説明

液晶表示装置及びその製造方法

【課題】大がかりな装置を用いなくても容易に応答特性を向上させることが可能な液晶表示素子の製造方法を提供する。
【解決手段】TFT基板20及びCF基板30に、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、アダマンタン骨格等の嵩高い骨格を含む高分子化合物から成る配向膜22,32を形成した後、配向膜22,32が対向するように配置し、配向膜22,32の間に液晶分子41を含む液晶層40を封止し、次いで、液晶分子41を基板面に対して斜めにその長軸方向がなるように配向させた状態で、配向膜22,32中の高分子化合物を反応させ、架橋構造を有する高分子化合物を生成し、配向膜22,32近傍に配置する液晶分子41A,41Bに、それぞれ所定のプレチルトを付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向面に配向膜を有する一対の基板の間に液晶層が封止された液晶表示素子を備えた液晶表示装置、及び、液晶表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビジョン受像機やノート型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置等の表示モニタとして、液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)が多く用いられている。この液晶ディスプレイは、基板間に挟持された液晶層中に含まれる液晶分子の分子配列(配向)によって様々な表示モード(方式)に分類される。表示モードとして、例えば、電圧をかけない状態で液晶分子がねじれて配向しているTN(Twisted Nematic;ねじれネマティック)モードがよく知られている。TNモードでは、液晶分子は、正の誘電率異方性、即ち、液晶分子の長軸方向の誘電率が短軸方向に比べて大きい性質を有している。このため、液晶分子は、基板面に対して平行な面内において、液晶分子の配向方位を順次回転させつつ、基板面に垂直な方向に整列させた構造となっている。
【0003】
この一方で、電圧をかけない状態で液晶分子が基板面に対して垂直に配向しているVA(Vertical Alignment)モードに対する注目が高まっている。VAモードでは、液晶分子は、負の誘電率異方性、即ち、液晶分子の長軸方向の誘電率が短軸方向に比べて小さい性質を有しており、TNモードに比べて広視野角を実現できる。
【0004】
このようなVAモードの液晶ディスプレイでは、電圧が印加されると、基板に対して垂直方向に配向していた液晶分子が、負の誘電率異方性により、基板に対して平行方向に倒れるように応答することによって、光を透過させる構成となっている。ところが、基板に対して垂直方向に配向した液晶分子の倒れる方向は任意であるため、電圧印加により液晶分子の配向が乱れ、よって、電圧に対する応答特性を悪化させる要因となっていた。
【0005】
そこで、応答特性を向上させるために、液晶分子が電圧に応答して倒れる方向を規制する技術が検討されている。具体的には、紫外光の直線偏光の光あるいは基板面に対して斜め方向から紫外光を照射することにより形成された配向膜を用いて、液晶分子に対してプレチルトを付与する技術(光配向膜技術)等である。光配向膜技術として、例えば、カルコン構造を含むポリマーから成る膜に対して、紫外光の直線偏光の光あるいは基板面に対して斜め方向から紫外光を照射し、カルコン構造中の二重結合部分が架橋することにより配向膜を形成する技術が知られている(特許文献1〜特許文献3参照)。また、この他に、ビニルシンナメート誘導体高分子とポリイミドとの混合物を用いて配向膜を形成する技術がある(特許文献4参照)。更に、ポリイミドを含む膜に対して波長254nmの直線偏光の光を照射して、ポリイミドの一部を分解することにより配向膜を形成する技術(特許文献5参照)等も知られている。また、光配向膜技術の周辺技術として、直線偏光の光あるいは斜め光を照射した、アゾベンゼン誘導体等の二色性光反応性構成単位を含むポリマーから成る膜上に、液晶性高分子化合物から成る膜を形成することにより液晶性配向膜とする技術もある(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−087859号公報
【特許文献2】特開平10−252646号公報
【特許文献3】特開2002−082336号公報
【特許文献4】特開平10−232400号公報
【特許文献5】特開平10−073821号公報
【特許文献6】特開平11−326638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の液晶分子に対してプレチルトを付与する技術を用いた液晶表示素子では、十分な応答特性が得られているわけではなく、更なる向上が求められている。その上、上記した光配向膜技術では、配向膜を形成する際に、直線偏光の光を照射する装置や、基板面に対して斜め方向から光照射する装置といった大がかりな光照射装置が必要とされるという問題がある。また、より広い視野角を実現するために、画素内に複数のサブ画素を設けて液晶分子の配向を分割したマルチドメインを有する液晶ディスプレイを製造するためには、より大がかりな装置が必要とされる上、製造工程が複雑になるという問題もある。具体的には、マルチドメインを有する液晶ディスプレイでは、サブ画素毎、プレチルトが異なるように配向膜が形成されている。従って、マルチドメインを有する液晶ディスプレイの製造において上記の光配向膜技術を用いる場合、サブ画素毎に光照射することになるため、サブ画素毎のマスクパターンが必要となり、更に光照射装置が大がかりとなる。
【0008】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたもので、本発明の第1の目的は、応答特性を向上させることが可能な液晶表示素子を備えた液晶表示装置を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、大がかりな装置を用いなくても、容易に応答特性を向上させることが可能な液晶表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の第1の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る液晶表示装置は、
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に式(1)〜式(11)で表される骨格のうちの少なくとも1種を含む高分子化合物の側鎖が架橋した化合物(便宜上、『配向処理後・化合物』と呼ぶ)を含み、
側鎖が架橋した化合物(配向処理後・化合物)は、液晶分子にプレチルトを付与する。また、上記の第1の目的を達成するための第1の態様に係る液晶表示素子は、本発明の第1の態様に係る液晶表示装置における液晶表示素子から成る。ここで、『架橋性官能基』とは、架橋構造(橋かけ構造)を形成することが可能な基を意味する。
【0010】

【0011】
上記の第1の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る液晶表示装置は、
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造、又は、
(b)2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている骨格構造、
を含む高分子化合物の側鎖が架橋した化合物(便宜上、『配向処理後・化合物』と呼ぶ)を含み、
側鎖が架橋した化合物(配向処理後・化合物)は、液晶分子にプレチルトを付与する。また、上記の第1の目的を達成するための第2の態様に係る液晶表示素子は、本発明の第2の態様に係る液晶表示装置における液晶表示素子から成る。
【0012】
上記の第1の目的を達成するための本発明の第3の態様に係る液晶表示装置は、
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)アダマンタン同族体、又は、
(b)スピロ化合物、又は、
(c)2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する式(21)で表される構造、
を含む高分子化合物の側鎖が架橋した化合物(便宜上、『配向処理後・化合物』と呼ぶ)を含み、
側鎖が架橋した化合物(配向処理後・化合物)は、液晶分子にプレチルトを付与する。また、上記の第1の目的を達成するための第3の態様に係る液晶表示素子は、本発明の第3の態様に係る液晶表示装置における液晶表示素子から成る。
【0013】

ここで、A及びBは、同一又は異なる3価以上の有機基である。
【0014】
上記の第1の目的を達成するための本発明の第4の態様に係る液晶表示装置は、
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、式(31)又は式(32)で表される化合物の少なくとも一方を前駆体ジアミンとするポリイミド化合物の側鎖が架橋した化合物(便宜上、『配向処理後・化合物』と呼ぶ)を含み、
側鎖が架橋した化合物(配向処理後・化合物)は、液晶分子にプレチルトを付与する。また、上記の第1の目的を達成するための第4の態様に係る液晶表示素子は、本発明の第4の態様に係る液晶表示装置における液晶表示素子から成る。
【0015】

