説明

液化ガス払出し設備および圧力調整弁

【課題】 液化ガス払出し設備において、液化ガスの脈動を抑えて安定したガスの払出しができる液化ガス払出し設備を提供すること。
【解決手段】 液化ガスを貯蔵する液化ガス貯槽2と、この液化ガス貯槽2から供給される液化ガスを気化させる蒸発器3と、この液化ガス又は発生する気化ガスが導かれる管路6,11,12とを備えた液化ガス払出し設備1に、前記液化ガス貯槽2と前記蒸発器3との間に前記蒸発器3に供給する液化ガスの圧力を所定圧力まで減圧する圧力調整弁10を備えさせ、前記液化ガス貯槽2から前記蒸発器3までの前記管路6,11,12が上流から下流に向かって下り勾配であるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスを蒸発させてガスとして工場等に払出しする液化ガス払出し設備および圧力調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液化天然ガス(以下、単に「LNG」ともいい、液化状態を「LNG液」、気化状態を「LNGガス」という)等が、ガスボイラ用ガス、焼却炉の燃焼用ガス、その他、工場等(以下、これらを総称して「工場等」という)における種々の燃料ガスとして利用されており、利用場所に近接してLNGガス等を定量供給するための払出し設備(サテライト設備)が設置される場合がある。
【0003】
図4(a) は、従来のLNG払出し設備101を示す概略図である。この払出し設備は、LNGを貯蔵するためのLNG貯槽102(LNG貯蔵タンク)と、このLNG貯槽102に貯蔵されたLNG液が配管106から貯槽元弁109を介して供給される蒸発器103と、この蒸発器103で気化させられたLNGガスを蒸発器出口元弁107を介して一時的に溜めて圧力変動(脈動)を抑えるバッファタンク104とを備えている。そして、このバッファタンク104から減圧弁108で所望の圧力に減圧されたLNGガスが送出ガスとして工場等に供給されるようになっている。
【0004】
また、上記貯槽元弁109の下流側から分岐した管路110に加圧用蒸発器111が設けられ、この加圧用蒸発器111で気化させられた加圧ガスが管路112から上記貯槽102の頂部に戻され、この加圧ガスによって貯槽102内にLNG液を蒸発器103へ供給するための内圧を作用させている。
【0005】
さらに、このようなLNG払出し設備101の場合、例えば、蒸発器103の下流側に設けられた蒸発器出口元弁107までが約0.35MPaの高圧で、その下流側ではバッファタンク104を介して減圧弁108で約0.1MPaに減圧されて払出しされるようになっている。各位置におけるガス圧力と温度は、その一例を図示している。
【0006】
また、上記したようなLNG払出し設備101の場合、LNG貯槽102内に貯蔵されたLNG液の残量が少なくなるとタンクローリによって受入用管路105から補給される。このLNG液の補給時には、LNG貯槽102内のLNG液量の変化等で貯槽内圧が変動する。
【0007】
なお、この種の先行技術として、液化ガスを減圧弁で減圧した後、間接熱交換機によって気化させ、この気化時の潜熱によって流体を冷却することで液化ガスの潜熱を回収しようとしたものがある(例えば、特許文献1参照)。しかし、この特許文献1の場合、常温付近で気液平衡状態にある液化ガスを対象としているため、本発明の対象とするLNG、液化水素、液化酸素、液化窒素、液化ヘリウム、液化アルゴンのような低温液化ガスのような課題を生じることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−346199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記したように、LNG払出し設備101から払出しされるLNGガスは、上記工場等の供給先における使用条件に応じた許容変動圧の範囲内となるように一定圧の送出ガスとする必要がある。
【0010】
しかしながら、上記したLNG払出し設備101では、蒸発器103において気化させるLNGが超低温(−162℃)であるため、例えば、図4(b) に示すように、この蒸発器103で常温の気化ガスとなって排出される出口部において大きな圧力変動(脈動)を生じてしまう。この脈動は、圧力の変動幅が大きく、時間を経過しても継続して生じる。
【0011】
