説明

液冷ヒートシンク

【課題】 多数の流路を持つコア内部に流入する冷却液の流量を、均一に配分することができるヒートシンクの提供。
【解決手段】 縦部材5 と、隣合う縦部材5間を連結する横部材6とが、一体的に形成される複数の第1プレート2と、第2プレート3を有し、それらが厚み方向へ積層されてなるコア4が介装されるとともに、そのコア4の各縦部材5の長手方向両側に、一対の入口タンク部13と、出口タンク部14と、導入部15と、導出部16が一体的に設けられるヒートシンクにおいて、縦部材5の長手方向の少なくとも一方に冷却液17の流通を阻害する流通阻害ガイド8と、その流通を促進する促進傾斜部9が一体的に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の被冷却体を冷却するための液冷ヒートシンクに関するものであり、特に、ヒートシンク内部に設けられるコアに特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を冷却するためのヒートシンクとして、図19もしくは図20に示すようなものが知られている。
このヒートシンク1は、矩形ケーシング12の内部にコア4が設けられるものである。
このコア4は、平坦な金属板のプレス成形により形成される一対の第1プレートと、第2プレートからなる積層体により構成されている。
夫々のプレートには、互いに離間して配置される複数の細長い縦部材5と、その隣合う縦部材5間を連結する図示しない横部材(図が煩雑になるため、省略)とが、一体的に形成されている。両プレートの各縦部材5は、それぞれが整合するように厚み方向へ積層されて、コア4が形成される。ケーシング12の内部は偏平に形成されており、そこにコア4が介装される。このケーシング12内に冷却液17が流入し、コア4の各縦部材5間を流通する。この時、横部材はお互いに重なり合わないように位置ずれしているため、縦部材5間を流通する冷却液は、横部材の存在により、上下に蛇行しながら流通することになる。
【0003】
ケーシング12内部には、コア4の流通方向両端部に一対の入口タンク部13と出口タンク部14、その両タンク部13、14に通じて、外部と連通する導入部15と導出部16とが一体に設けられている。そして、導入部15と導出部16には図示しないパイプが挿通される。このようなケーシング12と、コア4が高温の炉内で一体的にろう付け固定され、ヒートシンク1が完成する。
ケーシング12外面には図示しない被冷却体(パワートランジスタ等の電子部品)が設置され、ケーシング12内部に冷却液17が流通され、被冷却体から生じる熱を冷却液17との間で熱交換するものである。
冷却液17はパイプを通じて導入部15から流入し、入口タンク部13を介してコア4の各流路に流通する。そして、コア4の各流路出口から出口タンク部14を介して導出部16に至り、パイプから排出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は実験によって、この種のヒートシンクは、縦部材5間に形成される流路の出口端から導出部16に近い流路と、導出部16から離れた流路とで、流量にバラつきができ、ヒートシンクの被冷却体を十分に冷却することができないことを確認した。
図19および図20には、縦部材5の各流路の出口端と、導出部16との距離に対する流量の関係を示している。これらの図において、縦部材5間の各流路の出口端から導出部16までの位置が、短い場所から長い場所に行くにつれて、流量が減少していることがわかる。
【0005】
入口タンク部13から各縦部材5の出口端までは、液圧は一定の状態で保たれている。その出口端から導出部16までの流路長が短い場合、冷却液17は液圧が保たれた状態で導出部16まで流通することができるため、流量が減少することはない。しかしながら、流路長が長い場合、冷却液17の液圧は、その長さに比例して液圧が低下し、流量が減少していく。即ち、流路長の長い場所では圧力損失が生じ、流通抵抗が大きくなるため、流量にバラつきが生じると考えられる。
そこで、本発明はこの欠点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、それぞれ平坦な金属板のプレス成形により、互いに離間した複数の細長い縦部材(5) と、隣合う縦部材(5) 間を連結する横部材(6) とが、一体的に形成される複数の第1プレート(2) と、第2プレート(3) と、
