説明

液化ガス充填装置

【課題】本発明は被充填タンクに液化ガスを充填する際の充填時間を短縮することを課題とする。
【解決手段】液化ガス充填装置10は、筐体20内に液化ガス供給経路30と、回収経路40と、制御部50とを有する。液化ガス供給経路30には、セパレータ60と、流量計70と、液化ガス充填用開閉弁V1とが設けられている。また、回収経路40には、冷却ユニット90と、回収用弁V2と、液化ガス供給弁V3とが設けられている。液化ガス供給経路30は、上流側がセパレータ60に接続され、下流側が筐体20の側面から引き出された充填ホース120、充填ノズル130に接続されている。制御部50は、液化ガスの瞬時流量値が予め設定された下限値より少ない場合、あるいはタンク圧力が供給圧力よりも高い場合には、回収用弁V2を開弁して当該タンク圧力を減圧してから液化ガス充填用開閉弁V1を開弁して燃料タンク144に液化ガスの充填制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液化ガス充填装置に係り、特に液化ガス供給側の圧力と被充填タンクの圧力との差により被充填タンクに液化ガスを充填する液化ガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液化ガスを燃料として走行する車両は、ガスステーションに設置された液化ガス充填装置により燃料タンク(被充填タンク)に液化ガスが充填される。この種の液化ガス充填装置は、液化ガスが貯蔵された供給元の貯蔵タンク内の液化ガスの圧力、あるいはポンプによって加圧された液化ガスの圧力よりなる供給圧力と、燃料タンク内の液化ガスの圧力との圧力差により当該燃料タンクに液化ガスを充填する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−122298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液化ガス充填装置により車両の燃料タンクに液化ガスを充填する際、車両の走行条件(例えば、太陽熱の強い日)によって燃料タンクの温度が上昇し、当該燃料タンク内の液化ガスの蒸気圧が上昇し、この結果、タンク内の液化ガスの圧力が供給圧力以上に上昇、或いは供給圧力に近づくこともある。
【0005】
このように燃料タンクのタンク圧力が供給圧力以上に上昇した場合(或いは供給圧力に近づいた場合)は、液化ガス充填装置の充填ノズルが燃料タンクに接続されても液化ガスが燃料タンクに充填されず、あるいは燃料タンクのタンク圧力が供給圧力より僅かに低い場合には、燃料タンクに供給される液化ガスの流量が少なく、充填完了するまでにかなりの時間がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した液化ガス充填装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、被充填タンクに液化ガスを供給する液化ガス供給経路と、
前記液化ガス供給経路を通過する流量を計測する流量計と、
前記液化ガス供給経路を開又は閉とする開閉弁と、
前記開閉弁を開閉制御すると共に、前記流量計により計測された流量値から積算流量値を演算する制御部とを有する液化ガス充填装置において、
前記開閉弁の下流の前記液化ガス供給経路から分岐された回収経路と、
前記回収経路の下流側に設けられた回収用弁と、を備え、
前記制御部は、前記開閉弁を開弁することによる前記被充填タンクへの充填開始時に、前記流量計により計測された前記液化ガス供給経路を流れる液化ガスの流量計測値が予め設定された所定値より少ない場合に前記開閉弁を閉弁すると共に、前記回収用弁を開弁して前記被充填タンク内のガスを前記回収経路に回収し、その後前記開閉弁を開弁して液化ガスを前記被充填タンクに充填することを特徴とする。
(2)本発明は、前記回収経路の上流側を開又は閉とする液化ガス供給弁を備え、
