説明

液体組成物、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】 紙に対して色にじみや濃度ムラが少なく、かつ印字濃度に極めて優れたインク組成物を提供する。
【解決手段】 顔料、溶媒およびポリマー化合物を含有するインク組成物であって、前記インク組成物をpH5から8の範囲の電解質水溶液に分散した溶液中において、顔料の表面電荷層内の解離基の平均密度Nが0.005M以上で、表面電荷層の運動性を示すパラメータ1/λが0.5nm以上5.00nm以下であり、かつ前記インク組成物中に含有される、顔料を内包していないポリマー化合物が顔料及び顔料を内包しているポリマー化合物に対して0.1質量%以下であるインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インクとして有用な液体組成物、及び液体組成物を使用した画像形成方法ならびに画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル印刷技術は非常な勢いで進歩している。このデジタル印刷技術は、電子写真技術、インクジェット技術と言われるものがその代表例であるが、近年オフィス、家庭等における画像形成技術としてその存在感をますます高めてきている。
【0003】
インクジェット技術はその中でも直接記録方法として、コンパクト、低消費電力という大きな特徴がある。また、ノズルの微細化等により急速に高画質化が進んでいる。インクジェット技術の一例は、インクタンクから供給されたインクをノズル中のヒーターで加熱することで蒸発発泡し、インクを吐出させて記録媒体に画像を形成させる方法である。他の例はピエゾ素子を振動させることでノズルからインクを吐出させる方法である。
【0004】
これらの方法には、これまで水溶性の染料インクが用いられてきたが、にじみやフェザリング、耐候性などに関し問題点を有していた。これらを改善する目的として、近年では顔料インクの利用が検討されており(特許文献1参照)、実際にインク組成物中に顔料分散体を含有したインクジェット用インクも普及し始めている。
【0005】
インクジェット用の水溶性顔料インクでは、吐出安定性や保存安定性を確保することを目的として、水溶液中における顔料粒子の分散性向上が重要な課題とされてきた。従来、添加剤として親水性に富む水溶性樹脂を大量に添加することによって、顔料表面に吸着される分散剤の立体障害的な反発力を利用した分散安定性の改善が検討されてきた。しかし、分散剤の大量添加は、紙表面での顔料インクの凝集性を低下させる他、顔料と紙繊維間の相互作用をも低下させるため、定着性の低下による滲みや濃度ムラ、印字濃度低下の原因となる。
【0006】
一方、添加剤として単独では水に不溶である分散樹脂を用いることで滲みや濃度ムラを改善できるという報告はあるが、この手法では水溶液中における顔料粒子の分散性が低下してしまうという問題が生じる。特許文献2では、荷電性の分散樹脂を使用することによってこの問題の改善に成功しているが、この場合、水溶液中での顔料粒子の分散安定性は表面電荷による電気的な反発力に基づいているため、例えばサーマルインクジェット方式のように、インクタンクから供給されたインクをノズル中のヒーターで加熱することで蒸発発泡させる印字方式において、良好な吐出特性を確保するためには、なお改善の余地がある。
【0007】
以上のように、分散安定性や吐出安定性を保持したまま、紙に対して色にじみや濃度ムラが少なく、かつ印字濃度に極めて優れたインク組成物を提供するためには、未だなお多くの改善が望まれている状況である。
【特許文献1】米国特許第5085698号明細書
【特許文献2】特開2004−123906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、分散安定性や吐出安定性に優れた液体組成物を提供するものである。
また、本発明は、紙に対して色にじみや濃度ムラが少なく印字濃度に極めて優れ、かつインクをヒーターで加熱発泡させるサーマルインクジェット方式においても安定に吐出することが可能なインク組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記従来技術および課題について鋭意検討した結果、下記に示す発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の発明は、顔料と溶媒を含有する液体組成物であって、前記液体組成物をpH5から8の範囲の電解質水溶液に分散した溶液中において、顔料の表面電荷層内の解離基の平均密度Nが0.005M(mol/L)以上で、かつ表面電荷層の運動性を示すパラメータ1/λが0.5nm以上5.00nm以下であることを特徴とする液体組成物に関するものである。
【0010】
本発明の第二の発明は、顔料、溶媒およびポリマー化合物を含有する液体組成物であって、前記液体組成物中に含有される、顔料を内包していないポリマー化合物が顔料及び顔料を内包しているポリマー化合物に対して0.1質量%以下であることを特徴とする液体組成物に関するものである。
【0011】
本発明の第三の発明は、顔料、溶媒およびポリマー化合物を含有する液体組成物であって、前記液体組成物をpH5から8の範囲の電解質水溶液に分散した溶液中において、顔料の表面電荷層内の解離基の平均密度Nが0.005M以上で、表面電荷層の運動性を示すパラメータ1/λが0.5nm以上5.00nm以下であり、かつ前記液体組成物中に含有される、顔料を内包していないポリマー化合物が顔料及び顔料を内包しているポリマー化合物に対して0.1質量%以下であることを特徴とする液体組成物に関するものである。
【0012】
本発明の第四の発明は、以上に記載したいずれかの液体組成物を媒体に付与することにより、画像を記録する工程を有することを特徴とする画像形成方法に関するものである。
本発明の第五の発明は、以上に記載したいずれかの液体組成物を媒体に付与することにより、画像を記録させるための手段を有することを特徴とする画像形成装置に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分散安定性や吐出安定性に優れた液体組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、分散安定性や吐出安定性を保持したまま、紙に対して色にじみや濃度ムラが少なく、かつ印字濃度に極めて優れたインク組成物を提供することができる。
【0014】
また、本発明では、上記のインク組成物を使用した画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の第一の発明は、顔料と溶媒を含有する液体組成物であって、前記顔料が、水溶液中において、以下の数式(1)で表されるNの絶対値を0.005M以上とし、かつ1/λが0.5nm以上5.00nm以下の値であることを特徴とする液体組成物である。
【0016】
【数1】

【0017】
【数2】

【0018】
【数3】

【0019】
【数4】

【0020】
(ただし、μは電気泳動移動度、er は媒質の比誘電率、e0 は真空中の誘電率、ηは粘度、φ0 は表面電位、φDON はDonnan電位、κm はDebye−Huckelのパラメータ、1/λは表面電荷層内の柔らかさパラメータ、zは表面電荷層内の解離基の価数、nはイオン濃度、eは単位電荷、Nは表面電荷層内の解離基の平均密度、νはイオン価を表す。)
【0021】
好ましくは、前記液体組成物が顔料、溶媒、ポリマー化合物を含有することを特徴とするインク組成物であって、該顔料が該ポリマー化合物によって内包されていることを特徴とするインク組成物である。より好ましくは、前記ポリマー化合物が両親媒性ブロックポリマー化合物であることを特徴とするインク組成物である。さらに好ましくは、前記ポリマー化合物がポリアルケニルエーテル繰り返し単位構造を有することを特徴とするインク組成物である。ただし、前記したNと1/λの値は、pH値が5から8の範囲である電解質水溶液中において測定されるパラメータであり、より好ましくはpH値が6.5から7.5の範囲である電解質水溶液中において測定されるパラメータである。
【0022】
[パラメータN,パラメータ1/λ]
溶液中におけるコロイド粒子(本発明では顔料に対応)の分散状態を左右する因子として、コロイド粒子表面の電荷や電位が重要である(“インクジェット最新技術”p116、2004年、情報機構(株)発行)。このことは、粒子間力と拡散電気二重層の相互作用から疎水性コロイド粒子の安定性を定量的に論じた理論であるDLVO理論により説明される。この理論によれば、2つのコロイド粒子が接近するとき、コロイド粒子間の距離が短くなるにつれファンデルワールス力に基づく引力の影響が大きくなる。しかし、荷電コロイドの場合には、コロイド粒子の周りが対イオンの雲(拡散電気二重層という)で覆われているため、コロイド粒子が接近すると拡散電気二重層の重なり合いに基づく電気的な反発力が発生する。
【0023】
つまり、コロイド粒子の分散安定性は、ファンデルワールス力に基づく引力と電気的な反発力のバランスにより決定され、コロイド粒子の表面電位(以下ゼータ電位と表現)の値が大きいほど、分散安定性に優れている。例えば、特開2004−123906号公報では、インク組成物中に分散させた顔料のゼータ電位の絶対値を50mV以上とすることで、インク組成物の保存安定性が向上すると報告している。しかしながら、分散安定性に寄与する主たる要因が電気的な反発力である顔料を含有するインク組成物は、例えばサーマルインクジェット方式のように、インクタンクから供給されたインクをノズル中のヒーターで加熱することによって蒸発発泡させる印字方式においては、拡散電気二重層の重なり合いに基づく電気的な反発力が対イオンの熱拡散によって弱められるため、ノズル部分で凝集して目詰まりを生じ、良好な吐出安定性を確保することが困難となる。
【0024】
