説明

液晶パネルの製造方法および液晶パネル

【課題】環境温度に追随し、局部的圧力に対して塑性変形しないスペーサでセルギャップ
を均一に保持するようにした液晶パネルを提供すること。
【解決手段】第1の基板と対向配置される第の2基板とを備え、これらの第1、第2の基
板のいずれか一方の基板にスペーサが形成されて第1、第2の基板間に空間Sが形成され
るようにして貼り合わせた後に、空間内に液晶21を封入した液晶パネルにおいて、スペ
ーサ18は、一方の基板12の表面に固定された底面部と、この底面部から立設した所定
の高さを有する立設部と、この立設部の頂部に形成された頂部辺と、を有し、この頂部辺
には少なくとも2つの突起部181、182と1つの谷部180とを有する突起状スペー
サ18を形成して、この突起状スペーサの各突起部181、182が他の基板2に接触し
た状態で貼り合わされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの製造方法および液晶パネルに係り、詳しくはフォトスペーサの
形状を工夫して、パネル製造工程における液晶配向膜の塗布工程およびラビング処理工程
をスムーズにした液晶パネルの製造方法および液晶パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや携帯電話機等の携帯情報端末の電子機器は、その表示
装置として、液晶パネルが多く使用されている。この液晶パネルは、互いに対向する面に
それぞれ所定の電極パターンなどが形成された2枚の第1、第2基板を用いて、これらの
第1、第2基板を間にシール材を介して所定の間隔をあけて貼り合わせ、これらの間に所
定大きさの空間を形成して、この空間に液晶を封入した構成となっている。
【0003】
この液晶パネルは、第1、第2基板間のギャップ、いわゆるセルギャップは小さな球状
のスペーサを介在させることで均一になるように制御されている。この球状スペーサは、
液晶パネルの製造工程において、第1、第2基板を貼り合わせる前に、いずれかの一方の
基板の内面に散布することにより配設される。しかし、このような球状のスペーサを使用
すると、その径が比較的大きく、また基板に散布することで配設されるために配設位置を
調整することができないためにパネルの開口率が低下してしまう。また、球状スペーサの
散布時にその配設位置が偏在して散布密度がバラつき、セルギャップに変動が生じてしま
うなどの課題がある。
【0004】
そこで、このような球状スペーサに代えて、柱状スペーサ(フォトスペーサ)を用いて
、この柱状スペーサの基部を一方の基板に固定して、この基部から延びた先端部を他方の
基板に接触させて、両基板間のセルギャップを制御するようにした液晶パネルが提案され
ている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0005】
図8は下記特許文献1に開示された液晶パネルを構成するカラーフィルタ基板を示し、
図8Aはカラーフィルタ基板の一部平面図、図8Bは図8Aの一部を拡大した拡大図であ
る。以下、図8を参照して、下記特許文献1に開示された液晶パネルを説明する。
【0006】
下記特許文献1に開示された液晶パネルは、画素電極および薄膜トランジスタ(TFT
)からなるスイッチング素子などが形成されたTFTアレイ基板(図示省略)と、このア
レイ基板と対向する面にカラーフィルタなどが形成されたカラーフィルタ基板(以下、単
に「CF基板」という)30とを備え、このCF基板30には、所定幅aのブラックマト
リクス31、31が形成されて、これらのブラックマトリクス31、31が直交する直交
部32に所定形状の柱状体スペーサ33が形成されている。この柱状体スペーサ33を上
方からみた平面の形状は、図8Bにみられるように、正方形、菱形、円形、楕円形となっ
ている。この柱状体スペーサ33によって、これまでの球状スペーサが抱える課題が解決
されている。
【0007】
また、下記特許文献2には、配向の乱れを低減する目的で、長手方向の長さおよびこの
長手方向と直交する幅長並びに高さを有し、長手方向の長さを幅長より大きくした直方体
