説明

液晶表示パネル

【課題】層間膜を備えたFFSモードの液晶表示パネルにおいて、低温環境下で衝撃試験
を行っても気泡が発生し難い液晶表示パネルを提供すること。
【解決手段】本発明の液晶表示パネル10Aは、液晶35を挟持して対向配置されたアレ
イ基板ARとカラーフィルタ基板CFを有し、アレイ基板ARは、樹脂材料からなる層間
膜18の表面に形成された下電極19と、下電極19の表面に電極間絶縁膜20を介して
形成された複数のスリット状開口24を有する上電極22とを備え、カラーフィルタ基板
CFに形成された柱状スペーサ30の先端部とアレイ基板ARとの接触部では、下電極1
9と電極間絶縁膜20に開口31a、31bが形成され、前記開口31a、31b内の層
間膜18の表面には上電極22が直接形成され、柱状スペーサ30は前記開口31a、3
1b内で上電極22と接触するように配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は横電界方式の液晶表示パネルに関し、特に樹脂材料からなる層間膜の表面に電
極間絶縁膜を介して下電極と複数のスリット状開口が形成された上電極を備え、低温衝撃
特性に優れた横電界方式の液晶表示パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルはCRT(陰極線管)と比較して軽量、薄型、低消費電力という特徴が
あるため、表示用として多くの電子機器に使用されている。液晶表示パネルは、配向膜に
対してラビング処理することにより所定方向に整列した液晶分子の向きを電界により変え
て、光の透過量ないし反射量を変化させて画像を表示させるものである。
【0003】
液晶表示パネルの液晶に電界を印加する方法として、縦電界方式のものと横電界方式の
ものとがある。縦電界方式の液晶表示パネルは、液晶を挟んで配置される一対の電極によ
り、概ね縦方向の電界を液晶分子に印加するものである。この縦電界方式の液晶表示パネ
ルとしては、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、M
VA(Multi-domain Vertical Alignment)モード等のものが知られている。横電界方式
の液晶表示パネルは、液晶を挟んで配設される一対の基板のうちの一方の内面側に一対の
電極を互いに絶縁して設け、概ね横方向の電界を液晶分子に対して印加するものである。
この横電界方式の液晶表示パネルとしては、一対の電極が平面視で重ならないIPS(In
-Plane Switching)方式のものと、重なるFFS(Fringe Field Switching)方式のもの
とが知られている。
【0004】
このうち、FFSモードの液晶表示パネルは、電極間絶縁膜を介して上電極と下電極と
からなる一対の電極をそれぞれ異なる層に配置し、上電極にスリット状の開口を形成し、
このスリット状開口を通る概ね横方向の電界を液晶に印加するものである。このFFSモ
ードの液晶表示パネルは、高開口率であり、広い視野角を得ることができると共に画像コ
ントラストを改善できるという効果があるので、近年、多く用いられるようになってきて
いる。
【0005】
ところで、液晶表示パネルは、セルギャップ(液晶の厚さ)を一定にするため、柱状ス
ペーサが用いられている。このような柱状スペーサは、表示領域内に配置する柱状スペー
サの密度が大きくなると、セルギャップの維持特性は良好となるが、低温衝撃試験におい
て気泡が発生するという問題点が存在している。なお、低温衝撃試験とは、低温環境下に
おける液晶表示パネルの製品品質の保証として行われるものであって、約−20℃程度の
低温環境下に液晶表示パネルを保持し、その後表示面に衝撃を与えて気泡発生の程度を確
認するものである。そのため、下記特許文献1に開示された発明では、柱状スペーサの径
を変えることによって柱状スペーサの配置密度を最適化し、低温衝撃試験時に気泡の発生
を抑制するようにしている。
【特許文献1】特開2006−243614号公報
【特許文献2】特開2008−70688号公報
【特許文献3】特開2005−338264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、より高開口率、高輝度化、高視野角化を目的とした横電界方式の液晶表示パネル
として、透明樹脂からなる層間膜上に、下電極と、窒化ケイ素等の電極間絶縁膜と、複数
のスリット状開口を有する上電極を形成する形式のFFSモードの液晶表示パネルが開発