溶液中におけるコロイド粒子の分散状態を左右する別の因子として、コロイド粒子表面の立体障害効果がある。これは、コロイド粒子表面にポリマー化合物を吸着させることにより、コロイド粒子が接触や衝突することを立体障害的に妨げる効果をいう。さらに、コロイド粒子表面のポリマー化合物濃度が高くなることにより、エンタルピー的にコロイド粒子の凝集を妨げる効果が期待できる。このような分散安定性に寄与する主たる要因がポリマー化合物の吸着に基づく立体障害的な反発力である顔料を含有するインク組成物は、例えばサーマルインクジェット方式のように、インクタンクから供給されたインクをノズル中のヒーターで加熱することによって蒸発発泡させる印字方式においても、分散安定性を大きく低下させることなく吐出安定性を確保することが可能となる。しかしながら、分散安定性や吐出安定性の向上を目的として、インク組成物中に一定量以上のポリマー化合物を添加した場合、吐出後における顔料の凝集性が低下するため、良好な印字濃度を確保することが困難となる。
【0025】
すなわち、分散安定性や吐出安定性を保持したまま、紙に対して色にじみや濃度ムラが少なく、かつ印字濃度に極めて優れたインク組成物を提供するためには、ポリマー化合物に内包された顔料間に作用する電気的な反発力と、立体障害的な反発力のバランスを制御することが重要となる。
【0026】
先に述べた電気的な反発力と立体障害的な効果について、数式(1)に含まれるNと1/λによって規定することができる[“J. Colloid Interface Sci.”,130,281(1989年)参照]。該文献“J. Colloid Interface Sci.”によると、荷電性ポリマー化合物に内包された顔料を分散させた分散液に一定電場を印加した際、顔料表面に形成した荷電性ポリマー化合物の吸着層(表面電荷層という)の特性を反映した電気泳動現象が生じる。この時の表面電荷層内外における分散液の速度分布を表した関数は数式(1)で表され、数式(1)中におけるNは表面電荷層内の解離基の平均密度、1/λは表面電荷層の運動性(柔らかさ)を表すパラメータとなる。ここで、Nは前記した電気的な反発力に関係し、Nの値が大きいほど電気的な反発力が大きいことを意味する。また、1/λは、立体障害的な反発力に関係し、この値が大きいほど立体的な反発力が大きいことを意味する。
【0027】
本発明は、ポリマー化合物に内包された顔料と溶媒を含有するインク組成物であって、前記顔料が、水溶液中において、Nの絶対値を0.005M以上、好ましくは0.010〜0.05Mとし、かつ1/λが0.5nm以上5.00nm以下、好ましくは1nm以上3nm以下の値であることを特徴とするインク組成物である必要がある。
【0028】
このような物性を有するインク組成物は、含有されるポリマー化合物に内包された顔料の、分散安定性に寄与する電気的な反発力と、立体障害的な反発力のバランスがマッチングしているため、分散安定性や吐出安定性を保持したまま、紙に対して色にじみや濃度ムラが少なく、かつ印字濃度に極めて優れたインク組成物となるという実験結果が得られている。なお、本発明におけるポリマー化合物が内包された顔料とは、ポリマー化合物による被覆度に関わらず、顔料表面にポリマー化合物が物理的、あるいは化学的に結合している全ての顔料を意味する。
【0029】
Nと1/λは、前記文献“J. Colloid Interface Sci.”に記載されている方法に従って測定することができる。測定装置としては、例えば、ZetaPALS(Brookhaven社)、ZEECOM(マイクロテックニチオン)、ELS−3000(大塚電子)などの装置がある。
【0030】
本発明の第二の発明は、顔料、溶媒、ポリマー化合物を含有するインク組成物であって、該インク組成物に含有される顔料を内包していないポリマー化合物が0.1質量%以下であることを特徴とするインク組成物である。好ましくは、前記ポリマー化合物が両親媒性ブロックポリマー化合物であることを特徴とするインク組成物である。より好ましくは、前記ポリマー化合物の臨界ミセル濃度が、0.1g/L以下であることを特徴とするインク組成物である。さらに好ましくは、前記ポリマー化合物がポリアルケニルエーテル繰り返し単位構造を有することを特徴とするインク組成物である。
【0031】
インク組成物中における顔料を内包していないポリマー化合物の含有濃度が0.1質量%以下である場合、紙に対して色にじみや濃度ムラが少なく、かつ印字濃度に極めて優れたインク組成物として好適に用いることができる。詳細は明らかではないが、ポリマー化合物の大量添加は、紙表面での顔料インクの凝集性を低下させるほか、顔料と紙繊維間の相互作用を低下させるため、定着性の低下によるにじみや濃度ムラ、印字濃度の低下が生じるものと推測している。
【0032】
インク組成物中に含有される顔料を内包していないポリマー化合物の濃度は、例えば、インク組成物中の顔料と顔料を内包しているポリマー化合物を遠心分離により沈降させ、上澄み中に含有されるポリマー化合物濃度を重量法に基づいて測定することによって評価することができる。また、顔料を内包していないポリマー化合物がインク組成物中に重量法の測定限界を超える0.1質量%以下、0.01質量%以上含有される場合、ポリマー化合物はインク組成物中でミセルを形成するため、動的光散乱法やキャピラリー方式粒度分布測定装置などによって、顔料を内包していないポリマー化合物の存在を確認することができる。動的光散乱法による粒径測定装置の例としては、大塚電子(株)のDLS7000等の装置がある。また、キャピラリー方式粒度分布測定装置の例としては、Matec Applied SciencesのCHDF−2000等の装置がある。顔料を内包していないポリマー化合物が0.01質量%未満の場合、これらの装置の検出限界を超える場合があるため、正確に測定することが困難である。
【0033】
本発明の第三の発明は、顔料と溶媒を含有するインク組成物であって、該インク組成物が、本発明の第一の発明の特徴と、本発明の第二の発明の特徴をいずれも満足することを特徴とするインク組成物である。すなわち、顔料、溶媒およびポリマー化合物を含有する液体組成物であって、前記液体組成物をpH5から8のいずれかの電解質水溶液に分散した溶液中において、顔料の表面電荷層内の解離基の平均密度Nが0.005M以上で、表面電荷層内のの運動性(柔らかさ)を示すパラメータ1/λが0.5nm以上5.00nm以下であり、かつ前記液体組成物中に含有される、顔料を内包していないポリマー化合物が顔料及び顔料を内包しているポリマー化合物に対して0.1質量%以下である液体組成物である。
【0034】
このような特徴を有するインク組成物は、紙に対して色にじみや濃度ムラが少なく、かつ印字濃度に極めて優れたインク組成物として好適に用いることができる。
以下、本発明のインク組成物について詳細に説明する。
【0035】
[ポリマー化合物]
本発明のインク組成物に含まれるポリマー化合物は両親媒性ブロックポリマー化合物であり、好ましくは臨界ミセル濃度は0.1g/L以下である。両親媒性とは親媒性と疎媒性の性質を持つことを表しており、両親媒性ブロックポリマー化合物とは親媒性と疎媒性のブロックセグメントをそれぞれ少なくとも一つ以上有するポリマー化合物である。前記の親媒性とは、後述するポリマー含有組成物などで用いられる主たる溶媒に対して親和性が大きいという性質を表しており、疎媒性とは溶媒に対して親和性が小さい性質である。本発明のインク組成物の主溶媒は水であることが好ましく、本発明のブロックポリマー化合物中は親水性と疎水性のブロックセグメントをそれぞれ少なくとも一つ以上有することが好ましい。
【0036】
本発明の両親媒性ブロックポリマー化合物は、主溶媒が水である溶媒中に顔料と共に分散させたときに、親水性ブロックセグメントを外側、疎水性ブロックセグメントが内側であるコア−シェル型のミセルを作り、顔料を内包した高分子ミクロスフィアを形成する。高分子ミクロスフィアとは、高分子を分散剤として形成しているマイクロメートル、サブミクロン、ナノオーダーの微粒子の総称であり、高分子のみで形成している高分子ミセルや、内部に不溶性または内側のコア部の高分子に可溶であるような機能物質等を含んでいる高分子分散体、高分子コロイドなどが挙げられる。
【0037】
なお、内包を確認する手段のとしては、例えばブロックポリマーのブロックセグメントに温度によって溶媒への溶解性が変化するような構造を導入し、そのポリマーで色材を内包させて温度により分散状態の変化を調べる方法、またはインク組成物をクライオトランスファーによるEF−TEM観察を行い、球状ミセルを観察することができ、このサンプルをEELSで元素分析することで、内包されている事が確認できる。
【0038】
本発明のインク組成物に含まれるブロックポリマー化合物中には、少なくとも一つのブロックセグメントが疎水性で、少なくとも一つのブロックセグメントが親水性である両親媒性ブロックポリマー化合物である。なお、親水性とは水に対する親和性が大きく水に溶解しやすい性質であり、疎水性とは水に対して親和性が小さく水に溶解しにくい性質である。
【0039】
例えば、親水性ブロックとしては、カルボン酸、カルボン酸塩、あるいは親水性オキシエチレンユニットを多く含む構造、さらにヒドロキシル基などを有する構造などの親水性ユニットを持つ繰り返し単位構造を含有するブロックセグメントが挙げられる。具体的な例でいえば、アクリル酸やメタクリル酸、あるいはその無機塩や有機塩などのカルボン酸塩、またポリエチレングリコールマクロモノマー、またはビニルアルコールや2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどの親水性モノマーで表される繰り返し単位構造を有するブロックセグメントである。ただし、本発明のインク組成物に含まれるブロックポリマー化合物における親水性ブロックはこれらに限定されない。
【0040】
また、疎水性ブロックとしては、例えばイソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などの疎水性ユニットを持つ繰り返し単位構造を含有するブロックセグメントが挙げられる。具体的な例でいえば、スチレンやt−ブチルメタクリレートなどの疎水性モノマーを繰り返し単位として有するブロックセグメントであるが、本発明のインク組成物に含まれるブロックポリマー化合物における疎水性ブロックはこれらに限定されない。
【0041】