前記制御部は、前記被充填タンクへの充填開始時に前記液化ガス供給経路の流量が所定値より少ない場合に前記開閉弁を閉弁すると共に、前記液化ガス供給弁を開弁して前記被充填タンク内のガスを前記回収経路に回収し、その後前記開閉弁を開弁すると共に、前記液化ガス供給弁を閉弁し、さらに所定時間経過後に前記液化ガス供給弁を開弁して前記回収経路に回収したガスを前記被充填タンクに戻すことを特徴とする。
(3)本発明は、被充填タンクに液化ガスを供給する液化ガス供給経路と、
前記液化ガス供給経路を通過する流量を計測する流量計と、
前記液化ガス供給経路を開又は閉とする開閉弁と、
前記開閉弁を開閉制御すると共に、前記流量計により計測された流量値から積算流量値を演算する制御部とを有する液化ガス充填装置において、
前記開閉弁の下流の前記液化ガス供給経路から分岐された回収経路と、
前記回収経路に設けられた回収用弁と、
前記液化ガス供給経路の供給圧力を検出する第1圧力センサと、
前記被充填タンクのタンク圧力を検出する第2圧力センサとを備え、
前記制御部は、前記被充填タンクへの充填開始前に前記第1圧力センサにより検出された前記供給圧力と前記第2圧力センサにより検出された前記タンク圧力とを比較し、前記タンク圧力が前記供給圧力よりも高い場合には、あるいはタンク圧力と供給圧力との差が所定圧力以下の場合には、前記回収用弁を開弁して前記被充填タンクのガスを前記回収経路に回収し、その後前記開閉弁を開弁して液化ガスを前記被充填タンクに充填することを特徴とする。
(4)本発明の前記制御部は、充填開始前の前記タンク圧力が前記供給圧力よりも高い場合には、前記回収弁を開弁して前記被充填タンクのガスを前記回収経路に回収し、その後前記開閉弁を開弁して前記被充填タンクに液化ガスを充填し、その後前記回収弁及び前記液化ガス供給弁を開弁して前記回収経路に回収したガスを前記被充填タンクに戻すことを特徴とする。
(5)本発明は、前記回収経路に冷却器を設け、前記回収経路に回収された液化ガスを前記冷却器により冷却して前記被充填タンクに充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被充填タンクへの充填開始時に液化ガス供給経路の流量が所定値より少ない場合、あるいはタンク内の液化ガスの圧力と供給圧力との差が所定圧力以下の場合には、回収用弁を開弁して被充填タンクの液化ガスを回収経路に回収し、その後開閉弁を開弁して液化ガスを被充填タンクに充填するため、被充填タンクの圧力を減圧してから液化ガスを充填することができ、充填開始から充填完了までの充填時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による液化ガス充填装置の一実施例の概略構成を示す図である。
【図2】液化ガス充填装置の制御部が実行する制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】液化ガス充填装置の変形例を示す図である。
【図4】変形例の制御処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明による液化ガス充填装置の一実施例の概略構成を示す図である。図1に示されるように、液化ガス充填装置10は、筐体20内に液化ガス供給経路30と、回収経路40と、制御部50とを有する。液化ガス供給経路30には、セパレータ60と、流量計70と、液化ガス充填用開閉弁V1とが設けられている。また、回収経路40には、冷却ユニット90と、回収用弁V2と、液化ガス供給弁V3とが設けられている。尚、液化ガス充填用開閉弁V1、回収用弁V2、液化ガス供給弁V3は、夫々電磁弁からなり、制御部50から出力された制御信号により開弁又は閉弁状態に切り替わる。
【0012】
液化ガス供給経路30は、上流側がセパレータ60に接続され、下流側が筐体20の側面から引き出された充填ホース120、充填ノズル130に接続されている。尚、充填ノズル130及び車両140の接続部142は、それぞれ接続時に開弁され、非接続時に閉弁する弁を内蔵している。充填ノズル130が車両140の接続部142に接続されると共に、内蔵された各弁が開弁して充填ノズル130と燃料タンク(被充填タンク)144との間が連通される。
