説明

液吸収パックおよびそれを用いた液処理装置

【課題】 小型かつ液吸収性の優れた液吸収パックおよびそれを用いた液処理装置を提供することである。
【解決手段】 袋3は、水溶性シート1を折曲するとともに2辺に沿った接着部11a,11bを接着することにより形成される。袋3内に吸収剤2が充填され、残りの一辺に沿った接着部11cが接着される。袋3の水溶性シート1には、乾燥状態で吸収剤2の透過を阻止し、湿潤状態で液体を透過させる材料が用いられる。吸収剤2には、多量の液体を吸収することができるとともに吸収した液体を保持することができる材料が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吸収する液吸収パックおよびそれを用いた液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭または種々の産業において、排液に含まれる油および固形油脂分の処理が問題となっている。以下、油および固形油脂分を油脂分と呼ぶ。そこで、料理店、飲食店を営む店舗は、排液中の油脂分を下水へ直接に流さないための装置としてグリース阻集器を設けることになっている。頻繁にグリース阻集器の掃除を行わないと排液に含まれる油脂分は悪臭や害虫を発生させ、また、下水管を閉塞させたり、水処理センターの機能を低下させてしまう。これを防ぐために、排液に含まれる油脂分を毎日1回物理的に取り除くように関係当局から指導されている。
【0003】
グリース阻集器内に浮上した油脂分を人手によるすくい取り、または液処理装置により分離回収したときに、液体を含む油脂分をそのまま廃棄するには、液体の漏洩を阻止する何らかの容器が必要になる。そのような容器を必要とせずに液体を含む油脂分を容易に廃棄するには、液体を固形物に吸収させることが好ましい。
【0004】
そのため、液体を吸収する吸収シートが開発されている。このような吸収シートの材料としては不織布等が用いられる(特許文献1参照)。また、粉末状の吸収剤も開発されている。
【0005】
分離装置を用いて油脂分を分離する場合には、分離された油脂分から液体を除去するために、上記の吸収シートを回収容器内に設置し、油脂分に含まれる液体を回収容器内の吸収シートに吸収させる。このようにして、油脂分に含まれる液体を吸収した吸収シートを廃棄することができる。
【特許文献1】特開平7−108170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の吸収シートは吸収能力が低いため、多量の油脂分を廃棄する場合には、大面積の吸収シートが必要となる。それにより、油脂分を廃棄するためのコストが増大する。また、このような大面積の吸収シートを液処理装置に用いる場合は、分離された油脂分を貯留するための回収容器が大型化する。
【0007】
吸収剤を用いる場合、吸収剤の飛散防止のために吸収剤を袋に封入する必要がある。吸収剤は液体を吸収することにより膨張する。それにより、吸収剤の吸収能力を最大限に発揮させるためには、吸収剤を封入する袋を大きく形成しなければならない。それにより、吸収剤を封入した袋の取り扱いが煩雑となるとともに、コストが増大する。
【0008】
本発明の目的は、小型化が可能で液吸収性の優れた液吸収パックおよびそれを用いた液処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 第1の発明に係る液吸収パックは、液体を吸収する吸収剤と、吸収剤を内包する袋とを備え、液体との接触により袋の少なくとも一部が分解するものである。
【0010】
第1の発明に係る液吸収パックにおいては、袋が液体と接触した際に、袋の少なくとも一部が分解する。また、吸収剤は液体を吸収することにより膨張し、袋の分解した部分から外部に漏出する。
【0011】
この場合、吸収剤の吸収膨張が袋により阻害されない。それにより、吸収剤が多量の液体を吸収することが可能となる。したがって、小型の袋で、吸収剤の吸収能力を最大限に発揮させることができる。
【0012】
また、袋を小型化することができるので、液吸収パックが嵩張らず、保存、運搬および取り扱いが容易である。
【0013】
(2)袋は、液透過性の材料により形成されてもよい。この場合、液体が袋を透過して袋内の吸収剤に吸収されるとともに、袋の少なくとも一部が分解する。それにより、吸収剤の吸収膨張がより迅速に進行するので、短時間で多量の液体を確実に吸収することができる。
【0014】