また、本発明のインク組成物に含まれる両親媒性ブロックポリマー化合物の好ましい形態について述べる。本発明の両親媒性ブロックポリマー化合物のブロックセグメント数は2つ以上であり、少なくとも1つ以上の疎水性セグメントと、1つ以上の親水性セグメントから構成される。より好ましくは前記ブロックポリマー化合物の主鎖構造がポリアルケニルエーテル構造であり、さらに親水性ブロックセグメントが非イオン性親水ブロックセグメントとイオン性親水ブロックセグメントとをそれぞれ少なくとも一つずつ有する構造である。
【0042】
すなわち、本発明のインク組成物に含まれるブロックポリマー化合物は、主鎖構造がポリアルケニルエーテル構造であり、3つ以上のブロックセグメントを有するブロックポリマーであることがより好ましく、3つ以上のブロックセグメントを有することでより多くの機能分離が可能となる。また、非イオン性親水ブロックセグメントを有することで、温度やpHなどの環境変化が起こっても分散安定性が損なわれず、特にサーマルインクジェット方式での吐出性が優れたインク組成物が得られる。また、ビニルエーテル繰り返し単位構造を有することで粘性が低く、分散性の良い機能性高分子材料を提供できる点で極めて有用である。
【0043】
本発明のインク組成物に含まれる両親媒性ブロックポリマー化合物の各ブロックセグメントは、単一のモノマー由来の繰り返し単位からなるものでもよく、複数のモノマー由来の繰り返し単位を有する構造でもよい。複数のモノマー由来の繰り返し単位を有するブロックセグメントの例としては、ランダム共重合体や徐々に組成比が変化する傾斜型共重合体がある。また、本発明のブロックポリマー化合物は、上述のようなブロックポリマーが他のポリマーにグラフト結合したポリマーであっても良い。また、2つ以上のブロックセグメントを有することで2つ以上の機能を発揮することが可能である。このため、2つ以下のブロックセグメントからなる高分子化合物に比べより高次で精緻な構造体を形成することも可能である。また、複数のブロックセグメントに似た性質を保持させることにより、その性質をより安定なものとすることも可能である。
【0044】
前記の本発明のインク組成物に含まれるブロックポリマー化合物の好ましい例として、異なる3つのブロックセグメントからなるABCで表される、Aブロックに疎水性ブロックセグメント、Bブロックに非イオン性親水ブロックセグメント、Cブロックにイオン性親水ブロックセグメントという両親媒性ABC型トリブロックポリマー化合物を以下に説明する。
【0045】
Aブロックに該当する疎水性ブロックセグメントとしては、好ましくはポリアルケニルエーテル構造からなる繰り返し単位構造を有するブロックセグメントである。具体的には下記一般式(1)、または下記一般式(2)で表されるような繰り返し単位構造が挙げられるが、本発明のブロックポリマー化合物における疎水性ブロックはこれらに限定されない。
【0046】
【化1】

【0047】
一般式(1)中、Aは置換されていても良いポリアルケニルエーテル基を表す。該ポリアルケニルエーテル基は炭素原子数1から5までの直鎖状または分岐状のアルキル基、またはハロゲン原子で置換されていても良い。Bは炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていても良いアルキレン基を表す。該アルキレン基の置換基としては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。mは0から30まで、好ましくは1から10までの整数を表す。mが複数のときはそれぞれのBは異なっていても良い。
【0048】
Dは単結合または炭素原子数1から10までの直鎖状または分岐状の置換されていても良いアルキレン基を表す。アルキレン基としてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、へプチレン、オクチレン等が例として挙げられる。Eは置換されていても良い芳香族環、または置換されていても良い縮環、または置換されていても良い芳香族環が単結合で3つまで結合した構造、またはメチレン基のいずれかを表す。芳香環構造としては、例えば、フェニル、ピリジレン、ピリミジル、ナフチル、アントラニル、フェナントラニル、チオフェニル、フラニル等が挙げられる。
【0049】
1 は炭素原子数1から5までの直鎖状、または分岐状の置換されていても良いアルキル基、または置換されていても良い芳香族環を表す。芳香族環構造としては例えばフェニル基、ピリジル基、ビフェニル基等が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。また、該芳香族環またはメチレン基のいずれかにおいてR1 に置換されていない水素原子は置換されていても良い。置換基としては例えばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0050】
【化2】

【0051】
一般式(2)中、Aは置換されていても良いポリアルケニルエーテル基を表す。ポリアルケニルエーテル基を構成するアルキレン基は炭素原子数1から5までの直鎖状または分岐状のアルキレン基、またはハロゲン原子で置換されていても良い。B1 は炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていても良いアルキレン基を表す。該アルキレン基の置換基としては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。mは0から30まで、好ましくは1から10までの整数を表す。mが複数のときはそれぞれのBは異なっていても良い。
【0052】
Jは炭素原子数3から15までの置換されていても良い直鎖状、または分岐状のアルキル基、または置換されていても良い芳香族環、置換されていても良い縮環、置換されていても良い芳香族環が単結合で3つまで結合した構造のいずれかを表す。アルキル基としては、例えばプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。芳香族環構造としては例えばフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ビフェニル基等が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。疎水性ブロックとなる繰り返し単位構造の具体例として、例えば
【0053】
【化3】

【0054】
などが挙げられるが、これらに限定されない。
また、非イオン性親水ブロックセグメントであるBブロックとしては、例えばヒドロキシル基、ポリオキシエチレン鎖などを置換基または側鎖として有する繰り返し単位構造を含有するブロックセグメントが挙げられる。具体的な例でいえば、ポリビニルアルコールなどのモノマーを繰り返し単位として有するブロックセグメントであるが、好ましくはポリアルケニルエーテル構造からなる繰り返し単位構造を有するブロックセグメントである。具体的には下記一般式(3)で表されるような繰り返し単位構造が挙げられるが、本発明の高分子化合物における非イオン性親水ブロックはこれらに限定されない。
【0055】
【化4】

【0056】
一般式(3)中、Aは置換されていても良いポリアルケニルエーテル基を表す。ポリアルケニルエーテル基を構成するアルケニル基は炭素原子数1から5までの直鎖状または分岐状のアルキル基、またはハロゲン原子で置換されていても良い。B’は炭素原子数1から5までの直鎖状または分岐状の置換されていても良いアルキレン基を表す。好ましくは炭素原子数1から2までの直鎖状アルキレン基である。該アルキレン基の置換基としては、例えばメチレン、エチレン、プロピレン等が挙げられる。mは0から30まで、好ましくは1から10までの整数を表す。mが複数のときはそれぞれのB’は異なっていても良い。
【0057】
D’は単結合または炭素原子数1から5までの直鎖状または分岐状の置換されていても良いアルキレン基を表す。アルキレン基としてはメチレン、エチレン、プロピレン等が例として挙げられる。Kは炭素原子数1から3までの置換されていても良い直鎖状、または分岐状のアルキル基、またはヒドロキシル基のいずれかを表す。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。一般式(3)で表される繰り返し単位構造は親水性を示す。従って、上記の構造はユニット単体ではオキシエチレン基やヒドロキシル基のように親水性の場合や、オキシプロピレン基やエチル基、プロピル基のように疎水性の場合が含まれる。この場合は、全体で親水性とならなければならず、例えば、Kがプロピル基の場合(B’O)m がある程度長いオキシエチレン基で、Kがヒドロキシル基の場合は(B’O)m がオキシプロピレン基となる。非イオン性親水ブロックとなる繰り返し単位構造の具体例として、例えば
【0058】
【化5】

【0059】
などが挙げられるが、これらに限定されない。
また、イオン性親水ブロックセグメントであるCブロックとしては、例えばカルボン酸、カルボン酸塩などを有する繰り返し単位構造を含有するブロックセグメントが挙げられる。好ましくはポリアルケニルエーテル構造からなる繰り返し単位構造を有するブロックセグメントである。具体的には下記一般式(4)で表されるような繰り返し単位構造が挙げられるが、本発明の高分子化合物における非イオン性親水ブロックはこれらに限定されない。
【0060】
【化6】

【0061】
一般式(4)中、Aは置換されていても良いポリアルケニルエーテル基を表す。該ポリアルケニルエーテル基は炭素原子数1から5までの直鎖状または分岐状のアルキル基、またはハロゲン原子で置換されていても良い。B”は炭素原子数1から15までの直鎖状または分岐状の置換されていても良いアルキレン基を表す。該アルキレン基の置換基としては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。mは0から30まで、好ましくは1から10までの整数を表す。mが複数のときはそれぞれのB”は異なっていても良い。
【0062】