からなるスペーサを用いた液晶パネルが開示されている。なお、このスペーサは長手方向
の長さが幅長より大きくなっていることから、異方形状のスペーサとも称されている。
【特許文献1】特開2000−131701号公報(〔0014〕〜〔0018〕、図1、図3)
【特許文献2】特開平10−319413号公報(〔0021〕〜〔0026〕、図8、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1および2の液晶パネルに形成されたスペーサによれば、球状スペーサが
抱える課題を解消することができると共に、セルギャップを均一に保持することができる

【0009】
ところが、液晶パネルは、使用環境によって液晶が熱の影響を受けて熱膨張および熱収
縮し、或いは製造工程の基板の貼合わせ時に基板に局部的な大きな力が加わることがある
。特に、局部的な大きな圧力が掛かると柱状体からなるスペーサが弾性限界を超えて塑性
変形してしまい元の形状に復帰することができなくなり、その結果、所定のギャップを保
持できなくなることがある。そこで、スペーサは、このような熱的伸縮に対する耐性およ
び所定の機械的強度が必要となる。このような機械的強度を補強する方法としては、柱状
体からなるスペーサの本数や面積を増大させることが考えられるが、近年の液晶パネルは
、小型、高精細化の傾向にあり、これに伴って個々の画素領域が極小化されているのでス
ペーサの本数や面積を増大させることが極めて困難になってきている。すなわち、近年、
携帯端末などに使用される液晶パネルは、小型化に加えて高解像度、高輝度、低消費電力
が要求されていることから、スペーサを配置する場所(非開口部)が不足している。
【0010】
また、パネルの製造工程の配向膜塗布工程およびラビング処理工程において、スペーサ
を柱状体にすると、配向膜の塗布時に配向膜材の流れを遮ってしまい塗布ムラが生じる恐
れがある。さらに、この配向膜をラビング処理するときにも、ラビングローラに巻回され
たラビング布を傷める恐れがあるなどの課題がある。
特に特許文献2に記載されている異方形状のスペーサの場合、ある程度の強度を確保し
ようとすると、長手方向の長さと、長手方向と直交する方向の幅長との差が大きくなって
くる。そうすると、配向膜塗布の際に、この異方形状のスペーサが堤防のような役目を果
たしてしまい、配向膜を堰き止めてしまうことになる。またラビング処理の際にもラビン
グ布とスペーサとの接触面積が増加してしまうことになる。
【0011】
本発明は、上述のような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発
明の目的は、パネル製造工程の配向膜塗布工程およびラビング処理工程をスムーズに行え
るようにした液晶パネルの製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、環境温度の変化による熱伸縮に追随し、しかも局部的圧力
に対しても塑性変形しないスペーサでセルギャップを均一に保持するようにした液晶パネ
ルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の液晶パネルの製造方法は、第1の基板と第2の基
板とを貼り合せてなる液晶パネルの製造方法において、以下の工程を含むことを特徴とす
る液晶パネルの製造方法。
(1)前記第1の基板の表面に底面部を有し、前記底面部から立設した立設部の頂部辺に
少なくとも2つの突起部と1つの谷部とを有する突起状スペーサを形成する工程、
(2)前記突起状スペーサが形成された第1の基板に配向膜を塗布する工程、
(3)塗布された前記配向膜をラビング処理する工程、
(4)前記第1、第2基板のいずれか一方の基板の表示領域の周囲にシール材を塗布する
とともに両基板間に前記突起状スペーサを介在させて前記第1、第2基板間に空間を形成
して貼り合せる工程、
(5)前記空間に液晶を封入する工程。
【0014】
上記液晶パネルの製造方法によれば、スペーサ形成工程(1)で、突起状スペーサの頂
部辺に少なくとも2つの突起部と1つ谷部とを形成した後に、次工程の配向膜塗布工程(