【0013】
また、筐体20の側面には、充填ノズル130を収納するノズル収納部22が設けられている。ノズル収納部22は、充填ノズル130が外されるとオフに切り替わるノズルスイッチ24を有する。ノズルスイッチ24は、充填ノズル130が収納されているときは、オンに切り替わり、ノズル検知信号を制御部50に出力する。
【0014】
回収経路40は、両端が液化ガス充填用開閉弁V1の上流と下流とをバイパスするように液化ガス供給経路30に分岐接続されている。
【0015】
制御部50は、充填開始スイッチ52からのスタート信号、またはノズルスイッチ24のオフにより車両140に搭載された燃料タンク144に液化ガスの充填制御を行うと共に、流量計70から出力された流量パルスを積算して液化ガス充填量を演算し、演算した液化ガス充填量を表示器54に表示する。そして、充填停止スイッチ53からの停止信号、または充填ノズル130がノズル収納部22に戻されてノズルスイッチ24がオフからオンに切り替わることにより液化ガス充填用開閉弁V1を閉弁して充填を終了する。
【0016】
車両140は走行距離に応じて液化ガスを徐々に消費するため、車両140に搭載された燃料タンク144の内部には、液化ガス(液相)と液化ガスが気化したガス(気相)とがある。例えば、日差しの強い夏場に車両140が走行する際は、太陽光で高温となった路面からの熱で燃料タンク144が加熱され、気相のガスが熱膨張してタンク内の蒸気圧力が上昇する。このように、燃料タンク144の圧力上昇によりタンク圧力と供給圧力との圧力差が所定値以下の場合、充填開始してもタンク圧力が低下するまで液化ガスの流量が増加せず、その分充填時間(充填開始から充填終了までに要する時間)が長くかかることになる。
【0017】
そこで、制御部50では、メモリ56に格納された制御プログラムを実行する。この制御プログラムは、液化ガスの瞬時流量値が予め設定された下限値より少ない場合、あるいは車両140の燃料タンク144のタンク圧力が供給圧力よりも高い場合には、回収用弁V2、または回収用弁V2及び液化ガス供給弁V3を開弁して当該燃料タンク144のタンク圧力を減圧した後、液化ガス充填用開閉弁V1を開弁して車両140に搭載された燃料タンク144に液化ガスの充填制御を行う制御プログラムが各納されている。
【0018】
セパレータ60は、液化ガス供給経路150を介して液化ガス貯蔵タンク及びポンプなどからなる液化ガス供給源に連通されており、ポンプから吐出された液化ガスに含まれる気泡(気化したガス)を分離し、ガス還流経路160を介して分離したガスを貯蔵タンクに還流させる。また、セパレータ60において気泡が分離された液化ガスは、液化ガス充填用開閉弁V1の開弁により液化ガス供給経路30、充填ホース120を通過して充填ノズル130に供給される。
【0019】
冷却ユニット90は、回収経路40を冷却する冷却管路92と、冷却管路92内に充填された冷媒を冷却しながら循環させる冷却機94とを有する。尚、冷却機94は、制御部50により制御されており、燃料タンク144より回収したガスを冷却するときに稼働するように制御される。
【0020】
回収用弁V2は、冷却ユニット90の下流に設けられ、燃料タンク144へ供給される液化ガスの流量が所定流量以下の場合(燃料タンク144のタンク圧力が供給圧力を超える場合、あるいはタンク圧力と供給圧力との差が所定以下の場合)に制御部50により開弁される。尚、回収用弁V2が開弁されるときは、液化ガス充填用開閉弁V1が閉弁されており、燃料タンク144のガスを回収経路40に回収して燃料タンク144内の圧力を減圧する。
【0021】
液化ガス供給弁V3は、冷却ユニット90の上流に設けられ、冷却ユニット90によって冷却された液化ガスを燃料タンク144に供給するときに制御部50により開弁される。
【0022】
ここで、制御部50が実行する制御処理について説明する。
【0023】