(3)袋は、液不透過性の材料により形成されてもよい。この場合、袋の材料が液不透過性であっても、液体との接触により袋の少なくとも一部が分解することにより、袋の分解した部分から液体が袋内に流入する。袋内に流入した液体は、吸収剤により吸収される。吸収剤の吸収膨張は袋により阻害されないので、吸収剤は多量の液体を吸収することが可能となる。
【0015】
(4)液体との接触により袋の少なくとも一部が溶解してもよい。この場合、液体との接触により袋の少なくとも一部が溶解することにより、袋の少なくとも一部が分解する。それにより、液体を吸収して膨張した吸収剤が袋の外部に漏出する。したがって、吸収剤の吸収膨張が袋により阻害されない。
【0016】
(5)袋は、澱粉を含む材料から形成されてもよい。この場合、澱粉は、乾燥状態では固化し、液体との接触により溶解する。それにより、袋が液体と接触した場合に、袋の少なくとも一部が容易に溶解し、吸収剤が袋の外部に漏出する。
【0017】
(6)袋は、パルプを含む材料から形成されてもよい。この場合、パルプは、吸収剤の漏出が確実に防止され、液体との接触により離れる程度の強さで結合される。それにより、液体と接触した場合には、袋の少なくとも一部が溶解し、吸収剤が袋の外部に漏出する。
【0018】
(7)吸収剤は粉末状であってもよい。この場合、袋の分解により漏出した吸収剤が狭所に入り込むことができる。それにより、吸収剤により狭所における液体を吸収することが可能となる。
【0019】
また、吸収剤がシート状または塊状に形成される場合と比べて、粉末状に形成された場合には吸収剤の表面積が増大する。これにより、吸収剤の吸収能力が向上される。
【0020】
(8)吸収剤は、パルプを含んでもよい。この場合、パルプは吸液性が高くかつ軽量である。したがって、液吸収パックの吸収能力が高く、取り扱いが容易となる。また、パルプは安価であるので、液吸収パックの低コスト化が可能である。
【0021】
(9)吸収剤は、高分子吸収剤を含んでもよい。この場合、高分子吸収剤により多量の液体を確実に吸収することができる。
【0022】
(10)袋は接着部を有し、接着部は液体と接触することにより分離してもよい。この場合、液体との接触により接着部が分離し、袋の少なくとも一部が分解する。これにより、液体を吸収して膨張した吸収剤が袋の外部に漏出する。したがって、吸収剤の吸収膨張が袋により阻害されない。
【0023】
(11)接着部は、液溶性の接着剤により接着されてもよい。ここで、液溶性とは、液体と接触することにより溶解する性質をいう。この場合、液体との接触により接着部の接着剤が溶解し、袋の少なくとも一部が分解する。これにより、液体を吸収して膨張した吸収剤が袋の外部に漏出する。したがって、吸収剤の吸収膨張が袋により阻害されない。
【0024】
(12)接着部は、液溶性の糸により縫合されてもよい。この場合、液体との接触により接着部の糸が溶解し、袋の少なくとも一部が分解する。これにより、液体を吸収して膨張した吸収剤が袋の外部に漏出する。したがって、吸収剤の吸収膨張が袋により阻害されない。
【0025】
(13)袋は結束部を有し、結束部は液体と接触することにより分離してもよい。この場合、液体との接触により結束部が分離し、袋の少なくとも一部が分解する。これにより、液体を吸収して膨張した吸収剤が袋の外部に漏出する。したがって、吸収剤の吸収膨張が袋により阻害されない。
【0026】
(14)結束部は、液溶性の結束具により結束されてもよい。この場合、液体との接触により結束部の結束具が溶解し、袋の少なくとも一部が分解する。これにより、液体を吸収して膨張した吸収剤が袋の外部に漏出する。したがって、吸収剤の吸収膨張が袋により阻害されない。
【0027】
(15)第2の発明に係る液処理装置は、排液中の水と油脂分とを分離する分離槽と、回収容器と、分離槽において分離された油脂分を回収容器に回収する回収手段と、回収容器内に設けられる上記第1の発明に係る液吸収パックとを備えるものである。
【0028】
第2の発明に係る液処理装置においては、分離槽に貯留された排液が水と油脂分とに分離する。分離した油脂分は、回収手段により分離槽から回収容器へと回収される。油脂分に含まれる液体は回収容器内の液吸収パックにより吸収される。
【0029】
この場合、液吸収パックにおいては、袋が液体と接触した際に、袋の少なくとも一部が分解する。また、吸収剤は液体を吸収することにより膨張し、袋の分解した部分から外部に漏出する。
【0030】