前記横部材(6) は、第1プレート(2) と、第2プレート(3) の横部材(6) どうしが、位置ずれするように形成され、両プレート(1)(2) が厚み方向へ積層されてなるコア(4)と、
前記コア(4) の各縦部材(5) の長手方向両側に配置された一対の入口タンク部(13) と、出口タンク部(14) と、を具備し、
前記入口タンク部(13) の長手方向一方端部に外部と連通する冷却液(17) の導入部(15) が設けられるとともに、出口タンク部(14) の長手方向一方端部に外部と連通する導出部(16) が設けられ、
前記導入部(15) から冷却液(17) が入口タンク部(13) を介してコア(4) の各縦部材(5) 間の流路を流通するとともに、前記横部材(6) の位置で各プレート(2)(3) の厚み方向に蛇行するように流通し、前記出口タンク部(14) を介して、導出部(16) から排出され、
前記冷却液(17) と被冷却体(18)との間で熱交換する液冷ヒートシンクにおいて、
前記各縦部材(5) の長手方向の少なくても一方端部に、冷却液(17) の流通を阻害する流通阻害ガイド(8) が一体的に形成され、
隣り合う各縦部材(5) 間の流路で、その出口端から出口タンク部(14) を介して、導出部(16) までの流路長の長さが、短い位置にある縦部材(5) の先端部に前記流通阻害ガイド(8) が設けられたことを特徴とする液冷ヒートシンクである。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の液冷ヒートシンクにおいて、
前記流通阻害ガイド(8) が、各縦部材(5) に一体的に傾斜して形成される阻害傾斜部(8a) からなり、
前記入口タンク部(13) 側では、その先端部の向きを前記導入部(15) 側と反対方向に傾け、
前記出口タンク部(14) 側では、前記導出部(16) 側と反対方向に傾けたことを特徴とする液冷ヒートシンクである。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の液冷ヒートシンクにおいて、
前記流通阻害ガイド(8) が、コア(4) の幅方向端部の縦部材(5) に一体的に設けられたL字状部(8b) からなり、
前記入口タンク部(13) 側では、L字状部(8b) の先端部が前記導入部(15) 側と反対方向に向けられ、
前記出口タンク部(14) 側では、前記導出部(16) 側と反対方向に向けられたことを特徴とする液冷ヒートシンクである。
【0009】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の液冷ヒートシンクにおいて、
隣り合う各縦部材(5) 間の流路で、その出口端から出口タンク部(14) を介して、導出部(16) までの流路長が、長い位置にある各縦部材(5) に、冷却液(17) の流通促進用の促進傾斜部(9) が一体的に設けられ、
前記流通促進用の促進傾斜部(9) は、前記入口タンク部(13) 側では、その先端部の向きを前記導入部(15) 側に傾け、
前記出口タンク部(14) 側では、導出部(16) 側に傾けたことを特徴とする液冷ヒートシンクである。
【0010】
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の液冷ヒートシンクにおいて、
そのヒートシンクがコア(4) とケーシング(12) とからなり、
そのケーシング(12) は、少なくとも一方が凹陥して皿状に形成される第1ケーシング部材(10) と第2ケーシング部材(11) を有し、それらの外周が互いに整合してなり、
そのケーシング(12) 内部の幅方向両端部に一対の入口タンク部(13) と、出口タンク部(14) とを備え、両タンク部(13)(14) を除いた部分にコア(4) が配置されて、前記ケーシング(12) の外周の平坦部に被冷却体(18) を取り付けたことを特徴とする液冷ヒートシンクである。
【0011】
請求項6に記載の本発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の液冷ヒートシンクにおいて、
