説明

液化ガス充填装置

【課題】高い信頼性を有する液化ガス充填装置を提供する。
【解決手段】液相ライン2内の燃料の圧力PT2が規定圧力PT0よりも大きい場合、1次側バルブ15のメインラインを選択すると同時に、2次側バルブ16を開弁し、燃料を大流量で充填する。また、液相ライン2内の燃料の圧力PT2が規定圧力PT0以下である場合、2次側バルブ16を閉弁させたままの状態で、1次側バルブ15のサブラインを選択し、液相ライン2内の燃料の圧力PT2を規定圧力PT0に向けて逓増させる。したがって、背圧弁を廃止することができ、ディスペンサ1の信頼性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ジメチルエーテル(DME)等の液化ガス燃料を車両の燃料タンクに充填させる液化ガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地下タンクに貯蔵された液化ガスを車両の燃料タンクに充填させる液化ガス充填装置が知られている。例えば、特許文献1の燃料充填装置では、その燃料供給経路に、セパレータ、流量計が配設され、さらに、背圧弁を設けることで流量計を流通する燃料を加圧し、当該流量計に気泡が流入しない対策が採られている。しかしながら、この燃料充填装置では、背圧弁に不具合が発生して流量計を流通する液化ガスの圧力が低下した場合、当該流量計の測定精度が低下する。また、燃料供給経路内の圧力が何等かの原因で飽和蒸気圧(ガス回収経路内圧力)以下に低下した場合、燃料供給経路内にガスが発生する。このガスはセパレータによって液体と分離されるが、セパレータに流入する液化ガスの流量が当該セパレータの分離能力を上回った場合、ガスを含む液化ガスが流量計に流入し、当該流量計の測定精度が低下する。
【0003】
さらに、液化ガスがジメチルエーテルである場合、ジメチルエーテルが背圧弁のシール材(ゴム材)を膨潤させることに起因して、背圧弁が正常に動作しないおそれがある。
【特許文献1】特開2002−122298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、高い信頼性を有する液化ガス充填装置を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の液化ガス充填装置は、一端が貯蔵タンクの液相部に接続され、他端に充填ノズルが設けられる液相ラインと、前記貯蔵タンクの気相部に連通する気相ラインと、前記液相ラインに配設され、流入された液化ガスから気泡を分離させるセパレータと、前記セパレータに対して前記充填ノズル側に配設され、前記液相ラインを流通する液化ガスの流量を測定する流量計と、を有する液化ガス充填装置であって、前記流量計に対して前記充填ノズル側に配設され、前記液相ラインの2次側の液化ガスの流通を制御する2次側制御弁と、前記気相ライン内のガスの圧力を測定する第1圧力測定手段と、前記液相ライン内の液化ガスの圧力を測定する第2圧力測定手段と、前記第1圧力測定手段と前記第2圧力測定手段との測定結果に基づき、前記液相ライン内の液化ガスの圧力が規定圧力以上であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づき、前記2次側制御弁を開弁/閉弁させる弁制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
高い信頼性を有する液化ガス充填装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施形態を図1〜図3に基いて説明する。本実施形態では、車両の燃料タンクに液化ガス燃料(以下、単に燃料という)を充填させる液化ガス充填用ディスペンサ1(液化ガス充填装置)を説明する。
【0008】
図1に示されるように、ディスペンサ1は、一端が貯蔵タンクの液相部(図示省略)に連通される液相ライン2と、一端が貯蔵タンクの気相部(図示省略)に連通される気相ライン3と、メンテナンス時(ガス抜き時)にブローバルブ5が開弁されることで大気放散されるブローライン4と、を有する。液相ライン2の他端には、充填ホース8が接続されるホース接続口6が配設される。充填ホース8の先端には、燃料タンク(図示省略)の充填口に接続させる充填ノズル9と、該充填ノズル9を開閉させるノズル開閉バルブ10とが配設される。なお、充填ホース8には、緊急離脱用のカップリング7が設けられる。
【0009】
