説明

液晶注入口封止剤及び液晶表示セル

【課題】金属と接触しても腐食や表示不良を起こすおそれが少ない液晶注入口封止剤及び液晶表示セルを提供する。
【解決手段】一分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物と一分子中に2個以上の炭素−炭素2重結合を有するポリエン化合物との反応物であり、両末端にポリエン化合物の炭素−炭素2重結合を有する高分子量チオエーテル系化合物と、一分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエン化合物と、光重合開始剤とを含む液晶注入口封止剤であって、上記液晶注入口封止剤中の、ポリエン化合物由来の炭素−炭素2重結合に対するチオール基の割合がモル比で0.15以下である液晶注入口封止剤、及び、更に、アクリルオリゴマー又はポリマーを含む液晶注入口封止剤、並びに、上記液晶注入口封止剤にて封止されてなる液晶表示セル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性を有する液晶注入口封止剤、特に、銀配線を使用した液晶セルに適した液晶注入口封止剤、及び、該液晶注入口封止剤が用いられた液晶表示セルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエン−ポリチオール系光硬化性樹脂は、塗料、接着剤、シーラント等に使用される(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。また、液晶注入口封止剤の用途にも良好に使用されている(例えば、特許文献3〜6参照)。しかしながら、これらのポリエン−ポリチオール系光硬化性樹脂は、金属配線と接触すると、ポリチオール化合物が反応して金属を腐食させ導通抵抗を上昇させるおそれがあり、また液晶セル内に銀配線が使用されている場合には、銀と反応して表示ムラを起こすという問題を発生させることがわかった。
【特許文献1】特公昭47−3269号公報
【特許文献2】特開平6−306172号公報
【特許文献3】特開平6−148656号公報
【特許文献4】特開平7−056178号公報
【特許文献5】特開2000−154251号公報
【特許文献6】特開2002−155141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記問題点に鑑み、本発明は、金属、特に銀と接触しても腐食や表示不良を起こすおそれが少ない液晶注入口封止剤及び液晶表示セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明にかかる液晶注入口封止剤は、一分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物と一分子中に2個以上の炭素−炭素2重結合を有するポリエン化合物とを反応させた、両末端にポリエン化合物の炭素−炭素2重結合を有する高分子量チオエーテル系化合物と、一分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエン化合物と、光重合開始剤とを含む液晶注入口封止剤であって、上記液晶注入口封止剤中の、ポリエン化合物由来の炭素−炭素2重結合に対するチオール基の割合がモル比で0.15以下であることを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明にかかる液晶注入口封止剤は、請求項1記載の発明にかかる液晶注入口封止剤おいて、更に、アクリルオリゴマー又はポリマーを含むことを特徴とする。
【0006】
請求項3記載の発明にかかる液晶注入口封止剤は、請求項2記載の発明にかかる液晶注入口封止剤において、アクリルオリゴマー又はポリマーがエポキシアクリレート及び/又はウレタンアクリレートであることを特徴とする。
【0007】
本発明の銀配線使用液晶セル用液晶注入口封止剤は、請求項1〜3のいずれか1項記載の発明にかかる液晶注入口封止剤からなることを特徴とする。
【0008】
本発明の液晶表示セルは、液晶が注入されたセルの液晶注入口が、請求項1〜4のいずれかに1項記載の発明にかかる液晶注入口封止剤により封止されてなることを特徴とする。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明において用いられる、一分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物としては、例えば、エタンジチオール、プロパンジチオール、ヘキサメチレンジチオール、デカメチレンジチオール、トリレン−2,4−ジチオール等の脂肪族ポリチオール;キシレンジチオール等の芳香族ポリチオール;ジグリコールジメルカプタン、トリグリコールジメルカプタン、テトラグリコールジメルカプタン、チオジグリコールジメルカプタン、チオトリグリコールジメルカプタン、チオテトラグリコールジメルカプタン、1,4−ジチアン環含有ポリチオール化合物等の環状スルフィド化合物等のジチオール化合物が挙げられる。
【0011】
上記1,4−ジチアン環含有ポリチオール化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物等が挙げられる。
【0012】
【化1】

【0013】
式中、nは、1〜5の整数を表す。上記一般式(I)で表される1,4−ジチアン環含有ポリチオール化合物の具体例としては、例えば、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトエチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトプロピル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトブチル−1,4−ジチアン等が挙げられる。
