説明

液晶表示装置及びその製造方法

【課題】小型で狭額縁の液晶表示装置における配向膜をインクジェットによって塗布することを可能とする。
【解決手段】画素電極107を有する表示領域とその周辺領域を有するTFT基板100に、乾燥の速い周辺配向膜109をインクジェットで枠状に塗布し、その後、乾燥は遅いがレベリング効果が優れた表示領域配向膜108をインクジェットで塗布する。表示領域配向膜108は乾燥が遅いが、周辺に形成された周辺配向膜109がストッパーになるので、配向膜の外形を正確に規定することが出来る。これによってシール材20の接着力が配向膜の影響によって低下することを防止することが出来る。対向基板200側も同様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、特に所定の外形に対して、表示領域を大きくした、いわゆる狭額縁にすることが可能な、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板が配置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置はフラットで軽量であることから、色々な分野で用途が広がっている。携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等には、小型の液晶表示装置が広く使用されている。小型の液晶表示装置では、外形を小さく保ったまま、表示領域を大きくしたいという要求が強い。そうすると、表示領域の端部から液晶表示装置の端部までの幅が小さくなり、いわゆる、狭額縁とする必要がある。
【0004】
額縁領域には、TFT基板と対向基板を接着するシール材が形成されている。一方、液晶表示装置の表示領域には、液晶を初期配向させるための配向膜が形成されている。配向膜は、表示領域を確実に覆う必要があるので、配向膜の塗布面積は、表示領域よりも所定の幅大きくしなければならい。一方、配向膜がシール材とTFT基板、あるいは、シール材と対向基板の間に存在すると、シール材の接着の信頼性を損ねる。したがって、配向膜はシール材とはオーバーラップさせないような構成とする必要がある。配向膜とシール材がオーバーラップする場合でもオーバーラップ領域は全面とせずに、部分的にとどめる必要がある。
【0005】
従来は、配向膜の形成は、フレキソ印刷で行われてきた。フレキソ印刷では、焼結前の配向膜の粘度を大きくできるため、配向膜の外形は、正確に制御することが出来る。一方、近年、マーケットは、液晶表示装置に対して多種類のサイズを要求している。フレキソ印刷を用いた場合、サイズごとに印刷の版を製造する必要があり、印刷版の製造コスト、ラインにおける印刷版の交換の工数が問題となっている。
【0006】
配向膜をインクジェットによって形成すれば、多品種、多サイズの液晶表示装置の製造に対応することが出来る。しかし、インクジェットによって配向膜を形成しようとすると、配向膜の粘度を小さくする必要がある。配向膜の粘度が小さいと、配向膜を塗布した後、配向膜が外側に流れ出し、配向膜の外形を正確に制御することが困難になる。
【0007】
特許文献1には、配向膜を形成する下地膜の周辺に凹凸を形成し、配向膜を塗布した後、配向膜が外側に流れ出した場合、この凹凸をストッパーとして使用する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−145461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
「特許文献1」に記載の技術は、配向膜が載っている絶縁膜の周辺、すなわち、シール部付近において、絶縁膜に凹凸を形成する。そして、絶縁膜に凹凸が形成された部分に画素電極と同時に形成されるITO(Indium Tin Oxide)を配置して配向膜が外側に流れ出すことを防止するものである。
【0010】
しかし、この方法は、絶縁膜周辺に形成された凹部に配向膜が充満すると、配向膜はさらに外側に流れ出すという現象を生ずる。ITO膜が絶縁膜周辺の凹部に形成されているが、ITO膜の厚さは、例えば、70nm以下であるために、十分な高さのストッパーとして作用させるのは困難である。
【0011】
また、「特許文献1」の構成は、TFT基板側に形成することは出来るが、対向基板側の膜構成は、TFT基板側とは異なるので、対向基板側には適用できないという問題もある。
【0012】
本発明の課題は、インクジェットによって配向膜を形成する場合に、配向膜が外に流れ出ないようにして、配向膜の外形を正確に制御することによって、信頼性の高い、狭額縁の液晶表示装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0014】
(1)画素電極およびTFTを有する画素がマトリクス状に形成された表示領域と周辺領域を有するTFT基板と、前記TFT基板に対向して、前記TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタが形成された対向基板が周辺のシール部においてシール材を介して接着している液晶表示装置であって、前記TFT基板の前記表示領域には、第1の配向膜が形成され、前記表示領域の外側の周辺領域で、前記第1の配向膜の外側には、第2の配向膜が形成され、前記第2の配向膜は、前記表示領域には形成されておらず、前記第1の配向膜は前記第2の配向膜に接していることを特徴とする液晶表示装置。