そのため、この脈動を吸収して圧力変動の少ない送出ガスとするために上記したようにバッファタンク104で吸収するようにしているが、このような脈動を吸収して安定した一定圧の送出ガスを得るためには非常に大容量のバッファタンク104が必要となる場合がある。また、使用条件によっては、常に許容変動圧の範囲内で安定供給することが難しい場合もあり、更なる圧力変動を抑えたいという要望もある。
【0012】
しかも、上記脈動によって蒸発器103の出口部等で継続的な騒音を生じる場合があり、その騒音が設備周辺の環境上、問題となる場合もある。
【0013】
そこで、本発明は、LNG、液化水素、液化酸素、液化窒素、液化ヘリウム、液化アルゴンのような低温の液化ガスの払出し設備(サテライト設備)において、液化ガスの脈動を抑えて安定したガスの払出しができる液化ガス払出し設備および安全弁機構付き圧力調整弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、液化ガスを貯蔵する液化ガス貯槽と、該液化ガス貯槽から供給される液化ガスを気化させる蒸発器と、該液化ガス又は発生する気化ガスが導かれる管路とを備えた液化ガス払出し設備であって、前記液化ガス貯槽と前記蒸発器との間に前記蒸発器に供給する液化ガスの圧力を所定圧力まで減圧する圧力調整弁を備え、前記液化ガス貯槽から前記蒸発器までの前記管路が上流から下流に向かって下り勾配となっている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「上流側」は液化ガス貯槽方向であり、「下流側」は所定圧に減圧して送出ガスを送出する減圧弁方向である。これにより、脈動の原因となる管路内に発生した気泡(気化ガス)が液化ガス貯槽に戻されることになるので、脈動を防止することができる。更に、圧力調整弁で減圧した液化ガスを蒸発器で気化させるので、気化させる液化ガスの圧力差が小さくなって気化したガスに脈動が生じるのを抑え、圧力変動の小さい安定したガスを払出しすることができる。
【0015】
また、前記液化ガス貯槽は、液化ガス貯蔵液面最下部位置が前記液化ガス貯槽下流側の構成よりも高位置に配設され、該液化ガス貯槽に貯蔵した液化ガスの圧力液頭が前記液化ガス貯槽より下流へ液化ガスを供給可能な供給圧以下になると前記蒸発器で気化させたガスによる圧力液頭で前記貯槽内液化ガスを供給するように構成されていてもよい。このようにすれば、貯槽に貯蔵された液化ガスの圧力液頭(pressure head)によって貯槽から液化ガスを供給することができるとともに、圧力液頭が小さくなった場合でも液化ガス貯槽に作用させる加圧用のガス圧を低くすることができ、専用の加圧用ガスを用いることなく、減圧して気化させて払出すガスで貯槽内の液化ガス供給用の圧力液頭を得ることができ、設備の構成を簡略化することができる。
【0016】
また、前記圧力調整弁の上流側の管路内の圧力が所定圧力に達すると前記圧力調整弁の上流側の液化ガスを下流側に逃す安全弁機構を備えていてもよい。このようにすれば、圧力調整弁が閉状態となった場合に上流側圧力が上昇したとしても、安全弁機構によって圧力調整弁の上流側の液化ガスを下流側に逃すことができる安全機構を備えさせることができる。
【0017】
また、前記圧力調整弁は、前記安全弁機構を内蔵していてもよい。このようにすれば、停電時等に圧力調整弁が閉鎖して上流側管路内の液化ガスが膨張して圧力上昇したとしても、内蔵した安全弁機構によって圧力調整弁の上流側圧力が所定圧力に達すると下流側に逃して上流側管路内の圧力上昇を抑えることができる。更に、圧力調整弁の開度を調整する弁体内に安全弁機構を備えさせて、安全弁機構をコンパクトに構成することができる。
【0018】
また、前記安全弁機構は、前記圧力調整弁の上流側流路と下流側流路とを連通させる連通流路部分を閉鎖する弁板と、該弁板を上流側圧力に応じて開放又は閉鎖するばね体と、該弁板の開放時に上流側流路と下流側流路を連通させる開口穴とを有していてもよい。このようにすれば、ばね式の機械的な開閉機構で、圧力調整弁の上流側圧力が所定圧力以上に達すると上流側流路と下流側流路とを連通させて上流側の液化ガスを下流側に逃す安全弁機構を構成することができる。しかも、機械的な構成であるため、信頼性の高い安全弁機構を構成することができる。
【0019】