D”は単結合または炭素原子数1から10までの直鎖状または分岐状の置換されていても良いアルキレン基を表す。アルキレン基としてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、へプチレン、オクチレン等が例として挙げられる。E”は置換されていても良い芳香族環、または置換されていても良い縮環、または置換されていても良い芳香族環が単結合で3つまで結合した構造、またはメチレン基のいずれかを表す。芳香環構造としては、例えば、フェニル、ピリジレン、ピリミジル、ナフチル、アントラニル、フェナントラニル、チオフェニル、フラニル等が挙げられる。
【0063】
2 は−COOH、−COO- Mのいずれかを表す。Mは1価または多価の金属カチオンを表す。Mの具体例としては、例えば一価の金属カチオンとしてはナトリウム、カリウム、リチウム等が、多価の金属カチオンとしてはマグネシウム、カルシウム、ニッケル、鉄等が挙げられる。Mが多価の金属カチオンの場合には、MはアニオンCOO-の2個以上と対イオンを形成している。
【0064】
また、該芳香族環またはメチレン基のいずれかにおいてR2 に置換されていない水素原子は置換されていても良い。置換基としては例えばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。好ましくは、カルボン酸基が芳香族炭素と結合した芳香族ポリカルボン酸誘導体をCセグメントの側鎖に有する。この場合、より好ましい一形態としてはカルボン酸誘導体の官能基数が2であり、さらにこれらがそれぞれメタ位に結合していることが好ましい。イオン性親水ブロックとなる繰り返し単位構造の具体例として、例えば
【0065】
【化7】

【0066】
などが挙げられるが、これらに限定されない。
また、本発明のインク組成物に含まれるポリマー化合物の数平均分子量(Mn)は、500以上10000000以下であり、好ましく用いられる範囲としては1000以上1000000以下である。10000000を越えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、溶剤に分散しにくかったりする。500未満である場合、分子量が小さく高分子としての立体効果が出にくかったりする場合がある。各ブロックセグメントの好ましい重合度はそれぞれ独立して3以上10000以下である。さらに好ましくは3以上5000以下である。さらに好ましくは3以上4000以下である。
【0067】
本発明のインク組成物に含まれるポリマー化合物の重合は主にカチオン重合で行なわれることが多い。開始剤としては、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、過塩素酸等のプロトン酸や、BF3 、AlCl3 、TiCl4 、SnCl4 、FeCl3 、RAlCl2 、R1.5 AlCl1.5 (Rはアルキルを示す)等のルイス酸とカチオン源の組み合わせ(カチオン源としてはプロトン酸や水、アルコール、ビニルエーテルとカルボン酸の付加体などが挙げられる。)が例として挙げられる。これらの開始剤を重合性化合物(モノマー)と共存させることにより重合反応が進行し、高分子化合物を合成することができる。
【0068】
本発明にさらに好ましく用いられる重合方法について説明する。ポリビニルエーテル構造を含むポリマーの合成法は多数報告されているが(例えば特開平11−080221号公報)、青島らによるカチオンリビング重合による方法(ポリマーブレタン誌15巻、1986年417頁、特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)が代表的である。カチオンリビング重合でポリマー合成を行うことにより、ホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロックポリマー、グラフトポリマー、グラジェントポリマー等の様々なポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。また、他にHI/I2 系、HCl/SnCl4 系等でリビング重合を行うこともできる。
【0069】
本発明のインク組成物に含有される前記高分子化合物の含有量は、0.1質量%以上90質量%以下の範囲で用いられる。好ましくは1質量%以上80質量%以下である。インクジェットプリンタ用としては、好ましくは1質量%以上30質量%以下で用いられる。
【0070】
次に、本発明のインク組成物に含有される高分子化合物以外の他の成分について詳しく説明する。他の成分には、有機溶剤、水、水性溶媒、色材、添加剤等が含まれる。
[有機溶剤]
炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤等が挙げられる。
【0071】
[水]
本発明に含まれる水としては、金属イオン等を除去したイオン交換水、純水、超純水が好ましい。
【0072】
[水性溶媒]
水性溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒等を用いることができる。また、水性分散物の記録媒体上での乾燥を速めることを目的として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類を用いることもできる。
【0073】
本発明のインク組成物において、上記、有機溶剤、水および水性溶媒の含有量は、インク組成物の全重量に対して、20〜95質量%の範囲で用いるのが好ましい。さらに好ましくは30〜90質量%の範囲である。
【0074】
[色材]
本発明のインク組成物には、色材として顔料が用いられる。
以下にインク組成物に使用する顔料の具体例を示す。
【0075】
顔料は、有機顔料および無機顔料のいずれでもよく、インクに用いられる顔料は、好ましくは黒色顔料と、シアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料を用いることができる。なお、上記に記した以外の色顔料や、無色または淡色の顔料、金属光沢顔料等を使用してもよい。また、本発明のために、新規に合成した顔料を用いてもよい。
【0076】
以下に、黒、シアン、マゼンタ、イエローにおいて、市販されている顔料を例示する。
黒色の顔料としては、Raven1060、(コロンビアン・カーボン社製)、MOGUL−L、(キャボット社製)、Color Black FW1(デグッサ社製)、MA100(三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0077】
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
イエローの顔料としては、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
また、本発明のインク組成物では、水に自己分散可能な顔料も使用できる。水分散可能な顔料としては、顔料表面にポリマーを吸着させた立体障害効果を利用したものと、静電気的反発力を利用したものとがあり、市販品としては、CAB−0−JET200、CAB−0−JET300(以上キャボット社製)、Microjet Black CW−1(オリエント化学社製)等が挙げられる。
【0081】
本発明のインク組成物に用いられる顔料は、インク組成物の重量に対して、0.1〜50質量%が好ましい。顔料の量が、0.1質量%以上であれば、好ましい画像濃度が得られ、50質量%以下であれば、顔料が好ましい分散性を示す。さらに好ましい範囲としては0.5〜30質量%の範囲である。
【0082】
なお、これら上記の色材の例は、本発明のインク組成物に対して好ましいものであるが、本発明のインク組成物に使用する色材は上記色材に特に限定されるものではない。
[添加剤]
本発明の組成物には、必要に応じて、種々の添加剤、助剤等を添加することができる。添加剤の一つとして、顔料を溶媒中で安定に分散させる分散安定剤がある。本発明の組成物は、ポリビニルエーテル構造を含むポリマーにより、顔料のような粒状固体を分散させる機能を有しているが、分散が不十分である場合には、他の分散安定剤を添加してもよい。
【0083】
他の分散安定剤として、親水性疎水性両部を持つ樹脂あるいは界面活性剤を使用することが可能である。親水性疎水性両部を持つ樹脂としては、例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーの共重合体が挙げられる。
【0084】
親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、または前記カルボン酸モノエステル類、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート等、疎水性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類等が挙げられる。共重合体は、ランダム、ブロック、およびグラフト共重合体等の様々な構成のものが使用できる。もちろん、親水性、疎水性モノマーとも、前記に示したものに限定されない。
【0085】
界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性活性剤を用いることができる。アニオン性活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等が挙げられる。非イオン性活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等が挙げられる。カチオン性活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。両イオン性活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が挙げられる。なお、界面活性剤についても同様、前記に限定されるものではない。
【0086】
さらに、本発明の組成物には、必要に応じて水性溶剤を添加することができる。特にインクジェット用インクに用いる場合、水性溶剤は、インクのノズル部分での乾燥、インクの固化を防止するために用いられ、単独または混合して用いることができる。水性溶剤は、上述のものがそのまま当てはまる。その含有量としては、インクの場合、インクの全重量の0.1〜60質量%、好ましくは1〜40質量%の範囲である。