【0015】
(2)前記第2の配向膜の厚さは前記第1の配向膜の厚さよりも大きいことを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0016】
(3)前記第2の配向膜は、前記シール材と接していることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0017】
(4)画素電極およびTFTを有する画素がマトリクス状に形成された表示領域と周辺領域を有するTFT基板と、前記TFT基板に対向して、前記TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタが形成された表示領域と周辺領域を有する対向基板が、周辺のシール部においてシール材を介して接着している液晶表示装置であって、前記TFT基板の前記表示領域には、第1の配向膜が形成され、前記表示領域の外側の周辺領域で、前記第1の配向膜の外側には、第2の配向膜が形成され、前記第2の配向膜は、前記表示領域には形成されておらず、前記第1の配向膜は前記第2の配向膜に接しており、前記対向基板の表示領域には第1の配向膜が形成され、前記表示領域の外側の周辺領域で、前記第1の配向膜の外側には、第2の配向膜が形成され、前記第2の配向膜は前記表示領域には形成されておらず、前記第1の配向膜は、前記第2の配向膜に接していることを特徴とする液晶表示装置。
【0018】
(5)前記第2の配向膜の厚さは前記第1の配向膜の厚さよりも大きいことを特徴とする(4)に記載の液晶表示装置。
【0019】
(6)画素電極およびTFTを有する画素がマトリクス状に形成された表示領域と周辺領域を有するTFT基板と、前記TFT基板に対向して、前記TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタが形成された対向基板が周辺のシール部においてシール材を介して接着している液晶表示装置の製造方法であって、前記TFT基板の表示領域の外側の周辺には枠状に第2の配向膜をインクジェットによって塗布し、その後、前記表示領域に前記第2の配向膜よりも乾燥の遅い第1の配向膜をインクジェットによって、前記第2の配向膜と接するように塗布することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【0020】
(7)画素電極およびTFTを有する画素がマトリクス状に形成された表示領域と周辺領域を有するTFT基板と、前記TFT基板に対向して、前記TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタが形成された表示領域と周辺領域を有する対向基板が周辺のシール部においてシール材を介して接着している液晶表示装置の製造方法であって、前記TFT基板の表示領域の外側の周辺には枠状に第2の配向膜をインクジェットによって塗布し、その後、前記TFT基板の表示領域に前記第2の配向膜よりも乾燥の遅い第1の配向膜をインクジェットによって、前記第2の配向膜と接するように塗布し、前記対向基板の表示領域の外側の周辺には枠状に第2の配向膜をインクジェットによって塗布し、その後、前記対向基板の前記表示領域に前記第2の配向膜よりも乾燥の遅い第1の配向膜をインクジェットによって、前記第2の配向膜と接するように塗布し、その後、前記TFT基板と前記対向基板をシール材によって接着することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、配向膜をインクジェットによって形成しても、配向膜の外形を正確に制御することが出来る。したがって、狭額縁の液晶表示装置を信頼性良く、かつ、低コストで製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用される液晶表示装置の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明によるTFT基板の平面図である。
【図4】本発明によるTFT基板の端部の断面図である。
【図5】インクジェットによる配向膜を形成する方法の例である。
【図6】本発明による液晶表示装置の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に実施例によって本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明が適用される製品の例である、携帯電話等に使用される小型の液晶表示装置の平面図である。図1において、TFT基板100の上に対向基板200が配置されている。TFT基板100と対向基板200の間に図示しない液晶層が挟持されている。TFT基板100と対向基板200とは額縁部に形成されたシール材20によって接着している。図1においては、液晶は滴下方式によって封入されるので、封入孔は形成されていない。
【0025】
TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成されており、TFT基板100が対向基板200よりも大きくなっている部分には、液晶表示パネルに電源、映像信号、走査信号等を供給するための端子部150が形成されている。