また、本発明は、安全弁機能を有した圧力調整弁であって、上流側流路と下流側流路とを連通させる連通流路を閉鎖する弁体に安全弁機構が設けられ、該安全弁機構は、前記弁体の前記連通流路部分を閉鎖する弁板と、前記弁板を上流側圧力に応じて開放又は閉鎖するばね体と、前記弁板の開放時に上流側流路と下流側流路とを連通させる開口穴とを備えている。このようにすれば、圧力調整弁の開度を調整する弁体内に安全弁機構を備えさせて、コンパクトに構成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、液化ガスを気化させて所定圧に減圧して払出す設備において、気化させたガスに脈動が生じるのを抑制し、安定した圧力のガスを定量供給することが可能となる。また、信頼性の高いコンパクトな安全弁機構を有する圧力調整弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るLNG払出し設備の図面であり、(a) は概略構成図、(b) は蒸発器出口部において生じる脈動の大きさを模式的に示すグラフである。
【図2】図1に示す圧力調整弁に安全弁機構を内蔵させた例の縦断面図である。
【図3】図2に示す圧力調整弁の動作を示す図面であり、(a) は通常動作時の縦断面図、(b) は閉鎖時における動作時の縦断面図である。
【図4】従来のLNG払出し設備の図面であり、(a) は概略構成図、(b) は蒸発器出口部において生じる脈動の大きさを模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。以下の実施形態では、液化ガス払出し設備の一例として、基本的な構成を図示したLNG払出し設備1を例に説明する。なお、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における圧力の単位は全てゲージ圧である。
【0023】
図1(a) に示すように、このLNG払出し設備1は、LNG液を所定量貯蔵する液化天然ガス貯槽2(以下、「LNG貯槽2」)と、このLNG貯槽2のLNG液を気化させる蒸発器3と、この蒸発器3で気化させたLNGガスを一時的に溜めるバッファタンク4とを備えている。上記LNG貯槽2には、下部に受入用管路5と供給用管路6とが設けられている。上記蒸発器3は、LNG払出し設備1から払出す送出ガスの供給量に応じて容量、能力等が定められる。
【0024】
また、上記蒸発器3とバッファタンク4との間には蒸発器出口元弁7が設けられ、バッファタンク4の下流側には送出ガスを所定の圧力に減圧する減圧弁8が設けられている。
【0025】
さらに、この実施形態の上記LNG貯槽2は、LNG液の貯蔵液面最下部位置(レベル)が下流側の蒸発器3等よりも高位置となるように配設されており、このLNG貯槽2に貯蔵したLNG液は、自らの圧力液頭によって供給用管路6から供給されるようになっている。但し、貯蔵量が少なくなって供給圧が保てないときには、上記蒸発器3で気化させて減圧弁8で減圧した送出ガスによって圧力液頭が保てるように加圧管路13が設けられている。この加圧管路13には、加圧調整弁14が設けられており、LNG貯槽2の内圧が送出ガスの圧力以下となった場合には加圧調整弁14が開放されてLNG貯槽2内の圧力液頭を送出ガス圧力に保てるようにしている。
【0026】
そして、上記LNG貯槽2の供給用管路6に設けられた貯槽元弁9と上記蒸発器3との間に、このLNG貯槽2から供給されるLNG液を所定圧力まで減圧する圧力調整弁10が設けられている。この圧力調整弁10は、供給用管路6内の圧力(例えば、P=0.35MPa)を、所定の圧力(例えば、P=0.195MPa以下)に減圧するようになっている。この圧力調整弁10により、圧力調整弁10の上流側における高圧のLNG液を、下流側では低圧のLNG液としている。なお、この圧力調整弁10の上流側及び下流側におけるLNG液の温度は、T=−162℃である。また、この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、圧力P=0.2MPa以上を「高圧」、P=0.2MPa未満を「低圧」としている。
【0027】
さらに、上記蒸発器3によって気化されて上記バッファタンク4に溜められるLNGガスは、上記圧力調整弁10によって減圧された圧力のP=0.195MPa以下のままであるが、温度が常温となっている。このバッファタンク4に貯められたLNGガスは、下流側の工場等における使用条件に適した所望の送出ガス圧力(例えば、圧力P=0.1MPa、温度T=常温)に減圧弁8で減圧されて送出される。各位置におけるガス圧力と温度は、その一例を図示している。
【0028】