図1に示されるように、液相ライン2には、セパレータ11、流量計12がホース接続口6に向けて順次配設される。セパレータ11は、貯蔵タンクから圧送された燃料に含まれる気泡を分離させる気液分離器であり、気泡が除去された燃料を流量計12へ向けて吐出すると共に、気化したガスを気相ライン3を介して貯蔵タンク(図示省略)へ還流させる。なお、図1の符号13は、セパレータ11から吐出された燃料が当該セパレータ11へ流入するのを阻止する逆止弁13である。流量計12は、車両の燃料タンク(図示省略)に充填される燃料の流量を計測し、パルス発信器28から流量の計測結果に応じた数の流量パルスが後述する制御装置24へ出力される。また、流量計12には、燃料の充填圧力が規定圧力PT0以上になった時に開弁させて過剰な圧力を気相ライン3へ逃がすリリーフバルブ14が設けられる。
【0010】
液相ライン2には、1次側バルブ15(1次側制御弁)と2次側バルブ16(2次側制御弁)とが配設される。1次側バルブ15は、セパレータ11に対して貯蔵タンク側に配設され、大流量の燃料を流通させるメインライン(図示省略)と小流量の燃料を流通させるサブライン(図示省略)とのいずれかの流路が必要に応じて選択可能である。2次側バルブ16は、流量計12に対してホース接続口6側に配設され、ディスペンサ1から流出させる燃料の流量を制御可能である。図1に示されるように、気相ライン3には、当該気相ライン3内のガスの圧力、すなわち、ディスペンサ1における燃料(液化ガス)の飽和蒸気圧PT1を測定する圧力センサ17(第1圧力測定手段)が配設される。なお、気相ライン3には開閉バルブ18が設けられ、該開閉バルブ18は、圧力センサ17とリリーフバルブ14との間に配置される。
【0011】
図1に示されるように、ブローライン4は、連通路20を介してセパレータ11の底部に連通される。そして、ブローライン4には、ブローライン4内のガスの圧力、すなわち、液相ライン2内の燃料の圧力PT2を測定する圧力センサ19(第2圧力測定手段)が配設される。また、ブローライン4には、連通路20との分岐部21の圧力センサ19側(図1における右側)に配置される通常開弁状態の開閉バルブ22が設けられる。なお、ブローバルブ5は、通常閉弁状態である。また、図1の符号23は、気相ライン3の内部圧力と、ブローライン4ひいては液相ライン2の内部圧力とを計測する二針式圧力計である。
【0012】
ディスペンサ1(液化ガス充填装置)は、マイクロコンピュータによって構成される制御装置24を有する。制御装置24は、圧力センサ17の測定結果PT1と圧力センサ19の測定結果PT2とに基づき、液相ライン2内の燃料(液化ガス)の圧力PT2が規定圧力PT0以上であるか否かを判定する判定部25(判定手段)を有する。また、制御装置24は、判定部25の測定結果に基づき、1次側バルブ15の流路、すなわち、大流量のメインラインと小流量のサブラインとのいずれかの流路を選択する弁制御部26(弁制御手段)を有する。
【0013】
次に、制御装置24による制御の流れを図3のフローチャートに基づき説明する。ここでは、車両の燃料タンクにジメチルエーテル(液化ガス燃料)を充填させる場合を説明する。なお、後述するディスペンサ1の初期状態とは、充填開始スイッチ27が操作される前の状態であり、この時、1次側バルブ15(1次側制御弁)および2次側バルブ16(2次側制御弁)は共に閉弁状態にある。ここで、1次側バルブの閉弁状態とは、メインライン(大流量側流路)とサブライン(小流量流路)との双方が閉じられた状態をいう。
【0014】
まず、ディスペンサ1の初期状態において、充填開始スイッチ27が操作されたか否かが判定される(図3のステップ1)。そして、充填開始スイッチ27が操作されたことを認識した場合(ステップ1のY)、制御装置24は、圧力センサ17(第1圧力測定手段)の測定結果PT1および圧力センサ19(第2圧力測定手段)の測定結果PT2を取得する(ステップ2)。次に、判定部25(判定手段)により、液相ライン2内の燃料(ジメチルエーテル)の圧力PT2が規定圧力PT0よりも大きいか否かが判定される(ステップ3)。なお、本実施形態の規定圧力PT0は、飽和蒸気圧PT1+0.1MPa(規定値)である。したがって、ステップ3においては、判定部25は、PT2-PT1が規定圧力PTOよりも大きいか否かを判定する。
【0015】