この場合、吸収剤の吸収膨張が袋により阻害されない。それにより、吸収剤が多量の液体を吸収することが可能となる。したがって、小型の袋で、吸収剤の吸収能力を最大限に発揮させることができる。
【0031】
また、袋を小型化することができるので、液吸収パックが嵩張らず、保存、運搬および取り扱いが容易である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、吸収剤の吸収膨張が袋により阻害されず、吸収剤が多量の液体を吸収することが可能となる。したがって、小型の袋で、吸収剤の吸収能力を最大限に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施の形態に係る液吸収パックについて図面を参照しながら説明する。
【0034】
(1)第1の実施の形態
図1は本発明の第1の実施の形態に係る液吸収パックを示す外観斜視図である。
【0035】
図1に示すように、2枚の水溶性シート1の間に微細な粉末状の吸収剤2が載置され、水溶性シート1の4辺に沿った接着部11a,11b,11c,11dが接着される。これにより、袋3内に吸収剤2が充填された液吸収パック10が形成される。ここで、水溶性シート1とは、水、油等の液体との接触により溶解するシートをいう。袋3内に充填される吸収剤2の量は例えば約5g〜約10gである。
【0036】
接着部11a〜11dは、縫製、熱圧着または接着剤を用いた接着等の種々の接着方法により接着される。また、2枚の水溶性シート1の間に水溶性の熱可塑性シートを挿入し、接着部11a〜11dに熱を加えてもよい。ここで、熱可塑性シートは熱が加えられることにより溶融し、温度が下がることにより硬化する。それにより、水溶性シート1の接着部11a〜11dが接着される。このような熱可塑性シートを用いた接着方法は、一般的にヒートシールと呼ばれる。
【0037】
袋3の水溶性シート1には、乾燥状態で吸収剤2の透過を阻止し、湿潤状態で液体を透過させる材料が用いられる。水溶性シート1の材料として、例えば、澱粉およびパルプの混合物が挙げられる。澱粉は乾燥状態では固化し、液体との接触により溶解する。
【0038】
吸収剤2には、多量の液体を吸収することができるとともに吸収した液体を保持することができる材料が用いられる。吸収剤2の材料として、例えば、綿状パルプが挙げられる。なお、綿状パルプに、シリコーン系、ポリエステル系、ポリアミド系またはポリアクリル酸塩等の高分子吸収剤を混合して用いてもよい。
【0039】
また、袋3は、1枚の水溶性シート1を折曲するとともにその間に吸収剤2が載置された状態で3辺に沿った接着部11a,11b,11cを接着することにより形成されてもよい。
【0040】
図2は図1の液吸収パック10に液体が吸収された場合の液吸収パック10の形状の変化を段階的に示した断面図である。ここで、液体は、例えば水および油の混合液である。
【0041】
液体が液吸収パック10と接触すると、図2(a)に示すように、液体は袋3を湿潤させるとともに、袋3を透過して吸収剤2に吸収される。それにより、図2(b)に示すように、袋3の一部または全体が溶解することにより袋3が分解するとともに、吸収剤2が液体を吸収して膨張する。さらに液体が供給されることにより、図2(c)に示すように、吸収剤2がさらに膨張し、吸収剤2が飽和状態に達するまで液体を吸収する。
【0042】
このように、第1の実施の形態の液吸収パック10においては、吸収剤2が充填された袋3が液体と接触することにより溶解する。それにより、液吸収パック10により液体を吸収する際に、吸収剤2の吸収膨張が袋3により阻害されない。したがって、吸収剤2が多量の液体を吸収することが可能となる。その結果、小型の袋3で、吸収剤2の吸収能力を最大限に発揮させることができる。したがって、多量の液体を吸収剤2に吸収された状態で容易に廃棄することができる。
【0043】
また、袋3を小型化することができるので、液吸収パック10が嵩張らず、保存、運搬および取り扱いが容易となる。
【0044】
また、吸収剤2は微細な粉末状に形成することができる。したがって、袋3の溶解により漏出した吸収剤2が狭所に入り込むことができる。その結果、吸収剤2により狭所における液体を吸収することが可能となる。
【0045】
さらに、吸収剤2がシート状または塊状に形成される場合と比べて、粉末状に形成された場合には吸収剤2の表面積が増大する。これにより、吸収剤2の吸収能力が向上される。
【0046】
