説明

液晶表示素子の製造方法

【課題】視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性および長期信頼性に優れる液晶表示素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】上記の製造方法は、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、(A)ポリオルガノシロキサンおよび(B)2−[4’−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−ビフェニル−4−イロキシ]−エチルアクリレートに代表される重合性不飽和化合物を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造方法に関する。さらに詳しくは、視野角が広く、応答速度の速い液晶表示素子を製造するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子のうち、垂直配向モードとして従来知られているMVA(Multi−Domain Vertical Alignment)型パネルは、液晶パネル中に突起物を形成し、これにより液晶分子の倒れ込み方向を規制することにより、視野角の拡大を図っている。しかし、この方式によると、突起物に由来する透過率およびコントラストの不足が不可避であり、さらに液晶分子の応答速度が遅いという問題がある。
近年、上記の如きMVA型パネルの問題点を解決すべく、PSA(Polymer Sustained Alignment)モードが提案された。PSAモードは、パターン状導電膜付き基板およびパターンを有さない導電膜付き基板からなる一対の基板の間隙、あるいは2枚のパターン状導電膜付き基板からなる一対の基板の間隙に重合性の化合物を含有する液晶組成物を狭持し、導電膜間に電圧を印加した状態で紫外線を照射して重合性化合物を重合し、これによりプレチルト角特性を発現して液晶の配向方向を制御しようとする技術である。この技術によると、導電膜を特定の構成とすることにより視野角の拡大および液晶分子応答の高速化を図ることができ、MVA型パネルにおいて不可避であった透過率およびコントラストの不足の問題も解消される。しかしながら、前記重合性化合物の重合のために、例えば100,000J/mといった多量の紫外線の照射が必要であり、そのため液晶分子が分解する不具合が生ずるほか、紫外線照射によっても重合しなかった未反応化合物が液晶層中に残存することとなり、これらが相俟って表示ムラが発生し、電圧保持特性に悪影響を及ぼし、あるいはパネルの長期信頼性に問題が生じることが明らかになっている。
【0003】
これらに対し非特許文献1は、反応性メソゲンを含有するポリイミド系液晶配向剤から形成された液晶配向膜を用いる方法を提案している。非特許文献1によると、かかる方法により形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子は、液晶分子の応答が高速であるという。しかしながら非特許文献1には、いかなる反応性メソゲンをいかなる量で使用すべきかについての指針は全く記載されておらず、また必要な紫外線照射量も依然として多く、表示特性、特に電圧保持特性に関する懸念は払拭されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−107544号公報
【特許文献2】特開2010−97188号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Y.−J.Lee et.al.,SID 09 DIGEST,p.666(2009)
【非特許文献2】T.J.Scheffer et.al.,J.Appl.Phys.vol.48,p.1783(1977)
【非特許文献3】F.Nakano, et.al.,JPN.J.Appl.Phys.vol.19,p.2013(1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性および長期信頼性に優れる液晶表示素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、本発明の上記課題は、
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、
(A)ポリオルガノシロキサンおよび
(B)重合性不飽和化合物
を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経ることを特徴とする、液晶表示素子の製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によって製造された液晶表示素子は、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、十分な透過率およびコントラストを示し、表示特定に優れるうえ、長時間連続駆動しても表示特性が損なわれることがない。
また、本発明の方法によると、照射に必要な光の量が少なくてすむため、液晶表示素子の製造コストの削減に資する。
従って、本発明の方法により製造された液晶表示素子は、性能面およびコスト面の双方において従来知られている液晶表示素子に勝り、種々の用途に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例および比較例において製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【図2】実施例および比較例において製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<重合体組成物>
本発明の方法において用いられる重合体組成物は、
(A)ポリオルガノシロキサンおよび
(B)重合性不飽和化合物
を含有する。
【0011】
[(A)ポリオルガノシロキサン]
本発明で使用される重合体組成物に含有される(A)ポリオルガノシロキサンにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは、500〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜100,000であることがより好ましく、さらに1,000〜50,000であることが好ましい。
(A)ポリオルガノシロキサンは、下記式(A−1)
【0012】
【化2】

【0013】
(式(A−1)中、n1は0〜2の整数であり、
n2は0または1であり、
n1+n2が2以上のときRは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、
n1+n2が0または1のときRはステロイド構造を有する基、炭素数4〜20のアルキル基または炭素数2〜20のフルオロアルキル基である。)
で表される基を有するものであることが好ましい。
上記式(A−1)におけるRのステロイド構造を有する基としては、例えば3−コレスタニル基、3−コレステニル基、3−ラノスタニル基、3−コラニル基、3−プレグナル基、3−アンドロスタニル基、3−エストラニル基などを挙げることができる。
上記式(A−1)におけるRのアルキル基およびフルオロアルキル基の有する炭素数が3以上であるときは、それぞれ、直鎖状の基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、下記式(F)
CF−(CF−(CH− (F)
(式(F)中、aおよびbは、それぞれ、0〜19の整数であり、ただし
式(A−1)中のn1+n2が2以上のときa+bは0〜19の整数であり、
n1+n2が0または1のときa+bは3〜19の整数である。)
で表される基であることが好ましい。
上記式(A−1)で表される基の好ましい例としては、例えばn−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、下記式(A−1−1)〜(A−1−3)
【0014】
【化3】

【0015】
(式(A−1−1)〜(A−1−3)中のRは、それぞれ、上記式(A−1)中のRと同義である。)
で表される基などをあげることができる。式(A−1−1)〜(A−1−3)中のRは、炭素数1〜18の直鎖のアルキル基またはフルオロアルキル基であることが好ましい。
(A)ポリオルガノシロキサン中に占める上記式(A−1)で表される基の割合としては、0.0002モル/g以上であることが好ましく、0.004〜0.002モル/gであることがより好ましく、さらに0.0005〜0.0016モル/gであることが好ましい。
このような(A)ポリオルガノシロキサンは、上記のような特徴を有するものである限り、いかなる方法によって製造されたものであってもよい。
(A)ポリオルガノシロキサンは、例えばアルコキシシラン化合物、好ましくは上記式(A−1)で表される基およびアルコキシル基を有するシラン化合物(以下、「シラン化合物(a1)」という。)、またはシラン化合物(a1)と他のアルコキシシラン化合物(以下、「シラン化合物(a2)」という。)との混合物を、
ジカルボン酸およびアルコールの存在下に反応させる方法(製造法1)、もしくは
加水分解・縮合する方法(製造法2)、または
エポキシ基およびアルコキシル基を有するシラン化合物(以下、「シラン化合物(a2−1)」という。)、またはシラン化合物(a2−1)と他のアルコキシシラン化合物(以下、「シラン化合物(a2−2)」という。)との混合物を、
ジカルボン酸およびアルコールの存在下に反応させた後にさらに上記式(A−1)で表される基およびカルボキシル基を有する化合物(以下、「特定カルボン酸」という。)と反応させる方法(製造法3)、もしくは
加水分解・縮合した後にさらに特定カルボン酸と反応させる方法(製造法4)
によって製造することができる。
上記シラン化合物(a2−1)および(a2−2)は、それぞれ、上記式(A−1)で表される基を有さないことが好ましく、この場合にはシラン化合物(a2−1)および(a2−2)を合わせた集合はシラン化合物(a2)の範囲と一致する。
上記シラン化合物(a1)としては、下記式(a1−1)
【0016】
【化4】

【0017】
(式(a1−1)中のn1、n2およびRは、それぞれ、上記式(A−1)中のn1、n2およびRと同義であり、nは1〜3の整数であり、Rはフェニル基もしくは炭素数1〜12のアルキル基であるか、または炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルフェニル基である。)
で表される化合物を挙げることができる。式(a1−1)中のnは1であることが好ましい。
このようなシラン化合物(a1)の具体例としては、例えばn−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−i−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシシラン、n−ブチルトリ−n−ペンタキシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリ−p−メチルフェノキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ペンチルトリ−i−プロポキシシラン、n−ペンチルトリ−n−ブトキシシシラン、n−ペンチルトリ−sec−ブトキシシシラン、n−ペンチルトリ−n−ペンタキシシラン、n−ペンチルトリ−sec−ブトキシシシラン、n−ペンチルトリフェノキシシラン、n−ペンチルトリ−p−メチルフェノキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリ−n−プロポキシシラン、n−ドデシルトリ−i−プロポキシシラン、n−ドデシルトリ−n−ブトキシシラン、n−ドデシルトリ−sec−ブトキシシランなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0018】