されてきている(上記特許文献2及び3参照)。しかしながら、発明者等の実験によると
、このような層間膜を備えたFFSモードの液晶表示パネルは、低温衝撃試験において気
泡が発生し易くなることが見出された。このような層間膜を備えたFFSモードの液晶表
示パネルにおける気泡発生現象を、図6を用いて説明する。
【0007】
図6A〜図6Dは、低温衝撃試験時の気泡発生原理を、順を追って説明するための模式
断面図である。
【0008】
なお、図6においては、気泡発生原理の説明に必要な部分のみが記載されており、その
他の部分の詳細な構成は省略してある。すなわち、液晶表示パネル50のアレイ基板AR
は、透明基板51上に感光性樹脂等からなる層間膜52が形成され、その表面に窒化ケイ
素等からなる電極間絶縁膜53が形成されている。本来、電極間絶縁膜53の両面側には
それぞれ下電極及び上電極が形成されているが、下電極及び上電極は、厚さが電極間絶縁
膜53よりも薄く、しかも電極間絶縁膜よりも軟質であるので、衝撃特性を考慮する際に
は実質的に無視し得る。また、カラーフィルタ基板CFは、透明基板54の表面にカラー
フィルタ層55が形成されている。そして、カラーフィルタ基板CFの表面に感光性樹脂
等からなる柱状スペーサ56が形成され、この柱状スペーサ56はアレイ基板ARの表面
に当接している。
【0009】
液晶表示パネル50の外表面から外圧Fを与える(図6A参照)と、この外圧はカラー
フィルタ基板CFから柱状スペーサ56を経てアレイ基板ARに伝達され、液晶表示パネ
ル50は撓みを生じる(図6B参照)。この状態で外圧Fを除去すると、図6Cに示した
ように、液晶表示パネル50は元の状態に復元しようとする。窒化ケイ素等からなる電極
間絶縁膜53は硬質であるため、その復元速度V3は液晶57の復元速度V4より速い。
しかも、液晶表示パネル50は、図6Cに示したように原位置を越えて撓んだ後、図6D
に示したように原位置に復元する。図6Cに示した原位置よりも撓んだ状態から図6Dに
示した原位置に復元する際も、電極間絶縁膜53の復元速度V3は液晶57の復元速度V
4よりも速い。そのため、液晶57の内部では、圧力分布に差異が生じ、一部負圧となる
箇所ができる。そのため、図6Dに示したように、気泡58が発生してしまう。この気泡
58は、特に低温環境下、例えば−20℃程度の低温環境下ではなかなか消えないため、
表示に支障をきたすこととなる。
【0010】
このような気泡発生現象は、柱状スペーサ56を経てアレイ基板ARに伝達された外力
は、硬質な電極間絶縁膜53によって大部分が受け止められ、軟質な樹脂層からなる層間
膜52がほとんど外力を吸収できないために生じたものと思われる。そのため、樹脂層か
らなる層間膜を有するFFSモードの液晶表示パネルに対して上記特許文献1に開示され
た発明のような柱状スペーサ密度を最適化するという低温衝撃試験対策を施しても、柱状
スペーサの存在箇所で気泡が発生してしまうため、有効な対策とはなり得ない。
【0011】
本発明は、上述のような層間膜を備えたFFSモードの液晶表示パネルの有する問題点
を解決すべくなされたものである。すなわち、本発明は、層間膜を備えたFFSモードの
液晶表示パネルにおいて、低温環境下で衝撃試験を行っても気泡が発生し難い液晶表示パ
ネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の液晶表示パネルは、液晶を挟持して対向配置された
第1及び第2の基板を有し、前記第1の基板は、樹脂材料からなる層間膜の表面に形成さ
れた下電極と、前記下電極の表面に電極間絶縁膜を介して形成された複数のスリット状開
口を有する上電極とを備え、前記第1及び第2の基板の一方に柱状スペーサを形成し、前
記柱状スペーサの先端部を他の基板の表面に接触させた液晶表示パネルにおいて、前記第
1の基板と前記柱状スペーサとの接触部では、前記下電極及び上電極のうちの一方と前記
電極間絶縁膜には開口が形成され、前記開口内の前記層間膜の表面には前記下電極及び上
電極のうちの他方が直接形成され、前記柱状スペーサは前記開口内で前記下電極及び上電
極のうちの他方と接触するように配置されていることを特徴とする
【0013】
本発明の液晶表示パネルは、液晶を挟持して対向配置された第1及び第2の基板を有し
、前記第1の基板は、樹脂材料からなる層間膜の表面に形成された下電極と、前記下電極
の表面に電極間絶縁膜を介して形成された複数のスリット状開口を有する上電極とを備え