ここで、R2、R5、R6及びR7は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R3及びR4は、同一又は異なる2価の有機基であり、a、d、e及びfは0以上、4以下の整数であり、b及びcは0又は1であり、R8、R11、R12及びR13は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R9及びR10は、同一又は異なる2価の有機基であり、g、j、k及びlは0以上、4以下の整数であり、h及びiは0又は1である。
【0016】
上記の第1の目的を達成するための本発明の第5の態様に係る液晶表示装置は、
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に上記の式(1)〜式(11)で表される骨格のうちの少なくとも1種を含む化合物(便宜上、『配向処理後・化合物』と呼ぶ)を含み、
化合物(配向処理後・化合物)は、液晶分子にプレチルトを付与する。また、上記の第1の目的を達成するための第5の態様に係る液晶表示素子は、本発明の第5の態様に係る液晶表示装置における液晶表示素子から成る。ここで、『感光性官能基』とは、エネルギー線を吸収することが可能な基を意味する。
【0017】
上記の第1の目的を達成するための本発明の第6の態様に係る液晶表示装置は、
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造、又は、
(b)2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている骨格構造、
を含む化合物(便宜上、『配向処理後・化合物』と呼ぶ)を含み、
化合物(配向処理後・化合物)は、液晶分子にプレチルトを付与する。また、上記の第1の目的を達成するための第6の態様に係る液晶表示素子は、本発明の第6の態様に係る液晶表示装置における液晶表示素子から成る。
【0018】
上記の第1の目的を達成するための本発明の第7の態様に係る液晶表示装置は、
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)アダマンタン同族体、又は、
(b)スピロ化合物、又は、
(c)2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する上記の式(21)で表される構造、
を含む化合物(便宜上、『配向処理後・化合物』と呼ぶ)を含み、
化合物(配向処理後・化合物)は、液晶分子にプレチルトを付与する。また、上記の第1の目的を達成するための第7の態様に係る液晶表示素子は、本発明の第7の態様に係る液晶表示装置における液晶表示素子から成る。
【0019】
上記の第1の目的を達成するための本発明の第8の態様に係る液晶表示装置は、
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、上記の式(31)又は式(32)で表される化合物の少なくとも一方を前駆体ジアミンとするポリイミド化合物を有する化合物(便宜上、『配向処理後・化合物』と呼ぶ)を含み、
化合物(配向処理後・化合物)は、液晶分子にプレチルトを付与する。また、上記の第1の目的を達成するための第8の態様に係る液晶表示素子は、本発明の第8の態様に係る液晶表示装置における液晶表示素子から成る。
【0020】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)は、
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に上記の式(1)〜式(11)で表される骨格のうちの少なくとも1種を含む高分子化合物(便宜上、『配向処理前・化合物』と呼ぶ)から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物(配向処理前・化合物)の側鎖を架橋させて、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む。
【0021】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)は、
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造、又は、
(b)2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている骨格構造、
を含む高分子化合物(便宜上、『配向処理前・化合物』と呼ぶ)から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物(配向処理前・化合物)の側鎖を架橋させて、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む。
【0022】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第3の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)は、
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)アダマンタン同族体、又は、
(b)スピロ化合物、又は、
(c)2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する上記の式(21)で表される構造、
を含む高分子化合物(便宜上、『配向処理前・化合物』と呼ぶ)から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物(配向処理前・化合物)の側鎖を架橋させて、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む。
【0023】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第4の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)は、
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、上記の式(31)又は式(32)で表される化合物の少なくとも一方を前駆体ジアミンとするポリイミド化合物を有する高分子化合物(便宜上、『配向処理前・化合物』と呼ぶ)から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物(配向処理前・化合物)の側鎖を架橋させて、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む。
【0024】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第5の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)は、
一対の基板の一方に、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に上記の式(1)〜式(11)で表される骨格のうちの少なくとも1種を含む高分子化合物(便宜上、『配向処理前・化合物』と呼ぶ)から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物(配向処理前・化合物)を変形させることで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む。
【0025】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第6の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)は、
一対の基板の一方に、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造、又は、
(b)2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている骨格構造、
を含む高分子化合物(便宜上、『配向処理前・化合物』と呼ぶ)から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物(配向処理前・化合物)を変形させることで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む。
【0026】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第7の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)は、
一対の基板の一方に、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)アダマンタン同族体、又は、
(b)スピロ化合物、又は、
(c)2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する上記の式(21)で表される構造、
を含む高分子化合物(便宜上、『配向処理前・化合物』と呼ぶ)から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物(配向処理前・化合物)を変形させることで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む。
【0027】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第8の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)は、
一対の基板の一方に、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、上記の式(31)又は式(32)で表される化合物の少なくとも一方を前駆体ジアミンとするポリイミド化合物を有する高分子化合物(便宜上、『配向処理前・化合物』と呼ぶ)から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物(配向処理前・化合物)を変形させることで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む。
【0028】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第9の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)は、
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基又は感光性官能基を有すると共に、主鎖中に上記の式(1)〜式(11)で表される骨格のうちの少なくとも1種を含む高分子化合物(便宜上、『配向処理前・化合物』と呼ぶ)から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物(配向処理前・化合物)にエネルギー線を照射することで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む。ここで、エネルギー線として、紫外線、X線、電子線を挙げることができる。後述する本発明の第10の態様〜第12の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)においても同様である。
【0029】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第10の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)は、
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基又は感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造、又は、
(b)2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている骨格構造、
を含む高分子化合物(便宜上、『配向処理前・化合物』と呼ぶ)から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物(配向処理前・化合物)にエネルギー線を照射することで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む。
【0030】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第11の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)は、
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基又は感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)アダマンタン同族体、又は、
(b)スピロ化合物、又は、
(c)2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する上記の式(21)で表される構造、
を含む高分子化合物(便宜上、『配向処理前・化合物』と呼ぶ)から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物(配向処理前・化合物)にエネルギー線を照射することで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む。
【0031】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第12の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)は、
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基又は感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、上記の式(31)又は式(32)で表される化合物の少なくとも一方を前駆体ジアミンとするポリイミド化合物を有する高分子化合物(便宜上、『配向処理前・化合物』と呼ぶ)から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物(配向処理前・化合物)にエネルギー線を照射することで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む。
【0032】
本発明の第1の態様〜第4の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)において、一対の配向膜は同じ組成を有する構成とすることができる。また、上記の好ましい構成を含む本発明の第1の態様〜第12の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)において、第2配向膜は、第1配向膜を構成する高分子化合物(配向処理前・化合物)から成る構成とすることができる。但し、本発明の第1の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)、本発明の第1の態様〜第12の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)において規定される高分子化合物(配向処理前・化合物)から構成される限り、一対の配向膜は、異なる組成を有する構成としてもよいし、第2配向膜は、第1配向膜を構成する高分子化合物(配向処理前・化合物)とは異なる高分子化合物(配向処理前・化合物)から成る構成としてもよい。
【0033】
また、上記の好ましい構成を含む本発明の第1の態様〜第3の態様、本発明の第5の態様〜第7の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)、第1の態様〜第3の態様、本発明の第5の態様〜第7の態様、本発明の第9の態様〜第11の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)において、主鎖は繰り返し単位中にイミド結合を含む構成とすることができる。
【0034】
更には、以上に説明した好ましい構成を含む本発明の第1の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)において、一対の配向膜のうちの一方の膜密度は1.30g/cm3以下である形態とすることができるし、以上に説明した好ましい構成を含む本発明の第1の態様〜第12の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)において、第1配向膜の膜密度は1.30g/cm3以下である形態とすることができる。
【0035】
更には、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)、本発明の第1の態様〜第12の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)において、配向処理後・化合物は、液晶分子を一対の基板に対して所定の方向に配列させる構造を含む形態とすることができる。
【0036】
更には、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)、本発明の第1の態様〜第12の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)において、一対の基板は、画素電極を有する基板、及び、対向電極を有する基板から構成されており、液晶分子は負の誘電率異方性を有する構成とすることができる。
【0037】
更には、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)、本発明の第1の態様〜第12の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)において、一対の基板のうち少なくとも一方には、液晶層側に、スリットを有する電極又は突起(一対の配向膜)が設けられている構成とすることができる。
【0038】
更には、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様〜第4の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)においては、液晶層に対して所定の電場を印加することにより液晶分子を配向させつつ、紫外線を照射して高分子化合物(配向処理前・化合物)の側鎖を架橋させる構成とすることができる。また、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第5の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)においては、液晶層に対して所定の電場を印加することにより液晶分子を配向させつつ、紫外線を照射して高分子化合物(配向処理前・化合物)の側鎖を変形させる構成とすることができる。また、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第9の態様〜第12の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)においては、液晶層に対して所定の電場を印加することにより液晶分子を配向させつつ、高分子化合物に紫外線を照射する構成とすることができる。そして、これら場合、液晶分子を一対の基板の少なくとも一方の基板の表面に対して斜め方向に配列させるように、液晶層に対して電場を印加しながら紫外線を照射することが好ましく、更には、一対の基板は、画素電極を有する基板、及び、対向電極を有する基板から構成されており、画素電極を有する基板側から紫外線を照射することが一層好ましい。一般に、対向電極を有する基板側にはカラーフィルターが形成されており、このカラーフィルターによって紫外線が吸収され、配向膜材料の架橋性官能基の反応が生じ難くなる可能性があるが故に、上述したとおり、カラーフィルターが形成されていない画素電極を有する基板側から紫外線を照射することが一層好ましい。画素電極を有する基板側にカラーフィルターが形成されている場合、対向電極を有する基板側から紫外線を照射することが好ましい。尚、基本的に、プレチルトが付与されるときの液晶分子の方位角(偏角)は電場の方向によって規定され、極角(天頂角)は電場の強さによって規定される。
【発明の効果】
【0039】
本発明の第1の態様〜第4の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)では、一対の配向膜のうちの少なくとも一方が、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に立体的に嵩高い特定の骨格を含み、側鎖が架橋した化合物(配向処理後・化合物)が液晶分子に対してプレチルトを付与する。これにより、配向膜に含まれる架橋した化合物が、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)にて特定された高分子化合物の側鎖が架橋した化合物(配向処理後・化合物)を含まない場合と比較して、応答速度が向上する。
【0040】
また、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)では、一対の配向膜のうちの少なくとも一方が、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に立体的に嵩高い特定の骨格を含み、高分子化合物が変形して成る化合物(配向処理後・化合物)が液晶分子に対してプレチルトを付与する。これにより、配向膜に含まれる化合物が、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)にて特定された高分子化合物が変形して成る化合物(配向処理後・化合物)を含まない場合と比較して、応答速度が向上する。
【0041】
本発明の第1の態様〜第4の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)では、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に特定の高分子化合物(配向処理前・化合物)を含む第1配向膜を形成した後、第1配向膜及び第2配向膜の間に液晶層を封止する。ここで、液晶層中の液晶分子は、第1配向膜及び第2配向膜により、双方の配向膜表面に対して所定の方向(例えば、水平方向、垂直方向あるいは斜め方向)に配列した状態となる。次いで、架橋性官能基を反応させることにより高分子化合物の側鎖を架橋させる。これにより、側鎖が架橋した化合物(配向処理後・化合物)近傍の液晶分子に対してプレチルトを付与する。即ち、液晶分子が配列した状態で高分子化合物(配向処理前・化合物)の側鎖を架橋させることにより、液晶層を封止する前に配向膜に対して直線偏光の光や斜め方向の光を照射しなくても液晶分子に対してプレチルトを付与することができるため、容易に応答速度が向上する。その上、側鎖が架橋した化合物(配向処理後・化合物)の主鎖中には立体的に嵩高い骨格が含まれているため、このような骨格を含まない場合と比較して、応答速度が向上する。
【0042】
また、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)では、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に特定の高分子化合物(配向処理前・化合物)を含む第1配向膜を形成した後、第1配向膜及び第2配向膜の間に液晶層を封止する。ここで、液晶層中の液晶分子は、第1配向膜及び第2配向膜により、双方の配向膜表面に対して所定の方向(例えば、水平方向、垂直方向あるいは斜め方向)に配列した状態となる。次いで、高分子化合物を変形させる。これにより、高分子化合物が変形して成る化合物(配向処理後・化合物)近傍の液晶分子に対してプレチルトを付与する。即ち、液晶分子が配列した状態で高分子化合物(配向処理前・化合物)を変形させることにより、液晶層を封止する前に配向膜に対して直線偏光の光や斜め方向の光を照射しなくても液晶分子に対してプレチルトを付与することができるため、容易に応答速度が向上する。その上、高分子化合物が変形して成る化合物(配向処理後・化合物)の主鎖中には立体的に嵩高い骨格が含まれているため、このような骨格を含まない場合と比較して、応答速度が向上する。
【0043】
更には、本発明の第9の態様〜第12の態様に係る液晶表示装置の製造方法(あるいは液晶表示素子の製造方法)では、側鎖として架橋性官能基又は感光性官能基を有すると共に、主鎖中に特定の高分子化合物(配向処理前・化合物)を含む第1配向膜を形成した後、第1配向膜及び第2配向膜の間に液晶層を封止する。ここで、液晶層中の液晶分子は、第1配向膜及び第2配向膜により、双方の配向膜表面に対して所定の方向(例えば、水平方向、垂直方向あるいは斜め方向)に配列した状態となる。次いで、高分子化合物(配向処理前・化合物)にエネルギー線を照射する。これにより、側鎖が架橋しあるいは変形した化合物(配向処理後・化合物)近傍の液晶分子に対してプレチルトを付与する。即ち、液晶分子が配列した状態で高分子化合物(配向処理前・化合物)にエネルギー線を照射することにより、液晶層を封止する前に配向膜に対して直線偏光の光や斜め方向の光を照射しなくても液晶分子に対してプレチルトを付与することができるため、容易に応答速度が向上する。その上、化合物(配向処理後・化合物)の主鎖中には立体的に嵩高い骨格が含まれているため、このような骨格を含まない場合と比較して、応答速度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の液晶表示装置の模式的な一部断面図である。
【図2】図2は、液晶分子のプレチルトを説明するための模式図である。
【図3】図3は、図1に示した液晶表示装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】図4は、図1に示した液晶表示装置の製造方法を説明するための配向膜中における高分子化合物(配向処理前・化合物)の状態を表す模式図である。
【図5】図5は、図1に示した液晶表示装置の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部断面図である。
【図6】図6は、図5に続く工程を説明するための基板等の模式的な一部断面図である。
【図7】図7の(A)及び図7の(B)は、それぞれ、図6に続く工程を説明するための基板等の模式的な一部断面図、及び、配向膜中における高分子化合物(配向処理後・化合物)の状態を表す模式図である。
【図8】図8は、図1に示した液晶表示装置の回路構成図である。
【図9】図9は、本発明の液晶表示装置の変形例の模式的な一部断面図である。
【図10】図10は、図9に示した液晶表示装置の変形例の模式的な一部断面図である。
【図11】図11は、本発明の液晶表示装置の更に別の変形例の模式的な一部断面図である。
【図12】図12は、実施例1における印加電圧と応答時間との関係を表した特性図である。
【図13】図13は、実施例2における印加電圧と応答時間との関係を表した特性図である。
【図14】図14は、変形した高分子化合物と液晶分子との関係を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して、発明の実施の形態、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は発明の実施の形態、実施例に限定されるものではなく、発明の実施の形態、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.[本発明の液晶表示装置における共通の構成、構造に関する説明]
2.[発明の実施の形態に基づく、本発明の液晶表示装置及びその製造方法の説明]
3.[実施例に基づく、本発明の液晶表示装置及びその製造方法の説明、その他]
【0046】
[本発明の液晶表示装置(液晶表示素子)における共通の構成、構造に関する説明]
本発明の第1の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)の模式的な一部断面図を、図1に示す。この液晶表示装置は、複数の画素10(10A,10B,10C・・・)を有している。この液晶表示装置(液晶表示素子)においては、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)基板20とCF(Color Filter;カラーフィルタ)基板30との間に、配向膜22,32を介して液晶分子41を含む液晶層40が設けられている。この液晶表示装置(液晶表示素子)は、所謂透過型であり、表示モードは垂直配向(VA)モードである。図1では、駆動電圧が印加されていない非駆動状態を表している。
【0047】
TFT基板20には、ガラス基板20AのCF基板30と対向する側の表面に、例えば、マトリクス状に複数の画素電極20Bが配置されている。更に、複数の画素電極20Bをそれぞれ駆動するゲート・ソース・ドレイン等を備えたTFTスイッチング素子や、これらTFTスイッチング素子に接続されるゲート線及びソース線等(図示せず)が設けられている。画素電極20Bは、ガラス基板20A上に画素分離部50によって電気的に分離された画素毎に設けられ、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の透明性を有する材料により構成されている。画素電極20Bには、各画素内において、例えば、ストライプ状やV字状のパターンを有するスリット部21(電極の形成されない部分)が設けられている。これにより、駆動電圧が印加されると、液晶分子41の長軸方向に対して斜めの電場が付与され、画素内に配向方向の異なる領域が形成されるため(配向分割)、視野角特性が向上する。即ち、スリット部21は、良好な表示特性を確保するために、液晶層40中の液晶分子41全体の配向を規制するための配向規制部であり、ここでは、このスリット部21によって駆動電圧印加時の液晶分子41の配向方向を規制している。上述したとおり、基本的に、プレチルトが付与されたときの液晶分子の方位角は電場の方向によって規定され、電場の方向は配向規制部によって決定される。
【0048】
CF基板30には、ガラス基板30AのTFT基板20との対向面に、有効表示領域のほぼ全面に亙って、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のストライプ状フィルタにより構成されたカラーフィルタ(図示せず)と、対向電極30Bとが配置されている。対向電極30Bは、画素電極20Bと同様に、例えばITO等の透明性を有する材料により構成されている。
【0049】
配向膜22は、TFT基板20の液晶層40側の表面に画素電極20B及びスリット部21を覆うように設けられている。配向膜32は、CF基板30の液晶層40側の表面に対向電極30Bを覆うように設けられている。配向膜22,32は、液晶分子41の配向を規制するものであり、ここでは、液晶分子41を基板面に対して垂直方向に配向させると共に、基板近傍の液晶分子41(41A,41B)に対してプレチルトを付与する機能を有している。尚、図1に示す液晶表示装置(液晶表示素子)にあっては、CF基板30の側には、スリット部は設けられていない。
【0050】
図8は、図1に示した液晶表示装置の回路構成を表している。
【0051】
図8に示すように、液晶表示装置は、表示領域60内に設けられた複数の画素10を有する液晶表示素子を含んで構成されている。この液晶表示装置では、表示領域60の周囲には、ソースドライバ61及びゲートドライバ62と、ソースドライバ61及びゲートドライバ62を制御するタイミングコントローラ63と、ソースドライバ61及びゲートドライバ62に電力を供給する電源回路64とが設けられている。
【0052】
表示領域60は、映像が表示される領域であり、複数の画素10がマトリックス状に配列されることにより映像を表示可能に構成された領域である。尚、図8では、複数の画素10を含む表示領域60を示しているほか、4つの画素10に対応する領域を別途拡大して示している。
【0053】
表示領域60では、行方向に複数のソース線71が配列されていると共に、列方向に複数のゲート線72が配列されており、ソース線71及びゲート線72が互いに交差する位置に画素10がそれぞれ配置されている。各画素10は、画素電極20B及び液晶層40と共に、トランジスタ121及びキャパシタ122を含んで構成されている。各トランジスタ121では、ソース電極がソース線71に接続され、ゲート電極がゲート線72に接続され、ドレイン電極がキャパシタ122及び画素電極20Bに接続されている。各ソース線71は、ソースドライバ61に接続されており、ソースドライバ61から画像信号が供給される。各ゲート線72は、ゲートドライバ62に接続されており、ゲートドライバ62から走査信号が順次供給される。
【0054】
ソースドライバ61及びゲートドライバ62は、複数の画素10の中から特定の画素10を選択する。
【0055】
タイミングコントローラ63は、例えば、画像信号(例えば、赤、緑、青に対応するRGBの各映像信号)と、ソースドライバ61の動作を制御するためのソースドライバ制御信号とを、ソースドライバ61に出力する。また、タイミングコントローラ63は、例えば、ゲートドライバ62の動作を制御するためのゲートドライバ制御信号をゲートドライバ62に出力する。ソースドライバ制御信号として、例えば、水平同期信号、スタートパルス信号あるいはソースドライバ用のクロック信号等が挙げられる。ゲートドライバ制御信号として、例えば、垂直同期信号や、ゲートドライバ用のクロック信号等が挙げられる。
【0056】
この液晶表示装置では、以下の要領で画素電極20Bと対向電極30Bとの間に駆動電圧を印加することにより、映像が表示される。具体的には、ソースドライバ61が、タイミングコントローラ63からのソースドライバ制御信号の入力により、同じくタイミングコントローラ63から入力された画像信号に基づいて所定のソース線71に個別の画像信号を供給する。これと共に、ゲートドライバ62が、タイミングコントローラ63からのゲートドライバ制御信号の入力により所定のタイミングでゲート線72に走査信号を順次供給する。これにより、画像信号が供給されたソース線71と走査信号が供給されたゲート線72との交差点に位置する画素10が選択され、画素10に駆動電圧が印加される。
【0057】
以下、発明の実施の形態(『実施の形態』と略称する)及び実施例に基づき、本発明を説明する。
【0058】
[実施の形態1]
実施の形態1は、本発明の第1の態様〜第4の態様に係るVAモードの液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)、並びに、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)の製造方法、本発明の第9の態様〜第12の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)の製造方法に関する。尚、以下の実施の形態1における種々の説明、あるいは又、後述する実施の形態2〜実施の形態4における種々の説明は、側鎖が感光性官能基であるといった相違点を除き、本発明の第5の態様〜第8の態様に係るVAモードの液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)、並びに、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置(あるいは液晶表示素子)の製造方法に適用することができる。
【0059】
実施の形態1において、配向膜22,32は、側鎖が架橋した化合物(配向処理後・化合物)の1種あるいは2種以上を含んで構成されている。そして、液晶分子は、架橋した化合物によってプレチルトが付与される。ここで、配向処理後・化合物は、主鎖及び側鎖を有する高分子化合物(配向処理前・化合物)の1種あるいは2種以上を含む状態で配向膜22,32を形成した後、液晶層40を設け、次いで、側鎖を架橋させることで、あるいは又、高分子化合物(配向処理前・化合物)にエネルギー線を照射することで、より具体的には、電場又は磁場を印加しながら側鎖に含まれる架橋性官能基を反応させることにより、あるいは又、電場又は磁場を印加しながら高分子化合物(配向処理前・化合物)にエネルギー線を照射することで、生成される。そして、配向処理後・化合物は、液晶分子を一対の基板(具体的には、TFT基板20及びCF基板30)に対して所定の方向(具体的には、斜め方向)に配列させる構造を含んでいる。このように、高分子化合物を架橋させて、あるいは又、高分子化合物にエネルギー線を照射することで、配向処理後・化合物が配向膜22,32中に含まれることにより、配向膜22,32近傍の液晶分子41に対してプレチルトを付与できるため、応答速度が早くなり、表示特性が向上する。
【0060】
配向処理前・化合物は、主鎖として耐熱性が高い構造を含むことが好ましい。これにより、液晶表示装置(液晶表示素子)では、高温環境下に曝されても、配向膜22,32中の配向処理後・化合物が液晶分子41に対する配向規制能を維持するため、応答特性と共にコントラスト等の表示特性が良好に維持され、信頼性が確保される。ここで、主鎖は、繰り返し単位中にイミド結合を含むことが好ましい。主鎖中にイミド結合を含む配向処理前・化合物として、例えば、式(41)で表されるポリイミド構造を含む高分子化合物が挙げられる。式(41)に示すポリイミド構造を含む高分子化合物は、式(41)に示すポリイミド構造のうちの1種から構成されていてもよいし、複数種がランダムに連結して含まれていてもよいし、式(41)に示す構造の他に、他の構造を含んでいてもよい。
【0061】