図3は、図1の液吸収パック10の製造方法の一例を説明するための斜視図である。
【0047】
図3に示すように、同じ大きさを有する2枚の長尺状の水溶性シート1が準備される。1枚の水溶性シートが点線で示されるように複数の矩形の領域に区分され、各領域に適量の吸収剤2がそれぞれ載置される。その後、その水溶性シート1の上に、他の水溶性シート1が重ね合わされる。この状態で、2枚の水溶性シートが点線に沿った接着部11において上記の方法で接着される。
【0048】
最後に2枚の水溶性シート1が点線に沿って切断される。それにより、図1に示した液吸収パック10が複数個同時に製造される。この製造方法によれば、液吸収パック10の量産が可能である。
【0049】
(2)第2の実施の形態
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る液吸収パックを示す外観斜視図である。
【0050】
図4に示す液吸収パック10が図1に示す液吸収パック10と異なるのは以下の点である。
【0051】
図4の液吸収パック10においては、袋3aが、2枚の非水溶性シート1aを接着部11a〜11dにおいて水溶性の接着剤4により接着することにより形成される。袋3a内には吸収剤2が充填される。
【0052】
袋3aには、乾燥状態で吸収剤2の透過が阻止され、湿潤状態で液体が透過する材料が用いられる。吸収剤2には、第1の実施の形態と同様の材料が用いられる。水溶性の接着剤4としては、例えば、澱粉を主成分とする糊が挙げられる。また、第1の実施の形態の液吸水パック10と同様に、水溶性の熱可塑性シートを用いたヒートシールにより接着部11a〜11dを接着してもよい。
【0053】
なお、水溶性の接着剤4の代わりに、水溶性の糸を用いてもよい。水溶性の糸としては、例えば、パルプおよび澱粉からなる糸が挙げられる。この場合、水溶性の糸で接着部11a〜11dを縫合することにより袋3aが形成される。
【0054】
図5は図4の液吸収パック10に液体が吸収された場合の液吸収パック10の形状の変化を段階的に示した断面図である。
【0055】
液体が液吸収パック10と接触すると、図5(a)に示すように、液体は袋3aを湿潤させるとともに、吸収剤2に吸収される。また、液体は接着剤4に接触する。それにより、図5(b)に示すように、接着部11a〜11dの接着剤4が溶解することにより袋3aが分解するとともに、吸収剤2が液体を吸収して膨張する。さらに液体が供給されることにより、図5(c)に示すように、吸収剤2がさらに膨張し、吸収剤2が飽和状態に達するまで液体を吸収する。
【0056】
このように、第2の実施の形態の液吸収パック10においては、袋3aの接着部11a〜11dにおける接着剤4が液体と接触することにより溶解する。それにより、第1の実施の形態の液吸収パック10と同様に、液吸収パック10により液体を吸収する際に、吸収剤2の吸収膨張が袋3aにより阻害されない。したがって、吸収剤2が多量の液体を吸収することが可能となる。その結果、小型の袋3aで、吸収剤2の吸収能力を最大限に発揮させることができる。したがって、多量の液体を吸収剤2に吸収された状態で容易に廃棄することができる。
【0057】
また、袋3aを小型化することができるので、液吸収パック10が嵩張らず、保存、運搬および取り扱いが容易となる。
【0058】
また、吸収剤2は微細な粉末状に形成することができる。したがって、袋3aから漏出した吸収剤2が狭所に入り込むことができる。その結果、吸収剤2により狭所における液体を吸収することが可能となる。
【0059】
さらに、吸収剤2がシート状または塊状に形成される場合と比べて、粉末状に形成された場合には吸収剤2の表面積が増大する。これにより、吸収剤2の吸収能力が向上される。
【0060】
また、水溶性の接着剤4の代わりに液体と接触することにより接着力が低下する接着剤または接着テープを用いてもよい。この場合には、吸収剤2が液体を吸収して膨張することにより、接着部11a〜11dが剥離する。
【0061】
また、第2の実施の形態に係る液吸収パック10は、第1の実施の形態に係る液吸収パック10と同様の製造方法により製造することができる。
【0062】
この場合、図3の水溶性シート1の代わりに非水溶性シート1aを用いる。また、接着部11は、水溶性の接着剤、糸、熱可塑性シート等により接着される。
【0063】
なお、第2の実施の形態の液吸収パック10において、非水溶性シート1aの代わりに第1の実施の形態と同様の水溶性シート1を用いてもよい。この場合には、液体との接触により袋3aがより容易に分解する。