【0026】
また、端子部150には、走査信号線30、映像信号線40等を駆動するためのICドライバ50が設置されている。ICドライバ50は3つの領域に分かれており、中央には映像信号駆動回路52が設置され、両脇には走査信号駆動回路51が設置されている。
【0027】
図1の表示領域10において、横方向には走査信号線30が延在し、縦方向に配列している。また、縦方向には映像信号線40が延在し、横方向に配列している。走査信号線と映像信号線とで囲まれた領域が画素を構成する。走査信号線30は表示領域10の両側から走査線引出し線31によって、ICドライバ50の走査信号駆動回路51と接続している。映像信号線40とICドライバ50を接続する映像信号線引出し線41は画面下側に集められ、ICドライバ50の中央部に配置されている映像信号駆動回路52と接続する。
【0028】
図1において、表示領域10は図示しない配向膜によって完全に覆われている。配向膜はインクジェットによって形成されている。しかし、後で説明するように、配向膜は、シール材20とはオーバーラップにていないか、オーバーラップした場合でも、一部がオーバーラップするのみで、シール材20の全面とはオーバーラップしていない。そして、配向膜をインクジェットによって形成しているにもかかわらず、表示領域10の端部から液晶表示装置の端部までの距離は、1.5mm程度と、狭額縁を実現している。
【0029】
図2は、図1のA−A断面図である。図2は、TFT基板100に画素電極107が形成され、対向基板200に対向電極204が形成されている、いわゆるTN方式の液晶表示装置の例である。本発明は、TN方式に限らず、TFT基板100側に画素電極と対向電極が形成されているIPS(In Plane Switching)方式等の液晶表示装置についても同様に適用することが出来る。また、図2は、poly−Siが半導体層として多く用いられている、いわゆるトップゲート型のTFTの場合を前提とした構成であるが、a−Siが半導体層として多く用いられている、いわゆるボトムゲート型のTFTの場合にも、本発明を同様に適用することが出来る。
【0030】
図2において、対向基板200には第1下地膜101、第2下地膜102、ゲート絶縁膜103、層間絶縁膜104、無機パッシベーション膜105、平坦化膜を兼ねた有機パッシベーション膜106がこの順に形成されている。第1下地膜101及び第2下地膜102は、ガラス基板から析出してくる不純物が表示領域10における図示しない半導体層を汚染することを防止するためである。ゲート絶縁膜103は図示しないゲート電極と半導体層を絶縁するものであり、層間絶縁膜104はゲート電極あるいは走査線30と、ソース/ドレイン電極あるいは映像信号線40とを絶縁するものである。無機パッシベーション膜105は、表示領域10において、図示しないTFTを保護するものであり、有機パッシベーション膜106は、パッシベーション膜としての機能の他に、TFTあるいは、配線による表面の凹凸を平坦化する機能を有する。
【0031】
平坦になっている有機パッシベーション膜106の上に、表示領域10において画素電極107が形成されている。表示領域10において、画素電極107を覆って、表示領域配向膜108が形成されている。表示領域配向膜108は表示領域10全体を確実に覆っていることが必要である。
【0032】
表示領域10の外側において、有機パッシベーション膜106の上に周辺配向膜109が形成されている。なお、表示領域配向膜108は、表示領域10を確実に覆うために、表示領域10外にも形成されている。周辺配向膜109の役割は、表示領域配向膜108が周辺に広がらないように、ストッパーとなって、配向膜の塗布領域を正確に規定することである。このように、本発明の特徴は、表示領域配向膜108と周辺配向膜109の2種類の配向膜を使用していることである。シール部においては、シール材20が有機パッシベーション膜106の上に直接形成されている。
【0033】
図2において、対向基板200の表示領域10には、カラーフィルタ201とブラックマトリクス202が形成され、表示領域10外には、ブラックマトリクス202が形成されている。カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202を覆って、オーバーコート膜203が形成されている。オーバーコート膜203の役割は、カラーフィルタ201の液晶層250への影響を防止するためと、表面を平坦化することである。
【0034】
オーバーコート膜203の上には全面ベタでITOによる対向電極204が形成されている。そして、表示領域10において、対向電極204を覆って表示領域配向膜108が形成されている。また、表示領域10外において、周辺配向膜109が形成されている。周辺配向膜109の役割は、表示領域配向膜108が周辺に広がらないように、ストッパーとなって、配向膜の塗布領域を正確に規定することである。
【0035】
TFT基板100と対向電極204の間には液晶層250が挟持されている。液晶層250は、TFT基板100と対向電極204の周辺に形成されたシール材20によってシールされている。シール材20は、TFT基板100においては有機パッシベーション膜106と直接接し、対向基板200においては、オーバーコート膜203と直接接しており、通常は、配向膜は間に存在していない。
