説明

液晶表示装置の製造方法

【課題】基板の薄型化と強度向上とを両立することのできる、液晶表示装置の製造方法を
提供する。
【解決手段】第1基板10第2基板20との間に液晶層を挟持する液晶表示装置の製造方
法である。複数の第1基板10を含む第1母材基板1と、複数の第2基板20を含む第2
母材基板2と、を貼り合せる。貼り合わせた第1母材基板1及び第2母材基板2の表面を
薄型加工する。第1母材基板1、及び第2母材基板2のエッチング処理面に、薄膜応力×
膜厚が50Pa・m以上となる圧縮応力を有する保護膜15をそれぞれ形成する。そして
、保護膜15が形成された第1母材基板1、及び第2母材基板2をスクライブして、第1
基板10及び第2基板20における貼り合わせ構造を有する液晶パネル毎に個片化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、TFT基板と対向基板との間に液晶層を挟持したものであり、ノート
パソコンやカーナビゲーション等の様々な電子機器に用いられている。下記の特許文献1
には、コーティングしたガラス基板上に半導体層を形成することでTFT基板のガラス溶
出に起因するトランジスタ特性の低下を防止した液晶表示装置が開示されている。このよ
うな液晶表示装置は、ガラスからなる母材基板を貼り合わせた後、スクライブにより個片
化(分断)することで製造される。
【0003】
ところで、液晶表示装置は、その小型化、及び軽量化を図るべく、上記ガラス基板を薄
くしたいとの要望がある。しかしながら、液晶表示装置は、その製造工程上、貼り合せ工
程前にガラス基板を薄く加工すると、TFT形成時や貼り合せ時における基板の取り扱い
が難しくなってしまう。そこで、貼り合せ後に、機械的な研磨やケミカルエッチングを用
いてガラス基板を薄くすることが通常行われている。
【特許文献1】特開2001−356330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載のように、TFT基板を構成するガラス基板に
コーティング膜が形成されていると、機械的な研磨によりコーティング膜がなくなってし
まったり、ケミカルエッチングを行うことができず、基板を薄型加工するのが困難となる
。また、対向基板にはコーティング膜が形成されていないため、スクライブ工程、或いは
パネルの製造工程でキズがつきやすく、このキズを起因としてパネルに割れが生じ易くな
り、結果的にパネルの強度を低下させる可能性がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、基板の薄型化と強度向上とを
両立することのできる、液晶表示装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の液晶表示装置の製造方法は、第1基板と第2基板
との間に液晶層を挟持する液晶表示装置の製造方法において、複数の前記第1基板を含む
第1母材基板と、複数の前記第2基板を含む第2母材基板と、を貼り合せる工程と、貼り
合わせた前記第1母材基板及び第2母材基板の表面を薄型加工する工程と、前記第1母材
基板、及び第2母材基板のエッチング処理面に、薄膜応力×膜厚が50Pa・m以上とな
る圧縮応力を有する保護膜をそれぞれ形成する工程と、該保護膜が形成された前記第1母
材基板、及び第2母材基板を分断して、前記第1基板及び前記第2基板における貼り合わ
せ構造を有する液晶パネル毎に個片化する工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の液晶表示装置の製造方法によれば、例えばケミカルエッチング等により薄型化
した第1、第2母材基板の表面に保護膜が形成されるので、分断工程や液晶パネル製造時
に母材基板の表面にキズを付き難くすることができる。また、保護膜は所定の圧縮力を有
するため、保護膜にキズがついた場合でもキズの進展が抑制されて、保護膜に生じたキズ
を基点として液晶パネルが割れるといった不具合を防止できる。したがって、薄型化を実
現しつつ機械的強度を向上させることができる。
【0008】
また、上記液晶表示装置においては、前記保護膜が多層膜で構成する場合、前記多層膜
における少なくとも最外層が圧縮応力を有するのが好ましい。
この構成によれば、多層膜構造からなる保護膜に対しても本発明が適用可能となり、機
械的強度を向上させることができる。
【0009】
また、上記液晶表示装置においては、前記保護膜の形成材料として、導電性材料を用い
るのが好ましい。
この構成によれば、保護膜が導電性を有するため、外部からの静電気を放電させること
