説明

液晶素子

【課題】 液晶素子側面部において高いガスバリア性が確保できる液晶素子を提供すること。
【解決手段】上基板1の液晶層6側の面全体に亘って形成された反射膜22(無機ガスバリア層)と、上基板1が下基板3の周囲から延出した延出部7と、下基板3の側面とシール2の側面と延出部7の液晶層側の面を覆うように塗布されたガスバリア部材24とを備えた。延出部7を台にしてガスバリア部材24を塗布したので、ガスバリア部材24が厚くなりガスバリア性が向上する。反射膜22はガスバリア層及びコモン電極と兼用しているので製造工程が簡略化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス透過性を有する基板を用いた液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック基板を使った液晶素子は、軽量で薄いという性質を活かし携帯電話機の表示パネルとして実用化されている。最近では、割れにくい、曲げられる、平面形状の自由度が高い、という特徴も注目され、様々な応用製品が提案されている。
【0003】
このプラスチック基板を使った液晶素子は、従来から普及しているガラス基板を使った液晶素子と基本的に同じ構造である。液晶素子の一般的な構造を図6で説明する。図6は一般的な液晶素子の斜視図(a)と断面図(b)である。(a)では下基板63上にシール62と上基板61が積層している様子を示している。下基板63は上基板61に対し延出した接続部64を有し、接続部64の表面には接続電極65が形成されている。(b)では上下の基板61、63とシール62で囲まれた領域に液晶が封入された様子を示している。液晶層66に接する上下基板61、63の表面(以下内面と称する)には駆動電極(図示せず)が形成され、各駆動電極は接続電極65と接続している。液晶素子が液晶層66の旋光性を利用するTN(ツイステッドネマチック)液晶であるときは上下基板61、63の外側の面(以下外面と称する)に偏光板が貼付けられる。液晶素子が、液晶層66の複屈折性を利用するSTN(スーパーツイステッドネマティック)液晶などの場合は基板61、63の外面と偏光板との間に位相差板が追加される。また液晶層66が散乱型であれが偏光板は不要である。
【0004】
しかしながら上下基板61、63をプラスチック材料にするとガラス材料ではなかった様々な問題が現れる。そのなかで特に大きな問題は、プラスチック基板を通して大気(以下ガスと称する)が液晶層に侵入し、液晶層に気泡が発生することである。つまりプラスチック材料はガラス材料と違いガス透過性があるため常温常圧下でガスが透過する。もし仮に無垢のプラスチック材料だけの基板61、63で液晶素子を作成した場合、ガスが徐々に基板61、63を通して液晶層66に溶け込み、液晶層66に溶け込んだガスが飽和状態に達してしまうと、落下等の衝撃により液晶層66内に気泡が発生する。
【0005】
そこでこれまで、液晶素子に液晶を注入する直前に液晶層66の真空脱泡や基板61、63の真空焼成などを行い液晶や基板61、63のガス濃度を下げておき、これとあわせて予め基板61、63表面に設けておいたガスバリアー層で液晶層66に侵入しようとするガスを防ぐことにより、液晶層66のガス濃度を低く保ち気泡発生を回避していた。なお、ガスバリア層としては有機物と無機部の場合があるが、一般的には有機物に比べて金属や金属酸化物などの無機物はガスバリア性が著しく高いことが知られている。
【0006】
例えば特許文献1には、Al(アルミニウム)膜をガスバリア層として使った液晶素子が示されている。文献1の図4(実施例2)を図7に示す。図7は、特許文献1の液晶素子の断面図である。液晶素子は、下基板712、液晶層76、上基板711、偏光板71が積層しており、液晶層76の左右ではシール77が上下の基板711、712を接着している。下基板712は、下から、基板支持材710、Al膜79、ハードコート層78が積層している。上基板711は、下からハードコート層75、基板支持材74、ガスバリア層73、ハードコート層72が積層している。基板支持材74、710は、厚さが100μmのポリカーボネートである。ハードコート層72、75、78は、厚さが2μmのエポキシアクリレート樹脂である。Al膜79は、厚さが100nmで、ガスバリア層と反射層を兼用している。上基板711のガスバリア層73は、厚さが50nmのSiO
2である。液晶層76は、ゲストホスト液晶である。なお駆動電極は図示していない。また、この液晶素子はガスバリア層と反射層とに対しAl膜79を兼用したので構造が簡単化した、ということが述べられている。
【0007】
しかしながら特許文献1のような液晶素子は、基板表面から液晶層へ侵入しようとするガスを阻止できているとしても、基板711の切断面やシール77側面にはガスバリア物質が存在しないので、ここからガスが液晶層76に侵入する。そして液晶層76のガス濃度が飽和点を超えれば気泡が発生してしまう。
【0008】