図2は液化ガス充填装置の制御部50が実行する制御処理を説明するためのフローチャートである。図2に示されるように、S11では、充填開始か否かをチェックする。S11において、充填ノズル130がノズル収納部22から外されてノズルスイッチ24がオフになった場合、あるいは充填ノズル130が車両140の接続部142に接続されて充填開始スイッチ52がオンに操作された場合、充填開始と判断してS12に進む。
【0024】
S12では、液化ガス充填用開閉弁V1を開弁する。これにより、貯蔵タンクからの液化ガスが液化ガス供給経路30、充填ホース120を通過して充填ノズル130に供給される。
【0025】
次のS13では、流量計70によって計測された瞬時流量値Q1が予め設定された所定流量値Qより多いか否かをチェックする。尚、所定流量値Qとしては、例えば、流量計70の計測範囲の最小値(下限流量値)に設定される。
【0026】
S13において、流量計70によって計測された瞬時流量値Q1が予め設定された所定流量値Qより多い場合(Q1>Q:YESの場合)、燃料タンク144に充填される液化ガスの流量が十分にあり、燃料タンク144に対する液化ガス充填処理が可能であるので、そのまま液化ガスの充填を継続する。
【0027】
次のS14では、充填終了か否かをチェックする。S14において、充填ノズル130がノズル収納部22から外されてノズルスイッチ24がオフ、且つ充填停止スイッチ53がオフ、且つ流量計70により計測された瞬時流量値Q1が所定流量値Qを超える場合(YESの場合)は、充填中と判断して液化ガス充填を継続する。
【0028】
また、S14において、充填ノズル130がノズル収納部22に戻されてノズルスイッチ24がオンの場合、または充填停止スイッチ53がオンに操作された場合、または流量計70により計測された瞬時流量値Q1が所定流量値Qより少ない流量(計測不可能な微小流量値)に低下した場合(NOの場合)は、充填終了と判断してS15に進み、液化ガス充填用開閉弁V1を閉弁する。
【0029】
また、上記S13において、回収用弁V2を開弁してから所定時間が経過量計70によって計測された瞬時流量値Q1が予め設定された所定流量値Qより少ない場合(Q1<Q:NOの場合)、燃料タンク144に充填される液化ガスの流量が少なく、燃料タンク144に対する液化ガス充填処理が正常に行えないので、S16に進む。S16では、一旦液化ガス充填用開閉弁V1を閉弁する。
【0030】
続いて、S17において、回収用弁V2を開弁して燃料タンク144のガスを回収経路40に回収する。これにより、燃料タンク144の内部で気化したガスが回収されると共に、燃料タンク144内の圧力が低下する。
【0031】
次のS18では、回収用弁V2を開弁してから所定時間T1が経過したか否かをチェックする。S18において、回収用弁V2を開弁してから所定時間T1が経過するまで(NOの場合)この状態を継続し、回収用弁V2を開弁してから所定時間T1が経過すると(YESの場合)、S19に進み、回収用弁V2を閉弁する。
【0032】
さらに、S20では、液化ガス充填用開閉弁V1を開弁して燃料タンク144への液化ガスの充填を開始する。これにより、燃料タンク144にタンク温度よりも低温の液化ガスが充填されて燃料タンク144の温度が徐々に低下する。また、冷却機94を駆動して燃料タンク144より回収経路40に回収したガスを冷却する。
【0033】
続いて、S21では、液化ガス充填用開閉弁V1を開弁して所定時間T2が経過したか否かをチェックする。S21において、液化ガス充填用開閉弁V1を開弁して所定時間T2が経過するまで(NOの場合)この状態を継続し、液化ガス充填用開閉弁V1を開弁して所定時間T2が経過すると(YESの場合)、S22に進み、液化ガス充填用開閉弁V1を閉弁すると共に、冷却機94を停止する。
【0034】
次のS23では、回収用弁V2及び液化ガス供給弁V3を開弁して冷却ユニット90により冷却された回収経路40内の液化ガスを燃料タンク144に供給する。これにより、冷却ユニット90により冷却された液化ガスが燃料タンク144に供給されて燃料タンク144の温度がさらに低下する。燃料タンク144の気相は、冷却された液化ガスの供給により液化されて温度及び圧力が低下する。