ができ、パネル内部に静電気の影響を及ぶことを防止でき、静電気耐性を向上させること
ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にか
かる発明を限定するものではない。
はじめに、本発明に係る液晶表示装置の製造方法について説明するに先立ち、本方法に
より製造した液晶表示装置の構成について説明する。
【0011】
(液晶表示装置)
本実施形態により製造された液晶表示装置は、液晶に対して基板面方向の電界(横電界
)を作用させ、配向を制御することにより画像表示を行う横電界方式のうち、FFS(Fr
inge Field Switching)方式と呼ばれる方式を採用した液晶表示装置である。
本実施形態の液晶表示装置は、基板上にカラーフィルタを具備したカラー液晶表示装置
であり、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色光を出射する3個のサブ画素で1個の画素
を構成するものとなっている。したがって表示を構成する最小単位となる表示領域を「サ
ブ画素領域」と称し、一組(R,G,B)のサブ画素から構成される表示領域を「画素領
域」と称する。
【0012】
図1は、本実施形態の液晶表示装置を構成するマトリクス状に形成された複数のサブ画
素領域の回路構成図である。図2(a)は液晶表示装置100の任意の1サブ画素領域に
おける平面構成図、図2(b)は(a)図における光学軸配置を示す図である。図3は図
2(a)のA−A'線に沿う部分断面構成図である。
【0013】
なお、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、
各層や各部材毎に縮尺を異ならせて表示している。
【0014】
本実施形態の液晶表示装置100は、図3に示すように、互いに対向して配置されたT
FTアレイ基板(第1基板)10と対向基板(第2基板)20と、これらの基板10,2
0間に挟持された液晶層50とを備え、TFTアレイ基板10の外面側にバックライト9
0を配設してなる半透過反射型の液晶表示装置である。
【0015】
図1に示すように、液晶表示装置100の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成
された複数のサブ画素領域には、それぞれ画素電極9と、画素電極9に電気的に接続され
スイッチング制御するTFT30とが形成されており、データ線駆動回路101から延び
るデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線駆動回路10
1は、画像信号S1、S2、…、Snをデータ線6aを介して各画素に供給する。画像信
号S1〜Snはこの順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a
同士に対して、グループ毎に供給するようにしても良い。
【0016】
また、TFT30のゲートには、走査線駆動回路102から延びる走査線3aが電気的
に接続されており、走査線駆動回路102から所定のタイミングで走査線3aにパルス的
に供給される走査信号G1、G2、…、Gmが、この順に線順次でTFT30のゲートに
印加されるようになっている。画素電極9は、TFT30のドレインに電気的に接続され
ている。スイッチング素子であるTFT30が走査信号G1、G2、…、Gmの入力によ
り一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号S1、S
2、…、Snが所定のタイミングで画素電極9に書き込まれるようになっている。
【0017】
画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは
、画素電極9と液晶を介して対向する共通電極との間で一定期間保持される。ここで、保
持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9と共通電極との間に形成され
る液晶容量と並列に蓄積容量70が接続されている。蓄積容量70はTFT30のドレイ
ンと容量線3bとの間に設けられている。
【0018】
図2(a)に示すように、液晶表示装置100のサブ画素領域には、平面視略梯子状を
成すY軸方向に長手の画素電極9と、画素電極9と平面的に重なって配置された平面略ベ
タ状の共通電極19とが設けられている。サブ画素領域の図示左上の端部の角部(或いは
各サブ画素領域の間隙)には、TFTアレイ基板10と対向基板20とを所定間隔で離間