2)で配向膜を塗布すると、配向膜が突起状スペーサの谷部を通って基板面に拡散される
ので、配向膜がスペーサによって堰き止められることがなくなり、配向膜の塗布ムラが生
じることなくスムーズに成膜することができる。また、次のラビング処理工程(3)では
、ラビングローラとの接触面積が小さくなるので、ラビングローラに巻回されたラビング
布などがスペーサに引っ掛かることがなくなりラビング布などの損傷を防止できる。さら
に、このような構成を経て製造された液晶パネルは、頂部辺の突起部が他の基板と接触し
て均一なセルギャップを保持することができる。さらにまた、この突起状スペーサは、液
晶の熱膨張および収縮に対しては突起部が追随し、また、局部的な大きな力が加わったと
きは、突起部が圧縮されても谷部が基板に突き当たって過度の変形を阻止してスペーサの
塑性変形を防止できる。
【0015】
上記液晶パネルの製造方法において、前記突起状スペーサは、前記突起部のコーナー部
乃至角部を湾曲させると好ましい。
【0016】
上記好ましい態様によれば、ラビング処理時に、ラビングローラに巻回されたラビング
布などがスペーサに引っ掛かることがなく、ラビング布などの損傷を防止できる。
【0017】
上記液晶パネルの製造方法において、前記突起状スペーサが形成された基板に、カラー
フィルタ層を設け、前記突起状スペーサは前記カラーフィルタ層で使用する色材を選んで
これらの色材を積層して形成すると好ましい。
【0018】
上記好ましい態様によれば、カラーフィルタ基板を製造する際に、突起状スペーサに特
別な材料を用いることなく、カラーフィルタ層を形成する色材で簡単に作成できる。
【0019】
本発明の液晶パネルは、第1の基板と対向配置される第2の基板とを備え、前記第1、
第2の基板のいずれか一方の基板にスペーサが形成されて前記第1、第2の基板間に空間
が形成されるようにして貼り合わせた後に、前記空間内に液晶を封入した液晶パネルにお
いて、前記スペーサは、前記第1、第2の基板のいずれか一方の基板の表面に固定された
底面部と、前記底面部から立設した所定の高さを有する立設部と、前記立設部の頂部に形
成された頂部辺と、を有し、前記頂部辺には少なくとも2つの突起部と1つの谷部とを有
する突起状スペーサを形成して、前記突起状スペーサの各突起部が他の基板に接触した状
態で貼り合わされていることを特徴とする。
【0020】
上記液晶パネルによれば、頂部辺の少なくとも2つの突起部が他の基板との間に接触し
た状態で貼り合わされるので、液晶の熱膨張および収縮に対しては、これらの突起が追随
して、両基板間のギャップが均一に保持される。また、局部的な大きな力が加わったとき
は、突起部が圧縮されても2つの突起部間の谷部が基板に突き当たって過度の変形を阻止
してスペーサの塑性変形を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態
は、本発明の技術思想を具体化するための液晶パネルの製造方法および液晶パネルを例示
するものであって、本発明をこれらに特定することを意図するものではなく、特許請求の
範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【0022】
図1はTFTを搭載したTFTアレイ基板の表示画素を示した平面図である。図1には
説明の便宜上カラーフィルタ基板に配置する突起状スペーサが示されている。図2はカラ
ーフィルタ基板上の突起状スペーサの配置を示した平面図、図3は図2の突起状スペーサ
の概略図、図4は図3の突起状スペーサの変形例を示した各種スペーサの概略図、図5は
図1のV−V線の断面図である。図6はマザー基板から個々のパネルを製造する工程図、
図7Aは配向膜塗布装置、図7Bはラビング装置の概略図である。
【0023】
本発明の実施形態に係る液晶パネル1は、図1および図5に示すように、マトリクス状
に配設されたゲート配線4とソース配線6とが交差する箇所にアクティブ素子としての薄
膜トランジスタ(以下、単に「TFT」という)10を設けた第1の基板としてのTFT
アレイ基板(以下、単に「アレイ基板」という)2と、このアレイ基板2と対向配置する
