説明

液晶表示素子とその製造方法

【課題】信頼性に優れた液晶表示素子とその製造方法を提供する。
【解決手段】前、後ガラス基板を接合する矩形枠状シール材3の奥側枠辺301にノズル部303が凸設され、このノズル部303に隣接させてトランスファ電極14が設置され、且つ、ノズル部303を封止する封止材15がノズル部303に充填されると共に隣設されたトランスファ電極14を被着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示素子とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機や携帯情報端末(PDA:personal digital assistance)等のモバイル電子機器の普及が目覚しく、それに伴い、それらモバイル電子機器に対する小型薄型化の要望が益々高くなっている。従って、モバイル機器の表示モニターとして多用されている液晶表示素子に対しても、小型薄型化の要求は極めて厳しいものがある。
【0003】
液晶表示素子において、表示が行われる表示領域を縮小せずに小型化を推進するには、表示が行われない表示領域の周縁部つまり額縁部を縮小すること(狭額縁化)が求められる。
【0004】
液晶表示素子の狭額縁化を推進するために解決しなければならない課題の一つとして、基板間の配線同士を導通する導通部材(以下、トランスファ電極という)の配置スペースの問題がある。
【0005】
すなわち、従来から、一対の基板の各対向面に設けられた電極に対して電圧を印加するドライバを一方の基板に搭載し、当該一方の基板に設けられたドライバと他方の基板に形成された電極とを導通接続するために上記トランスファ電極が設置される。
【0006】
トランスファ電極は、通常、特許文献1の従来技術等にも示されるように、一対の基板間に液晶を封入するシール材の外側に設置されるが、このトランスファ電極の設置スペースを確保するために、その分、液晶表示素子の額縁部の幅が広がることになる。
【0007】
そこで、上記特許文献1の発明では、トランスファ電極を液晶注入口内に配置し、額縁部の拡大を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−62793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
然るに、液晶注入口にトランスファ電極を配置した場合、それが障害となって液晶の注入速度が遅くなったり液晶にトランスファ電極に係る不純物が混入する等の問題が生じる。また、液晶の注入速度の低下を防ぐために注入口を広げることも提案されているが、この場合、液晶表示素子の強度が低下したり、広くなった注入口を封止するために多めに充填された封止材が内部に食み出して表示品質を低下させる虞がある。
【0010】
本発明の目的は、信頼性に優れた液晶表示素子とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
一方の主面に第1電極が形成された第1基板と、一方の主面に第2電極が形成された第2基板とが、前記一方の主面同士を互いに対向させて枠状のシール材によって接合され、前記第1基板、前記第2基板、及び前記シール材に囲まれた空間内に液晶が封入された液晶表示素子であって、
前記枠状のシール材には開口が所定箇所に形成され、
前記第1基板には前記シール材に囲まれた領域外であって前記開口に隣接する領域に、前記第1電極に導通接続された第1接続パッドが設けられ、
前記第2基板には前記シール材に囲まれた領域外に、前記第1電極に導通接続された第1電極接続配線が設けられ、当該領域外であって前記開口に隣接する領域に、前記第1電極接続配線に導通接続された第2接続パッドが設けられ、
前記第1接続パッドと前記第2接続パッドとの間を導通接続する基板間導通部材を更に備え、
前記開口を封止する封止材が、基板間導通部材の側面を覆うように設けられていることを特徴とする液晶表示素子が提供される。
上記液晶表示素子において、好ましくは、前記基板間導通部材は、側面の所定領域が前記第1基板及び前記第2基板の端面と面一になるように設けられ、前記封止材は、前記側面の当該所定領域を覆うように設けられている。
上記液晶表示素子において、好ましくは、前記封止材は、前記第1基板及び前記第2基板の前記端面から突出した突出部を覆うように設けられている。
上記液晶表示素子において、好ましくは、前記シール材は、前記第1基板又は前記第2基板の外周縁上に前記開口が形成されている。
上記液晶表示素子において、好ましくは、前記第2基板には前記シール材に囲まれた領域外に、前記第2電極に導通接続された第2電極接続配線が設けられ、
