説明

液化高圧ガス供給方法とその装置及び液化高圧ガス貯蔵容器

【課題】本発明の目的は、液化高圧ガス貯蔵容器の内部圧力以上の設定圧力まで短時間で昇圧でき、設定圧力で所定の流量の液化高圧ガスを処理室に供給でき、液化高圧ガスを導入するときの処理室昇圧時の試料破損を防止できる液化高圧ガス供給方法とその装置及び液化高圧ガス貯蔵容器を提供することにある。
【解決手段】本発明は、被処理物が収納された処理室に液化高圧ガスを設定圧力まで充填する高圧ガス処理方法において、前記液化高圧ガスを貯蔵する液化高圧ガス貯蔵容器から前記液化高圧ガスを処理室に流路抵抗を介する第1系統によって流入させ、前記処理室内の圧力が所定の圧力になった後、前記第1系統を前記液化高圧ガス貯蔵容器からの前記液化高圧ガスを前記処理室に高圧ポンプによって圧送する第2系統に切り換えて前記液化高圧ガスを前記処理室に充填することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な液化高圧ガス供給とその装置及び液化高圧ガス貯蔵容器に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、特許文献1に示される従来の液化高圧ガス供給装置の一例を示す装置の模式断面図である。処理室601は液化高圧ガス609を充填できる強度を有する圧力容器であり、内部に被処理物607を内包できる容積と、内部に処理物607を設置できる開閉機構を有している。
【0003】
液化高圧ガス貯蔵容器603はサイフォン管を有し、内部に液化高圧ガス604を貯蔵している。サイフォン管605は逆止機能付き開閉弁606を介して高圧ポンプ602に配管されており、更に処理室601に配管される。
【0004】
図5において、液化高圧ガス貯蔵容器603のバルブ606を開放すると、サイフォン管605を介して液化高圧ガス604は処理室601の内部に導入される。このとき、高圧ポンプ602の液化高圧ガス貯蔵容器603との接続口の圧力は、液化高圧ガス貯蔵容器603の内部圧力と同じ圧力である。
【0005】
また、処理室601内部空間への被処理物607の設置は、大気下で行うため、バルブ606開放直前、処理室内部は大気圧である。液化高圧ガス604は、処理室601内部と高圧液化ガス貯蔵容器603の圧力差で膨張し、一部又は大半が気化しながら液化高圧ガス貯蔵容器603と同じ圧力まで充填される。
【0006】
液化高圧ガス貯蔵容器603と処理室601の圧力差はほぼ同じとなった時点から高圧ポンプ602を駆動して液化高圧ガス604を処理室601の圧送(吐出)して、高圧ガス貯蔵容器603の内部圧力以上の所定の圧力へ昇圧する。
【0007】
図6(a)は、高圧ポンプ動作中の、ピストンが下死点の位置の高圧ポンプの断面図である。シリンダー208は、液化高圧ガス206とその飽和蒸気で満たされるが、液化高圧ガスの占有比率が著しく低い状態を示している。図6(b)は、この状態でピストン207が上死点まで移動した場合の断面を示す。
【0008】
基本的に、ピストン207が上死点にある場合と、下死点にある場合のシリンダー206の容積差の分だけポンプ外に吐出されるため、シリンダー207の気液比率をポンプの吐出能力に乗じた圧送液量しか得ることができないことが、前述した、液化高圧ガス貯蔵容器の内部圧力以上の設定圧力まで昇圧するために時間を要すること、設定圧力で所定の流量の液化高圧ガスを処理室に供給できない原因である。
【0009】
従って、この問題は、ピストン207が下死点に在る場合の、シリンダー208内の液化高圧ガス206の占有率を高くすれば解決できる。具体的には、液化高圧ガス貯蔵容器603には逆止機能(逆止弁)を内蔵した逆止機能付開閉弁606を有し、液化高圧ガス貯蔵容器603と処理室601の圧力が同じになると、高圧ポンプ602の逆止弁204の作動圧差によって閉じた状態となり、シリンダー208に供給される液化高圧ガスが著しく少なくなり、具体的には数パーセント以下の液化高圧ガス占有率となることが原因である。
【0010】
液化高圧ガス604を処理室601に導入する際に、液化高圧ガス貯蔵容器603の逆止機能付開閉弁606を開放すると、サイフォン管605を介して液化高圧ガス604は処理室601の内部に導入される。導入の初期段階(特には、高圧ガス貯蔵容器の内部圧力と処理室の圧力差が高圧ガス貯蔵容器の20%程度以上存在する間)において、液化高圧ガスが被処理物に噴射され破損する問題があった。
【0011】