【0014】
本発明において用いられるポリエン化合物としては、一分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有する多官能性のものであれば特に限定されず、例えば、アリルアルコール誘導体、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル類、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0015】
上記アリルアルコール誘導体としては,特に限定されないが、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルマレエート、ジアリルアジペート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトール、ジアリルエーテル等が挙げられる。これらのうち、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートがより好ましい。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル類に用いられる多価アルコールとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0017】
本発明の請求項1記載の発明にかかる液晶注入口封止剤を製造する方法は、特に、限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、一分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物と、当モル量もしくは過剰量の一分子中に2個以上の炭素−炭素2重結合を有するポリエン化合物とを、熱重合開始剤の存在下で加熱して重合させて付加重合反応させ、両末端にポリエン化合物の炭素−炭素2重結合を有する高分子量チオエーテル系化合物を製造する。なお、「高分子量チオエーテル系化合物」は、未反応チオール基を含んでいてもよい。また、「高分子量チオエーテル系化合物」は、未反応チオール基を含まなくてもよい。すなわち、この反応に際して、ポリチオール化合物の反応を十分に進めて、反応生成物が高分子量チオエーテル化合物だけとなりチオール基を含まない高分子量チオエーテル系化合物を生成させても良いし、反応途中で反応を停止させることにより、未反応チオール基を含む高分子量チオエーテル系化合物を生成させてもよい。また、上記熱重合開始剤としては、特に限定されないが、たとえば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。また、高分子量チオエーテル系化合物の分子量の好ましい下限は460であり、好ましい上限は1500である。なお、高分子量チオエーテル系化合物の分子量は、例えばマススペクトルにより測定することができる。
【0018】
本発明の液晶注入口封止剤においては、このようにして反応させて得られた反応混合物中に、ポリエン化合物由来の炭素−炭素2重結合に対するチオール基の割合(SH/C=C)がモル比で0.15以下となるようにする。このモル比が0.15を超えると、液晶注入口封止剤とされた際に、金属配線と接触すると、ポリチオール化合物が金属を腐食させ導通抵抗を上昇させることがあり、また液晶セル内に銀配線が使用されている場合には、銀と反応して液晶表示ムラを起こすようになる。
【0019】
なお、ポリエン化合物由来の炭素−炭素2重結合に対するチオール基の割合がモル比で0.15以下である反応混合物を得るために上記製造方法を行った場合は、通常、上記反応混合物中に、一分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエン化合物が未反応成分として残る。
【0020】
そこで、上記製造方法においては、次いで、この反応混合物に光重合開始剤を加えて液晶注入口封止剤としてもよい。また、一分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエン化合物が未反応成分としてほとんど残っていない場合には、液晶注入口封止剤を製造する際に、上記反応混合物に光重合開始剤と共に、一分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエン化合物を加えて液晶注入口封止剤としてもよい。
【0021】
請求項2にかかる発明におけるアクリルオリゴマー又はポリマーとしては、エポキシアクリレート及び/又はウレタンアクリレートが好ましい。尚、アクリルモノマーは好ましくない。分子量が小さいと液晶中に残存未反応モノマーが溶出し液晶を劣化させるおそれがあるからである。
エポキシアクリレートとしては、ビスフェノール型エポキシアクリレート、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシアクリレート、フェノールノボラック型エポキシアクリレート等がある。
ウレタンアクリレートとしては、ポリイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応物等が挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリレートは、アクリレートもしくはメタクリレートを意味する。
ポリイソシアネートは、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4 ,4'−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4 ,4'−ジイソシアネート等がある。