前記第2基板のうち前記第1基板に重ならないように配置された非重畳領域に、前記第1電極接続配線及び前記第2電極接続配線の各端部である出力端子が設けられ、前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加するドライバが前記出力端子に導通接続させて搭載されている。
上記液晶表示素子において、好ましくは、前記第1電極及び前記第2電極のいずれか一方の電極は当該一方の電極が設けられた基板の前記一方の主面のうち前記シール材に囲まれた領域に形成された共通電極であり、他方の電極は当該他方の電極が設けられた基板の前記一方の主面のうち前記シール材に囲まれた領域に複数形成された画素電極であり、
前記第1電極接続配線及び前記第2接続配線のうち前記他方の電極に接続された他方の接続配線は、前記画素電極に接続された薄膜トランジスタに接続されたゲートライン及びソースラインを含む。
上記液晶表示素子において、好ましくは、前記第1基板の他方の主面に第1偏光板が設けられ、前記第2基板の他方の主面に第2偏光板が設けられ、
前記ドライバから前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加することによって、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する前記液晶の分子の向きを制御して表示を行う。
【0012】
また、本発明の他の態様によれば、
複数の液晶表示素子を形成可能な面積を有し前記各液晶表示素子の形成領域に第1電極及び当該第1電極に導通接続された第1接続パッドが形成された第1親基板と、複数の液晶表示素子を形成可能な面積を有し前記各液晶表示素子の形成領域に第2電極、当該第2電極に導通接続された第2電極接続配線、当該第2電極接続配線と絶縁された第1電極接続配線、及び当該第1電極接続配線に導通接続された第2接続パッドが形成された第2親基板とを準備する工程と、
前記第1親基板又は前記第2親基板上に、前記第1親基板又は前記第2親基板の前記各液晶表示素子の形成領域のうち隣接する2つの前記形成領域を取り囲む無端枠形状のシール材を、前記第1接続パッドと前記第1電極との間か、又は前記第2接続パッド、前記第1電極接続配線及び前記第2電極接続配線と前記第2電極との間かの、いずれかに配置されるように設ける工程と、
前記第1親基板又は前記第2親基板上に、前記第1接続パッド又は前記第2接続パッドに導通接続された基板間導通部材を、前記2つの形成領域の境界線を跨るように設ける工程と、
前記第1親基板と前記第2親基板とを、前記第1電極及び前記第2電極が形成された面同士を対向させて、前記形成領域同士が重なり合うように、前記シール材を介して接合する工程と、
前記第1親基板及び前記第2親基板を前記2つの形成領域の境界線に沿って切断することによって、当該境界線に沿った外周縁を有する複数の液晶表示素子接合体を形成するとともに、前記シール材及び前記基板間導通部材を当該境界線に沿って分断して、形成された前記各液晶表示素子接合体に基板間導通部材を形成し且つ当該各液晶表示素子接合体の外周縁上において前記シール材に開口を形成する工程と、
前記開口を介して前記液晶表示素子接合体の前記シール材によって囲まれた領域内に液晶を注入する工程と、
前記開口を塞ぐとともに前記基板間導通部材の側面を覆うように、封止材を設ける工程とを有することを特徴とする液晶表示素子の製造方法が提供される。
上記液晶表示素子において、好ましくは、前記親基板を切断する工程は、前記基板間導通部材をその側面の所定領域が前記第1基板及び前記第2基板の端面と面一になるように設けることを含み、
前記封止材を設ける工程は、前記封止材を、前記基板間導通部材の側面の当該所定領域を覆うように設けること含む。
上記液晶表示素子において、好ましくは、前記封止材を設ける工程は、前記親基板を切断する工程において、前記第1基板及び前記第2基板の前記端面から突出した又は窪んだ異形部が形成された場合に、当該異形部を覆うように前記封止材を設けることを含む。
上記液晶表示素子において、好ましくは、前記シール材を設ける工程は、前記シール材を前記第1接続パッド又は前記第2接続パッドに隣接した領域を含むように設ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、信頼性に優れた液晶表示素子とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態としての液晶表示素子を示す平面図である。