した状態に保持するための柱状スペーサ40が立設されている。
【0019】
画素電極9は、平面視した状態で、略矩形枠状の枠体部9aと、枠体部9aの枠内に互
いに平行に設けられるとともに、枠体部9aのY軸方向に延びる部分と両端を接続された
複数本(図示では15本)の帯状電極(枝電極)9cとからなる。
【0020】
共通電極19は、図2(a)に示すサブ画素領域内に部分的に設けられた反射層29を
覆うように形成されている。本実施形態の場合、共通電極19はITO(インジウム錫酸
化物)等の透明導電材料からなる平面ベタ状の導電膜であり、反射層29は、アルミニウ
ムや銀等の光反射性の金属膜や、屈折率の異なる誘電体膜(SiOとTiO等)を積
層した誘電体積層膜(誘電体ミラー)からなるものである。液晶表示装置100は、反射
層29での反射光を散乱させる機能を具備していることが好ましく、かかる構成により反
射表示の視認性を向上させることができる。
【0021】
なお、共通電極19は、本実施形態のように反射層29を覆うように形成されている構
成のほか、透明導電材料からなる透明電極と、光反射性の金属材料からなる反射電極とが
平面的に区画されている構成、すなわち、透過表示領域に対応して配置された透明電極と
反射表示領域に対応して配置された反射電極とを、反射表示領域と透過表示領域との間(
境界部)で互いに電気的に接続した構成も採用することができる。この場合、前記透明電
極と反射電極とが画素電極9との間に電界を生じさせる共通電極を構成する一方、前記反
射電極は当該サブ画素領域の反射層としても機能する。
【0022】
サブ画素領域には、Y軸方向に延びるデータ線6aと、X軸方向に延びる走査線3aと
、走査線3aに隣接して走査線3aと平行に延びる容量線3bとが形成されている。デー
タ線6aと走査線3aとの交差部に対応してその近傍にTFT30が設けられている。T
FT30は走査線3aの平面領域内に部分的に形成されたアモルファスシリコンからなる
半導体層35と、半導体層35と一部平面的に重なって形成されたソース電極6b及びド
レイン電極32を備えている。走査線3aは半導体層35と平面的に重なる位置でTFT
30のゲート電極として機能する。
【0023】
TFT30のソース電極6bは、データ線6aから分岐されて半導体層35上に延びる
平面視略L形に形成されており、ドレイン電極32は、−Y側に延びた位置で平面視略矩
形状の容量電極31と電気的に接続されている。容量電極31上には、画素電極9の枠体
部9aのうち−Y側の端縁部と平面的に重なって配置されている。画素電極9と容量電極
31とは、両者が平面的に重なる位置に形成された画素コンタクトホール45を介して電
気的に接続されている。また容量電極31は容量線3bの平面領域内に配置されており、
当該位置にて厚さ方向で対向する容量電極31と容量線3bとを電極とする蓄積容量70
を構成している。
【0024】
図3に示す断面構造をみると、液晶表示装置100は、互いに対向して配置されたTF
Tアレイ基板(第1基板)10と対向基板(第2基板)20との間に液晶層50を挟持し
た構成を備えており、液晶層50はTFTアレイ基板10と対向基板20とが対向する領
域の縁端に沿って設けられたシール材(図示略)によって前記両基板10,20間に封止
されている。TFTアレイ基板10及び対向基板20は、後述するように大板状のガラス
母材を、シール材を介して貼り合せたものをスクライブにより個片化することでそれぞれ
形成されている。TFTアレイ基板10の背面側(図示下面側)には、導光板91と反射
板92とを具備したバックライト(照明装置)90が設けられている。
【0025】
TFTアレイ基板10は、ガラスや石英、プラスチック等からなる基板本体10Aを基
体としてなり、基板本体10Aの表面側(液晶層50と反対側)には、ITO等の透明導
電材料からなる保護膜15が形成されている。この保護膜15は薄膜応力×膜厚の値が5
0Pa・m以上となる圧縮力を有している。保護膜15は導電性を備えることで、外部か
らの静電気の浸入を遮断するシールド膜として機能する。したがって、液晶表示装置10
0における静電耐性を高めることができる。
【0026】
TFTアレイ基板10は、製造工程時(スクライブ工程等)により表面にキズがつくお
それがある。この場合、TFTアレイ基板10の表面に形成されている保護膜15にキズ
がつく。なお、保護膜15がない場合は、このガラス表面のキズによって、ガラスが曲げ
られてガラス表面に引張り応力が加えられたときにガラスが割れやすくなりガラス強度が
低下する。また、保護膜15の成膜実験の結果、保護膜15が引張り応力を有する場合は