上記シラン化合物(a2−1)としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
上記シラン化合物(a2−2)は、好ましくは上記シラン化合物(a1)およびシラン化合物(a2−1)以外のアルコキシシラン化合物であり、例えば好ましくは下記式(a2−2−1)
(RSi(OR4−m (a2−2−1)
(式(a2−2−1)中、Rは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のフルオロアルキル基もしくはフェニル基であるか、または炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルフェニル基であり、
はフェニル基もしくは炭素数1〜12のアルキル基であるか、または炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルフェニル基であり、
mは0〜3の整数である。)
で表される化合物を挙げることができる。
【0019】
上記式(a2−2−1)で表される化合物の具体例としては、mが0である化合物として例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−sec−プポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシランなどを;
mが1である化合物として例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシシラン、メチルトリ−n−ペントキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリ−p−メチルフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−i−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシシラン、エチルトリ−n−ペンタキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシシラン、エチルトリフェノキシシラン、エチルトリ−p−メチルフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−i−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシシラン、n−プロピルトリ−sec−ブトキシシシラン、n−プロピルトリ−n−ペンタキシシラン、n−プロピルトリ−sec−ブトキシシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリ−p−メチルフェノキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−i−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシランなどを;
【0020】
mが2である化合物として例えばジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジメチル−ジ−i−プロポキシシラン、ジエチル−ジ−i−プロポキシシラン、ジ−n−プロピル−ジ−i−プロポキシシラン、ジ−i−プロピル−ジ−i−プロポキシシラン、ジメチル−ジ−sec−ブトキシシラン、ジエチル−ジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピル−ジ−sec−ブトキシシラン、ジ−i−プロピル−ジ−sec−ブトキシシランなどを;
mが3である化合物として例えばトリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−i−プロピルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−i−プロピルエトキシシラン、トリメチル−n−プロポキシシラン、トリエチル−n−プロポキシシラン、トリ−n−プロピル−n−プロポキシシラン、トリ−i−プロピル−n−プロポキシシラン、トリメチル−i−プロポキシシラン、トリエチル−i−プロポキシシラン、トリ−n−プロピル−i−プロポキシシラン、トリ−i−プロピル−i−プロポキシシラン、トリメチル−sec−ブトキシシシラン、トリエチル−sec−ブトキシシシラン、トリ−n−プロピル−sec−ブトキシシシラン、トリ−i−プロピル−sec−ブトキシシシラン、などを、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
シラン化合物(a2−2)としては、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシランおよびトラエトキシシランよりなる群から選択される1種以上を使用することが好ましく、特にテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランよりなる群から選択される1種以上を使用することが好ましい。
【0021】
本発明における(A)ポリオルガノシロキサンを製造するに際して原料として使用される各シラン化合物の、全シラン化合物に対する使用割合は、(A)ポリオルガノシロキサンの製造方法に応じて以下のとおりである。
(1)(A)ポリオルガノシロキサンの製造を製造法1または2による場合;
シラン化合物(a1):好ましくは1モル%以上、より好ましくは2〜40モル%、さらに好ましくは5〜20モル%
シラン化合物(a2):好ましくは99モル%以下、より好ましくは60〜98モル%、さらに好ましくは80〜95モル%
(2)ポリオルガノシロキサンの製造を製造法3または4による場合;
シラン化合物(a2−1):好ましくは50モル%以上、より好ましくは60〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%
シラン化合物(a2−2):好ましくは50モル%以下、より好ましくは0〜40モル%、さらに好ましくは0〜20モル%
以下、製造法1および3で行われる、シラン化合物をジカルボン酸およびアルコールの存在下に反応させる方法について説明する。
【0022】
ここで使用されるジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、炭素数2〜4のアルキレン基に2つのカルボキシル基が結合してなる化合物、ベンゼンジカルボン酸などであることができる。具体的には例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることが好ましい。特に好ましくはシュウ酸である。
ジカルボン酸の使用割合は、原料として使用するシラン化合物の有するアルコキシル基の合計1モルに対するカルボキシル基の量が、0.2〜2.0モルになる量とすることが好ましく、0.5〜1.5モルになる量とすることがより好ましい。
【0023】
上記アルコールとしては、1級アルコールを好適に使用することができる。その具体例としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。ここで使用されるアルコールとしては、炭素数1〜4の脂肪族1級アルコールであることが好ましく、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−プロパノール、i−ブタノール、sec−ブタノールおよびt−ブタノールよりなる群から選択される1種以上を使用することがより好ましく、特にメタノールおよびエタノールよりなる群から選択される1種以上を使用することが好ましい。
製造法1および3におけるアルコールの使用割合は、反応溶液の全量に占めるシラン化合物およびジカルボン酸の割合が、3〜80重量%となる割合とすることが好ましく、25〜70重量%となる割合とすることがより好ましい。
反応温度は、1〜100℃とすることが好ましく、より好ましくは15〜80℃である。反応時間は0.5〜24時間とすることが好ましく、より好ましくは1〜8時間である。
製造法1および3のシラン化合物の反応においては、上記の如きアルコール以外に他の溶媒は使用しないことが好ましい。
上記の如き製造法においては、シラン化合物とジカルボン酸との反応によって生成した中間体にアルコールが作用することにより、シラン化合物の(共)縮合体であるポリオルガノシロキサンが生成するものと推察される。
【0024】
次に、製造法2および4で行われる、シラン化合物の加水分解・縮合反応について説明する。
この加水分解・縮合反応は、シラン化合物と水とを、好ましくは触媒の存在下に、好ましくは適当な有機溶媒中で、反応させることにより行うことができる。
ここで使用される水の割合は、原料として使用するシラン化合物の有するアルコキシル基の合計1モルに対する量として、0.5〜2.5モルとすることが好ましい。
上記触媒としては、酸、塩基、金属化合物などを挙げることができる。このような触媒の具体例としては、酸として例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、マレイン酸などを挙げることができる。
塩基としては、無機塩基および有機塩基のいずれをも使用することができ、無機塩基として例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドなどを;
有機塩基として例えばトリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどを、それぞれ挙げることができる。
金属化合物として例えばチタン化合物、ジルコニウム化合物などを挙げることができる。
触媒の使用割合は、原料として使用するシラン化合物の合計100重量部に対して、10重量部以下とすることが好ましく、0.001〜10重量部とすることがより好ましく、さらに0.001〜1重量部とすることが好ましい。
【0025】
上記有機溶媒としては、例えばアルコール、ケトン、アミド、エステルおよびその他の非プロトン性化合物を挙げることができる。上記アルコールとしては、水酸基を1個有するアルコール、水酸基を複数個有するアルコールおよび水酸基を複数個有するアルコールの部分エステルのいずれをも使用することができる。上記ケトンとしては、モノケトンおよびβ−ジケトンを好ましく使用することができる。
このような有機溶媒の具体例としては、水酸基を1個有するアルコールとして例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどを;
水酸基を複数個有するアルコールとして例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどを;