【図2】上記液晶表示素子の要部構成を示す上記平面図におけるII−II線断面図である。
【図3】本発明の一実施形態としての液晶表示素子の製造方法を示す平面図で、(a)は第1の親基板を、(b)は第2の親基板を、それぞれ示している。
【図4】上記液晶表示素子の製造方法を示す平面図で、切離される前の親基板接合体を示している。
【図5】上記液晶表示素子の製造方法を示す平面図で、液晶注入前のセル短冊を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示されるように、本実施形態の液晶表示素子は、アクティブマトリクス型の液晶表示素子であり、矩形をなす一対のガラス基板1、2が矩形枠状のシール材3を介し接合されてなる。一対のガラス基板1、2は、幅が同じで、長さは、表示の観察側に位置させるガラス基板(以下、前ガラス基板という)1よりも、背面側に位置させるガラス基板(以下、後ガラス基板という)の方が長く、一方の各短手縁辺を揃え、後ガラス基板2の他方の短手縁辺を前ガラス基板1の対応する短手縁辺よりも適長突出させた配置で接合されている。即ち、後ガラス基板1は、前ガラス基板2に重ならないように配置された非重畳領域を有する。なお、以下の説明においては、本液晶表示素子の前、後ガラス基板1、2の短手縁辺を揃えた側を奥側、後ガラス基板2の短手縁辺を突出させた側を手前側、と呼ぶ。
【0016】
本実施形態のシール材3は、熱硬化型エポキシ樹脂からなり、前ガラス基板1の縁部に沿って延在する矩形枠状に配置されている。このシール材3における奥側の枠辺301の中央部が開口され、この開口部302には、ノズル部303が枠外に向けて凸設されている。このノズル部303は、液晶を注入する際の注入口となる。このシール材3は、その両端が、枠辺301の中央部において、前、後ガラス基板1、2の外周縁にまで延在するように設けられることによって、開口部302が形成されている。
【0017】
前、後ガラス基板1、2が対向しシール材3によって囲まれた領域内では、図2に示されるように、前ガラス基板1の一対の主面のうち後ガラス基板2との対向面には一枚膜状の共通電極4が設置され、後ガラス基板2の一対の主面のうち前ガラス基板1との対向面に複数の画素電極5がマトリックス状に配置されている。そして、両電極4、5及び両電極4、5に挟まれた液晶6によって形成された画素がマトリックス状に複数配置されて、表示領域Ddが形成されている。そして、図示されてはいないが、後ガラス基板2には、複数の薄膜トランジスタ(以下、TFT(Thin Film Transistor)という。)がマトリックス状に配置され、各画素電極5に各TFTを介して接続された複数のゲートライン及びソースラインが設けられている。複数のゲートラインは互いに平行に行方向に設けられ、複数のソースラインが互いに平行に列方向に設けられている。なお、両電極4、5を覆って、液晶6の配向を制御する透明な配向膜7a、7bがそれぞれ一様に被着されている。
【0018】
図1に戻って、前述した後ガラス基板2の突出縁部201には、本液晶表示素子を駆動するドライバチップ8がCOG(Chip On Glass)方式により直接搭載されている。ドライバチップ8の搭載エリアには、駆動制御信号が入力される信号入力端子801と、入力された駆動制御信号に基づくゲート信号、ソース信号、共通信号の各信号電圧を出力するための各信号出力端子802、803、804がそれぞれ設置されている。突出縁部201の先端部には、外部駆動制御回路基板(不図示)からフレキシブル配線基板等を介して駆動制御信号が供給される接続端子列9が形成され、接続端子列9の各接続端子901はドライバチップ8の対応する信号入力端子801にそれぞれ配線接続されている。本液晶表示素子は、ドライバチップ8から両電極4、5に電圧を印加することによって、両電極4、5間に介在する液晶6の分子の向きを制御して表示を行う。
【0019】
シール材3に囲まれた領域外のうち、シール材3の左右両側の枠辺304、305と後ガラス基板2の対応する各側端との間には、ゲート接続配線の引き回し配設エリアAg1、Ag2がそれぞれ確保されている。左右の各配設エリアAg1、Ag2には、表示領域Ddの行方向画素間に配設された複数のゲートライン(不図示)を一本置きにそれぞれ左右に分けて延出させたゲート接続配線11a、11bが引き回し配設されている。これらゲート接続配線11a、11bの各引き回し端部は、突出縁部201における前記ドライバチップ搭載エリアの対応するゲート信号出力端子802に電気接続されている。
【0020】