、保護膜15に傷がつくことによって保護膜自体が割れやすくなり、保護膜15の割れが
ガラスへ伝播することによりガラス強度が低下してしまうことがわかった。逆に保護膜1
5が圧縮応力を有する場合は、保護膜が割れにくくなってガラス強度も向上することがわ
かった。本実施例では、保護膜15は薄膜応力×膜厚の値が50Pa・m以上となる圧縮
力を備えているため、キズが生じた場合でも、十分にキズの進展を抑制することができる
。したがって、例えば液晶表示装置100に落下等による衝撃が加わった場合でも、保護
膜15の表面に生じたキズを起因としてTFTアレイ基板10が破損するといったことが
なく、結果的に液晶表示装置100における破壊強度を向上させることができる。
【0027】
また、基板本体10Aの内面側(液晶層50側)には、走査線3a及び容量線3bが形
成されており、走査線3a及び容量線3bを覆ってゲート絶縁膜11が形成されている。
ゲート絶縁膜11上に、アモルファスシリコンの半導体層35が形成されており、半導体
層35に一部乗り上げるようにしてソース電極6bと、ドレイン電極32とが形成されて
いる。ドレイン電極32の図示右側には容量電極31が一体に形成されている。半導体層
35は、ゲート絶縁膜11を介して走査線3aと対向配置されており、当該対向領域で走
査線3aがTFT30のゲート電極を構成するようになっている。容量電極31はゲート
絶縁膜11を介して容量線3bと対向配置されており、容量電極31と容量線3bとが対
向する領域に、ゲート絶縁膜11を誘電体膜とする蓄積容量70が形成されている。
【0028】
半導体層35、ソース電極6b、ドレイン電極32、及び容量電極31を覆って、第1
層間絶縁膜12が形成されており、第1層間絶縁膜12上の一部に反射層29が形成され
ている。反射層29と第1層間絶縁膜12とを覆って、ITO等の透明導電材料からなる
共通電極19が形成されている。
【0029】
したがって、本実施形態の液晶表示装置100は、図2に示した1サブ画素領域内のう
ち、画素電極9を内包する平面領域と、共通電極19が形成された平面領域とが重なった
平面領域のうち反射層29の形成領域を除いた領域が、バックライト90から入射して液
晶層50を透過する光を変調して表示を行う透過表示領域Tとなっている。また、画素電
極9を内包する平面領域と、反射層29が形成された平面領域とが平面的に重なった領域
が、対向基板20の外側から入射して液晶層50を透過する光を反射、変調して表示を行
う反射表示領域Rとなっている。
【0030】
共通電極19を覆ってシリコン酸化物等からなる第2層間絶縁膜13が形成されている
。第2層間絶縁膜13の液晶層側の表面にITO等の透明導電材料からなる画素電極9が
形成されている。また、画素電極9、第2層間絶縁膜13を覆ってポリイミドやシリコン
酸化物等からなる配向膜18が形成されている。
【0031】
第1層間絶縁膜12及び第2層間絶縁膜13を貫通して容量電極31に達する画素コン
タクトホール45が形成されており、この画素コンタクトホール45内に画素電極9の枠
体部9aが一部埋設されることで、画素電極9と容量電極31とが電気的に接続されてい
る。画素コンタクトホール45の形成領域に対応して共通電極19にも開口部が設けられ
ており、この開口部を介して画素電極9と容量電極31とが電気的に接続されるとともに
、共通電極19と画素電極9とが短絡しないような構成になっている。
【0032】
一方、対向基板20は、ガラスや石英、プラスチック等からなる基板本体20Aを基体
としてなり、基板本体20Aの表面側(液晶層50と反対側)には、ITO等の透明導電
材料からなる保護膜15が形成されている。この保護膜15は薄膜応力×膜厚の値が50
Pa・m以上となる圧縮力を有している。保護膜15は導電性を備えることで、対向基板
20の帯電や外部からの静電気の浸入を遮断するシールド膜として機能する。
【0033】
また、同様に対向基板20は、製造工程時(スクライブ工程等)により表面にキズがつ
くおそれがある。この場合、対向基板20の表面に形成されている保護膜15にキズがつ
く。保護膜15はこのようなキズが生じた場合でも、上述したような圧縮力を備えている
ため、キズの進展が防止されたものとなる。すなわち、例えば液晶表示装置100に落下
等による衝撃が加わった時でも、表面に生じたキズを起因として対向基板20を破損させ
難くすることができ、結果的に液晶表示装置100における破壊強度が向上されたものと
することができる。
【0034】
また、基板本体20Aの内面側(液晶層50側)には、マルチギャップ構造を形成する
