説明

液体窒素を用いた冷却器

【課題】 液体窒素を用いた冷却器に関し、低コストで携帯可能な液体窒素冷却器を実現する。
【解決手段】 断熱容器1と、断熱容器1内に収容されるとともに液体窒素4を吸収および保持する構造を有する連続気泡を有する繊維集合体3を内部に挿入された複数の中空管状容器2とを少なくとも備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体窒素を用いた冷却器に関するものであり、液体窒素冷却を必要とする携帯型容器、特に、高温超電導体を用いたSQUID非破壊検査装置等の小型電子機器や赤外線センサー等の冷却に用いる冷却器を携帯可能にするための構成に特徴のある液体窒素を用いた冷却器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、超電導線材、原子力発電所、プラント、航空機、エレベータ或いは遊具の非破壊検査のためにSQUIDが用いられるようになってきており、この様なSQUIDを始めとする高温超電導デバイスの冷却には、真空断熱容器に蓄えられた液体窒素を用いる方法や、冷凍機を用いる方法が選択されてきた(例えば、特許文献1或いは特許文献2参照)。
【0003】
また、1個1個のフォトンを観測する天体観測用高感度赤外線センサーや偵察用高感度赤外線センサーも、液体窒素温度で動作させるために、液体窒素による冷却機構が用いられている。
【0004】
近年、このような液体窒素温度での冷却が必要な電子機器、特に、SQUID非破壊検査装置等の小型電子機器においては、必要な時に簡便に検査ができるように、ハンディータイプの小型電子機器への要望が多くなっている。
【特許文献1】特開平05−333125号公報
【特許文献2】特表2006−527548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、真空断熱容器にためられた液体窒素冷却の場合、運搬や測定時に液体があばれるため、液漏れしたり突沸したりする危険を伴い、ハンディー測定機の冷却には向かないという問題がある。
【0006】
また、冷凍機は価格が高価であること、電池駆動が困難であること、振動ノイズが問題になること、温度の安定性が十分でないことなど、ハンディー型測定器応用への課題が多いという問題がある。
【0007】
例えば、大型或いは中型の低振動冷凍機の場合には、固定式であるか、或いは移動式の場合にも移動について制限があり、例えば、原子力発電所で事故等が発生した場合に、非破壊検査のための構成が大掛りになるとともに、測定が必要な箇所が狭い箇所であったり或いは入り組んだ箇所の場合には、検査が非常に困難になるという問題がある。
【0008】
特に、狭い箇所であったり或いは入り組んだ箇所の測定をする場合には、コードレスであることが望ましいが、大型或いは中型の低振動冷凍機の場合には電池駆動が不可能であるためコードレスにできないという問題がある。
【0009】
また、中型の低振動冷凍機は重量が5〜10kgであり、大型の低振動冷凍機は重量が20kg以上と非常に重く、且つ、価格も200〜300万円と非常に高価であるという問題がある。
【0010】
このような状況の中で、持ち運びが可能で、コードレスで、重量も1Kg程度で、価格も1万円程度の小型冷却器が望まれているが、この様な要請に応える性能を有する冷却器は存在しないのが現状である。
【0011】
したがって、本発明は、低コストで携帯可能な液体窒素冷却器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
なお、図における符号5,6は、それぞれ断熱材及び圧力開放弁である。
図1参照
上記の課題を解決するために、本発明は、液体窒素4を用いた冷却器であって、断熱容器1と、断熱容器1内に収容されるとともに液体窒素4を吸収および保持する構造を有する連続気泡を有する繊維集合体3を内部に挿入された複数の中空管状容器2とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0013】