表示領域Ddの列方向画素間に配設された複数のソースライン(不図示)から引き出された各ソース接続配線12は、前記ドライバチップ搭載エリアの対応するソース信号出力端子803に電気接続されている。
【0021】
そして、後ガラス基板2におけるゲート接続配線11a、11bの引き回し配設エリアAg1、Ag2のうちの一方の配設エリアAg2の外側に沿わせて、共通電極接続配線13が配設されている。この共通電極接続配線13は、一方の端部がドライバチップ搭載エリアに向けて引き回し配設されて共通信号出力端子804に電気接続され、他方の端部はシール材3の奥側枠辺301の外側に沿ってノズル部303に隣接する位置まで引き回し配設されている。この共通電極接続配線13の素子奥側に引き回し配設された端部には、図2に示されるように接続パッド部131が形成されている。
【0022】
図2において、前ガラス基板1の対向面(内面)の前記接続パッド部131に対向する位置には、共通電極4の縁部の一部をシール材3の外側に延出させて接続パッド部401が配設されている。この接続パッド部401と前記接続パッド部131とは、基板間導通部材としてのトランスファ電極14により導通接続されている。
【0023】
トランスファ電極13の材料としては、シール材3の材料である熱硬化型エポキシ樹脂に導電性粒子を混合したものを良好に適用できる。導電性粒子としては、基板間隙規制部材(スペーサ)として汎用されているミクロパールを金メッキして導電性を付与した金ミクロパールが好適である。
【0024】
前記ノズル部303には、セル内に液晶6を注入した後、開口302を塞ぐようにして封止材15が充填されている。これにより、注入された液晶がセル内に封止される。本実施形態では、封止材としてシリコーン系の接着剤が用いられている。
【0025】
ここで、封止材15は、ノズル部303に充填されるだけでなく、隣接配置されているトランスファ電極14にも該トランスファ電極14の側面を覆うように塗布されている。この場合、図1、図2に示されるように、トランスファ電極14は、側面の所定領域が前、後ガラス基板1、2の端面と面一になるように設けられている。封止材15は、トランスファ電極14外部に露出された表面のうち特に面一となった当該所定領域が少なくとも確実に被覆されるように、充分な量の封止材15が被着されている。すなわち、トランスファ電極14とシール材3に囲まれた例えばノズル部303付け根のコーナー部等の外部に開かれていない隙間には、敢えて封止材15を充填塗布する必要はない。
【0026】
上述のように、封止材15を液晶注入用ノズル部303と隣接するトランスファ電極14の双方を略覆い隠す程度に充分に塗布することにより、液晶注入口を確実に封止できると共に、トランスファ電極14が外気に含まれる水分等により腐食されることを抑制することができ、液晶表示素子の信頼性が大幅に向上する。
【0027】
なお、前ガラス基板1の一対の主面のうち上述の対向面とは反対側の面である外面には、前偏光板16が貼着され、後ガラス基板2の一対の主面のうち上述の対向面とは反対側の面である外面には、後偏光板17が貼着されている。
【0028】
次に、本実施形態の液晶表示素子の製造方法について、主に、図3乃至図5に基づき説明する。
【0029】
図3(a)、(b)に示すように、まず、共に複数の液晶表示素子を形成可能な面積を有し且つ透明な第1の親ガラス基板1’と第2の親ガラス基板2’を準備する。第1の親ガラス基板1’には、1個の液晶セルに対応する第1の液晶セル区画(液晶表示素子の形成領域)101’つまり前記前ガラス基板1を取得するための区画101’を、本例では2行×4列の配置で計8個設定されている。
【0030】
一方、第2の親ガラス基板2’には、1個の液晶セルに対応する第2の液晶セル区画201’つまり前記後ガラス基板1を取得するための区画201’を、第1の親ガラス基板1’と同じ2行×4列の配置で計8個設定されている。
【0031】
従って、第1の親ガラス基板1’と第2の親ガラス基板2’とは、液晶セル区画101’、201’が並置される方向の幅寸法が等しく、一対の液晶セル区画101’、101’及び201’、201’が縦列配設される長さ寸法については、第2の親ガラス基板2’の方が第1の親ガラス基板1’よりも、後ガラス基板2の突出縁部201(図1参照)の突出長さ2個分だけ長い。
【0032】
各液晶セル区画101’、201’には、前記シール材3が配置されるシール材配置代3’が夫々所定位置に設定されている。ここで、シール材配置代3’は、各親ガラス基板1’、2’において隣接する一対の液晶セル区画101’、101’及び201’、201’毎に、各ノズル部を対向させる配置でそれぞれ設定されている。
【0033】