ここで、R1は4価の有機基であり、R2は2価の有機基であり、n1は1以上の整数である。
【0062】
式(41)におけるR1及びR2は、炭素を含んで構成された4価あるいは2価の基であれば任意であるが、R1及びR2のうちのいずれか一方に、側鎖としての架橋性官能基を含んでいることが好ましい。配向処理後・化合物において、十分な配向規制能が得られ易いからである。
【0063】
また、配向処理前・化合物では、側鎖は主鎖に複数結合しており、複数の側鎖のうちの少なくとも1つが架橋性官能基を含んでいればよい。即ち、配向処理前・化合物は、架橋性を有する側鎖の他に、架橋性を示さない側鎖を含んでいてもよい。架橋性官能基を含む側鎖は、1種であってもよいし、複数種であってもよい。架橋性官能基は、液晶層40を形成した後に架橋反応可能な官能基であれば任意であり、光反応によって架橋構造を形成する基であってもよいし、熱反応によって架橋構造を形成する基であってもよいが、中でも、光反応によって架橋構造を形成する、光反応性の架橋性官能基(感光性を有する感光基)が好ましい。液晶分子41の配向を所定の方向に規制し易く、応答特性が向上すると共に良好な表示特性を有する液晶表示装置(液晶表示素子)の製造を容易にするからである。
【0064】
光反応性の架橋性官能基(感光性を有する感光基であり、例えば、光二量化感光基)として、例えば、カルコン、シンナメート、シンナモイル、クマリン、マレイミド、ベンゾフェノン、ノルボルネン、オリザノール、及び、キトサンのうちのいずれか1種の構造を含む基が挙げられる。これらのうち、カルコン、シンナメートあるいはシンナモイルの構造を含む基として、例えば、式(51)で表される基が挙げられる。式(51)に示す基を含む側鎖を有する配向処理前・化合物が架橋すると、例えば、式(52)に示す構造が形成される。即ち、式(51)に示す基を含む高分子化合物から生成された配向処理後・化合物は、シクロブタン骨格を有する式(52)に示す構造を含む。尚、例えば、マレイミドといった光反応性の架橋性官能基は、場合によっては、光二量化反応だけでなく、重合反応も示す。従って、『架橋性官能基』には、光二量化反応を示す架橋性官能基だけでなく、重合反応を示す架橋性官能基も包含される。云い換えれば、本発明にあっては、『架橋』という概念には、光二量化反応だけでなく重合反応も含まれる。
【0065】

ここで、R3は芳香族環を含む2価の基であり、R4は1又は2以上の環構造を含む1価の基であり、R5は水素原子、又は、アルキル基あるいはその誘導体である。
【0066】
式(51)におけるR3は、ベンゼン環等の芳香族環を含む2価の基であれば任意であり、芳香族環の他に、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合あるいは炭化水素基を含んでいてもよい。また、式(51)におけるR4は、1又は2以上の環構造を含む1価の基であれば任意であり、環構造の他に、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、炭化水素基あるいはハロゲン原子等を含んでいてもよい。R4が有する環構造として、骨格を構成する元素として炭素を含む環であれば任意であり、その環構造として、例えば、芳香族環、複素環あるいは脂肪族環、又は、それらの連結あるいは縮合した環構造等が挙げられる。式(51)におけるR5は、水素原子、又は、アルキル基あるいはその誘導体であれば任意である。ここで、「誘導体」とは、アルキル基が有する水素原子の一部あるいは全部がハロゲン原子等の置換基により置換された基のことを云う。また、R5として導入されるアルキル基の炭素数は任意である。R5として、水素原子あるいはメチル基が好ましい。良好な架橋反応性が得られるからである。
【0067】
式(52)におけるR3同士は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。このことは、式(51)におけるR4同士及びR5同士についても同様である。式(52)におけるR3、R4及びR5として、例えば、上記した式(51)におけるR3、R4及びR5と同様のものが挙げられる。
【0068】
式(51)に示した基として、例えば、式(51−1)〜式(51−27)で表される基が挙げられる。但し、式(51)に示した構造を有する基であれば、式(51−1)〜式(51−27)に示す基に限定されない。
【0069】

【0070】

【0071】

【0072】
配向処理前・化合物は、液晶分子41を基板面に対して垂直方向に配向させるための構造(以下、『垂直配向誘起構造部』と呼ぶ)を含んでいることが好ましい。配向膜22,32が配向処理後・化合物とは別に垂直配向誘起構造部を有する化合物(所謂、通常の垂直配向剤)を含まなくても、液晶分子41全体の配向規制が可能になるからである。その上、垂直配向誘起構造部を有する化合物を別に含む場合よりも、液晶層40に対する配向規制機能をより均一に発揮可能な配向膜22,32が形成され易いからである。垂直配向誘起構造部は、配向処理前・化合物においては、主鎖に含まれていてもよいし、側鎖に含まれていてもよいし、双方に含まれていてもよい。また、配向処理前・化合物が上記した式(41)に示したポリイミド構造を含む場合、R2として垂直配向誘起構造部を含む構造(繰り返し単位)と、R2として架橋性官能基を含む構造(繰り返し単位)との2種の構造を含んでいることが好ましい。容易に入手可能であるからである。尚、垂直配向誘起構造部は、配向処理前・化合物に含まれていれば、配向処理後・化合物においても含まれる。
【0073】
垂直配向誘起構造部として、例えば、炭素数10以上のアルキル基、炭素数10以上のハロゲン化アルキル基、炭素数10以上のアルコキシ基、炭素数10以上のハロゲン化アルコキシ基あるいは環構造を含む有機基等が挙げられる。具体的には、垂直配向誘起構造部を含む構造として、例えば、式(61−1)〜式(61−6)で表される構造等が挙げられる。
【0074】

ここで、Y1は炭素数10以上のアルキル基、炭素数10以上のアルコキシ基あるいは環構造を含む1価の有機基である。また、Y2〜Y15は水素原子、炭素数10以上のアルキル基、炭素数10以上のアルコキシ基あるいは環構造を含む1価の有機基であり、Y2及びY3のうちの少なくとも一方、Y4〜Y6のうちの少なくとも1つ、Y7及びY8のうちの少なくとも一方、Y9〜Y12のうちの少なくとも1つ、及び、Y13〜Y15のうちの少なくとも1つは、炭素数10以上のアルキル基、炭素数10以上のアルコキシ基あるいは環構造を含む1価の有機基である。但し、Y11及びY12は結合して環構造を形成してもよい。
【0075】
また、垂直配向誘起構造部としての環構造を含む1価の有機基として、例えば、式(71−1)〜式(71−23)で表される基等が挙げられる。垂直配向誘起構造部としての環構造を含む2価の有機基として、例えば、式(72−1)〜式(72−7)で表される基等が挙げられる。
【0076】

ここで、a1〜a3は0以上、21以下の整数である。
【0077】

【0078】

ここで、a1は0以上、21以下の整数である。
【0079】

【0080】
尚、垂直配向誘起構造部は、液晶分子41を基板面に対して垂直方向に配列させるように機能する構造を含んでいれば、上記した基に限定されない。
【0081】
また、配向処理後・化合物は、未反応の架橋性官能基を含んでいてもよいが、駆動中に反応した場合に液晶分子41の配向を乱す虞があるため、未反応の架橋性官能基は少ない方が好ましい。配向処理後・化合物が未反応の架橋性官能基を含んでいるか否かは、例えば、液晶表示装置を解体して、配向膜22,32を透過型又は反射型のFT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)で分析することにより確認することができる。具体的には、先ず、液晶表示装置を解体し、配向膜22,32の表面を有機溶媒等により洗浄する。この後、配向膜22,32をFT−IRで分析することによって、例えば、式(51)に示した架橋構造を形成する二重結合が配向膜22,32中に残留していれば、二重結合に由来する吸収スペクトルが得られ、確認することができる。
【0082】
また、配向膜22,32は、上記した配向処理後・化合物の他に、他の垂直配向剤を含んでいてもよい。他の垂直配向剤として、垂直配向誘起構造部を有するポリイミドや、垂直配向誘起構造部を有するポリシロキサン等が挙げられる。
【0083】
液晶層40は、負の誘電率異方性を有する液晶分子41を含んでいる。液晶分子41は、例えば、互いに直交する長軸及び短軸をそれぞれ中心軸として回転対称な形状をなし、負の誘電率異方性を有している。
【0084】
液晶分子41は、配向膜22との界面近傍において、配向膜22に保持された液晶分子41Aと、配向膜32との界面近傍において配向膜32に保持された液晶分子41Bと、それら以外の液晶分子41Cとに分類することができる。液晶分子41Cは、液晶層40の厚み方向における中間領域に位置し、駆動電圧がオフの状態において液晶分子41Cの長軸方向(ダイレクタ)がガラス基板20A,30Aに対してほぼ垂直になるように配列されている。ここで、駆動電圧がオンになると、液晶分子41Cのダイレクタがガラス基板20A,30Aに対して平行になるように傾いて配向する。このような挙動は、液晶分子41Cにおいて、長軸方向の誘電率が短軸方向よりも小さいという性質を有することに起因している。液晶分子41A,41Bも同様の性質を有することから、駆動電圧のオン・オフの状態変化に応じて、基本的には、液晶分子41Cと同様の挙動を示す。但し、駆動電圧がオフの状態において、液晶分子41Aは配向膜22によってプレチルトθ1が付与され、そのダイレクタがガラス基板20A,30Aの法線方向から傾斜した姿勢となる。同様に、液晶分子41Bは配向膜32によってプレチルトθ2が付与され、そのダイレクタがガラス基板20A,30Aの法線方向から傾斜した姿勢となる。尚、ここで、「保持される」とは、配向膜22,32と液晶分子41A,41Cとが固着せずに、液晶分子41の配向を規制していることを表している。また、「プレチルトθ(θ1,θ2)」とは、図2に示すように、ガラス基板20A,30Aの表面に垂直な方向(法線方向)をZとした場合に、駆動電圧がオフの状態で、Z方向に対する液晶分子41(41A,41B)のダイレクタDの傾斜角度を指す。
【0085】
液晶層40では、プレチルトθ1,θ2の双方が0°よりも大きな値を有している。この液晶層40では、プレチルトθ1,θ2は、同じ角度(θ1=θ2)であってもよいし、異なる角度(θ1≠θ2)であってもよいが、中でも、プレチルトθ1,θ2は、異なる角度であることが好ましい。これにより、プレチルトθ1,θ2の双方が0°である場合よりも駆動電圧の印加に対する応答速度が向上すると共に、プレチルトθ1,θ2の双方が0°である場合とほぼ同等のコントラストを得ることができる。よって、応答特性を向上させつつ、黒表示の際の光の透過量を低減することができ、コントラストを向上させることができる。プレチルトθ1,θ2を異なる角度とする場合、プレチルトθ1,θ2のうちの大きい方のプレチルトθは、1°以上、4°以下であることがより望ましい。大きい方のプレチルトθを上記した範囲内にすることにより、特に、高い効果が得られる。
【0086】
次に、上記の液晶表示装置(液晶表示素子)の製造方法について、図3に表したフローチャートと共に、図4に表した配向膜22,32中の状態を説明するための模式図、並びに、図5、図6及び図7の(A)に表した液晶表示装置等の模式的な一部断面図を参照して説明する。尚、図5、図6及び図7の(A)では、簡略化のため、一画素分についてのみ示す。
【0087】
最初に、TFT基板20の表面に配向膜22を形成すると共に、CF基板30の表面に配向膜32を形成する(ステップS101)。
【0088】
具体的には、先ず、ガラス基板20Aの表面に、所定のスリット部21を有する画素電極20Bを例えばマトリクス状に設けることによりTFT基板20を作製する。また、カラーフィルタが形成されたガラス基板30Aのカラーフィルタ上に、対向電極30Bを設けることによりCF基板30を作製する。
【0089】
一方、例えば、配向処理前・化合物あるいは配向処理前・化合物としての高分子化合物前駆体と、溶剤と、必要に応じて垂直配向剤とを混合することにより液状の配向膜材料を調製する。
【0090】
配向処理前・化合物としての高分子化合物前駆体として、例えば、側鎖として架橋性官能基を有する高分子化合物が式(41)に示したポリイミド構造を含む場合、架橋性官能基を有するポリアミック酸が挙げられる。高分子化合物前駆体としてのポリアミック酸は、例えば、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて合成される。ここで用いるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一方が、架橋性官能基を有している。ジアミン化合物として、例えば、式(A−1)〜式(A−16)で表される架橋性官能基を有する化合物が挙げられ、テトラカルボン酸二無水物として、式(a−1)〜式(a−10)で表される架橋性官能基を有する化合物が挙げられる。また、配向処理前・化合物が垂直配向誘起構造部を含むように高分子化合物前駆体としてのポリアミック酸を合成する場合、上記の架橋性官能基を有する化合物の他に、ジアミン化合物として式(B−1)〜式(B−36)で表される垂直配向誘起構造部を有する化合物や、テトラカルボン酸二無水物として式(b−1)〜式(b−3)で表される垂直配向誘起構造部を有する化合物を用いてもよい。更に、配向処理前・化合物が式(51)におけるR2として垂直配向誘起構造部を含む構造と、式(51)におけるR2として架橋性官能基を含む構造との2種の構造を含むように高分子化合物前駆体としてのポリアミック酸を合成する場合、例えば、次のように、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物を選択する。即ち、式(A−1)〜式(A−16)に示す架橋性官能基を有する化合物のうちの少なくとも1種と、式(B−1)〜式(B−36)に示す垂直配向誘起構造部を有する化合物のうちの少なくとも1種と、式(C−1)〜式(C−23)で表されるテトラカルボン酸二無水物のうちの少なくとも1種とを用いる。
【0091】