この対策として特許文献2では基板の切断面(側面)にガスバリア性を有する部材(以下ガスバリア部材と称する)を塗布したことが示されている。図8で文献2が採用したガス侵入対策を説明する。図8は特許文献2の実施例1の液晶素子の断面図である。
【0009】
まずこの液晶素子の構造を説明する。この液晶素子は、図の下側から反射板88、下側の偏光板87、液晶素子、上側の偏光板87が積層している。液晶素子は、下側のプラスチック基板81、下側の透明電極82、下側の配向膜83、スペーサ84が混入した液晶層86、上側の配向膜83、上側の透明電極82、上側のプラスチック基板81が積層したものであり、両端のシール85で上下のプラスチック基板81を接着している。そして、液晶素子の側面にはガス侵入対策用のエポキシ接着剤89(ガスバリア部材)が塗布されている。
【0010】
つぎにこの液晶素子のガス侵入対策を説明する。プラスチック基板81は、ポリカーボネートフィルムを基板支持材とし、両面にEVA(エチレンと酢酸ビニルの共重合体)とフェノキシ樹脂からなる2層のガスバリア層を有している。このガスバリア層で基板表面から液晶層86に侵入しようとするガスを阻止する。液晶素子の側面のエポキシ接着剤89は、プラスチック基板81の切断面やシール85を通して液晶層に侵入しようとするガスを阻止している。また文献2では、実施例2として偏光板を貼り付けてから偏光板側面も含め液晶素子側面にエポキシ接着剤を塗布する例も示されている。
【特許文献1】特開2000−221496号公報
【特許文献2】特開2001−221998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らが行った加速試験では、特許文献1のように基板表面にはガスバリア層があっても側面にはガスバリア機能がない液晶素子は、1〜2年に相当する期間でガスが液晶層へ侵入し気泡が発生した。そこで特許文献2のように液晶素子の側面にガスバリア性のある樹脂を塗布してみたが、気泡発生までの期間(以下寿命と称する)は安定しなかった。試作品の顕微鏡観察では、液晶素子側面において、ガスバリア部材の塗布が不均一、切断面の荒れ、切断面近傍のガスバリア層の破壊、が判明した。また液晶素子側面に塗布しただけの樹脂製ガスバリア部材では我々が期待する寿命に対しガスバリア性が不足していることも分かった。
【0012】
ここで実験結果を説明する。試作で用いたプラスチックフィルムは厚さが0.1mmであったので、液晶素子の厚さは0.2mmとなる。液晶素子側面に充分な厚みを持ったガスバリア部材を塗布しようする場合、ガスバリア部材に高い粘性が必要となる。しかし高い粘性があると塗布性は悪化し、基板側面の一部が大気に触れてしまうような情況が発生した。塗布性とは別の問題として、切断面のスジと、切断面近傍における基板表面のガスバリア層割れ、が挙げられる。切断面のスジは、液晶素子をトムソン刃で切断して入ったもので、深さが1μm程度であった。ガスバリア層の割れは、切断時にプラスチック基板が引っ張られてたときに固くて脆い無機ガスバリア層が延びてひびが入ったものである。
このスジや割れを完全に埋めながら均一に塗る、という条件を両立させるため溶液でガスバリア材料の粘度を調整し、液晶素子側面のガスバリア部材の厚さを5〜10μm程度にして目的を達成した。しかしながらこの程度の厚さの樹脂ガスバリア部材によるガスバリア性は満足できるものではなかった。
【0013】
そこでガスバリア部材の厚みを増すことにより前述の不具合を解決しようとし、特許文献2の実施例2の構造を参考にして偏光板を貼った液晶素子の側面にガスバリア部材を塗布した。なお偏光板はそれぞれ厚みが0.1mmであり、偏光板を含めた液晶素子の側面の厚さは0.4mmとなったので、液晶素子側面に塗布したガスバリア部材の厚さも増した。ところがこの試料について長期信頼性試験を実施したところ、偏光板とプラスチック基板とを貼り付ける粘着層からガスが噴出し、かえって液晶素子の寿命が短くなってしまった。
【0014】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、液晶素子側面部において高いガスバリア性が確保できる液晶素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、対向する第1及び第2可撓性基板とシールとによって囲まれた領域に液晶層を有し、第1可撓性基板に備えられ第2可撓性基板から延出した延出部と、第1可撓性基板の延出部の液晶層側の面に形成された無機ガスバリア層と、第2可撓性基板の側面、シールの外側面、及び延出部の無機ガスバリア層を覆うように配されたガスバリア部材と、を備えることを特徴とするものである。
【0016】
無機ガスバリア層は、液晶層内から延出部まで一体で形成されていてもよい。
【0017】
また、無機ガスバリア層は、第1可撓性基板の面全体に形成されていたもよい。
【0018】
ガスバリア部材は他方の基板の側面近傍の表面にも塗布されているのが好ましい。