ためのアクリル等からなる段差形成膜23、カラーフィルタ22が設けられており、カラ
ーフィルタ22上には、ポリイミドやシリコン酸化物等からなる配向膜28が形成されて
いる。
【0035】
カラーフィルタ22は、各サブ画素の表示色に対応する色材層を主体としてなるもので
あるが、当該サブ画素領域内で色度の異なる2以上の領域に区画されていてもよい。例え
ば、透過表示領域Tの平面領域に対応して設けられた第1の色材領域と、反射表示領域R
の平面領域に対応して設けられた第2の色材領域とに個別に設けられた構成が採用できる
。この場合に、第1の色材領域の色度を第2の色材領域の色度より大きくすることで、表
示光がカラーフィルタ22を1回のみ透過する透過表示領域Tと、2回透過する反射表示
領域Rとで表示光の色度が異なってしまうのを防止し、透過表示と反射表示の見映えを揃
えることができる。
【0036】
本実施形態の場合、第1電極である共通電極19と第2電極である画素電極9とを離間
している第2層間絶縁膜13の比誘電率ε=6、膜厚t=0.1μmである。液晶層50
を構成する液晶として、比誘電率がそれぞれε⊥=4.0、ε//=15.3である正の異
方性を持つものを使用した。透過表示領域Tの液晶層厚は3.5μmとし、反射表示領域
Rの液晶層厚は透過表示領域Tにおける液晶層厚の約半分である。また、基板本体10A
、20Aの外面側(保護膜15の外側)には、それぞれ偏光板14,24が配設されてい
る。
【0037】
本実施形態の液晶表示装置における各光学軸の配置は、図2(b)に示すようなものと
なっている。
【0038】
TFTアレイ基板10側の偏光板14の透過軸153と、対向基板20側の偏光板24
の透過軸155とが互いに直交するように配置されており、前記透過軸153がX軸に対
し平行であり、透過軸155がY軸に対し平行である無機に配置されている。また、配向
膜18,28は、透過表示領域T及び平面視で同一方向に(例えばラビング処理によって
)初期的に配向が付与されており、その方向は、図2(b)に示す初期配向方向151で
あり、X軸方向に対して平行である。
【0039】
初期配向方向151は、図2(b)に示す方向に限定されるものではないが、画素電極
9と共通電極19との間に生じる電界の主方向と交差する方向(一致しない方向)とする

【0040】
上記構成を具備した液晶表示装置100は、FFS方式の液晶表示装置であり、TFT
30を介して画素電極9に画像信号(電圧)を印加することで、画素電極9と共通電極1
9との間に基板面方向の電界を生じさせ、かかる電界によって液晶を駆動し、各サブ画素
ごとの透過率/反射率を変化させることで画像表示を行うものとなっている。図2(b)
に示したように、液晶層50を挟持して対向する配向膜18,28は平面視で同一方向に
配向処理されているので、画素電極9に電圧を印加しない状態では、液晶層50を構成す
る液晶分子は、基板10,20間で初期配向方向151に沿って水平に配向した状態とな
っている。この状態において画素電極9と共通電極19との間に電圧を印加すると、画素
電極9と共通電極19と対向電極21との間にそれぞれ電界が形成される。そして、この
電界の作用により、図2(a)に示す帯状電極9cの線幅方向に沿う向きに液晶分子が配
向し、液晶の配向状態の差異に基づく複屈折性を利用した明暗表示が可能になる。
【0041】
液晶表示装置100における基本的動作は上記のようなものであるが、本実施形態に係
る液晶表示装置100は、上述したような圧縮応力を有する保護膜15を備えることで後
述するようにエッチングにより薄型化された液晶パネルの強度が向上されたものとなって
いる。また、保護膜15が導電性を有しているため、外部からの静電気の浸入を遮断する
ことができ、静電気耐性に優れたものとなる。
【0042】
(液晶表示装置の製造方法)
次に、本発明の液晶表示装置の製造方法の一実施形態として、上記液晶表示装置100
を製造する工程について図面を参照しながら説明する。
はじめに、複数のTFTがマトリクス状に形成されてなる上記TFTアレイ基板10を
複数含む大型ガラス基板からなるTFTアレイ基板用母材(第1母材基板)1と、カラー
フィルタ22が形成される上記対向基板20を複数含む大型ガラス基板からなる対向基板
用母材(第2母材基板)2と、を用意する。なお、TFTアレイ基板10及び対向基板2
0は、従来公知の方法により母材1,2上に形成することができる。
【0043】
そして、図4(a)に示すように、上記TFTアレイ基板用母材1及び対向基板用母材