【0064】
(3)他の実施の形態
図6は液吸収パック10の他の例を示す外観斜視図である。
【0065】
図6(a)の液吸収パック10においては、袋3が円形に形成される。この場合、液吸収パック10は、2枚の円形の水溶性シート1の間に吸収剤2を挟んだ状態で、水溶性シート1の周縁部に沿った接着部11eが接着されることにより形成される。
【0066】
液吸収パック10の形状は四角形または円形に限定されず、楕円形または三角形等の任意の形状に形成することができる。
【0067】
図6(b)の液吸収パック10においては、吸収剤2を水溶性シート1で包み込み、吸収剤2が漏出しないように水溶性シート1の所定部分を紐または輪ゴム等の結束具で結束する。この場合、結束具が水溶性材料からなることが好ましい。
【0068】
図6(c)の液吸収パック10においては、折曲された水溶性シート1の一辺が接着されずに開口する。袋3の開口の一片側には折曲部11fが設けられ、折曲部11fに凸状の差込部11gが設けられる。他片側には差込孔11hが設けられる。この場合、袋3内に吸収剤2が充填された後、折曲部11fが開口を覆うように折り曲げられ、差込部11gが差込孔11hに差し込まれる。
【0069】
図6(a)〜(c)に示す液吸収パック10においては、吸収剤2が充填された袋3が液体と接触することにより溶解する。それにより、液吸収パック10により液体を吸収する際に、吸収剤2の吸収膨張が袋3により阻害されない。したがって、吸収剤2が多量の液体を吸収することが可能となる。その結果、小型の袋3で、吸収剤2の吸収能力を最大限に発揮させることができる。したがって、多量の液体を吸収剤2に吸収された状態で容易に廃棄することができる。
【0070】
また、袋1を小型化することができるので、液吸収パック10が嵩張らず、保存、運搬および取り扱いが容易となる。
【0071】
また、吸収剤2は微細な粉末状に形成することができる。したがって、袋3の溶解により漏出した吸収剤2が狭所に入り込むことができる。その結果、吸収剤2により狭所における液体を吸収することが可能となる。
【0072】
さらに、吸収剤2がシート状または塊状に形成される場合と比べて、粉末状に形成された場合には吸収剤2の表面積が増大する。これにより、吸収剤2の吸収能力が向上される。
【0073】
なお、図6(a)〜(c)の液吸収パック10は、第1の実施の形態の液吸収パック10と同様に、水溶性シート1からなる袋3に吸収剤2を充填することにより形成されるが、袋3の代わりに、第2の実施の形態の液吸収パック10と同様に、非水溶性シート1aからなる袋3aに吸収剤2を充填することにより形成されてもよい。
【0074】
この場合には、図6(a)〜(c)の液吸収パック10においては、水溶性の接着剤、結束具または糸が用いられる。これにより、第2の実施の形態と同様に、接着剤、結束具または糸が液体と接触することにより溶解するため、小型の袋3aで、吸収剤2の吸収能力を最大限に発揮させることができる。
【0075】
なお、上記実施の形態の液吸収パック10において、水溶性シート1からなる袋3内に吸収剤2が充填される場合には、袋3が液体と接触することにより溶解するため、接着剤、結束具または糸は水溶性でなくてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態の液吸収パック10に充填される吸収剤2の量は、上記実施の形態に限定されず、吸収する液体の量等に応じて適宜決定する。また、液吸収パック10の大きさも、吸収剤2の量等に応じて適宜設定する。特に、図6(c)の液吸収パック10では、差込部11gを差込孔11hから取り外すことにより、袋3内に充填される吸収剤2の量を使用者が任意に調整することができる。
【0077】
また、上記実施の形態は、粉末状の吸収剤2を用いているが、吸収剤2の形状および大きさは限定されず、小片状、綿状または粒状等の任意の形状および大きさの吸収剤を用いることができる。
【0078】
また、上記実施の形態では、水溶性シート1,1aには、湿潤状態で液体が透過する材料が用いられるが、これに限定されず、乾燥状態および湿潤状態において液体を透過しないビニール等の液不透過性の材料からなるシートが用いられてもよい。
【0079】