カラーフィルタ層15を有する第2の基板としてのカラーフィルタ基板(以下、単に「C
F基板」という)12とを有している。CF基板12には突起状スペーサ18が形成され
ている。この突起状スペーサ18は、底辺に所定面積を有する底面部18aと、この底面
部18aから立設した立設部18bとを有し、この立設部18bの頂部辺は少なくとも2
つの山状の突起部181、182と、この山状の突起部181、182との間に形成され
た1つの谷部180とで形成されている(図3参照)。
【0024】
この突起状スペーサ18が形成されたCF基板12とアレイ基板2とは、いずれか一方
の基板の表示領域の周囲にシール材(図示省略)を塗布して、両基板間に空間Sが形成さ
れるようにして貼合わせ、このシール材を硬化させた後に、この空間Sに液晶21が注入
された構成を有している。以下、具体的な構成を説明する。
【0025】
アレイ基板2は、ガラス基板3上にゲート配線4とソース配線6(図1参照)とが所定
の間隔をあけて互いにマトリクス状に配設されており、このマトリクス状に配設されたゲ
ート配線4とソース配線6とで囲まれた複数の領域が表示画素Pとなっている。それぞれ
の表示画素Pは、外部駆動回路と接続されゲート電極を兼ねるゲート配線4、ソース配線
6、TFT10および画素電極11などで構成されている。
【0026】
図5において、アレイ基板2は、ガラス基板3上に、ゲート配線4が形成され、その上
にゲート絶縁膜5を成膜し、その上にソース配線6が形成されて、更に、両ゲート配線4
とソース配線6とが交差する交差部近傍にTFT10(図1参照)が形成されている。ま
た、TFT10は、不図示のドレイン電極を介して画素電極11に接続されており、これ
らは、保護絶縁膜7で被覆されて、さらにこの保護絶縁膜7の上に配向膜8が形成されて
いる。
【0027】
CF基板12は、ガラス基板13上にアレイ基板2のゲート配線4、ソース配線6およ
びTFT10を覆うようにブラックマトリクス14がマトリクス状に形成されており、こ
のブラックマトリクス14に囲まれた領域に所定色からなるカラーフィルタ層15が形成
されている。また、このカラーフィルタ層15の上には絶縁保護膜16および共通電極1
7が順に積層されている。
【0028】
この共通電極17上には、アレイ基板2に向けて突起状スペーサ18が立設される。こ
の突起状スペーサ18は、ブラックマトリクス14上にあって、図1に示すように、それ
ぞれの表示画素P毎に形成されている。個々の突起状スペーサ18は、図3に示すように
、CF基板12面に固定される長手方向の長さXおよびこの長手方向と直交する幅長Yと
を有する底面部18aと、この底面部18aから立設した高さZの立設部18bとを有し
、立設部18bの頂部辺18cは、図3に示すように、左右対称の山状の突起部181、
182と、両突起部181、182の間に所定深さの谷部180とを有した形状に形成さ
れている。つまり長手方向の長さXおよびこの長手方向と直交する幅長Yとを有する異方
形状のスペーサに谷部180を設けた形状に形成されている。谷部180の深さは、突起
部181、182の頂点からΔZだけ窪んだ深さに設定されている。この突起状スペーサ
18は、アクリル系透明感光剤で形成されている。なお、この突起状スペーサ18は感光
剤で形成されるのでフォトスペーサとも言われている。また、この突起状スペーサ18は
、その立設部18bおよび頂部辺18cのコーナー部乃至角部を湾曲させて丸みを付け、
全体を曲面からなる形状とするのが好ましい。このように丸みを付けると、ラビング時に
コーナー部乃至角部にラビング布などが引っ掛かって損傷することがなくなる。
【0029】
このCF基板12は、突起状スペーサ18が形成された後に、アレイ基板2と対向する
表面に配向膜19が形成される。これらのアレイ基板2とCF基板12とは、アレイ基板
2の表示領域の周囲に、シール材(図示省略)を塗布し、更に、突起状スペーサ18の各
突起部181、182をアレイ基板2の表面に接触させて、両基板2、12間に所定大き
さの空間Sが形成されるように貼り合わされる。両基板2、12が貼り合わされた後には