【0026】
水酸基を複数個有するアルコールの部分エステルとして例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどを;
モノケトンとして例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フェンチョンなどを;
上記β−ジケトンとして例えばアセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオンなどを;
アミドとして例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジンなどを;
【0027】
エステルとして例えばジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどを;
その他の非プロトン性溶媒として例えばアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N,N’,N’−テトラエチルスルファミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルモルホロン、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−メチル−Δ3−ピロリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メチルイミダゾール、N−メチル−4−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノンなどを、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0028】
有機溶媒の使用割合としては、反応溶液中の有機溶媒以外の成分の合計重量が反応溶液の全量に占める割合として、1〜90重量%となる割合とすることが好ましく、10〜70重量%となる割合とすることがより好ましい。
シラン化合物の加水分解・縮合反応に際して添加される水は、原料であるシラン化合物中にまたはシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に、断続的にまたは連続的に添加することができる。
触媒は、原料であるシラン化合物中またはシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に予め添加しておいてもよく、あるいは添加される水中に溶解または分散させておいてもよい。
反応温度は、1〜100℃とすることが好ましく、より好ましくは15〜80℃である。反応時間は0.5〜24時間とすることが好ましく、より好ましくは1〜8時間である。
【0029】
以上のような手段により、製造法1および2においては、本発明における重合体組成物に含有される(A)ポリオルガノシロキサンが直接得られ;
一方、製造法3および4においては、(A)ポリオルガノシロキサンの前駆体であるエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンが得られる。製造法3および4においては、このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンをさらに特定カルボン酸と反応させることにより、本発明における重合体組成物に含有される(A)ポリオルガノシロキサンを得ることができる。
ここで使用される特定カルボン酸は、上記式(A−1)で表される基およびカルボキシル基を有する化合物である。特定カルボン酸としては、例えば下記式(C−1)
【0030】
【化5】

【0031】
(式(C−1)中のn1、n2およびRは、それぞれ、上記式(A−1)中のn1、n2およびRと同義である。)
で表される化合物を挙げることができる。上記式(C−1)で表される化合物の具体例としては、例えば吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、4−(n−ペンチル)安息香酸、4−(n−ヘキシル)安息香酸、4−(n−ヘプチル)安息香酸、4−(n−オクチル)安息香酸、4−(n−ノニル)安息香酸、4−(n−デシル)安息香酸、4−(n−ドデシル)安息香酸、4−(n−オクタデシル)安息香酸、4−(4−ペンチル−シクロヘキシル)−安息香酸、4−(4−ヘプチル−シクロヘキシル)−安息香酸などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとの反応に使用される特定カルボン酸の使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A)の前駆体の有するエポキシ基1モルに対して、5〜50モルとすることが好ましく、10〜40モルとすることがより好ましい。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと特定カルボン酸との反応は、適当な触媒の存在下に、好ましくは適当な有機溶媒中で実施することができる。
ここで使用される触媒としては、有機塩基を使用することができるほか、エポキシ化合物とカルボン酸との反応を促進するいわゆる硬化促進剤として公知の化合物を用いることができる。
【0032】
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンなどを挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;および
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましく、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0033】
上記硬化促進剤としては、例えばベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミンの如き3級アミン;
2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物の如きイミダゾール化合物;ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニルの如き有機リン化合物;
【0034】
ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロリド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロミド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロミド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロミド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロミド、テトラフェニルフォスフォニウムブロミド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨージド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウム、o,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレートの如き4級フォスフォニウム塩;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、その有機酸塩の如きジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体の如き有機金属化合物;
テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリドの如き4級アンモニウム塩;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;
塩化亜鉛、塩化第二錫の如き金属ハロゲン化合物などのほか、
潜在性硬化促進剤を挙げることができる。この潜在性硬化促進剤としては、例えばジシアンジアミドまたはアミンとエポキシ樹脂との付加物などのアミン付加型促進剤などの高融点分散型潜在性硬化促進剤;
前記イミダゾール化合物、有機リン化合物、4級フォスフォニウム塩などの硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩などの高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤などを挙げることができる。
【0035】
これらのうち、好ましくはテトラエチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリドの如き4級アンモニウム塩である。
触媒は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン100重量部に対して好ましくは100重量部以下であり、より好ましくは0.01〜100重量部、さらに好ましくは0.1〜20重量部の割合で使用される。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、特定カルボン酸との反応に際して使用される有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミド化合物、アルコール化合物などを挙げることができる。これらのうち、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物が、原料および生成物の溶解性ならびに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の合計重量が溶液の全重量に占める割合)が、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは5〜50重量%となる量で使用される。
反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間、より好ましくは0.5〜20時間である。
製造法1〜4のいずれかの方法によって上記のようにして得られた(A)ポリオルガノシロキサンは、公知の適当な方法によって精製してから重合体組成物の調整に供することが好ましい。
【0036】
[(B)重合性不飽和化合物]
本発明において用いられる(B)重合性不飽和化合物は、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基であり、好ましくは分子中に、下記式(B−II)
【0037】
【化1】

【0038】
(式(B−II)中、Rは水素原子またはメチル基であり、YおよびYは、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子である。)
で表される1価の基の少なくとも2個を有する化合物(B−1)を含む。
化合物(B−1)における上記式(B−II)で表される1価の基の数は、2個であることが好ましい。上記式(B−II)におけるYとしては、酸素原子であることが好ましい。
化合物(B−1)は、分子中に下記式(B−I)
−X−Y−X− (B−I)