本実施形態では、互いに隣接するように縦列配設された一対の液晶セル区画101’、101’及び201’、201’毎に、各シール材配置代3’がそれぞれのノズル部配置代303’を対向させる配置で設定されている。
【0034】
次に、第1の親ガラス基板1’の各第1液晶セル区画101’毎に、シール材配置代3’内に一枚膜状の共通電極4(図2参照)を形成し、シール材配置代3’外のノズル部配置代303’に隣接する位置まで共通電極4の一部を延出させ、接続パッド部401を形成する。そして、上記共通電極4を覆って配向膜7aを一様に被着形成する。
【0035】
これに併行して、第2の親ガラス基板2’の各第2液晶セル区画201’毎に、複数の画素電極5(図2参照)とTFT、及びゲートライン、ソースライン、ゲート接続配線11a、11b、ソース接続配線12、共通電極接続配線13とその接続パッド部131、各信号出力端子802、803、804、外部信号電圧供給用の接続端子901とその信号入力端子801等、各TFTに電気接続される各種配線及びそれらに対応する各種接続端子を、本例ではフォトリソグラフィーによりパターン形成する。
【0036】
ここで、上記共通電極接続配線13とその接続パッド部131は、縦列配設された一対の液晶セル区画201’、201’毎に、互いに対向する位置、つまり両区画の境界線(切離ライン)Ls1に対し線対称となる位置にそれぞれ配設する。
【0037】
フォトリソグラフィーにより各種電極・配線を形成した後は、それらを覆って配向膜7b(図2参照)を一様に被着形成する。
【0038】
次に、本実施形態では、第2の親ガラス基板2’における各第2液晶セル区画201’内に設定したシール材配置代3’に、シール材3を正確に配置する。この際、シール材3は、縦列配設された一対の液晶セル区画201’、201’を取り囲む無端枠形状となるように設ける。第2の親ガラス基板2’にシール材3を設ける場合には、ゲート接続配線11a、11b、ソース接続配線12、共通電極接続配線及び接続パッド部131と、画素電極5との間に配置されるように、且つ接続パッド部131に隣接する領域を含むようにシール材3を設けるとよい。また、第1の親ガラス基板1’にシール材3を設ける場合には、接続パッド部401と共通電極4との間に配置されるように、且つ接続パッド部401に隣接する領域を含むようにシール材3を設けるとよい。いずれの場合も、縦列配設された一対の液晶セル区画201’、201’の境界線を跨ぐ部分においてすぼんだ瓢箪状となるように、シール材3を形成する。このすぼんだ領域がシール材のうち後述するノズル部303に対応する部分である。そして、本実施形態では、シール材のうち当該ノズル部303が形成される部分が、接続パッド部131又は接続パッド部401に隣接する領域に設けている。この配置方法としては、スクリーン印刷法が好適である。
【0039】
この後、縦列配設された一対の液晶セル区画201’、201’毎に、境界線Lsを挟んで対向する双方の接続パッド部131、131を一括被覆できる底面を備えた共通トランスファ電極柱14’(図4参照)を、境界線Ls1を跨いで配置する。この際、共通トランスファ電極柱14’は、シール材3のうちノズル部303が形成される部分に隣接する領域に設けられることとなる。この設置方法としては、ディスペンサによる塗布方法が好適である。
【0040】
なお、上述したシール材3の配置と共通トランスファ電極柱14’の配置は、実施順序を逆にすることも可能である。また、これらは、第1の親ガラス基板1’側のシール材配置代3’と接続パッド部401に配置してもよい。
【0041】
共通トランスファ電極柱14’の配置が終了したら、図4に示されるように、第2の親ガラス基板2’上に第1の親ガラス基板1’を、それぞれの電極形成面を対向させて正確に位置合わせを行いつつ載置する。この際、第1の親ガラス基板1’の各シール材配置代3’に第2の親ガラス基板2’に配置されている対応する各シール材3が正確に配置されように、図示されていないアライメントマークを基準としカメラによる画像認識法等により正確に位置合わせを行う。即ち、第1の親ガラス基板1’と第2の親ガラス基板2’とを、縦列配設された液晶セル区画101’と、当該液晶セル区画101’に対応する縦列配設された液晶セル区画201’とが重なり合うようにして、シール材3を介して接合する。
【0042】
この後は、上述のようにして得られた第1、第2の親ガラス基板1’、2’の接合体を加熱しつつ加圧し、基板間間隙(ギャップ)が所定の寸法に縮められた段階で、シール材3と共通トランスファ電極柱14’の硬化を完了する。
【0043】