2を、シール材3を介して貼り合わせる。このとき、シール材3には後述の工程により液
晶層を注入するための液晶注入口(不図示)を形成しておく。
【0044】
続いて、図4(b)に示すように、TFTアレイ基板用母材1及び対向基板用母材2を
貼り合わせた貼り合せ構造体5の両面をそれぞれケミカルエッチングすることで上記貼り
合せ構造体5を薄型加工する。ケミカルエッチングとしては、ウエットエッチングを用い
る。ウエットエッチングとしては、スピンエッチング法を採用し、貼り合せ構造体5を回
転させながら、貼り合せ構造体5の表面上にエッチング液を滴下する。このようにして、
貼り合せ構造体5の両面をエッチングすることでTFTアレイ基板用母材1及び対向基板
用母材2を薄型化することができる。このようなケミカルエッチングを行うことで、表面
に生じている細かいキズ等を除去するとともに母材を良好に薄型加工することができる。
【0045】
続いて、図4(c)に示すように、TFTアレイ基板用母材1及び対向基板用母材2の
エッチング処理面にスパッタ法を用いて、導電性を有するITO膜からなる保護膜15を
形成する。なお、保護膜15は、スパッタ法の他に、真空蒸着法、プラズマCVD法、或
いは大気圧プラズマCVD法等を用いることができる。なお、導電性を有する保護膜15
として、ITO膜の他に、SnO、IZO、ZnO、AZO膜を形成することができる

【0046】
保護膜15は、後述するような所定の圧縮応力を有している。このように所定値以上の
圧縮応力を有することで、後述するように貼り合せ構造体5及びこの貼り合せ構造体5を
個片化して形成される液晶パネル100Aの強度が向上されたものとなる。
【0047】
このように貼り合せ構造体5のエッチング処理面に保護膜15を形成した後、図5に示
すようにスクライブブレード150によるスクライブ工程を行い、TFTアレイ基板10
及び対向基板20の貼り合せ構造を有する液晶パネル100A毎に個片化する。
続いて、個片化した各液晶パネル100Aに液晶を注入した後、液晶注入口を封止する
ことで上記液晶表示装置100を製造することができる。
【0048】
以上述べたように、本実施形態に係る液晶表示装置100の製造方法によれば、ケミカ
ルエッチングにより薄型化した貼り合せ構造体5の表面に保護膜15を形成しているので
、スクライブ工程や偏光板形成時等のパネル製造時に表面にキズを付き難くすることがで
きる。また、保護膜15にキズがついた場合においても、保護膜15は所定の圧縮力(膜
応力×膜厚が50Pa・m以上)を有するため、キズの進展を抑制することができ、保護
膜15に生じたキズを基点として液晶パネル100Aが割れるといった不具合を解消でき
る。したがって、液晶表示装置100における薄型化を実現するとともに機械的強度を向
上させることができる。
【0049】
次に、保護膜15が有する圧縮応力の規定方法、及び保護膜15の効果を説明するため
の実験方法について述べる。
ガラス基板(例えば、旭硝子製のAN−100 0.6mm厚)に薄膜(保護膜15)
を形成し、薄膜応力と基板の破壊強度を測定する。薄膜応力は、触針式表面形状測定器を
用い、ガラス基板のそりの曲率半径Rを求める。そして、下式(1)により算出するこ
とができる。なお、式(1)中において、ESはガラス基板のヤング率であり、νsはガ
ラス基板のポアソン比、tはガラス基板の厚さを、tは薄膜の厚さを表す。
ここで、ガラス基板の上面に薄膜を形成した際において、薄膜応力が圧縮応力である場
合、ガラス基板は上に凸となるように反る。本測定においては、薄膜応力が圧縮応力の場
合、上記式(1)の符号を正とし、薄膜応力が引張荷重の場合、上記式(1)の符号を負
とする。
【0050】
【数1】

【0051】
上述の式(1)から算出した薄膜応力と、薄膜の膜厚との積から圧縮応力を規定するこ
とができる。一方、上述の薄膜を形成したガラス基板の貼り合せ構造からなる液晶パネル
に対し、4辺を支持した状態で中央を10mmφ球状先端の鉄棒で押圧することでパネル
が割れたときの荷重を破壊荷重として測定する。
【0052】
このようにして、薄膜が有する応力(膜応力×膜厚から算出)と、液晶パネルとの破壊
荷重(図6中におけるプロットは平均破壊荷重値を示す)との関係を算出した実験結果を
図6のグラフに示す。なお、図6中において、膜応力×膜厚の値が0の場合とは、薄膜が
形成されていない液晶パネル単体の破壊強度を表している。図6に示されるように、膜応
力×膜厚の値が正(すなわち、薄膜が圧縮応力を有する)で大きいほど破壊荷重が大きく
なることが分かる。
【0053】
なお、予めひずみゲージにて荷重値と応力値との関係を求めることで破壊荷重を破壊応