ている。係る構成によって本発明の液晶表示パネルはFFSモードで作動するものとなる
。なお、電極間絶縁膜としては酸化ケイ素ないし窒化ケイ素等の無機絶縁膜が使用される
が、絶縁性の観点からは窒化ケイ素が望ましい。また、樹脂材料からなす層間膜としては
、透明性が良好で、電気絶縁性に優れた感光性又は非感光性の樹脂材料を適宜選択して使
用し得る。更に、下電極及び上電極としてはITO(Indium Tin Oxide)ないしIZO(
Indium Zinc Oxide)等の透明導電性材料が使用される。
【0014】
そして、本発明の液晶表示パネルにおいては、第1の基板と柱状スペーサとの接触部で
は、下電極及び上電極のうちの一方と電極間絶縁膜には開口が形成され、前記開口内の前
記層間膜の表面には前記下電極及び上電極のうちの他方が直接形成され、前記柱状スペー
サは前記開口内で前記下電極及び上電極のうちの他方と接触するように配置されている。
すなわち、本発明の液晶表示パネルにおいては、電極間絶縁膜に開口が形成されているこ
とが必須であり、下電極及び上電極のいずれか一方に開口が形成されており、下電極及び
上電極のうち開口が形成されていない方の電極が層間膜の表面に直接形成されている。そ
して、柱状スペーサは層間膜の表面に直接形成された下電極又は上電極と接触している。
そうすると、柱状スペーサは、電極間絶縁膜とは接触せず、層間膜の表面に直接形成され
た下電極又は上電極を介して層間膜と接触していることとなる。
【0015】
一般に、下電極及び上電極の厚さは下電極及び上電極との間に形成された電極間絶縁膜
より薄く、また、下電極及び上電極の硬さは電極間絶縁膜より柔らかい。そのため、液晶
表示パネルの表面から外力が加えられた場合、この外力は第2基板、柱状スペーサ、下電
極又は上電極を経て第1基板の層間膜に伝達されることになる。従って、本発明の液晶表
示パネルによれば、液晶表示パネルの表面から外力が加えられても、この外力は樹脂材料
からなる層間膜によって吸収されるので、従来例のように液晶内に負圧が生じることが少
なくなるので、気泡が発生し難くなり、低温耐衝撃特性に優れた液晶表示パネルとなる。
【0016】
なお、本発明の液晶表示パネルにおいては、電極間絶縁膜に開口を形成する工程は電極
間絶縁膜に各種コンタクトホールの形成工程で同時に形成でき、しかも、下電極ないし上
電極に開口を形成する工程は下電極ないし上電極のパターニング工程において同時に形成
することができる。そのため、本発明の液晶表示パネルを製造するためには、特別の工程
を増やす必要はなく、従来どおりの製造工程で本発明の液晶表示パネルを製造することが
できる。
【0017】
また、本発明の液晶表示パネルにおいては、前記開口は、前記柱状スペーサの径と同じ
かそれよりも大きいことを特徴とすることが望ましい。
【0018】
本発明の液晶表示パネルは、開口は柱状スペーサの径と同じかそれよりも大きくなって
いるので、柱状スペーサは電極間絶縁膜の表面とは接触しないようになる。そのため、本
発明の液晶表示パネルによれば、液晶表示パネルの表面から外力が加えられた場合、この
外力は樹脂材料からなる層間膜によって効率よく吸収されるため、より気泡が発生し難く
なり、より低温耐衝撃特性に優れた液晶表示パネルとなる。加えて、第1基板上の開口と
柱状スペーサの位置合わせが容易となるので、本発明の液晶表示パネルの製造が容易とな
る。
【0019】
また、本発明の液晶表示パネルにおいては、前記下電極及び上電極のうちの一方の開口
の径は、前記電極間絶縁膜の開口の径よりも大きいことが望ましい。
【0020】
下電極及び上電極のうちの一方の開口の径が電極間絶縁膜の開口の径よりも大きいと、
開口内の層間膜の表面に直接形成されている下電極及び上電極のうちの他方との間の距離
が大きくなるから、下電極と上電極との間の電気的短絡が生じ難くなり、信頼性の高い液
晶表示パネルとなる。
【0021】
また、本発明の液晶表示パネルにおいては、前記開口及び前記柱状スペーサは、平面視
で前記第1基板に形成されているスイッチング素子と重複する位置に形成されていること
が望ましい。
【0022】
第1基板に形成されているスイッチング素子は、光不透過性材料である半導体材料及び
金属材料等からなる部分が存在しており、更に各サブ画素毎に平面視で大きな面積を占め
ている。また、柱状スペーサは、開口率を大きくするために、平面視で第1基板及び第2
基板に形成された光不透過部分に形成される。本発明の液晶表示パネルによれば、前記開