次に、所定のギャップが確保された第1、第2の親ガラス基板1’、2’の接合体を複数の液晶セルが幅方向に並ぶ短冊体に切離する。本実施形態では、4個の液晶セルがセル幅方向(マトリックスの行方向)に並置されているから、行方向の切離ラインLs1に沿って切断する。この切離ラインLs1は、前述した共通トランスファ電極柱14’が跨ぐ縦列対をなす液晶セル区画の境界線でもある。この場合の切断方法としては、スクライブ−ブレイク法を用いることができる。即ち、まず、スクライバを用いて切離ラインLs1に沿って溝を形成し、次いで、第1、第2の親ガラス基板1’、2’の接合体を裏返して、金属製の棒状の部材によって当該切離ラインLs1に沿って応力を印加することにより、当該接合体を切断する。
【0044】
第1、第2親ガラス基板1’、2’の接合体を行方向の切離ラインLs1に沿って切断すると、図5に示すように、4個の液晶セルの各ノズル部303が切断端面側に揃って開いた2個のセル短冊体(液晶表示素子接合体)が得られる。得られた2個のセル短冊体は切離ラインLs1に沿った外周縁を有し、当該外周縁上において、シール材3に開口が形成されている。この切断工程において、切離ラインLs1を跨ぐ4個の共通トランスファ電極柱14’も約半分にそれぞれ分断され、個々の液晶セル毎に配置された8個のトランスファ電極14となる。得られた8個のトランスファ電極14の側面のうち所定の領域は、それぞれ第1、第2親ガラス基板1’、2’を切断して形成された端面と面一になっている。
【0045】
次に、4個の液晶セルが横列に並ぶセル短冊体毎に、各ノズル部303が並ぶ切断端面側を液晶溜に浸漬させ、従来の真空注入方法により、各液晶セル内に液晶を一括注入する。
【0046】
液晶の注入が完了したら、各ノズル部303に開口302を塞ぐようにして封止材15を充填すると共に、各ノズル部303に隣接配置されている各トランスファ電極14にも該トランスファ電極14の側面を覆うように封止材15を塗布する。これにより、トランスファ電極14の側面のうち、前、後ガラス基板1、2の端面に沿った部分が外気に晒されないように被覆することができる。特に、トランスファ電極14の側面のうち上述の所定の領域、即ち第1、第2親ガラス基板1’、2’を切断して形成された端面と面一になった領域を少なくとも覆うように、封止材15を形成しておく。
【0047】
塗布した封止材15を硬化させた後、セル短冊体を隣り合う液晶セルの境界線となっている切離ラインLs2に沿って切断する。この後、切離された液晶セル毎に前、後偏光板16、17等の光学シートを貼着することにより、図1に示す本実施形態の液晶表示素子が得られる。
【0048】
以上のように、本実施形態の液晶表示素子では、トランスファ電極14が矩形枠状シール材3の外部に突出させたノズル部303に隣接させて設置されているから、トランスファ電極14を設置するための専用の縁部が不要となり、その分、外形寸法を小さくでき、且つ、注入された液晶を封止するために液晶注入口のノズル部303に充填する封止材15を隣設されているトランスファ電極14にも一括塗布し、トランスファ電極14が外気に晒されない構造としたから、トランスファ電極14の水分等による腐食を抑制することができる。その結果、液晶表示素子の狭額縁化による小型化が促進されるとともに、トランスファ電極14の腐食による断線等の経時劣化が抑制され液晶表示素子としての信頼性が向上する。
【0049】
また、本実施形態の液晶表示素子の製造方法では、第2の親ガラス基板2’に設定されている一対の縦列方向に隣接する液晶セル区画201’、201’毎に、各矩形枠状シール材3を凸設されているそれぞれのノズル部303を対向させる配置で設置するから、各ノズル部303に隣設するそれぞれのトランスファ電極14配設位置に、対をなす各液晶セル区画201’、201’を区切る切離ラインLs1を跨いで共通のトランスファ電極柱14’を配置でき、この後、切離ラインLs1に沿って切断するたけで、トランスファ電極14がノズル部303に隣設された所望の液晶セルが得られる。
【0050】
これにより、各液晶セルにノズル部303から液晶を注入した後に封止材15をノズル部303に充填する際に同時に隣設されているトランスファ電極14も封止材15で被覆することができる。従って、各液晶表示素子にトランスファ電極14を個々に設置し封止材ではない専用の保護膜を被覆する場合に比べ、製造作業工数が大幅に低減される。
【0051】