【0035】
続いて、S24では、回収用弁V2及び液化ガス供給弁V3を開弁してから所定時間T3が経過したか否かをチェックする。S24において、回収用弁V2及び液化ガス供給弁V3を開弁してから所定時間T3が経過するまで(NOの場合)この状態を継続し、回収用弁V2及び液化ガス供給弁V3を開弁してから所定時間T3が経過すると(YESの場合)、S25に進み、回収用弁V2及び液化ガス供給弁V3を閉弁する。
【0036】
次のS26では、液化ガス充填用開閉弁V1を開弁する。上記S17〜S25の処理により燃料タンク144の温度及び圧力が当初よりも低下しているため、液化ガス充填用開閉弁V1の開弁により貯蔵タンクからの液化ガスが当初よりも大流量で燃料タンク144に充填され、充填開始から燃料タンク144の圧力が目標圧力となる充填終了までの充填時間を短縮できる。
【0037】
続いて、S27に進み、充填終了か否かをチェックする。S27において、充填ノズル130がノズル収納部22から外されてノズルスイッチ24がオフ、且つ充填停止スイッチ53がオフ、且つ流量計70により計測された瞬時流量値Q1が所定流量値Qを超える場合は、充填中と判断して液化ガス充填を継続する。
【0038】
また、S27において、充填ノズル130がノズル収納部22に戻されてノズルスイッチ24がオンの場合、または充填停止スイッチ53がオンに操作された場合、または流量計70により計測された瞬時流量値Q1が所定流量値Qより少ない流量(計測可能な下限値)に低下した場合は、充填終了と判断してS28に進み、液化ガス充填用開閉弁V1を閉弁する。
【0039】
このように、車両140の燃料タンク144が温度上昇によりガス充填開始時の瞬時流量値Q1が所定流量値Qより少ない場合は、S16〜S28の制御処理によって燃料タンク144の気相圧力を低下させ、あるいは燃料タンク144から回収した液化ガスを冷却ユニット90により冷却して燃料タンク144に供給することで燃料タンク144の温度を低下させることができる。その結果、燃料タンク144の圧力が低下するため、液化ガスを充填する際の流量が増加して充填時間を短縮することが可能になる。
〔変形例〕
図3は液化ガス充填装置の変形例を示す図である。尚、図3において、前述した図1と同一部分には同一符合を付してその説明を省略する。
【0040】
図3に示されるように、液化ガス充填用開閉弁V1の上流の液化ガス供給経路30には、第1圧力センサ170が設けられ、回収経路40の回収弁V2の下流には、第2圧力センサ180が設けられている。第1圧力センサ170は、液化ガス供給経路30の供給圧力P1を検出し、圧力検出信号を制御部50に出力する。第2圧力センサ180は、充填ノズル130が車両140の接続部142に接続された際の燃料タンク144のタンク圧力が充填ホース120を介して導入されると共に、燃料タンク144のタンク圧力を検出し、そのときの圧力検出信号を制御部50に出力する。
【0041】
図4は変形例の制御処理を説明するためのフローチャートである。図4に示されるように、S31では、充填開始か否かをチェックする。S31において、充填ノズル130がノズル収納部22から外されてノズルスイッチ24がオフになった場合、あるいは充填ノズル130が車両140の接続部142に接続されて充填開始スイッチ52がオンに操作された場合(YESの場合)、充填開始と判断してS32に進む。
【0042】
次のS32では、第2圧力センサ180により検出された燃料タンク144のタンク圧力P2と、第1圧力センサ170により検出された供給圧力P1とが比較され、タンク圧力P2が供給圧力P1より低いか否かをチェックする。S33において、タンク圧力P2が供給圧力P1より低い場合(P1>P2:YESの場合)、又は供給圧力P1とタンク圧力P2との差P1−P2が所定値Pa以上の場合(P1−P2>Pa:YESの場合)、燃料タンク144に充填される液化ガスの流量が十分にあり、短時間での充填が可能であるので、S33に進み、液化ガス充填用開閉弁V1を開弁する。これにより、貯蔵タンクからの液化ガスが液化ガス供給経路30、充填ホース120を通過して充填ノズル130に供給される。