一方、上記圧力調整弁10及び貯槽元弁9は、通常、停電時等にLNG液が下流側に流れないように自動的に閉鎖されるようになっている。しかしながら、両弁9,10が同時に閉鎖されると、LNG貯槽2から供給用管路6に供給されたLNG液は、上記圧力調整弁10と貯槽元弁9との間の管路11内においてその後の入熱によって大きく膨張してしまう。
【0029】
そこで、圧力調整弁10の上流側に安全弁機構20を備えさせ、この安全弁機構20によって、例えば、上記したように圧力調整弁10の上流側配管11がLNG払出し設備1の停電によって閉鎖されて圧力調整弁10の上流側管路11内のLNG液圧力が所定圧力以上に上昇した場合には、管路11内のLNG液を圧力調整弁10の下流側に逃すことで管路11内の圧力上昇を抑えるようにしている。図示する例の安全弁機構20は、上記圧力調整弁10の上流側の管路11と、この圧力調整弁10の下流側の管路12との間に安全弁21を設けた構成となっている。
【0030】
また、上記LNG貯槽2から上記蒸発器3までの管路6,11,12が、上流から下流に向けて下り勾配となっている。このように管路6,11,12を下流方向に下り勾配とすることにより、蒸発器3で気化させるときに生じる脈動の原因となる気泡(気化ガス)を管路12,11,6からLNG貯槽2に戻して脈動が生じるのを防止している。この管路6,11,12の下り勾配としては、液化ガスに応じて設定されるが、管路6,11,12の途中に上り勾配となる箇所がなければよい。なお、好ましくは、0.1°〜10°、更に好ましくは、0.5°〜5°の下り勾配にすれば、安定して気泡(気化ガス)をLNG貯槽2へ戻すことができる。
【0031】
図2に示す圧力調整弁10は、安全弁機構を圧力調整弁10に内蔵させた例を示している。以下の説明では、図示する状態の上下方向に基いて説明する。この圧力調整弁10を用いる場合、上記安全弁21は不要となる。図示するように、この圧力調整弁10は、弁箱25の上流側流路26と下流側流路27との間に形成された連通流路28に弁座29が設けられている。図示する状態は、弁体30の下端に形成された嵌入部33が連通流路28に嵌り、その嵌入部33の外周に形成された鍔部34を弁座29に上方から密接させることによって連通流路28が閉鎖された状態を示している。この弁体30は、弁箱25の上部に固定されたボンネット31に設けられた電磁開閉機構41の作動軸32によって上下動させられ、電磁開閉機構41の制御量によって連通流路28が所定の開閉量となるように構成されている。この連通流路28の開閉量を制御することで、上流側流路26のLNG液を減圧して下流側流路27に流している。
【0032】
そして、この実施形態の圧力調整弁10は、上記安全弁機構20とは異なる安全弁機構35が上記弁体30に内蔵されている。この安全弁機構35の具体的な構造としては、上方が閉鎖され下方が開放した筒体36と、この筒体36の内部で上記作動軸32の軸方向に移動する弁板37と、この弁板37を筒体36の開放した下方に向けて押圧する圧縮ばね38とを備えており、上記筒体36には、開放側端部の内周に、上記圧縮ばね38に押圧された弁板37が当接する弁体弁座39が設けられている。この弁板37を弁体弁座39に押圧して筒体36の下部開口を閉鎖する閉鎖力は、圧縮ばね38のばね力によって設定される。圧縮ばね38のばね力は、圧力調整弁10による通常の圧力調整時における圧力では弁板37は移動せず、上流側流路26のLNG液圧力が所定圧力以上に上昇した場合に下流側に逃して安全弁として機能させたい圧力で弁板37が押上げられるばね力に設定される。
【0033】
また、上記筒体36の周囲には、上記弁体弁座39の位置よりも上方位置に、弁板37が圧縮ばね38に抗して所定量上昇させられた時に上記上流側流路26と下流側流路27とを連通させる複数の開口穴40が設けられている。
【0034】
このような安全弁機構35によれば、上記弁体30の鍔部34が弁座29に密接した閉鎖状態で上流側流路26におけるLNG液の圧力が所定圧力に達すると、上記弁板37が圧縮ばね38のばね力に抗して押上げられ、弁体30に設けられた開口穴40を介して上流側流路26と下流側流路27とが連通させられて、高圧となった上流側のLNG液を下流側に逃すことができる。
【0035】
次に、図3(a),(b) に基いて、上記圧力調整弁10の通常動作時と、安全弁機構動作時とそれぞれ説明する。LNG液の流れは矢印で示す。
【0036】
図3(a) に示すように、上記圧力調整弁10の通常動作時は、電磁開閉機構41(図2)によって作動軸32の動作量を制御することで弁体30の昇降量が制御され、これによって上流側流路26から連通流路28を介して下流側流路27に流れる流量が制御される。この流量制御により、上流側流路26内のLNG液が減圧されて下流側流路27へと流される。