【0092】

ここで、X1〜X4は単結合あるいは2価の有機基である。
【0093】


ここで、X5〜X7は単結合あるいは2価の有機基である。
【0094】

【0095】

【0096】

【0097】

【0098】

ここで、a4〜a6は0以上、21以下の整数である。
【0099】

ここで、a4は0以上、21以下の整数である。
【0100】

ここで、a4は0以上、21以下の整数である。
【0101】

【0102】

【0103】

【0104】

【0105】
配向膜材料中における配向処理前・化合物あるいは配向処理前・化合物としての高分子化合物前駆体の含有量を、1重量%以上、30重量%以下とすることが好ましく、3重量%以上、10重量%以下とすることがより好ましい。また、配向膜材料には、必要に応じて、光重合開始剤等を混合してもよい。
【0106】
そして、調製した配向膜材料を、TFT基板20及びCF基板30のそれぞれに、画素電極20B及びスリット部21、並びに、対向電極30Bを覆うように塗布あるいは印刷した後、加熱処理をする。加熱処理の温度は80゜C以上が好ましく、150゜C以上、200゜C以下とすることがより好ましい。また、加熱処理は、加熱温度を段階的に変化させてもよい。これにより、塗布あるいは印刷された配向膜材料に含まれる溶剤が蒸発し、側鎖として架橋性官能基を有する高分子化合物(配向処理前・化合物)を含む配向膜22,32が形成される。この後、必要に応じて、ラビング等の処理を施してもよい。
【0107】
ここで、配向膜22,32中における配向処理前・化合物は、図4に示す状態となっていると考えられる。即ち、配向処理前・化合物は、主鎖Mc(Mc1〜Mc3)と、主鎖Mcに側鎖として導入された架橋性官能基Aとを含んで構成され、主鎖Mc1〜Mc3が連結していない状態で存在している。この状態における架橋性官能基Aは、熱運動によりランダムな方向を向いている。
【0108】
次に、TFT基板20とCF基板30とを配向膜22と配向膜32とが対向するように配置し、配向膜22と配向膜32との間に、液晶分子41を含む液晶層40を封止する(ステップS102)。具体的には、TFT基板20あるいはCF基板30のどちらか一方の、配向膜22,32の形成されている面に対して、セルギャップを確保するためのスペーサ突起物、例えば、プラスチックビーズ等を散布すると共に、例えば、スクリーン印刷法によりエポキシ接着剤等を用いてシール部を印刷する。この後、図5に示すように、TFT基板20とCF基板30とを、配向膜22,32が対向するように、スペーサ突起物及びシール部を介して貼り合わせ、液晶分子41を含む液晶材料を注入する。その後、加熱するなどしてシール部の硬化を行うことにより、液晶材料をTFT基板20とCF基板30との間に封止する。図5は、配向膜22及び配向膜32の間に封止された液晶層40の断面構成を表している。
【0109】
次に、図6に示すように、画素電極20Bと対向電極30Bとの間に、電圧印加手段1を用いて、電圧V1を印加する(ステップS103)。電圧V1は、例えば、5ボルト〜30ボルトである。これにより、ガラス基板20A,30Aの表面に対して所定の角度をなす方向の電場(電界)が生じ、液晶分子41が、ガラス基板20A,30Aの垂直方向から所定方向に傾いて配向する。即ち、このときの液晶分子41の方位角(偏角)は電場の方向によって規定され、極角(天頂角)は電場の強さによって規定される。そして、液晶分子41の傾斜角と、後述する工程で、配向膜22との界面近傍において配向膜22に保持された液晶分子41A及び配向膜32との界面近傍において配向膜32に保持された液晶分子41Bに付与されるプレチルトθ1,θ2は、概ね等しくなる。従って、電圧V1の値を適宜調節することにより、液晶分子41A,41Bのプレチルトθ1,θ2の値を制御することが可能である。
【0110】
更に、図7の(A)に示すように、電圧V1を印加した状態のまま、エネルギー線(具体的には紫外線UV)を、例えば、TFT基板20の外側から配向膜22,32に対して照射する。即ち、液晶分子41を一対の基板20,30の表面に対して斜め方向に配列させるように、液晶層に対して電場又は磁場を印加しながら紫外線を照射する。これによって、配向膜22,32中の配向処理前・化合物が有する架橋性官能基を反応させ、配向処理前・化合物を架橋させる(ステップS104)。こうして、配向処理後・化合物により液晶分子41の応答すべき方向が記憶され、配向膜22,32近傍の液晶分子41にプレチルトが付与される。そして、この結果、配向膜22,32中において配向処理後・化合物が形成され、非駆動状態において、液晶層40における配向膜22,32との界面近傍に位置する液晶分子41A,41Bにプレチルトθ1,θ2が付与される。紫外線UVとして、波長365nm程度の光成分を多く含む紫外線が好ましい。短波長域の光成分を多く含む紫外線を用いると、液晶分子41が光分解し、劣化する虞があるからである。尚、ここでは、紫外線UVをTFT基板20の外側から照射したが、CF基板30の外側から照射してもよく、TFT基板20及びCF基板30の双方の基板の外側から照射してもよい。この場合、透過率が高い方の基板側から紫外線UVを照射することが好ましい。また、CF基板30の外側から紫外線UVを照射した場合、紫外線UVの波長域に依っては、カラーフィルタに吸収されて架橋反応し難くなる虞がある。このため、TFT基板20の外側(画素電極を有する基板側)から照射することが好ましい。
【0111】
ここで、配向膜22,32中の配向処理後・化合物は、図7の(B)に示す状態となっている。即ち、配向処理前・化合物の主鎖Mcに導入された架橋性官能基Aの向きが、液晶分子41の配向方向に従って変化し、物理的な距離が近い架橋性官能基A同士が反応して、連結部Crが形成される。このように生成された配向処理後・化合物によって配向膜22,32が液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθ1,θ2を付与するものと考えられる。尚、連結部Crは、配向処理前・化合物間で形成されてもよいし、配向処理前・化合物内で形成されてもよい。即ち、図7の(B)に示すように、連結部Crは、例えば、主鎖Mc1を有する配向処理前・化合物の架橋性官能基Aと、主鎖Mc2を有する配向処理前・化合物の架橋性官能基Aとの間で反応して形成されてもよい。また、連結部Crは、例えば、主鎖Mc3を有する高分子化合物のように、同じ主鎖Mc3に導入された架橋性官能基A同士が反応して形成されてもよい。
【0112】
以上の工程により、図1に示した液晶表示装置(液晶表示素子)を完成させることができた。
【0113】
液晶表示装置(液晶表示素子)の動作にあっては、選択された画素10では、駆動電圧が印加されると、液晶層40に含まれる液晶分子41の配向状態が、画素電極20Bと対向電極30Bとの間の電位差に応じて変化する。具体的には、液晶層40では、図1に示した駆動電圧の印加前の状態から、駆動電圧が印加されることにより、配向膜22,32の近傍に位置する液晶分子41A,41Bが自らの傾き方向に倒れ、且つ、その動作がその他の液晶分子41Cに伝播する。その結果、液晶分子41は、TFT基板20及びCF基板30に対してほぼ水平(平行)となる姿勢をとるように応答する。これにより、液晶層40の光学的特性が変化し、液晶表示素子への入射光が変調された出射光となり、この出射光に基づいて階調表現されることで、映像が表示される。
【0114】
ここで、プレチルト処理が全く施されていない液晶表示素子及びそれを備えた液晶表示装置について説明する。プレチルト処理が全く施されていない液晶表示素子では、駆動電圧が印加されると、基板に対して垂直方向に配向していた液晶分子は、そのダイレクタが基板の面内方向において任意の方位を向くように倒れる。このように駆動電圧に応答した液晶分子では、各液晶分子のダイレクタの方位がぶれた状態となり、全体としての配向に乱れが生じる。これにより、応答速度が遅くなり、表示特性を悪化させるという問題がある。また、初期の駆動電圧を表示状態の駆動電圧よりも高く設定して駆動(オーバードライブ駆動)させると、初期駆動電圧印加時において、応答した液晶分子と、殆ど応答していない液晶分子とが存在し、それらの間でダイレクタの傾きに大きな差が生じる。その後に表示状態の駆動電圧が印加されると、初期駆動電圧印加時に応答した液晶分子は、その動作が他の液晶分子に対して殆ど伝播しないうちに、表示状態の駆動電圧に応じたダイレクタの傾きとなり、この傾きが他の液晶分子に伝播する。その結果、画素全体として、初期駆動電圧印加時に表示状態の輝度に達するが、その後、輝度が低下し、再度、表示状態の輝度に達する。即ち、オーバードライブ駆動すれば、オーバードライブ駆動しない場合よりも見かけの応答速度は早くなるが、十分な表示品位が得られ難いという問題がある。尚、これらの問題は、IPSモードやFFSモードの液晶表示素子では生じ難く、VAモードの液晶表示素子において特有の問題と考えられる。
【0115】
これに対して、実施の形態1の液晶表示装置(液晶表示素子)及びその製造方法では、上記した配向膜22,32が液晶分子41A,41Bに対して所定のプレチルトθ1,θ2を付与する。これにより、プレチルト処理が全く施されていない場合の問題が生じ難くなり、駆動電圧に対する応答速度が大幅に向上し、オーバードライブ駆動時における表示品位も向上する。その上、TFT基板20及びCF基板30のうちの少なくとも一方には、液晶分子41の配向を規制するための配向規制部としてスリット部21等が設けられているので、視野角特性等の表示特性が確保されるため、良好な表示特性を維持した状態で応答特性が向上する。
【0116】
また、従来の液晶表示装置の製造方法(光配向膜技術)では、配向膜は、基板面上に設けられた所定の高分子材料を含む前駆体膜に対して直線偏光の光や基板面に対する斜め方向の光(以下、『斜め光』と呼ぶ)を照射して形成され、これによりプレチルト処理が施される。このため、配向膜を形成する際に、直線偏光の光を照射する装置や、斜め光を照射する装置といった大がかりな光照射装置が必要とされるという問題がある。また、より広い視野角を実現するためのマルチドメインを有する画素の形成には、より大がかりな装置が必要とされる上、製造工程が複雑になるという問題もある。特に、斜め光を用いて配向膜を形成する場合、基板上にスペーサ等の構造物あるいは凹凸があると、構造物等の陰になり、斜め光が届かない領域が生じ、この領域において液晶分子に対する所望の配向規制が難しくなる。この場合、例えば、画素内にマルチドメインを設けるためにフォトマスクを用いて斜め光を照射するには、光の回り込みを考慮した画素設計が必要となる。即ち、斜め光を用いて配向膜を形成する場合、高精細な画素形成が難しいという問題もある。
【0117】
更に、従来の光配向膜技術の中でも、高分子材料として架橋性高分子化合物を用いる場合、前駆体膜中において架橋性高分子化合物に含まれる架橋性官能基は、熱運動によりランダムな方位(方向)を向いているため、架橋性官能基同士の物理的距離が近づく確率が低くなる。その上、ランダム光(非偏光)を照射した場合、架橋性官能基同士の物理的距離が近づくことにより反応するが、直線偏光の光を照射して反応する架橋性官能基は、偏光方向と反応部位の方向とが所定の方向に揃う必要がある。また、斜め光は、垂直光と比較して、照射面積が広がる分だけ、単位面積当たりの照射量が低下する。即ち、直線偏光の光あるいは斜め光に反応する架橋性官能基の割合は、ランダム光(非偏光)を基板面に対して垂直方向から照射した場合と比較して低くなる。よって、形成された配向膜中における架橋密度(架橋度合い)が低くなり易い。
【0118】
これに対して、実施の形態1では、配向処理前・化合物を含む配向膜22,32を形成した後、配向膜22と配向膜32の間に液晶層40を封止する。次いで、液晶層40に電圧を印加することにより、液晶分子41が所定の配向をとると共に、液晶分子41によって架橋性官能基の向きが整えられながら(即ち、液晶分子41によって、基板あるいは電極に対する側鎖の末端構造部の方向が規定されながら)、配向膜22,32中の配向処理前・化合物を架橋させる。これにより、液晶分子41A,41Bにプレチルトθを付与する配向膜22,32を形成することができる。即ち、実施の形態1の液晶表示装置(液晶表示素子)及びその製造方法によれば、大がかりな装置を用いなくても、容易に応答特性を向上させることができる。その上、配向処理前・化合物を架橋させる際に、紫外線の照射方向に依存することなく液晶分子41に対してプレチルトθを付与することができるため、高精細な画素を形成することができる。更に、配向処理前・化合物において架橋性官能基の向きが整った状態で配向処理後・化合物が生成されるため、配向処理後・化合物の架橋度合いは、上記の従来の製造方法による配向膜よりも高くなっていると考えられる。よって、長時間駆動しても、駆動中に架橋構造が新たに形成され難いため、液晶分子41A,41Bのプレチルトθ1,θ2が製造時の状態に維持され、信頼性を向上させることもできる。
【0119】
更に、他の従来の液晶表示素子の製造方法では、光重合性を有するモノマー等を含む液晶材料を用いて液晶層を形成した後、モノマーを含んだ状態で、液晶層中の液晶分子を所定の配向させながら光照射してモノマーを重合させる。このようにして形成されたポリマーが、液晶分子に対してプレチルトを付与している。ところが、製造された液晶表示素子では、未反応の光重合性のモノマーが液晶層中に残留し、信頼性を低下させるという問題がある。また、未反応のモノマーを少なくするためには光照射時間を長くする必要があり、製造に要する時間(タクト)が長くなるという問題もある。
【0120】
これに対して、実施の形態1では、上記したようにモノマーを添加した液晶材料を用いて液晶層を形成しなくても、配向膜22,32が液晶層40中の液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθ1,θ2を付与するため、信頼性を向上させることができる。更に、タクトが長くなることも抑制することができる。更に、ラビング処理といった従来の液晶分子に対するプレチルトを付与する技術を用いなくても、良好に液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθを付与できる。このため、ラビング処理の問題点である、配向膜に傷が付くラビング傷によるコントラストの低下や、ラビング時の静電気による配線の断線や、異物による信頼性等の低下が生じることもない。
【0121】
実施の形態1では、主にポリイミド構造を含む主鎖を有する配向処理前・化合物を含有する配向膜22,32を用いた場合について説明したが、配向処理前・化合物が有する主鎖は、ポリイミド構造を含むものに限定されない。例えば、主鎖が、ポリシロキサン構造、ポリアクリレート構造、ポリメタクリレート構造、マレインイミド重合体構造、スチレン重合体構造、スチレン/マレインイミド重合体構造、ポリサッカライド構造又はポリビニルアルコール構造等を含んでいてもよく、中でも、ポリシロキサン構造を含む主鎖を有する配向処理前・化合物が好ましい。また、主鎖を構成する化合物のガラス転移温度Tgは200゜C以上であることが望ましい。上記したポリイミド構造を含む高分子化合物と同様の効果が得られるからである。ポリシロキサン構造を含む主鎖を有する配向処理前・化合物として、例えば、式(81)で表されるポリシラン構造を含む高分子化合物が挙げられる。式(81)におけるR10及びR11は、炭素を含んで構成された1価の基であれば任意であるが、R10及びR11のうちのいずれか一方に、側鎖としての架橋性官能基を含んでいることが好ましい。配向処理後・化合物において、十分な配向規制能が得られ易いからである。この場合における架橋性官能基として、上記した式(51)に示した基等が挙げられる。
【0122】