口及び柱状スペーサは、平面視で第1基板に形成されているスイッチング素子と重複する
位置に形成されているため、他の部分に形成するよりも柱状スペーサの存在に起因する開
口率の低下が少なくなる。なお、本発明の液晶表示パネルにおいて使用し得るスイッチン
グ素子としては、半導体材料としてアモルファスシリコンを使用した薄膜トランジスタ(
TFT:Thin Film Transistor)、ポリシリコンを使用したTFT、低温ポリシリコン(
LTPS:Low Temperature Poly Silicon)TFT、薄膜ダイオードTFD(Thin Film
Diode)等を使用することができる。
【0023】
また、本発明の液晶表示パネルにおいては、前記開口及び前記柱状スペーサは、1ピク
セル毎に1個ずつ形成されていることが望ましい。
【0024】
柱状スペーサの配置密度に比例して表面に加えられた外力に対する耐力は強くなるが、
低温耐衝撃特性が悪化すると共に、柱状スペーサの存在による柱状スペーサの周囲の液晶
分子の配向に対する悪影響も大きくなる。しかしながら、本発明の液晶表示パネルによれ
ば、柱状スペーサは1ピクセル毎に1個ずつ形成されているので、表面に加えられた外力
に対する耐力と低温耐衝撃特性及び表示画質の調和が取れた液晶表示パネルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態
は、本発明の技術思想を具体化するための一例を示すものであって、本発明をこの例に特
定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のもの
も等しく適応し得るものである。更に、この明細書における説明のために用いられた各図
面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部
材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているも
のではない。
【0026】
図1は第1の実施形態のFFSモードの液晶表示パネルのカラーフィルタ基板を透視し
て表した3サブ画素(1ピクセル)分の模式平面図である。図2は図1のII−II線に沿っ
た断面図である。図3は図1のIII−III線に沿った断面図である。図4A〜図4Dは本実
施形態の液晶表示パネルが低温衝撃を受けた場合の挙動を説明する模式図である。図5は
本発明の第2の実施形態のFFSモードの液晶表示パネルの図2に対応する断面図である

【0027】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の液晶表示パネル10Aを図1〜図3を用いて製造工程順に説明する。
この第1の実施形態のFFSモードの液晶表示パネル10Aにおけるアレイ基板ARは、
最初にガラス基板等の透明基板11の表面全体に亘って、例えばアルミニウム又はアルミ
ニウム合金等の導電性層が形成される。その後、周知のフォトリソグラフィー法及びエッ
チング法によって、表示領域に複数の走査線12を互いに平行になるように形成すると共
に、表示領域の周縁部にコモン配線(図示省略)を形成する。コモン配線は、ドライバI
Cや各種端子が配置される周縁の一部を除いて、表示領域の外周部を囲むように、他の配
線よりも太く形成される。
【0028】
次いで、この表面全体に窒化ケイ素層ないし酸化ケイ素層からなるゲート絶縁膜13を
被覆する。その後、CVD法によりたとえばアモルファス・シリコン(以下「a−Si」
という。)層をゲート絶縁膜13の表面全体に亘って被覆した後、同じくフォトリソグラ
フィー法及びエッチング法によって、TFT形成領域にa−Si層からなる半導体層14
を形成する。この半導体層14が形成されている位置の走査線12の領域がTFTのゲー
ト電極Gを形成する。
【0029】
次いで、アルミニウム又はアルミニウム合金等からなる導電性層を、半導体層14を形
成した透明基板11の表面全体に亘って被覆する。更に、その導電性層を、フォトリソグ
ラフィー法及びエッチング法により、走査線12に交差するようにソース電極Sを含む信
号線15及びドレイン電極Dを形成する。なお、信号線15のソース電極S部分及びドレ
イン電極D部分はいずれも半導体層14の表面に部分的に重なっている。このようにして
形成されたゲート電極G、ソース電極S及びドレイン電極Dを有するTFTが本発明のス
イッチング素子に相当する。このTFTは表示領域の走査線12及び信号線15によって
