説明

液晶パネル、及び液晶表示装置

【課題】 全方位においてほぼ色付の無いニュートラルな表示が可能な液晶パネルを提供する。
【解決手段】 液晶セル13の両側に第1の偏光子14a及び第2の偏光子14bを有し、液晶セル13と第1の偏光子14aの間に第1の光学補償層11aを有し、液晶セル13と第2の偏光子14bの間に第2の光学補償層11bを有し、且つ、第1の光学補償層11aと第2の光学補償層11bの間に第3の光学補償層12を有する液晶パネルであって、液晶セル13の波長分散がRe40(450)>Re40(550)>Re40(650)であり、第1及び第2の光学補償層11a,11bの波長分散が0.7<Re40(450)/Re40(550)<1.05であり、第3の光学補償層12の波長分散がRe40(450)>Re40(550)>Re40(650)であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(以下、LCDという場合がある)は、液晶分子の電気光学特性を利用して、文字や画像を表示する装置である。LCDは、携帯電話、ノートパソコン、液晶テレビ等に広く利用されている。LCDには、通常、液晶セルの両側に偏光板が配置された液晶パネルが用いられている。例えば、ノーマリーブラック方式の液晶パネルの場合、電圧無印加時に黒表示となる(例えば、特許文献1参照)。
従来の液晶パネルは、液晶セルの一方の側(例えば、液晶セルの視認側)に、光学補償層および偏光子が、この順序で配置され、前記液晶セルの他方の側(例えば、液晶セルの視認側と反対側)に、光学補償層および偏光子が、この順序で配置されている。前記光学補償層は、一般に、位相差層或いは複屈折層とも呼ばれている。光学補償層は、視野角特性の改善、カラーシフトの改善、コントラストの改善などの液晶パネルの光学補償を目的として使用される。
【特許文献1】特許第3648240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、LCDは、高精細化が進み、その用途も多岐にわたっているため、表示品位に優れたLCDを提供することが望ましい。
しかしながら、従来のLCDでは、全方位において色付きの無いニュートラルな表示が困難であり、その改善が求められている。
【0004】
そこで、本発明は、全方位においてほぼ色付の無いニュートラルな表示が可能な液晶パネルおよび液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の液晶パネルは、液晶セルの両側に第1の偏光子及び第2の偏光子を有し、前記液晶セルと第1の偏光子の間に第1の光学補償層を有し、前記液晶セルと第2の偏光子の間に第2の光学補償層を有し、且つ、前記第1の光学補償層と第2の光学補償層の間に第3の光学補償層を有し、前記液晶セルの波長分散が、Re40(450)>Re40(550)>Re40(650)であり、前記第1の光学補償層の波長分散及び第2の光学補償層の波長分散が、0.7<Re40(450)/Re40(550)<1.05であり、前記第3の光学補償層の波長分散が、Re40(450)>Re40(550)>Re40(650)であることを特徴とする。
ただし、Re40(λ)は、23℃、波長λnmの光で光学補償層又は液晶セルの極角40°方向から測定した位相差値を示す。
【0006】
ここで、物質の位相差は、波長に依存しており、位相差値の波長分散は、大別して次の3種類に分けられる。1つ目の波長分散は、可視光領域において、短波長側になるほど位相差値が大きくなる場合、2つ目の波長分散は、可視光領域において、短波長側から長波長側に亘って位相差値が殆ど変わらない場合、3つ目の波長分散は、可視光領域において、短波長側になるほど位相差値が小さくなる場合、に分けられる。
上記液晶パネルの液晶セルは、その波長分散がRe40(450)>Re40(550)>Re40(650)である。従って、上記液晶セルは、Re40(極角40°における位相差値)を基準にして、可視光領域において短波長側になるほど位相差値が大きくなる波長分散性(以下、「正分散性」という)を有する。
上記液晶パネルの第1の光学補償層及び第2の光学補償層(以下、「第1及び第2の光学補償層」という場合がある)は、その波長分散が0.7<Re40(450)/Re40(550)<1.05である。従って、第1及び第2の光学補償層は、Re40(極角40°における位相差値)を基準にして、可視光領域において短波長側になるほど位相差値が小さくなる波長分散性(以下、「逆分散性」という)、または、Re40を基準にして、短波長側から長波長側に亘って位相差値が殆ど変わらない波長分散性(以下、「フラット分散性」という)を有する。
上記第3の光学補償層は、その波長分散がRe40(450)>Re40(550)>Re40(650)である。従って、上記第3の光学補償層は、上記液晶セルと同様に、正分散性を有する。
なお、本発明において、波長分散はRe40に基づく。
【0007】
本発明の液晶パネルは、正分散性の液晶セルの一方の側に、逆分散性又はフラット分散性の第1の光学補償層が配置され、且つ前記液晶セルの他方の側に、逆分散性又はフラット分散性の第2の光学補償層が配置されていると共に、第1の光学補償層と第2の光学補償層の間に、正分散性の第3の光学補償層が配置されている。
かかる波長分散性の液晶セル及び第1〜第3の光学補償層が上記順序で配置された本発明の液晶パネルは、全方位において、ほぼ色付の無いニュートラルな表示を実現できる。
【0008】
本発明の好ましい液晶パネルは、上記第1の光学補償層及び第2の光学補償層の屈折率楕円体が、nx>ny≧nzの関係を有する。
本発明の好ましい液晶パネルは、上記第3の光学補償層が、nx=ny≧nzの関係を有する。
【0009】
本発明の好ましい液晶パネルは、上記第3の光学補償層のNz係数が、第1の光学補償層及び第2の光学補償層のNz係数よりも大きい。
【0010】
本発明の好ましい液晶パネルは、上記第1の光学補償層の位相差値の比(Re40(450)/Re40(550))及び第2の光学補償層の位相差値の比(Re40(450)/Re40(550))が、液晶セルの位相差値の比(Re40(450)/Re40(550))よりも小さい。
【0011】
本発明の好ましい液晶パネルは、上記第1の光学補償層及び第2の光学補償層が、セルロース系、変性ビニルアセタール系、及びポリエステル系から選択される少なくとも1種のポリマーを主成分として含む。
本発明の好ましい液晶パネルは、上記第3の光学補償層が、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエステル系、ポリエーテルケトン系、ポリアミドイミド系、及びポリエステルイミド系から選択される少なくとも1種のポリマーを主成分として含む。
【0012】
本発明の好ましい液晶パネルは、上記液晶セルが、垂直配向(VA)モードである。
【0013】
また、本発明は、上記いずれかの液晶パネルを有する液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液晶パネルは、全方位において、ほぼ色付が無いニュートラルな画像表示が可能である。
従って、本発明の液晶パネルを用いた液晶表示装置は、画面の均一性に優れ、表示品位も高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における用語は、次の意味である。
(1)光学補償層:
光学補償層とは、その面内及び/又は厚み方向に複屈折(屈折率の異方性)を示す枚葉体を言う。光学補償層は、例えば、23℃で波長590nmにおける面内及び/又は厚み方向の複屈折率が、1×10−4以上であるものを含む。
(2)nx、ny、nz:
「nx」、「ny」及び「nz」とは、互いに異なる方向の屈折率を示す。nxは、面内において屈折率が最大となる方向(通常、X軸方向という)の屈折率を示し、nyは、面内において前記X軸方向と直交する方向(通常、Y軸方向という)の屈折率を示し、nzは、前記X軸方向及びY軸方向に直交する方向(通常、Z軸方向という)の屈折率を示す。
なお、「nx=ny」とは、nxとnyが完全に同一である場合だけでなく、実質的に同一である場合も含まれる。nxとnyが実質的に同一である場合とは、例えば、Re(590)が0nm〜10nmであり、好ましくは0nm〜5nmであり、より好ましくは0nm〜3nmである。
「ny=nz」とは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的に同一である場合も含まれる。nyとnzが実質的に同一である場合とは、例えば、Re(590)−Rth(590)が−10nm〜10nmであり、好ましくは−5nm〜5nmであり、より好ましくは−3nm〜3nmである。
(3)面内及び厚み方向の複屈折率:
「面内の複屈折率(Δnxy(λ))」とは、23℃、波長λ(nm)の光で測定した面内の屈折率差をいう。Δnxy(λ)=nx−nyによって求めることができる。
「厚み方向の複屈折率(Δnxz(λ)」とは、23℃、波長λ(nm)の光で測定した厚み方向の屈折率差をいう。Δnxz(λ)=nx−nzによって求めることができる。
(4)Re(λ):
「面内位相差値(Re(λ))」とは、23℃、波長λ(nm)の光で測定した面内の位相差値をいう。具体的には、「面内位相差値(Re(λ))」とは、23℃、波長λ(nm)の光で、極角0°(測定対象の面の法線方向)で測定した面内の位相差値をいう。
Re(λ)は、測定対象の厚みをd(nm)としたとき、Re(λ)=(nx−ny)×dによって求めることができる。
例えば、Re(590)は、23℃、波長590λnmの光で測定した面内位相差値である。
(5)Rth(λ):
「厚み方向の位相差値(Rth(λ))」とは、23℃、波長λ(nm)の光で測定した厚み方向の位相差値をいう。Rth(λ)は、測定対象の厚みをd(nm)としたとき、Rth(λ)=(nx−nz)×dによって求めることができる。