、空間S内に液晶21が注入される。ガラス基板3、13の外表面には、入射光を偏光す
る偏光板9、20が配置されて液晶パネル1の組立が完了する。
【0030】
この実施形態の液晶パネル1によれば、CF基板12側に設けた突起状スペーサ18の
頂部辺18cのそれぞれの突起部181、182がアレイ基板2と接触した状態で貼り合
わされることにより、均一なセルギャップが保持される。また、突起状スペーサ18は、
液晶21の熱膨張および収縮に対しては各突起部181、182が追随し、また、局部的
な大きな力が加わったときは、それぞれの突起部が圧縮されても谷部180がアレイ基板
2に突き当たって過度の変形を阻止してスペーサの塑性変形が防止される。
【0031】
この突起状スペーサ18は、上記の形状に限定されず、種々の形状に変更してもよい。
例えば、断面視での形状が台形状となる台形型スペーサ18A(図4A参照)、3つの山
状突起181〜183および2つの谷部180、180を有する台形型スペーサ18B(
図4B参照)等にしてもよい。これらの突起状スペーサ18A、18Bは、遮光する遮光
部材の形状に合わせて、所定の形状のスペーサを選択できるので、基板設計が容易になる
。また、機械的強度も高くなる。さらに、突起状スペーサ18は、アレイ基板側2に設け
てもよい。さらにまた、本実施形態における突起状スペーサ18は、図1に示すように、
それぞれの表示画素Pに設けた例を説明したが、複数画素をグループにして、このグルー
プ毎に1つずつ配置してもよい。
【0032】
次に、図6を中心に図1〜図3、図5、図7を参照して、上記構成の液晶パネル1の製
造方法を説明する。
【0033】
液晶パネル1は、一度に複数枚のパネルを形成できる大判のマザー基板を用いて作製さ
れる。まず、2枚の大判のガラスからなるマザー基板、すなわちアレイ基板用のTFTマ
ザー基板およびCF基板用のCFマザー基板が用意される(ステップS1、S7)。
【0034】
TFTマザー基板は、その表面が個々の液晶セル分に区分されて、この区分された個々
の表示領域に複数本のゲート配線4およびソース配線6がマトリクス状に配設され、各ゲ
ート配線4とソース配線6の交点にはTFT10が設けられる。これらは各種の電極のパ
ターニングで形成される(ステップS2)。これらの電極上には保護絶縁膜7が形成され
、その上には配向膜8が成膜される。
【0035】
この配向膜8はラビング処理される(ステップS3〜S5)。このラビング処理は、T
FTマザー基板にポリイミド系樹脂等の有機高分子材からなる配向膜8が成膜されて、こ
の樹脂からなる配向膜8の表面にフェルトや木綿などの繊維からなるラビング布などを所
定の荷重下で一定方向に擦りつけることによってなされる。次のステップS6において、
個々のセル区分の表示領域周縁に、シール材が塗布される。このシール材には、エポキシ
系接着剤等の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等の公知のものを用い、ディスペンサ方式
或いはスクリーン印刷方式などで塗布される。
【0036】
他方のCFマザー基板は、その表面が個々の液晶セル分に区分されて、その区分された
個々の領域に、ブラックマトリクス14が形成されると共にカラーフィルタ15が形成さ
れ、さらにこれらの上に絶縁保護膜16および共通電極17が形成される(ステップS8
、S9)。
【0037】
次に、ステップS10において、共通電極17上に突起状スペーサ18が形成される。
この突起状スペーサ18は、図3に示すように、CF基板12面に固定される長手方向の
長さXおよびこの長手方向と直交する幅長Yとを有する底面部18aと、この底面部18
aから立設した高さZの立設部18bと、この立設部18bの頂部に形成された頂部辺1
8cとを有している。なお、図3Bおよび図3Cに記載されている符号18b'、18b'
は側壁面を示している。頂部辺18cは、図3に示すように、左右対称の山状の突起部1
81、182と、両突起部181、182の間に位置する所定深さの谷部180とを有し
ている。谷部180の深さは、突起部181、182の頂部からΔZだけ窪んだ深さに設