区画されたサブ画素領域毎に形成される。その後、上記工程で得られた透明基板11の表
面全体にパッシベーション膜17を被覆する。このパッシベーション膜17としては、窒
化ケイ素層ないし酸化ケイ素層からなるものを使用することができるが、絶縁性の観点か
らは窒化ケイ素層の方が望ましい。
【0030】
次いで、透明基板11の表面全体に例えば感光性樹脂からなる膜を形成し、露光及び現
像することによって、各ドレイン電極D上のコンタクトホール21の形成予定位置に開口
が形成された一定厚さの層間膜18を形成する。次いで、エッチングガスとして、SF
、CFに代表されるフッ素系のガスを使用し、コンタクトホール21の形成予定位置に
露出しているパッシベーション膜17をプラズマエッチングして除去し、ドレイン電極D
の一部を露出させる。
【0031】
次いで、ITOないしIZOからなる下側の透明導電性層を積層し、フォトリソグラフ
ィー法及びエッチング法によって、サブ画素領域毎に所定のパターンに下電極19を形成
すると共に、柱状スペーサ30が配置される領域の下電極19に開口31a(図2参照)
を形成する。なお、柱状スペーサ30が配置される領域の下電極19に形成された開口3
1aは、3サブ画素(1ピクセル)毎に1個ずつ形成されている。このように、下電極1
9に形成される開口31aは下電極19をパターニングする際に同時に形成することがで
きる。また、この下電極19は、全てのサブ画素毎にコンタクトホール21を介してドレ
イン電極Dと電気的に接続されており、画素電極として作動する。
【0032】
更に、下電極19が形成された透明基板11の表面全体に亘り窒化ケイ素層ないし酸化
ケイ素層からなる電極間絶縁膜20を所定の厚さに形成する。この電極間絶縁膜20は、
層間膜18や下電極19の表面を荒らさないようにするため、ゲート絶縁膜13やパッシ
ベーション膜17の形成条件よりも穏やかな条件、いわゆる低温成膜条件で形成される。
その後、この電極間絶縁膜20をプラズマエッチングすることにより、柱状スペーサ30
が配置される領域の電極間絶縁膜20にも開口31bを形成すると共に、例えば表示領域
の周辺部のコモン配線へのコンタクトホール形成予定位置の電極間絶縁膜20も適宜除去
する。このように、電極間絶縁膜20に形成される開口31bは、電極間絶縁膜20にコ
ンタクトホールを形成する際等に、同時に形成することができる。このとき、柱状スペー
サ30が配置される領域の電極間絶縁膜20の開口31bの径は、その後に形成される上
電極22と下電極19との間の電気的短絡を防止するために下電極19に形成された開口
31aの径よりも小さく、かつ用いる柱状スペーサ30の径と同じかそれよりも大きくさ
れている。
【0033】
次いで、透明基板11の表面全体にITOないしIZOからなる透明導電性材料を被覆
する。そうすると、透明導電性材料は、コンタクトホール21側では電極間絶縁膜20の
表面を被覆し、下電極19に形成された開口31a内では、下電極19とは電気的に絶縁
された状態で、層間膜18の表面を被覆した状態となり、更に表示領域の周辺部でコモン
配線と電気的に接続された状態となる。次いで、フォトリソグラフィー法及びエッチング
法によって、フリンジフィールド効果を発生させるための複数のスリット状開口24を形
成する。このようにして形成された上電極22は共通電極として作動する。この後、上電
極22側の表面全体に配向膜(図示せず)を設けることにより第1の実施形態の液晶表示
パネル10A用のアレイ基板ARが完成される。
【0034】
上記のアレイ基板ARに対向するカラーフィルタ基板CFは、従来のFFSモードの液
晶表示パネル用のカラーフィルタ基板と実質的に同様のものを使用できる。すなわち、こ
のカラーフィルタ基板CFは、ガラス基板等からなる透明基板32の表面に、それぞれの
画素電極として機能する下電極19に対向する位置に各色のカラーフィルタ層33が形成
され、そして、カラーフィルタ層33の表面にはトップコート層34及び配向膜(図示省
略)が順次形成されている。そして、カラーフィルタ基板CFのカラーフィルタ層33と
透明基板32との間には、アレイ基板ARの走査線12、信号線15及びTFTに対向す
る位置にはそれぞれ遮光部材(図示省略)が形成されている。そして、TFTに対向する
位置の遮光部材のうち、アレイ基板ARの電極間絶縁膜20に形成された開口31bに対
向する位置には、感光性樹脂等からなる柱状スペーサ30が形成されている。次いで、上
述のアレイ基板AR及びカラーフィルタ基板CFをそれぞれ対向させて貼り合わせ、柱状