このように、連続気泡を有する繊維集合体3により液体窒素4を吸収および保持することによって、運搬や測定時に液体窒素4があばれて、液漏や突沸することを抑制することができる。
また、このような、中空管状容器2を複数備えることによって、図1の下図に示すように、一本の大口径の中空管状容器2を用いた場合に比べて熱の伝達性が向上するとともに、容器が傾いた場合の液体窒素4の漏れ出しを効果的に抑制することができる。
【0014】
また、この場合の中空管状容器2を円管状容器とすることが望ましく、それによって、製作が容易になるとともに、通常は内部が円筒状の断熱容器1内に高密度で収納することができるとともに、繊維集合体3の挿入が容易になる。
【0015】
この場合、互いに隣接する円管状容器の間には空隙ができるので、繊維集合体3を充填することが望ましく、それによって、液体窒素4の保持量を多くすることができる。
【0016】
或いは、中空管状容器2は、断面が多角形の中空管状容器2でも良く、特に、断面が6角形の中空管状容器2の場合には複数の中空管状容器2が密着して最密充填構造となってハニカム構造を構成することができ、同じ容積の断熱容器1に保持することができる単位容積当たりの液体窒素4の保持量を最も多くすることができる。
【0017】
また、繊維集合体3を内部に挿入する繊維集合体3保持容器は、繊維集合体3を挿入する複数の貫通孔を有する蓮根状容器であっても良く、繊維集合体保持容器の断熱容器1内への収納が容易になる。
【0018】
なお、毛細管現象による液面の上昇高さは、繊維集合体3の液体窒素4との接触角をθとした場合、cosθに比例するので、繊維集合体3の液体窒素4との接触角θが90度以下である材質からなる繊維集合体3を用いることが望ましく、それによって、繊維集合体3による液体窒素4の保持能力を大きくすることができる。
【0019】
また、毛細管現象による液面の上昇高さは、毛細管の径、即ち、連続気泡により構成される管の径に反比例するので、繊維集合体3を、中空管状容器2内或いは貫通孔内に圧縮挿入することによって、毛細管の実効的な径を小さくすることができ、それによって、繊維集合体3による液体窒素4の保持能力を大きくすることができる。
【0020】
また、各中空管状容器2或いは貫通孔の上部に通気性の隔壁を設けても良く、それによって、容器が傾斜した場合にも、液体窒素4の漏れ出しを効果的に抑制することができる。
【0021】
また、液体窒素4による被冷却部周囲にカーボンナノチューブを充填しても良く、カーボンナノチューブの熱伝導率は大きいので、被冷却部を効率的に冷却することができる。
【0022】
また、断熱容器1内であって、中空管状容器2の集合体或いは蓮根状容器の上部に、隔壁を設けても良く、それによって、容器が傾斜した場合にも、液体窒素4の漏れ出しを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、液体窒素を用いた冷却がより安全にしかも容易になり、ハンディー型SQUIDなどの検査機器等が実現可能となる。非破壊検査等、より高感度の計測が容易に行えるようになり、発電所、航空機、プラント等の安全向上に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
ここで、図2及び図3を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図2参照
図2は本発明の液体窒素冷却器の基本構成図であり、真空断熱容器12を保持する外囲器11、真空断熱容器12内に収納される複数の中空管状容器13、中空管状容器13内に挿入されて液体窒素を吸収保持する繊維集合体14、液体窒素の温度を伝達するカーボンナノチューブ15、カーボンナノチューブを圧縮して内蔵するサファイアロッド16、サファイアロッドの先端に取付けられたSQUID等の被冷却物17、中空管状容器13の上部に設けられた断熱材18、気化した窒素ガスを放出する圧力開放弁19、外囲器11の上部に取付けられるとともに電装系21が収容された把手20、及び、外囲器の側部に取り付けられた携帯情報端末22から構成される。
【0025】
図3参照
図3は、本発明の実施の形態の円管状容器及び繊維集合体の説明図であり、中空管状容器13は、例えば、CuやAl等の金属或いはガラスエポキシやアクリル等の絶縁体で構成される。