例えば、Rth(590)は、23℃、波長590λnmの光で測定した厚み方向位相差値である。
(6)Re40(λ):
「極角40°における位相差値(Re40(λ))」とは、23℃、波長λ(nm)の光で、極角40°方向(測定対象の面の法線方向に対して40°傾斜した方向)から測定した位相差値を示す。Re40(λ)は、極角40°方向からの光路長を、d40(nm)としたとき、Re40(λ)=(nx−ny)×d40によって求めることができる。
例えば、Re40(450)は、23℃、波長450λnmの光で、極角40°方向から測定した位相差値である。
(7)Nz係数:
「Nz係数」とは、Rth(λ)/Re(λ)から算出される値である。本発明では、Nz係数は、590nmを基準とする、Rth(590)/Re(590)から算出される値である。Rth(590)及びRe(590)の意味は、上記のとおりである。
(8)直交、平行:
「直交」とは、光学的な2つの軸のなす角度が、90°±2°である場合を包み、好ましくは90°±1°である。「平行」とは、光学的な2つの軸のなす角度が、0°±2°である場合を包み、好ましくは0°±1°である。
(9)ポリマー:
「ポリマー」とは、重合度(当該ポリマーが、複数の構成単位を含む場合は、各構成単位の合計の重合度)が20以上の高重合体を包み、さらに、重合度が2以上20未満の低重合体(オリゴマーともいう)を包む。
【0016】
[本発明の液晶パネルの概要]
本発明の液晶パネルは、液晶セルの両側に第1の偏光子および第2の偏光子を有し、前記液晶セルと第1の偏光子の間に第1の光学補償層を有し、前記液晶セルと第2の偏光子の間に第2の光学補償層を有し、前記第1の光学補償層と第2の光学補償層の間に第3の光学補償層を有する。
上記液晶セルの波長分散は、Re40(450)>Re40(550)>Re40(650)であり、従って、液晶セルは、正分散性を有する。
上記第1の光学補償層の波長分散及び第2の光学補償層の波長分散は、0.7<Re40(450)/Re40(550)<1.05であり、従って、第1の光学補償層及び第2の光学補償層は、逆分散性またはフラット分散性を有する。
上記第3の光学補償層の波長分散は、Re40(450)>Re40(550)>Re40(650)であり、従って、第3の光学補償層は、正分散性を有する。
【0017】
上記第1の光学補償層及び第2の光学補償層は、好ましくは、屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満足するポジティブAプレート、またはnx>ny>nzの関係を満足する負の二軸性プレートが用いられる。
上記第3の光学補償層は、好ましくは、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を満足するネガティブCプレートが用いられる。
【0018】
上記第3の光学補償層は、第1の光学補償層と第2の光学補償層の間に配置されていればよい。従って、第3の光学補償層は、第1の光学補償層と液晶セルの間に配置されていてもよいし、第2の光学補償層と液晶セルの間に配置されていてもよい。また、第3の光学補償層が2枚設けられ、それが、第1の光学補償層と液晶セルの間、及び、第2の光学補償層と液晶セルの間に、それぞれ配置されていてもよい。
第3の光学補償層は、好ましくは、液晶セルの視認側と反対側(以下、液晶セルの反視認側という)に少なくとも配置される。
【0019】
[液晶パネルの構成例]
図1に、本発明の液晶パネルの構成の一例を示す。同図においては、分かりやすくするために、各構成部材の大きさや比率等は、実際とは異なっている(他の図も同様)。
図1に示すように、この液晶パネル10は、液晶セル13、第1の偏光板14a、第2の偏光板14b、第1の光学補償層11a、第2の光学補償層11b、および第3の光学補償層12、を有する。前記第1の偏光板14aは、例えば、前記液晶セル13の視認側に配置されている。前記第2の偏光板14bは、前記液晶セル13の反視認側に配置されている。前記第1の光学補償層11aは、前記液晶セル13と前記第1の偏光板14aの間に配置されている。前記第3の光学補償層12及び前記第2の光学補償層11bは、前記液晶セル13と前記第2の偏光板14bとの間に配置されている。この第3の光学補償層12は、液晶セル13と第2の光学補償層11bの間に配置されている。
上記第1の光学補償層11aは、上記第1の偏光板(偏光子)14aの吸収軸方向と第1の光学補償層11aの遅相軸方向が88°〜92°となるように、上記第1の偏光板14aに配置されていることが好ましい。
また、上記第2の光学補償層11bは、上記第2の偏光板(偏光子)14bの吸収軸方向と第2の光学補償層11bの遅相軸方向が88°〜92°となるように、上記第2の偏光板14bに配置されていることが好ましい。
【0020】
特に図示しないが、上記第3の光学補償層12が、液晶セル13と第1の光学補償層11aの間に配置されていてもよい。
また、第1〜第3の光学補償層は、それぞれ単層でもよいし、2層以上の複層構造のフィルムでもよい。
上記第1の偏光板14aおよび前記第2の偏光板14bは、偏光子を含み、必要に応じて保護層を含む。前記保護層は、通常、透明性に優れた等方性フィルムが用いられる。ただし、偏光子に、前記第1の光学補償層11aまたは前記第2の光学補償層11bを直接接着してもよい。この場合、前記第1及び第2の光学補償層11a,11bが、偏光子の保護層としても機能する。
【0021】
図2に、本発明の液晶パネルの構成のその他の例を示す。
図2に示すように、この液晶パネル10は、第3の光学補償層12a及び第1の光学補償層11aが、液晶セル13と第1の偏光板14aの間に配置されている。この第3の光学補償層12aは、前記液晶セル13と第1の光学補償層11aの間に配置されている。また、第3の光学補償層12b及び第2の光学補償層11bが、前記液晶セル13と第2の偏光板14bの間に配置されている。この第3の光学補償層12bは、前記液晶セル13と第2の光学補償層11bの間に配置されている。これら以外は、図1に示した液晶パネルと同様である。
【0022】
上記液晶パネルの各構成部材(光学部材)の間には、任意の接着層(図示せず)や、任意の光学部材(好ましくは、等方性(屈折率楕円体がnx=ny=nz)を示すフィルム)が配置されてもよい。
【0023】
[液晶セル]
本発明の液晶セルとしては、例えば、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス型等を例示できる。また、前記液晶セルとしては、スーパーツイストネマチック液晶表示装置に採用されているような、単純マトリクス型などでもよい。
【0024】
前記液晶セルは、一般に、一対の基板により液晶層が形成されている。
図3に、液晶セルの構成の一例を示す。
図3に示すように、液晶セル13は、一対の基板132a,132bの間に、スペーサー133が配置されることにより、空間が形成されている。この空間に、液晶分子を封入した液晶層131が設けられている。なお、特に図示しないが、前記一対の基板のうち、一方の基板(アクティブマトリクス基板)には、例えば、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(例えば、TFT)と、このアクティブ素子にゲート信号を与える走査線と、が設けられる。前記一対の基板のうち、他方の基板には、例えば、カラーフィルターが設けられる。
【0025】
前記カラーフィルターは、前記アクティブマトリクス基板に設けてもよい。あるいは、液晶表示装置の照明手段として、例えば、RGBの3色光源(さらに、多色の光源を含んでもよい)が用いられる場合(フィールドシーケンシャル方式)、前記カラーフィルターは、省略してもよい。前記一対の基板の間隔(セルギャップ)は、例えば、スペーサーによって制御される。前記セルギャップは、例えば、1.0μm〜7.0μmの範囲である。各基板の前記液晶層に接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜が設けられる。または、例えば、パターニングされた透明基板によって形成されるフリンジ電界を利用して、液晶分子の初期配向が制御される場合には、前記配向膜は、省略してもよい。
【0026】
液晶セルの波長分散は、Re40(450)>Re40(550)>Re40(650)である。これは、正分散性を有する液晶セルである。
液晶セルの位相差値(Re40(λ))の比(波長450nmと波長550nmでのRe40の比)は、好ましくは、1.0<Re40(450)/Re40(550)<1.1であり、より好ましくは、1.02<Re40(450)/Re40(550)<1.08である。また、液晶セルの位相差値(Re40(λ))の比(波長550nmと波長650nmでのRe40の比)は、好ましくは、0.9<Re40(650)/Re40(550)<1.0であり、より好ましくは0.92<Re40(650)/Re40(550)<0.98である。このように波長分散が比較的急峻でない液晶セルに、上記第1〜第3の光学補償層を配置することにより、全方位において光漏れを極めて抑制できる。
【0027】
前記液晶セルは、その屈折率楕円体がnx=ny<nzの関係を満足することが好ましい。前記屈折率楕円体がnx=ny<nzの液晶セルとしては、液晶配向モードの分類によれば、バーティカル・アラインメント(VA)モード、ツイスティッド・ネマチック(TN)モード、垂直配向型電界制御複屈折(ECB)モード、光学補償複屈折(OCB)モード等を例示できる。本発明において、前記液晶セルの液晶配向モードは、好ましくはVAモードである。
【0028】
電界が存在しない状態において、前記屈折率楕円体の液晶セルのRth(590)は、好ましくは、−500nm〜−200nmであり、より好ましくは、−400nm〜−200nmである。前記Rth(590)は、例えば、液晶分子の種類及び/又は前記セルギャップを調整することにより、適宜設定される。