【0043】
次のS34では、充填終了か否かをチェックする。S34において、充填ノズル130がノズル収納部22から外されてノズルスイッチ24がオフ、且つ充填停止スイッチ53がオフ、且つ流量計70により計測された瞬時流量値Q1が所定流量値Qを超える場合(YESの場合)は、充填中と判断して液化ガス充填を継続する。
【0044】
また、S34において、充填ノズル130がノズル収納部22に戻されてノズルスイッチ24がオンの場合、または充填停止スイッチ53がオンに操作された場合、または流量計70により計測された瞬時流量値Q1が所定流量値Qより少ない流量(計測可能な下限値)に低下した場合(NOの場合)は、充填終了と判断してS35に進み、液化ガス充填用開閉弁V1を閉弁する。
【0045】
また、上記S32において、燃料タンク144のタンク圧力P2が供給圧力P1より高い場合(P1<P2:NOの場合)、又は供給圧力P1とタンク圧力P2との差P1−P2が所定値Pa未満の場合(P1−P2<Pa:NOの場合)、燃料タンク144に充填される液化ガスの流量が少なくて燃料タンク144に対する液化ガス充填処理が正常に行えないので、S36に進む。尚、S36〜S47の制御処理は、前述したS17〜S28の制御処理と同じため、これらの説明は省略する。
【0046】
このように、車両140の燃料タンク144が温度上昇によりガス充填開始時の燃料タンク144のタンク圧力P2が供給圧力P1より高い場合(P1<P2)は、S36〜S47の制御処理によって燃料タンク144内の圧力を低下させ、あるいは燃料タンク144から回収したガスを冷却ユニット90により冷却して燃料タンク144に供給することで燃料タンク144の温度を低下させることができる。その結果、燃料タンク144の圧力が低下するため、液化ガスを充填する際の流量が増加して充填時間を短縮することが可能になる。
【0047】
また、上記変形例においては、燃料タンク144のタンク圧力P2を第2圧力センサ180により検出する構成について説明したが、これに限らず、例えば、車両140の燃料タンク144に圧力センサを設け、当該車載圧力センサの検出データを無線信号により液化ガス充填装置10Aの制御部50に送信する構成としても良い。
【0048】
また、別の変形例として、充填中の流量が所定値より低下したとき、あるいは、充填流量の計測値がゼロになったとき、液化ガス充填用開閉弁V1を閉弁して液化ガスの充填を停止すると共に、例えば、当該ガスステーションの管理コンピュータや充填装置や充填装置周辺の表示灯に報知する報知手段を設ける構成としても良い。
【0049】
すなわち、液化ガス充填用開閉弁V1を開弁しても車両140の燃料タンク144に液化ガスが充填されないことを報知するようにすれば、当該ガスステーションの係員は当該燃料タンク144のタンク圧力が供給圧力より高いことを認識することができる。そして、当該ガスステーションの係員は、当該燃料タンク144のガス抜き操作を行うか、あるいは燃料タンク144を冷却する冷却作業を行うことで、液化ガス充填用開閉弁V1の開弁により燃料タンク144へのガス充填が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記実施例では、車両140に搭載された燃料タンク144に液化ガスを充填する場合を一例として挙げたが、これに限らず、例えば、タンクローリ車のタンクから車両用燃料タンク以外の被充填容器(例えば、住宅や建築物の暖房設備に液化ガスを充填するための貯蔵タンクなど)に液化ガスを充填する場合にも適用することができるのは勿論である。
【0051】
また、液化ガスとしては、例えば、ブタン・プロパンなどを主成分とするLPG(Liquefied petroleum gas)を用いても良いし、あるいはディーゼル燃料として使用されるDME(ジメチルエーテル)を用いても良い。
【符号の説明】
【0052】
10、10A 液化ガス充填装置
20 筐体
22 ノズル収納部
24 ノズルスイッチ