そして、液相ライン2内の燃料(ジメチルエーテル)の圧力PT2が規定圧力PT0よりも大きいと判定された場合(ステップ3のY)、1次側バルブ15のメインラインが選択(メインライン開)されると同時に、2次側バルブ16が開弁される(ステップ4)。これにより、車両の燃料タンクには、燃料が大流量で充填される。燃料充填中、制御装置24により流量パルスが監視され、パルス発信器28から流量パルスが出力されているか否かが判定される(ステップ5)。そして、流量パルスの出力が停止した場合(ステップ5のY)、燃料タンクが満タンであると認識され、1次側バルブ15が閉弁される(メインラインが遮断される)と同時に2次側バルブ16が閉弁され(ステップ6)、処理を正常終了する。
【0016】
一方、ステップ3において、判定部25により、液相ライン2内の燃料(ジメチルエーテル)の圧力PT2が規定圧力PT0以下であると判定された場合(ステップ3のN)、1次側バルブ15のサブラインが選択(サブライン開)される(ステップ7)。この時、2次側バルブ16は閉弁状態にあるため、液相ライン2内の燃料の圧力PT2を規定圧力PT0に向けて逓増させることができる。次に、液相ライン2内の燃料の圧力PT2が規定圧力PT0よりも大きいか否かが判定される(ステップ8)。
【0017】
そして、判定部25により、液相ライン2内の燃料(ジメチルエーテル)の圧力PT2が規定圧力PT0よりも大きいと判定された場合(ステップ8のY)、1次側バルブ15のサブラインが遮断(サブライン閉)されてメインラインが選択(メインライン開)されると同時に、2次側バルブ16が開弁される(ステップ9)。これにより、車両の燃料タンクには、燃料が大流量で充填される。燃料充填中、制御装置24により流量パルスが監視され、パルス発信器28から流量パルスが出力されているか否か、すなわち、流量計12に燃料が流通されているか否かが判定される(ステップ5)。そして、流量パルスの出力が停止した場合(ステップ5のY)、燃料タンクが満タンであると認識され、1次側バルブ15が閉弁される(メインラインが遮断される)と同時に2次側バルブ17が閉弁され(ステップ6)、処理を正常終了する。なお、ステップ8において、液相ライン2内の燃料の圧力PT2が規定圧力PT0よりも小さいと判定された場合(ステップ8のN)、再度ステップ8へ戻り、液相ライン2内の燃料の圧力PT2が規定圧力PT0よりも大きいか否かが判定される。
【0018】
他方、ステップ5において、パルス発信器28から流量パルスが出力されている場合(ステップ5のN)、液相ライン2内の燃料(ジメチルエーテル)の圧力PT2が規定圧力PT0よりも小さいか否かが判定される(ステップ10)。そして、液相ライン2内の燃料の圧力PT2が規定圧力PT0よりも小さいと判定された場合(ステップ10のY)、例えば、燃料が大気中に放出されているおそれがあるため、1次側バルブ15が閉弁される(メインラインを遮断する)と同時に2次側バルブ17が閉弁され(ステップ11)、処理を異常終了する。なお、ステップ10において、液相ライン2内の燃料の圧力PT2が規定圧力PT0よりも大きいと判定された場合(ステップ10のN)、ステップ5へ進み、パルス発信器28から流量パルスが出力されているか否か、すなわち、流量計12に燃料が流通されているか否かが判定される。
【0019】
この実施形態では以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、液相ライン2に1次側バルブ15(1次側制御弁)と2次側バルブ16(2次側制御弁)とを配設し、充填開始スイッチ27が操作されることで、判定部25(判定手段)により、液相ライン2内の燃料(液化ガス)の圧力PT2が規定圧力PT0(本実施形態では、規定圧力P0=飽和蒸気圧PT1+0.1MPa)よりも大きいか否かが判定される。そして、液相ライン2内の燃料の圧力PT2が規定圧力PT0よりも大きいと判定された場合、1次側バルブ15(1次側制御弁)のメインラインが選択(メインライン開)されると同時に、2次側バルブ16(2次側制御弁)が開弁される。これにより、車両の燃料タンクに燃料が大流量で充填される。また、判定部25により、液相ライン2内の燃料の圧力PT2が規定圧力PT0以下であると判定された場合、2次側バルブ16を閉弁させたままの状態で、1次側バルブ15のサブラインが選択(サブライン開)される。これにより、液相ライン2内の燃料の圧力PT2を規定圧力PT0に向けて逓増させることができ、液相ライン2内の燃料(液化ガス)の圧力PT2が飽和蒸気圧PT1以下に低下することを防ぐことができる。