(式(B−I)中、XおよびXは、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基または1,4−シクロへキシレン基であり、Yは単結合、炭素数1〜4の2価の炭化水素基、酸素原子、硫黄原子または−COO−であり、ただし上記XおよびXは1個または複数個の炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、フッ素原子またはシアノ基で置換されていてもよい。)
で表される2価の基で表される2価の基の少なくとも1個をさらに含むものであることが好ましい。
上記式(B−I)における炭素数1〜4の2価の炭化水素基としては、例えばメチレン基、ジメチルメチレン基などを挙げることができる。上記式(B−I)で表される2価の基としては、例えば下記式(B−I−1)〜(B−I−6)
【0039】
【化6】

【0040】
のそれぞれで表される基などを挙げることができる。上記式(B−I−1)〜(B−I−6)におけるベンゼン環およびシクロヘキサン環は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、フッ素原子またはシアノ基で置換されていてもよい。
本発明において用いられる化合物(B−1)としては、
ビフェニル構造を有するジ(メタ)アクリレート(上記式(B−I)で表される2価の基が上記式(B−I−1)で表される基であり、上記式(B−II)におけるYおよびYが、それぞれ、酸素原子である。)、
フェニル−シクロヘキシル構造を有するジ(メタ)アクリレート(上記式(B−I)で表される2価の基が上記式(B−I−2)で表される基であり、上記式(B−II)におけるYおよびYが、それぞれ、酸素原子である。)、
2,2−ジフェニルプロパン構造を有するジ(メタ)アクリレート(上記式(B−I)で表される2価の基が上記式(B−I−3)で表される基であり、上記式(B−II)におけるYおよびYが、それぞれ、酸素原子である。)、
ジフェニルメタン構造を有するジ(メタ)アクリレート(上記式(B−I)で表される2価の基が上記式(B−I−4)で表される基であり、上記式(B−II)におけるYおよびYが、それぞれ、酸素原子である。)、
ジフェニルチオエーテル構造を有するジ−チオ(メタ)アクリレート(上記式(B−I)で表される2価の基が上記式(B−I−5)で表される基であり、上記式(B−II)におけるYが酸素原子であり、Yが硫黄原子である。)および
その他の化合物(B−1)
を挙げることができる。
【0041】
これらの具体例としては、ビフェニル構造を有するジ(メタ)アクリレートとして、例えば4’−アクリロイロキシ−ビフェニル−4−イル−アクリレート、
4’−メタクリロイロキシ−ビフェニル−4−イル−メタアクリレート、
2−[4’−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−ビフェニル−4−イロキシ]−エチルアクリレート、
2−[4’−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−ビフェニル−4−イロキシ]−エチルメタクリレート、
ビスヒドロキシエトキシビフェニルジアクリレート、
ビスヒドロキシエトキシビフェニルジメタクリレート、
2−(2−{4’−[2−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−ビフェニル−4−イロキシ}−エトキシ)−エチルアクリレート、
2−(2−{4’−[2−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−ビフェニル−4−イロキシ}−エトキシ)−エチルメタクリレート、
ビフェニルのエチレンオキシド付加物のジアクリレート、
ビフェニルのエチレンオキシド付加物のジメタクリレート、
ビフェニルのプロピレンオキシド付加物のジアクリレート、
ビフェニルのプロピレンオキシド付加物のジメタクリレート、
2−(4’−アクリロイロキシ−ビフェニル−4−イロキシ)−エチルアクリレート、
2−(4’−メタクリロイロキシ−ビフェニル−4−イロキシ)−エチルメタクリレートなどを;
【0042】
フェニル−シクロヘキシル構造を有するジ(メタ)アクリレートとして、例えば4−(4−アクリロイロキシ−フェニル)−シクロヘキシルアクリレート、
4−(4−メタクリロイロキシ−フェニル)−シクロヘキシルメタクリレート、
2−{4−[4−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−フェニル]−シクロヘキシロキシ}−エチルアクリレート、
2−{4−[4−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−フェニル]−シクロヘキシロキシ}−エチルメタクリレート、
2−[2−(4−{4−[2−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−シクロヘキシロキシ)−エトキシ]−エチルアクリレート、
2−[2−(4−{4−[2−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−シクロヘキシロキシ)−エトキシ]−エチルメタクリレートなどを;
【0043】
2,2−ジフェニルプロパン構造を有するジ(メタ)アクリレートとして、例えば下記式
【0044】
【化8】

【0045】
(上式中、複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基であり、
複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基であり、
複数存在するnは、それぞれ独立に、0〜5の整数である。)
で表される化合物、例えば4−[1−(4−アクリロイロキシ−フェニル)−1−メチル−エチル]−フェニルアクリレート、
4−[1−(4−メタクリロイロキシ−フェニル)−1−メチル−エチル]−フェニルメタクリレート、
2−(4−{1−[4−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−エチルアクリレート、
2−(4−{1−[4−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−エチルメタクリレート、
ビスヒドロキシエトキシ−ビスフェノールAジアクリレート、
ビスヒドロキシエトキシ−ビスフェノールAジメタクリレート、
2−{2−[4−(1−{4−[2−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ]−エトキシ}−エチルアクリレート、
2−{2−[4−(1−{4−[2−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ]−エトキシ}−エチルメタクリレート、
ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジアクリレート、
ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジメタクリレート、
ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジアクリレート、
ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジメタクリレート、
【0046】
2−(4−{1−[4−(2−アクリロイロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−1−メチル−エチルアクリレート、
2−(4−{1−[4−(2−メタクリロイロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−1−メチル−エチルメタクリレート、
2−{2−[4−(1−{4−[2−(2−アクリロイロキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−フェニル}−1−メチル−1−エチル)−フェノキシ]−1−メチル−エトキシ}−1−メチル−エチルアクリレート、
2−{2−[4−(1−{4−[2−(2−メタクリロイロキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−フェニル}−1−メチル−1−エチル)−フェノキシ]−1−メチル−エトキシ}−1−メチル−エチルメタクリレート、
3−{4−[1−(3−{1−[4−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェニル)−1−メチル−エチルフェノキシ−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、
3−{4−[1−(3−{1−[4−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェニル)−1−メチル−エチルフェノキシ−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート、
3−(4−{1−[4−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3−シクロヘキシル−フェニル]−1−メチル−エチル}−2−シクロヘキシル−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−プロピルアクリレート、
3−(4−{1−[4−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3−シクロヘキシル−フェニル]−1−メチル−エチル}−2−シクロヘキシル−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−プロピルメタクリレート、
3−(5−{1−[6−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−ビフェニル−3−イル]−1−メチル−エチル}−ビフェニル−2−イロキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、
3−(5−{1−[6−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−ビフェニル−3−イル]−1−メチル−エチル}−ビフェニル−2−イロキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート、
【0047】
3−{4−[1−(4−{1−[4−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3−メチル−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェニル)−1−メチル−エチル]−2−メチル−フェノキシ}−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、
3−{4−[1−(4−{1−[4−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3−メチル−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェニル)−1−メチル−エチル]−2−メチル−フェノキシ}−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート、