【0029】
前記VAモードの液晶セルは、電圧制御複屈折効果を利用している。該VAモードの液晶セルは、電界が存在しない状態で、ホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を、基板に対して法線方向の電界で応答させる。具体的には、前記液晶セルがノーマリーブラック方式の場合、電界が存在しない状態では、液晶分子が基板に対して法線方向に配向している。液晶セルの両側には、偏光板がクロスニコル状に配置されているので、直線偏光は視認側偏光子を透過できず、画面は黒表示となる。一方、電界が存在する状態では、液晶分子が偏光板の吸収軸に対して、45°方位に倒れるように動作する。このため、透過率が大きくなり、直線偏光が視認側偏光子を透過し、画面は白表示となる。VAモードの液晶セルの動作については、例えば、特開昭62−210423号公報や、特開平4−153621号公報などに具体的に開示されている。
【0030】
前記VAモードの液晶セルは、例えば、特開平11−258605号公報に記載されているように、マルチドメイン化したものであってもよい。このような液晶セルは、例えば、シャープ(株)製の商品名「ASV(Advanced Super View)モード」、同社製の商品名「CPA(Continuous Pinwheel Alignment)モード」、富士通(株)製の商品名「MVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード」、三星電子(株)製の商品名「PVA(Patterned Vertical Alignment)モード」、同社製の商品名「EVA(Enhanced Vertical Alignment)モード」、三洋電機(株)製の商品名「SURVIVAL(Super Ranged Viewing Vertical Alignment)モード」等を例示できる。
【0031】
また、本発明の液晶パネルには、例えば、市販の液晶表示装置に搭載されている液晶セルをそのまま用いてもよい。前記VAモードの液晶セルを搭載する市販の液晶表示装置としては、例えば、シャープ(株)製液晶テレビの商品名「AQUOSシリーズ」、ソニー社製液晶テレビの商品名「BRAVIAシリーズ」、SAMSUNG社製32V型ワイド液晶テレビの商品名「LN32R51B」、(株)ナナオ製液晶テレビの商品名「FORIS SC26XD1」、AU Optronics社製液晶テレビの商品名「T460HW01」等を例示できる。
【0032】
[第1及び第2の光学補償層]
第1の光学補償層の波長分散及び第2の光学補償層の波長分散は、何れも0.7<Re40(450)/Re40(550)<1.05である。これは、逆分散性又はフラット分散性を有する光学補償層である。
好ましくは、第1及び第2の光学補償層の波長分散(波長450nmと波長550nmでのRe40の比)は、0.75<Re40(450)/Re40(550)<1.00であり、より好ましくは、0.80<Re40(450)/Re40(550)<0.95である。さらに、第1及び第2の光学補償層の波長分散(波長650nmと波長550nmでのRe40の比)は、何れも1.01<Re40(650)/Re40(550)であり、好ましくは、1.05<Re40(650)/Re40(550)である。
通常、逆分散性を示す光学補償層は、Re40(450)/Re40(550)<0.97と規定できる。また、フラット分散性を示す光学補償層は、0.97≦Re40(450)/Re40(550)<1.05と規定できる。
【0033】
上記第1の光学補償層及び第2の光学補償層は、その屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足することが好ましい。ただし、前記nx>ny≧nzとは、nx>ny=nz(正の一軸性)、又は、nx>ny>nz(負の二軸性)を意味する。特に、前記第1の光学補償層及び第2の光学補償層は何れも、nx>ny=nzの関係を満足することがより好ましい。
【0034】
上記第1の光学補償層のNz係数及び第2の光学補償層のNz係数は、好ましくは1〜2であり、より好ましくは1〜1.8であり、特に好ましくは1.1〜1.7である。
さらに、前記第1及び第2の光学補償層のNz係数は、第3の光学補償層のNz係数よりも小さいことが好ましい。
【0035】
前記第1及び第2の光学補償層は、それぞれ、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。前記第1及び第2の光学補償層の厚みは、例えば、0.5μm〜200μmである。前記第1及び第2の光学補償層の透過率(T(590))は、好ましくは、90%以上である。
第1及び第2の光学補償層は、上記のような波長分散及び屈折率楕円体を有していれば、その材質や形成方法などは任意である。例えば、第1及び第2の光学補償層は、全く同じフィルムで構成されていてもよいし、或いは、それぞれ、材質や形成方法などが異なるフィルムで構成されていてもよい。
【0036】
前記第1及び第2の光学補償層のRe(590)は、例えば、10nm以上であり、好ましくは、5nm〜200nmである。前記第1及び第2の光学補償層の屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満足する場合、その光学補償層のRe(590)は、例えば、40nm〜140nmであり、好ましくは70nm〜120nmである。前記第1及び第2の光学補償層の屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係を満足する場合、その光学補償層のRe(590)は、例えば、30nm〜130nmであり、好ましくは60nm〜110nmである。
【0037】
前記第1及び第2の光学補償層の屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満足する場合、Re(590)とRth(590)は略等しい。
【0038】
前記第1及び第2の光学補償層の屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係を満足する場合、そのRth(590)は、Re(590)よりも大きい。この場合、Rth(590)とRe(590)の差(Rth(590)−Re(590))は、例えば、10nm〜100nmであり、好ましくは20nm〜80nmである。
【0039】
前記第1及び第2の光学補償層としては、例えば、ノルボルネン系、セルロース系、変性ポリビニルアセタール系、ポリエステル系などの熱可塑性ポリマーを含む位相差フィルムが用いられる。
ノルボルネン系ポリマーを含む組成物を製膜することによって、フラット分散性を有する位相差フィルムが得られる。また、セルロース系ポリマー、変性ポリビニルアセタール系ポリマー、ポリエステル系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含む組成物を製膜することによって、逆分散性を有する位相差フィルムが得られる。
【0040】
まず、ノルボルネン系ポリマーを含む位相差フィルムについて説明する。前記ノルボルネン系ポリマーは、光弾性係数の絶対値(C[λ]。前記λは、波長を示す)が小さいという特徴を有する。前記ノルボルネン系ポリマーの光弾性係数の絶対値(C[590])は、好ましくは、1×10−12/N〜1×10−11/Nの範囲である。
なお、光弾性係数とは、フィルムに外力を加えて内部に応力を起こさせたときの複屈折の生じやすさをいう。光弾性係数は、例えば、日本分光(株)製の分光エリプソメーター、製品名「M−220」を用いて、2cm×10cmの試験片に23℃で応力をかけながら、波長590nmの光でフィルムの面内位相差値を測定し、位相差値と応力の関数の傾きから算出することができる。
また、ノルボルネン系ポリマーを含む位相差フィルムの波長分散は、フラット分散性を示す。
ここで、ノルボルネン系ポリマーとは、出発原料(モノマー)の一部または全部に、ノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。前記「(共)重合体」は、ホモポリマーまたは共重合体(コポリマー)を表す。
【0041】
前記ノルボルネン系ポリマーは、出発原料としてノルボルネン環(ノルボルナン環に二重結合を有するもの)を有するノルボルネン系モノマーが用いられる。前記ノルボルネン系ポリマーは、(共)重合体の状態では、構成単位にノルボルナン環を有していても、有していなくてもよい。(共)重合体の状態で、構成単位にノルボルナン環を有するノルボルネン系ポリマーは、例えば、テトラシクロ[4.4.1.110.0]デカ−3−エン、8−メチルテトラシクロ[4.4.1.110.0]デカ−3−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.1.110.0]デカ−3−エン等が挙げられる。(共)重合体の状態で、構成単位にノルボルナン環を有さないノルボルネン系ポリマーは、例えば、開裂により5員環となるモノマーを用いて得られる(共)重合体である。前記開裂により5員環となるモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−フェニルノルボルネン等やそれらの誘導体等が挙げられる。前記ノルボルネン系ポリマーが共重合体である場合、その分子の配列状態は、特に限定されず、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
【0042】