【0087】
その他の添加剤としては、例えばインクとしての用途の場合、インクの安定化と記録装置中のインクの配管との安定性を得るためのpH調整剤、記録媒体へのインクの浸透を早め、見掛けの乾燥を早くする浸透剤、インク内での黴の発生を防止する防黴剤、インク中の金属イオンを封鎖し、ノズル部での金属の析出やインク中で不溶解性物の析出等を防止するキレート化剤、記録液の循環、移動、あるいは記録液製造時の泡の発生を防止する消泡剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤等も添加することができる。
【0088】
本発明のインク組成物を調製するには、上記構成成分を混合し、均一に溶解又は分散することにより調製することができる。たとえば、構成成分の複数を混合し、サンドミルやボールミル、ホモジナイザー、ナノマーザー等により破砕、分散しインク母液を作成し、これに溶媒や添加剤を加え物性を調整することにより調整することができる。また、調整したインク組成物中に過剰量のポリマー化合物や添加剤が含有される場合には、遠心分離や透析など公知の方法によって、それらを適宜除去し、インク組成物を再調整することができる。
【0089】
次に、本発明の液体組成物を用いる画像形成方法、液体付与方法および画像形成装置について説明する。
[画像形成方法および装置]
本発明の組成物は、各種印刷法、インクジェット法、電子写真法等の様々な画像形成方法および装置に使用でき、この装置を用いた画像形成方法により描画することができる。また、液体組成物を用いる場合、インクジェット法等では微細パターンを形成したり、薬物の投与を行ったりするための液体付与方法に使用することができる。
【0090】
本発明の画像形成方法は、本発明の組成物により優れた画像形成を行う方法である。本発明の画像形成方法は、好ましくは、インク吐出部から本発明のインク組成物を吐出して被記録媒体上に付与することで記録を行う画像形成方法である。画像形成はインクに熱エネルギーを作用させてインクを吐出するインクジェット法を用いる方法が好ましく用いられる。
【0091】
さらに、本発明は、多価カチオンによる刺激と併用することで、被記録媒体上でのにじみやフェザリングを抑制させることも可能である。本発明のブロックポリマー化合物は、前途のように多環芳香族からなる有機酸を有する繰り返し単位を含有することを特徴とする。多環芳香族からなる有機酸は、その強い疎水性のために、多価カチオンと相互作用を起こし易く、多価カチオンを介して凝集を引き起こし易い。このため、被記録媒体上に多価カチオンが存在した場合、前記インク組成物は素早く凝集を引き起こし、被記録媒体上でのにじみやフェザリングが改善されたインク組成物、および液体付与方法、液体付与装置をも提供することも可能である。多価カチオンとしては、好ましくは、金属カチオンとして、Ca、Cu、Mg、Ni、Zn、Fe、Co等の2価カチオン、Al、Nd、Y、Fe、La等の3価カチオンが挙げられ、非金属カチオンとしてジアンモニウムカチオン、トリアンモニウムカチオン等が挙げられるが、これらに限定されない。また、前記多価カチオンの被記録媒体への付与方法としては、予め多価カチオンを塗布した被記録媒体を用いても良く、またはインクジェットヘッドにより画像を形成する領域全面に渡って多価カチオンを打ち込む方法を用いても良い。
【0092】
また、該刺激を付与する方法については、様々な方法が適用できる。好ましい一形態として、該刺激を多価カチオンとした場合の刺激の付与方法について説明する。例えば、特開昭64−63185号公報に記載されているように、インクジェットヘッドにより画像を形成する領域全面に渡って、多価カチオンを打ち込むこともできる。また、予め被記録媒体に多価カチオンを施しておくことも好ましい。
【0093】
本発明のインクジェット用インク組成物を用いるインクジェットプリンタとしては、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行うバブルジェット(登録商標)方式等、様々なインクジェット記録装置に適用できる。
【0094】
以下このインクジェット記録装置について図1を参照して概略を説明する。但し、図1はあくまでも構成の一例であり、本願発明を限定するものではない。
図1は、インクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【0095】
図1は、ヘッドを移動させて被記録媒体に記録をする場合を示した。図1において、製造装置の全体動作を制御するCPU50には、ヘッド70をXY方向に駆動するためのX方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58がXモータ駆動回路52およびYモータ駆動回路54を介して接続されている。CPUの指示に従い、Xモータ駆動回路52およびYモータ駆動回路54を経て、このX方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58が駆動され、ヘッド70の被記録媒体に対する位置が決定される。
【0096】
図1に示されるように、ヘッド70には、X方向駆動モータ56およびY方向駆動モータ58に加え、ヘッド駆動回路60が接続されており、CPU50がヘッド駆動回路60を制御し、ヘッド70の駆動、即ちインクジェット用インクの吐出等を行う。さらに、CPU50には、ヘッドの位置を検出するためのXエンコーダ62およびYエンコーダ64が接続されており、ヘッド70の位置情報が入力される。また、プログラムメモリ66内に制御プログラムも入力される。CPU50は、この制御プログラムとXエンコーダ62およびYエンコーダ64の位置情報に基づいて、ヘッド70を移動させ、被記録媒体上の所望の位置にヘッドを配置してインクジェット用インクを吐出する。このようにして被記録媒体上に所望の描画を行うことができる。また、複数のインクジェット用インクを装填可能な画像記録装置の場合、各インクジェット用インクに対して上記のような操作を所定回数行うことにより、被記録媒体上に所望の描画を行うことができる。
【0097】
また、インクジェット用インクを吐出した後、必要に応じて、ヘッド70を、ヘッドに付着した余剰のインクを除去するための除去手段(図示せず)の配置された位置に移動し、ヘッド70をワイピング等して清浄化することも可能である。清浄化の具体的方法は、従来の方法をそのまま使用することができる。
【0098】
描画が終了したら、図示しない被記録媒体の搬送機構により、描画済みの被記録媒体を新たな被記録媒体に置き換える。
なお、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態を修正または変形することが可能である。例えば、上記説明ではヘッド70をXY軸方向に移動させる例を示したが、ヘッド70は、X軸方向(またはY軸方向)のみに移動するようにし、被記録媒体をY軸方向(またはX軸方向)に移動させ、これらを連動させながら描画を行うものであってもよい。
【0099】
本発明は、インクジェット用インクの吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、上記熱エネルギーによりインクジェット用インクを吐出させるヘッドが優れた効果をもたらす。かかる方式によれば描画の高精細化が達成できる。本発明のインクジェット用インク組成物を使用することにより、更に優れた描画を行うことができる。
【0100】
上記の熱エネルギーを発生する手段を備えた装置の代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書,同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型,コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体が保持され、流路に対応して配置されている電気熱変換体に、吐出情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長および収縮により吐出用開口を介して液体を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書,同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた吐出を行うことができる。
【0101】
ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合せ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書,米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても本発明の効果は有効である。すなわち、ヘッドの形態がどのようなものであっても、本発明によればインクジェット用インクの吐出を確実に効率よく行うことができる。
【0102】
さらに、本発明の画像形成装置で被記録媒体の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプのヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのようなヘッドとしては、複数のヘッドの組み合せによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個のヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0103】
加えて、シリアルタイプのものでも、装置本体に固定されたヘッド、または、装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプのヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0104】
さらに、本発明の装置は、液滴除去手段を更に有していてもよい。このような手段を付与した場合、更に優れた吐出効果を実現できる。
