2混合用物質A2とした。
【0028】
図3を参照する。
(中間層:タンパク質系の処理)
前記澱粉系の処理で処理槽内に残った物質に、溶解のために次の化学反応剤(分解剤)、すなわち塩酸グアニジン、ジキロペンタン、NNジメチルアセドアミド、ビオプラゼ、苛性ソーダカリウム等を添加した。本実施例では、その中より塩酸グアニジンを2重量%使用した。
【0029】
処理槽内で加圧、加熱されることにより溜出させて回収した液体(リン酸化合物を含んでいるを別の槽に入れ、この液体のタンパク質系の化合物に含まれるリン酸化合物を十分に溶解するために溶解剤を入れる。溶解剤の例としては、クロロホルムやアセトアルデヒドがある。これらは、いずれか一方を入れればよいが、両方入れるのがより好ましい。また、添加した塩酸グアニジン中のリン化合物を分解剤を添加して分解させる。
【0030】
また、この処理では、脱塩素を行うことが必要なために、脱塩素剤(触媒)として、例えばチオ亜硫酸ソーダ(別名:パイポ)を3重量%で使用し、さらに酸化チタン、亜硫酸ソーダの触媒を通し、塩素とその化合物を取り除いて得られた液状タンパク質系物質を第3混合用物質A3とした。
【0031】
なお、前記蒸発させる際の蒸解促進剤として、例えばアルキルベンゼンスルホン酸、テトラキノン化合物を適宜選択して使用する。その添加量は、例えばアルキルベンゼンスルホン酸が2重量%、テトラキノン化合物が2重量%であるが、これに限定はされない。また、同時にできた蒸留水は冷却し、稀釈剤として沈降槽へ戻すか放流する。
【0032】
(中間層:セルロース系)
さらに前記タンパク質系の処理で処理槽内に残った物質に、例えばシュウ酸ジエチル、トリエリレングリコール、炭酸ヒドラジン、酢酸イソアミル、シクロヘキサン、ジエチルグリコール、塩化亜鉛等の溶剤を適宜選択して添加し、セルロースを分解し、液状化した。なお、特にシュウ酸ジエチル、トリエチレングリコール、シクロヘキサンは、例えば3.5重量%で単独に用いてもセルロースの分解は可能である。
セルロースを、前記タンパク質と同様に沈降槽内で分解回収し、得られた液状セルロース系物質を第4混合用物質A4とした。
【0033】
さらに、その後の脱水には、例えばイソプロピルアルコールを3重量%程度、ジフェニルホスホリルアジト、シクロヘキサン、クロムカリミョウバン等を適宜選択して使用した。その添加量は、例えばイソプロピルアルコールでは3重量%程度、ジフェニルホスホリルアジト、シクロヘキサン、クロムカリミョウバンでは5重量%であるが、これに限定はされない。
【0034】
(3)三次処理
図4を参照する。
(混合)
液状油脂系物質である第1混合用物質A1、液状澱粉系物質である第2混合用物質A2、液状タンパク質系物質である第3混合用物質A3及び液状セルロース系物質である第4混合用物質A4を撹拌槽に移して混合撹拌した。
この混合物の中には、澱粉系とセルロース系の固形分が残っている(溜出した物質には高分子凝集剤は残っていないが、その他の物質には残っている)。この固形分は、溶解する必要があり、溶剤としては例えばサリチル酸ナトリウム等のヒドロトロピック物質を使用する。
【0035】
(乳化)
最後に前記固形物を溶かした混合物(可燃性の液体となっている)に乳化剤を添加して乳化させる。前記混合物には、発火点の異なる可燃性の液体が混在している。これを燃焼させた場合には、発火点の低い液体が先に燃焼し、発火点の高い液体が後で燃えることになる。また、燃焼カロリーがそれぞれ異なるので、前記混合物は不均一な燃焼をする燃料といえる。
これを重油等と同等品とするには、発火点の異なる可燃性の液体を、見かけ上同じ速さで燃焼させるようにし、燃焼カロリーも燃焼時間軸で平均化させる必要がある。このように混合状態にある可燃性の液体を均一に燃焼させるためには、混合物である可燃性の液体を乳化させればよい。
【0036】
使用する乳化剤、高分子非イオン界面活性剤としては、例えばジメチルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エトキシプロピルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が適宜選択され、適宜量(例えば3重量%)を添加して使用される。なお、これらの乳化剤は、高沸点で溶解力をもった溶剤でもあり、可熱性液体である。