ここで、R10及びR11は1価の有機基であり、m1は1以上の整数である。
【0123】
更に、実施の形態1では、画素電極20Bにスリット部21を設けることにより、液晶分子41が倒れる方向を規定すると共に、配向分割させて視野角特性を向上させるようにしたが、それに限定されるものではない。例えば、スリット部21の代わりに、画素電極20Bと配向膜22との間に突起を設けてもよい。このように突起を設けることによっても、スリット部21を設けた場合と同様の効果を得ることができる。更に、CF基板30の対向電極30Bと配向膜32との間にも突起を設けてもよい。この場合、TFT基板20上の突起とCF基板30上の突起とは、基板間で対向しないように配置されている。この場合においても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0124】
次に、他の実施の形態について説明するが、実施の形態1と共通の構成要素については、同一の符号を付して説明は省略する。また、実施の形態1と同様の作用及び効果についても、適宜省略する。更には、実施の形態1において説明した以上の各種の技術的事項は、適宜、他の実施の形態にも適用される。
【0125】
[実施の形態2]
実施の形態2は、実施の形態1の変形である。実施の形態1では、配向膜22,32をその近傍に位置する液晶分子41A,41Bのプレチルトθ1,θ2がほぼ同一となるように形成した液晶表示装置(液晶表示素子)について説明したが、実施の形態2にあっては、プレチルトθ1とプレチルトθ2とを異ならせる。
【0126】
具体的には、実施の形態2にあっては、先ず、上記したステップS101と同様にして、配向膜22を有するTFT基板20及び配向膜32を有するCF基板30を作製する。次に、液晶層40中に、例えば、紫外線吸収剤を含ませて封止する。続いて、画素電極20Bと対向電極30Bとの間に所定の電圧を印加してTFT基板20側から紫外線を照射して、配向膜22中の配向処理前・化合物を架橋させる。この際、液晶層40中に紫外線吸収剤が含まれているので、TFT基板20側から入射した紫外線は、液晶層40中の紫外線吸収剤に吸収され、CF基板30側には殆ど到達しない。このため、配向膜22中において、配向処理後・化合物が生成される。続いて、上記の所定の電圧とは異なる電圧を画素電極20Bと対向電極30Bとの間に印加し、CF基板30側から紫外線を照射して配向膜32中の配向処理前・化合物を反応させ、配向処理後・化合物を形成する。これにより、TFT基板20側から紫外線を照射する場合に印加する電圧と、CF基板30側から紫外線を照射する場合に印加する電圧とに応じて、配向膜22,32の近傍に位置する液晶分子41A,41Bのプレチルトθ1,θ2が設定可能となる。よって、プレチルトθ1とプレチルトθ2とを異ならせることができる。但し、TFT基板20にはTFTスイッチング素子や各種バスラインが設けられており、駆動時には種々の横電場が生じている。このことから、TFT基板20の側の配向膜22を、その近傍に位置する液晶分子41Aのプレチルトθ1が配向膜32近傍に位置する液晶分子41Bのプレチルトθ2よりも大きくなるように形成することが望ましい。これにより、横電場による液晶分子41Aの配向乱れを効果的に低減することができる。
【0127】
[実施の形態3]
実施の形態3は、実施の形態1〜実施の形態2の変形である。実施の形態3では、本発明の第1の態様に係る液晶表示装置(液晶表示素子)に則った表現をすれば、配向膜22,32は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖又は側鎖中に式(1)〜式(11)で表される骨格のうちの少なくとも1種を含む配向処理前・化合物を含み、配向処理後・化合物が液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθ1,θ2を付与する。また、後述する実施の形態7[本発明の第5の態様に係る液晶表示装置(液晶表示素子)]に則った表現をすれば、配向膜22,32は、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に式(1)〜式(11)で表される骨格のうちの少なくとも1種を含む配向処理前・化合物を含み、配向処理後・化合物が液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθ1,θ2を付与する。式(1)〜式(11)に示した骨格は、主鎖又は側鎖のいずれか一方だけに含まれていてもよいし、双方に含まれていてもよい。式(1)〜式(11)で表される骨格を側鎖中に有する場合、その側鎖がエーテル結合又はエステル結合を介して主鎖に結合していることが好ましい。
【0128】

【0129】
あるいは又、本発明の第2の態様に係る液晶表示装置(液晶表示素子)に則った表現をすれば、配向膜22,32は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖又は側鎖中に、
(a)2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造、又は、
(b)2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている(即ち、環構造(立体構造)における環同士が互いに捩れていて同一面上に無い)骨格構造、
を含む高分子化合物の側鎖が架橋した化合物(配向処理後・化合物)を含み、配向処理後・化合物が液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθ1,θ2を付与する。また、後述する実施の形態7[本発明の第6の態様に係る液晶表示装置(液晶表示素子)]に則った表現をすれば、配向膜22,32は、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造、又は、
(b)2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている(即ち、環構造(立体構造)における環同士が互いに捩れていて同一面上に無い)骨格構造、
を含む化合物(配向処理後・化合物)を含み、配向処理後・化合物が液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθ1,θ2を付与する。ここで、2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造として、上述した式(4)及び式(5)を例示することができるし、2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている骨格構造として、上述した式(6)〜式(9)を例示することができるが、これらの高分子化合物は立体的に嵩高い。尚、式(21)は、式(1)〜式(3)、式(10)〜式(11)にて示される化合物を一般化した式である。更には、式(31)、式(32)に示した構造を含む化合物を挙げることもできるが、式(31)は、式(4)にて示される化合物を一般化した式である。
【0130】
配向処理後・化合物中に式(1)〜式(11)に示した骨格を含むようにしたのは、これらの骨格を含まない場合と比較して、応答速度が向上するからである。具体的には、以下の理由によると考えられる。配向処理前・化合物の主鎖又は側鎖にこれらの骨格が含まれていると、式(1)〜式(11)に示した骨格は立体的に嵩高いため、配向膜22,32では、絡み合った配向処理前・化合物の主鎖と主鎖との間等に隙間ができ、その密度が疎の状態で形成される。次いで、液晶層40を封止した後、液晶層40に対して所定の電場を印加すると、配向膜22,32近傍の液晶分子41の一部が配向膜22,32の配向処理前・化合物の隙間に入り込み、他の一部の液晶分子41と共に、基板面に対して所定の傾きを有して配向する。この状態で配向処理前・化合物を架橋させることにより、実施の形態1と同様に配向膜22,32近傍の液晶分子41A,41Bにプレチルトθが付与される。その上、配向処理前・化合物の隙間に入り込んだ液晶分子41が配向処理後・化合物に保持されるように固定されるため、配向膜22,32に固定された液晶分子41A,41Bによっても、その近傍の液晶分子41A,41Bにプレチルトθが付与される。このため、液晶層40中におけるプレチルトθを有する液晶分子41A,41Bの割合が多くなり、応答速度が向上する。
【0131】
式(1)〜式(11)に示した骨格は、配向処理前・化合物において主鎖又は側鎖に含まれていれば、これらのうちの1種が含まれていてもよいし、複数種が含まれていてもよいし、高分子化合物中に含まれる数や、連結する構造等は任意である。配向処理前・化合物が上記した式(41)に示したポリイミド構造を含む高分子化合物の場合、上記した式(1)〜式(11)に示した骨格は、例えば、式(41)におけるR1あるいはR2に含まれる。この場合、式(1)〜式(11)に示した骨格は、R1及びR2の双方に含まれていてもよいし、R1及びR2のうちの一方に含まれていてもよい。また、主鎖に含まれた式(1)〜式(11)に示した骨格は、その骨格に側鎖が結合していてもよく、側鎖として、例えば、上記した架橋性官能基を含むものや、垂直配向誘起構造部を含むものなどが挙げられるが、中でも、配向処理前・化合物が上記した式(41)に示したポリイミド構造を含む場合、R2として式(1)〜式(11)に示した骨格を含む繰り返し単位と、R2として垂直配向誘起構造部を含む繰り返し単位と、R2として架橋性官能基を含む繰り返し単位との3種の構造を含んでいることが好ましい。容易に入手可能であると共に、配向処理前・化合物中に含まれる式(1)〜式(11)に示した骨格の割合を調整し易く、後述する配向膜22,32の膜密度を所望の値とし易いからである。
【0132】
あるいは又、本発明の第3の態様に係る液晶表示装置(液晶表示素子)に則った表現をすれば、配向膜22,32は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)アダマンタン同族体、又は、
(b)スピロ化合物、又は、
(c)2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する式(21)で表される構造を含む高分子化合物(例えば、環構造の数が2つである場合には、2つの環構造が2つの原子を共有して結合している)の側鎖が架橋した化合物(高分子化合物)、
を含み、側鎖が架橋した高分子化合物(配向処理後・化合物)が液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθ1,θ2を付与する。また、後述する実施の形態7[本発明の第7の態様に係る液晶表示装置(液晶表示素子)]に則った表現をすれば、配向膜22,32は、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)アダマンタン同族体、又は、
(b)スピロ化合物、又は、
(c)2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する式(21)で表される構造を含む化合物(例えば、環構造の数が2つである場合には、2つの環構造が2つの原子を共有して結合している)を含み、配向処理後・化合物が液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθ1,θ2を付与する。尚、式(21)で表される構造を含む高分子化合物の具体例の一例として、式(22)で表される構造を含む高分子化合物を挙げることができる。具体的には、アダマンタン同族体として、式(1)〜式(3)にて示される化合物を挙げることができるし、スピロ化合物として、式(6)〜式(9)にて示される化合物を挙げることができるし、2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する式(21)で表される構造として、式(1)〜式(3)、式(10)〜式(11)にて示される化合物を挙げることができる。
【0133】


ここで、A及びBは3価以上の有機基、例えば、同一又は異なる3価又は4価の有機基である。
【0134】
式(21)におけるA及びBは、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。有機基は、炭素原子を含んでいれば、水素原子又は酸素原子等の他の原子を1種又は2種以上含んでいてもよい。式(21)に示した構造の具体例が、上記した式(1)〜式(3)、式(10)及び式(11)に示した構造であるが、これらに限定されるわけではない。
【0135】
あるいは又、本発明の第4の態様に係る液晶表示装置(液晶表示素子)に則った表現をすれば、配向膜22,32は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、式(31)又は式(32)で表される化合物(配向処理前・化合物)の少なくとも一方を前駆体ジアミンとするポリイミド化合物の側鎖が架橋した化合物(高分子化合物)を含み、側鎖が架橋した化合物(配向処理後・化合物)が液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθ1,θ2を付与する。また、後述する実施の形態7[本発明の第8の態様に係る液晶表示装置(液晶表示素子)]に則った表現をすれば、配向膜22,32は、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、式(31)又は式(32)で表される化合物(配向処理前・化合物)の少なくとも一方を前駆体ジアミンとするポリイミド化合物を有する化合物(高分子化合物)を含み、配向処理後・化合物が液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθ1,θ2を付与する。
【0136】