加えて、セル切離工程において、スクライブ−ブレイク法によって、共通トランスファ電極14’を第1、第2の親ガラス基板1’、2’とともに一括切断すると、切離ラインLs1上のうち、共通トランスファ電極14’が形成された領域においては残りの領域と比べて印加される応力が変化してしまう。このため、切断によって得られた2個のセル短冊体の切断端面に、当該端面から突出した形状を有するバリや、逆に当該端面から窪んだ形状を有する欠けといった異形部が形成されるおそれがある。しかしながら、封止材15をトランスファ電極14だけでなくその近傍の切断端面も被覆できるように封止材15を充分に塗布することにより、ガラス切断面にバリや欠けといった異形部が形成された場合も、封止材15によりこの異形部を被覆でき、液晶表示素子の品質がより向上する。
【0052】
なお、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲において種々の変形が可能であることは勿論である。
【0053】
例えば、上記実施形態ではトランスファ電極14が各液晶表示素子に1個設けられているが、これに限らず、1個の液晶表示素子に複数個のトランスファ電極を設ける場合にも、本発明は有効に適用される。また、液晶注入口も1個に限らず、複数個の液晶注入口が設けられた液晶表示素子にも、本発明は有効に適用される。
【0054】
更に、上記実施形態では、ドライバがガラス基板に直接搭載されたCOG方式が採用されているが、ドライバを外部回路基板に設けてフレキシブル配線基板で導通接合する方式の液晶表示素子とその製造方法に対しても、本発明は有効である。
【符号の説明】
【0055】
1 前ガラス基板
2 後ガラス基板
3 シール材
301 奥側枠辺
302 開口
303 ノズル部
304、305 両側枠辺
4 共通電極
401 接続パッド部
5 画素電極
6 液晶
7a、7b 配向膜
8 ドライバチップ
801 入力端子
802、803、804 出力端子
9 接続端子列
901 接続端子
11a、11b ゲート接続配線
12 ソース接続配線
13 共通電極接続配線
131 接続パッド部
14 トランスファ電極
15 封止材
16、17 前、後偏光板
1’ 第1の親ガラス基板
101’ 液晶セル区画
2’ 第2の親ガラス基板
201’ 液晶セル区画
3’ シール材配置代
14’ 共通トランスファ電極柱
Ls1、Ls2 切離線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に第1電極が形成された第1基板と、一方の主面に第2電極が形成された第2基板とが、前記一方の主面同士を互いに対向させて枠状のシール材によって接合され、前記第1基板、前記第2基板、及び前記シール材に囲まれた空間内に液晶が封入された液晶表示素子であって、
前記枠状のシール材には開口が所定箇所に形成され、
前記第1基板には前記シール材に囲まれた領域外であって前記開口に隣接する領域に、前記第1電極に導通接続された第1接続パッドが設けられ、
前記第2基板には前記シール材に囲まれた領域外に、前記第1電極に導通接続された第1電極接続配線が設けられ、当該領域外であって前記開口に隣接する領域に、前記第1電極接続配線に導通接続された第2接続パッドが設けられ、
前記第1接続パッドと前記第2接続パッドとの間を導通接続する基板間導通部材を更に備え、
前記開口を封止する封止材が、基板間導通部材の側面を覆うように設けられていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
前記基板間導通部材は、側面の所定領域が前記第1基板及び前記第2基板の端面と面一になるように設けられ、前記封止材は、前記側面の当該所定領域を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記封止材は、前記第1基板及び前記第2基板の前記端面から突出した突出部を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記シール材は、前記第1基板又は前記第2基板の外周縁上に前記開口が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記第2基板には前記シール材に囲まれた領域外に、前記第2電極に導通接続された第2電極接続配線が設けられ、
前記第2基板のうち前記第1基板に重ならないように配置された非重畳領域に、前記第1電極接続配線及び前記第2電極接続配線の各端部である出力端子が設けられ、前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加するドライバが前記出力端子に導通接続させて搭載されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記第1電極及び前記第2電極のいずれか一方の電極は当該一方の電極が設けられた基板の前記一方の主面のうち前記シール材に囲まれた領域に形成された共通電極であり、他方の電極は当該他方の電極が設けられた基板の前記一方の主面のうち前記シール材に囲まれた領域に複数形成された画素電極であり、