【0019】
ガスバリア層は、反射膜や透明電極膜や金属箔であってもよい。
【0020】
この場合、ガスバリア層がコモン電極であってもよい。
【0021】
また、ガスバリア部材の外面を覆う無機ガスバリア層を更に備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、一方の基板を他方の基板の周囲から延出させた延出部を台にして他方の基板の側面とシール側面とが覆われるようにガスバリア部材を塗布しているので、液晶素子側部へのガスバリア部材の塗布量が増加し、ガスバリア部材が厚くなる。この結果、液晶素子側面部に高いガスバリア性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
【0024】
図1と図2を用いて本発明の第1の実施形態を説明する。図1は第1の実施形態の液晶素子の斜視図(a)と断面図(b)である。図2は第1の実施形態の液晶素子の要部断面
図である。
【0025】
まず図1において本実施例の液晶素子の概要を説明する(第2〜4の実施形態とも共通)。(a)では下基板3(他方の基板)上にシール2と上基板1(一方の基板)が積層している様子を示している。下基板3は上基板1に対し延出した接続部4を有し、この接続部4の表面には接続電極5が形成されている。接続部4側を除く上基板1の各辺には下基板3から延出した延出部7がある。(b)では上下の基板1、3とシール2で囲まれた領域に液晶が封入された様子を示している。液晶層6に接する上下の基板1、3のそれぞれの内面には駆動電極(図示せず)が形成され、各駆動電極は接続電極5と接続している。なお本実施形態(および第4の実施形態)では下基板3側が視認側となる。
【0026】
図2において液晶素子の側面部を詳しく説明する。まず部材構成を説明する。図の左側の表示領域では、図の下から下基板3と、信号電極23と、液晶層6と、基板支持材21の下面に反射膜(無機ガスバリア層)22を有する上基板1とが積層している。図の右側の側面部では、上基板1の延出部7の下表面に形成されている反射膜22と、シール2の側面と、下基板3の切断面(側面)と、下基板3の下表面の一部とを覆うようにガスバリア部材24が塗布されている。さらにガスバリア部材24の外側の表面には無機ガスバリア層25が形成されている。
【0027】
次に各部材を説明する。上基板1は、厚さが0.1mmのポリカーボネートからなる基板支持材21の下表面全体に亘ってAlからなる反射膜22が形成されている。反射膜22は厚さが0.1μmであり、スパッタリング法で基板支持材21に形成されたものである。液晶層6は、電圧を印加していないときに散乱モード、電圧を印加しているときに透過モードとなる高分子分散型液晶である。下基板3は外側に、アンダーコート層(図示せず)、有機ガスバリア層(図示せず)、無機ガスバリア層(図示せず)、耐溶剤コート層(図示せず)が積層しており、内面にはITOからなる信号電極23が形成され、全体として厚みが0.1mmである。信号電極は、ITO膜をホトリソグラフィ法によりパターニングしたもので、厚さが0.03μmであり、液晶素子が曲がっても断線しにくいよう薄くしている。シール2とガスバリア部材24はエポキシ接着剤である。無機ガスバリア層25は、スパッタリング法で形成し、厚さが0.1μmの二酸化シリコンである。
【0028】
次に液晶素子側面部のガスバリア性を説明する。上下の基板1、3の表面から液晶層6に侵入しようとするガスは、それぞれ反射膜22と下基板3の外側に設けられた無機ガスバリア層で阻止される。金属ないし金属酸化物などからなる無機ガスバリア層は0.01μm以上の厚さで高いガスバリア性を示すが、とくに反射膜22は0.1μmと厚いのでガスバリア性が高い。
【0029】
液晶素子側面部において、ガスバリア部材24は、切断時に生じた切断面のスジに嵌合するように切断面に密着する。同様にガスバリア部材24は、切断時に生じた切断面近傍の無機ガスバリア層の割れにも嵌合するようにして下基板3の下表面に密着する。また上基板1の延出部7の幅を0.5mmとしたのでガスバリア部材24の横方向の厚みを略100μm以上にすることができた。このようにガスバリア部材24の良好な密着情況と厚みの増加により、下基板3ないしシール2の側面から液晶層6へ侵入しようとするガスに対する高いバリア性を確保できた。さらにガスバリア部材24の外表面に無機ガスバリア層25を設けたので、ガスの液晶層6へのすべての侵入経路が遮断され、ガスバリア性が一層向上した。
【0030】
次に液晶素子の駆動方法を説明する。反射膜22をコモン電極として使用し、一般的なスタティック駆動方法を採用した。信号電極23(セグメント電極ともいう)と反射膜22(コモン電極)が平面的に重なり合う領域が画素となる。信号電極23と反射膜22(
コモン電極)を同じ電位にすると、信号電極23と反射膜22(コモン電極)に挟持された液晶層には電圧が印加されないので白濁状態になる。信号電極23と反射膜22(コモン電極)間に液晶の閾値電圧より充分に高い電圧を印加すると画素は透明になる。