定されており、アレイ基板2と貼り合わされたときには、谷部180とアレイ基板2表面
との間にギャップgが形成される(図5参照)。長さXと幅長Yとの関係は、X>Yに設
定されている。また、高さZはセルギャップを形成する高さに設定される。この突起状ス
ペーサ18は、これらの寸法を有することにより、異方性形状となっている。この突起状
スペーサ18は、例えば、共通電極17の上側にアクリル系透明感光剤をスピンコート法
により所望の膜厚にして形成し活性化パターン露光を行い、アルカリ現像液での現像、水
洗い、および熱処理を行って、フォトスペーサとして形成される。また、アクリル系透明
感光剤に代えて、カラーフィルタ層15として使用される赤、青、緑等の各色からなる樹
脂材のうち、いずれか2つの色層を選択して、選択した樹脂材を積層させてスペーサを形
成する方式を採用してもよい。
【0038】
CFマザー基板は、この突起状スペーサ18が形成された後に、基板面に配向膜19が
成膜される(ステップS11)。この配向膜19の成膜は、既に公知の例えば、図7Aに
示すような配向膜塗布装置22を使用して行われる。この塗布装置22は、版胴23を備
えており、この版胴23にCFマザー基板を走行、すなわち、図2のガラス基板13を矢
印A方向から送って成膜される。この成膜では、配向膜材が突起状スペーサ18の谷部1
80を通って基板面に拡散されるので、配向膜材が印刷ムラを生じることなくスムーズに
塗布される。
【0039】
その後、この配向膜19はラビング処理される(ステップS12)。このラビング処理
は、例えば図7Bに示すようなラビング装置24を使用して行われる。このラビング装置
24は、公知のもので、フェルトや木綿などの繊維からなるラビング布25が巻回された
回転ロール26を備えており、この回転ロール26にCFマザー基板を走行、すなわち、
図2のガラス基板13を矢印B方向から送って、この配向膜材の表面にラビング布を所定
の荷重下で一定方向に擦りつけることによって配向膜19の表面が配向処理される。この
ラビング処理時に、突起状スペーサ18は、上記のように谷部180を有している形状と
なっているので、突起状スペーサ18と直接接する部分が減少し、また回転ロール26に
巻回されたラビング布25などが突起状スペーサ18に引っ掛かることがなく、ラビング
布などの損傷を防止できる。
【0040】
その後、ステップS13において、TFTマザー基板とCFマザー基板とを貼り合わせ
て、シール材を硬化させる。このシール材の硬化は、その使用する材料に合わせて熱を加
えて行われる。この両基板は、間に突起状スペーサ18が介在されるので、両基板間に均
一なセルギャップgが保持される。両基板を貼り合せた後に、貼り合わせた両マザー基板
は個別セルに分断される(ステップS14)。この分断は、例えば、スクライブ方式とブ
レーク方式とを組み合わせにより行われる。その後、個別セルには、予め形成された注入
口(図示省略)から液晶21が注入され、その後、この注入口が封止材で封止されて液晶
パネル1が完成する(ステップS15〜S17)。
【0041】
この製造方法によれば、スペーサ形成工程(S10)において、突起状スペーサ18の
頂部辺18cに少なくとも2つの山状突起部181、182と1つの谷部180とを連ね
た凹凸を形成した後、次工程の配向膜19の塗布工程(ステップS11)で配向膜材を塗
布する際に、配向膜19が突起状スペーサ18の谷部180を通って基板面に拡散される
ので、配向膜19が印刷ムラを生じることなくスムーズに印刷されて、表示品質が向上す
る。また、次のラビング処理工程(ステップS12)では、ラビングローラに巻回された
ラビング布などが突起状スペーサ18に引っ掛かることがなく、布などの損傷を防止でき
る。さらに、製造された液晶パネル1は、頂部辺18cの山状の突起部181、182が
アレイ基板2と接触して均一なセルギャップが保持されて、液晶21の熱膨張および収縮
に追随し、また、局部的な大きな力が加わったときは、突起部181、182が圧縮され
ても谷部180がアレイ基板2に突き当たって過度の変形が阻止されて突起状スペーサ1