なお、被冷却物17が赤外線センサー等の場合には中空管状容器13の材質はCuやAl等の金属が望ましが、被冷却物17がSQUIDのように磁場により中空管状容器13に電流が生じることが望ましくない場合には、ガラスエポキシ等の絶縁体で構成することが望ましい。
【0026】
また、中空管状容器13に挿入する繊維集合体14はガラス繊維やメラミンフォームのような連続気泡をもつ繊維集合体が好適であり、これらの材料は、連続気泡を有しているとともに液体窒素温度で凍結して収縮することがない。
因に、発泡体として典型的なものである発泡スチロールは気泡が連続気泡ではなく、孤立気泡であるため、発泡スチロールは液体窒素温度で凍結して収縮する。
【0027】
液体窒素は、繊維集合体14に単に吸収されただけでも安定性を増すが、以下のような毛細管現象の条件下で水がタオルにしみ込むように繊維集合体14に吸収されると保持力はさらに向上する。
水はタオルに吸収した状態では液体でありながら容易に運搬できるのと同じである。
この場合の毛細管現象による液面の上昇高さh〔m〕は、
h=2Tcosθ/ρgr
で表される。ここで、
T:表面張力〔N/m〕
θ:接触角〔度〕
ρ:液体の密度〔kg/m3
g:重力加速度〔m/s2
r:管の半径〔m〕
【0028】
この場合、管の半径rは繊維集合体14の連続気泡の半径に相当するので、連続気泡の半径が小さいほど毛細管現象が顕著になり、また、繊維集合体14の液体窒素に対する接触角θが小さいほど毛細管現象が顕著になる。
なお、θ>90°の場合、cosθ<0となるので、h<0となり毛細管現象が作用しなくなるので、接触角θはθ≦90°である必要がある。
【0029】
また、毛細管現象による液面の上昇高さhは表面張力Tに比例するのに対して、液体窒素の表面張力は77Kで0.007N/mで、20℃水の0.07N/mの1/10と小さいが、液体ヘリウム(4.2K)の100倍であり、連続気泡が十分に小さい材料(管の半径rが小さいことに相当)を選択すれば、毛細管現象による吸着作用を十分に発揮することができる。
【0030】
このように、繊維集合体14に液体窒素を吸収保持させることによって、液体窒素の搬送や測定の際に液体窒素が波立ったりして液漏れしたり突沸することを抑制することができる。
【0031】
また、繊維集合体14に液体窒素を吸収保持させる際に、繊維集合体14を断熱容器に直接入れることでも液体窒素の動きを制限し、保持力を持たせることは可能であるが、さらに、中空管状容器13に挿入格納することによって、シリンダー状に分離することでさらに液体窒素の動きを制限することができる。
例えば、容器が大きく傾いた場合に、全体を大きな繊維集合体14で構成した場合には吸収された液体窒素が傾き角に応じて漏れ出す危険があるが、シリンダー状に分離した場合には、中空管状容器13の管側壁が液体窒素の移動の障壁となるので、液体窒素の漏れ出しを抑制することができる。
【実施例1】
【0032】
以上を前提として、次に、図4を参照して本発明の実施例1の液体窒素冷却器を説明するが、ここでは、外囲器内部の基本構成のみを説明する。
図4参照
図4は、本発明の実施例1の液体窒素冷却器の概念的構成図であり、真空断熱容器31、真空断熱容器31内に収納される複数の銅製の円管状容器32、円管状容器32内に挿入されるメラミンフォームからなる繊維集合体33、同じくメラミンフォームからなる断熱材34、気化した窒素ガスを放出する圧力開放弁35からなる。
【0033】
この場合の円管状容器32は、例えば、内径φが15mm、肉厚が0.5mm、長さが80mmの円管で構成する。
この円管状容器32に挿入する繊維集合体33としてのメラミンフォームは液体窒素との接触角が90度以下であるので毛細管現象を保持力として利用できる。
【0034】
因に、断熱材として広く用いられているグラスウールも圧縮して繊維間隔をせばめることで同様の効果で液体窒素を吸収できるが、気泡のサイズが0.2μmのメラミンフォームは同体積でおよそ1.6倍の吸収力をもつことが実験で明らかとなった。