また、本発明の装置の構成として、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定化できるので好ましい。これらを具体的に挙げれば、ヘッドに対してのキャッピング手段、加圧または吸引手段、電気熱変換体またはこれとは別の加熱素子、または、これらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手段、インクの吐出とは別の、吐出を行うための予備吐出手段などを挙げることができる。
【0105】
本発明に対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
本発明の装置では、インクジェット用インクの吐出ヘッドの各吐出口から吐出されるインクの量が、0.1ピコリットルから100ピコリットルの範囲であることが好ましい。
【0106】
また、本発明のインク組成物は、中間転写体にインクを印字した後、紙等の記録媒体に転写する記録方式等を用いた間接記録装置にも用いることができる。また、直接記録方式による中間転写体を利用した装置にも適用することができる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
合成例1
<ブロックポリマー1の合成>
4−メチルベンゼンオキシエチルビニルエーテル(TolOVE)[Aブロック]と、メトキシエトキシエチルビニルエーテル(MOEOVE)[Bブロック]と、4−{(ビニルオキシ)エトキシ}安息香酸エチル(VEEtPhCOOEt)[Cブロック]からなるABCトリブロックポリマーの合成
【0108】
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250度に加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、4−メチルベンゼンオキシエチルビニルエーテル(TolOVE)5.0mmmol(ミリモル)、酢酸エチル16mmol、1−イソブトキシエチルアセテート0.05mmol、及びトルエン11mlを加え、反応系を冷却した。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)0.2mmol加え重合を開始した。分子量を時分割にしたゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、Aブロックの重合の完了を確認した。この段階でのMn=15400、Mw/Mn=1.14であった。
【0109】
次いで、Bブロックのモノマーであるメトキシエトキシエチルビニルエーテル(MOEOVE)を5.0mmol添加し、重合の完了を確認した後(この段階でのMn=28800、Mw/Mn=1.15)、Cブロックのモノマーである4−{(ビニルオキシ)エトキシ}安息香酸エチル(VEEtPhCOOEt)を1.0mmol添加して、重合を続行した。GPCを用いるモニタリングによって、Cブロックの重合が完了していることを確認し、重合反応を停止した。重合反応の停止は、系内に0.3質量%のアンモニア/メタノール水溶液を加えて行った。反応混合物溶液をジクロロメタンにて希釈し、0.6M塩酸で3回、次いで蒸留水で3回洗浄した。得られた有機相をエバポレーターで濃縮・乾固し、真空乾燥させたものより目的物であるブロックポリマーを短離した。このブロックポリマーの同定をNMRおよびGPCを用いて行ったところ、Mn=33200、Mw/Mn=1.17、重合度比A:B:C=100:100:20であった。
【0110】
次いで、得られたブロックポリマーを5規定水酸化ナトリウム水溶液とともに40時間室温(23℃)で攪拌し、Cブロックのエステルを加水分解した。5規定塩酸で中和し、塩化メチレンで抽出、乾燥した後、溶媒を留去し、Cブロックの側鎖がフリーのカルボン酸ポリマーであるブロックポリマーを得た。さらに、等量の1規定水酸化カリウムで中和し、水を除去することでCブロックの側鎖がカルボン酸カリウム塩であるブロックポリマー1を得た。加水分解率はNMRを用いて確認し、すべてのカルボン酸エステルが加水分解されていることを確認した。
【0111】
合成例2
<ブロックポリマー2の合成>
合成例1と同様の手法によりABCトリブロックポリマー前駆体を合成して単離した。ただし、合成例2ではBブロックのモノマーであるMOEOVEの添加量を10.0mmolとした。このブロックポリマーの同定をNMRおよびGPCを用いて行ったところ、Mn=46600、Mw/Mn=1.15、重合度比A:B:C=100:200:20であった。
【0112】
次いで、得られたブロックポリマーを5規定水酸化ナトリウム水溶液とともに40時間室温(23℃)で攪拌し、Cブロックのエステルを加水分解した。5規定塩酸で中和し、塩化メチレンで抽出、乾燥した後、溶媒を留去し、Cブロックの側鎖がフリーのカルボン酸ポリマーであるブロックポリマーを得た。さらに、等量の1規定水酸化カリウムで中和し、水を除去することでCブロックの側鎖がカルボン酸カリウム塩であるブロックポリマー1を得た。加水分解率はNMRを用いて確認し、すべてのカルボン酸エステルが加水分解されていることを確認した。
【0113】
合成例3
<ブロックポリマー3の合成>
合成例1と同様の手法によりABCトリブロックポリマー前駆体を合成して単離した。ただし、合成例3ではBブロックのモノマーであるMOEOVEの添加量を2.5mmolとした。このブロックポリマーの同定をNMRおよびGPCを用いて行ったところ、Mn=26500、Mw/Mn=1.18、重合度比A:B:C=100:50:20であった。
【0114】
次いで、得られたブロックポリマーを5規定水酸化ナトリウム水溶液とともに40時間室温(23℃)で攪拌し、Cブロックのエステルを加水分解した。5規定塩酸で中和し、塩化メチレンで抽出、乾燥した後、溶媒を留去し、Cブロックの側鎖がフリーのカルボン酸ポリマーであるブロックポリマーを得た。さらに、等量の1規定水酸化カリウムで中和し、水を除去することでCブロックの側鎖がカルボン酸カリウム塩であるブロックポリマー1を得た。加水分解率はNMRを用いて確認し、すべてのカルボン酸エステルが加水分解されていることを確認した。
【0115】
合成例4
<ブロックポリマー4の合成>
合成例1と同様の手法によりABCトリブロックポリマー前駆体を合成して単離した。ただし、合成例4ではBブロックのモノマーであるMOEOVEの添加量を0.15mmol、Cブロックのモノマーである4−{(ビニルオキシ)エトキシ}安息香酸エチル(VEEtPhCOOEt)の添加量を0.15mmolとした。このブロックポリマーの同定をNMRおよびGPCを用いて行ったところ、Mn=16500、Mw/Mn=1.19、重合度比A:B:C=100:3:3であった。
【0116】
次いで、得られたブロックポリマーを5規定水酸化ナトリウム水溶液とともに40時間室温(23℃)で攪拌し、Cブロックのエステルを加水分解した。5規定塩酸で中和し、塩化メチレンで抽出、乾燥した後、溶媒を留去し、Cブロックの側鎖がフリーのカルボン酸ポリマーであるブロックポリマーを得た。さらに、等量の1規定水酸化カリウムで中和し、水を除去することでCブロックの側鎖がカルボン酸カリウム塩であるブロックポリマー1を得た。加水分解率はNMRを用いて確認し、すべてのカルボン酸エステルが加水分解されていることを確認した。
【0117】
合成例5
<ブロックポリマー5の合成>
合成例1と同様の手法によりABジブロックポリマー前駆体を合成して単離した。ただし、合成例5ではCブロックのモノマーであるVEEtPhCOOEtを添加せず重合を行った。このブロックポリマーの同定をNMRおよびGPCを用いて行ったところ、Mn=28800、Mw/Mn=1.15、重合度比A:B=100:200であった。
【0118】
実施例1
<インク組成物1の調整とキャラクタリゼーション>
1−1 インク組成物1の調整
合成例1のブロックポリマー化合物1を15質量部と、カーボンブラック(モナーク880、キャボット社製)12質量部をジメチルホルムアミド200質量部に溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換した。さらに超音波ホモジナイザーに10分間かけて分散した後、透析膜(SPECTRUM Laboratories社製、molecular porous membrane tubing(MWCO:3500))でジメチルホルムアミドを除去した組成物1を得た。組成物1に含有されるカーボンブラックはポリマー化合物により内包されていることを、X線光電子分光分析装置による表面組成分析により確認した。
【0119】
組成物1とグリセリン、エチレングリコール、イオン交換水を用いて、ブロックポリマー化合物1が5質量部、カーボンブラックが4質量部、グリセリンが6.3質量部、エチレングリコールが12.6質量部、イオン交換水が60.1質量部であるインク組成物1を得た。
【0120】
1−2 インク組成物1のキャラクタリゼーション
1−2−1 パラメータN,1/λ
組成物1の0.1gを、0.005M、0.01M、0.02M、0.04M、0.06M、0.08M、0.10M、0.15M、0.2M、0.3Mに調整した塩化カリウム水溶液20ml中にそれぞれ分散させ、塩化カリウム溶液と同濃度の塩酸、あるいは水酸化カリウムを用いてpH6.5に調整した。以上のように調整した各分散溶液をZetaPALS(Brookhaven社)を用いて測定し、組成物1に含有される顔料を内包したポリマー化合物の電気泳動移動度μを水溶液中の塩化カリウム濃度nに対してプロットした。その結果を図2に示す。
【0121】
(1)式と最も良く一致するNと1/λの組み合わせを、公知の計算ソフトであるGnyuプロットを利用して、公知の計算方法であるカーブフィッティング法によって算出した。ただし、z,e,ηの値は、z=1、e=1.602×10-19、η=8.9×10-4である。
この結果、N=0.011M、1/λ=2.5nmであった。
【0122】
1−2−2 顔料を内包しないポリマー化合物の濃度
組成物1を10000Gで10時間遠心処理を行うことで、顔料と顔料を内包するポリマー化合物を沈降させ、顔料を内包しないポリマー化合物を含有する上澄み液を採取した。採取した上澄み液を重量法によって測定し、この値からインク組成物1中に含まれる顔料を内包しないポリマー化合物を算出したところ4.2質量%であった。