【0037】
一方、図3(b) に示すように、安全弁機構動作時は、例えば、停電時に電磁開閉機構41が制御不能となって弁体30が連通流路28を閉鎖した状態となり、その後の入熱によって上流側流路26内のLNG液圧力が上昇して、この上流側流路26内のLNG液圧力が上記弁体30に設けられた圧縮ばね38のばね力に抗して弁板37を押上げる圧力に達すると弁板37が上昇させられる。そして、この弁板37が筒体36に設けられた開口穴40の位置部分まで上昇させられると、開口穴40を介して上流側流路26と下流側流路27とが連通されて上流側流路26内の高圧LNG液が下流側流路27に逃される。その後、上流側流路26のLNG液圧力が圧縮ばね38のばね力以下になると、弁板37が圧縮ばね38によって自動的に閉じられて弁体弁座39に密接させられる(図2に示す状態)。この弁板37による上流側流路26と下流側流路27との連通又は遮断は、上流側流路26内のLNG液圧力に応じて自動的に行われる。
【0038】
このように、この実施形態の圧力調整弁10に内蔵された安全弁機構35によれば、別途の安全弁を設けずとも上流側流路26の圧力に応じて上流側流路26のLNG液を自動的に下流側流路27に逃すことができる。しかも、圧力調整弁10の開度を調整する弁体30内に安全弁機構を備えさせて、安全弁機能を有する圧力調整弁10をコンパクトに構成することができる。
【0039】
そして、以上のように構成されたLNG払出し設備1によれば、LNG貯槽2内のLNG液が貯槽元弁9を開放することにより管路11内に供給され、このLNG液が圧力調整弁10によって減圧された後、管路12を介して蒸発器3に供給される。
【0040】
この蒸発器3に供給されるLNG液は、上記したように圧力調整弁10によって所定の圧力まで減圧されているため、図1(b) に示すように、蒸発器3で気化されて常温となって排出される蒸発器出口のLNGガスは、大きな脈動を抑えられた状態で排出されるようにできる。しかも、図示するように時間を経過しても大きな脈動を抑えることができるので、大きな騒音等を生じることなく安定した圧力のLNGガスを蒸発器出口元弁7を介してバッファタンク4に溜めることができる。
【0041】
また、このように蒸発器3から排出されるLNGガスの脈動を小さくすることができるので、バッファタンク4の容量を従来に比べて小さくすることができ、設備の小型化や設備費用の抑制を図ることができる。その上、脈動の大きさによっては、例えば、管路容積によって脈動を吸収することも可能となる場合もあり、バッファタンク4の削減等の更なる設備の小型化を図ることも可能となる。
【0042】
さらに、LNGガスは減圧弁8で所定圧力に減圧されて下流側に送出されるが、この送出ガスは、上記したように従来に比べて脈動が大きく抑えられているので、圧力変動の非常に少ない安定した送出ガスを供給できるLNG払出し設備1を構成することができる。しかも、脈動による騒音等も抑えて、環境上の問題も生じないLNG払出し設備1とすることもできる。
【0043】
また、上記実施形態では、LNG貯槽2の貯蔵液面レベルを高くすることで、通常は貯蔵しているLNGの圧力液頭で供給用管路6に供給でき、LNG貯槽2内の液量が減少して圧力液頭が小さくなった場合にのみ減圧弁8から送出される送出ガスをLNG貯槽2の頂部に戻すことで圧力液頭を確保するようにしているので、常時圧力液頭を確保するための構成(加圧用蒸発器111等)を不要として、LNG払出し設備1の運用効率を向上させることもできる。
【0044】
しかも、LNG払出し設備1の停電等によって貯槽元弁9及び圧力調整弁10が閉鎖されて、これら貯槽元弁9と圧力調整弁10との間の管路11におけるLNG液が入熱で膨張したとしても、圧力調整弁10の安全弁機構35(20)によって上流方向のLNG液を下流方向に逃すことができるので、LNG液の供給管路における安定性を保つことができる。
【0045】
その上、上記したように蒸発器3の上流側において、圧力調整弁10でLNGガスを上記したように、例えば、P=0.195MPa以下の圧力(0.2MPa未満)まで減圧することにより、このLNG払出し設備1を高圧ガス貯蔵設備とすることができ、高圧ガス製造設備と比べて保守・点検等に要する労力の軽減も図ることができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、基本的な構成を図示して説明したが、本発明は上記基本的構成にその他の設備要素を付加したLNG払出し設備においても適用することができ、上記した構成のLNG払出し設備1に限定されるものではない。