バルブ606と処理室601を接続する配管に流路抵抗を設置すれば液化高圧ガスの噴射による衝撃を回避できるが、衝撃を回避できるだけの流路抵抗は、液化高圧ガスを処理室に導入・供給するときには妨げとなってしまう。
【0012】
【特許文献1】特開2002-318073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来、液化高圧ガスを設定圧力まで処理室に充填するには、液化高圧ガス貯蔵容器に貯蔵している液化高圧ガスを、高圧ポンプや圧縮機(コンプレッサー)を用いて液化高圧ガスを設定圧力まで処理室に圧送していた。しかし、処理室へ液化高圧ガスを充填する場合には以下に示す問題が存在していた。
(1)設定圧力まで昇圧するために時間を要する。
【0014】
具体的な例として、純度99.99%以上の高純度液化二酸化炭素を30kg充填したサイフォン式液化二酸化炭素ボンベから、最大400ml/分の液送能力を有するプランジャー式の高圧ポンプを使用して、400ml/分の液化二酸化炭素を圧送して、容積2000mlの処理室を10MPaまで昇圧するために約7分から30分間程度の時間を要している。昇圧時間の差は、ボンベの充填率とボンベを設置する周囲温度に起因する差である。
(2)設定圧力で所定の流量の液化高圧ガスを処理室に供給できない。
【0015】
具体的な例として、(1)と同様の構成で、容積2000mlの処理室を10MPaまで昇圧した後、同ポンプの流量設定を100ml/分に変更する。処理室は背圧弁を装備してあり、設定圧力を超えて処理室に圧送される液化二酸化炭素と同じ量の処理室内の二酸化炭素は背圧弁から処理室外に排出され、処理室内は設定圧力で保持される。
【0016】
高圧ポンプと処理室の間にコリオリ式流量計を接続して、設定圧力(10MPa)到達後の高圧ポンプが圧送する液化二酸化炭素の流量(質量)を測定したところ、1〜5ml/分(温度23℃の液化二酸化炭素換算)程度の流量しか得られないことが分かった。(1)の問題点と同じ原因である。
(3)液化高圧ガス貯蔵容器内圧までの処理室の昇圧時の試料破損。
【0017】
液化高圧ガス貯蔵容器の内部圧力までの処理室の昇圧は、基本的に液化高圧ガス貯蔵容器と処理室間の配管、配管継手、バルブ等の部品の流路抵抗に依存する。昇圧時間の短縮を図るために流路抵抗を小さくすると、処理室内に設置した試料への液化高圧ガスの衝撃が大きくなり試料が破損すことがあった。他方、流路抵抗を大きくすると、液化高圧ガスの衝撃は実用上問題ない程度に低減できるが昇圧に時間を要するという問題があった。
【0018】
以上のように、従来技術においては、設定圧力まで昇圧するために時間を要すること、及び設定圧力で所定の流量の液化高圧ガスを処理室に供給できないという課題と、液化高圧ガス貯蔵容器内圧までの処理室の昇圧時の試料破損を回避ができないものであった。
【0019】
本発明の目的は、液化高圧ガス貯蔵容器の内部圧力以上の設定圧力まで短時間で昇圧でき、設定圧力で所定の流量の液化高圧ガスを処理室に供給でき、かつ、液化高圧ガスを導入するときの処理室昇圧時の試料破損を防止できる液化高圧ガス供給方法とその装置及び液化高圧ガス貯蔵容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、被処理物が収納された処理室に液化高圧ガスを設定圧力まで充填する高圧ガス処理方法において、前記液化高圧ガスを貯蔵する液化高圧ガス貯蔵容器から前記液化高圧ガスを処理室に流路抵抗を介する第1系統によって流入させ、前記処理室内の圧力が所定の圧力になった後、前記第1系統を前記液化高圧ガス貯蔵容器からの前記液化高圧ガスを前記処理室に高圧ポンプによって圧送する第2系統に切り換えて前記液化高圧ガスを前記処理室に充填することを特徴とする。
【0021】
前記液化高圧ガスを前記液化高圧ガス貯蔵容器に設けられた非逆止機能開閉弁を通して前記第1系統及び前記第2系統に流出させること、又、前記液化高圧ガスを前記第1系統によって流入させ、前記処理室内の圧力が前記液化高圧ガス貯蔵容器内の圧力よりやや低い同等になった後、前記第2系統に切り換えて前記液化高圧ガスを前記処理室に充填することができる。
【0022】
前記液化高圧ガスを前記液化高圧ガス貯蔵容器内の底部より流入し、前記第1系統及び第2系統に流出させること、又、前記処理室に設けられた背圧弁等の圧力調整機能により、前記高圧ポンプによって前記液化高圧ガスを供給している間も前記設定圧力を保持することができる。
【0023】
本発明は、被処理物が収納された処理室に液化高圧ガスを設定圧力まで充填する高圧ガス処理装置において、前記液化高圧ガスを貯蔵する液化高圧ガス貯蔵容器と、前記液化高圧ガス貯蔵容器から前記液化高圧ガスを前記処理室に流路抵抗を介して流入させる第1系統と、前記液化高圧ガス貯蔵容器から前記液化高圧ガスを処理室に高圧ポンプによって圧送する第2系統とを有することを特徴とする。
【0024】
前記液化高圧ガス貯蔵容器は、その外部に突出しその内部の底部に達するサイフォン管と、該サイフォン管の前記液化高圧ガスの流出側に設けられた非逆止機能開閉弁とを有すること、又、前記高圧ポンプはその高圧力部を冷却する冷却構造を有することができる。
【0025】
前記高圧ポンプと処理室との間の配管に加熱機能を設け液化高圧ガスを気化させてから前記設定圧力まで前記処理室に充填すること、前記処理室は背圧弁等の圧力調整機能を有すること、前記前記高圧ポンプ及び流路抵抗には前記液化高圧ガス貯蔵容器側にコントローラからの指示によって自動的に駆動する自動弁を設けることができる。
【0026】
本発明は、液化高圧ガスを貯蔵する貯蔵容器と、該貯蔵容器に設けられその外に突出しその内部の底部に達するサイフォン管と、該サイフォン管の前記液化高圧ガスの流出側に設けられた非逆止機能開閉弁とを有することを特徴とする液化高圧ガス貯蔵容器にある。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、液化高圧ガス貯蔵容器の内部圧力以上の設定圧力まで短時間で昇圧でき、設定圧力で所定の流量の液化高圧ガスを処理室に供給でき、かつ、処理室に液化高圧ガスを導入するときの昇圧に際し、試料破損を防止できる液化高圧ガス供給方法とその装置及び液化高圧ガス貯蔵容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は本発明の液化高圧ガス供給装置の一例を示す断面図である。処理室401は、液化高圧ガスを設定圧力で充填できる強度を有する圧力容器であり、内部に被処理物607を内包できる容積と、内部に被処理物407を設置できる支持台と、その容器を下部と上部の蓋を有する開閉機構を有している。
【0029】
本実施例の液化高圧ガス供給装置は、液化高圧ガス貯蔵容器403と、液化高圧ガス貯蔵容器403内に設けられたサイフォン管405と、サイフォン管405に設けられた逆止機能の無い開閉弁である非逆止機能開閉弁406と、開閉ハンドル415とを有し、更に、コントローラからの指示により圧縮空気によって自動的に駆動する自動弁411、コントローラからの指示により駆動するニードル弁により構成される流路抵抗410を介して処理室601に配管接続され、処理室401に配管される第1系統と、コントローラからの指示により圧縮空気によって自動的に駆動する自動弁412を介して高圧ポンプ402に配管接続され、処理室401に配管される第2系統との処理室401への二つの高圧液化ガス供給流路を装備している。液化高圧ガス貯蔵容器403の内部には液化高圧ガス404を貯蔵している。
【0030】
処理室401は、背圧弁408に接続してあり、設定圧力を超えて処理室401に圧送される液化高圧ガス409と同じ量の処理室401内の液化高圧ガス409を背圧弁408から処理室401外に排出され、処理室401内は設定圧力を保持できる機能を有している。
【0031】
高圧ポンプ402と処理室401との間の配管に加熱ヒータを巻きつけ、処理室401を超臨界状態にした後に、加熱によって液化高圧ガスを気化させて設定圧力まで処理室401に充填することができる。
【0032】
以下、液化高圧ガスを液化二酸化炭素、液化高圧ガス貯蔵容器をサイフォン式液化二酸化炭素ボンベとした場合を例に説明する。
【0033】
図2は、処理室へ液化二酸化炭素を充填して、液化二酸化炭素で洗浄または乾燥する場合の各工程の処理室における圧力変化の例を示す図である。図2の圧力変化と図1の液化高圧ガス供給装置を用いて一連の工程との関係を以下説明する。
【0034】
図2において、A点では、大気圧下で被処理物407を処理室401に設置した後、処理室401を密閉状態にする。自動弁412を閉じ、自動弁411を開く。流路抵抗410は約0.01のCV値を持たせてあるが、この値の0〜100%の範囲で可変としてある。
【0035】
図2において、A点からのB点までの昇圧工程の圧力変化は、液化二酸化炭素ガスを貯蔵する液化高圧ガス貯蔵容器ボンベ403の頭部に設けられた開閉ハンドル415によって頭上弁406を開くと、液化二酸化炭素の液化高圧ガス404はサイフォン管405を通り流路抵抗410を介する第1系統を通して徐々に処理室401に充填される。処理室401の容積を1000mlとした場合、約60秒程度で処理室401の内部圧力は液化高圧ガス貯蔵容器403と同じ約6MPaとなる。処理室401は室温(約25℃)であり、このとき処理室401は約70%の液化二酸化炭素とその飽和蒸気である高圧二酸化炭素との液化高圧ガス409で充填される。図に示すように、処理室401の圧力は、最初は緩やかに上昇するがその後急激に上昇する。
【0036】
図2のB点からC点までの高圧ポンプ402による昇圧工程の圧力変化は、処理室401の内部圧力が液化高圧ガス貯蔵容器403の内圧6MPaよりやや低いがほぼ同じ圧力5MPaとなったら自動弁411を閉じ、自動弁412を開いてから高圧ポンプ402を使用する第2系統を通して、液化二酸化炭素を処理室401へ圧送し10MPaまで昇圧する。
【0037】
高圧ポンプ402の吐出能力は400ml/分であるが、高圧ポンプ402内のシリンダー内で一部が気化するため吐出効率が低下するが、高圧ポンプ402の高圧力部の外部は室温の水を循環させて冷却することで、吐出効率の低下を低減して、10MPaまでの昇圧に約60秒を要する。図に示すように、処理室401の圧力は、最初は緩やかに上昇するがその後急激に上昇する。
【0038】
A点からのB点までの昇圧工程及びB点からC点までの昇圧工程の圧力変化はいずれも放物線に沿って上昇する。
【0039】
図2のC点からD点までの処理工程は、更に高圧ポンプ402で処理室401に液化二酸化炭素の供給を10分間継続させる。設定圧力の10MPaを超えて処理室401に供給される液化二酸化炭素は、背圧弁408から排出され、処理室401は設定圧力で保たれる。この処理工程で、液化二酸化炭素の温度を31.1℃以上に加熱すると、処理室401内の液化二酸化炭素は超臨界状態となり、所謂、超臨界乾燥または超臨界洗浄と言われる処理を行うことができる。
【0040】
図2のD点からE点までの減圧工程の圧力変化は、処理工程での10分経過後、自動弁411、412を閉じ、高圧ポンプ402を停止した後、自動弁413を開いて減圧弁414から徐々に二酸化炭素が排出され、300秒で大気圧となり、一連の処理工程が終了する。
【0041】
図3は液化高圧ガスを圧送するための高圧ポンプの断面図である。高圧ポンプボディ101は、液化高圧ガスを充填できる強度を有しており、液化高圧ガス貯蔵容器403との接続口102、処理室401との接続口103、液化高圧ガス106を一時的に充填する円柱状の空間を持つシリンダー108、シリンダー内の高圧液化ガス106を充填したままシリンダー108の容積を可変にすることでシリンダ内の液化高圧ガス106を吐出させるピストン107から構成される。
【0042】
シリンダー108と液体高圧ガス貯蔵容器403側との接続口102の間には逆止弁104を、シリンダー108と処理室401との接続口103の間には逆止弁105をそれぞれ装備しており、いずれの逆止弁104、105も同じ方向に液化高圧ガス106を流出すれように動作するものである。又、図中の高圧ポンプボディ101は、ピストン107の往復運動に伴う摩擦熱と液化高圧ガス106の吐出に伴う圧縮熱によって高温になり、液化高圧ガス106の圧送効率が低下するので、その頭部に冷媒を流通させて冷却する冷却体を設け、その温度を低めることにより圧送効率を高めることができる。
【0043】
図3(a)は、ピストン107が下死点の位置に有る場合、図3(b)はピストン107が上死点に有る場合を示している。ピストン107が上死点にある場合と下死点にある場合のシリンダー108の容積差の分だけポンプ外に吐出される構造であることを示す。シリンダー106の容器とピストン107の単位時間あたりのストローク数で設定量の吐出量すなわちポンプ流量が得られる。
【0044】
図4は、逆止弁の基本構造を示す断面図である。図3の高圧ポンプに装備している逆止弁104、105、逆止弁204、205の基本構造を示す断面図である。逆止弁のボディ304は、液化高圧ガスを充填できる強度を有しており、シール301、バネ303を介して逆止弁ボディ304に装着されるプレート302から構成される。
【0045】
図4(a)は、位置Aより位置Bの方が圧力が高い場合のプレート302の位置を示している。圧力差によりプレート302は、シール301に押付けられ、位置Bから位置A方向への流れを発生させない。
【0046】
図4(b)は、位置Aより位置Bの方が圧力が低い場合のプレート302の位置を示している。プレート302は、シール301に押付けられることなく、位置Aから位置Bの方向への流れを妨げることは無い。
【0047】
前述の図6に示すように、ピストン207が上死点にある場合と下死点にある場合のシリンダー206の容積差の分だけポンプ外に吐出されるため、シリンダー207の気液比率をポンプの吐出能力に乗じた圧送液量しか得ることができないことが、前述した、液化高圧ガス貯蔵容器の内部圧力以上の設定圧力まで昇圧するために時間を要すること、設定圧力で所定の流量の液化高圧ガスを処理室に供給できない原因である。従って、この問題は、ピストン207が下死点に在る場合の、シリンダー208内の液化高圧ガス206の占有率を高くすれば解決できる。
【0048】
即ち、液化高圧ガス404を貯蔵する液化高圧ガス貯蔵容器403と、その液化高圧ガス404を処理室401に圧送する高圧ポンプ402とを有する高圧ガス処理装置において、液化高圧ガス貯蔵容器403と高圧ポンプ402を接続する配管に逆止弁を無くせばよいので、前述の図1に示す逆止機能の無い開閉弁である頭上弁406とするものである。
【0049】
また、高圧ポンプ402による脈動は、図1の構成において、高圧ポンプ402を複数に並列設置して位相を変えることで解消できる。
【0050】
高圧ポンプ402はピストン107とシリンダー106の擦動による摩擦によりシリンダー106の温度が上昇して、液化高圧ガス貯蔵容器403の内部圧力と同じであっても、温度差に起因する気液比率が低下するため高圧ポンプ402の高圧ポンプボディー101を冷却するのは有効である。
【0051】
液化高圧ガス404を処理室401に導入する際の液化高圧ガス403の被処理物407への衝撃の大きさは、液化高圧ガス貯蔵容器403と処理室401の圧力差に依存する。従って、液化高圧ガス404を処理室401へ導入を開始した瞬間が最も大きく、以後、圧力差が小さくなるに従い衝撃は問題とならなくなる。液化高圧ガス貯蔵容器403と処理室401内の圧力差が被処理物407を破壊する圧力差を有している間のみ、液化高圧ガス404を第1系統の流路抵抗410を介して処理室401へ導入し、圧力差が被処理物407の破損に至らない圧力差となった場合には流路抵抗410を設けていない第2系統に切り換えて高圧ポンプ402を通して液化高圧ガス404を処理室401へ供給するように2系統以上有することで、液化高圧ガス貯蔵容器403内圧までの処理室401の昇圧時の被処理物407の破損を解決できる。
【0052】
本実施例は、液化高圧ガス貯蔵容器403から液化二酸化炭素を吐出能力400ml/分の高圧ポンプ402を用いた小規模かつ単純な装置構成で、大気圧から10MPaまでの昇圧を120から200秒程度の短時間で行うことができ、且つ、液化二酸化炭素を処理室401に導入するときの衝撃による被処理物407の破壊を防ぐことができるものである。
【0053】
以上のように、本実施例によれば、液化高圧ガス貯蔵容器の内部圧力以上の設定圧力まで短時間で昇圧でき、設定圧力で所定の流量の液化高圧ガスを処理室に供給でき、かつ、処理室に液化高圧ガスを導入するときの昇圧に際し、試料破損を防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の液化高圧ガス供給装置の断面図である。
【図2】本発明の液化高圧ガス供給時の処理室の圧力変化を示す処理工程との関係を示す線図である。
【図3】本発明に係る高圧ポンプの断面図である。
【図4】本発明に係る逆止弁の模式断面図である。
【図5】従来の液化高圧ガス供給装置の断面図である。
【図6】高圧ポンプの吐出機構に供給される液化高圧ガスの大半が気化することを示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0055】