ここで、R2、R5、R6及びR7は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R3及びR4は、同一又は異なる2価の有機基であり、a、d、e及びfは0以上、4以下の整数であり、b及びcは0又は1であり、R8、R11、R12及びR13は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R9及びR10は、同一又は異なる2価の有機基であり、g、j、k及びlは0以上、4以下の整数であり、h及びiは0又は1である。
【0137】
式(31)におけるR2及びR5〜R7は、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。このことは、R3及びR4についても同様である。また、R2が複数ある場合、これらは同じ基でもよいし、異なる基でもよい。このことは、R3〜R7についても同様である。R2,R5,R6又はR7が複数存在する場合、これらは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。アルキル基及びアルコキシ基の炭素数、並びに、ハロゲン原子の種類は任意である。有機基は、炭素原子を含んでいれば、水素原子又は酸素原子等の他の原子を1種又は2種以上含んでいてもよい。また、式(32)におけるR8及びR11〜R13は、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。このことは、R9及びR10についても同様である。R8,R11,R12又はR13が複数存在する場合、これらは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。このことは、R9〜R13についても同様である。尚、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子及び有機基に関する詳細は、式(31)について説明した場合と同様である。
【0138】
以上に説明したように、配向処理前・化合物(例えば、ポリアミック酸あるいはポリイミド)は、例えば、以下の式(42)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、上述した式(22)で表される化合物(アダマンタン同族体はこれに含まれる)及び/又は上述した式(31)及び/又は上述した式(32)で表されるジアミン化合物とを反応させることにより得ることができる。尚、垂直配向性の調整のために、式(51−1)〜式(51−27)に示したジアミンを用いてもよい。
【0139】

【0140】
ポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物として、式(C−1)〜式(C−23)、後述する式(d−1)〜式(d−6)が挙げられるし、あるいは又、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等のベンゼン環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、これらのうち、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸無水物、3,4−ジカルボキシ−6−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸無水物、3,4−ジカルボキシ−7−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物及び1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が、これらを含有して成る配向膜材料によって形成される配向膜が、長期に亙って良好な液晶配向性を有するものとなることから好ましく、特に好ましくは、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン及びピロメリット酸二無水物である。
【0141】
上述した式(31)の具体例として、以下の式(E−1)〜(E−3)の化合物を挙げることができるが、式(E−1)及び式(E−3)で表される化合物が、これらを含有して成る配向膜材料によって形成される配向膜が長期に亙って良好な液晶配向性を有するものとなることから特に好ましい。また、上述した式(32)の具体例として、以下の式(E−4)〜(E−6)の化合物を挙げることができるが、式(E−4)で表される化合物が、これを含有して成る配向膜材料によって形成される配向膜が長期に亙って良好な液晶配向性を有するものとなることから特に好ましい。
【0142】

【0143】
テトラカルボン酸二無水物との反応に供されるジアミン化合物のうち、式(E−1)〜式(E−6)で示される特定ジアミン化合物の割合として、本発明の効果を確実に発揮させるという観点から、50モル%〜100モル%、好ましくは70モル%〜100モル%とすることが好ましい。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合は、ジアミン化合物(上述した特定ジアミン化合物あるいはその他のジアミン化合物)に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2当量〜2当量となる割合が好ましく、0.3当量〜1.2当量となる割合が更に好ましい。テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とによるポリアミック酸の合成反応は、有機溶媒中において、通常0゜C〜150゜C、好ましくは0゜C〜100゜Cの温度条件下で、1時間〜48時間行われる。尚、反応条件により、ポリアミック酸の一部がイミド化される場合があるが、配向膜を形成する樹脂として使用することに何ら問題はない。この反応に用いられる有機溶媒として、反応生成物であるポリアミック酸を溶解し得る有機溶媒であれば特に制限はなく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒を挙げることができる。また、有機溶媒の使用量は、通常、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総量を、反応溶液の全量に対して0.1重量%〜30重量%とすることが好ましい。
【0144】
配向膜を構成する樹脂として使用されるポリイミドは、以下の方法により調製することができる。即ち、上述したポリアミック酸を加熱する。この方法における反応温度は、通常、60゜C〜250゜Cとされ、好ましくは100゜C〜170゜Cとされる。反応温度が60゜C未満ではイミド化反応が十分に進行せず、反応温度が250゜Cを超えると得られるイミド化重合体の分子量が低下することがある。
【0145】
上述したとおり、配向膜22,32の膜密度は1.30g/cm3以下であることが好ましい。液晶分子41A,41Bに対してより良好にプレチルトθを付与できるため、応答速度がより向上するからである。中でも、配向膜22,32の膜密度は、1.20g/cm3以上、1.29g/cm3以下であることが好ましい。この範囲内であれば、好ましいプレチルトθにすることができるからである。
【0146】
尚、配向膜22,32の膜密度は、例えば、X線反射率法により算出することができる。具体的には、先ず、配向膜22,32の膜構造を仮定して理論的なX線反射率曲線を算出する。次いで、配向膜22,32のX線反射率を測定し、この測定結果に対して、反射率を計算するための物理量(膜厚、膜密度、表面粗さ等)をパラメータとして理論的なX線反射率曲線をフィッティングする。これにより、最適なフィッティング結果を与える値として膜密度が求められる。
【0147】
実施の形態3の液晶表示装置(液晶表示素子)は、例えば、図3に示したステップS101において配向膜22,32を形成する際に用いる配向膜材料の組成を変更することを除き、実施の形態1の液晶表示装置(液晶表示素子)と同様に製造することができる。
【0148】
配向膜材料は、例えば、上記した配向処理前・化合物あるいは配向処理前・化合物としての高分子化合物前駆体と、溶剤と、必要に応じて垂直配向剤とを混合することにより調製する。この高分子化合物前駆体として、例えば、配向処理前・化合物が式(41)に示したポリイミド構造を含む場合、架橋性官能基を有すると共に式(1)〜式(11)に示した骨格のうちの少なくとも1種を含むポリアミック酸が挙げられる。このポリアミック酸を合成するためのジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物のうちの一方あるいは双方が架橋性官能基を有し、式(1)〜式(11)に示した骨格を含んでいる。架橋性官能基を有するジアミン化合物として、例えば、上記した式(A−1)〜式(A−16)に示した化合物が挙げられ、テトラカルボン酸二無水物として、式(a−1)〜式(a−10)に示した化合物が挙げられる。式(1)〜式(11)に示した骨格を有するジアミン化合物として、例えば、式(D−1)〜式(D−9)で表される化合物が挙げられ、テトラカルボン酸二無水物として、例えば、式(d−1)〜式(d−6)で表される化合物が挙げられる。
【0149】

【0150】

ここで、R1及びR2は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子である。
【0151】
また、配向処理前・化合物が垂直配向誘起構造部を含むように配向処理前・化合物としての高分子化合物前駆体であるポリアミック酸を合成する場合、上記の架橋性官能基を有する化合物及び式(1)〜式(11)に示した骨格を含む化合物の他に、垂直配向誘起構造部を有するジアミン化合物として式(B−1)〜式(B−36)に示した化合物や、テトラカルボン酸二無水物として式(b−1)〜式(b−3)に示した化合物を用いてもよい。
【0152】
更に、配向処理前・化合物が式(41)におけるR2として垂直配向誘起構造部を含む構造と、式(41)におけるR2として架橋性官能基を含む構造と、式(41)におけるR2として式(1)〜式(11)に示した骨格(以下、『嵩高い骨格』と呼ぶ)を含む構造との3種の構造を含むようにポリアミック酸を合成する場合、例えば、次のように、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物を選択する。即ち、例えば式(A−1)〜式(A−16)に示した架橋性官能基を有する化合物のうちの少なくとも1種と、例えば式(B−1)〜式(B−36)に示した垂直配向誘起構造部を有する化合物のうちの少なくとも1種と、例えば式(D−1)〜式(D−9)に示した立体的に嵩高い骨格を含む化合物のうちの少なくとも1種と、例えば式(C−1)〜式(C−23)に示したテトラカルボン酸二無水物のうちの少なくとも1種とを用いる。
【0153】
実施の形態3の液晶表示装置(液晶表示素子)及びその製造方法では、上記した配向膜22,32が液晶分子41A,41Bに対して所定のプレチルトθ1,θ2を付与する。これにより、プレチルト処理が全く施されていない場合の問題が生じ難くなり、駆動電圧に対する応答速度が大幅に向上し、表示品位も向上する。その上、配向膜22,32中に含まれる配向処理後・化合物が式(1)〜式(11)に示した骨格を含むことにより、これらの骨格を含まない場合と比較して、配向膜22,32がプレチルトθ1,θ2を有する状態で保持する液晶分子41A,41Bが増加する。更に、配向膜22,32に保持された液晶分子41A,41Bの傾きが、その近傍の液晶分子41A,41Bに伝播するため、液晶層40全体としてのプレチルトθが付与された液晶分子41A,41Bの割合が増加する。よって、配向膜22,32中に含まれる配向処理後・化合物が式(1)〜式(11)に示した骨格を含まない場合と比較して、応答速度が更に向上する。
【0154】
実施の形態3についての他の作用、効果は、上記した実施の形態1についての作用、効果と同様である。
【0155】
尚、実施の形態3においても、主にポリイミド構造を含む主鎖を有する配向処理前・化合物を含有する配向膜22,32を用いた場合について説明したが、配向処理前・化合物が有する主鎖は、ポリイミド構造を含むものに限定されない。例えば、主鎖が、ポリシロキサン構造、ポリアクリレート構造、ポリメタクリレート構造、マレインイミド重合体構造、スチレン重合体構造、スチレン/マレインイミド重合体構造、ポリサッカライド構造又はポリビニルアルコール構造等を含んでいてもよく、中でも、ポリシロキサン構造を含む主鎖を有する配向処理前・化合物が好ましい。上記したポリイミド構造を含む高分子化合物と同様の効果が得られるからである。ポリシロキサン構造を含む主鎖を有する配向処理前・化合物として、例えば、上記した式(81)に示したポリシラン構造と主鎖を構成する繰り返し単位の1つとして式(1)〜式(11)に示した骨格のうちの少なくとも1種とを含むものが挙げられる。
【0156】
[実施の形態4]
実施の形態4は、実施の形態1〜実施の形態3の変形である。実施の形態4に係る液晶表示装置(液晶表示素子)の模式的な一部断面図を図9に示す。実施の形態4では、実施の形態1と異なり、配向膜22が、配向処理後・化合物を含まずに構成されている。即ち、実施の形態4にあっては、配向膜32近傍に位置する液晶分子41Bのプレチルトθ2が0°よりも大きい値を有している一方、配向膜22近傍に位置する液晶分子41Aのプレチルトθ1が0°となるように構成されている。
【0157】
ここで、配向膜22は、例えば、上記した他の垂直配向剤により構成されている。
【0158】
実施の形態4の液晶表示装置(液晶表示素子)は、TFT基板20の上に配向膜22を形成する際(図3のステップS101)において、配向処理前・化合物あるいは配向処理前・化合物としての高分子化合物前駆体に代えて、上記の他の垂直配向剤を用いることにより製造することができる。
【0159】
実施の形態4の液晶表示装置(液晶表示素子)では、液晶層40において、液晶分子41Aのプレチルトθ1が0°となり、且つ、液晶分子41Bのプレチルトθ2が0°よりも大きくなる。これにより、プレチルト処理が施されていない液晶表示素子にと比較して、駆動電圧に対する応答速度を大幅に向上させることができる。更に、液晶分子41Aがガラス基板20A,30Aの法線方向に近い状態で配向しているので、黒表示の際の光の透過量を低減することができ、実施の形態1〜実施の形態3における液晶表示装置(液晶表示素子)と比較してコントラストを向上させることができる。即ち、この液晶表示装置(液晶表示素子)では、例えば、TFT基板20側に位置する液晶分子41Aのプレチルトθ1を0°とすることによりコントラストを向上させつつ、CF基板30側に位置する液晶分子41Bのプレチルトθ2を0°よりも大きくすることにより応答速度の向上を図ることができる。よって、駆動電圧に対する応答速度とコントラストとを、バランス良く向上させることができる。
【0160】
また、実施の形態4の液晶表示装置(液晶表示素子)及びその製造方法によれば、TFT基板20の上に配向処理前・化合物を含まない配向膜22を形成すると共に、CF基板30の上に配向処理前・化合物を含む配向膜32を形成する。次いで、TFT基板20及びCF基板30の間に液晶層40を封止した後、配向膜32中の配向処理前・化合物を反応させて、配向処理後・化合物を生成する。よって、大がかりな光照射装置を用いなくても、液晶分子41Bに対してプレチルトθを付与する配向膜32を形成することができるため、容易に応答特性を向上させることができる。また、例えば、光重合性モノマーを含む液晶材料を用いて液晶層を封止した後に光重合性モノマーを重合させた場合と比較して、高い信頼性を確保することができる。
【0161】
実施の形態4に関する他の効果は、実施の形態1と同様である。
【0162】
尚、実施の形態4では、図9に示すように、CF基板30を覆う配向膜32が、配向処理後・化合物を含み、液晶層40のうちのCF基板30の側に位置する液晶分子41Bにプレチルトθ2を付与する構成としたが、これに限定されない。即ち、図10に示すように、配向膜32が配向処理後・化合物を含まずに、TFT基板20を覆う配向膜22が配向処理後・化合物を含み、液晶層40のうちのTFT基板20の側に位置する液晶分子41Aにプレチルトθ1を付与する構成としてもよい。この場合においても、実施の形態4と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。但し、上記したようにTFT基板20では、駆動時には種々の横電場が生じていることから、TFT基板20の側の配向膜22を、その近傍に位置する液晶分子41Aに対してプレチルトθ1を付与するように形成することが望ましい。これにより、横電場による液晶分子41の配向乱れを、効果的に低減することができる。
【0163】
[実施の形態5]
実施の形態5も、実施の形態1〜実施の形態3の変形である。実施の形態5に係る液晶表示装置(液晶表示素子)の模式的な一部断面図を図11に示す。実施の形態5では、CF基板30が有する対向電極30Bの構成が異なることを除き、実施の形態1〜実施の形態3の液晶表示装置(液晶表示素子)と同様の構成を有している。
【0164】
具体的には、対向電極30Bには、各画素内において、画素電極20Bと同様のパターンで、スリット部31が設けられている。スリット部31は、スリット部21と基板間で対向しないように配置されている。これにより、駆動電圧が印加されると、液晶分子41のダイレクタに対して斜めの電場が付与されることで、電圧に対する応答速度が向上すると共に、画素内に配向方向の異なる領域が形成されるため(配向分割)、視野角特性が向上する。
【0165】
実施の形態5の液晶表示装置(液晶表示素子)は、図3のステップS101において、CF基板30として、ガラス基板30Aのカラーフィルタ上に、所定のスリット部31を有する対向電極30Bが設けられた基板を用いることにより製造することができる。
【0166】
実施の形態5の液晶表示装置(液晶表示素子)及びその製造方法の作用、効果は、上記した実施の形態1〜実施の形態3の作用、効果と同様である。
【0167】
尚、実施の形態5では、配向膜22,32をその近傍に位置する液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθ1,θ2を付与するように形成したが、実施の形態4において説明した製造方法と同様の方法を用いて配向膜22,32のうちのいずれか一方の近傍に位置する液晶分子41に対してプレチルトθを付与してもよい。この場合においても、実施の形態4と同様の作用、効果が得られる。
【0168】
[実施の形態6]
実施の形態1〜実施の形態5では、液晶層40を設けた状態で配向膜22,32のうちの少なくとも一方において配向処理前・化合物を反応させ、配向処理後・化合物を生成することにより、その近傍の液晶分子41に対してプレチルトを付与した。これに対して、実施の形態6では、液晶層40を設けた状態で、配向膜22,32のうちの少なくとも一方において高分子化合物の構造を分解することにより、その近傍の液晶分子41に対してプレチルトを付与する。即ち、実施の形態6の液晶表示装置(液晶表示素子)は、配向膜22,32の形成方法が異なることを除き、上記した実施の形態1〜実施の形態5と同様の構成を有している。
【0169】
実施の形態6の液晶表示装置(液晶表示素子)は、液晶分子41A、41Bが所定のプレチルトθ1,θ2を有する場合、例えば、以下のように製造される。先ず、TFT基板20及びCF基板30の上に、例えば、上記した他の垂直配向剤等の高分子化合物を含む配向膜22,32を形成する。次に、TFT基板20とCF基板30とを、配向膜22及び配向膜32が対向するように配置し、配向膜22,32の間に液晶層40を封止する。次に、画素電極20Bと対向電極30Bとの間に電圧を印加し、この電圧を印加した状態のまま、上記した紫外線UVよりも、波長250nm程度の短波長域の光成分を多く含む紫外線UVを配向膜22,32に照射する。この際、短波長域の紫外線UVによって、配向膜22,32中の高分子化合物が、例えば分解されることにより構造が変化する。これにより、配向膜22近傍に位置する液晶分子41Aと、配向膜32近傍に位置する液晶分子41Bとに、所定のプレチルトθ1,θ2を付与することができる。
【0170】
液晶層40を封止する前に配向膜22,32が含む高分子化合物として、例えば、式(91)で表されるポリイミド構造を有する高分子化合物が挙げられる。式(91)に示すポリイミド構造は、式(I)の化学反応式に示すように、紫外線UVの照射により式(91)におけるシクロブタン構造が解裂し、式(92)で表される構造となる。
【0171】