30 液化ガス供給経路
40 回収経路
50 制御部
52 充填開始スイッチ
53 充填停止スイッチ
54 表示器
56 メモリ
60 セパレータ
70 流量計
90 冷却ユニット
92 冷却管路
94 冷却機
120 充填ホース
130 充填ノズル
140 車両
142 接続部
144 燃料タンク(被充填タンク)
150 液化ガス供給経路
160 ガス還流経路
170 第1圧力センサ
180 第2圧力センサ
V1 液化ガス充填用開閉弁
V2 回収用弁
V3 液化ガス供給弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被充填タンクに液化ガスを供給する液化ガス供給経路と、
前記液化ガス供給経路を通過する流量を計測する流量計と、
前記液化ガス供給経路を開又は閉とする開閉弁と、
前記開閉弁を開閉制御すると共に、前記流量計により計測された流量値から積算流量値を演算する制御部とを有する液化ガス充填装置において、
前記開閉弁の下流の前記液化ガス供給経路から分岐された回収経路と、
前記回収経路の下流側に設けられた回収用弁と、を備え、
前記制御部は、前記開閉弁を開弁することによる前記被充填タンクへの充填開始時に、前記流量計により計測された前記液化ガス供給経路を流れる液化ガスの流量計測値が予め設定された所定値より少ない場合に前記開閉弁を閉弁すると共に、前記回収用弁を開弁して前記被充填タンク内のガスを前記回収経路に回収し、その後前記開閉弁を開弁して液化ガスを前記被充填タンクに充填することを特徴とする液化ガス充填装置。
【請求項2】
前記回収経路の上流側を開又は閉とする液化ガス供給弁を備え、
前記制御部は、前記被充填タンクへの充填開始時に前記液化ガス供給経路の流量が所定値より少ない場合に前記開閉弁を閉弁すると共に、前記液化ガス供給弁を開弁して前記被充填タンク内のガスを前記回収経路に回収し、その後前記開閉弁を開弁すると共に、前記液化ガス供給弁を閉弁し、さらに所定時間経過後に前記液化ガス供給弁を開弁して前記回収経路に回収したガスを前記被充填タンクに戻すことを特徴とする請求項1に記載の液化ガス充填装置。
【請求項3】
被充填タンクに液化ガスを供給する液化ガス供給経路と、
前記液化ガス供給経路を通過する流量を計測する流量計と、
前記液化ガス供給経路を開又は閉とする開閉弁と、
前記開閉弁を開閉制御すると共に、前記流量計により計測された流量値から積算流量値を演算する制御部とを有する液化ガス充填装置において、
前記開閉弁の下流の前記液化ガス供給経路から分岐された回収経路と、
前記回収経路に設けられた回収用弁と、
前記液化ガス供給経路の供給圧力を検出する第1圧力センサと、
前記被充填タンクのタンク圧力を検出する第2圧力センサとを備え、
前記制御部は、前記被充填タンクへの充填開始前に前記第1圧力センサにより検出された前記供給圧力と前記第2圧力センサにより検出された前記タンク圧力とを比較し、前記タンク圧力が前記供給圧力よりも高い場合には、あるいはタンク圧力と供給圧力との差が所定圧力以下の場合には、前記回収用弁を開弁して前記被充填タンクのガスを前記回収経路に回収し、その後前記開閉弁を開弁して液化ガスを前記被充填タンクに充填することを特徴とする液化ガス充填装置。
【請求項4】
前記制御部は、充填開始前の前記タンク圧力が前記供給圧力よりも高い場合には、前記回収弁を開弁して前記被充填タンクのガスを前記回収経路に回収し、その後前記開閉弁を開弁して前記被充填タンクに液化ガスを充填し、その後前記回収弁及び前記液化ガス供給弁を開弁して前記回収経路に回収したガスを前記被充填タンクに戻すことを特徴とする請求項3に記載の液化ガス充填装置。
【請求項5】
前記回収経路に冷却ユニットを設け、前記回収経路に回収された液化ガスを前記冷却ユニットにより冷却して前記被充填タンクに充填することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の液化ガス充填装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate