説明

液吸収シートの製造方法

【課題】開孔部を形成するための針への樹脂溶融物の付着を防ぎ、生産効率を向上できる液吸収シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】疎水層11と、液吸収性を有する液吸収層12と、を備え、少なくとも疎水層11に開孔部13が形成された液吸収シート10の製造方法であって、疎水層11と液吸収層12とを積層体を形成する積層工程と、前記積層体の液吸収層12側から、加熱穿孔することにより開孔部13を形成する開孔部形成工程と、を備え、開孔部形成工程における加熱温度は、前記熱可塑性樹脂の融点以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉又は魚等の血液又は体液(以下ドリップという)が出る食品の下に敷かれて使用される液吸収シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケット等の食品売り場では、魚や肉等の食品を定量ずつトレイに取り分け、透明なフィルムで包装した状態で販売している。こうした販売形態をとる際には、食品が陳列棚に長時間放置された状態となり、ドリップがトレイに溜まり易い。トレイに溜まったドリップは、見た目を損ねるだけでなく、食品の傷みを早める原因にもなる。
【0003】
従来より、ドリップが出る食品が載置されるトレイには、トレイと該食品との間に敷くことにより、ドリップを速やかに吸収することができる液吸収シート(以下、このような目的で使用する液吸収シートをドリップシートともいう。)が使用されている。例えば、特許文献1には、抗菌性及び吸水吸油性を有する不織布と、この不織布の一方の面に積層配置され、多数の微孔が形成されたプラスチック有孔フィルム層と、不織布の他方の面に積層配置され、空気の流通を遮断するプラスチック外装フィルム層と、を備えるドリップシートが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、液吸収層の表面及び裏面に樹脂フィルムからなる層を設け、少なくとも前記食品と接する表面の層に多数の開孔部が形成されているドリップシートが提案されている。
【0005】
特許文献1及び2で提案されたドリップシートでは、フィルム層側から加熱された針を突き刺すことにより、多数の開孔部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−205762号公報
【特許文献2】特開2002−300848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フィルム層側から針を突き刺すことによって開孔部を形成する上記の製造方法においては、フィルム層に針を突き刺す工程を繰り返すうちに、針の先端部に溶融した樹脂の一部からなる付着物が蓄積する。そして、付着物が異物としてフィルム層の開孔部付近に再付着してしまうという問題があった。フィルム層への異物の再付着を防ぐためには、逐次、針のクリーニング作業が必要であり、この作業が液吸収シートの生産効率を低下させてしまう要因となっていた。
【0008】
したがって、本発明は、開孔部を形成するための針への樹脂溶融物の付着を防ぎ、生産効率を向上できる液吸収シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、熱可塑性樹脂により構成されるフィルム又は疎水性不織布からなる疎水層と、液吸収性を有する不織布により構成され前記疎水層に積層される液吸収層と、を備え、少なくとも前記疎水層に複数の開孔部が形成された液吸収シートの製造方法であって、前記疎水層と前記液吸収層とを積層する積層工程と、前記液吸収層側からの加熱穿孔により複数の開孔部を形成する開孔部形成工程と、を備え、前記開孔部形成工程における加熱温度は、前記熱可塑性樹脂の融点以上である液吸収シートの製造方法に関する。
【0010】
また、前記液吸収層は、非熱可塑性繊維からなる不織布であることが好ましい。
【0011】
また、前記液吸収層は、熱可塑性繊維を含んで構成され、且つ、該熱可塑性繊維は、前記疎水層を構成する熱可塑性樹脂よりも融点が高く、前記加熱温度は、前記熱可塑性樹脂の融点以上、且つ、前記熱可塑性繊維の融点未満であることが好ましい。
【0012】
また、前記開孔部形成工程において、前記液吸収層を構成する不織布の一部が前記複数の開孔部から前記疎水層側に突出されることが好ましい。
【0013】
また、開孔部形成工程において、加熱穿孔により溶融した前記熱可塑性樹脂により、前記疎水層と前記液吸収層とを接着することが好ましい。
【0014】
また、前記開孔部形成工程の後に設けられ、前記液吸収層の疎水層が配置されていない側の面に非透水性の第三層を積層する第二積層工程を更に備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、熱可塑性樹脂により構成されるフィルム又は疎水性不織布からなる疎水層と、液吸収性を有する不織布により構成され前記疎水層に積層される液吸収層と、が積層された二層構造の液吸収シートであって、少なくとも前記疎水層に形成される複数の開孔部と、前記液吸収層を構成する不織布の一部が前記複数の開孔部から前記疎水層側に突出して形成された突出繊維部と、を更に備える液吸収シートに関する。
【0016】
また、前記複数の開孔部は、前記液吸収層側から、加熱穿孔により形成され、前記開孔部を形成する際の加熱温度は、前記熱可塑性樹脂の融点以上であることが好ましい。
【0017】
また、前記液吸収層は、非熱可塑性繊維からなる不織布であることが好ましい。
【0018】
また、前記液吸収層は、熱可塑性繊維を含んで構成され、且つ、該熱可塑性繊維は、前記熱可塑性樹脂よりも融点が高く、前記加熱温度は、前記熱可塑性繊維の融点よりも低いことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の液吸収シートの製造方法によれば、開孔部を形成する工程における穿孔針への樹脂溶融物の付着を防止でき、液吸収シートの生産効率を向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る液吸収シートの平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る液吸収シートの側面図である。
【図3】図1のA−A線における断面の部分拡大断面図である。
【図4】本発明の実施態様に係る液吸収シートの製造方法の一工程である開孔部形成工程のプロセスを模式的に示した図である。
【図5】本発明の実施形態に係る液吸収シートの開孔部を疎水層側から撮影した拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しながら説明する。まず、液吸収シートの構造について説明し、その後、液吸収シートの製造方法について説明する。なお、本発明の液吸収シートは、食品から出るドリップを吸収するドリップシートとして特に好適に用いることができる他、液体を吸収保持するための他の様々な用途にも使用することができる。ここでは、ドリップシートとして用いる場合について、本発明の実施態様及び実施形態の好ましい一例として説明する。図1は、本発明の実施形態に係る液吸収シートの平面図であり、図2は、液吸収シート10の側面図である。図3は、図1のA−A線における断面の部分拡大模式図である。図4は、本発明の実施態様に係る液吸収シートの製造方法の一工程である開孔部形成工程のプロセスを模式的に示した図である。図5は開孔部の拡大写真である。
【0022】
<液吸収シートの構造>
本実施形態の液吸収シート10は、図1及び図2に示すように、疎水層11と、この疎水層11に積層配置される液吸収層12と、少なくとも疎水層11に形成される複数の開孔部13と、複数の開孔部13から疎水層11側に突出して形成された突出繊維部14と、を備える。
【0023】
液吸収シート10の平面視における大きさ・形状は特に限定されない。その使用目的に応じて適宜好ましい大きさ・形状に形成し又は裁断することができる。
【0024】
疎水層11は、液吸収シート10の上面を構成する。この疎水層11の上面は、液吸収シート10に載置される食品の底面に接する。疎水層11は、熱可塑性樹脂により構成されるフィルム、又は、熱可塑組樹脂により構成される疎水性不織布により構成される。熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等が好ましい。そして、これらの樹脂を単層又は多層に形成した樹脂フィルムを疎水層11の材料として好適に用いることができる。また、熱可塑性樹脂からなる疎水性不織布としては、例えばPP製のSMS不織布、PP製のサーマルボンド不織布等が好ましい。このように疎水層を構成する材料を熱可塑性樹脂からなるフィルムや不織布とすることにより、後に説明する開孔部形成工程において、加熱した穿孔針20によって容易に且つ確実に開孔部13を形成することができる。上記の材料の中でも、柔らかさとコストの点から、HDPE等のポリエチレン系の樹脂フィルムを用いることが特に好ましい。
【0025】
疎水層11の上記各材料には界面活性剤を混入することが好ましい。混入する界面活性剤の量は、疎水層11に対して、界面活性剤が1から3質量%の割合で含有されるようになる量であることが好ましい。界面活性剤の含有量が1質量%未満であると、裁断加工の際に不都合な静電気の発生を抑制できず、又、界面活性剤の含有量が3%を超えると、疎水層11液吸収シート表面の浸水性が強くなり、撥水機能が不十分となる。
【0026】
界面活性剤としては非イオン系のポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等、アニオン系のアルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルサルフェート、アルキルフォスフェート等、カチオン系の第4級アンモニウムクロライド、第4級アンモニウムサルフェート、第4級アンモニウムナイトレート、又は、両性系のアルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型、アルキルアラニン型等を用いることができる。
【0027】
疎水層11の厚さは、1〜70μm、好ましくは30〜70μmとする。厚さが1μm未満である場合、ドリップシートとして望ましい耐久性に欠けるため好ましくなく、30μm以上70μm以下の範囲の厚さであれば、ドリップシートとしての耐久性は十分であり、且つ、開孔部を形成する際の加工性にも優れる。70μmを超えると、加工性が下がり、資材に無駄が生じコスト面で不利になるため好ましくない。
【0028】
液吸収層12は、疎水層11の下面側に積層配置される。この液吸収層12は、食品等から滲出したドリップを吸収して保持する。液吸収層12を構成する材料としては、エアレイド不織布、サーマルボンド不織布といった不織布、紙、ウレタン等、或いは植物由来の高液吸収性高分子を用いることができる。不織布を構成する繊維としては、パルプ、マニラ麻、ケナフ、コットン等の天然繊維、レーヨン等の植物系再生繊維、或いはポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成繊維を用いることができる。パルプとしては針葉樹を原料とするNBKP等の木材系のパルプ或いは、ケナフ、マニラ麻等非木材のパルプを用いることができる。これらのなかでも、液吸収性の点から、パルプを主体とする不織布を用いることが特に好ましい。
【0029】
液吸収層12を構成する不織布等の目付や厚みは、食品から滲出したドリップを十分に吸収することができるように決定される。パルプからなるエアレイド不織布について言えば、目付は10〜120g/m、厚みは0.3〜3mm程度であることが好ましく、0.5〜2mm程度であることがより好ましい。
【0030】
なお、液吸収層12の材料となる不織布が熱可塑性繊維を含む場合には、その熱可塑性繊維は、疎水層11を構成する熱可塑性樹脂よりも融点が高いものが用いられる。また、穿孔針20の温度調整を容易に行えるようにするために、熱可塑性繊維と熱可塑性樹脂の融点の温度差は50℃以上であることが好ましい。
【0031】
図1、及び図3に示すように、複数の開孔部13は、疎水層11及び液吸収層12を貫通して形成される。ただし、開孔部13は、ドリップの導入経路として、少なくとも疎水層11の表面から疎水層11と液吸収層12の接する界面上まで貫通していればよく、必ずしも疎水層11及び液吸収層12を貫通していなくてもよい。複数の開孔部13は、食品から滲出して疎水層11の上面に滞留するドリップを液吸収層12側に透過させる。開孔部13の密度は、1cmあたり、20個以上であることが好ましく、200個以上であることが更に好ましい。多数の開孔部13がむらなく配置されることによって、食品が偏りなく空気と接するようになる。開孔部13は、上記の密度で、疎水層11の全面に亘って形成されていることが好ましい。ただし、開孔部13を疎水層11の一部範囲にのみ設けて、ドリップを滲出する食品を置く位置をその一部範囲に限定して使用するものとすることもできる。
【0032】
開孔部13の開孔径は、5.0mm以下、より好ましくは0.1〜2.0mm程度の大きさとする。開孔径が上記範囲より大きいと、開孔部13から液吸収層12に吸収されたドリップが視認されるようになってしまうので好ましくない。一方、開孔径が上記範囲より小さいと、開孔部13を通じての液吸収層12へのドリップの吸液性が低下し、ドリップシートとして十分な吸液性を発揮しえなくなるため好ましくない。
【0033】
図3に示すように、突出繊維部14は、複数の開孔部13の周縁部における疎水層11側に形成される。この突出繊維部14は、液吸収層12を構成する不織布の一部が開孔部13を挿通して疎水層11側に突出して形成される。開孔部13の周囲のドリップが突出繊維部14へと吸収されること契機として、疎水層11の表面に滞留したドリップは、より速やかに開孔部13内へと導入されていく。
【0034】
以上説明した構成を備える液吸収シート10によれば、疎水層11の開孔部13を通って液吸収層12に速やかにドリップが吸収される。また、その際に突出繊維部14が液導入のきっかけとなり更に液吸収を促進する。この場合において、疎水層11は、その表面にドリップが残留せず、液吸収シート10の上に置かれた食品は、ドリップと分離されることとなり、ドリップが原因で生ずる食品の傷みの進行を防止することができる。
【0035】
<液吸収シートの製造方法>
次に、本発明の液吸収シートの製造方法の好ましい第一の実施態様について、図面を参照しながら説明する。図4は本発明の実施態様に係る液吸収シートの製造方法における特徴的な一工程である開孔部形成工程の開孔プロセスを模式的に示した図である。
【0036】
本実施態様における液吸収シート10の製造方法は、疎水層11と液吸収層12とを積層する積層工程と、積層工程により積層された疎水層11及び液吸収層12からなる積層体における液吸収層12側から、加熱された穿孔針20を突き刺して複数の開孔部13を形成する開孔部形成工程と、開孔部13が形成された積層体を所定の製品サイズに裁断する裁断工程とからなる。
【0037】
[積層工程]
積層工程は、疎水層11と液吸収層12とを一体化し、疎水層11と液吸収層12からなる積層体を形成する工程である。本実施態様においては、液吸収層12の表面の全面に点在する接着部(図示せず)において、ホットメルト接着剤によって疎水層11と液吸収層12とを接着する。また、疎水層11と液吸収層12とを一体化して積層体を形成する他の方法として、液吸収層12の表面に疎水層11の材料樹脂を溶融押出しして樹脂フィルムを成形する方法によることも可能である。
【0038】
液吸収層12には、上記した通り、不織布、紙、ウレタン等、或いは植物由来の高液吸収性高分子を用いることができるが、針葉樹を原料とするNBKP等の木材系のパルプを主体とするエアレイド不織布を特に好適に用いることができる。このエアレイド不織布の目付は、10〜120g/mであることが好ましい。また、エアレイド不織布の厚みは、0.3〜3mm程度であることが好ましく、0.5〜2mm程度であることがより好ましい。
【0039】
疎水層11を構成する材料としてHDPE等の熱可塑性樹脂を用いる場合は、以下の方法で合成樹脂をフィルム状に成形する。まず、合成樹脂に界面活性剤を混入する。混入する界面活性剤の量は、上記した通り、疎水層11に対して、界面活性剤が1から3質量%の割合で含有されるようになる量であることが好ましい。また、上述した通り、非イオン系、アニオン系のアルキルスルホネート、カチオン系、又は、両性系の界面活性剤を用いることができる。
【0040】
上記の割合で界面活性剤を含有させた合成樹脂を、押し出し成形法等によりフィルム状に成形する。成形されたフィルムは単層で疎水層11とすることもでき、又は、複数のフィルムを積層した複層の状態で疎水層11とすることもできる。そのようにして製造された疎水層11の厚さは1〜70μmであることが好ましく、30〜70μmであることが更に好ましい。
【0041】
また、疎水層11を構成する材料として、例えばポリプロピレン製のSMS不織布等の熱可塑性の疎水性不織布を用いてもよい。疎水層11に用いる熱可塑性の疎水性不織布は、主に加工性と材料コストの観点から、目付が10〜50g/mであることが好ましい。
【0042】
[開孔部形成工程]
図4(a)〜(d)に示す通り、開孔部形成工程は、積層工程で一体化された積層体に、加熱した穿孔針20を突き刺すことにより、加熱穿孔し、疎水層11から液吸収層12まで貫通する開孔部13を形成する工程である。
【0043】
本実施態様においては、多数の穿孔針20が外周に設けられたローラー(図示せず。以下単に、ローラーともいう。)を用いて開孔部13を形成する。また、このローラーは、穿孔針20を所定の温度に加熱する機能を備える。このようなローラーを回転させて、積層工程で形成した積層体をローラーで巻き取るようにしながら、その直下を通過させていく。ローラーの直下においては、加熱された多数の穿孔針20が連続的に上記の積層体へ突き刺され、また引き抜かれることとなる。そのようにして、効率よく多数の開孔部13を形成することができる。
【0044】
図4を参照しながら、開孔部13を形成するプロセスについて、更に詳しく説明する。このプロセスでは、予め穿孔針20を適切な温度に加熱しておく。穿孔針20の加熱温度は、疎水層を構成する熱可塑性樹脂の融点以上とし、且つ、液吸収層12に熱可塑性繊維が含まれている場合はその融点未満の温度とする。
【0045】
次に、図4(a)に示すように、積層工程で形成した積層体の液吸収層12側の面を穿孔針20と対面させる方向に向けて、ローラーの直下に通していく。
【0046】
次に、図4(b)に示すように、液吸収層12に突き刺された穿孔針20は、液吸収層12を構成する不織布の一部を疎水層11側に押しやりながら液吸収層12内を貫通していく。ここで、穿孔針20の温度は、液吸収層12に含まれる熱可塑性繊維の温度よりも低いので、液吸収層12に含まれる熱可塑性繊維は溶融しない。
【0047】
更に、図4(c)に示すように、穿孔針20は、疎水層11を構成する熱可塑性樹脂よりも高い温度に加熱されている。これにより、穿孔針20は、疎水層11を構成する熱可塑性の樹脂又は繊維を溶融しながら、容易に疎水層11を貫通して疎水層11の外面側に露出する。このとき、液吸収層12を構成する不織布の一部が穿孔針20に引き摺られて疎水層11の表面に突出する。
【0048】
そして、図4(d)に示すように、穿孔針20が、疎水層11及び液吸収層12から引き抜かれた跡に開孔部13が形成される。そして、開孔部13の周縁部の疎水層11の側には液吸収性を有する不織布からなる突出繊維部14が形成される。
以上の開孔部形成工程では、疎水層11を貫通するときに、穿孔針20には、疎水層11を構成する熱可塑性樹脂が溶融して、この溶融した熱可塑性樹脂がわずかに付着する。ところが、穿孔針20は、疎水層11を貫通した状態から引き抜かれるときに、再び液吸収層12を通過する。そのため、穿孔針20に付着した熱可塑性樹脂は、穿孔針20が液吸収シート10から引き抜かれるときに、液吸収層12を構成する不織布により除去される。
【0049】
[裁断工程]
この工程は、積層工程、開孔部形成工程を経た積層体を製品サイズに裁断し、液吸収シート10とする工程である。この裁断工程は、積層工程で製造された積層体を適度な張力をかけながら引っ張り出して行く裁断準備工程、第一裁断カッターによってシートの長さ方向に沿って切り込みを入れる第一裁断工程、第二裁断カッターによって、シートの幅方向に裁断する第二裁断工程とからなる。
【0050】
第一裁断工程、第二裁断工程において、適当なサイズに裁断された積層体は、液吸収シート10となる。裁断工程は、最終的に製品として適当なサイズとすることができる裁断方法であればよく、上記の各工程を全て経る方法に限らない。
【0051】
以上の液吸収シートの製造方法及び液吸収シートによれば、以下のような効果を奏する。
【0052】
(1)熱可塑性樹脂により構成されるフィルム又は疎水性不織布からなる疎水層側から前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加熱した穿孔針を突き刺すことによって開孔部を形成する従来の液吸収シートの製造方法においては、穿孔針を突き刺す工程を繰り返すうちに、その先端部に溶融した樹脂の一部からなる付着物が蓄積してしまう。そこで、本発明に係る液吸収シートの製造方法においては、不織布により構成される液吸収層12側から、前記熱可塑性樹脂の融点以上の加熱温度で穿孔することにより開孔部13を形成することとした。これにより、穿孔針20を最終的に引き抜く際に、その先端部が液吸収層12を構成する繊維に接触しながら液吸収層12内をすり抜けるため、穿孔針20への樹脂溶融物はその過程で除去されて付着物の蓄積を防止することができる。よって、穿孔針20のクリーニングに係る負担を軽減して生産性を高めることができる。
【0053】
(2)また、液吸収層12が非熱可塑性繊維からなる不織布である場合には、開孔部13の形成過程の初期段階において樹脂溶融物の付着が起こりにくくなり、その後の段階において微量の樹脂溶融物が付着しても、(1)と同様、穿孔針20の先端部が液吸収層12を構成する繊維に接触しながら液吸収層12内をすり抜けるため、穿孔針20への樹脂溶融物はその過程で除去されて付着物の蓄積を防止することができる。よって、穿孔針20のクリーニングに係る負担を更に軽減して生産性を高めることができる。
【0054】
(3)また、液吸収層12が熱可塑性繊維を含んで構成される場合には、液吸収層を構成する熱可塑性繊維の融点未満の加熱温度で開孔部13を形成することとした。これにより、開孔部13の形成過程の初期段階において樹脂溶融物の付着が起こりにくくなり、その後の段階において微量の樹脂溶融物が付着しても、(1)と同様、穿孔針20の先端部が液吸収層12を構成する繊維に接触しながら液吸収層12内をすり抜けるため、穿孔針20への樹脂溶融物はその過程で除去されて付着物の蓄積を防止することができる。よって、穿孔針20のクリーニングに係る負担を軽減して生産性を高めることができる。
【0055】
(4)本発明の液吸収シートの製造方法によれば、開孔部形成工程において、液吸収層12を構成する不織布の一部が複数の開孔部13から穿孔針20によって突き上げられ疎水層11側に突出し突出繊維部14を形成する。突出繊維部14は、開孔部13を通じた液吸収層12へのドリップの吸収のきっかけとなる。よって、生産性の高い製造方法で吸収性能の優れた液吸収シート10を製造することができる。
【0056】
(7)また、液吸収シート10は、熱可塑性樹脂により構成されるフィルム又は疎水性不織布からなる疎水層11と、液吸収性を有する不織布により構成され前記疎水層に積層される液吸収層12と、が積層された二層構造の液吸収シート10であって、少なくとも前記疎水層11に形成される複数の開孔部13と、前記液吸収層12を構成する不織布の一部が前記複数の開孔部13から前記疎水層11側に突出して形成された突出繊維部14と、を更に備える。突出繊維部14は、開孔部13を通じた液吸収層12へのドリップの吸収のきっかけとなる。よって、従来の液吸収シートより速やかにドリップを吸収することができる。
【0057】
(8)開孔部13は、液吸収層12側からの加熱穿孔により形成され、開口部を形成する際の加熱温度を、前記熱可塑性樹脂の融点以上とした。これにより、穿孔針20が液吸収層12を構成する繊維を突き上げて突出繊維部14を形成することとなるため、吸収性能が向上する。また、開孔部形成工程における穿孔針20への溶融樹脂の付着を防止して生産性を高めることができる。
【0058】
(9)液吸収層12は、非熱可塑性繊維からなる不織布とした。これにより、開孔部形成工程における穿孔針20への溶融樹脂の付着を防止して生産性を高めることができる。
【0059】
(10)液吸収層12は、熱可塑性繊維を含んで構成され、該熱可塑性繊維は熱可塑性樹脂より融点が高いものとし、開孔口部を形成する際の加熱温度を前記熱可塑性繊維の融点よりも低くした。これにより、開孔部形成工程における穿孔針20への溶融樹脂の付着を防止して生産性を高めることができる。
【0060】
次に、本発明の液吸収シートの製造方法の第二実施態様について説明する。第二実施態様の液吸収シートの製造方法においては、疎水層11と液吸収層12との一体化の方法が第一実施態様と異なる。第二実施態様においては、開孔部形成工程において、穿孔針20の熱により溶融した疎水層を構成する熱可塑性樹脂の接着力によって、疎水層11と液吸収層12とを接着することとした。第二実施態様の液吸収シートの製造方法によれば、以下の効果を奏する。
【0061】
(5)開孔部形成工程において、加熱穿孔により溶融した前記熱可塑性樹脂により、前記疎水層11と前記液吸収層12とを接着することとした。これにより、開孔部13の形成と2つの層の接着が一つの工程で行えるため液吸収シート10の生産性を高めることができる。
【0062】
更に、本発明の液吸収シートの製造方法の第三実施態様について説明する。第三実施態様の液吸収シートの製造方法は、第二積層工程を備える点で、第一実施態様及び第二実施態様と異なる。
【0063】
第二積層工程は、開孔部形成工程の後に設けられる。第二積層工程では、開孔部形成工程において複数の開孔部13が形成された液吸収層12及び疎水層11の積層体に、非透水性の第三層が積層される。より具体的には、第二積層工程では、積層体の液吸収層12における疎水層11が配置されていない側の面に第三層が積層される。第三実施態様の液吸収シートの製造方法によれば、以下の効果を奏する。
【0064】
(6)開孔部形成工程後に、液吸収層12の疎水層11が積層されていない一方の面に非透水性の第三層を積層することとした。これにより、上記各製造方法と同様に穿孔針20への樹脂溶融物の付着を防ぐことができ、且つ、シート裏面へのドリップの遺漏を防止できる三層構造の液吸収シートを製造することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0066】
<実施例1〜5、比較例1、2>
以下において説明する各材料を用いて、それぞれ下記表1に示す構成による液吸収シートを製造し、それぞれ実施例1〜5、比較例1、2の液吸収シートとした。実施例1〜5、比較例1の液吸収シートについては、下記の各材料からなる疎水層と液吸収層とを、順次積層し接着することにより液吸収シート用の積層体を製造した。比較例2については、更に、液吸収層の疎水層側と反対側の面上に配置する第三層を積層し接着することにより液吸収シート用の積層体を製造した。各層間の接着は、2g/mのホットメルト接着剤によって接着する方法により行った。液吸収シート用の積層体の幅は1000mm、長さは1000mとした。
【0067】
[疎水層]
疎水層及び第三層は以下の材料(材料名:厚さ又は目付)により形成した。
高密度ポリエチレンフィルム:30μm(以下、HDPEという)
SMS不織布:目付20g/m(以下、SMSという)
スパンボンド不織布:目付20g/m(以下、SBという)
尚、HDPEの融点は、約130〜137℃、SMS及びSBを構成するポリプロピレンの融点は約170℃である。
【0068】
[液吸収層]
液吸収層は以下の材料(材料名:組成:目付)により成形した。
エアレイド不織布:NBKP100%のパルプ:目付50g/m(以下、不織布1という)
エアレイド不織布:NBKP50%、PET50%のパルプ:目付50g/m(以下、不織布2という)
ウエットクレープ紙:NBKP100%のパルプ:目付50g/m(以下、紙1という)
尚、NBKPは非熱可塑性繊維であり、PETの融点は約260〜264℃である。
【0069】
<開孔部形成試験>
実施例1〜5、比較例1、2の液吸収シート用の積層体に多数の穿孔針が外周に設けられたローラーを用いて開孔部を形成した。開口部を形成する作業中、穿孔針は200℃に加熱した状態を保って作業を行った。開孔部は、開孔径を0.5mmとし、1cmあたり、15個の密度で積層体の全面に形成した。実施例1〜5については液吸収層側から、比較例1については疎水層側から、比較例2については第三層側から穿孔針を突きさすことにより開孔部を形成した。1000mに渡って開孔部を形成する工程を終えた時点で、開孔部周辺への溶融樹脂の付着の有無を調べた。また、疎水層側の面に突出繊維部が形成されているか否かを調べた。結果を表1及び図5に示す。
【0070】
<吸液性測定試験>
実施例1〜5、比較例1、2の液吸収シート用の積層体を65mm×80mmの大きさに裁断し、実施例1〜5及び比較例1、2の液吸収シートとした。これらの液吸収シートに、疎水層の表面より10mm上から1.0ml/3秒で下記の組成の生食赤色を滴下し、滴下された液がサンプル表面から吸収されるまでの時間を測定することにより、吸液性を評価した。結果を表1に示す。
生食赤色:NaCl水溶液(濃度0.9%)1L、黄5号1.63g、赤102号8.5g、赤2号2g
【0071】
【表1】

【0072】
図5は、実施例1の開孔部を疎水層側から撮影した拡大写真であり、図5より、本発明に係る製造方法によって製造することにより、開孔部の周縁部の疎水層側に突出繊維部が形成されることが分かる。
【0073】
表1より、穿孔針を不織布や紙からなる液吸収層側から突き刺した場合にのみ、穿孔針への溶融物の付着を防げることが分かる。また、開孔部形成に伴って形成される突出繊維部により吸液性が高まることが分かる。
【符号の説明】
【0074】
10 液吸収シート
11 疎水層
12 液吸収層
13 開孔部
14 突出繊維部
20 穿孔針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂により構成されるフィルム又は疎水性不織布からなる疎水層と、液吸収性を有する不織布により構成され前記疎水層に積層される液吸収層と、を備え、少なくとも前記疎水層に複数の開孔部が形成された液吸収シートの製造方法であって、
前記疎水層と前記液吸収層とを積層する積層工程と、
前記液吸収層側からの加熱穿孔により複数の開孔部を形成する開孔部形成工程と、を備え、
前記開孔部形成工程における加熱温度は、前記熱可塑性樹脂の融点以上である液吸収シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液吸収シートの製造方法であって、
前記液吸収層は、非熱可塑性繊維からなる不織布である液吸収シートの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の液吸収シートの製造方法であって、
前記液吸収層は、熱可塑性繊維を含んで構成され、且つ、該熱可塑性繊維は、前記疎水層を構成する熱可塑性樹脂よりも融点が高く、
前記加熱温度は、前記熱可塑性樹脂の融点以上、且つ、前記熱可塑性繊維の融点未満である液吸収シートの製造方法。
【請求項4】
前記開孔部形成工程において、前記液吸収層を構成する不織布の一部が前記複数の開孔部から前記疎水層側に突出される請求項1から3いずれかに記載の液吸収シートの製造方法。
【請求項5】
前記開孔部形成工程において、加熱穿孔により溶融した前記熱可塑性樹脂により、前記疎水層と前記液吸収層とを接着する請求項1から4のいずれかに記載の液吸収シートの製造方法。
【請求項6】
前記開孔部形成工程の後に設けられ、前記液吸収層における前記疎水層が配置されていない側の面に非透水性の第三層を積層する第二積層工程を更に備える請求項1から5のいずれかに記載の液吸収シートの製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂により構成されるフィルム又は疎水性不織布からなる疎水層と、液吸収性を有する不織布により構成され前記疎水層に積層される液吸収層と、が積層された二層構造の液吸収シートであって、
少なくとも前記疎水層に形成される複数の開孔部と、
前記液吸収層を構成する不織布の一部が前記複数の開孔部から前記疎水層側に突出して形成された突出繊維部と、を更に備える液吸収シート。
【請求項8】
前記複数の開孔部は、前記液吸収層側からの加熱穿孔により形成され、
前記開孔部を形成する際の加熱温度は、前記熱可塑性樹脂の融点以上である請求項7に記載の液吸収シート。
【請求項9】
前記液吸収層は、非熱可塑性繊維からなる不織布である請求項8に記載の液吸収シート。
【請求項10】
前記液吸収層は、熱可塑性繊維を含んで構成され、且つ、該熱可塑性繊維は、前記熱可塑性樹脂よりも融点が高く、
前記加熱温度は、前記熱可塑性繊維の融点よりも低い請求項8に記載の液吸収シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−187830(P2012−187830A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53593(P2011−53593)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】