ここで、R20は2価の有機基であり、p1は1以上の整数である。
【0172】
実施の形態6では、配向膜22近傍に位置する液晶分子41Aと配向膜32近傍に位置する液晶分子41Bとが所定のプレチルトθ1,θ2を有することにより、プレチルト処理を施されていない液晶表示素子と比較して、応答速度を大幅に向上させることができる。また、大がかりな装置を用いなくても、液晶分子41に対してプレチルトθを付与することが可能な配向膜22,32のうちの少なくとも一方を形成することができる。このため、容易に応答特性を向上させることができる。但し、配向膜22,32に対して照射する紫外線により液晶分子41の分解等が生じる虞があるため、上記した実施の形態1〜実施の形態5の方が、より高い信頼性を確保し易い。
【0173】
[実施の形態7]
実施の形態7は、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置(液晶表示素子)、及び、本発明の第5の態様〜第12の態様に係る液晶表示装置(液晶表示素子)の製造方法に関する。
【0174】
実施の形態1〜実施の形態5にあっては、配向処理後・化合物は、側鎖として架橋性官能基を有する配向処理前・化合物における架橋性官能基が架橋することで得られる。一方、実施の形態7にあっては、配向処理後・化合物は、エネルギー線の照射による変形を伴う感光性官能基を側鎖として有する配向処理前・化合物に基づき得られる。
【0175】
ここで、実施の形態7においても、配向膜22,32は、高分子化合物(配向処理後・化合物)の1種あるいは2種以上を含んで構成されている。そして、液晶分子は、変形した化合物(配向処理後・化合物)によってプレチルトが付与される。ここで、配向処理後・化合物は、主鎖及び側鎖を有する高分子化合物(配向処理前・化合物)の1種あるいは2種以上を含む状態で配向膜22,32を形成した後、液晶層40を設け、次いで、高分子化合物を変形させることで、あるいは又、高分子化合物にエネルギー線を照射することで、より具体的には、電場又は磁場を印加しながら側鎖に含まれる感光性官能基を変形させることにより生成される。尚、このような状態を、図14の概念図に示す。尚、図14において、「UV」が付された矢印の方向、「電圧」が付された矢印の方向は、紫外線が照射される方向、加えられる電界の方向を示すものではない。そして、配向処理後・化合物は、液晶分子を一対の基板(具体的には、TFT基板20及びCF基板30)に対して所定の方向(具体的には、斜め方向)に配列させる構造を含んでいる。このように、高分子化合物を変形させて、あるいは又、高分子化合物にエネルギー線を照射することで、配向処理後・化合物が配向膜22,32中に含まれることにより、配向膜22,32近傍の液晶分子41に対してプレチルトを付与できるため、応答速度が早くなり、表示特性が向上する。
【0176】
感光性官能基として、アゾ基を有するアゾベンゼン系化合物、イミンとアルジミンとを骨格に有する化合物(便宜上、『アルジミンベンゼン』と呼ぶ)、スチレン骨格を有する化合物(便宜上、『スチルベン』と呼ぶ)を例示することができる。これらの化合物は、エネルギー線(例えば、紫外線)に応答して変形する結果、即ち、トランス状態からシス状態へ遷移する結果、液晶分子にプレチルトを付与することができる。
【0177】


【0178】
式(AZ−0)で表されるアゾベンゼン系化合物における「X」として、具体的には、例えば、以下の式(AZ−1)〜式(AX−9)を例示することができる。
【0179】

【0180】


ここで、R,R”のいずれか一方は、ジアミンを含むベンゼン環と結合し、他方は末端基となり、R,R’,R”は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カーボネート基を有する1価の基、又は、それらの誘導体であり、R”はジアミンを含むベンゼン環と直接結合する。
【0181】
実施の形態7の液晶表示装置及びその製造方法は、エネルギー線(具体的には、紫外線)の照射による変形を伴う感光性官能基を有する配向処理前・化合物を用いることを除き、基本的、実質的には、実施の形態1〜実施の形態5において説明した液晶表示装置及びその製造方法と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0182】
実施例1においては、各種の液晶表示装置(液晶表示素子)を作製し、応答速度を測定した。
【0183】
[実施例1A]
実施例1Aにあっては、以下の手順により、図11に示す液晶表示装置(液晶表示素子)を作製した。
【0184】
先ず、TFT基板20及びCF基板30を準備した。TFT基板20として、厚さ0.7mmのガラス基板20Aの一面側に、スリットパターン(線幅60μm、線間10μm:スリット部21)を有するITOから成る画素電極20Bが形成された基板を用いた。また、CF基板30として、カラーフィルタが形成された厚さ0.7mmのガラス基板30Aのカラーフィルタ上に、スリットパターン(線幅60μm、線間10μm:スリット部31)を有するITOから成る対向電極30Bが形成された基板を用いた。この画素電極20B及び対向電極30Bに形成されたスリットパターンによって、TFT基板20とCF基板30との間に斜め電界が加わる。続いて、TFT基板20の上に4μmのスペーサ突起物を形成した。
【0185】
一方、配向膜材料を調製した。この場合、先ず、ジアミン化合物である、式(A−7)に示した架橋性官能基を有する化合物1モルと、式(B−6)に示した垂直配向誘起構造部を有する化合物1モルと、式(C−2)に示したテトラカルボン酸二無水物2モルとを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させた。続いて、この溶液を60゜Cで6時間反応させた後、反応後の溶液に対して、大過剰の純水を注いで反応生成物を沈殿させた。続いて、沈殿した固形物を分離した後、純水で洗浄し、減圧下、40゜Cで15時間乾燥させ、これにより、配向処理前・化合物としての高分子化合物前駆体であるポリアミック酸が合成された。最後に、得られたポリアミック酸3.0グラムをNMPに溶解させることにより、固形分濃度3重量%の溶液とした後、0.2μmのフィルタで濾過した。
【0186】
続いて、TFT基板20及びCF基板30のそれぞれに、調製した配向膜材料をスピンコーターを用いて塗布した後、塗布膜を80゜Cのホットプレートで80秒間乾燥させた。続いて、TFT基板20及びCF基板30を、窒素ガス雰囲気下、200゜Cのオーブンで1時間加熱した。これにより、画素電極20B及び対向電極30B上における厚さが80nm(800Å)の配向膜22,32を形成した。
【0187】
続いて、CF基板30上の画素部周縁に、粒径4μmのシリカ粒子を含む紫外線硬化樹脂を塗布することによりシール部を形成し、これに囲まれた部分に、ネガ型液晶であるMLC−7029(メルク社製)から成る液晶材料を滴下注入した。この後、画素電極20Bのライン部分の中央と、対向電極30Bのスリット部31とが対向するようにTFT基板20とCF基板30とを貼り合わせ、シール部を硬化させた。続いて、120゜Cのオーブンで1時間加熱し、シール部を完全に硬化させた。これにより、液晶層40が封止され、液晶セルを完成させることができた。
【0188】
続いて、このように作製された液晶セルに対して、実効値電圧10ボルトの矩形波の交流電界(60Hz)を印加した状態で、500mJ(波長365nmでの測定)の均一な紫外線を照射し、配向膜22,32中の配向処理前・化合物を反応させた。これにより、TFT基板20及びCF基板30の双方に、配向処理後・化合物を含む配向膜22,32を形成した。以上により、TFT基板20及びCF基板30側の液晶分子41A,41Bがプレチルトをなす図11に示す液晶表示装置(液晶表示素子)を完成させることができた。最後に、液晶表示装置の外側に、吸収軸が直交するように一対の偏光板を貼り付けた。
【0189】
[実施例1B]
実施例1Bにおいては、配向膜材料として、ポリアミック酸に代えて、このポリアミック酸を脱水閉環させて得たイミド化重合体を用いたことを除き、実施例1Aと同様の手順を経た。この際、実施例1Aにおいて合成したポリアミック酸をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた後、ピリジン及び無水酢酸を添加し、この混合溶液を110゜Cで3時間反応させることにより脱水閉環させた。続いて、反応後の混合溶液に対して、大過剰の純水を注いで反応生成物を沈殿させ、沈殿した固形物を分離した後、純水で洗浄した。この後、減圧下、40゜Cで15時間乾燥させることにより、配向処理前・化合物であるイミド化重合体を得た。
【0190】
[実施例1C]
実施例1Cにおいては、ポリアミック酸を合成する際に、式(B−6)に示した垂直配向誘起構造部を有する化合物に代えて、以下の式(B−37)で表される垂直配向誘起構造部を有する化合物を用いたことを除き、実施例1Aと同様の手順を経た。
【0191】

【0192】
[実施例1D]
実施例1Dにおいては、ポリアミック酸を合成する際に、式(C−2)に示したテトラカルボン酸二無水物に代えて、式(C−3)に示したテトラカルボン酸二無水物を用いたことを除き、実施例1Aと同様の手順を経た。
【0193】
[実施例1E]
実施例1Eにおいては、ポリアミック酸を合成する際に、式(C−2)に示したテトラカルボン酸二無水物に代えて、式(C−1)に示したテトラカルボン酸二無水物を用いたことを除き、実施例1Aと同様の手順を経た。
【0194】
[実施例1F]
実施例1Fにおいては、ポリアミック酸を合成する際に、ジアミン化合物として式(A−7)に示した架橋性官能基を有する化合物を用いなかったことと共に、液晶セルに対して照射した紫外線を変更したことを除き、実施例1Aと同様の手順を経た。詳細には、ポリアミック酸を合成する際に、ジアミン化合物として式(B−6)に示した垂直配向誘起構造部を有する化合物2モルを用いた。また、液晶セルに対して、実効値電圧10ボルトの矩形波の交流電界を印加した状態で、100mJ(波長250nmでの測定)の均一な紫外線を照射した。
【0195】
[比較例1A]
比較例1Aにおいては、液晶セルに対して紫外線を照射しなかったことを除き、実施例1Aと同様の手順を経た。
【0196】
[比較例1B]
比較例1Bにおいては、液晶セルに対して照射した紫外線を500mJ(波長365nmでの測定)の均一な紫外線に変更したことを除き、実施例1Fと同様の手順を経た。
【0197】
これらの実施例1A〜実施例1F、比較例1A〜比較例1Bの液晶表示装置(液晶表示素子)について、応答時間を測定したところ、図12に示す結果が得られた。応答時間を測定する際には、測定装置としてLCD5200(大塚電子株式会社製)を用いて、画素電極20Bと対向電極30Bとの間に、駆動電圧(2.5ボルト〜7.5ボルト)を印加し、輝度10%からその駆動電圧に応じた階調の90%の輝度となるまでの時間を測定した。
【0198】
図12に示すように、配向膜22,32が架橋構造と共にポリイミド構造を有する高分子化合物(配向処理後・化合物)を含む実施例1A〜実施例1Eでは、側鎖が架橋したポリイミドを含まない比較例1A、比較例1Bと比較して、応答時間が短縮された。また、配向膜22,32がポリイミドの分解により液晶分子41A,41Bにプレチルトθ1,θ2を付与する実施例1Fでは、応答時間は、実施例1A〜実施例1Eよりも長くなったが、ポリイミドが分解されていない配向膜22,32を有する比較例1A、比較例1Bよりも短縮された。
【0199】
即ち、実施例1A〜実施例1Fでは、配向膜22,32が液晶分子41A,41Bに対してプレチルトθ1,θ2を付与するように形成され、液晶配向性が良好であった。一方、比較例1A、比較例1Bでは、実施例1A〜実施例1Fと同様の配向膜22,32が形成されなかった。
【0200】
これらのことから、VAモードの液晶表示装置(液晶表示素子)では、液晶層40を設けた状態で、配向膜22,32がその近傍の液晶分子41に対してプレチルトθを付与するように、配向膜22,32中の配向処理前・化合物を架橋させ、あるいは高分子化合物の構造を分解する。これにより、応答速度を大幅に向上させることができる。この場合、大がかりな装置を用いなくても、液晶分子41A,41Bに対してプレチルトを付与することが可能な配向膜22,32を形成することができることが確認された。よって、容易に応答特性を向上させることができることが確認された。
【0201】
[参考例1A]
次に、以下の手順により配向膜を形成して、架橋密度を調べた。即ち、実施例1Aの配向膜材料を用いて配向膜を形成した。この場合、先ず、実施例1Aにおいて用いた配向膜材料(固形分濃度3重量%のポリアミック酸溶液)を、ガラス基板の一面側の表面にスピンコーターを用いて塗布した後、塗布膜を80゜Cのホットプレートで80秒間乾燥させた。その後、このガラス基板を、窒素ガス雰囲気下、200゜Cのオーブンで1時間加熱することより、配向処理前・化合物を含む80nm(800Å)厚の配向膜(前駆体膜)を形成した。続いて、ガラス基板の配向膜側から、均一な紫外線(ランダム光)を500mJ(波長365nmでの測定)照射し、前駆体膜中の配向処理前・化合物を反応させて、配向処理後・化合物を含む配向膜を形成した。
【0202】
[参考例1B]
紫外線を照射する際に、ランダム光の代わりに、偏光光を500mJ(波長365nmでの測定)照射したことを除き、参考例1Aと同様の手順を経た。
【0203】
これらの参考例1A、参考例1Bの配向膜について、架橋密度を調べたところ、表1に示す結果が得られた。
【0204】
架橋密度を調べる際には、反射型のFT−IR(Nicolet nexus 470FT−IR;Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、配向膜の赤外スペクトルを測定した。この際、先ず、紫外線照射前の配向膜(前駆体膜)について赤外スペクトル(反射)を測定し、このスペクトルから波数1642cm-1における吸収ピークの面積(前駆体膜における吸収ピーク面積)を算出した。この波数1642cm-1における吸収ピークは、ポリイミドに導入された架橋性官能基(カルコン基)の架橋反応する炭素二重結合(C=C)の伸縮振動に由来するものである。続いて、紫外線照射後の配向膜について上記と同様に赤外スペクトルを測定し、このスペクトルから波数1642cm-1における吸収ピークの面積(紫外線照射後の配向膜における吸収ピーク面積)を算出した。これらの紫外線照射前及び照射後についての吸収ピーク面積から、架橋密度(%)=[1−(紫外線照射後の配向膜における吸収ピーク面積/前駆体膜における吸収ピーク面積)]×100を算出した。
【0205】
[表1]