前記第1プレート(2) および第2プレート(3)の外周に、積層したときに互いに整合する枠部(19) が形成され、
その枠部(19) 内に入口タンク部(13) と、出口タンク部(14) と、前記導入部(15) と、導出部(16) とが一体的に設けられ、
前記第1プレート(2) と、第2プレート(3) と、枠部(19) を厚み方向へ積層して積層体(20) が形成され、
前記積層体(20)の積層方向両端が一対の端プレート(22)(23) により閉塞され、その端プレートには前記導入部(15) と導出部(16) の位置に整合する開口(21)が設けられ、少なくても一方の端プレート(22)(23) 上に被冷却体(18) を取り付けたことを特徴とした液冷ヒートシンクである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液冷ヒートシンクは、隣り合う各縦部材5間の流路で、その出口端から出口タンク部14を介して、導出部16までの流路長の長さが、短い位置にある縦部材5の先端部に前記流通阻害ガイド8を設けたから、ヒートシンク内の各部の冷却液の流量を均一に保つことができる。これは、隣り合う各縦部材5間の流路で、その出口端から出口タンク部14を介して、導出部16までの流路長の長さが、短い位置では、その流路抵抗が他の位置のそれより小さくなり、その分だけ流量が多くなる。そこで流通阻害ガイド8によりその流量の増加を抑えるものである。
そのガイド8の一例として、各縦部材5に一体的に阻害傾斜部8aが設けられ、その先端部の傾斜向きは、各縦部材5の間に形成される流路の出口端から、導出部16までの流路長の長さを基準に決定されている。
【0013】
具体的には、各流路出口端から導出部16までの流路長の長さが、短い位置(流通抵抗が小さい位置)の阻害傾斜部8aは、冷却液流れに対して、流通抵抗を増加させる方向に傾斜している。このような阻害傾斜部8aをコア4の縦部材5に一体に設けた場合、ヒートシンク内の冷却液の流量を均一に保つことができる。
この阻害傾斜部8aに替えて、L字状に曲折したL字状部8bを設けても、同様の効果が得られる。
【0014】
上記構成において、各流路出口端から導出部16までの流路長の長さが、長い位置(流通抵抗が大きくなる位置)の縦部材5に流通促進用の促進傾斜部9を設け、その先端部が、冷却液流れに対して、流通抵抗を減少する方向に傾斜している場合には、より確実にヒートシンク内の各部の冷却液の流量を均一に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例の液冷ヒートシンクの分解斜視図。
【図2】同ヒートシンク内部の平面図。
【図3】同ヒートシンクの図2のIII-III矢視断面略図。
【図4】同ヒートシンクについて、傾斜部8a、9が入口タンク部側に形成されたときの各部の傾斜向きの説明図。
【図5】同ヒートシンクの第2実施例であり、傾斜部8a、9が出口タンク部側に形成されたときの各部の傾斜向きを示す図。
【図6】本発明の第3実施例の液冷ヒートシンクについて、傾斜部8a、9が入口タンク部側に形成されたときの各部の傾斜向きの説明図。
【図7】同ヒートシンクの第4実施例であり、傾斜部8a、9が出口タンク部側に形成されたときの各部の傾斜向きの説明図。
【図8】同ヒートシンクの第5実施例であり、傾斜部8a、9が入口タンク部側と出口タンク部側に形成されたときの各部の傾斜向きの説明図。
【図9】同ヒートシンクの第6実施例であり、傾斜部8a、9が入口タンク部側と出口タンク部側に形成されたときの傾斜向きの説明図。
【図10】本発明の第7実施例の液冷ヒートシンクの分解斜視図。
【図11】同ヒートシンク内部の平面図。
【図12】本発明の第8実施例の液冷ヒートシンクについて、L字状部8bが入口タンク部側に形成されたときの説明図。
【図13】同ヒートシンクの第9実施例であり、L字状部8bが出口タンク部側に形成されたときの説明図。
【図14】本発明の第10実施例の液冷ヒートシンクについて、L字状部8bが入口タンク部側に形成されたときの説明図。
【図15】同ヒートシンクの第11実施例であり、L字状部8bが出口タンク部側に形成されたときの説明図。
【図16】第12実施例の内部平面図。
【図17】第13実施例の内部平面図。
【図18】本発明の第14実施例の液冷ヒートシンクの内部平面図。