3−(4−{1−[4−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、
3−(4−{1−[4−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート、
3−[4−(1−{4−[3−(4−{1−[4−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロポキシ]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ]−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、
3−[4−(1−{4−[3−(4−{1−[4−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロポキシ]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ]−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート、
3−{4−[1−(4−{3−[4−(1−{4−[3−(4−{1−[4−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロポキシ]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ]−2−ヒドロキシ−プロポキシ]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ}−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、
3−{4−[1−(4−{3−[4−(1−{4−[3−(4−{1−[4−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロポキシ]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ]−2−ヒドロキシ−プロポキシ]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ}−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート、
1−(2−{4−[1−(4−{2−[2−ヒドロキシ−3−(1−メチレン−アリロキシ)−プロポキシ]−プロポキシ}−フェニル)−1−メチル−エチル]−キシ}−1−メチル−エトキシ)−3−(1−メチレン−アリロキシ)−プロパン−2−オールなどを;
【0048】
ジフェニルメタン構造を有するジ(メタ)アクリレートとして、例えば4−(4−アクリロイロキシ−ベンジル)−フェニルアクリレート、
4−(4−メタクリロイロキシ−ベンジル)−フェニルメタクリレート、
2−{4−[4−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−ベンジル]−フェニル}−エチルアクリレート、
2−{4−[4−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−ベンジル]−フェニル}−エチルメタクリレート、
ビスフェノールFのエチレンオキシド付加物のジアクリレート、
ビスフェノールFのエチレンオキシド付加物のジメタクリレート、
ビスフェノールFのプロピレンオキシド付加物のジアクリレート、
ビスフェノールFのプロピレンオキシド付加物のジメタクリレート、
2−[2−(4−{4−[2−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−ベンジル}−フェノキシ)−エトキシ]−エチルアクリレート、
2−[2−(4−{4−[2−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−ベンジル}−フェノキシ)−エトキシ]−エチルメタクリレート、
2−{4−[4−(2−アクリロイロキシ−プロポキシ)−ベンジル−フェノキシ}−1−メチル−エチルアクリレート、
2−{4−[4−(2−メタクリロイロキシ−プロポキシ)−ベンジル−フェノキシ}−1−メチル−エチルメタクリレート、
2−[2−(4−{4−[2−(2−アクリロイロキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−ベンジル}−フェノキシ)−1−メチル−エトキシ]−1−メチル−エチルエチルアクリレート、
2−[2−(4−{4−[2−(2−メタクリロイロキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−ベンジル}−フェノキシ)−1−メチル−エトキシ]−1−メチル−エチルエチルメタクリレートなどを;
ジフェニルチオエーテル構造を有するジ−チオ(メタ)アクリレートとして、例えば4−(4−チオアクリロイルサルファニル−フェニルサルファニル)−フェニルジチオアクリレート、
4−(4−チオメタクリロイルサルファニル−フェニルサルファニル)−フェニルジチオメタクリレート、
ビス(4−メタクロイルチオフェニル)スルフィドなどを;
その他の化合物(B−1)として、例えば2,5−ビス{4−(3−アクリロイロキシ−プロポキシ)−安息香酸}トルエンなどを、それぞれ挙げることができる。
【0049】
かかる化合物(B−1)は、有機化学の定法を適宜に組み合わせることにより合成することができるほか、市販品として入手することができる。化合物(B−1)の市販品としては、例えばビスヒドロキシエトキシBPジアクリレート、ビスヒドロキシエトキシBis−Aジアクリレート(本州化学工業(株)製);
アロニックスM−208、M−210(東亞合成(株)製);
SR−349、SR−601,SR−602(サートマー社製);
KAYARAD R−712、R−551(日本化薬(株)製);
NKエステルBPE−100、NKエステルBPE−200、NKエステルBPE−500、NKエステルBPE−1300、NKエステルA−BPE−4(新中村化学工業(株)製)、Actilane420(日本シイベルヘグナー(株)製):
ライトエステルBP−2EM、ライトアクリレートBP−4EA、ライトアクリレートBP−4PA、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A(共栄社化学(株)製);
V#540、V#700(大阪有機化学工業(株)製);
FA−321M(日立化成工業(株)製);
MPSMA(住友精化社製);
リポキシVR−77(昭和高分子(株)製)などを挙げることができる。
【0050】
本発明において用いられる化合物(B−1)としては、上記に例示した化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
(B)重合性不飽和化合物としては、化合物(B−1)のみを用いてもよく、化合物(B−1)とその他の不飽和化合物とを併用してもよい。
上記その他の不飽和化合物は、プレチルト角を90°により近付け、これにより本願が所期する効果をより有効に発現させる目的で、本発明における重合体組成物に含有されることができる。このようなその他の不飽和化合物は、好ましくは炭素−炭素二重結合を1個有する化合物であり、より好ましくは炭素−炭素二重結合の1個と上記式(A−1)で表される基とを有する。このようなその他の不飽和化合物の具体例としては、例えばメタクリル酸−5ξ−コレスタン−3−イル、メタクリル酸 4−(4’−フェニル−ビシクロヘキシル−4−イル)フェニルエステルなどを挙げることができる。
本発明において用いられる重合体組成物中における(B)重合性不飽和化合物の使用割合としては、(A)重合体の100重量部に対して、1〜100重量部とすることが好ましく、5〜50重量部とすることがより好ましい。
(B)重合性不飽和化合物として、化合物(B−1)とともにその他の不飽和化合物を使用する場合、その使用割合としては、(B)重合性不飽和化合物の全量に対して80重量%以下とすることが好ましく、50重量%以下とすることがより好ましい。その他の不飽和化合物は、これを(B)重合性不飽和化合物の全量に対して2重量%以上用いることにより、その所期する効果を発現することができる。
【0051】
[その他の成分]
本発明において用いられる重合体組成物は、上記の如き(A)重合体および(B)重合性不飽和化合物を必須の成分とするが、これら以外に本発明の効果を減殺しない範囲でその他の成分を含有していてもよい。ここで使用することのできるその他の成分としては、例えば(A)重合体以外の重合体(以下、「その他の重合体」という。)、エポキシ化合物、光重合開始剤、ラジカル捕捉剤、光安定剤などを挙げることができる。
上記その他の重合体は、得られる重合体組成物の溶液特性ならびに形成される塗膜の電気特性、および得られる液晶表示素子の応答速度のさらなる向上のために使用することができる。このようなその他の重合体は、上記のような(A)重合体以外の重合体であり、例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。その他の重合体としては、これらのうちのポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0052】
上記ポリアミック酸は、例えば特許文献2(特開2010−97188号公報)に記載のテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを使用して、これらを公知の方法により反応させることにより、製造することができる。
上記ポリアミック酸を合成するためには、テトラカルボン酸二無水物として脂環式テトラカルボン酸二無水物、具体的には1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などを使用することが好ましい。
【0053】
上記ポリアミック酸を合成するために使用されるジアミンとしては、液晶分子を配向させる性質を持った基を有するジアミン(以下、「液晶配向性ジアミン」という。)を使用することが好ましく、より好ましくは液晶配向性ジアミンとその他のジアミンとの混合物を使用することである。
上記液晶配向性ジアミンとしては、例えばコレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、下記式
【0054】
【化9】

【0055】
のそれぞれで表される化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
上記その他のジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリンなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
上記ポリアミック酸を合成するために使用されるジアミンは、液晶配向性ジアミンを、全ジアミンに対して、3モル%以上含んでいることが好ましく、4〜80モル%含んでいることがより好ましく、5〜50%含んでいることがさらに好ましく、特に好ましくは10〜40%含んでいることである。