前記ノルボルネン系ポリマーを含む位相差フィルムは、例えば、製膜されたノルボルネン系ポリマーフィルムを、延伸することによって作製できる。前記フィルムの製膜法は、ソルベントキャスティング法または溶融押出法などを例示できる。前記延伸は、縦一軸延伸法、横一軸延伸法、縦横同時二軸延伸法、または縦横逐次二軸延伸法などを例示できる。好ましくは、横一軸延伸法である。前記ポリマーフィルムを延伸する温度は、好ましくは、120〜200℃である。延伸倍率は、好ましくは1を超え4倍以下である。また、延伸は、固定端延伸法であってもよいし、或いは、自由端延伸法であってもよい。固定端延伸法によれば、nx>ny>nzの関係を示す位相差フィルムを作製することが可能である。
【0043】
前記ノルボルネン系ポリマーを含む位相差フィルムとしては、例えば、市販のフィルムを用いることができる。あるいは、前記市販のフィルムに延伸処理および収縮処理の少なくとも一方の処理等の2次的加工を施したものを用いることができる。前記市販のフィルムとしては、例えば、JSR(株)製の商品名「アートンシリーズ(ARTON F、ARTON FX、ARTON D)、(株)オプテス製の商品名「ゼオノアシリーズ(ZEONOR ZF14、ZEONOR ZF15、ZEONOR ZF16)等を例示できる。
【0044】
つぎに、セルロース系ポリマーを含む位相差フィルムについて説明する。
前記セルロース系ポリマーは、アセチル基およびプロピオニル基で置換されていることが好ましい。このセルロース系ポリマーの置換度(この置換度とは、「DSac(アセチル置換度)+DSpr(プロピオニル置換度)」である)の下限は、好ましくは2以上、より好ましくは2.3以上、さらに好ましくは2.6以上である。上記置換度の上限は、好ましくは3以下であり、より好ましくは2.9以下であり、特に好ましくは2.8以下である。セルロース系ポリマーの置換度を上記範囲とすることにより、上記のような所望の屈折率楕円体の位相差フィルムが得られる。
なお、「DSac+DSpr」は、セルロースの繰り返し単位中に存在する3個の水酸基が、アセチル基またはプロピオニル基で平均してどれだけ置換されているかを示す指標である。
【0045】
前記DSprの下限は、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、特に好ましくは2.5以上である。DSprの上限は、好ましくは3以下であり、より好ましくは2.9以下であり、特に好ましくは2.8以下である。DSprを上記範囲とするセルロース系ポリマーは溶剤に溶解し易くなるため、フィルムの厚みの制御を容易に行える。さらに、「DSac+DSpr」を上記の範囲とし、かつ、DSprを上記の範囲とすることにより、上記屈折率楕円体を有し、且つ、逆分散性を有する位相差フィルムが得られる。
【0046】
前記DSac及びDSprは、特開2003−315538号公報[0016]〜[0019]に記載の方法により求めることができる。
【0047】
前記セルロース系ポリマーは、アセチル基およびプロピオニル基以外のその他の置換基を有してもよい。その他の置換基としては、例えば、ブチレート等のエステル基;アルキルエーテル基、アラアルキレンエーテル基等のエーテル基等を例示できる。
【0048】
前記セルロース系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは5000〜100000であり、より好ましくは10000〜70000である。数平均分子量を前記範囲とすることにより、生産性に優れ、かつ、得られるフィルムの機械的強度が向上する。
【0049】
アセチル基およびプロピオニル基への置換方法としては、適宜任意の方法が採用される。例えば、セルロースを水酸化ナトリウム溶液で処理してアルカリセルロースとし、これを所定量の無水酢酸とプロピオン酸無水物との混合物によりアシル化する。アシル基を部分的に加水分解することにより、上記置換度(「DSac+DSpr」)を調整できる。
【0050】
セルロース系ポリマーを含む位相差フィルムは、例えば、セルロース系ポリマーを溶剤で溶解して溶液を調製し、これを適切な基材上に塗布し乾燥することによって得ることができる。前記位相差フィルムは、そのまま使用してもよいが、延伸処理することが好ましい。前記延伸処理は、ノルボルネン系ポリマーを含む位相差フィルムと同様である。また、セルロース系ポリマーを含む位相差フィルムは、市販品を使用してもよい。
【0051】
次に、変性ポリビニルアセタール系ポリマーを含む位相差フィルムについて説明する。
この変性ポリビニルアセタール系ポリマーは、例えば、繰り返し単位として下記一般式(I)又は一般式(II)で表される構造のうち少なくとも何れかを有する鎖状ポリマーを用いることができる。
【0052】
【化1】

(一般式(I)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示す(但し、R及びRは同時に水素原子ではない)。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す)。
【0053】
【化2】

(一般式(II)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Aは、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を示す。ナフチル基、アントラニル基、又はフェナントレニル基を構成する炭素原子のうち1以上の炭素原子は窒素原子で置換されていてもよい)。
【0054】
上記繰り返し単位を有するポリマーを含むポリマーフィルムは、それ自体、逆波長分散を示す。さらに、該ポリマーフィルムを延伸することにより、光学的二軸性を示すフィルムを得ることができる。上記変性ポリビニルアセタール系ポリマーを用いた位相差フィルムの特性及び製膜法等に関しては、特開2006−65258号公報の段落[0060]〜[0084]に詳細に記載されている(ただし、本明細書に於ける一般式(I)は、上記公報記載の一般式(V)に対応し、同一般式(II)は、上記公報記載の一般式(VI)に対応している)。本明細書では、上記公報の段落[0060]〜[0084]を記載したものとして、その記載を省略する。
なお、ポリエステル系ポリマーを用いた場合でも、屈折率楕円体がnx>ny≧nzの関係を満足し、且つ逆分散性を有する位相差フィルムを作製し得る。
【0055】
[第3の光学補償層]
第3の光学補償層の波長分散は、Re40(450)>Re40(550)>Re40(650)である。これは、正分散性を有する光学補償層である。
第3の光学補償層のRe40(λ)の比(波長450nmと波長550nmでのRe40の比)は、好ましくは、1.0<Re40(450)/Re40(550)<1.2であり、より好ましくは、1.05<Re40(450)/Re40(550)<1.15である。また、第3の光学補償層のRe40(λ)の比(波長650nmと波長550nmでのRe40の比)は、好ましくは、0.9<Re40(650)/Re40(550)<1.0であり、より好ましくは、0.92<Re40(650)/Re40(550)<0.98である。
特に、液晶セルのRe40(λ)の比が1.0<Re40(450)/Re40(550)<1.1である場合、該液晶セルに用いる第3の光学補償層は、その比が1.0<Re40(450)/Re40(550)<1.2であることが好ましい。かかる液晶セルと第3の光学補償層の組み合わせによって、全方位において光漏れが極めて抑制された液晶パネルを形成できる。
【0056】
上記第3の光学補償層は、その屈折率楕円体がnx≧ny>nzの関係を満足することが好ましい。ただし、前記nx≧ny>nzとは、nx=ny>nz、又は、nx>ny>nzを意味する。特に、前記第3の光学補償層は、nx=ny>nzの関係を満足することがより好ましい。
【0057】
前記第3の光学補償層の屈折率楕円体がnx>ny>nzの場合、第3の光学補償層のNz係数は、好ましくは1.1〜200であり、より好ましくは1.1〜100である。
前記第3の光学補償層は、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。前記第3の光学補償層の厚みは、好ましくは、0.5〜200μmである。前記第3の光学補償層の透過率(T(590))は、好ましくは、90%以上である。
【0058】
前記第3の光学補償層の屈折率楕円体がnx=ny>nzの場合、第3の光学補償層のRe(590)は、例えば、10nm未満であり、好ましくは、5nm以下であり、より好ましくは、3nm以下である。
前記第3の光学補償層の屈折率楕円体がnx>ny>nzの場合、第3の光学補償層のRe(590)は、例えば、5nm〜200nmであり、好ましくは、30nm〜130nmである。
【0059】
前記第3の光学補償層のRth(590)は、例えば、液晶セルの厚み方向の位相差値等に応じて、適宜、設定され得る。前記第3の光学補償層のRth(590)は、例えば、100nm〜400nmであり、好ましくは、120nm〜350nmであり、特に好ましくは、150nm〜300nmである。
【0060】
前記第3の光学補償層としては、例えば、非液晶性ポリマーを含む位相差フィルムが用いられる。
【0061】
前記非液晶性ポリマーとしては、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエステル系、ポリエーテルケトン系、ポリアミドイミド系、及びポリエステルイミド系などのポリマーが好ましい。これらのポリマーを製膜した位相差フィルムは、耐熱性、耐薬品性及び透明性に優れ、剛性にも富んでいる。これらのポリマーは、例えば、特開2004−46065号公報[0018]〜[0072]に記載されている。これらのポリマーから選ばれる少なくとも1種を主成分とする位相差フィルムは、正分散性を示す。
これらのポリマーは、いずれか1種を単独で使用してもよい。また、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上のポリマー混合物でもよい。かかるポリマーの中でも、高透明性、高配向性及び高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