【0047】
また、上記実施形態では、各位置におけるLNGの圧力の一例を示して説明したが、上記圧力は一例であり、上記実施形態に限定されるものではない。
【0048】
また、上記実施形態では、LNGを例に詳細に説明したが、本発明はLNGに限定されるものではなく、液化水素、液化酸素、液化窒素、液化ヘリウム、液化アルゴンなどの低温の液化ガスにも適用することができる。
【0049】
さらに、上記実施形態では、圧力調整弁10に安全弁機構35を内蔵させた例を詳細に説明したが、安全弁機構20を内蔵しない圧力調整弁10で構成してもよく、安全弁機構は上記実施形態に限定されるものではない。
【0050】
また、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る液化ガス払出し設備は、定量的に燃料ガスを使用する工場等において利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 天然ガス払出し設備
2 液化天然ガス貯槽
3 蒸発器
4 バッファタンク
5 受入用管路
6 供給用管路
7 蒸発器出口元弁
8 減圧弁
9 貯槽元弁
10 圧力調整弁
11 管路(上流側)
12 管路(下流側)
13 加圧管路
14 加圧調整弁
20 安全弁機構
21 安全弁
26 上流側流路
27 下流側流路
28 連通流路
29 弁座
30 弁体
32 作動軸
33 嵌入部
34 鍔部
35 安全弁機構
36 筒体
37 弁板
38 圧縮ばね
39 弁体弁座
40 開口穴
41 電磁開閉機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯蔵する液化ガス貯槽と、該液化ガス貯槽から供給される液化ガスを気化させる蒸発器と、該液化ガス又は発生する気化ガスが導かれる管路とを備えた液化ガス払出し設備であって、
前記液化ガス貯槽と前記蒸発器との間に前記蒸発器に供給する液化ガスの圧力を所定圧力まで減圧する圧力調整弁を備え、
前記液化ガス貯槽から前記蒸発器までの前記管路が上流から下流に向かって下り勾配であることを特徴とする液化ガス払出し設備。
【請求項2】
前記液化ガス貯槽は、液化ガス貯蔵液面最下部位置が前記液化ガス貯槽下流側の構成よりも高位置に配設され、
該液化ガス貯槽に貯蔵した液化ガスの圧力液頭が前記液化ガス貯槽より下流へ液化ガスを供給可能な供給圧以下になると前記蒸発器で気化させたガスによる圧力液頭で前記貯槽内液化ガスを供給するように構成されている請求項1に記載の液化ガス払出し設備。
【請求項3】
前記圧力調整弁の上流側の管路内の圧力が所定圧力に達すると前記圧力調整弁の上流側の液化ガスを下流側に逃す安全弁機構を備えている請求項1又は2に記載の液化ガス払出し設備。
【請求項4】
前記圧力調整弁は、前記安全弁機構を内蔵している請求項3に記載の液化ガス払出し設備。
【請求項5】
前記安全弁機構は、前記圧力調整弁の上流側流路と下流側流路とを連通させる連通流路部分を閉鎖する弁板と、該弁板を上流側圧力に応じて開放又は閉鎖するばね体と、該弁板の開放時に上流側流路と下流側流路を連通させる開口穴とを有している請求項4に記載の液化ガス払出し設備。
【請求項6】
安全弁機能を有した圧力調整弁であって、
上流側流路と下流側流路とを連通させる連通流路を閉鎖する弁体に安全弁機構が設けられ、
該安全弁機構は、前記弁体の前記連通流路部分を閉鎖する弁板と、
前記弁板を上流側圧力に応じて開放又は閉鎖するばね体と、
前記弁板の開放時に上流側流路と下流側流路とを連通させる開口穴とを備えている圧力調整弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−67787(P2012−67787A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210671(P2010−210671)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(000160359)吉野石膏株式会社 (48)
【出願人】(510252759)小村産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】