【0036】
図2において、周辺配向膜109は幅が狭く形成されているが、厚さは表示領域配向膜108の厚さよりも大きい。周辺配向膜109によって、表示領域配向膜108の周辺への広がりを防止し、配向膜がシール材20の下に形成されることを防止している。したがって、本発明のシール部における接着の信頼性は高い。
【0037】
図3は図1におけるTFT基板100のみを取り出した平面図である。図3において、TFT基板100の周辺にはシール材20が形成されている。なお、シール材20は、製造プロセスにおいては、対向基板200に形成される場合が多い。図3は、シール材20が存在する領域を示すものである。シール材20に内接して周辺配向膜109が形成されている。
【0038】
周辺配向膜109はシール材20に内接するように描かれているが、実際には、製造ばらつきによって、周辺配向膜109とシール材20との間にわずかな隙間が形成されたり、周辺配向膜109がシール材20とわずかにオーバーラップしたりする場合がありうる。周辺配向膜109がシール材20とオーバーラップする場合でも、そのオーバーラップ量はわずかなので、シール部の信頼性には影響はほとんど生じない。図3において、表示領域配向膜108が表示領域10全域を覆い、周辺配向膜109に内接している。
【0039】
図4は、図3のB−B断面図である。図4において、TFT基板100における画素電極107より下の有機パッシベーション膜106以下の層は省略されている。図4には、周辺における各寸法の例が示されている。図4において、表示領域10の端部からTFT基板100の端部までの距離w0は1.5mmであり、狭額縁となっている。
【0040】
図4において、TFT基板100の端部からシール材20の端部までの寸法w1は0.2mmである。寸法w1は、マザー基板500から各液晶セルをスクライビングによって分離するときに、必要な寸法である。すなわち、スクライビングラインがシール材20にかかると、各液晶セルを分離することが出来なくなるからである。
【0041】
図4において、シール材20の幅w2は0.7mm程度である。この寸法は、接着の信頼性を保つためである。シール材20に接して周辺配向膜109が形成されている。周辺配向膜109の幅w3は0.2mmである。周辺配向膜109の幅は、小さいほど良いが、インクジェットによって塗布する関係で、0、2mm程度になっている。この幅w3は、周辺配向膜109のインクの乾燥のスピードによって変化させることが出来る。
【0042】
図4において、表示領域10の端部から周辺配向膜109の端部までの距離w4は0.4mmである。言い換えると、表示領域配向膜108の塗布範囲は表示領域10に対して片側で0.4mm程度大きくすることが出来る。表示領域配向膜108を塗布するときは、周辺配向膜109の配向膜の乾燥がすでに進んでおり、固化しているので、周辺配向膜109が表示領域配向膜108に対するストッパーとしての役割を果たすことが出来る。
【0043】
本発明の特徴は、2種類の配向膜を形成することである。すなわち、表示領域10の外側に、乾燥の速い周辺配向膜109を形成し、表示領域10および表示領域10と周辺配向膜109の間に表示領域配向膜108を形成することである。インクジェットによって配向膜を形成するためには、配向膜を塗布した後、レベリング効果によって、膜のむらを解消しておく必要がある。しかし、配向膜の乾燥が速いとレベリング効果が十分に生じない。
【0044】
ところが、レベリング効果を生じさせようとして配向膜の乾燥を遅くすると、配向膜が周辺に広がってしまい、配向膜の外形の制御が困難になるという問題がある。すなわち、インクジェット方式においては、配向膜の均一性と、配向膜の外形を正確に制御することとは、相反する関係にある。本発明は、表示領域10の周辺に乾燥の速い周辺配向膜109を枠状に形成し、周辺配向膜109によって、表示領域配向膜108の外形を正確に制御するものである。
【0045】
本発明におけるインクジェットによる配向膜の形成のプロセスは次のとおりである。すなわち、まず、表示領域配向膜108をインクジェットによって塗布する、周辺配向膜109のインクは乾燥が速いので、配向膜が広がるまえに、所定の幅および厚さで固まる。周辺配向膜109の幅w3は0.2mm程度に制御でき、厚さt2は100nm以上とすることが出来る。
【0046】
続いて表示領域配向膜108をインクジェットによって塗布する。表示領域配向膜108は、配向膜のむらをなくすことが出来る程度に、レベリング効果を十分に生じさせる必要がある。このためには、配向膜の乾燥の速度は遅い必要がある。配向膜の乾燥が遅いと、配向膜が周辺に広がってくる。このために従来は、インクジェットによる配向膜は、外形の制御が困難であった。
【0047】
本発明においては、周辺配向膜109が形成され、周辺配向膜109は表示領域配向膜108が塗布される時点では、乾燥が進み固化しているので、表示領域配向膜108の外形は周辺配向膜109によって規定され、配向膜の外形は全体として正確に制御することができる。このような効果を生じさせるためには、周辺配向膜109の厚さt2は、表示領域配向膜108の厚さt1よりも大きく形成することが必要である。
【0048】