スペーサ30の先端部がアレイ基板ARの絶縁層20に形成された開口31b内に配置さ
れるようにして対向させ、内部に液晶35を封入することにより第1の実施形態の液晶表
示パネル10Aが得られる。
【0035】
この第1の実施形態の液晶表示パネル10Aの低温衝撃試験時の状態を、図4A〜図4
Dを用いて説明する。なお、図4A〜図4Dにおいては、図6A〜図6Dに記載した従来
例の場合と同様に、気泡発生原理の説明に必要な部分のみが記載されており、その他の部
分の詳細な構成は省略してある。すなわち、図4A〜図4Dには、第1の実施形態の液晶
表示パネル10Aのアレイ基板ARとして、透明基板上11上に形成された感光性樹脂等
からなる層間膜18と、その表面に形成された窒化ケイ素等からなる電極間絶縁膜20の
みが示されている。また、第1の実施形態の液晶表示パネル10Aのカラーフィルタ基板
CFとして、透明基板32上に形成されたカラーフィルタ層33と、感光性樹脂等からな
る柱状スペーサ30のみが示されている。なお、下電極19及び上電極22は電極間絶縁
膜20よりも軟質であるので、衝撃特性を考慮する際には、カラーフィルタ基板CFに形
成された柱状スペーサ30はアレイ基板ARの電極間絶縁膜32に形成された開口31b
内で等価的に層間膜18と接触している状態と見なせる。
【0036】
ここで、液晶表示パネル10Aの外表面から外圧Fを与える(図4A参照)と、この外
圧Fはカラーフィルタ基板CFから柱状スペーサ30を経てアレイ基板ARに伝達され、
液晶表示パネル10Aは撓みを生じる(図4B参照)。この状態で外圧Fを除去すると、
図4Cに示したように、液晶表示パネル10Aは元の状態に復元しようとする。柱状スペ
ーサ30は、電極間絶縁膜20とは接触しておらず、等価的に層間膜18と接触している
。層間膜18は電極間絶縁膜20よりも軟質であるので、層間膜18の復元速度V1は、
液晶35の復元速度V2よりも速いが、柱状スペーサ30が電極間絶縁膜20と直接接触
している場合と比すると、復元速度の差は小さい。また、液晶表示パネル10Aは、図4
Cに示したように原位置を越えて撓んだ後、図4Dに示したように原位置に復元する。こ
のように、図4Cに示した原位置よりも撓んだ状態から図4Dに示した原位置に復元する
際も、層間膜18の復元速度V1は液晶35の復元速度V2よりも速いがその差は小さい
。そのため、液晶35の内部で圧力分布に差異が生じて部分的に負圧が生じることがあっ
ても、その負圧は小さいため、気泡の発生が抑制される。従って、第1の実施形態の液晶
表示パネル10Aによれば、低温環境下で衝撃試験を行っても気泡が発生し難い液晶表示
パネルとなる。
【0037】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の液晶表示パネル10Bの構成を、図5を用いて説明する。第2の実施
形態の液晶表示パネル10Bは、電極間絶縁膜20に開口31bが形成されている点及び
下電極19及び上電極22とが電極間絶縁膜20に開口31bが形成された部分で電気的
に絶縁されている点では、第1の実施形態の液晶表示パネル10Aの場合と同様である。
しかしながら、第2の実施形態の液晶表示パネル10Bでは、上電極22に開口31cが
形成されており、下電極19は連続的に層間膜18を被覆するように形成されている点で
、第1の実施形態の液晶表示パネル10Aの場合とは構成が逆になっている。なお、図5
に示した第2の実施形態の液晶表示パネル10Bにおいては、第1の実施形態の液晶表示
パネル10Aと同一の構成部分には同一の参照符号を付与してその詳細な説明を省略する

【0038】
この第2の実施形態の液晶表示パネル10Bにおいても、柱状スペーサ30は、電極間
絶縁膜20とは接触しておらず、等価的に層間膜18と接触している状態となるので、第
1の実施形態の液晶表示パネル10Aと同様の効果を奏することができる。
【0039】
なお、上述した第1及び第2の実施形態の液晶表示パネル10A及び10Bにおいては
、下電極19が画素電極として作動し、上電極22が共通電極として作動する形式のもの
を示したが、下電極19が共通電極として、上電極22が画素電極として作動する形式の
ものとすることもできる。更に、上述した第1及び第2の実施形態の液晶表示パネル10
A及び10Bにおいては、スイッチング素子としてa−SiTFTを形成した例を示した
が、これに限らず、p−SiTFT、LTPSないしTFD等も使用し得る。
【0040】