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃において、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.5〜12時間行われる。
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノールおよびその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。
【0056】
上記ポリイミドは、上記のようにして製造されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、またはポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
【0057】
本発明において用いられる重合体組成物がその他の重合体を含有するものである場合、該その他の重合体の使用割合としては、重合体の全量((A)重合体とその他の重合体の合計をいう。以下同じ。)に対して、99重量%以下とすることが好ましく、70〜98重量%とすることがより好ましく、80〜95重量%とすることがさらに好ましい。
【0058】
本発明における重合体組成物がエポキシ化合物を含有することにより、形成される塗膜の基板に対する接着性および耐熱性などをさらに向上することができるほか、得られる液晶表示素子の応答速度がさらに向上することとなり、好ましい。
このようなエポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が好ましく、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミンなどを好ましいものとして挙げることができる。特に好ましいエポキシ化合物は、分子内に2つ以上のN−グリシジル基を有するエポキシ化合物である。
本発明における重合体組成物におけるエポキシ化合物の配合割合は、重合体の合計100重量部に対して、50重量部以下とすることが好ましく、1〜40重量部とすることがより好ましく、特に5〜30重量部とすることが好ましい。
【0059】
上記光重合開始剤としては例えばα−ジケトン、アシロイン、アシロインエーテル、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、キノン化合物、ハロゲン化合物、アシルホスフィンオキシド、有機過酸化物などをあげることができる。これらの具体例としては、α−ジケトンとして例えばベンジル、ジアセチルなどを;
アシロインとして例えばベンゾインなどを;
アシロインエーテルとして例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどを;
ベンゾフェノン化合物として例えばチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、フェニル−(4−p−トリルスルファニル−フェニル)−メタノンなどを;
アセトフェノン化合物として例えばアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、4−(α,α’−ジメトキシアセトキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル−2−モルフォリノ−1−(4−メチルチオフェニル)−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどを;
キノン化合物として例えばアントラキノン、1,4−ナフトキノンなどを;
ハロゲン化合物として例えばフェナシルクロリド、トリブロモメチルフェニルスルホン、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどを;
アシルホスフィンオキシドとして例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどを;
有機過酸化物として例えばジ−t−ブチルペルオキシドなどを、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0060】
光重合開始剤の市販品としては、例えばIRGACURE−124、同−149、同−184、同−369、同−500、同−651、同−819、同−907、同−1000、同−1700、同−1800、同−1850、同−2959、Darocur−1116、同−1173、同−1664、同−2959、同−4043(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製);
KAYACURE−BMS、同−DETX、同−MBP、同−DMBI、同−EPA、同−OA(以上、日本化薬(株)製);
LUCIRIN TPO(BASF社製);
VICURE−10、同−55(以上、STAUFFER社製);
TRIGONALP1(AKZO社製);
SANDORAY 1000(SANDOZ社製);
DEAP(APJOHN社製);
QUANTACURE−PDO、同−ITX、同−EPD(以上、WARD BLEKINSOP社製)などを挙げることができる。
光重合開始剤としては、熱安定性が高いとの観点からベンゾフェノン化合物を使用することが好ましい。
光重合開始剤の使用割合は、(B)重合性不飽和化合物100重量部に対して、30重量部以下とすることが好ましく、0.1〜30重量部とすることがより好ましく、特に0.5〜20重量部とすることが好ましい。
【0061】
上記ラジカル捕捉剤は、基板上に本発明における重合体組成物を塗布して塗膜とする際に好ましく行われる加熱により、(B)重合性不飽和化合物が好ましくない反応を起こすことを回避するために、本発明の液晶配向剤中に含有されることができる。
このようなラジカル捕捉剤の具体例としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、3,3’,3”,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−α,α’,α”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノールなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0062】
これらの市販品としては、(株)ADEKA製のアデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330;
住友化学(株)製のsumilizerGM、sumilizerGS、sumilizerMDP−S、sumilizerBBM−S、sumilizerWX−R、sumilizerGA−80;
チバジャパン(株)製のIRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1098、IRGANOX1135、IRGANOX1330、IRGANOX1726、IRGANOX1425WL、IRGANOX1520L、IRGANOX245、IRGANOX259、IRGANOX3114、IRGANOX565、IRGAMOD295;
(株)エーピーアイコーポレーション製のヨシノックスBHT、ヨシノックスBB、ヨシノックス2246G、ヨシノックス425、ヨシノックス250、ヨシノックス930、ヨシノックスSS、ヨシノックスTT、ヨシノックス917、ヨシノックス314などを挙げることができる。
本発明における重合体組成物中におけるラジカル捕捉剤の使用割合は、(B)重合性不飽和化合物100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下である。
【0063】
[重合体組成物]
本発明において用いられる重合体組成物は、上記の如き(A)重合体および(B)重合性不飽和化合物ならびに任意的に使用されるその他の添加剤を、適当な有機溶媒に溶解した溶液として調製されることが好ましい。
ここで使用することができる有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを挙げることができる。
有機溶媒の使用割合としては、重合体組成物の固形分濃度(重合体組成物中の有機溶媒以外の成分の合計重量が重合体組成物の全重量に占める割合)が1〜15重量%となる割合とすることが好ましく、1.5〜8重量%となる割合とすることがより好ましい。
【0064】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶表示素子の製造方法は、
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、上記の如き重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経ることを特徴とする。
ここで、基板としては例えばフロートガラス、ソーダガラスの如きガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートの如きプラスチックなどからなる透明基板などを用いることができる。
上記導電膜としては、透明導電膜を用いることが好ましく、例えばSnOからなるNESA(登録商標)膜、In−SnOからなるITO膜などを用いることができる。この導電膜は、それぞれ、複数の領域に区画されたパターン状導電膜であることが好ましい。このような導電膜構成とすれば、導電膜間に電圧を印加する際(後述)にこの各領域ごとに異なる電圧を印加することによって各領域ごとに液晶分子のプレチルト角の方向を変えることができ、これにより視野角特性をより広くすることが可能となる。
【0065】
かかる基板の該導電膜上に、重合体組成物を塗布するには、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法によることができる。塗布後、該塗布面を、予備加熱(プレベーク)し、次いで焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40〜120℃において0.1〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120〜300℃、より好ましくは150〜250℃において、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
このようにして形成された塗膜はこれをそのまま次工程の液晶セルの製造に供してもよく、あるいは液晶セルの製造に先んじて必要に応じて塗膜面に対するラビング処理を行ってもよい。このラビング処理は、塗膜面に対して、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより行うことができる。ここで、特許文献1(特開平5−107544号公報)に記載されているように、一旦ラビング処理を行った後に塗膜面の一部にレジスト膜を形成し、さらに先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、領域ごとに異なるラビング方向とすることによって、得られる液晶表示素子の視界特性をさらに改善することが可能である。
次いで、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成する。