しかも、断熱能力が高いので、液体窒素が少なくなった時にはそれを保持するための断熱材として有効に働く。
【実施例2】
【0035】
次に、図5を参照して本発明の実施例2の液体窒素冷却器を説明するが、ここでも、外囲器内部の基本構成のみを説明する。
図5参照
図5は、本発明の実施例2の液体窒素冷却器の概念的構成図であり、真空断熱容器31、真空断熱容器31内に収納される複数のガラスエポキシ製の円管状容器40、円管状容器40内に挿入されるメラミンフォームからなる繊維集合体33、同じくメラミンフォームからなる断熱材34、円管状容器40の底面側に設けられたカーボンナノチューブ36、カーボンナノチューブを圧縮して内蔵するサファイアロッド37、サファイアロッド37の先端に取付けられたSQUIDチップ38、気化した窒素ガスを放出する圧力開放弁35からなる。
【0036】
この実施例2においては、温度の安定が必要なSQUID素子を冷却するため、熱伝導性に優れたカーボンナノチューブ36を、SQUIDチップ38の周辺に用いた構造であり、このカーボンナノチューブ36は微細繊維集合体であり液体窒素の保持も行う一方で、熱伝導も担うものであり、ハンディー型SQUID装置を構成するために有利な構造である。
【実施例3】
【0037】
次に、図6を参照して本発明の実施例3の液体窒素冷却器を説明するが、ここでも、外囲器内部の基本構成のみを説明する。
図6参照
図6は、本発明の実施例3の液体窒素冷却器の概念的構成図であり、真空断熱容器31、真空断熱容器31内に収納される複数の銅製の円管状容器32、円管状容器32内に挿入されるメラミンフォームからなる繊維集合体33、同じくメラミンフォームからなる断熱材34、気化した窒素ガスを放出する圧力開放弁35からなる。
【0038】
但し、ここでは、メラミンフォームからなる繊維集合体33を圧縮して挿入する。
例えば、図に示すように、φ15×50mmの円管状容器32内にφ34×65mmのメラミンフォームからなる繊維集合体33を圧縮挿入する。
この場合、メラミンフォームを圧縮なしで挿入して液体窒素を保持したとき、吸収量は2.6ccであったが、メラミンフォームを圧縮挿入した場合の吸収量は4.5ccと増加した。
これは、圧縮によってメラミンフォーム内の連続気泡が収縮して連続気泡の半径rが小さくなり、それによって、毛細管現象による液面の高さhが大きくなるためと考えられる。
【実施例4】
【0039】
次に、図7を参照して本発明の実施例4の液体窒素冷却器を説明するが、ここでは、中空管状容器の構成のみを説明する。
図7参照
図7は、本発明の実施例4の液体窒素冷却器内に収容される中空管状容器の概念的構成図であり、中空管状容器41は断面が正六角形の中空多角柱状であり、この中空管状容器41を密着させてハニカム構造としたものであり。
このようなハニカム構造は、最密充填構造であるので、真空断熱容器31内の単位体積あたりのメラミンフォームの体積を増加でき、より小さな容器で多くの液体窒素を保持できる。
【実施例5】
【0040】
次に、図8を参照して本発明の実施例5の液体窒素冷却器を説明するが、ここでは、中空管状容器の充填構成のみを説明する。
図8参照
図8は、本発明の実施例5の液体窒素冷却器内に収容される中空管状容器の充填構成図であり、円管状容器32を密着させて最密充填構造とするともに、円管状容器32同士の間に形成される空隙もメラミンフォームからなる繊維集合体39で充填したものである。
【0041】
この実施例5においては、円管状容器32同士の間に形成される空隙もメラミンフォームを挿入しているので、真空断熱容器31内の単位体積あたりのメラミンフォームの体積を増加でき、上述の実施例1に比べてより小さな容器で多くの液体窒素を保持できる。
【実施例6】
【0042】
次に、図9を参照して本発明の実施例6の液体窒素冷却器を説明するが、ここでも、中空管状容器の構成のみを説明する。
図9参照
図9は、本発明の実施例6の液体窒素冷却器内に収容される中空管状容器の構成図であり、円管状容器32の上底面及び下底面に通気口43を有する隔壁42を設けたものである。
なお、この場合の隔壁の素材は、ガラスエポキシやアクリル、銅或いはAl等を金属を用いることができる。