【0062】
前記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が好ましくは1,000〜1,000,000であり、より好ましくは2,000〜500,000である。
【0063】
前記第3の光学補償層として用いられる位相差フィルムは、さらに、任意の適切な添加剤が含まれていてもよい。前記添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤等が挙げられる。前記添加剤の含有量は、好ましくは、主成分のポリマー100重量部に対し、0を超え10重量部以下である。なお、上記第1及び第2の光学補償層として用いられる位相差フィルムについても、任意の適切な添加剤が含まれていてもよい。
【0064】
[偏光板]
本発明の液晶パネルにおいて、前記第1の偏光板と前記第2の偏光板は、互いに吸収軸が直交する関係で配置されていることが好ましい。前述のように、前記第1の偏光板および前記第2の偏光板は、偏光子を含み、必要に応じて保護層を含む。
図4に、偏光板の構成例を示す。
図4(A)に示す偏光板14は、偏光子141の両側に保護層142が積層された構成である。図4(B)に示す偏光板14は、偏光子141の片側に保護層142が積層された構成である。図4(C)に示す偏光板は、偏光子141のみからなる。図4(B)および図4(C)の場合は、前記第1〜第3の光学補償層を含む光学部材が、保護層を兼ねることになる。前記第1の偏光板および前記第2の偏光板の厚みは、例えば、20〜300μmの範囲である。
【0065】
前記第1の偏光板および前記第2の偏光板の透過率は、例えば、30〜50%の範囲であり、好ましくは、35〜45%の範囲であり、より好ましくは、38〜44%の範囲である。前記第1の偏光板および前記第2の偏光板の偏光度は、例えば、99%以上であり、好ましくは、99.5%以上であり、さらに好ましくは、99.8%以上である。前記偏光度は、例えば、分光光度計(村上色彩技術研究所(株)製の商品名「DOT−3」)を用いて測定できる。
【0066】
[偏光子]
前記第1の偏光子および前記第2の偏光子は、例えば、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系ポリマーを含むポリマーフィルムを延伸することによって得ることができる。前記第1の偏光子および前記第2の偏光子のヨウ素含有量は、例えば、1.8〜5.0重量%であり、好ましくは、2.0〜4.0重量%である。前記第1の偏光子および前記第2の偏光子は、好ましくは、ヨウ素以外にカリウムを含む。前記カリウムの含有量は、例えば、0.2〜1.0重量%であり、好ましくは、0.3〜0.9重量%である。前記第1の偏光子および前記第2の偏光子は、好ましくは、ヨウ素以外にホウ素を含む。前記ホウ素の含有量は、例えば、0.5〜3.0重量%であり、好ましくは、1.0〜2.8重量%である。
【0067】
前記ポリビニルアルコール系ポリマーは、例えば、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することによって得ることができる。前記ポリビニルアルコール系ポリマーのケン化度は、好ましくは、95.0〜99.9モル%である。前記ポリビニルアルコール系ポリマーの平均重合度は、好ましくは、1200〜3600の範囲である。前記平均重合度は、例えば、JIS K 6726(1994年版)に準じて求めることができる。
【0068】
前記ポリビニルアルコール系ポリマーを含むポリマーフィルムは、例えば、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。前記市販のポリマーフィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
【0069】
[保護層]
前記保護層は、透明であり、色付が無いことが好ましい。前記保護層の面内位相差値Re(550)は、例えば、0〜10nmであり、好ましくは0〜6nmであり、特に好ましくは0〜3nmである。前記保護層の厚み方向位相差値Rth(550)は、例えば、0〜20nmであり、好ましくは0〜10nmであり、特に好ましくは0〜6nmである。
【0070】
前記保護層の厚みは、例えば、20〜200μmであり、好ましくは30〜100μmの範囲である。
前記保護層としては、例えば、セルロース系フィルムが用いられる。一般的には、保護層としては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムが用いられる。
【0071】
前記保護層としては、例えば、表面処理が施された市販のポリマーフィルムをそのまま用いることができる。前記表面処理としては、拡散処理、反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理、及び反射防止処理などを例示できる。
拡散処理(アンチグレア処理)が施された市販のポリマーフィルムとしては、例えば、日東電工(株)製の商品名「AG150、AGS1、AGS2」等を例示できる。反射防止処理(アンチリフレクション処理)が施された市販のポリマーフィルムとしては、例えば、日東電工(株)製の商品名「ARS、ARC」等を例示できる。ハードコート処理および帯電防止処理が施された市販のポリマーフィルムとしては、例えば、コニカミノルタオプト(株)製の商品名「KC8UX−HA」等を例示できる。反射防止処理が施された市販のポリマーフィルムとしては、例えば、日本油脂(株)製の商品名「ReoLookシリーズ」等を例示できる。
【0072】
[光学部材の接着層]
前記第1の偏光板と前記第1の光学補償層等のような、光学部材同士の積層は、例えば、接着層を介して積層される。
前記接着層の形成材料としては、従来公知の接着剤、粘着剤、アンカーコート剤等を例示できる。前記接着層は、接着体の表面にアンカーコート層が形成され、その上に接着剤層が形成されたような、多層構造であってもよい。また、該接着層は、肉眼的に認知できないような薄い層(ヘアーラインともいう)であってもよい。
【0073】
前記光学部材の接着面には、易接着処理が施されていることが好ましい。前記易接着処理は、例えば、接着面にポリマー材料を塗工することが好ましい。前記ポリマー材料としては、例えば、シリコン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマーが好ましい。前記易接着処理が施されることにより、前記接着面に易接着層が形成される。前記易接着層の厚みは、好ましくは、5〜100nmであり、より好ましくは、10〜80nmである。
【0074】
前記接着層は、互いに接着される光学部材の双方に設けてもよいし、片方に設けてもよい。
前記接着層として粘着剤を用いる場合、前記粘着剤としては、例えば、溶剤型粘着剤、非水系エマルジョン型粘着剤、水系粘着剤、ホットメルト粘着剤等を例示できる。前記粘着剤からなる接着層の厚みは、例えば、1μm〜100μmであり、好ましくは、3μm〜50μmである。
【0075】
前記接着層として接着剤を用いる場合、前記接着剤としては、例えば、水溶性接着剤、エマルジョン型接着剤、ラテックス型接着剤、マスチック接着剤、複層接着剤、ペースト状接着剤、発泡型接着剤、サポーテッドフィルム接着剤、熱可塑型接着剤、熱溶融型接着剤、熱固化接着剤、ホットメルト接着剤、熱活性接着剤、ヒートシール接着剤、熱硬化型接着剤、コンタクト型接着剤、感圧性接着剤、重合型接着剤、溶剤型接着剤、溶剤活性接着剤等を例示できる。接着剤からなる接着層の厚みは、例えば、0.01μm〜0.15μmであり、好ましくは0.02μm〜0.12μmである。
【0076】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、前記本発明の液晶パネルを有する。本発明の液晶表示装置は、本発明の液晶パネルを含む以外は、従来の液晶表示装置と同様の構成であってもよい。本発明の液晶表示装置は、液晶パネルの裏面側から光を照射して画面を見る透過型であってもよいし、液晶パネルの表示面側から光を照射して画面を見る反射型であってもよい。また、前記液晶表示装置は、透過型と反射型の両方の性質を併せ持つ、半透過型であってもよい。
【0077】
本発明の液晶表示装置の用途は、例えば、パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機などのOA機器、携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯情報端末(PDA),携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ,テレビ,電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター,カーナビゲーションシステム用モニター,カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、又は、介護用モニター,医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
【0078】
本発明の液晶表示装置の好ましい用途は、テレビである。前記テレビの画面サイズは、好ましくは、ワイド17型(373mm×224mm)以上であり、より好ましくは、ワイド23型(499mm×300mm)以上であり、さらに好ましくは、ワイド32型(687mm×412mm)以上である。
【実施例】
【0079】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例によって限定されるものではない。
下記実施例及び各比較例における各種測定等は、下記の方法で行った。