表示領域配向膜108の厚さt1は100nm程度である。一方、周辺配向膜109の厚さt2は100nmより大きくしても、乾燥が速いので、周辺配向膜109の幅w3は0.2mm程度に保つことは容易である。周辺配向膜109の幅を制御できるということは、配向膜全体の外形を制御できるということである。なお、配向膜の乾燥が速いとレベリング効果が十分に生じず、膜むらを生ずる。しかし、周辺配向膜109は表示領域10の外側に形成されているので、周辺配向膜109の膜むらが画質に影響を及ぼすことは無い。
【0049】
なお、周辺配向膜109と表示領域配向膜108は分けて塗布されるので、図4に示すように、顕微鏡によれば、周辺配向膜109と表示領域配向膜108の境目を観察することが出来る。また、周辺配向膜109の膜厚は表示領域配向膜108の膜厚よりも大きいので、この点からも周辺配向膜109と表示領域配向膜108の存在を判別することが出来る。
【0050】
以上の説明では、周辺配向膜109を塗布して、その後、表示領域配向膜108を塗布するとしたが、周辺配向膜109の塗布から表示領域配向膜108の塗布までの時間は、非常に短い時間から比較的長い時間まで種々とることが可能である。周辺配向膜109の乾燥のスピードをどの程度にするかによって、周辺配向膜109を塗布してから表示領域配向膜108を塗布するまでの時間が決まってくる。
【0051】
図3および図4においては、TFT基板100側の構成について説明した。しかし、図3および図4で説明した配向膜の構成は、対向基板200側にも適用することが出来る。すなわち、配向膜の下に形成されている膜構造はTFT基板100と対向基板200とで異なるが、配向膜の形成方法は全く同じ方法を適用することが出来る。
【0052】
図5は、本発明における配向膜の塗布方法の例を示す模式図である。図5において、TFT基板100はマザー基板500に多数形成されている。すなわち、マザー基板500の状態で、製造プロセスを終えた後、対向基板が多数形成されたマザー基板と接着する。その後、スクライビングによって、各液晶セルを分離する。配向膜の塗布もマザー基板500の状態で行う。
【0053】
図5において、周辺配向膜109を塗布するのは第1ヘッド301であり、第1ヘッド301には、塗布領域に対応した多数のノズルが形成されている。表示領域配向膜108を塗布するのは、第2ヘッド302であり、第2ヘッド302には塗布領域に対応した多数のノズルが形成されている。ノズルの位置は、第1ヘッド301と第2ヘッド302とで、異なっている。図5では、第1ヘッドおよび第2ヘッドのノズルから配向膜インクジェット350が放射されている状態を示している。
【0054】
図5において、まず、第1ヘッド301が矢印のように動き、周辺配向膜109を塗布する。周辺配向膜109は乾燥が速いので、塗布後ただちに乾燥し、固化する。続いて第2ヘッド302が矢印のように、第1ヘッド301を追いかけるように動き、表示領域配向膜108を塗布する。表示領域配向膜108はレベリング効果を十分に生じさせるために、乾燥速度は遅く、塗布後、周辺に広がろうとする。しかし、図4に示すように、第1ヘッド301によって塗布された周辺配向膜109がすでに、乾燥、固化しているので、周辺配向膜109がストッパーとなって、表示領域配向膜108はそれ以上には広がらない。
【0055】
図5において、第1ヘッド301が動いてから、第2ヘッド302が動くまでの時間は、周辺配向膜109の乾燥速度によって決めることができる。周辺配向膜109の乾燥が速ければ、第1ヘッド301が動いたあと、ただちに、第2ヘッド302を動かすことが出来る。このような場合は、配向膜を2種類塗布したとしても、タクト時間はほとんど増加しない。なお、図5はTFT基板100側のマザー基板500について説明したが、対向基板200側のマザー基板500に対しても同様にして周辺配向膜109と表示領域配向膜108を塗布することが出来る。
【0056】
図6は、図2の変形例である。図2において、周辺配向膜109の幅w3は、図2の場合よりも、広く形成されており、シール材20と一部オーバーラップしている。周辺配向膜109の幅w3が大きくなった分、周辺配向膜109の塗布裕度を増すことが出来る。図6におけるその他の構成は図2と同様である。
【0057】
図6において、周辺配向膜109はシール材と一部オーバーラップしているが、このオーバーラップ量は小さいので、TFT基板100におけるシール材20と有機パッシベーション膜106の接着力、あるいは、対向基板200におけるシール材20とオーバーコート膜203の接着力には大きな影響は生じない。このように、周辺配向膜109の塗布裕度を大きくとっても、周辺のシール部の信頼性は維持することが出来る。
【0058】
以上の説明では、TFT基板100および対向基板200に、表示領域配向膜108および周辺配向膜109を同様に形成するとして説明した。しかし、なんらかの事情によって、TFT基板100、あるいは、対向基板200のいずれかのみに2種類の配向膜を塗布する場合であっても、本発明による特定の効果を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0059】