したがって、本実施形態では、液相ライン2内の燃料(液化ガス)の圧力PT2が飽和蒸気圧PT1以下に低下することを防ぐ目的で従来使用されていた背圧弁を廃止することができる。これにより、液相ライン2内の燃料(液化ガス)の圧力PT2を飽和蒸気圧PT1よりも高い圧力に確実に維持することが可能となり、ディスペンサ1(液化ガス充填装置)の信頼性を向上させることができる。また、燃料(液化ガス)がジメチルエーテルである場合、ジメチルエーテルが背圧弁のシール材(ゴム材)を膨潤させて背圧弁が正常に動作しなくなるおそれがあったが、本実施形態では、背圧弁を廃止することで、このような事態を回避することができる。
【0020】
なお、実施形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
本実施形態では、規定圧力PT0を飽和蒸気圧PT1+0.1MPa(規定値)としたが、規定圧力PT0は、飽和蒸気圧PT1以上であれば、例えば、飽和蒸気圧PT1+0.2MPa(規定値)とすることができる。
本実施形態では、1次側制御弁として、大流量が得られるメインラインと小流量が得られるサブラインとを選択可能な1次側バルブ15を用いてディスペンサ1(液化ガス充填装置)を構成したが、1次側制御弁として、開弁の度合いを任意に調節可能なバルブを使用してもよい。
本実施形態は、ジメチルエーテルの充填の他、例えば、LPG(液化石油ガス)等の充填に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態のディスペンサ(液化ガス充填装置)における液化ガスの流通系統の概略を示す図である。
【図2】本実施形態のディスペンサ(液化ガス充填装置)におけるシステム構成の概略を示すブロック図である。
【図3】本実施形態のディスペンサ(液化ガス充填装置)の制御の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ディスペンサ(液化ガス充填装置)、2 液相ライン、3 気相ライン、11 セパレータ、12 流量計、15 1次側バルブ(1次側制御弁)、16 2次側バルブ(2次側制御弁)、17 圧力センサ(第1圧力測定手段)、19 圧力センサ(第2圧力測定手段)、25 判定部(判定手段)、26 弁制御部(弁制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が貯蔵タンクの液相部に接続され、他端に充填ノズルが設けられる液相ラインと、
前記貯蔵タンクの気相部に連通する気相ラインと、
前記液相ラインに配設され、流入された液化ガスから気泡を分離させるセパレータと、
前記セパレータに対して前記充填ノズル側に配設され、前記液相ラインを流通する液化ガスの流量を測定する流量計と、
を有する液化ガス充填装置であって、
前記流量計に対して前記充填ノズル側に配設され、前記液相ラインの2次側の液化ガスの流通を制御する2次側制御弁と、
前記気相ライン内のガスの圧力を測定する第1圧力測定手段と、
前記液相ライン内の液化ガスの圧力を測定する第2圧力測定手段と、
前記第1圧力測定手段と前記第2圧力測定手段との測定結果に基づき、前記液相ライン内の液化ガスの圧力が規定圧力以上であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づき、前記2次側制御弁を開弁/閉弁させる弁制御手段と、
を有することを特徴とする液化ガス充填装置。
【請求項2】
さらに、前記セパレータに対して前記貯蔵タンク側に配設され、前記液相ラインの1次側の液化ガスの流通を制御する1次側制御弁を有し、
前記弁制御手段は、
前記判定手段により液相ライン内の液化ガスの圧力が前記規定圧力に満たないと判定された場合に、前記液相ラインを流通する液化ガスの流量が小流量となるように前記1次側制御弁を制御し、
前記判定手段により液相ライン内の液化ガスの圧力が前記規定圧力以上であると判定された場合に、前記液相ラインを流通する液化ガスの流量が大流量となるように前記1次側制御弁を制御することを特徴とする請求項1に記載の液化ガス充填装置。
【請求項3】
前記規定圧力は、液化ガスの飽和蒸気圧以上に規定されることを特徴とする請求項1または2に記載の液化ガス充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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