説明

液晶表示素子

【課題】 プラスチックフィルムなど可撓性のある基板の端面から浸入しようとするガスを阻止するため基板端部にガスバリアー部材を設けた液晶表示素子において、ガスバリアー部材の外形のバラツキを製品間で小さくし、作業性も向上させる。
【解決手段】 一方の偏光板17bを他方の偏光板17aおよび基板11a,11bの端部から延出させ、偏光板17aの延出部を支持台として基板11a,11bの端面を覆うようにガスバリアー部材18を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラスチックフィルムなど可撓性のある基板からなる液晶表示素子において、基板の側面から液晶層に浸入しようとするガスを阻止するため基板側面にガスバリアー部材を設けた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルム基板からなる液晶表示素子は、軽量で薄いという性質を活かし携帯電話機の表示パネルとして実用化されたことがある。最近では、割れにくい、曲げられる、平面形状の自由度が高い、という特徴にも注目が集まるようになり様々な応用製品が提案されるようになった。
【0003】
これら可撓性材料は、ガラスと違いガス或いは水蒸気透過性があるため、常温常圧下でガスあるいは水蒸気が透過する。もし仮に可撓性材料だけを使った基板で液晶表示素子を作成すると、ガスが基板を通して液晶内に溶け込み、液晶内に溶け込んだガスが飽和状態に達していると落下等の衝撃により液晶表示素子内に気泡が発生することがある。そこでこれまで基板支持材の表面にガスが透過し難い無機物ないし有機物からなるガスバリアー層を設けていた。ガスバリアー層は、基板の両面に設けられる場合もあるが、製造工程を簡略化させるため基板の片側の面だけに設ける場合もある。長期的な信頼性を重視する場合は両面にガスバリアー層を設けることが多い。
【0004】
ガスバリアー層を有する液晶表示素子は、平面的にはガスの浸入を押さえ込んでいる。しかし基板の切断によって生じた側面(以下端面と称する)は基板支持材がむき出しになっているので、ここから基板内にガスが浸入する。基板の柔軟性を確保するため液晶層側のガスバリアー層は、ガス透過度の高い有機物を使うか、ガス透過率を下げきれていないごく薄い無機材料膜を使ざるを得ない。この結果、長期的には基板端面からガスバリアー層を経由して液晶層にガスが浸入する(例えば文献1)。
【0005】
この対策として文献1に示された従来例1(文献中では実施例1)では、シールを含めた液晶表示素子の側面にエポキシ接着剤を塗布し、基板端面からのガスの浸入を防いでいた。この断面図を図6に示す。液晶表示素子は、図の下から、反射板68、偏光板67、基板61、透明電極62、配向膜63、スペーサ64が混入した液晶層66、配向膜63、透明電極62、基板61、偏光板67が積層している。ここで基板61は、ポリカーボネートフィルムを基板支持材とし、両面にEVA(エチレンと酢酸ビニルの共重合体)とフェノキシ樹脂からなる2層のガスバリアー層を有している。表示素子の側面部では、シール65と2枚の基板61の端面とにエポキシ接着剤69が塗布されている。なお文献1の記述にあわせて基板61は基板支持材とガスバリアー層から成るものとした(以下同様)。
【0006】
文献1で示された従来例2(文献中では実施例4)では、液晶セル全体をエポキシ接着剤に浸潤してから偏光板を貼り付け、基板端面からのガスの浸入を防いでいる。この断面図を図7に示す。従来例1と同じ部材は同じ番号で示す。図から読み取れる従来例1との違いは、偏光板67と基板61の間にもエポキシ接着剤69の層があること、偏光板67が基板61より外側にはみ出している(以下延出と称する)こと、および側面のエポキシ接着剤が左右に盛り上がっていないことである。
【0007】
その他、文献1には側面にガスバリアー部材を設ける例として、偏光板まで含めた液晶表示素子の側面にエポキシ接着剤を塗布する例、基板端面にのみエポキシ接着剤を塗布す
る例などが示されている。
【特許文献1】特開2001−221998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
文献1の従来例1のように側面に接着剤を塗布する方法では、たとえ基板と接着剤の密着力や接着剤の表面張力などを管理しても、接着剤が垂れてしまうため塗布後の断面形状がはっきりしない。このため液晶表示素子の平面形状に関する公差を大きくせざるを得ない。
【0009】
また文献1の従来例2のように液晶セル全体をエポキシ接着剤に浸潤してから偏光板を貼り付ける方法では、偏光板の外形に注意すれば外形公差は小さくでききる。しかし基板表面に粘着物質が存在するため偏光板貼付けなどの組立作業に支障をきたすという課題がある。
【0010】
そこで本発明の目的は、プラスチックフィルムなど可撓性のある基板の端面から浸入しようとするガスを阻止するため基板端部にガスバリアー部材を設けた液晶表示素子において、ガスバリアー部材の外形のバラツキが製品間で小さく、作業性の良い液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、2枚の可撓性を有する基板がシールを介して積層し、その基板とシールから形成された空間に液晶が注入された液晶表示素子において、液晶が注入された面とは反対側の基板面に上側と下側の偏光板を備え、上側の偏光板と下側の偏光板のうち一方の偏光板が他方の偏光板および基板の端部から延出して形成した角部に基板の端面を覆うようにガスバリアー部材を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
また、ガスバリアー部材を角部に塗布したことが好ましい。
【0013】
また、シールの側面と基板の端面とが概ね同一平面上にあることが好ましい。
【0014】