力に換算することができる。
ここで、液晶パネルの破壊応力としては200MPa以上が必要となる。この破壊応力
は、図6に示すグラフにおける破壊荷重170N(膜応力×膜厚が50Pa・m以上)に
相当する。すなわち、上記実施形態のように、保護膜15として膜応力×膜厚が50Pa
・m以上の薄膜を形成すれば所望の破壊強度(200MPa以上)を備えた液晶表示装置
100を製造できることが確認できる。
【0054】
(他の実施形態)
次に、上記液晶表示装置100の他の実施形態に係る構成について説明する。図7は、
本実施形態における液晶表示装置の断面構成を示す図である。本実施形態に係る構成は、
上記実施形態に対し、保護膜が多層膜で構成されている点が異なっており、それ以外の構
成は共通となっている。そのため、同じ構成部材に対しては、同一符号を付し、その詳細
な説明については省略若しくは簡略化する。
【0055】
図7に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置は、保護膜121が多層膜から構成
されている。そして、保護膜121は、少なくとも最外層に圧縮応力を有する膜が形成さ
れている。本実施形態においては、ITO膜から構成される下層121Aと、このITO
膜よりも大きな圧縮応力を有するSiO膜から構成される上層121Bと、の2層構造
により保護膜121が構成される。すなわち、本実施形態においては、下層121Aおよ
び上層121Bのいずれも圧縮応力を有したものとなっている。このような多層構造から
なる保護膜121が形成される場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ること
ができる。
【0056】
これらITO膜、及びSiO膜は、上述の製造方法と同様に、スパッタ法、真空蒸着
法、プラズマCVD法、或いは大気圧プラズマCVD法等により成膜することができる。
よって、上述した製造工程における保護膜の形成工程を多層膜製造工程に置き換えるこ
とで、本実施形態に係る液晶表示装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】液晶表示装置の等価回路を示す図である。
【図2】1サブ画素の平面構成図及び光学配置図である。
【図3】図2のA−A´線に沿う断面構成図である。
【図4】液晶表示装置の製造工程を示すである。
【図5】図4に続く、液晶表示装置の製造工程を示す図である。
【図6】液晶パネルとの破壊荷重との関係を算出した実験結果を示す図である。
【図7】他の実施形態に係る液晶表示装置の1サブ画素の断面構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1…TFTアレイ基板用母材(第1母材基板)、2…対向基板用母材(第2母材基板)、
10…TFTアレイ基板、20…対向基板、50…液晶層、100…液晶表示装置、10
0A…液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板との間に液晶層を挟持する液晶表示装置の製造方法において、
複数の前記第1基板を含む第1母材基板と、複数の前記第2基板を含む第2母材基板と
、を貼り合せる工程と、
貼り合わせた前記第1母材基板及び第2母材基板の表面を薄型加工する工程と、
前記第1母材基板、及び第2母材基板のエッチング処理面に、薄膜応力×膜厚が50P
a・m以上となる圧縮応力を有する保護膜をそれぞれ形成する工程と、
該保護膜が形成された前記第1母材基板、及び第2母材基板を分断して、前記第1基板
及び前記第2基板における貼り合わせ構造を有する液晶パネル毎に個片化する工程と、
を備えることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記保護膜が多層膜で構成する場合、前記多層膜における少なくとも最外層が圧縮応力
を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記保護膜の形成材料として、導電性材料を用いることを特徴とする請求項1又は2に
記載の液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−250990(P2009−250990A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94648(P2008−94648)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】