【図19】従来型液冷ヒートシンクの冷却液17の流入方向と流出方向が逆向きの場合の内部平面説明図であり、縦部材5の各流路の出口端と導出部16との距離に対する流量の関係を示した図。
【図20】従来型液冷ヒートシンクの冷却液17の流入方向と流出方向が同一向きの場合の内部平面説明図であり、縦部材5と各流路の出口端と導出部16との距離に対する流量の関係を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施例)
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施例を示す分解斜視図であり、図2は、その組立てた内部の平面図であり、図3は、コア内部の構造を示す図2のIII−III矢視断面略図である。
このヒートシンク1は、ケーシング12と、その内部に介装されるコア4とからなる。
【0017】
コア4は、図1および図2に示すごとく、一対の第1プレート2と、第2プレート3からなり、それぞれ平坦な金属板のプレス成形により形成される。夫々のプレートには、互いに離間した複数の細長い縦部材5と、隣合う縦部材5間にスリット7を形成するように連結する横部材6とが、一体的に形成されている。
その横部材6どうしは、第1プレート2と、第2プレート3が積層されたときに、互いに位置ずれし、図3に示すように、冷却液が上下方向へ蛇行して流通するように配置される。両プレート2、3は縦部材5が整合するように厚み方向へ積層されて、コア4が形成される。
【0018】
ケーシング12は、少なくとも一方が凹陥して浅い皿状に形成される一対の第1ケーシング部材10と、第2ケーシング部材11とからなる(この例では、両者とも凹陥している)。両ケーシング部材10、11の周縁部にはフランジが形成され、互いの開口が向き合うように、フランジを介して整合し、接合される。そのケーシング12内部は偏平に形成されており、そこにコア4が介装される。
【0019】
そのコア4の各縦部材5の長手方向両端部に、一対の入口タンク部13と、出口タンク部14が互いに平行になるよう設けられ、入口タンク部13の長手方向一方の端部に外部と連通する冷却液の導入部15が設けられ、出口タンク部14には導出部16が、ケーシング12内部に一体に設けられている。図1に示す通り、導入部15と導出部16は、両タンク部13、14の長手方向に延在する方向に設けられている。
図4の説明図では、導入部15が左上に位置するとき、導出部16が左下に位置している関係になる。そして、導入部15と導出部16には、外部と連通する開口に図示しないパイプが接続される。ケーシング12の形状は、パイプ状の導入部15、導出部16を除き、平面矩形の偏平に形成されている。
コア4の各縦部材5間を流通する冷却液17の流量を均一化するために、各縦部材5には、その長手方向の一方端部に阻害傾斜部8aと、促進傾斜部9とが一体的に設けられている。
【0020】
図4は、横部材6を省略し、縦部材5と、阻害傾斜部8a、促進傾斜部9のみ記載したコア4構造を示した平面図である。それらの両傾斜部8a、9は入口タンク部13側に設けられており、各プレートは積層方向に、縦部材5と、それら両傾斜部8a、9が互いに整合して積層される。
これら両傾斜部8a、9の先端部の傾斜方向は、各縦部材5の間に形成される流路の出口端から、出口タンク部14を介して、導出部16までの流路長の長さを基準に決定されている。導出部16までの流路長の長さが短い位置では、図19に示すとおり、流通抵抗が小さいく、他の流路よりも冷却液が流れやすくなっている。それを抑制するため、その短い位置には、流通阻害用の阻害傾斜部8aが設けられている。その先端部はこの例では、導入部15側とは逆向きに傾斜されている。その傾斜により冷却液17はその位置で図4に示す回り込みが必要となり、流路抵抗を大きくする。
そして、長い位置に存在する流路では、流通抵抗が大きくなっているため、それを小さくするため、促進傾斜部9が設けられている。その先端部は導入部15側に傾斜されている。すると、冷却液17は促進傾斜部9に案内され、円滑に流路に導かれ、流通抵抗を小とする。
【0021】
(第2実施例)
図5は、本発明の第2実施例で、図4の傾斜部7を出口タンク部14側に設けたときのコア4構造を示している。