10…表示領域、 20…シール材、 30…走査信号線、 31…走査信号線引出し線、 40…映像信号線、 41…映像信号線引き出し線、 50…ICドライバ、51…走査信号線駆動回路、52…映像信号線駆動回路、 100…TFT基板、 101…第1下地膜、 102…第2下地膜、 103…ゲート絶縁膜、 104…層間絶縁膜、 105…無機パッシベーション膜、 106…有機パッシベーション膜、 107…画素電極、 108…表示領域配向膜、 109…周辺配向膜、 150…端子部、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 204…対向電極、 250…液晶層、 301…第1ヘッド、 302…第2ヘッド、 350…配向膜インクジェット、 500…マザー基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極およびTFTを有する画素がマトリクス状に形成された表示領域と周辺領域を有するTFT基板と、前記TFT基板に対向して、前記TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタが形成された対向基板が周辺のシール部においてシール材を介して接着している液晶表示装置であって、
前記TFT基板の前記表示領域には、第1の配向膜が形成され、前記表示領域の外側の周辺領域で、前記第1の配向膜の外側には、第2の配向膜が形成され、前記第2の配向膜は、前記表示領域には形成されておらず、
前記第1の配向膜は前記第2の配向膜に接していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2の配向膜の厚さは前記第1の配向膜の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第2の配向膜は、前記シール材と接していることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
画素電極およびTFTを有する画素がマトリクス状に形成された表示領域と周辺領域を有するTFT基板と、前記TFT基板に対向して、前記TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタが形成された表示領域と周辺領域を有する対向基板が、周辺のシール部においてシール材を介して接着している液晶表示装置であって、
前記TFT基板の前記表示領域には、第1の配向膜が形成され、前記表示領域の外側の周辺領域で、前記第1の配向膜の外側には、第2の配向膜が形成され、前記第2の配向膜は、前記表示領域には形成されておらず、前記第1の配向膜は前記第2の配向膜に接しており、
前記対向基板の表示領域には第1の配向膜が形成され、前記表示領域の外側の周辺領域で、前記第1の配向膜の外側には、第2の配向膜が形成され、前記第2の配向膜は前記表示領域には形成されておらず、前記第1の配向膜は、前記第2の配向膜に接していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
前記第2の配向膜の厚さは前記第1の配向膜の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
画素電極およびTFTを有する画素がマトリクス状に形成された表示領域と周辺領域を有するTFT基板と、前記TFT基板に対向して、前記TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタが形成された対向基板が周辺のシール部においてシール材を介して接着している液晶表示装置の製造方法であって、
前記TFT基板の表示領域の外側の周辺には枠状に第2の配向膜をインクジェットによって塗布し、
その後、前記表示領域に前記第2の配向膜よりも乾燥の遅い第1の配向膜をインクジェットによって、前記第2の配向膜と接するように塗布することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項7】
画素電極およびTFTを有する画素がマトリクス状に形成された表示領域と周辺領域を有するTFT基板と、前記TFT基板に対向して、前記TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタが形成された表示領域と周辺領域を有する対向基板が周辺のシール部においてシール材を介して接着している液晶表示装置の製造方法であって、
前記TFT基板の表示領域の外側の周辺には枠状に第2の配向膜をインクジェットによって塗布し、
その後、前記TFT基板の表示領域に前記第2の配向膜よりも乾燥の遅い第1の配向膜をインクジェットによって、前記第2の配向膜と接するように塗布し、
前記対向基板の表示領域の外側の周辺には枠状に第2の配向膜をインクジェットによって塗布し、
その後、前記対向基板の前記表示領域に前記第2の配向膜よりも乾燥の遅い第1の配向膜をインクジェットによって、前記第2の配向膜と接するように塗布し、
その後、前記TFT基板と前記対向基板をシール材によって接着することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−145535(P2011−145535A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7068(P2010−7068)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】