【0123】
実施例2
<インク組成物2の調整とキャラクタリゼーション>
1−1 インク組成物2の調整
合成例1のブロックポリマー化合物1を15質量部と、カーボンブラック(モナーク880、キャボット社製)12質量部をジメチルホルムアミド200質量部に溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換した。さらに超音波ホモジナイザーに10分間かけて分散した後、透析膜(SPECTRUM Laboratories社製、molecular porous membrane tubing(MWCO:3500))でジメチルホルムアミドを除去した組成物を得た。さらにこの組成物を2000Gで15時間遠心分離を行うことで緩やかに沈降させ、上澄み液を130質量部取り除いた後、沈降物を残存液に再分散させて組成物2を得た。
【0124】
組成物2とグリセリン、エチレングリコール、イオン交換水を用いて、ブロックポリマー化合物1が4質量部、カーボンブラックが4質量部、グリセリンが6.3質量部、エチレングリコールが12.6質量部、イオン交換水が60.1質量部であるインク組成物2を得た。
【0125】
2−2 インク組成物2のキャラクタリゼーション
2−2−1 パラメータN,1/λ
組成物2に含有される顔料を内包したポリマー化合物を実施例1−2−1の方法にしたがって測定したところ、N=0.013M、1/λ=2.4nmであった。
【0126】
2−2−2 顔料を内包しないポリマー化合物の濃度
実施例1−2−2にしたがって、組成物2に含有される顔料を内包しないポリマー化合物を測定し、この値からインク組成物2中に含まれる顔料を内包しないポリマー化合物を算出したところ2.3質量%であった。
【0127】
実施例3
<インク組成物3の調整とキャラクタリゼーション>
3−1 インク組成物3の調整
合成例2のブロックポリマー化合物2を10質量部と、カーボンブラック(モナーク880、キャボット社製)10質量部をジメチルホルムアミド200質量部に溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換した。さらに超音波ホモジナイザーに10分間かけて分散した後、透析膜(SPECTRUM Laboratories社製、molecular porous membrane tubing(MWCO:3500))でジメチルホルムアミドを除去して組成物3を得た。
【0128】
組成物3とグリセリン、エチレングリコール、イオン交換水を用いてブロックポリマー化合物2が4質量部、カーボンブラックが4質量部、グリセリンが6.3質量部、エチレングリコールが12.6質量部、イオン交換水が60.1質量部であるインク組成物3を得た。
【0129】
3−2 インク組成物3のキャラクタリゼーション
3−2−1 パラメータN,1/λ
組成物3に含有される顔料を内包したポリマー化合物を実施例1−2−1の方法にしたがって測定したところ、N=0.019M、1/λ=5.4nmであった。
【0130】
3−2−2 顔料を内包しないポリマー化合物の濃度
実施例1−2−2にしたがって、組成物3に含有される顔料を内包しないポリマー化合物を測定し、この値からインク組成物3中に含まれる顔料を内包しないポリマー化合物を算出したところ2.5質量%であった。
【0131】
実施例4
<インク組成物4の調整とキャラクタリゼーション>
4−1 インク組成物4の調整
合成例3のブロックポリマー化合物3を10質量部と、カーボンブラック(モナーク880、キャボット社製)10質量部をジメチルホルムアミド200質量部に溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換した。さらに超音波ホモジナイザーに10分間かけて分散した後、透析膜(SPECTRUM Laboratories社製、molecular porous membrane tubing(MWCO:3500))でジメチルホルムアミドを除去して組成物4を得た。
【0132】
組成物4とグリセリン、エチレングリコール、イオン交換水を用いてブロックポリマー化合物3が4質量部、カーボンブラックが4質量部、グリセリンが6.3質量部、エチレングリコールが12.6質量部、イオン交換水が60.1質量部であるインク組成物4を得た。
【0133】
4−2 インク組成物4のキャラクタリゼーション
4−2−1 パラメータN,1/λ
組成物4に含有される顔料を内包したポリマーを実施例1−2−1の方法にしたがって測定したところ、N=0.020M、1/λ=2.2nmであった。
【0134】
4−2−2 顔料を内包しないポリマー化合物の濃度
実施例1−2−2にしたがって、組成物4に含有される顔料を内包しないポリマー化合物を測定し、この値からインク組成物4中に含まれる顔料を内包しないポリマー化合物を算出したところ2.3質量%であった。
【0135】
実施例5
<インク組成物5の調整とキャラクタリゼーション>
5−1 インク組成物5の調整
合成例4のブロックポリマー化合物4を10質量部と、カーボンブラック(モナーク880、キャボット社製)10質量部をジメチルホルムアミド200質量部に溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換した。さらに超音波ホモジナイザーに10分間かけて分散した後、透析膜(SPECTRUM Laboratories社製、molecular porous membrane tubing(MWCO:3500))でジメチルホルムアミドを除去して組成物5を得た。
【0136】
組成物5とグリセリン、エチレングリコール、イオン交換水を用いてブロックポリマー化合物4が4質量部、カーボンブラックが4質量部、グリセリンが6.3質量部、エチレングリコールが12.6質量部、イオン交換水が60.1質量部であるインク組成物5を得た。
【0137】
5−2 インク組成物5のキャラクタリゼーション
5−2−1 パラメータN,1/λ
組成物5に含有される顔料を内包したポリマー化合物を実施例1−2−1の方法にしたがって測定したところ、N=0.023M、1/λ=0.42nmであった。
【0138】
5−2−2 顔料を内包しないポリマー化合物の濃度
実施例1−2−2にしたがって、組成物5に含有される顔料を内包しないポリマー化合物を測定し、この値からインク組成物1中に含まれる顔料を内包しないポリマー化合物を算出したところ2.2質量%であった。
【0139】
実施例6
<インク組成物6の調整とキャラクタリゼーション>
6−1 インク組成物6の調整
合成例5のブロックポリマー化合物5を10質量部と、カーボンブラック(モナーク880、キャボット社製)10質量部をジメチルホルムアミド200質量部に溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換した。さらに超音波ホモジナイザーに10分間かけて分散した後、透析膜(SPECTRUM Laboratories社製、molecular porous membrane tubing(MWCO:3500))でジメチルホルムアミドを除去して組成物6を得た。
【0140】
組成物6とグリセリン、エチレングリコール、イオン交換水を用いてブロックポリマー化合物5が4質量部、カーボンブラックが4質量部、グリセリンが6.3質量部、エチレングリコールが12.6質量部、イオン交換水が60.1質量部であるインク組成物6を得た。
【0141】
6−2 インク組成物6のキャラクタリゼーション
6−2−1 パラメータN,1/λ
組成物6に含有される顔料を内包したポリマー化合物を実施例1−2−1の方法にしたがって測定したところ、N=0.001M、1/λ=2.6nmであった。
【0142】
6−2−2 顔料を内包しないポリマー化合物の濃度
実施例1−2−2にしたがって、組成物6に含有される顔料を内包しないポリマー化合物を測定し、この値からインク組成物6中に含まれる顔料を内包しないポリマー化合物を算出したところ2.5質量%であった。
【0143】
実施例7
<インク組成物7の調整とキャラクタリゼーション>
7−1 インク組成物7の調整
合成例1のブロックポリマー化合物1を10質量部と、カーボンブラック(モナーク880、キャボット社製)12質量部をジメチルホルムアミド200質量部に溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換した。さらに超音波ホモジナイザーに10分間かけて分散した後、透析膜(SPECTRUM Laboratories社製、molecular porous membrane tubing(MWCO:3500))でジメチルホルムアミドを除去した組成物を得た。さらにこの組成物を10000Gで10時間遠心分離を行うことで緩やかに沈降させ、上澄み液を400質量部取り除いた後、蒸留水を400質量部加えて沈降物を再分散させて組成物7を得た。
【0144】
組成物7とグリセリン、エチレングリコール、イオン交換水を用いてブロックポリマー化合物1が2質量部、カーボンブラックが4質量部、グリセリンが6.3質量部、エチレングリコールが12.6質量部、イオン交換水が60.1質量部であるインク組成物7を得た。
【0145】
7−2 インク組成物のキャラクタリゼーション
7−2−1 パラメータN,1/λ
組成物7に含有される顔料を内包したポリマー化合物を実施例1−2−1の方法にしたがって測定したところ、N=0.020M、1/λ=2.0nmであった。
【0146】
7−2−2 顔料を内包しないポリマー化合物の濃度
実施例1−2−2にしたがって、組成物7に含有される顔料を内包しないポリマー化合物を測定したところ、0.07質量%であった。そこで、Matec Applied SciencesのCHDF−2000を用いて液体組成物7を測定したところ、液体組成物7中には顔料を内包しないポリマー化合物によって形成されるミセルは、検出限界以下のため観察されなかった。このことからインク組成物7中に含有される顔料を内包しないポリマー化合物は、少なくとも0.1質量%以下であることが推測された。
【0147】
比較例1