【0043】
この本発明の実施例6においては、円管状容器32の上底面及び下底面に通気口43を有する隔壁42を設けているので、容器の傾きに対する液体窒素の漏れや断熱容器内での偏りを防ぐことができ、ハンディー型測定器に用いる場合により有利になる。
【実施例7】
【0044】
次に、図10を参照して本発明の実施例7の液体窒素冷却器を説明するが、ここでも、外囲器内部の基本構成のみを説明する。
図10参照
図10は、本発明の実施例7の液体窒素冷却器の概念的構成図であり、真空断熱容器31、真空断熱容器31内に収納される複数の銅製の円管状容器32、円管状容器32内に挿入されるメラミンフォームからなる繊維集合体33、同じくメラミンフォームからなる断熱材34、断熱材34内に埋め込まれたガラスエポキシ製の遮蔽板44、気化した窒素ガスを放出する圧力開放弁35からなる。
【0045】
この実施例7においては、上部に遮蔽板44を設けているので、円管状容器32から液体窒素が万が一漏れた場合に障壁として作用するため、安全性をより高めることができる。
なお、この遮蔽板44はガラスエポキシ製に限られるものではなく、アクリルや金属材料を用いることもできる。
【実施例8】
【0046】
次に、図11を参照して本発明の実施例8の液体窒素冷却器を説明するが、ここでは、繊維集合体を収容する容器の構成のみを説明する。
図11参照
図11は、本発明の実施例8の液体窒素冷却器を構成する繊維集合体の収容容器の概念的構成図であり、繊維集合体を収容する複数の貫通孔46を有する例えば、銅製の蓮根状容器45からなる。
【0047】
この実施例8においては、繊維集合体の収容容器を一体構成の蓮根状容器45で構成しているので、収容容器を真空断熱容器31内に収容する際の工程が簡素化される。
【0048】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、試作機を作製して冷却効果を確認したので、ここで、図12及び図13を参照して試作した本発明による液体窒素冷却器の構造と冷却効果を説明する。
図12参照
図12は、試作機の概念的構成図であり、真空断熱容器12、真空断熱容器12内に収納される複数の真鍮製の中空管状容器13、中空管状容器13内に挿入されたメラミンフォームからなる繊維集合体14、中空管状容器13を保持するアルミメッシュ23、アルミメッシュ23の下に設けられ、液体窒素を保持するメラミンフォームからなる繊維集合体24、中空管状容器13の上部に設けられたメラミンフォームからなる断熱材18、断熱材18内の挿入されたガラスエポキシ製の漏れ防止遮蔽板25、上蓋26に取り付けられた圧力開放弁19からなる。
【0049】
この場合の中空管状容器13は、上記の実施例6に示したタイプの中空管状容器を用いており、中空管状容器13の上底面及び下底面に通気口28を有する隔壁27を設けている。
この試作機においては、振動で液体窒素が漏洩することがなく、また、90度傾置しても漏洩はなかった。
【0050】
図13参照
図13は、試作機の冷却効果の説明図であり、静置状態における試作機は、図に示すように、液体窒素の量は時間にほぼ比例して減少していくが、3時間にわたり77Kを維持できることが確認された。
【0051】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、本発明は各実施例に記載された構成・条件等に限られるものではなく各種の変更が可能であり、例えば、真空断熱容器内に収容する中空管状容器のサイズ及び収容本数は、真空断熱容器のサイズに応じて任意であり、真空断熱容器のサイズは、被冷却物の大きさや、必要とする冷却時間に応じて適宜設定するものである。
【0052】
また、上記の実施例8においては、貫通孔の断面を円形でしているが、正方形や六角形状にしても良いものであり、六角形にした場合には、上記の実施例4のようにハニカム構造となる。
【0053】
また、上記の実施例8においても、上記実施例6と同様に、貫通孔を覆うように、通気口を有する隔壁を設けても良いものである。