ここで使用される液晶分子としては、負の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましく、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶などを用いることができる。液晶分子の層の厚さは、1〜5μmとすることが好ましい。
【0066】
かかる液晶を用いて液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法を挙げることができる。
第一の方法としては、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。あるいは第二の方法として、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
【0067】
その後、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する。
ここで印加する電圧は、例えば5〜50Vの直流または交流とすることができる。
照射する光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザーなどを使用することができる。前記の好ましい波長領域の紫外線は、前記光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。
光の照射量としては、好ましくは1,000J/m以上100,000J/m未満であり、より好ましくは1,000〜50,000J/mである。従来知られているPSAモードの液晶表示素子の製造においては、100,000J/m程度の光を照射することが必要であったが、本発明の方法においては、光照射量を50,000J/m以下、さらに10,000J/m以下とした場合であっても所望の液晶表示素子を得ることができ、液晶表示素子の製造コストの削減に資するほか、強い光の照射に起因する電気特性の低下、長期信頼性の低下を回避することができる。
そして、上記のような処理を施した後の液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示素子を得ることができる。ここで使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板などを挙げることができる。
【実施例】
【0068】
<(A)ポリオルガノシロキサンの合成例>
以下の合成例における重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
合成例A−1(製造法1による合成例)
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、シュウ酸11.3gおよびエタノール24.2gを仕込み、これを攪拌してシュウ酸のエタノール溶液を調製した。次いでこの溶液を窒素雰囲気下、70℃まで加熱した後、ここにシラン化合物として、テトラエトキシシラン12.3gおよびドデシルトリエトキシシラン2.2gからなる混合物を滴下した。滴下終了後、70℃の温度を6時間維持し、その後25℃まで冷却し、次いでブチルセロソルブ40.0gを加えることにより、ポリオルガノシロキサン(A−1)を含有する溶液を調製した。
この溶液に含有されるポリオルガノシロキサン(A−1)の重量平均分子量Mwは12,000であった。
【0069】
合成例A−2(製造法2による合成例)
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル45.2gおよびテトラエトキシシラン18.8g、ドデシルトリエトキシシラン3.3gを仕込み、これを撹拌して、シラン化合物の混合溶液を調製した。次いで、この溶液を60℃まで加熱した後、ここに水8.8gおよびシュウ酸0.1gからなるシュウ酸溶液を滴下した。滴下終了後、溶液温度90℃にて3時間加熱してから室温まで冷却した。次いでここにブチルセロソルブ76.2gを加えることにより、ポリオルガノシロキサン(A−2)を含有する溶液を調製した。
この溶液に含有されるポリオルガノシロキサン(A−2)の重量平均分子量Mwは11,000であった。
【0070】
合成例A−3(製造法4による合成例)
[シラン化合物の加水分解・縮合反応]
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、シラン化合物として2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)246.4、溶媒としてメチルイソブチルケトン1,000gおよび触媒としてトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いでここに、脱イオン水200gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で撹拌しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒および水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを粘調な透明液体として得た。
このポリオルガノシロキサンについて、H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと特定カルボン酸との反応]
500mLの三口フラスコに、上記で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン、溶媒としてメチルイソブチルケトン60.0g、特定カルボン酸として4−(4−ペンチル−シクロヘキシル)−安息香酸82.3g(上記ポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基に対して30モル%に相当する。)および触媒としてUCAT 18X(商品名、サンアプロ(株)製の、エポキシ化合物の硬化促進剤である。)0.10gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た有機層を3回水洗し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶剤を留去することにより、(A)第一の重合体であるポリオルガノシロキサン(A−3)を261.2g得た。このポリオルガノシロキサン(A−3)の重量平均分子量Mwは6,500であった。
【0071】
<他の重合体の合成例>
合成例PI−1
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン43g(0.40モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン52g(0.10モル)をN−メチルピロリドン(NMP)830gに溶解し、60℃において6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,900gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶剤置換(本操作にてイミド化反応に使用したピリジンおよび無水酢酸を系外に除去した。)することにより、イミド化率約50%のポリイミド(PI−1)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は47mPa・sであった。
【0072】
実施例1
<重合体組成物の調製>
(A)ポリオルガノシロキサンとして上記合成例A−1で得たポリオルガノシロキサン(A−1)を含有する溶液に、溶媒としてブチルセロソルブを加え、さらに(B)重合性不飽和化合物として、後述の式(B−1−1)で表される化合物を、上記(A)ポリオルガノシロキサン100重量部に対して15重量部加え、固形分濃度5.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより、重合体組成物を調製した。
<液晶セルの製造>
上記で調製した重合体組成物を用いて、透明電極のパターン(3種類)および紫外線照射量(3水準)を変更して、計9個の液晶セルを製造し、下記のように評価した。
【0073】
[パターンなし透明電極を有する液晶セルの製造]
上記で調製した重合体組成物を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極を有するガラス基板の透明電極面上に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、150℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。
この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.1mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行ない、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
上記の操作を繰り返し行い、パターンなし透明電極を有する液晶セルを3個製造した。そのうちの1個はそのまま後述のプレチルト角の評価に供した。残りの2個の液晶セルについては、それぞれ下記の方法により導電膜間に電圧を印加した状態で光照射した後にプレチルト角および電圧保持率の評価に供した。
上記で得た液晶セルのうちの2個について、それぞれ電極間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外腺照射装置を用いて、紫外線を10,000J/mまたは100,000J/mの照射量にて照射した。なおこの照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。
【0074】
[プレチルト角の評価]
上記で製造した各液晶セルについて、それぞれ非特許文献2(T.J.Scheffer et.al.,J.Appl.Phys.vol.48,p.1783(1977))および非特許文献3(F.Nakano, et.al.,JPN.J.Appl.Phys.vol.19,p.2013(1980))に記載の方法に準拠してHe−Neレーザー光を用いる結晶回転法により測定した液晶分子の基板面からの傾き角の値をプレチルト角とした。
光未照射の液晶セル、照射量10,000J/mの液晶セルおよび照射量100,000J/mの液晶セルのそれぞれのプレチルト角を第1表に示した。
[電圧保持率の評価]
上記で製造した各液晶セルに対し、23℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置としては(株)東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。
照射量10,000J/mの液晶セルおよび照射量10,000J/mの液晶セルのそれぞれの電圧保持率を第1表に示した。
【0075】
[パターニングされた透明電極を有する液晶セルの製造(1)]