また、乳化剤と共に、分散剤、可溶化剤として、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル等を適宜選択して使用する。
【0037】
前記乳化させた液体燃料は、他の鉱物系の油(鉱物油)と混合して使用することができる。混合した場合、液体燃料が植物系であるために、例えば機械装置において液体燃料が焼き付きを起こしやすくなる。その焼き付き及びそれにより生じるその他のトラブルを防止するために、例えばメチル−t−ブチルエーテル等の焼付防止剤を添加することができる。
そして、前記液体燃料を、濾過材としてゼオライト、活性炭、シリカ、マグネシウム等を使用した濾過装置で濾過して不燃物質等を除去し、均一に燃焼し燃焼速度が時間軸で平均化された液体燃料を得ることができた。
【0038】
またこの液体燃料には、燃焼促進剤や酸化防止剤を添加することができる。まず、燃焼促進剤としては、ジメチルエーテル、ダイアアセトンアルコール、ペンタメチルトリアミン、ノルマルプロパノールN−プロピルアルコール、メタリン酸ラウリル、アセチルアセトンコバルトを適宜選択して使用する。それらの添加量は、例えばジメチルエーテルを5重量%、ダイアアセトンアルコールを5重量%、ペンタメチルトリアミンを5重量%、ノルマルプロパノールN−プロピルアルコールを25重量%、また、メタリン酸ラウリル、アセチルアセトンコバルトのいずれかを0.5重量%であるが限定はされない。
【0039】
また、酸化防止剤としては、例えば二酸化チオ尿素、メルカプトプロピオン酸メチル、ジエチルヒドロキシアミン、3−3−ジチオ尿素を適宜選択して使用する。これらの添加量は、いずれも例えば1.5%であるが、特に限定はしない。
さらに油脂耐劣化防止剤として、例えばNN−ジエチルエタノールアミン、2.5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを適宜選択して使用することができる。添加量としては、例えばNN−ジエチルエタノールアミンを2重量%、2.5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを3重量%であるが限定はしない。
【0040】
(下層に含まれる無機化合物及び残留金属の無公害化)
下層成分は、基本的に廃棄されるが、廃棄するための前処理として無公害化を行う必要がある。
無機化合物の無公害化(分解)は、NNジメチルアミドを3重量%添加して行う。
また、残留金属である重金属の無公害化は、分解沈澱剤を添加して行う。分解沈澱剤としては、例えば硫酸ソーダまたはナトリウムポロハイドライド及びEDTA、キレート剤を使用する。添加する量の一例としては、硫酸ソーダまたはナトリウムポロハイドライドを1.5重量%、EDTA、キレート剤を0.7重量%であるが、これに限定はされない。
特にナトリウムポロハイドは、水溶液で使用可能であり、重金属公害防止剤として重金属を回収することができ、さらに液体燃料の中に重金属が含有されるのを防止する化学反応剤(例えばβ―メルカブトプロピオン酸等)を用いてスラジの混入を回避することにより、きわめて良好なスラジ防止剤として作用する。
【0041】
なお、スラジ防止改良剤、分散剤としては、その他ソジウムアルコール、アミノアルコール、メチル−t−ブチルエーテルの中から一つを選択して例えば5重量%使用し、NN−ジエチルエタノールアミン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムの中から1つを選択して例えば2重量%使用することができる。
【0042】
本実施例で得られた液体燃料の分析結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る液体燃料の製造方法における一次処理を示すチャート。
【図2】本発明に係る液体燃料の製造方法における二次処理の油脂系と澱粉系の処理を示すチャート。
【図3】本発明に係る液体燃料の製造方法における二次処理のタンパク質系とセルロース系の処理を示すチャート。