101…高圧ポンプボディ、102、103、202、203…接続口、104、105…逆止弁、108、208…シリンダー、107、207…ピストン、201…高圧ポンプボディ、106、206、209、404、409、604、609…液化高圧ガス、301…シール、302…プレート、303…バネ、304…逆止弁ボディ、401、601…処理室、402、602…高圧ポンプ、403、603…液化高圧ガス貯蔵容器、405、605…サイフォン管、406…非逆止機能開閉弁、407、607…被処理物、408、608…背圧弁、410…流路抵抗、411、412、413…自動弁、414…減圧弁、415…開閉ハンドル、607…逆止機能付き開閉弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が収納された処理室に液化高圧ガスを設定圧力まで充填する高圧ガス処理方法において、前記液化高圧ガスを貯蔵する液化高圧ガス貯蔵容器から前記液化高圧ガスを処理室に流路抵抗を介する第1系統によって流入させ、前記処理室内の圧力が所定の圧力になった後、前記第1系統を前記液化高圧ガス貯蔵容器からの前記液化高圧ガスを前記処理室に高圧ポンプによって圧送する第2系統に切り換えて前記処理室に充填することを特徴とする液化高圧ガス供給方法。
【請求項2】
請求項1において、前記液化高圧ガスを前記液化高圧ガス貯蔵容器に設けられた非逆止機能開閉弁を通して前記第1系統及び前記第2系統に流出させることを特徴とする液化高圧ガス供給方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記液化高圧ガスを前記第1系統によって流入させ、前記処理室内の圧力が前記液化高圧ガス貯蔵容器内の圧力よりやや低い同等になった後、前記第2系統に切り換えて前記処理室に充填することを特徴とする液化高圧ガス供給方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記液化高圧ガスを前記液化高圧ガス貯蔵容器内の底部より流入し、前記第1系統及び第2系統に流出させることを特徴とする液化高圧ガス供給方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記処理室に設けられた背圧弁により、前記高圧ポンプによって前記液化高圧ガスを供給している間も前記設定圧力を保持することを特徴とする液化高圧ガス供給方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記液化高圧ガスが液化炭酸ガスであることを特徴とする液化高圧ガス供給方法。
【請求項7】
被処理物が収納された処理室に液化高圧ガスを設定圧力まで充填する高圧ガス処理装置において、前記液化高圧ガスを貯蔵する液化高圧ガス貯蔵容器と、前記液化高圧ガス貯蔵容器から前記液化高圧ガスを前記処理室に流路抵抗を介して流入させる第1系統と、前記液化高圧ガス貯蔵容器から前記液化高圧ガスを処理室に高圧ポンプによって圧送する第2系統とを有することを特徴とする液化高圧ガス供給装置。
【請求項8】
請求項7において、前記液化高圧ガス貯蔵容器は、サイフォン管と、該サイフォン管の前記液化高圧ガスの流出側に設けられた非逆止機能開閉弁とを有することを特徴とした液化高圧ガス供給装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、前記高圧ポンプは、その高圧力部を冷却する冷却構造を有することを特徴とする液化高圧ガス供給装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかにおいて、前記高圧ポンプと処理室との間の配管に加熱機能を設け、液化高圧ガスを気化させてから前記設定圧力まで前記処理室に充填することを特徴とする液化高圧ガス供給装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかにおいて、前記処理室は、背圧弁を有することを特徴とする液化高圧ガス供給装置。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかにおいて、前記前記高圧ポンプ及び流路抵抗は、前記液化高圧ガス貯蔵容器側にコントローラによって自動的に駆動する自動弁が設けられていることを特徴とした液化高圧ガス供給装置。
【請求項13】
液化高圧ガスを貯蔵する貯蔵容器と、該貯蔵容器に設けられたサイフォン管と、該サイフォン管の前記液化高圧ガスの流出側に設けられた非逆止機能開閉弁とを有することを特徴とする液化高圧ガス貯蔵容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−292259(P2007−292259A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123093(P2006−123093)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000233550)株式会社日立ハイテクサイエンスシステムズ (112)
【Fターム(参考)】