前記第1電極接続配線及び前記第2接続配線のうち前記他方の電極に接続された他方の接続配線は、前記画素電極に接続された薄膜トランジスタに接続されたゲートライン及びソースラインを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項7】
前記第1基板の他方の主面に第1偏光板が設けられ、前記第2基板の他方の主面に第2偏光板が設けられ、
前記ドライバから前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加することによって、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する前記液晶の分子の向きを制御して表示を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項8】
複数の液晶表示素子を形成可能な面積を有し前記各液晶表示素子の形成領域に第1電極及び当該第1電極に導通接続された第1接続パッドが形成された第1親基板と、複数の液晶表示素子を形成可能な面積を有し前記各液晶表示素子の形成領域に第2電極、当該第2電極に導通接続された第2電極接続配線、当該第2電極接続配線と絶縁された第1電極接続配線、及び当該第1電極接続配線に導通接続された第2接続パッドが形成された第2親基板とを準備する工程と、
前記第1親基板又は前記第2親基板上に、前記第1親基板又は前記第2親基板の前記各液晶表示素子の形成領域のうち隣接する2つの前記形成領域を取り囲む無端枠形状のシール材を、前記第1接続パッドと前記第1電極との間か、又は前記第2接続パッド、前記第1電極接続配線及び前記第2電極接続配線と前記第2電極との間かの、いずれかに配置されるように設ける工程と、
前記第1親基板又は前記第2親基板上に、前記第1接続パッド又は前記第2接続パッドに導通接続された基板間導通部材を、前記2つの形成領域の境界線を跨るように設ける工程と、
前記第1親基板と前記第2親基板とを、前記第1電極及び前記第2電極が形成された面同士を対向させて、前記形成領域同士が重なり合うように、前記シール材を介して接合する工程と、
前記第1親基板及び前記第2親基板を前記2つの形成領域の境界線に沿って切断することによって、当該境界線に沿った外周縁を有する複数の液晶表示素子接合体を形成するとともに、前記シール材及び前記基板間導通部材を当該境界線に沿って分断して、形成された前記各液晶表示素子接合体に基板間導通部材を形成し且つ当該各液晶表示素子接合体の外周縁上において前記シール材に開口を形成する工程と、
前記開口を介して前記液晶表示素子接合体の前記シール材によって囲まれた領域内に液晶を注入する工程と、
前記開口を塞ぐとともに前記基板間導通部材の側面を覆うように、封止材を設ける工程とを有することを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
【請求項9】
前記親基板を切断する工程は、前記基板間導通部材をその側面の所定領域が前記第1基板及び前記第2基板の端面と面一になるように設けることを含み、
前記封止材を設ける工程は、前記封止材を、前記基板間導通部材の側面の当該所定領域を覆うように設けること含むことを特徴とする請求項8に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項10】
前記封止材を設ける工程は、前記親基板を切断する工程において、前記第1基板及び前記第2基板の前記端面から突出した又は窪んだ異形部が形成された場合に、当該異形部を覆うように前記封止材を設けることを含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項11】
前記シール材を設ける工程は、前記シール材を前記第1接続パッド又は前記第2接続パッドに隣接した領域を含むように設けることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−73556(P2012−73556A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220306(P2010−220306)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】