ヒドロキシアクリレートは、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等がある。
【0022】
請求項2にかかる発明におけるアクリルオリゴマー又はポリマーの使用量は、多くなると可使時間が短くなり、少なくなると反応が遅くなるので、高分子量ポリチオール化合物とポリエン化合物の合計100重量部に対して、50〜150重量部が好ましい。
【0023】
請求項2にかかる発明の液晶注入口封止剤の製造方法の一例としては、上述の、本発明の請求項1記載の発明にかかる液晶注入口封止剤を製造する方法の一例における、光重合開始剤を加える工程において、光重合開始剤を加えると同時、または、光重合開始剤を加える直前もしくは直後にアクリルオリゴマー又はポリマーを加える他は、上述の、本発明の請求項1記載の発明にかかる液晶注入口封止剤を製造する方法と同じ方法が挙げられる。
【0024】
本発明において用いられる光重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン、p−アミノベンゾフェノン、p,p'−ジメチルアミノベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤;アセトフェノン、ベンズアルデヒド、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1、オリゴ〔2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン〕等のアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;ジアゾアミノベンゼン等のジアゾ系化合物;4,4'−ジアジドスチルベン−p−フェニレンビスアジド、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、ベンジル、カンファーキノン、アントラキノン、ミヒラーケトン等が挙げられる。
【0025】
本発明の液晶注入口封止剤において、上記光重合開始剤の配合量は、高分子量ポリチオール化合物とポリエン化合物との合計量100重量部に対して、0.0001〜10重量部の範囲が好ましく、0.05〜5重量部がより好ましい。
【0026】
本発明の液晶注入口封止剤には、更に、必要に応じて、有機ケイ素化合物等の接着性改良剤、酸化防止剤、重合禁止剤、充填剤、着色剤、チキソトロピー剤、硬化促進剤、可塑剤、界面活性剤等の通常用いられる各種の配合剤を配合してもよい。
【0027】
本発明の液晶注入口封止剤を使用するには、先ず、ITO薄膜等の透明電極付きの2枚の透明板を、適当なスペーサを介して間隔をおいて対向させ、その周囲を液晶の注入口を残して適当なシール体でシールしてセルを形成する。
【0028】
上記シール体としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。次に、液晶注入口からセル内に液晶を注入した後、液晶注入口を液晶注入口封止剤で塞ぎ、これに活性光線を照射して封止剤を硬化させる。以上の方法を用いることにより液晶注入口を封止することができる。
【0029】
上記液晶としては特に限定されず、通常、液晶として用いられているものを用いることができ、例えば、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメチック液晶等が挙げられる。
【0030】
上記活性光線としては、例えば、超高圧の水銀灯、高圧の水銀灯、低圧の水銀灯、メタルハライドランプ等を光源とする紫外線などが挙げられる。
【0031】
上記活性光線の照射により、本発明の液晶注入口封止剤は、従来のポリエン・ポリチオール系光硬化性樹脂組成物と同様に、数秒から数分の短時間で硬化し、液晶注入口を封止することができ、上記の工程を経て液晶表示セルが作製される。上記液晶表示セルもまた本発明の1つである。
【発明の効果】
【0032】
請求項1記載の発明にかかる液晶注入口封止剤は、高分子量チオエーテル系化合物のチオエーテル結合を含むので、液晶との親和性が悪くなるため、ガラスになじみ濡れるが、液晶にはなじまないため、液晶が汚染されない。また、高分子量チオエーテル系化合物がチオール基を含まないか、含んでいても僅かであると共に、液晶注入口封止剤中の、ポリエン化合物由来の炭素−炭素2重結合に対するチオール基の割合がモル比で0.15以下とされているように、ポリチオール化合物のチオール基を反応させて高分子量化したチオエーテル系化合物としており、且つ、チオール基の数が減っているために、低分子量ポリチオール化合物のチオール基と液晶セル中の銀等の金属イオンが反応して腐食や液晶表示ムラを起こすおそれが少ない。
【0033】
請求項2又は3記載の発明にかかる液晶注入口封止剤は、上記請求項1記載の発明の効果と同様の効果を奏する。さらに、アクリルオリゴマー又はアクリルポリマーが加えられることにより、アクリロイル基の炭素−炭素二重結合が加えられているので、チオール基を減らしたり無くすことによって起こる硬化反応が遅くなるという問題が解消される。
【0034】
請求項4記載の発明にかかる銀配線使用液晶セル用液晶注入口封止剤は、請求項1〜3のいずれか1項記載の液晶注入口封止剤からなるので、金属配線と接触してもポリチオール化合物が反応して金属を腐食させ導通抵抗を上昇させるおそれがなく、また液晶セル内に銀配線が使用されている場合、銀と反応して液晶表示ムラを発生させるおそれがほとんどない。
【0035】
また、本発明にかかる液晶表示セルは、液晶が注入されたセルの液晶注入口が、上記本発明の液晶注入口封止剤により封止されてなるので、導通抵抗の上昇や、液晶表示ムラの発生のおそれがほとんどない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