<インク組成物8の調整とキャラクタリゼーション>
特開2004−277448号公報の(ブラック分散体1の製造)に記載されている方法に従って、ポリマー化合物とカーボンブラック分散体を得た。
【0148】
具体的な実験は次の手順で行った。
着色剤としてカーボンブラックであるモナーク880(商品名、Cabot Corporation製)を用いた。攪拌機、温度計、還流管及び滴下ロートを備えた反応容器を窒素置換した後、スチレン30重量部、α−メチルスチレン10重量部、ブチルメタクリレート15重量部、ラウリルメタクリレート10重量部、アクリル酸2重量部、t―ドデシルメルカプタン0.3重量部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン150重量部、アクリル酸15重量部、ブチルメタクリレート50重量部、t−ドデシルメルカプタン1重量部、メチルエチルケトン20重量部及びアゾビスイソブチロニトリル3重量部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して50重量%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0149】
上記分散ポリマー溶液40重量部とカーボンブラックであるモナーク880(商品名、Cabot Corporation製)30重量部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100重量部、メチルエチルケトン30重量部を混合し、ホモジナイザーで30分攪拌した。その後、イオン交換水を300重量部添加して、更に1時間攪拌した。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで中和してpH9に調整してから0.3μmのメンブレンフィルターで濾過して固形分(分散ポリマーとカーボンブラック)が20重量%のブラック分散体1とした。
【0150】
また、(組成物1:ブラックインク1<105>)に記載されている方法に従い、比較用のインク組成物8を調整した。
具体的な実験は次の手順で行った。
【0151】
ブラック分散体1(固形分として)を10.0質量%、エマポリーDH−88(固形分として)を1.0質量%、オルフィンSTGを0.2質量%、1,2−ペンタンジオールを2.0質量%、グリセリンを8.0質量%、テトラエチレングリコールを2.0質量%、2−ピロリドンを2.0質量%、さらに超純水を残存分として比較用のインク組成物8とした。
【0152】
前記カーボンブラック分散体を実施例1−2−1の方法にしたがって測定したところ、N=0.14M、1/λ=0.3nmであった。
また、前述のポリマー化合物とカーボンブラック分散体を400質量部の蒸留水中に分散して組成物を調整し、実施例7−2−2にしたがって組成物中に含有されるポリマー化合物濃度を測定したところ、詳細は明らかではないが、組成物中にフリーのポリマー化合物は検出されなかった。つまり、インク組成物8中に含有される顔料を内包しないポリマー化合物は少なくとも0.1質量%以下であることが推測された。
【0153】
(評価)
実施例1〜実施例7および比較例1にて調整したインク組成物を、以下の項目において評価した。その結果を表1に示す。
【0154】
(1)分散安定性
インク組成物を、25℃、静置の条件下で1ヶ月保存した場合の保存安定性を目視により確認した。
○:良好な保存安定性を示す。
×:凝集沈殿が生じた。
【0155】
(2)吐出安定性
インク組成物をインクジェットプリンタ(商品名 BJF800、キヤノン株式会社製)に搭載し、普通紙(商品名 オフィスプランナー マルチグレード、キヤノン販売株式会社製)に文字画像のインクジェット記録を行い、吐出安定性を評価した。吐出安定性は、英数文字を連続で100万字印刷し、得られた印字物について目視にて観察することによって印字状態を確認した。
【0156】
A:印字のカスレや不吐出などがなく最後まできれいに印字できた。
b:印字のカスレや不吐出などの問題が若干生じた。
C:印字のカスレや不吐出などが多く発生し、最後まで印字ができなかった。
【0157】
(3)印字濃度の評価
インク組成物を、吐出安定性の評価で用いたインクジェットプリンターおよび普通紙を用いて、50mm×50mmのベタ画像を吐出して画像を形成した後、マクベス濃度計RD−19を用いて黒白濃度の読値の比較を行った。評価は、実施例1におけるインク組成物1を基準(B)とした結果を示す。
【0158】
AA:印字濃度が明らかに良好である。
A:印字濃度が良好である。
B:印字濃度が基準と同程度である。
C:印字濃度が不十分である。
【0159】
【表1】

【0160】
実施例1〜実施例4および実施例7にて調整したインク組成物を、インクジェットプリンタ(商品名 BJF800、キヤノン株式会社製)を用いて、酢酸マグネシウムを普通紙(PB PAPER、キヤノン製)に塗布した特殊紙に50mm×50mmのベタ画像を吐出することによって画像を得た後、マクベス濃度計RD−19を用いて黒白濃度の読値の比較を行った。その結果を表2に示す。
【0161】
なお、酢酸マグネシウムを塗布した特殊紙は、2.0質量%の酢酸マグネシウム水溶液をインクジェットプリンター(商品名 BJF800、キヤノン社製)の印刷ヘッドに充填し、全面ベタ画像を吐出することによって得た。
【0162】
評価基準は、実施例1におけるインク組成物1を基準(B)にして、印字濃度が明らかに良好である場合をAA、印字濃度が良好である場合をA、印字濃度が同程度である場合をB、印字濃度が不十分である場合をCとした。
【0163】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明のインク組成物は、分散安定性や吐出安定性を保持したまま、紙に対して色にじみや濃度ムラが少なく、かつ印字濃度に極めて優れているので、インクジェットによる画像形成方法及び画像形成装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】インクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【図2】μのイオン濃度依存性プロットとカーブフィッティングにより得られる近似曲線を示す図である。
【符号の説明】
【0166】
20 インクジェット装置
50 CPU
52 Xモータ駆動回路
54 Yモータ駆動回路
56 X方向駆動モータ
58 Y方向駆動モータ
60 ヘッド駆動回路
62 Xエンコーダ
64 Yエンコーダ
66 プログラムメモリ
70 ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と溶媒を含有する液体組成物であって、前記液体組成物をpH5から8の範囲の電解質水溶液に分散した溶液中において、顔料の表面電荷層内の解離基の平均密度Nが0.005M(mol/L)以上で、かつ表面電荷層の運動性を示すパラメータ1/λが0.5nm以上5.00nm以下であることを特徴とする液体組成物。
【請求項2】
前記解離基の平均密度Nと、前記運動性を示すパラメータ1/λとは、以下の数式(1)を満足する請求項1に記載の液体組成物。
【数1】

(ただし、μは電気泳動移動度、er は媒質の比誘電率、e0 は真空中の誘電率、ηは粘度、φ0 は表面電位、φDON はDonnan電位、κm はDebye−Huckelのパラメータ、1/λは表面電荷層の運動性を示すパラメータ、zは表面電荷層内の解離基の価数、nはイオン濃度、eは単位電荷、Nは表面電荷層内の解離基の平均密度を表す。)
【請求項3】
前記液体組成物が顔料、溶媒およびポリマー化合物を含有し、かつ前記顔料がポリマー化合物によって内包されていることを特徴とする請求項1記載の液体組成物。
【請求項4】
前記ポリマー化合物が両親媒性ブロックポリマー化合物であることを特徴とする請求項3に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記ポリマー化合物がポリアルケニルエーテル繰り返し単位構造を有することを特徴とする請求項3または4に記載の液体組成物。
【請求項6】
顔料、溶媒およびポリマー化合物を含有する液体組成物であって、前記液体組成物中に含有される、顔料を内包していないポリマー化合物が顔料及び顔料を内包しているポリマー化合物に対して0.1質量%以下であることを特徴とする液体組成物。
【請求項7】
前記ポリマー化合物が両親媒性ブロックポリマー化合物であることを特徴とする請求項6に記載の液体組成物。
【請求項8】
前記ポリマー化合物の臨界ミセル濃度が0.1g/L以下であることを特徴とする請求項6または7に記載の液体組成物。
【請求項9】
顔料、溶媒およびポリマー化合物を含有する液体組成物であって、前記液体組成物をpH5から8の範囲の電解質水溶液に分散した溶液中において、顔料の表面電荷層内の解離基の平均密度Nが0.005M以上で、表面電荷層の運動性を示すパラメータ1/λが0.5nm以上5.00nm以下であり、かつ前記液体組成物中に含有される、顔料を内包していないポリマー化合物が顔料及び顔料を内包しているポリマー化合物に対して0.1質量%以下であることを特徴とする液体組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の液体組成物からなるインク組成物。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の液体組成物を媒体に付与することにより、画像を記録する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれかに記載の液体組成物を媒体に付与することにより、画像を記録させるための手段を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−342307(P2006−342307A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171428(P2005−171428)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】