8の塑性変形が防止される。
【0042】
なお、本実施形態においては突起状スペーサの突起が2本の場合について説明したが、
この突起が1本の場合であっても、実施形態で示したものと同様の効果を奏することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1はTFTを搭載したTFTアレイ基板の表示画素を示した平面図である。
【図2】図2はカラーフィルタ基板上のスペーサの配置を示した平面図である。
【図3】図3は図2のスペーサの概要図である。
【図4】図4は突起状スペーサの変形例を示す概略図である。
【図5】図5は図1のV−V線の断面図である。
【図6】図6はマザー基板から個々のパネルを製造する工程図である。
【図7】図7Aは配向膜塗布装置、7Bはラビング処理装置の概要図である。
【図8】図8は従来技術の液晶パネルを示し、図8Aは液晶パネルの平面図、図8Bは液晶パネルのゲートバスラインを通る一部断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1:液晶パネル 2:TFTアレイ基板 3:ガラス基板 4:ゲート配線 5:ゲート
絶縁膜 6:ソース配線 7:保護絶縁膜 8:配向膜 9:偏光板 10:薄膜トラン
ジスタ(TFT) 11:画素電極 12:カラーフィルタ基板 13:ガラス基板 1
4:ブラックマトリクス 15:カラーフィルタ 16:絶縁保護膜 17:共通電極、
18:突起状スペーサ 18a:底面部 18b 立設部 18c:頂部辺 181、1
82:突起部 180:谷部 19:配向膜 20:偏光板 21:液晶 22:配向膜
塗布装置 23:版胴 24:ラビング処理装置 25:ラビング布 26:回転ロール
P:表示画素 S:空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板とを貼り合せてなる液晶パネルの製造方法において、以下の工
程を含むことを特徴とする液晶パネルの製造方法。
(1)前記第1の基板の表面に底面部を有し、前記底面部から立設した立設部の頂部辺に
少なくとも2つの突起部と1つの谷部とを有する突起状スペーサを形成する工程、
(2)前記突起状スペーサが形成された第1の基板に配向膜を塗布する工程、
(3)塗布された前記配向膜をラビング処理する工程、
(4)前記第1、第2基板のいずれか一方の基板の表示領域の周囲にシール材を塗布する
とともに両基板間に前記突起状スペーサを介在させて前記第1、第2基板間に空間を形成
して貼り合せる工程、
(5)前記空間に液晶を封入する工程。
【請求項2】
前記突起状スペーサは、前記突起部のコーナー部乃至角部を湾曲させることを特徴とす
る請求項1に記載の液晶パネルの製造方法。
【請求項3】
前記突起状スペーサが形成された基板に、カラーフィルタ層を設け、前記突起状スペー
サは前記カラーフィルタ層で使用する色材を選んでこれらの色材を積層して形成すること
を特徴とする請求項1に記載の液晶パネルの製造方法。
【請求項4】
第1の基板と対向配置される第2の基板とを備え、前記第1、第2の基板のいずれか一
方の基板にスペーサが形成されて前記第1、第2の基板間に空間が形成されるようにして
貼り合わせた後に、前記空間内に液晶を封入した液晶パネルにおいて、
前記スペーサは、前記第1、第2の基板のいずれか一方の基板の表面に固定された底面
部と、前記底面部から立設した所定の高さを有する立設部と、前記立設部の頂部に形成さ
れた頂部辺と、を有し、前記頂部辺には少なくとも2つの突起部と1つの谷部とを有する
突起状スペーサを形成して、前記突起状スペーサの各突起部が他の基板に接触した状態で
貼り合わされていることを特徴とする液晶パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−210970(P2009−210970A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55871(P2008−55871)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】