【0037】
〔液晶注入口封止剤の製造〕
2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(分子量=212)10重量部とトリアリルイソシアヌレート(分子量=249)40重量部とを仕込み、80℃まで加熱してチオール基が消滅するまで反応させ(FTIRにて測定する)、チオール基の含有しないチオエーテル系樹脂を得た。得られた溶液の粘度は約1万mPa・s(20℃)であった。得られた反応混合物に、ベンジルジメチルケタール2.3重量部を配合して液晶注入口封止剤を得た。
【0038】
〔性能評価〕
FPC(フレキシブルプリント基板)の銀配線上に、得られた液晶注入口封止剤を塗布し、光照射を行い硬化させ初期の導通抵抗を測定した。ついで、促進試験として温度80℃、相対湿度80%の雰囲気下に30日間放置後、導通抵抗を測定し導通抵抗の変化を評価した。この結果を表1に示した。表1において、導通抵抗の増加率とは、初期の導通抵抗をAとし、温度80℃、相対湿度80%の雰囲気下に30日間放置後の導通抵抗をBとしたときの、
(B−A)÷A×100(%)を表す。
【0039】
また、銀配線を使用した液晶パネルの空セルに液晶「JC5004LA」を注入した後、注入口に上記の液晶注入口封止剤を塗布し3000mJ/cmの紫外光を照射して硬化させた。
この封止済みのセルを室温で1日放置し、注入口付近に発生する液晶表示ムラの発生を目視により観察し、注入口から伸びる液晶表示ムラの長さを以下の基準で評価し、結果を表1に示した。試験の繰り返し数は3とした。
◎:ムラなし。○:0〜1mm。×:5mm以上。
実施例2
【0040】
〔液晶注入口封止剤の製造〕
2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(分子量=212)13重量部とトリアリルイソシアヌレート(分子量=249)37重量部とを仕込み、80℃まで加熱して粘度が約1万mPa・s(20℃)になるまで反応させ、高分子量チオエーテル系樹脂を製造した。得られた反応混合物中のトリアリルイソシアヌレートの炭素−炭素2重結合に対するチオール基の割合(モル比)は、0.15(FTIRで測定)であった。得られた反応混合物に、ベンジルジメチルケタール2.3重量部を配合して液晶注入口封止剤を得た。
【0041】
〔性能評価〕
得られた液晶注入口封止剤を用いて、実施例1と同様にして性能評価し、結果を表1に示した。
【0042】
(比較例1)
〔液晶注入口封止剤の製造〕
2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(分子量=212)28重量部とトリアリルイソシアヌレート(分子量=249)22重量部とを仕込み、80℃まで加熱して粘度が約1万mPa・s(20℃)になるまで反応させ、高分子量チオエーテル系樹脂を製造した。得られた反応混合物中のトリアリルイソシアヌレートの炭素−炭素2重結合に対するチオール基の割合(モル比)は、1.0(FTIRで測定)であった。得られた反応混合物に、ベンジルジメチルケタール2.3重量部を配合して液晶注入口封止剤を得た。
【0043】
〔性能評価〕
得られた液晶注入口封止剤を用いて、実施例1と同様にして性能評価し、結果を表1に示した。
実施例3
【0044】
〔液晶注入口封止剤の製造〕
2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(分子量=212)10重量部とトリアリルイソシアヌレート(分子量=249)40重量部とを仕込み、80℃まで加熱してチオール基が消滅するまで反応させ(FTIRにて測定する)、チオール基の含有しないチオエーテル系樹脂を得た。得られた溶液の粘度は約1万mPa・s(20℃)であった。得られた反応混合物に、ビスフェノールA型エポキシアクリレート15重量部、ウレタンアクリレート10重量部、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3重量部、更にベンジルジメチルケタール1.7重量部を配合して冷却し、粘度2万mPa・s(20℃)の液晶注入口封止剤を得た。
【0045】
〔性能評価〕
FPC(フレキシブルプリント基板)の銀配線上に、得られた液晶注入口封止剤を塗布し、光照射を行い硬化させ、初期の導通抵抗を測定した。ついで、促進試験として温度80℃、相対湿度80%の雰囲気下に30日間放置後、導通抵抗を測定し導通抵抗の変化を評価した。この結果を表1に示した。
【0046】
また、銀配線を使用した液晶パネルの空セルに液晶「JC5004LA」を注入した後、注入口に上記の液晶注入口封止剤を塗布し3000mJ/cmの紫外光を照射して硬化させた。
この封止済みの液晶セルを室温で1日放置し、注入口付近に発生する液晶表示ムラの発生を目視により観察し、注入口から伸びる液晶表示ムラの長さを実施例1と同様の基準で評価し、結果を表1に示した。試験の繰り返し数は3回とした。
【0047】
また、液晶パネルの注入口(注入口径:10mmφ×封止厚み2mm)に上記の液晶注入口封止剤を入れ、表面より所定量のUV光を照射して硬化させた。この表面硬化に必要な最低光量を表面硬化性(mJ/cm)とし、表1に示した。この表面硬化性により液晶注入口封止剤の硬化速度を評価した。
実施例4
【0048】
〔液晶注入口封止剤の製造〕