この例でも、導出部16までの流路長の長さが長い位置に、促進傾斜部9が設けられ、その先端部が導出部16側に傾斜され、短い位置には、阻害傾斜部8aが設けられ、その先端部が導出部16側とは逆向きに傾斜されている。
なお、縦部材5の長手方向の一端部のみに傾斜部を設ける替わりに、縦部材5の長手方向の両端部に促進傾斜部9と阻害傾斜部8aを設けることも可能である。即ち、図4と図5を結合することができる。
【0022】
このように構成されるコア4とケーシング12の各接触部につき、ろう付け前に、ろう材を塗布し、高温の炉内で、一体的にろう付け固定する。
ろう材の塗布に替えて、コアを形成する第1プレート2と、第2プレート3、およびケーシング12を形成するケーシング部材10、11に使用される金属板にろう材を予め被覆したものを用いることもできる。
このように形成されたヒートシンクの外面の平坦部には、被冷却体18が伝熱性グリス等を介して、被着される。その内部を流通する冷却液17は導入部15から流入し、入口タンク部13を介してコア4の縦部材5間を流通し、出口タンク部14を介して導出部16に導かれ、排出される。この冷却液17と被冷却体18との間で熱交換される。
【0023】
(第3実施例)
図6は本発明の第3実施例であり、それが第1実施例と異なる点は、冷却液17を排出する導出部16の向きが導入部15と反対位置にある点である。図6では、導入部15が左上に位置するとき、導出部16が右下に位置している。
そして、入口タンク部13側に阻害傾斜部8aと、促進傾斜部9を設けている。この場合も各流路の出口と導出部16との流路長の長さが長い位置には、促進傾斜部9が設けられ、その先端部が導入部15側に傾斜され、短い位置には、阻害傾斜部8aが設けられ、その先端部が導入部15側とは逆向きに傾斜されている。これは、図20の各部の流路の流量の不均一を解消するものである。
【0024】
(第4実施例)
図7は本発明の第4実施例であり、第3実施例との違いは、出口タンク部14側に阻害傾斜部8aと、促進傾斜部9を設けたものである。
第7実施例においても、縦部材5の長手方向一端部のみに阻害傾斜部8aと、促進傾斜部9を設けるだけでなく、その両端部に設けることも可能である。即ち、図6と図7とを結合することができる。
【0025】
(変形例)
前記各実施例では、両タンク部13、14の長手方向長さが短い位置で、阻害傾斜部8aのみ採用し、長い位置の促進傾斜部9を省くこともできる。
(第5実施例,第6実施例)
また、図8は本発明の第5実施例であり、図9は第6実施例である。これらに示すように、阻害傾斜部8aと、促進傾斜部9をコア4の長手方向両端のみに設け、中間部分を真っ直ぐな縦部材5のみで設けても良い。
【0026】
(第7実施例)
図10は本発明の第7実施例であり、この例は、先の実施例のケーシング12の代わりに、金属板のプレス成形により、コア4の外周に枠部19を一体的に設ける。そして、その枠部19の内部に入口タンク部13と、出口タンク部14と、導入部15並びに導出部16を一体的に設けたものである。そのコア4部の構成と導入部15、導出部16の位置関係は、第1実施例および第2実施例と変わるところはない。
【0027】
図10、図11のごとく、第1プレート2と第2プレート3が、それらに一体的に形成された枠部19とともに積層され、積層体20が形成される。その積層体20の積層方向両端部には、一対の端蓋22、23が被嵌されて、閉塞される。端蓋22、23の一方側には、導入部15と導出部16とに整合する位置に、パイプ24を接続するための開口21が穿設されている。
このようなヒートシンクが高温の炉内で一体的にろう付けされ、その後、端蓋上に被冷却体18を配置するものである。
このような構造は、前述の各実施例に適用できる。
【0028】
(第8実施例)
図12は本発明の第8実施例であり、この例は第1実施例の変形例である。
この例が第1実施例と異なる点は、流通阻害ガイド8として用いた阻害傾斜部8aをL字状部8bに替えた点、および促進傾斜部9を設けていない点である。
図12に示すごとく、このL字状部8bは、縦部材5の一端に水平材を一体に突設したものである。L字状部8bを構成する水平材は、複数の流路を覆うように形成されている。そして、L字状部8bの水平材は、各縦部材5の間に形成される流路の出口端から、導出部16までの流路長の長さが、一番短い位置ある縦部材5(導出部16に隣接する位置にある縦部材5)のみに形成され、その先端部の向きが導入部15側と逆向きに形成されている。