なお、この場合の隔壁は、各貫通孔毎に設けても良いし、貫通孔に応じた通気口を有する一体の隔壁を用いても良いものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の活用例としては、SQUIDや高感度赤外線センサ等の液体窒素温度での冷却が必要な携帯測定機器が典型的なものであるが、携帯測定機器に限られるものではなく、振動が伴う場所等における測定に必要な冷却装置としても用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の液体窒素冷却器の基本構成図である。
【図3】本発明の実施の形態の中空管状容器及び繊維集合体の説明図である。
【図4】本発明の実施例1の液体窒素冷却器の概念的構成図である。
【図5】本発明の実施例2の液体窒素冷却器の概念的構成図である。
【図6】本発明の実施例3の液体窒素冷却器の概念的構成図である。
【図7】本発明の実施例4の液体窒素冷却器内に収容される中空管状容器の概念的構成図である。
【図8】本発明の実施例5の液体窒素冷却器内に収容される中空管状容器の充填構成図である。
【図9】本発明の実施例6の液体窒素冷却器内に収容される中空管状容器の概念的構成図である。
【図10】本発明の実施例7の液体窒素冷却器の概念的構成図である。
【図11】本発明の実施例8の液体窒素冷却器を構成する繊維集合体の収容容器の概念的構成図である。
【図12】試作機の概念的構成図である。
【図13】試作機の冷却効果の説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 断熱容器
2 中空管状容器
3 繊維集合体
4 液体窒素
5 断熱材
6 圧力開放弁
11 外囲器
12 真空断熱容器
13 中空管状容器
14 繊維集合体
15 カーボンナノチューブ
16 サファイアロッド
17 被冷却物
18 断熱材
19 圧力開放弁
20 把手
21 電装系
22 携帯情報端末
23 アルミメッシュ
24 繊維集合体
25 漏れ防止遮蔽板
26 上蓋
27 隔壁
28 通気口
31 真空断熱容器
32 円管状容器
33 繊維集合体
34 断熱材
35 圧力開放弁
36 カーボンナノチューブ
37 サファイアロッド
38 SQUIDチップ
39 繊維集合体
40 円管状容器
41 中空管状容器
42 隔壁
43 通気口
44 遮蔽板
45 蓮根状容器
46 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱容器と、前記断熱容器内に収容されるとともに液体窒素を吸収および保持する構造を有する連続気泡を有する繊維集合体を内部に挿入された複数の中空管状容器とを少なくとも備えたことを特徴とする液体窒素を用いた冷却器。
【請求項2】
断熱容器と、前記断熱容器内に収容されるとともに液体窒素を吸収および保持する構造を有する連続気泡を有する繊維集合体を挿入する複数の貫通孔を有する蓮根状容器とを少なくとも備えたことを特徴とする液体窒素を用いた冷却器。
【請求項3】
前記繊維集合体を、前記中空管状容器内或いは前記貫通孔内に圧縮挿入したことを特徴とする請求項1または2に記載の液体窒素を用いた冷却器。
【請求項4】
前記各中空管状容器或いは前記貫通孔の上部に通気性の隔壁を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体窒素を用いた冷却器。
【請求項5】
液体窒素による被冷却部周囲にカーボンナノチューブを充填したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体窒素を用いた冷却器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−47335(P2009−47335A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212773(P2007−212773)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「超電導応用基盤技術研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【Fターム(参考)】