2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(分子量=212)13重量部とトリアリルイソシアヌレート(分子量=249)37重量部とを仕込み、80℃まで加熱して粘度が約1万mPa・s(20℃)になるまで反応させ、高分子量チオエーテル系樹脂を製造した。得られた反応混合物中のトリアリルイソシアヌレートの炭素−炭素2重結合に対するチオール基の割合(モル比)は、0.15(FTIRで測定)であった。得られた反応混合物に、ビスフェノールA型エポキシアクリレート15重量部、ウレタンアクリレート10重量部、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3重量部、更にベンジルジメチルケタール1.7重量部を配合して冷却し、粘度2万mPs(20℃)の液晶注入口封止剤を得た。
【0049】
〔性能評価〕
得られた液晶注入口封止剤を用いて、実施例3と同様にして性能評価し、結果を表1に示した。
実施例5
【0050】
〔液晶注入口封止剤の製造〕
2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(分子量=212)10重量部とトリアリルイソシアヌレート(分子量=249)40重量部とを仕込み、80℃まで加熱してチオール基が消滅するまで反応させ(FTIRにて測定する)、チオール基の含有しないチオエーテル系樹脂を得た。得られた溶液の粘度は約5000mPa・s(20℃)であった。得られた反応混合物に、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3重量部、更にベンジルジメチルケタール1.7重量部を配合して冷却し、粘度1万mPa・s(20℃)の液晶注入口封止剤を得た。
【0051】
〔性能評価〕
得られた液晶注入口封止剤を用いて、実施例3と同様にして性能評価し、結果を表1に示した。
実施例6
【0052】
〔液晶注入口封止剤の製造〕
2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(分子量=212)13重量部とトリアリルイソシアヌレート(分子量=249)37重量部とを仕込み、80℃まで加熱して粘度が約2万mPa・s(20℃)になるまで反応させ、高分子量チオエーテル系樹脂を製造した。得られた反応混合物中のトリアリルイソシアヌレートの炭素−炭素2重結合に対するチオール基の割合(モル比)は、0.15(FTIRで測定)であった。得られた反応混合物に、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3重量部、更にベンジルジメチルケタール1.7重量部を配合して冷却し、粘度1万mPs(20℃)の液晶注入口封止剤を得た。
【0053】
〔性能評価〕
得られた液晶注入口封止剤を用いて、実施例3と同様にして性能評価し、結果を表1に示した。
【0054】
(比較例2)
〔液晶注入口封止剤の製造〕
2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(分子量=212)28重量部とトリアリルイソシアヌレート(分子量=249)22重量部とを仕込み、80℃まで加熱して粘度が約1万mPa・s(20℃)になるまで反応させ、高分子量チオエーテル系樹脂を製造した。得られた反応混合物中のトリアリルイソシアヌレートの炭素−炭素2重結合に対するチオール基の割合(モル比)は、1.0(FTIRで測定)であった。得られた反応混合物に、ビスフェノールA型エポキシアクリレート15重量部、ウレタンアクリレート10重量部、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3重量部、更にベンジルジメチルケタール1.7重量部を配合して冷却し、粘度2万mPa・s(20℃)の液晶注入口封止剤を得た。
【0055】
〔性能評価〕
得られた液晶注入口封止剤を用いて、実施例3と同様にして性能評価し、結果を表1に示した。
【0056】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の液晶注入口封止剤は、金属と接触しても腐食や表示不良を起こすおそれが少ない液晶注入口封止剤として液晶注入口の封止に利用される。本発明の液晶注入口封止剤が用いられた液晶表示セルは、例えば、電気産業分野において広く利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物と一分子中に2個以上の炭素−炭素2重結合を有するポリエン化合物とを反応させた、両末端にポリエン化合物の炭素−炭素2重結合を有する高分子量チオエーテル系化合物と、
一分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエン化合物と、光重合開始剤とを含む液晶注入口封止剤であって、
上記液晶注入口封止剤中の、ポリエン化合物由来の炭素−炭素二重結合に対するチオール基の割合がモル比で0.15以下であることを特徴とする液晶注入口封止剤。
【請求項2】
更に、アクリルオリゴマー又はポリマーを含むことを特徴とする請求項1記載の液晶注入口封止剤。
【請求項3】
アクリルオリゴマー又はポリマーがエポキシアクリレート及び/又はウレタンアクリレートであることを特徴とする請求項2記載の液晶注入口封止剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の液晶注入口封止剤からなることを特徴とする銀配線使用液晶セル用液晶注入口封止剤。
【請求項5】
液晶が注入されたセルの液晶注入口が、請求項1〜4のいずれかに1項記載の液晶注入口封止剤により封止されてなることを特徴とする液晶表示セル。

【公開番号】特開2009−104087(P2009−104087A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278220(P2007−278220)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】