【0029】
また、その水平材の先端部と、隣接する位置にある縦部材5との間に形成される流通路の入口端との隙間は、他の縦部材5間の流通路の間隔に比べ、広く形成されている。さらに、L字状部8bと、その水平材の先端部と隣接する位置にある縦部材5との間に囲まれた位置にある縦部材5の長手方向の長さは、他の縦部材5より短く形成されており、その長手方向先端部とL字状部の水平材との間にタンク部のような空間を形成している。その囲まれた部分の縦部材5間にも、冷却液17を流通させるためのものである。
冷却液17は、このように形成されるL字状部8bの水平材を迂回しなければならないため、L字状部8bが形成されている部分には流通しにくくなる。そのため、図19の不均一流通の問題を解決して、各流路の流量が均一になる。
【0030】
(第9実施例)
図13は、そのL字状部8bを出口タンク部14側に設けたものである。このL字状部8bの横部材の先端部は導出部16側と逆向きに形成されている。また、縦部材5の長手方向両端部にL字状部8bを設け、流通阻害ガイド8としても良い。即ち、図12と図13とを結合することもできる。
【0031】
(第10実施例,第11実施例)
図14および図15は、本発明の第10,第11実施例である。
図14の例は、L字状部8bを入口タンク部13に設ける場合である。L字状部8bの水平材は、導出部16までの流路長の長さが、短い位置ある縦部材5に形成され、その先端向きは導入部15側と逆向きに形成されている。
【0032】
図15の例は、L字状部8bを出口タンク部14に設ける場合である。L字状部8bの水平材は、導出部16までの流路長の長さが、一番短い位置ある縦部材5に形成され、その先端向きは導出部16側と逆向きに形成されている。
そしてこれの実施例においても、各L字状部8bを組合わせることができる。
【0033】
(第12実施例,第13実施例)
図16および図17のごとく、阻害傾斜部8aや、促進傾斜部9をL字状部8bに組合わせてコア4を形成することもできる。
【0034】
(第14実施例)
図18の例では、各プレートの外周に枠部19を形成し、L字状部8bの水平材が枠部19と一体形成されている。
【0035】
なお、上述した実施例について、コア4の各端部、即ち、縦部材5の長手方向両端部、阻害傾斜部8aの先端部、促進傾斜部9の先端部、L字状部8bの水平材を、入口タンク部13および出口タンク部14に侵入しないように構成することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ヒートシンク
2 第1プレート
3 第2プレート
4 コア
5 縦部材
6 横部材
7 スリット
8 流通阻害ガイド
8a 阻害傾斜部
8b L字状部
9 促進傾斜部
【0037】
10 第1ケーシング部材
11 第2ケーシング部材
12 ケーシング
13 入口タンク部
14 出口タンク部
15 導入部
16 導出部
17 冷却液
18 被冷却体
【0038】
19 枠部
20 積層体
21 開口
22 端プレート
23 端プレート
24 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ平坦な金属板のプレス成形により、互いに離間した複数の細長い縦部材(5) と、隣合う縦部材(5) 間を連結する横部材(6) とが、一体的に形成される複数の第1プレート(2) と、第2プレート(3) と、
前記横部材(6) は、第1プレート(2) と、第2プレート(3) の横部材(6) どうしが、位置ずれするように形成され、両プレート(1)(2) が厚み方向へ積層されてなるコア(4)と、
前記コア(4) の各縦部材(5) の長手方向両側に配置された一対の入口タンク部(13) と、出口タンク部(14) と、を具備し、
前記入口タンク部(13) の長手方向一方端部に外部と連通する冷却液(17) の導入部(15) が設けられるとともに、出口タンク部(14) の長手方向一方端部に外部と連通する導出部(16) が設けられ、
前記導入部(15) から冷却液(17) が入口タンク部(13) を介してコア(4) の各縦部材(5) 間の流路を流通するとともに、前記横部材(6) の位置で各プレート(2)(3) の厚み方向に蛇行するように流通し、前記出口タンク部(14) を介して、導出部(16) から排出され、