(1)Re(λ)、Rth(λ)、Re40(λ)、Nz係数、nx,ny及びnzの測定:
王子計測機器(株)製、商品名「KOBRA21−ADH」を用いて、23℃で各波長λnmにおいて測定した。なお、平均屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ(株)製、製品名「DR−M4」)を用いて測定した値を用いた。
(2)厚みの測定:
アンリツ製デジタルマイクロメーター「KC−351C型」及び大塚電子製「MCPD−2000」を使用して測定した。
(3)カラーシフトの測定
ELDIM社製、商品名「EZContrast160D」を用いて、極角60°で、方位角を0〜360°に変化させた場合の色変化を測定した。測定結果は、横軸を方位角とし、縦軸をx,y値として、xy色度図上にプロットした(各グラフ図)。
前記カラーシフトの測定において、方位角を変えた場合に色変化がないのは、x、yの値が変化しない場合になる。つまり、グラフではフラットになる。フラットでない場合でも、45°、135°、225°、315°の角度に対してそれぞれ偏光板の軸方向に視角を変えた場合(45°→0°と45°→90°、135°→90°と135°→180°、225°→180°と225°→270°、315°→270°と315°→0°)に色変化が同じ時(つまり、x、yのグラフが45°を中心に対称になっている場合)、ある方向の色にのみ色付きすることになる(色付きしても、1色しか色付きしない)。グラフがフラットになるのが最も好ましいが、色付きしても1色ならLCDへの使用は、実用的に問題ない。これに対し、45°、135°、225°、315°の角度に対してそれぞれ偏光板の軸方向に視角を変えた場合(45°→0°と45°→90°、135°→90°と135°→180°、225°→180°と225°→270°、315°→270°と315°→0°)に色変化が異なる時(つまりx、yのグラフが45°を中心に非対称になっている場合)、視野角を変える事で様々な色にのみ色付きすることになる。このような色変化は、LCDでは視野角の低下になり、最も好ましくない色変化となる。振幅の大きさは色付きの度合いとなり、偏光板の軸方向の色(0°、90°、180°、270°)からx,y値がずれるほど大きく色付くことになる。このため、振幅が小さい方が、色付きが小さくなり良好であることを示す。
【0080】
<使用材料>
(1)光学補償層(A):
特開2003−315538に記載のセルロース系フィルム(厚み80μm。アセチル置換度=0.04、プロピオニル置換度=2.76)を、延伸機を用いて、140℃で1.6倍に自由端延伸した。この延伸後のフィルムを光学補償層(A)として用いた。
上記光学補償層(A)の位相差値を測定したところ、面内位相差値Re(590)=88nmであり、厚み方向位相差値Rth(590)=95nmであった。さらに、光学補償層(A)の波長分散は、表1に示すとおりである(光学補償層(A)は、逆分散性である)。
また、光学補償層(A)の屈折率楕円体は、nx>ny>nzを示し、Nz係数は、1.08であった。
【0081】
【表1】

【0082】
(2)光学補償層(B):
2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン及び2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミド(下記式(III)に示す)をシクロヘキサノンに溶解し、塗工液(固形分濃度15重量%)を調製した。この塗工液を、50μmのPETフィルム上に、厚み18μmで塗布した。塗布後、100℃で10分間乾燥処理することにより、厚み約2.8μmの薄いフィルムを形成した。この厚み約2.8μmのフィルムを光学補償層(B)として用いた。
上記光学補償層(B)を、粘着剤を介して、ガラス板に転写し、PETフィルムから剥離した。このガラス板に転写された光学補償層(B)の位相差値を測定したところ、面内位相差値Re(590)=0.4nm、厚み方向位相差値Rth(590)=111nmであった。さらに、光学補償層(B)の波長分散は、表1に示すとおりである(光学補償層(B)は、正分散性である)。
また、光学補償層(B)の屈折率楕円体は、nx=ny>nzを示した。
【0083】
【化3】

【0084】
(3)光学補償層(C):
特開2004−70332の[0052]の例4に記載のポリエステル系ポリマー(同公報のポリマーIV)を混合溶媒(トルエン:シクロヘキサノン(重量比)=8:2)に溶解し、塗工液(固形分濃度10重量%)を調製した。この塗工液を、50μmのPETフィルム上に、厚み40μmで塗布した。塗布後、130℃で5分間乾燥処理することにより、厚み約4.0μmの薄いフィルムを形成した。この厚み約4.0μmのフィルムを光学補償層(C)として用いた。
上記光学補償層(C)を、粘着剤を介して、ガラス板に転写し、PETフィルムから剥離した。このガラス板に転写された光学補償層(C)の位相差値を測定したところ、面内位相差値Re(590)=0.3nm、厚み方向位相差値Rth(590)=112nmであった。さらに、光学補償層(C)の波長分散は、表1に示すとおりである(光学補償層(C)は、正分散性である)。
また、光学補償層(C)の屈折率楕円体は、nx=ny>nzを示した。
【0085】
(4)光学補償層(D):
上記光学補償層(A)で用いたセルロース系フィルムを、延伸機を用いて、130℃で1.4倍に自由端延伸した。この延伸後のフィルムを光学補償層(D)として用いた。
上記光学補償層(D)の位相差値を測定したところ、面内位相差値Re(590)=87nmであり、厚み方向位相差Rth(590)=111nmであった。さらに、光学補償層(D)の波長分散は、表1に示すとおりである(光学補償層(D)は、逆分散性である)。
また、光学補償層(D)の屈折率楕円体は、nx>ny>nzを示し、Nz係数は、1.28であった。
【0086】
(5)光学補償層(E):
光学補償層(B)で用いたポリイミド(上記式(III)に示す)をシクロヘキサノンに溶解し、塗工液(固形分濃度15重量%)を調製した。この塗工液を、50μmのPETフィルム上に、厚み13.8μmで塗布した。塗布後、100℃で10分間乾燥処理することにより、厚み約1.7μmの薄いフィルムを形成した。この厚み約1.7μmのフィルムを光学補償層(E)として用いた。
上記光学補償層(E)を、粘着剤を介して、ガラス板に転写し、PETフィルムから剥離した。このガラス板に転写された光学補償層(E)の位相差値を測定したところ、面内位相差値Re(590)=0.2nm、厚み方向位相差値Rth(590)=85nmであった。さらに、光学補償層(E)の波長分散は、表1に示すとおりである(光学補償層(E)は、正分散性である)。
また、光学補償層(E)の屈折率楕円体は、nx=ny>nzを示した。
【0087】
(6)光学補償層(F):
特開2007−161993号公報の[0103]〜[0106]の実施例3に記載の変性ポリマー(同公報の[化14])を、基材上にキャストし、乾燥厚み110μmの変性ポリビニルアセタール系ポリマーフィルムを形成した。このフィルムを基材から剥離した後、このフィルムを延伸機を用いて、130℃で1.4倍に自由端延伸した。この延伸後のフィルムを光学補償層(F)として用いた。
上記光学補償層(F)の位相差値を測定したところ、面内位相差値Re(590)=88nmであり、厚み方向位相差Rth(590)=97nmであった。さらに、光学補償層(F)の波長分散は、表1に示すとおりである(光学補償層(F)は、逆分散性である)。
また、光学補償層(F)の屈折率楕円体は、nx>ny>nzを示し、Nz係数は、1.10であった。
【0088】
(7)光学補償層(G):
光学補償層(B)で用いたポリイミド(上記式(III)に示す)をシクロヘキサノンに溶解し、塗工液(固形分濃度15重量%)を調製した。この塗工液を、50μmのPETフィルム上に、厚み9.7μmで塗布した。塗布後、100℃で10分間乾燥処理することにより、厚み約1.5μmの薄いフィルムを形成した。この厚み約1.5μmのフィルムを光学補償層(G)として用いた。
上記光学補償層(G)を、粘着剤を介して、ガラス板に転写し、PETフィルムから剥離した。このガラス板に転写された光学補償層(G)の位相差値を測定したところ、面内位相差値Re(590)=0.4nm、厚み方向位相差値Rth(590)=58nmであった。さらに、光学補償層(G)の波長分散は、表1に示すとおりである(光学補償層(G)は、正分散性である)。
また、光学補償層(G)の屈折率楕円体は、nx=ny>nzを示した。
【0089】
(8)光学補償層(H):
厚み100μmのノルボルネン系ポリマーフィルム(JSR社製、商品名:アートン)を140℃でX軸方向に1.9倍、Y軸方向に1.9倍延伸した。この延伸後のフィルムを光学補償層(H)として用いた。
上記光学補償層(H)の位相差値を測定したところ、面内位相差値Re(590)=1.4nm、厚み方向位相差値Rth(590)=113nmであった。さらに、光学補償層(H)の波長分散は、表1に示すとおりである(光学補償層(H)は、フラット分散性である)。
また、光学補償層(H)の屈折率楕円体は、nx=ny>nzを示した。
【0090】
(9)光学補償層(I):
厚み80μmのセルロース系フィルム(富士フィルム社製、商品名:TF80UL)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して2枚積層し、これを光学補償層(I)として用いた
上記光学補償層(I)の位相差値を測定したところ、面内位相差値Re(590)=0.9nm、厚み方向位相差値Rth(590)=118nmであった。さらに、光学補償層(I)の波長分散は、表1に示すとおりである(光学補償層(I)は、逆分散性である)。
また、光学補償層(I)の屈折率楕円体は、nx=ny>nzを示した。