【0031】
最後に図1の接続部における基板1、3の側面処理を説明する。外部回路(図示せず)と液晶素子を接続するためFPC(図示せず、フレキシブルプリントサーキット)を接続部4に貼り付ける。FPCの配線と接続電極5が平面的に重なるようにし、FPCと接続電極5の間に異方性導電フィルム(ACF、アニソトロピックコンダクティブフィルムともいう)を挟んでFPCを熱圧着する。ACF中の導電粒子でFPCの配線と接続電極が導通する。接続部で露出した接続電極5の保護と、上基板1の切断面のガスバリアと、FPC接着の補強とを兼ね、FPC端部と露出した接続電極と上基板の切断面を覆うように保護部材(図示せず)を塗布する。
【0032】
本実施形態のように、ガスバリア層が反射層およびコモン電極として使用されることで、単純な基板構造でありながら利便性が高いという効果が得られる。また、ガスバリア層として反射層を使うことにより、新たな膜付け工程を追加しないで済むので、液晶素子側面の高いガスバリア性を確保しながら、工程の増加を最小限に押さえ込むことが可能となる。
【0033】
以上のような本実施形態の液晶素子によれば、一方の基板の内面側全体に亘ってガスバリア性の優れた無機材料からなる無機ガスバリア層25が形成されているので、一方の基板の表面側から侵入しようとするガスは高い水準で阻止される。
【0034】
また、これと合わせ、一方の基板を他方の基板の周囲から延出させた延出部7を台にして他方の基板の側面とシール側面とが覆われるようにガスバリア部材24を塗布しているので、液晶素子側部へのガスバリア部材24の塗布量が増加し、結果としてガスバリア部材24が厚くなる。この結果、液晶素子側面部に高いガスバリア性を確保できる。
【0035】
さらに、製造時において、マザー基板からの液晶素子の切断にともない切断部近傍の基板表面のガスバリア層が割れるので、この部分にもガスバリア部材を塗布しておくと、この割れからのガス侵入を阻止できるので液晶素子側面部のガスバリア性を一層向上できる。
(第2実施形態)
【0036】
図3を用い本発明の第2の実施形態を説明する。図3は第2の実施形態の液晶素子の要部断面図である。
【0037】
図3において図2の第1の実施形態との違いは、図2の反射層22が透明電極31に代わった点である。透明電極は、ITOからなり、ガスバリア性が高いことが知られ、上基板1の下表面全体に亘って形成され、コモン電極として使用される。この液晶素子は透過型表示体として使用できるほか、上下どちらかの基板1、3の外側に反射板を貼ることで反射型表示体として使用できる。
(第3実施形態)
【0038】
図4を用い本発明の第3の実施形態を説明する。図4は第3の実施形態の液晶素子の要部断面図である。
【0039】
図4において図2の第1の実施形態との違いは、図2の反射層22が二酸化シリコン膜41に代わったことと、液晶層内にコモン電極42が形成されたことである。二酸化シリコン膜41は、前述のようにガスバリア性が高いことが知られ、上基板1の下表面全体に
亘って形成されている。コモン電極42はパターニングできるのでマルチプレックス駆動が可能となる。第2の実施形態と同様にこの液晶素子は透過型表示体としても反射型表示体としても使用できる。なお二酸化シリコン層41上にハードコート層などの薄膜があっても効果は同じである。
【0040】
本実施形態においても、ガスバリア層として透明電極を使うことにより、新たな膜付け工程を追加しないで済むので、液晶素子側面の高いガスバリア性を確保しながら、工程の増加を最小限に押さえ込むことが可能となる。
(第4実施形態)
【0041】
図5を用い本発明の第4の実施形態を説明する。図5は第4の実施形態の液晶素子の要部断面図である。
【0042】
図5において図2の第1の実施形態との違いは、図2の反射層22がAl箔(金属箔)51に代わったことと、基板支持材21とAl箔51の間に粘着層52があることである。Al箔51は、厚みが略10μmあるのでガスバリア性が著しく高く、コモン電極および反射板としても使っている。基板支持材21にAl箔を貼った構成となっているので、薄膜形成手法として一般的なスパッタ処理が不要となっている。またAl層51が厚いことからガスを発生し易かったり防湿性が劣ったりする素材も使用できる。また多少基板支持材の表面精度が悪くても粘着層52の粘度を下げることによりAl箔51の平面性を確保できる。以上のように、Al箔51をガスバリア層として基板支持材21に貼り付ける本実施形態では、プラスチック材料そのものや表面処理にたいする条件が緩和されるので基板支持材の選択性が広い。
【0043】
上記実施形態1〜3では、一方の基板の液晶層側の表面全体に亘って形成した無機ガスバリア層としてAl膜、ITO膜、二酸化シリコン膜を挙げたが、それぞれを積層しても良いし、窒化シリコンやDLC(ダイアモンドライクカーボン)や他の金属に置き換えても良い。
【0044】