非水溶性でかつ液不透過性のシートを用いた場合においては、接着部は、水溶性の接着剤、糸、熱可塑性シートまたは結束具等により接着または結束される。これにより、液体との接触により接着部が分解し、分解した部分から液体が袋内に流入する。袋内に流入した液体は、吸収剤により吸収される。吸収剤の吸収膨張は袋により阻害されないので、吸収剤は多量の液体を吸収することが可能となる。
【0080】
(4)液吸収パックを用いた液処理装置
次に、上記実施の形態に係る液吸収パック10を用いた液処理装置について説明する。
【0081】
図7は、液処理装置の全体構造を示す正面図である。図8は図7の液処理装置の処理器の横断面図、図9は図8の処理器のX−X線断面図、図10は図8の処理器のY−Y線断面図である。
【0082】
図7において、貯留槽23は、飲食店等において排液を一時貯留するために設置されるものであり、グリース阻集器と呼ばれる。
【0083】
液処理装置100は、貯留槽23の外部に設置される処理器22を備える。貯留槽23内にはポンプ21が設けられる。ポンプ21の吸入口には、排液中から油および固形油脂分を吸入するための吸入規制体21aが接続されている。ポンプ21の吐出口は、吸液管24を介して処理器22に接続されている。また、処理器22には、排液管25が接続されている。排液管25の端部は貯留槽23の上方に開口している。
【0084】
貯留槽23においては、比重の小さい油および固形油脂分を含む油層51が排液の液面に浮遊する。以下、油および固形油脂分を油脂分と呼ぶ。ポンプ21は、吸入規制体21aの上端から油層51を含む排液を吸入し、吸液管24を介して排液を処理器22へ導く。
【0085】
処理器22は、ポンプ21により貯留槽23から導かれた排液の分離を行う油脂分離槽26を内蔵する。油脂分離槽26の上方には押動体27が水平移動可能に設けられる。
【0086】
また、油脂分離槽26と隣接するように排出ダクト28が設けられる。排出ダクト28の上下端は開口している。排出ダクト28の下方には、回収容器29が設置される。回収容器29においては、後述するように、上記実施の形態に係る液吸収パック10が使用される。
【0087】
また、処理器2の前面には、取り出し扉30が開閉可能に設けられるとともに、スイッチ40が設けられる。回収容器29は、取り出し扉30から処理器22の外部に取り出すことができる。処理器22の内部には、液処理装置100の各部の動作を制御する制御部(図示せず)が設けられている。
【0088】
次に、図8〜図10を参照して、処理器22の詳細について説明する。図8〜図10においては、理解を容易にするために、排液中の水の流れを実線の矢印で表し、排液中の油の流れを点線の矢印で表す。
【0089】
図8〜図10に示すように、処理器22はハウジング31を備える。図9および図10に示すように、ハウジング31内の上部には油脂分離槽26および排出ダクト28が隣接するように設けられている。油脂分離槽26の排出ダクト28側の縁部には傾斜面261が形成されている。傾斜面261は排出ダクト28の上端に連続している。油脂分離槽26内は貯水槽23(図7参照)から導かれた排液で満たされる。
【0090】
また、図8に示すように、油脂分離槽26内には、仕切り板30a,30bが設けられる。仕切り板30aは、油脂分離槽26内を排出ダクト28側の領域26Aと、排出ダクト28と反対側の領域とに分割するように配置される。仕切り板30bは、排出ダクト28と反対側の領域をさらに前面側の領域26Bと背面側の領域26Cとに分割するように配置される。
【0091】
図9に示すように、領域26Bに面する仕切り板30aの下端は、油脂分離槽26内の略半分の深さまで延びている。領域26Bにおいては、仕切り板30aの下端から油脂分離層26の側壁まで下方に傾斜するように傾斜板30cが設けられている。吸液管24の端部は、傾斜板30cの下方に開口する吸液口24aを有する。これにより、吸液口24aから油脂分離槽26内へ流入する排液が、領域26Aへ導かれる。
【0092】
図10に示すように、領域26Cに面する仕切り板30aの下端は、油脂分離層26内の底面近くまで延びている。それにより、仕切り板30aと油脂分離層26の底面との間にクリアランス41が形成される。領域26Aと領域26Cとはクリアランス41を通して連通する。
【0093】
また、排液管25は、領域26Cにおいて油脂分離槽26の底面を貫通して上方に延びるように配置される。排液管25の上端部は、領域26Cの上部において開口する。
【0094】