【0091】
(10)光学補償層(J):
厚み55μmのポリカーボネート系フィルム((株)カネカ製、商品名:エルメックPPフィルム)を、延伸機を用いて、140℃で1.1倍に自由端延伸した。この延伸後のフィルムを光学補償層(J)として用いた。
上記光学補償層(J)の位相差値を測定したところ、面内位相差値Re(590)=90nmであり、厚み方向位相差Rth(590)=95nmであった。さらに、光学補償層(J)の波長分散は、表1に示すとおりである(光学補償層(J)は、正分散性である)。
また、光学補償層(J)の屈折率楕円体は、nx>ny>nzを示し、Nz係数は、1.06であった。
【0092】
(11)液晶セル:
シャープ(株)製の市販の液晶テレビ(製品番号:LC−46GX2W)から液晶パネルを取り出し、その液晶セルの上下に配置されていた偏光板等の光学フィルムを全て取り除いた。この液晶セルのガラス板の表裏を洗浄し、液晶セルを準備した。
この液晶セルの波長分散は、表1に示すとおりである(液晶セルは、正分散性である)。この液晶セルの屈折率楕円体は、nx=ny<nzを示した。
【0093】
<実施例1>
上記光学補償層(A)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して、偏光板(日東電工(株)製、商品名:SIG)に積層接着し、補償層付き偏光板(A)を作製した。この際、光学補償層(A)の遅相軸方向と偏光板の吸収軸方向が直交するように、両者を積層した。なお、前記補償層付き偏光板(A)は、同じものを2枚作製した。
【0094】
一方、上記で作製した2枚の補償層付き偏光板(A)のうちから1枚を選んだ。この補償層付き偏光板(A)の光学補償層(A)の表面(偏光板(A)の接着面と反対側の面)に、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して、上記光学補償層(B)を積層接着した。このようにして、偏光板、光学補償層(A)及び光学補償層(B)が、この順序で積層された補償層付き偏光板(AB)を作製した。
【0095】
次に、上記液晶セルの視認側に、上記補償層付き偏光板(A)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。この際、上記補償層付き偏光板(A)の光学補償層(A)側が液晶セルの視認面と向かい合うようにし、且つ補償層付き偏光板(A)の吸収軸方向が、液晶セルの長辺方向に対して平行となるように貼り合わせた。
次に、上記液晶セルの反視認側に、上記補償層付き偏光板(AB)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。この際、上記補償層付き偏光板(AB)の光学補償層(B)側が液晶セルの反視認面と向かい合うようにし、且つ補償層付き偏光板(AB)の吸収軸方向が、液晶セルの長辺方向に対して直交するように貼り合わせた。
以上のようにして、実施例1に係る液晶パネルを作製した(表2参照)。
【0096】
上記実施例1の液晶パネルを、元の液晶テレビ(上記シャープ(株)製の液晶テレビ)のバックライトユニットと結合し、液晶テレビを作製した。
得られた液晶テレビのカラーシフトの測定結果を、図5のグラフに示す。
【0097】
【表2】

【0098】
<実施例2>
実施例1で用いた光学補償層(B)を、上記光学補償層(C)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、1枚の補償層付き偏光板(A)と、1枚の補償層付き偏光板(AC)を作製した。
なお、補償層付き偏光板(AC)は、偏光板、光学補償層(A)及び光学補償層(C)が、この順序で積層されている。
【0099】
次に、実施例1と同様にして、上記液晶セルの視認側に、補償層付き偏光板(A)を貼り合わせ、且つ上記液晶セルの反視認側に、上記補償層付き偏光板(AC)を貼り合わせた。
以上のようにして、実施例2に係る液晶パネルを作製した(表2参照)。
【0100】
上記実施例2の液晶パネルを、実施例1と同様にして、元の液晶テレビのバックライトユニットと結合し、液晶テレビを作製した。
得られた液晶テレビのカラーシフトの測定結果を、図6のグラフに示す。
【0101】
<実施例3>
上記光学補償層(D)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して、偏光板(日東電工(株)製、商品名:SIG)に積層接着し、補償層付き偏光板(D)を作製した。この際、光学補償層(D)の遅相軸方向と偏光板の吸収軸方向が直交するように、両者を積層した。なお、前記補償層付き偏光板(D)は、同じものを2枚作製した。
【0102】
一方、上記で作製した2枚の補償層付き偏光板(D)のうちから1枚を選んだ。この補償層付き偏光板(D)の光学補償層(D)の表面に、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して、上記光学補償層(E)を積層接着した。このようにして、偏光板、光学補償層(D)及び光学補償層(E)が、この順序で積層された補償層付き偏光板(DE)を作製した。
【0103】
次に、上記液晶セルの視認側に、上記補償層付き偏光板(D)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。この際、上記補償層付き偏光板(D)の光学補償層(D)側が液晶セルの視認面と向かい合うようにし、且つ補償層付き偏光板(D)の吸収軸方向が、液晶セルの長辺方向に対して平行となるように貼り合わせた。
次に、上記液晶セルの反視認側に、上記補償層付き偏光板(DE)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。この際、上記補償層付き偏光板(DE)の光学補償層(E)側が液晶セルの反視認面と向かい合うようにし、且つ補償層付き偏光板(DE)の吸収軸方向が、液晶セルの長辺方向に対して直交するように貼り合わせた。
以上のようにして、実施例3に係る液晶パネルを作製した(表2参照)。
【0104】
上記実施例3の液晶パネルを、実施例1と同様にして、元の液晶テレビのバックライトユニットと結合し、液晶テレビを作製した。
得られた液晶テレビのカラーシフトの測定結果を、図7のグラフに示す。
【0105】
<実施例4>
上記光学補償層(F)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して、偏光板(日東電工(株)製、商品名:SIG)に積層接着し、補償層付き偏光板(F)を作製した。この際、光学補償層(F)の遅相軸方向と偏光板の吸収軸方向が直交するように、両者を積層した。なお、前記補償層付き偏光板(F)は、同じものを2枚作製した。
【0106】
一方、上記で作製した2枚の補償層付き偏光板(F)のうちから1枚を選んだ。この補償層付き偏光板(F)の光学補償層(F)の表面に、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して、上記光学補償層(B)を積層接着した。このようにして、偏光板、光学補償層(F)及び光学補償層(B)が、この順序で積層された補償層付き偏光板(FB)を作製した。
【0107】
次に、上記液晶セルの視認側に、上記補償層付き偏光板(F)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。この際、上記補償層付き偏光板(F)の光学補償層(F)側が液晶セルの視認面と向かい合うようにし、且つ補償層付き偏光板(F)の吸収軸方向が、液晶セルの長辺方向に対して平行となるように貼り合わせた。
次に、上記液晶セルの反視認側に、上記補償層付き偏光板(FB)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。この際、上記補償層付き偏光板(FB)の光学補償層(B)側が液晶セルの反視認面と向かい合うようにし、且つ補償層付き偏光板(FB)の吸収軸方向が、液晶セルの長辺方向に対して直交するように貼り合わせた。
以上のようにして、実施例4に係る液晶パネルを作製した(表2参照)。
【0108】
上記実施例4の液晶パネルを、実施例1と同様にして、元の液晶テレビのバックライトユニットと結合し、液晶テレビを作製した。
得られた液晶テレビのカラーシフトの測定結果を、図8のグラフに示す。
【0109】
<実施例5>
実施例4で用いた光学補償層(B)を、上記光学補償層(G)に代えたこと以外は、実施例4と同様にして、1枚の補償層付き偏光板(F)と、1枚の補償層付き偏光板(FG)を作製した。
なお、補償層付き偏光板(FG)は、偏光板、光学補償層(F)及び光学補償層(G)が、この順序で積層されている。
【0110】
次に、実施例1と同様にして、上記液晶セルの視認側に、補償層付き偏光板(F)を貼り合わせ、且つ上記液晶セルの反視認側に、上記補償層付き偏光板(FG)を貼り合わせた。
以上のようにして、実施例5に係る液晶パネルを作製した(表2参照)。
【0111】
上記実施例5の液晶パネルを、実施例1と同様にして、元の液晶テレビのバックライトユニットと結合し、液晶テレビを作製した。
得られた液晶テレビのカラーシフトの測定結果を、図9のグラフに示す。
【0112】
<比較例1>
実施例1で用いた光学補償層(B)を、上記光学補償層(H)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、1枚の補償層付き偏光板(A)と、1枚の補償層付き偏光板(AH)を作製した。
なお、補償層付き偏光板(AH)は、偏光板、光学補償層(A)及び光学補償層(H)が、この順序で積層されている。
【0113】
次に、実施例1と同様にして、上記液晶セルの視認側に、補償層付き偏光板(A)を貼り合わせ、且つ上記液晶セルの反視認側に、上記補償層付き偏光板(AH)を貼り合わせた。
以上のようにして、比較例1に係る液晶パネルを作製した(表3参照)。