また、無機ガスバリア層を、一方の基板の液晶層側の表面全体に亘って形成しているが、ガス侵入が低減されるのであれば、基板表面の一部に無機ガスバリア層が形成されてあってもよい。
【0045】
また延出部の無機ガスバリア層上にさらに他の無機ガスバリア層を積層しても同様の効果が得られる。二酸化シリコン膜など絶縁性の無機ガスバリア層を一方の基板の全面に備えさせる場合、一方の基板に信号電極(ないしセグメント電極)を形成することも可能である。
【0046】
また本発明において、基板側面とシール側面はガスバリア部材で覆う必要があるが、延出部は端部まで完全にガスバリア部材で覆う必要はない。本発明の構造ではガスバリア部材が覆っている領域に粘着層などガスを発生する恐れのある部材が存在しないので信頼性が高い。液晶層を高分子分散液晶とする場合、延出部に液晶が入り込み硬化してしまうのを避けるため真空注入法よりも液晶滴下法の方が好ましい。上下の基板やシール、ガスバリア部材などからなる本発明の液晶素子には、必要に応じて偏光板、位相差板、反射板、紫外線カットフィルムなど他の光学部材を追加する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の要部断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の要部断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態の要部断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態の要部断面図である。
【図6】従来からある一般的な液晶素子を示す図である。
【図7】従来例1の断面図である。
【図8】従来例2の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1、61、711、81 上基板(一方の基板)
2、62、77、85 シール
3、63、712 下基板(他方の基板)
4、64 接続部
5、65 接続電極
6、66、76、86 液晶層
7 延出部
21、74、710 基板支持材
22、79 反射層(ガスバリア層)
23 信号電極
24、89 ガスバリア部材
25 ガスバリア部材を覆う無機ガスバリア層
31 透明電極膜(ガスバリア層)
41 2酸化シリコン膜(ガスバリア層)
42 コモン電極
51 Al箔(金属箔ガスバリア層)
52 粘着層
71、87 偏光板
72、75、78 ハードコート層
73 ガスバリア層
82 透明電極
83 配向膜
84 スペーサ
88 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1及び第2可撓性基板とシールとによって囲まれた領域に液晶層を有し、
前記第1可撓性基板に備えられ前記第2可撓性基板から延出した延出部と、
前記第1可撓性基板の前記延出部の前記液晶層側の面に形成された無機ガスバリア層と、
前記第2可撓性基板の側面、前記シールの外側面、及び前記延出部の前記無機ガスバリア層を覆うように配されたガスバリア部材と、
を備えることを特徴とする液晶素子。
【請求項2】
前記無機ガスバリア層が前記液晶層内から前記延出部まで一体で形成されていることを特徴とする請求項1記載の液晶素子。
【請求項3】
前記無機ガスバリア層は、前記第1可撓性基板の面全体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶素子。
【請求項4】
前記ガスバリア部材が前記他方の基板の側面近傍の表面にも塗布されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶素子。
【請求項5】
前記ガスバリア層が反射膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶素子。
【請求項6】
前記ガスバリア層が透明電極膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶素子。
【請求項7】
前記ガスバリア層が金属箔であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶素子。
【請求項8】
前記ガスバリア層がコモン電極であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の液晶素子。
【請求項9】
前記ガスバリア部材の外面を覆う無機ガスバリア層を更に備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−163082(P2009−163082A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1879(P2008−1879)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】