排出ダクト28の下方には、上方に向けて開口する箱状の回収容器29が配置される。回収容器29の内側面を覆うように、回収袋32が取り付けられる。回収袋32内には、上記実施の形態に係る液吸収パック10が載置される。
【0095】
ハウジング31内の上部に一側面側から他側面側に延びる押動体駆動部27aが設けられている。図8に示すように、押動体駆動部27aには押動体27が矢印Aで示すように領域26Aの仕切り板30a側から排出ダクト28まで往復移動可能に設けられている。
【0096】
図9および図10に示すように、押動体27の下端には掻きだし部27bが取り付けられている。掻きだし部27bは、油脂分離槽26の領域26Aと同じ幅を有する。
【0097】
次に、図7〜図10を参照して、液処理装置100の動作について説明する。
【0098】
まず、上記のように、図7に示す貯留槽23内の排液がポンプ21により吸入され、吸液管24を介して吸液口24aから処理器22の油脂分離槽26内へ流入する。次に、図9に示すように、油脂分離槽26に流入した排液は領域26Aに導かれ、油脂分を含む油層34と水35とに分離する。この場合、比重の小さい油層34が比重の大きい水35の上に浮遊する。
【0099】
次に、図10に示すように、領域26Aにおいて分離した水35は、仕切り板30aの下方のクリアランス41から領域26Cに流入する。これにより、領域26Cは水35で満たされる。領域26Cの水35は、領域26Cの上部から排液管25に流入し、排液管25から貯水槽23へ流出する。
【0100】
一方、領域26Aの上方においては、押動体駆動部27aにより駆動される押動体27が、図8および図9において矢印で示すように油脂分離槽26の分離領域26Aの上方で仕切り板30a側から排出ダクト28の上方まで移動する。それにより、押動体27の下端の掻きだし部27bが、仕切り板30aから領域26Aの油層34を掻くように傾斜面261を越えて排出ダクト28上まで移動する。
【0101】
これにより、油層34は領域26Aから傾斜面261を介して排出ダクト28内に押し出される。その結果、油層34に含まれる油脂分が排出ダクト28を通して回収容器29内の回収袋32に投下される。
【0102】
このようにして、回収袋32には液体および固形物からなる油脂分が回収される。油脂分に含まれる液体は、回収袋内32に載置された液吸収パック10により吸収される。
【0103】
続いて、押動体27は押動体駆動部27aにより仕切り板30bまで戻され、上記同様の動作を繰り返し行う。
【0104】
以上の一連の動作は、制御部(図示せず)により制御され、図7に示すスイッチ40により動作の開始および終了が操作される。
【0105】
(5)液吸収パックを用いた液処理装置の効果
本実施の形態の液処理装置100では、油脂分に含まれる液体は回収袋32内に載置された液吸収パック10により吸収される。それにより、回収袋32をそのままの状態で廃棄することができる。
【0106】
また、液吸収パック10においては、吸収剤2を内包する袋3,3aが液体と接触することにより分解する。それにより、液吸収パック10により液体を吸収する際に、吸収剤2の吸収膨張が袋3,3aにより阻害されない。したがって、吸収剤2が多量の液体を吸収することが可能となる。その結果、小型の袋3,3aで、吸収剤2の吸収能力を最大限に発揮させることができる。したがって、多量の液体を吸収剤2に吸収された状態で容易に廃棄することができる。
【0107】
また、吸収剤2は微細な粉末状に形成することができる。それにより、固形物の隙間に入り込んだ液体も吸収剤2により効果的に吸収することができる。
【0108】
また、袋3,3aを小型化することができるので、液吸収パック10が嵩張らず、保存、運搬および取り扱いが容易となる。
【0109】
なお、液処理装置100は、排液を貯留するための他の設備または容器等においても使用することができる。この場合、吸液管24および排液管25の大きさおよび長さは、設備または容器等の大きさ、形状および場所等により適宜決定される。
【0110】
また、吸収パック10は、上記実施の形態の液処理装置100に限らず、種々の構造を有する他の処理装置においても用いることができ、さらに種々の液体を吸収するために液吸収パック10単独でも使用することができる。
【0111】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部の対応