【0114】
上記比較例1の液晶パネルを、実施例1と同様にして、元の液晶テレビのバックライトユニットと結合し、液晶テレビを作製した。
得られた液晶テレビのカラーシフトの測定結果を、図10のグラフに示す。
【0115】
【表3】

【0116】
<比較例2>
実施例1で用いた光学補償層(B)を、上記光学補償層(I)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、1枚の補償層付き偏光板(A)と、1枚の補償層付き偏光板(AI)を作製した。
なお、補償層付き偏光板(AI)は、偏光板、光学補償層(A)及び光学補償層(I)が、この順序で積層されている。
【0117】
次に、実施例1と同様にして、上記液晶セルの視認側に、補償層付き偏光板(A)を貼り合わせ、且つ上記液晶セルの反視認側に、上記補償層付き偏光板(AI)を貼り合わせた。
以上のようにして、比較例2に係る液晶パネルを作製した(表3参照)。
【0118】
上記比較例2の液晶パネルを、実施例1と同様にして、元の液晶テレビのバックライトユニットと結合し、液晶テレビを作製した。
得られた液晶テレビのカラーシフトの測定結果を、図11のグラフに示す。
【0119】
<比較例3>
上記光学補償層(J)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して、偏光板(日東電工(株)製、商品名:SIG)に積層接着し、補償層付き偏光板(J)を作製した。この際、光学補償層(J)の遅相軸方向と偏光板の吸収軸方向が直交するように、両者を積層した。なお、前記補償層付き偏光板(J)は、同じものを2枚作製した。
【0120】
一方、上記で作製した2枚の補償層付き偏光板(J)のうちから1枚を選んだ。この補償層付き偏光板(J)の光学補償層(J)の表面に、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して、上記光学補償層(B)を積層接着した。このようにして、偏光板、光学補償層(J)及び光学補償層(B)が、この順序で積層された補償層付き偏光板(JB)を作製した。
【0121】
次に、上記液晶セルの視認側に、上記補償層付き偏光板(J)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。この際、上記補償層付き偏光板(J)の光学補償層(J)側が液晶セルの視認面と向かい合うようにし、且つ補償層付き偏光板(J)の吸収軸方向が、液晶セルの長辺方向に対して平行となるように貼り合わせた。
次に、上記液晶セルの反視認側に、上記補償層付き偏光板(JB)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。この際、上記補償層付き偏光板(JB)の光学補償層(B)側が液晶セルの反視認面と向かい合うようにし、且つ補償層付き偏光板(JB)の吸収軸方向が、液晶セルの長辺方向に対して直交するように貼り合わせた。
以上のようにして、比較例3に係る液晶パネルを作製した(表3参照)。
【0122】
上記比較例3の液晶パネルを、実施例1と同様にして、元の液晶テレビのバックライトユニットと結合し、液晶テレビを作製した。
得られた液晶テレビのカラーシフトの測定結果を、図12のグラフに示す。
【0123】
<比較例4>
実施例4で用いた光学補償層(B)を、上記光学補償層(I)に代えたこと以外は、実施例4と同様にして、1枚の補償層付き偏光板(F)と、1枚の補償層付き偏光板(FI)を作製した。
なお、補償層付き偏光板(FI)は、偏光板、光学補償層(F)及び光学補償層(I)が、この順序で積層されている。
【0124】
次に、実施例4と同様にして、上記液晶セルの視認側に、補償層付き偏光板(F)を貼り合わせ、且つ上記液晶セルの反視認側に、上記補償層付き偏光板(FI)を貼り合わせた。
以上のようにして、比較例4に係る液晶パネルを作製した(表3参照)。
【0125】
上記比較例4の液晶パネルを、実施例4と同様にして、元の液晶テレビのバックライトユニットと結合し、液晶テレビを作製した。
得られた液晶テレビのカラーシフトの測定結果を、図13のグラフに示す。
【0126】
実施例1〜5の液晶パネルは、比較例1〜4の液晶パネルに比して、カラーシフト量が小さいことが分かる。従って、実施例1〜5の液晶パネルは、全方位において、ほぼ色付の無いニュートラルな表示が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の液晶パネルの構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の液晶パネルの構成のその他の例を示す模式断面図である。
【図3】液晶セルの構成の一例を示す模式断面図である。
【図4】(A)〜(C)ともに、偏光板の構成の例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の実施例1のカラーシフトの結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例2のカラーシフトの結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例3のカラーシフトの結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例4のカラーシフトの結果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例5のカラーシフトの結果を示すグラフである。
【図10】比較例1のカラーシフトの結果を示すグラフである。
【図11】比較例2のカラーシフトの結果を示すグラフである。
【図12】比較例3のカラーシフトの結果を示すグラフである。
【図13】比較例4のカラーシフトの結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0128】
10 液晶パネル
11a 第1の光学補償層
11b 第2の光学補償層
12、12a、12b 第3の光学補償層
13 液晶セル
14a 第1の偏光板
14b 第2の偏光板
131 液晶層
132a、132b 基板
133 スペーサー
141 偏光子
142 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶セルの両側に第1の偏光子及び第2の偏光子を有し、前記液晶セルと第1の偏光子の間に第1の光学補償層を有し、前記液晶セルと第2の偏光子の間に第2の光学補償層を有し、且つ、前記第1の光学補償層と第2の光学補償層の間に第3の光学補償層を有する液晶パネルであって、
前記液晶セルの波長分散が、Re40(450)>Re40(550)>Re40(650)であり、
前記第1の光学補償層の波長分散及び第2の光学補償層の波長分散が、0.7<Re40(450)/Re40(550)<1.05であり、
前記第3の光学補償層の波長分散が、Re40(450)>Re40(550)>Re40(650)であることを特徴とする液晶パネル。
ただし、Re40(λ)は、23℃、波長λnmの光で極角40°方向から測定した位相差値を示す。Re40(λ)=(nx−ny)×d40である。前記nxは、光学補償層又は液晶セルの面内において屈折率が最大となる方向(X軸方向)の屈折率を示し、nyは、前記面内において前記X軸方向と直交する方向の屈折率を示し、d40は、極角40°方向からの光路長(nm)を示す。
【請求項2】
前記第1の光学補償層及び第2の光学補償層が、nx>ny≧nzの関係を有する請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項3】
前記第3の光学補償層が、nx≧ny>nzの関係を有する請求項1または2に記載の液晶パネル。
【請求項4】
前記第3の光学補償層のNz係数が、第1の光学補償層及び第2の光学補償層のNz係数よりも大きい請求項1〜3のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項5】
前記第1の光学補償層の位相差値の比(Re40(450)/Re40(550))及び第2の光学補償層の位相差値の比(Re40(450)/Re40(550))が、前記液晶セルの位相差値の比(Re40(450)/Re40(550))よりも小さい請求項1〜4のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項6】
前記第1の光学補償層及び第2の光学補償層が、セルロース系、変性ビニルアセタール系、及びポリエステル系から選択される少なくとも1種のポリマーを主成分として含む請求項1〜5のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項7】
前記第3の光学補償層が、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエステル系、ポリエーテルケトン系、ポリアミドイミド系、及びポリエステルイミド系から選択される少なくとも1種のポリマーを主成分として含む請求項1〜6のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項8】
前記液晶セルが、垂直配向(VA)モードである請求項1〜7のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の液晶パネルを有する液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−69282(P2009−69282A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235492(P2007−235492)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】