前記冷却液(17) と被冷却体(18)との間で熱交換する液冷ヒートシンクにおいて、
前記各縦部材(5) の長手方向の少なくても一方端部に、冷却液(17) の流通を阻害する流通阻害ガイド(8) が一体的に形成され、
隣り合う各縦部材(5) 間の流路で、その出口端から出口タンク部(14) を介して、導出部(16) までの流路長の長さが、短い位置にある縦部材(5) の先端部に前記流通阻害ガイド(8) が設けられたことを特徴とする液冷ヒートシンク。
【請求項2】
請求項1に記載の液冷ヒートシンクにおいて、
前記流通阻害ガイド(8) が、各縦部材(5) に一体的に傾斜して形成される阻害傾斜部(8a) からなり、
前記入口タンク部(13) 側では、その先端部の向きを前記導入部(15) 側と反対方向に傾け、
前記出口タンク部(14) 側では、前記導出部(16) 側と反対方向に傾けたことを特徴とする液冷ヒートシンク。
【請求項3】
請求項1に記載の液冷ヒートシンクにおいて、
前記流通阻害ガイド(8) が、コア(4) の幅方向端部の縦部材(5) に一体的に設けられたL字状部(8b) からなり、
前記入口タンク部(13) 側では、L字状部(8b) の先端部が前記導入部(15) 側と反対方向に向けられ、
前記出口タンク部(14) 側では、前記導出部(16) 側と反対方向に向けられたことを特徴とする液冷ヒートシンク。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の液冷ヒートシンクにおいて、
隣り合う各縦部材(5) 間の流路で、その出口端から出口タンク部(14) を介して、導出部(16) までの流路長が、長い位置にある各縦部材(5) に、冷却液(17) の流通促進用の促進傾斜部(9) が一体的に設けられ、
前記流通促進用の促進傾斜部(9) は、前記入口タンク部(13) 側では、その先端部の向きを前記導入部(15) 側に傾け、
前記出口タンク部(14) 側では、導出部(16) 側に傾けたことを特徴とする液冷ヒートシンク。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の液冷ヒートシンクにおいて、
そのヒートシンクがコア(4) とケーシング(12) とからなり、
そのケーシング(12) は、少なくとも一方が凹陥して皿状に形成される第1ケーシング部材(10) と第2ケーシング部材(11) を有し、それらの外周が互いに整合してなり、
そのケーシング(12) 内部の幅方向両端部に一対の入口タンク部(13) と、出口タンク部(14) とを備え、両タンク部(13)(14) を除いた部分にコア(4) が配置されて、前記ケーシング(12) の外周の平坦部に被冷却体(18) を取り付けたことを特徴とする液冷ヒートシンク。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の液冷ヒートシンクにおいて、
前記第1プレート(2) および第2プレート(3)の外周に、積層したときに互いに整合する枠部(19) が形成され、
その枠部(19) 内に入口タンク部(13) と、出口タンク部(14) と、前記導入部(15) と、導出部(16) とが一体的に設けられ、
前記第1プレート(2) と、第2プレート(3) と、枠部(19) を厚み方向へ積層して積層体(20) が形成され、
前記積層体(20)の積層方向両端が一対の端プレート(22)(23) により閉塞され、その端プレートには前記導入部(15) と導出部(16) の位置に整合する開口(21)が設けられ、少なくても一方の端プレート(22)(23) 上に被冷却体(18) を取り付けたことを特徴とした液冷ヒートシンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2013−30713(P2013−30713A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167702(P2011−167702)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】