上記実施の形態においては、油脂分離槽26が分離槽に相当し、押動体27、押動体駆動部27a、掻きだし部27b、傾斜面261および排出ダクト28が回収手段に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、飲食店等の種々の産業または一般家庭において、液体を廃棄する場合に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る液吸収パックを示す外観斜視図である。
【図2】図1の液吸収パックに液体が吸収された場合の液吸収パックの形状の変化を段階的に示した断面図である。
【図3】図1の液吸収パックの製造方法の一例を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る液吸収パックを示す外観斜視図である。
【図5】図4の液吸収パックに液体が吸収された場合の液吸収パックの形状の変化を段階的に示した断面図である。
【図6】液吸収パックの他の例を示す外観斜視図である。
【図7】液処理装置の全体構造を示す正面図である。
【図8】図7の液処理装置の処理器の横断面図である。
【図9】図8の処理器のX−X線断面図である。
【図10】図8の処理器のY−Y線断面図である。
【符号の説明】
【0114】
2 吸収剤
3,3a 袋
4 接着剤
10 液吸収パック
11a〜11d 接着部
26 油脂分離槽
27 押動体
27a 押動体駆動部
27b 掻きだし部
28 排出ダクト
29 回収容器
100 液処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸収する吸収剤と、
前記吸収剤を内包する袋とを備え、
液体との接触により前記袋の少なくとも一部が分解することを特徴とする液吸収パック。
【請求項2】
前記袋は、液透過性の材料により形成されることを特徴とする請求項1記載の液吸収パック。
【請求項3】
前記袋は、液不透過性の材料により形成されることを特徴とする請求項1記載の液吸収パック。
【請求項4】
液体との接触により前記袋の少なくとも一部が溶解することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液吸収パック。
【請求項5】
前記袋は、澱粉を含む材料から形成されることを特徴とする請求項4記載の液吸収パック。
【請求項6】
前記袋は、パルプを含む材料から形成されることを特徴とする請求項4または5記載の液吸収パック。
【請求項7】
前記吸収剤は粉末状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液吸収パック。
【請求項8】
前記吸収剤は、パルプを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液吸収パック。
【請求項9】
前記吸収剤は、高分子吸収剤を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液吸収パック。
【請求項10】
前記袋は接着部を有し、前記接着部は液体と接触することにより分離することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の液吸収パック。
【請求項11】
前記接着部は、液溶性の接着剤により接着されることを特徴とする請求項10記載の液吸収パック。
【請求項12】
前記接着部は、液溶性の糸により縫合されることを特徴とする請求項10または11記載の液吸収パック。
【請求項13】
前記袋は結束部を有し、
前記結束部は液体と接触することにより分離することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の液吸収パック。
【請求項14】
前記結束部は、液溶性の結束具により結束されることを特徴とする請求項13記載の液吸収パック。
【請求項15】
排液中の水と油脂分とを分離する分離槽と、
回収容器と、
前記分離槽において分離された油脂分を前記回収容器に回収する回収手段と、
前記回収容器内に設けられる請求項1〜14のいずれかに記載の液吸収パックとを備えることを特徴とする液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−38039(P2007−38039A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221651(P2005−221651)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】