延出した偏光板と基板端面で形成された角部において、延出した偏光板の表面を支持台とし、塗布などの手法で基板端面を覆うようにガスバリアー部材を設ける。このときガスバリアー部材が偏光板の延出部からはみ出すことはない。なおガスバリアー部材の形状は表面張力と分量によって上に凸か下に凸の曲面を形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、偏光板の延出幅で平面的な最大外形が決まるので、偏光板の外形に注意を払うだけで製品間の外形のバラツキを小さくできる。さらに偏光板の延出部表面を支えとして基板端面にガスバリアー部材を配設すればよいので作業性が良い。
【0016】
基板間のギャップ、ないしシールの厚さは数μm〜十数μm程度である。このため基板端面をガスバリアー部材で覆うと、自然にシール周辺部もガスバリアー部材で覆われてしまう。基板端部とシールまで間に僅かながらでも距離があり、完全にガスバリアー部材とシール側面とが接するようにしようとする場合、基板とシールで形成される空間にガスバリアー部材を浸み込ませる。このとき一定の待ち時間と粘性の調節が必要となる。シールの側面と基板の端面とが概ね同一平面上にあれば、前述の浸み込ませるための時間が不要となるだけでなく粘度管理も緩やかになるので作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また縮尺は適宜変更している。
(第1実施形態)
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係り、ガスバリアー部材を配設する前の液晶表示素子を示す斜視図である。図1において角部を説明する。偏光板17bの上に、下側の基板11b、上側の基板11a、上側の偏光板17aが積層している。平面的には、基板11a、11bと偏光板17aは大きさが等しく、偏光板17bが大きくなっている。このため基板11a、11bと偏光板17aの端面が揃い、偏光板17bはこれらの端面から延出する。この端面と偏光板17bの表面から形成される領域が角部である。
【0019】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る液晶表示素子を示す断面図である。図2においてまず部材の積層構造を説明する。図の下側では、偏光板17b、下側の基板支持材11、下側のガスバリアー層18、下側の透明電極12、下側の配向膜13が積層している。同様に図の上側では、上側の配向膜13、上側の透明電極12、上側のガスバリアー層18、上側の基板支持材11、偏光板17aが積層している。上下の基板支持材11とガスバリアー層18の積層物が上下の基板11a,11bである。上下の基板11a,11b間とシール15から形成された空間に液晶が注入されている。この空間にあるスペーサ14と液晶で液晶層16を形成する。
【0020】
上下の偏光板17a,17bは厚さが100μmである。基板支持材11は厚さが100μmのポリカーボネイトからなり、ガスバリアー層18は厚さが0.03μmの酸化シリコンSiOxからなる。透明電極12は厚さが0.03μmのITOからなり、配向膜13は厚さが0.05μmのポリイミドからなる。シール15は幅が1mmでエポキシ樹脂からなり、液晶層16の厚さは5μmである。
【0021】
次にガスバリアー部材19に関わる構造を説明する。偏光板17bは基板11bから1.0mm延出している。偏光板17aの端面と上下の基板11a、11bの端面と偏光板17bの表面で形成された角部にエポキシ樹脂からなるガスバリアー部材19が塗布されている。ガスバリアー部材19は、底辺が偏光板17bの延出部と一致し、偏光板17aと上下の基板11a、11bの端面を覆っている。またシール15の側面は、基板11a、11bの端面と直線上に並んでガスバリアー部材19と接している。これは基板11a、11bの端面とシール15の側面が同一平面上にあることを示している。ガスバリアー部材の斜辺は表面張力により曲線を描くが、図では直線で示している。
【0022】
図3は、本発明の第1の実施形態に係り、電極取り出し部が分かるように描いた液晶表示素子を示す平面図(a)とその断面図(b)、および要部断面図(c)である。図3において外部回路との接続状況と、実物と相似したガスバリアー部材の状況とを説明する。
【0023】
図3(a)において、駆動信号は液晶表示素子に柔軟性のある回路基板32(以下FPCと称する)を介して伝達される。このFPC32の下面の配線電極(図示せず)は、下側の基板11b上に形成され、上側の基板11aの切り欠いた部分(以下電極取り出し部と称する)から露出した透明電極(図示せず)と異方性導電シート(図示せず)を介して接着している。電極取り出し部において、上側の偏光板17aも同じ形状に切り欠いており、シール15にも凹部がある。下側の偏光板17bは下側の基板11bから外側に延出している。なお説明のためガスバリアー部材塗布前の状態を描いたのでガスバリアー部材19とFPC32の保護部材は図示していない。
【0024】
図3(b)は図3(a)の線分A−Bに沿った断面図である。なおガスバリアー部材1
9とFPC32の保護部材31の塗布後を示している。図の下側から、偏光板17b、下基板11b、液晶層16、基板11a、偏光板17aが積層していることと、左端におけるガスバリアー部材19の塗布情況は図3で説明したとおりである。図の右側の電極取り出し部では、偏光板17aと基板11aの端面と、シール15と基板11bの露出面とFPC32の端部(および裏面の一部)からなる空間にガスバリアー部材19が塗布されている。FPC32を接着した後、周辺部にガスバリアー部材19を塗布する際に電極取り出し部にもガスバリアー部材を塗布した。FPC32の下面と基板11bの端面と偏光板17の延出部(および端面)からなる空間にしみ込むようにFPC32の保護部材31が塗布されている。この保護部材31はFPC配線の腐食と断線の防止に加え、基板11bのガスバリアーも兼ねている。