また、上述した第1及び第2の実施形態の液晶表示パネル10A及び10Bにおいては
、柱状スペーサ30をスイッチング素子であるTFTに対応する位置に形成した例を示し
た。しかしながら、柱状スペーサは、平面視で遮光領域と重複する位置に形成すれば開口
率が低下しないため、平面視で走査線12ないし信号線15と重複する位置に形成しても
よい。更に、上述した第1及び第2の実施形態の液晶表示パネル10A及び10Bにおい
ては、柱状スペーサ30を1ピクセル(例えば3サブ画素)毎に1個ずつ形成した例を示
したが、外力に対する耐力を強くするためにより高密度で柱状スペーサを配置しても良い
。しかしながら、柱状スペーサの配置密度に比例して、表面に加えられた外力に対する耐
力は強くなるが、低温耐衝撃特性が悪化すると共に、柱状スペーサの存在による柱状スペ
ーサの周囲の液晶分子の配向に対する悪影響も大きくなる。そのため、表面に加えられた
外力に対する耐力と低温耐衝撃特性及び表示画質の調和が取れるようにするため、1ピク
セル(例えば3サブ画素)毎に1個ずつ形成することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態のFFSモードの液晶表示パネルのカラーフィルタ基板を透視して表した3サブ画素(1ピクセル)分の模式平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4A〜図4Dは第1の実施形態の液晶表示パネルが低温衝撃を受けた場合の挙動を説明する模式図である。
【図5】本発明の第2の実施形態のFFSモードの液晶表示パネルの図2に対応する断面図である。
【図6】図6A〜図6Dは従来例の液晶表示パネルが低温衝撃を受けた場合の挙動を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0042】
10A、10B:液晶表示パネル 11:透明基板 12:走査線 13:ゲート絶縁膜
14:半導体層 15:信号線 17:パッシベーション膜 18:層間膜 19:下
電極 20:電極間絶縁膜 21:コンタクトホール 22:上電極 24:スリット状
開口 30:柱状スペーサ 31a:下電極の開口 31b:電極間絶縁膜の開口 31
c:上電極の開口 32:透明基板 33:カラーフィルタ層 34:オーバーコート層
35:液晶 AR:アレイ基板 CF:カラーフィルタ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶を挟持して対向配置された第1及び第2の基板を有し、前記第1の基板は、樹脂材
料からなる層間膜の表面に形成された下電極と、前記下電極の表面に電極間絶縁膜を介し
て形成された複数のスリット状開口を有する上電極とを備え、前記第1及び第2の基板の
一方に柱状スペーサを形成し、前記柱状スペーサの先端部を他の基板の表面に接触させた
液晶表示パネルにおいて、
前記第1の基板と前記柱状スペーサとの接触部では、前記下電極及び上電極のうちの一
方と前記電極間絶縁膜には開口が形成され、前記開口内の前記層間膜の表面には前記下電
極及び上電極のうちの他方が直接形成され、前記柱状スペーサは前記開口内で前記下電極
及び上電極のうちの他方と接触するように配置されていることを特徴とする液晶表示パネ
ル。
【請求項2】
前記開口は、前記柱状スペーサの径と同じかそれよりも大きいことを特徴とする請求項
1記載の液晶表示パネル。
【請求項3】
前記下電極及び上電極のうちの一方の開口の径は、前記電極間絶縁膜の開口の径よりも
大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項4】
前記開口及び前記柱状スペーサは、平面視で前記第1基板に形成されているスイッチン
グ素子と重複する位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネ
ル。
【請求項5】
前記開口及び前記柱状スペーサは、1ピクセル毎に1個ずつ形成されていることを特徴
とする請求項1〜4の何れかに記載の液晶表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−300648(P2009−300648A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153901(P2008−153901)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】