上記で調製した重合体組成物を、図1に示したようなスリット状にパターニングされ、複数の領域に区画されたITO電極をそれぞれ有するガラス基板AおよびBの各電極面上に液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、150℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜につき、超純水中で1分間超音波洗浄を行なった後、100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次いで、上記一対の基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
上記の操作を繰り返し行い、パターニングされた透明電極を有する液晶セルを3個製造した。そのうちの1個はそのまま後述の応答速度の評価に供した。残りの2個の液晶セルについては、上記パターンなし透明電極を有する液晶セルの製造におけるのと同様の方法により、導電膜間に電圧を印加した状態で10,000J/mまたは100,000J/mの照射量にて光照射した後に応答速度の評価に供した。
なお、ここで用いた電極のパターンは、PSAモードにおける電極パターンと同種のパターンである。
【0076】
[応答速度の評価]
上記で製造した各液晶セルにつき、先ず電圧を印加せずに可視光ランプを照射して液晶セルを透過した光の輝度をフォトマルチメーターにて測定し、この値を相対透過率0%とした。次に液晶セルの電極間に交流60Vを5秒間印加したときの透過率を上記と同様にして測定し、この値を相対透過率100%とした。
このとき各液晶セルに対して交流60Vを印加したときに、相対透過率が10%から90%に移行するまでの時間を測定し、この時間を応答速度と定義して評価した。
光未照射の液晶セル、照射量10,000J/mの液晶セルおよび照射量100,000J/mの液晶セルのそれぞれの応答速度を第1表に示した。
【0077】
[パターニングされた透明電極を有する液晶セルの製造(2)]
上記で調製した重合体組成物を用い、図2に示したようなフィッシュボーン状にパターニングされたITO電極をそれぞれ有するガラス基板AおよびBを使用したほかは、上記パターニングされた透明電極を有する液晶セルの製造(1)と同様にして、光未照射の液晶セル、照射量10,000J/mの液晶セルおよび照射量100,000J/mの液晶セルを製造し、それぞれ上記と同様にして応答速度の評価に供した。評価結果は第1表に示した。
【0078】
実施例2〜7および9ならびに比較例1および2
上記実施例1において、(A)ポリオルガノシロキサンおよび(B)重合性不飽和化合物の種類および使用量をそれぞれ第1表に記載のとおりとしたほかは、実施例1と同様にして重合体組成物を調製し、これを用いて各種液晶セルを製造して評価した。
なお重合体組成物の調製において、実施例5および6おいては(B)重合性不飽和化合物をそれぞれ2種類ずつ使用し、
実施例7においては、(A)ポリオルガノシロキサンおよび(B)重合性不飽和化合物のほかに、第1表に示した種類および量の光重合開始剤を使用した。
比較例2は、重合体組成物を塗布する際に塗布ハジキが多く発生し、評価可能な液晶セルを製造することができなかった。
評価結果は第1表に示した。
【0079】
実施例8
(A)ポリオルガノシロキサンとして、上記合成例A−1で得たポリオルガノシロキサン(A−1)を含有する溶液に、上記合成例A−3で得たポリオルガノシロキサン(A−3)を、ポリオルガノシロキサン(A−1)90重量部に対して10重量部加えた後、ここに溶媒としてブチロセロソルブを加え、さらに(B)重合性不飽和化合物として、後述の式(B−1−2)においてnが2〜4である化合物の混合物を、(A)ポリオルガノシロキサンの合計100重量部に対して8重量部加え、固形分濃度5.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより、重合体組成物を調製した。
上記で調製した重合体組成物を用いたほかは実施例1と同様にして各種の液晶セルを製造して評価した。
評価結果は第1表に示した。
【0080】
実施例10
他の重合体として上記合成例PI−1で得たポリイミド(PI−1)を含有する溶液を、ポリイミド換算で90重量部に相当する量だけとってNMPで希釈した後、ここに(A)ポリオルガノシロキサンとして上記合成例A−3で得たポリオルガノシロキサン(A−3)10重量部を加え、さらに(B)重合性不飽和化合物として、後述の式(B−1−4)で表される化合物を、重合体の合計100重量部に対して30重量部加え、固形分濃度5.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより、重合体組成物を調製し、これを用いて各種液晶セルを製造して評価した。
評価結果は第1表に示した。
【0081】
実施例11
上記実施例10において、他の重合体および(A)ポリオルガノシロキサンの使用量を、それぞれ第1表に記載のとおりとし、第1表に示した種類および量のエポキシ化合物をさらに用いたほかは、実施例10と同様にして重合体組成物を調製し、これを用いて各種液晶セルを製造して評価した。
評価結果は第1表に示した。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
上記の第1表において、重合体組成物中の各成分の略称は、それぞれ以下の意味である。
[(B)重合性不飽和化合物]
化合物(B−1)
B−1−1:下記式(B−1−1)で表される化合物
B−1−2−1:下記式(B−1−2)において、nが2〜4である化合物の混合物
B−1−2−2:下記式(B−1−2)において、2つのnの合計値の平均が2.6である混合物
B−1−3:下記式(B−1−3)で表される化合物
B−1−4−1:下記式(B−1−4)において、n=3である化合物
B−1−4−2:下記式(B−1−4)において、n=5である化合物
【0085】
【化7】

【0086】
その他の不飽和化合物
B−2−1:メタクリル酸 4−(4’−フェニル−ビシクロヘキシル−4−イル)フェニルエステル
B−2−2:メタクリル酸−5ξ−コレスタン−3−イル
[光重合開始剤]
C−1:フェニル−(4−p−トリルスルファニル−フェニル)−メタノン
〔エポキシ化合物〕
E−1:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン
【符号の説明】
【0087】
1:ITO電極
2:スリット部
3:遮光膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、
(A)ポリオルガノシロキサンおよび
(B)重合性不飽和化合物
を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経ることを特徴とする、液晶表示素子の製造方法。
【請求項2】
上記(B)重合性不飽和化合物が、分子中に、下記式(B−II)
【化1】

(式(B−II)中、Rは水素原子またはメチル基であり、YおよびYは、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子である。)
で表される1価の基の少なくとも2個を有する化合物(B−1)を含むものである、請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項3】
上記化合物(B−1)が、分子中に、下記式(B−I)
−X−Y−X− (B−I)
(式(B−I)中、XおよびXは、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基または1,4−シクロへキシレン基であり、Yは単結合、炭素数1〜4の2価の炭化水素基、酸素原子、硫黄原子または−COO−であり、ただし上記XおよびXは1個または複数個の炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、フッ素原子またはシアノ基で置換されていてもよい。)
で表される2価の基の少なくとも1個をさらに含むものである、請求項2に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項4】
前記(A)ポリオルガノシロキサンが、下記式(A−1)
【化2】

(式(A−1)中、n1は0〜2の整数であり、
n2は0または1であり、
n1+n2が2以上のときRは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、
n1+n2が0または1のときRはステロイド構造を有する基、炭素数4〜20のアルキル基または炭素数2〜20のフルオロアルキル基である。)
で表される基を有するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項5】
前記化合物(B−1)がビフェニル構造を有するジ(メタ)アクリレート、フェニル−シクロヘキシル構造を有するジ(メタ)アクリレート、2,2−ジフェニルプロパン構造を有するジ(メタ)アクリレート、ジフェニルメタン構造を有するジ(メタ)アクリレートおよびジフェニルチオエーテル構造を有するジ−チオ(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも一種の化合物である、請求項3または4に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項6】
前記(A)ポリオルガノシロキサンが、アルコキシル基もしくはハロゲン原子を有するシラン化合物またはその混合物を、ジカルボン酸およびアルコールの存在下に反応させることによって得られたものである、請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項7】
前記(A)ポリオルガノシロキサンが、アルコキシル基もしくはハロゲン原子を有するシラン化合物またはその混合物を、加水分解・縮合することによって得られたものである、請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項8】
前記重合体組成物が、ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有するものである、請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項9】
前記重合体組成物が、エポキシ化合物をさらに含有するものである、請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項10】
前記導電膜のそれぞれが、複数の領域に区画されたパターン状導電膜である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法によって製造されたことを特徴とする、液晶表示素子。
【請求項12】
(A)ポリオルガノシロキサンおよび(B)重合性不飽和化合物を含有し、そして請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法に使用されることを特徴とする、重合体組成物。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−141576(P2012−141576A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224238(P2011−224238)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】