【0025】
図3(c)は図3(b)の左端を実物と相似するように描いた要部断面図である。偏光板17aと基板11a,11bの積層体の厚さは概ね0.6mmであり、偏光板17bの延出幅は1.0mmである。ガスバリアー部材19は下に凸となる曲線を描いている。
【0026】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る液晶表示素子を使った装置の断面図である。シャーシの底面から観察者側に向かって、偏光板17a、基板11a、基板11b、偏光板17bが積層している。シール、液晶層等は図示していない。このように表裏を反転したことでガスバリアー材料19は偏光板17bによって遮蔽され視認されにくくなる。液晶素子の表面とシャーシの上面とを一致させ装置の薄型化を図ろうとするときなど、ガスバリアー部材19が偏光板17bに完全に遮蔽されるので、偏光板17bの外形加工精度に注意するだけでデザイン性の向上が図れる。
(第2実施形態)
【0027】
図5は、本発明の他の実施形態に係る液晶表示素子を示す断面図である。図5(a)において第2の実施形態を説明する。図の下から、偏光板54aと、液晶層を挟んで2枚のプラスチック基板が積層した積層物52(以下プラスチックセルと称する)と、偏光板51aが積層している。偏光板54aはプラスチックセル52よりも幅が広い一方、偏光板51aはプラスチックセル52よりも幅が狭い。偏光板54aの延出部を支持台にして、偏光板51aの端面と、プラスチックセル52の端面(および表面の一部)とを覆うようにガスバリアー部材53aが塗布されている。プラスチックセル52の上側(偏光板51a側)の角でも十分なガスバリアー部材53aの厚み(横方向)を確保するため、ガスバリアー部材53aの断面を上に凸な曲線とした。
(第3実施形態)
【0028】
図5(b)において第3の実施形態を説明する。図の下から、偏光板54b、プラスチックセル52、偏光板51bが積層している。偏光板51bはプラスチックセル52よりわずかに幅が広く、偏光板54bは偏光板51bよりも幅が広い。偏光板54bの延出部を支持台にして、偏光板51bの端面(および底面)と、プラスチックセル52の端面とを覆うようにガスバリアー部材53bが塗布されている。偏光板51bの延出によりプラスチックセル52の上側(偏光板51b側)の角でも十分なガスバリアー部材の厚み(横方向)が確保できる。
(第4実施形態)
【0029】
図5(c)において第4の実施形態を説明する。図の下から、偏光板54c、プラスチックセル52、偏光板51cが積層している。偏光板51cは図の右側でプラスチックセル52から延出し、偏光板54cは図の左側でプラスチックセル52から延出している。図の右側では偏光板51cの延出部を支持台にして、プラスチックセル52の端面と偏光板54cの端面を覆うようにガスバリアー部材53cが塗布されている。図の左側では偏光板54cの延出部を支持台にして、プラスチックセル52の端面と偏光板51cの端面
を覆うようにガスバリアー部材53cが塗布されている。液晶表示素子の辺によって延出させる偏光板を変えることでシャーシに組み込む際の自由度を広げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る液晶表示素子を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る液晶表示素子を示す平面図(a)と その断面図(b)、および要部断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る液晶表示素子を使った装置の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る液晶表示素子を示す断面図である。
【図6】従来例1の断面図である。
【図7】従来例2の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
11…基板支持材、11a,11b,61…基板、12,62…透明電極、13,63…配向膜、14,64…スペーサ、15,65…シール、16,66…液晶層、17a,17b,51a,51b,51c,54a,54b,54c,67…偏光板、18…ガスバリアー層、19,53a,69…ガスバリアー部材、52…プラスチックセル、68…反射板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の可撓性を有する基板がシールを介して積層し、該基板と該シールから形成された空間に液晶を注入した液晶表示素子において、前記液晶を注入した面とは反対側の基板面にそれぞれ偏光板を備え、一方の偏光板が他方の偏光板および前記基板の端部から延出し、該偏光板の延出部と該基板の端面とで形成した角部に該端面を覆うようにガスバリアー部材を設けたことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
前記ガスバリアー部材を前記角部に塗布したことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記シールの側面と前記基板の端面とが概ね同一平面上にあることを特徴とする請求項1ないし2に記載の液晶表示素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−242193(P2008−242193A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84159(P2007−84159)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】