【図4】本発明に係る液体燃料の製造方法における三次処理を示すチャート。
【符号の説明】
【0046】
A1 第1混合用物質
A2 第2混合用物質
A3 第3混合用物質
A4 第4混合用物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
余剰汚泥を原料として使用した液体燃料の製造方法であって、
余剰汚泥を高分子凝集処理後に脱水して破砕し、
破砕したものを沈降槽内で水に入れて撹拌し、凝集剤を入れて凝集沈降させて上層、中間層、下層の三層に分け、
油脂系物質、澱粉系物質、タンパク質系物質及びセルロース系物質を含む前記中間層を処理槽に入れ、
処理槽内の物質を加熱・加圧すると共に油脂系用溶剤を入れて撹拌し、水分と油分を溜出させて取り出し、油分を冷却して得られた液状油脂系物質を第1混合用物質(A1)とし、
処理槽内の物質を減圧・冷却・撹拌し、澱粉系用溶剤を入れて澱粉を液状化して取り出し、取り出した液状澱粉系物質を第2混合用物質(A2)とし、
処理槽内の物質を加熱・加圧・撹拌し、タンパク質系溶剤を入れ、固形状のタンパク質系を液状化し、さらに溜出させて取り出し、取り出した液体にタンパク質系用溶剤を入れ、タンパク質系化合物内のリン酸化合物を分解し、得られた液状タンパク質系物質を第3混合用物質(A3)とし、
処理槽内の物質を加熱・加圧・撹拌し、セルロース系用溶剤を入れて液状化して取り出し、取り出した液状セルロース系物質を第4混合用物質(A4)とし、
前記第1混合用物質(A1)、第2混合用物質(A2)、第3混合用物質(A3)及び第4混合用物質(A4)を撹拌槽に入れて混合し、混合液にヒドロトロピック物質を入れて、混合液に含まれる澱粉系とセルロース系の固形分を溶解し、濾過して液体燃料を得る、
液体燃料の製造方法。
【請求項2】
余剰汚泥を原料として使用した液体燃料の製造方法であって、
余剰汚泥に高分子凝集剤を入れて凝集させて脱水し、
脱水したものを破砕し、
破砕したものを沈降槽の水に入れ、撹拌して懸濁液とし、
懸濁液に凝集剤を入れ、凝集沈降させて上層、中間層、下層の三層に分け、
中間層を構成する油脂系物質、澱粉系物質、タンパク質系物質及びセルロース系物質の各物質を処理槽に入れ、
処理槽内の中間層成分を加熱・加圧すると共に油脂系用溶剤を入れて撹拌し、水分と油分を溜出させて取り出し、油分を冷却して得られた液状油脂系物質を第1混合用物質(A1)とし、
前記油脂系の処理後に処理槽内に残った物質を減圧・冷却・撹拌し、澱粉系用溶剤を入れて澱粉を液状化して取り出し、取り出した液状澱粉系物質を第2混合用物質(A2)とし、
前記澱粉系の処理後に処理槽内に残った物質を加熱・加圧・撹拌し、タンパク質系溶剤を入れ、固形状のタンパク質系を液状化し、さらに溜出させて取り出し、取り出した液体にタンパク質系用溶剤を入れ、タンパク質系化合物内のリン酸化合物を分解し、さらに塩酸グアニジン中のリン化合物を分解し、得られた液状タンパク質系物質を第3混合用物質(A3)とし、
前記タンパク質系の処理後に処理槽内に残った物質を加熱・加圧・撹拌し、セルロース系用溶剤を入れて液状化して取り出し、取り出した液状セルロース系物質を第4混合用物質(A4)とし、
前記第1混合用物質(A1)、第2混合用物質(A2)、第3混合用物質(A3)及び第4混合用物質(A4)を撹拌槽に入れて混合し、混合液にヒドロトロピック物質を入れて、混合液に含まれる澱粉系とセルロース系の固形分を溶解し、濾過して液体燃料を得る、
液体燃料の製造方法。
【請求項3】
得られた液体燃料に、さらに乳化剤を入れて混合撹拌して乳化させる、
請求項1または2記載の液体燃料の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−144076(P2009−144076A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323793(P2007−323793)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(594139528)
【出願人】(595147803)
【Fターム(参考)】