【0206】
表1に示すように、ランダム光を照射した参考例1Aでは、架橋密度が71.2%となり、架橋密度が47.7%の偏光光を照射した参考例1Bよりも著しく高くなった。この結果は、以下のことを表している。前駆体膜中において架橋性官能基は、熱運動によりランダムな方位(方向)を向いている。ここで、ランダム光(非偏光)を照射すると、架橋性官能基同士の物理的距離が熱運動により近づいたとき、反応して側鎖が架橋する。ところが、偏光光を照射すると、熱運動により、偏光方向と架橋性官能基の反応部位(カルコン基中の架橋反応するC=C結合)の方向とが所定の方向に揃い、且つ、物理的距離が近づいたとき、反応して側鎖が架橋する。このため、架橋させるための紫外線として、ランダム光を用いた場合においては、偏光光を用いた場合よりも、配向膜中の架橋密度が高くなる。
【0207】
このことから、紫外線照射により架橋構造を有する高分子化合物を含む配向膜を形成する際には、紫外線としてランダム光を用いることにより、架橋密度を高くすることができることが確認された。よって、このように形成された架橋密度の高い配向膜を備えた液晶表示装置(液晶表示素子)では、信頼性が向上することが示唆された。
【実施例2】
【0208】
[実施例2A]
実施例2Aにおいては、以下の手順により図1に示した液晶表示装置(液晶表示素子)を作製した。具体的には、先ず、TFT基板20及びCF基板30を準備した。TFT基板20として、厚さ0.7mmのガラス基板20Aの一面側に、スリットパターン(線幅4μm、線間4μm:スリット部21)を有するITOから成る画素電極20Bが形成された基板を用いた。また、CF基板30として、カラーフィルタが形成された厚さ0.7mmのガラス基板30Aのカラーフィルタ上に、ITOから成る対向電極30Bが全面に亙って形成された基板を用いた。この画素電極20Bに形成されたスリットパターンによって、TFT基板20とCF基板30との間に斜め電界が加わる。続いて、TFT基板20の上に感光性アクリル樹脂PC−335(JSR株式会社製)を用いて3.5μmのスペーサ突起物を形成した。
【0209】
一方、配向膜材料を調製した。この場合、先ず、ジアミン化合物である式(A−8)に示した架橋性官能基を有する化合物と、式(B−4)に示した垂直配向誘起構造部を有する化合物と、式(4)に示した骨格を含む式(D−4)に示した化合物と、式(C−2)に示したテトラカルボン酸二無水物とを、表2に示す割合でNMPに溶解させた。続いて、この溶液を60゜Cで4時間反応させた後、反応後の溶液に対して、大過剰のメタノールを注いで反応生成物を沈殿させた。続いて、沈殿した固形物を分離した後、メタノールで洗浄し、減圧下、40゜Cで15時間乾燥させ、これにより、配向処理前・化合物としての高分子化合物前駆体であるポリアミック酸が合成された。最後に、得られたポリアミック酸3.0グラムをNMPに溶解させることにより、固形分濃度3重量%の溶液とした後、0.2μmのフィルタで濾過した。
【0210】
続いて、TFT基板20及びCF基板30のそれぞれに、調製した配向膜材料をスピンコーターを用いて塗布した後、塗布膜を80゜Cのホットプレートで80秒間乾燥させた。続いて、TFT基板20及びCF基板30を、窒素ガス雰囲気下、200゜Cのオーブンで1時間加熱した。これにより、画素電極20B及び対向電極30B上における厚さが90nmの配向膜22,32を形成した。
【0211】
続いて、CF基板30上の画素部周縁に、紫外線硬化樹脂を塗布することによりシール部を形成し、これに囲まれた部分に、ネガ型液晶であるMLC−7029(メルク社製)から成る液晶材料を滴下注入した。この後、画素電極20Bと、対向電極30Bとが対向するようにTFT基板20とCF基板30とを貼り合わせ、シール部を硬化させた。続いて、120゜Cのオーブンで1時間加熱し、シール部を完全に硬化させた。これにより、液晶層40が封止され、液晶セルを完成させることができた。
【0212】
続いて、このように作製された液晶セルに対して、実効値電圧10ボルトの矩形波の交流電界(60Hz)を印加した状態で、500mJ(波長365nmでの測定)の均一な紫外線を照射し、配向膜22,32中の配向処理前・化合物を反応させた。これにより、TFT基板20及びCF基板30の双方に、配向処理後・化合物を含む配向膜22,32を形成した。以上により、TFT基板20及びCF基板30側の液晶分子41A,41Bがプレチルトをなす図1に示した液晶表示装置(液晶表示素子)を完成させることができた。最後に、液晶表示装置の外側に、吸収軸が直交するように一対の偏光板を貼り付けた。
【0213】
[実施例2B,実施例2C]
実施例2B及び実施例2Cにおいては、配向膜材料を調製する際に、式(A−8)に示した架橋性官能基を有する化合物と、式(B−4)に示した垂直配向誘起構造部を有する化合物と、式(D−4)に示した化合物と、式(C−2)に示したテトラカルボン酸二無水物とを、表2に示す割合で用いたことを除き、実施例2Aと同様の手順を経た。
【0214】
[比較例2]
比較例2においては、配向膜材料を調製する際に式(D−4)に示した化合物に代えて、式(F−1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例2Cと同様の手順を経た。
【0215】

【0216】
これらの実施例2A〜実施例2C、比較例2の液晶表示装置(液晶表示素子)について、プレチルトθ及び配向膜22,32の膜密度を測定すると共に、実施例1A等と同様に応答時間を測定したところ、表2及び図13に示す結果が得られた。
【0217】
液晶分子41のプレチルトθを調べる際には、公知の方法(T.J.Scheffer等,J.Appl.Phys.,vol.19,2013頁,1980年に記載されている方法)に準拠し、He−Neレーザ光を用いた結晶回転法により測定した。以下の各種実施例、比較例においても、プレチルトθの測定方法は同様である。尚、プレチルトθは、上述し、図2に示したように、ガラス基板20A,30Aの表面に垂直な方向(法線方向)をZとした場合に、駆動電圧がオフの状態で、Z方向に対する液晶分子41(41A,41B)のダイレクタDの傾斜角度である。
【0218】
配向膜22,32の膜密度を調べる際には、液晶表示装置を分解し、配向膜22,32の表面を洗浄した後、X線反射率法により配向膜22,32のX線反射率を測定した。この測定値を理論的なX線反射率曲線にフィッティングさせることにより、膜密度を算出した。
【0219】
[表2]

【0220】
表2及び図13に示すように、配向膜22,32中の配向処理後・化合物が式(4)に示した骨格を含む実施例2A〜実施例2Cでは、この骨格を含まない比較例2よりも、液晶分子41A,41Bのプレチルトθが大きくなり、配向膜22,32の膜密度は低くなった。そして、実施例2A〜実施例2Cでは、比較例2よりも応答時間が短縮された。更に、実施例2A、実施例2B、実施例2Cを比較すると、配向処理後・化合物中に含まれる式(4)に示した骨格を含む割合が多い程、膜密度が低くなり、プレチルトθは大きくなり、それと対応するように応答時間が短縮された。
【0221】
この結果は、以下のことを表している。即ち、配向処理前・化合物の主鎖に式(4)に示した骨格が含まれていると、骨格が立体的に嵩高いため、配向膜22,32においては、絡み合った配向処理前・化合物の主鎖と主鎖との間に隙間ができ、配向膜22,32は、密度が疎の状態で形成される。次いで、液晶層40を封止した後、液晶層40に対して所定の電場を印加すると、配向膜22,32近傍の液晶分子41の一部が、配向膜22,32の配向処理前・化合物の隙間に入り込み、他の一部の液晶分子41と共に基板面に対して所定の傾きを有して配向する。この状態で配向処理前・化合物の側鎖を架橋させることにより、配向膜22,32近傍の液晶分子41A,41Bにプレチルトθが付与される上、配向処理前・化合物の隙間に入り込んだ液晶分子41が、配向処理後・化合物に保持されるように固定される。このため、配向膜22,32に固定された液晶分子41A,41Bによっても、その近傍の液晶分子41A,41Bにプレチルトθが付与される。よって、液晶層40中におけるプレチルトθを有する液晶分子41A,41Bの割合が多くなり、応答速度が向上する。
【0222】
また、この場合、膜密度が1.30g/cm3以下であれば液晶分子41A,41Bに対して良好にプレチルトθ1,θ2が付与され、応答時間が短縮される傾向がみられた。この場合、配向膜22,32の膜密度が1.20g/cm3以上、1.29g/cm3以下であれば、より応答時間が短くなることが示唆された。
【0223】
尚、実施例2A〜実施例2Cでは、配向膜22,32中の配向処理後・化合物が、式(4)に示した骨格を含む場合の結果を示したが、式(4)に示した骨格に代えて、式(1)〜式(3),式(5)〜式(11)に示した骨格を含む場合においても、実施例2A〜実施例2Cと同様の結果が得られた。
【0224】
これらのことから、VAモードの液晶表示装置(液晶表示素子)では、以下のことが確認された。配向膜22,32は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に式(1)〜式(11)に示した骨格のうちの少なくとも1種を含む配向処理前・化合物に基づき、配向処理後・化合物を得るが、係る配向処理後・化合物が液晶分子41A,41Bにプレチルトθ1,θ2を付与する。これにより、応答特性をより向上させることができる。
【実施例3】
【0225】
[実施例3A〜実施例3J,実施例3a〜実施例3j]
実施例3Aにあっては、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシ酢酸二無水物と、式(E−1)で表された特定ジアミン化合物と、γ−ブチロラクトンとを、等量、NMP中に溶解させ、この溶液を60゜Cで4時間反応させた。次いで、得られた反応溶液をメタノールに注いで反応生成物を沈澱させた。その後、沈殿物を分離してメチルアルコールで洗浄し、減圧下、45゜Cで10時間乾燥させた。これにより、配向処理前・化合物としての高分子化合物前駆体であるポリアミック酸が合成された。最後に、得られたポリアミック酸をNMPに溶解させることにより、固形分濃度3重量%の溶液とした後、0.2μmのフィルターで濾過した。このようにして合成したポリアミック酸溶液を「ポリアミック酸a」と呼ぶ。
【0226】
実施例3aにあっては、実施例3Aで得られたポリアミック酸をNMPに溶解させ、ピリジンと無水酢酸とを添加し、この溶液を110゜Cで3時間イミド化反応させ、脱水閉環させた。次いで、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、ポリイミドを得た。最後に、得られたポリイミドをNMPに溶解させることにより、固形分濃度3重量%の溶液とした後、0.2μmのフィルターで濾過した。このようにして合成したポリイミド溶液を「ポリイミドa」と呼ぶ。
【0227】
式(E−1)で表される特定ジアミン化合物に代えて、式(E−2)〜(E−6)、式(D−1)、式(D−3)、式(D−7)、式(D−6)を使用したこと以外は実施例3Aと同様にして、「実施例3Bのポリアミック」、「実施例3Cのポリアミック」、「実施例3Dのポリアミック」、「実施例3Eのポリアミック」、「実施例3Fのポリアミック」、「実施例3Gのポリアミック」、「実施例3Hのポリアミック」、「実施例3Iのポリアミック」、「実施例3Jのポリアミック」を得た。次いで、ポリアミック酸aに代えて、これら9種類のポリアミック酸を使用したこと以外は実施例3aと同様にして、「実施例3bのポリイミド」、「実施例3cのポリイミド」、「実施例3dのポリイミド」、「実施例3eのポリイミド」、「実施例3fのポリイミド」、「実施例3gのポリイミド」、「実施例3hのポリイミド」、「実施例3iのポリイミド」、「実施例3jのポリイミド」を得た。また、式(E−1)で表される特定ジアミン化合物に代えて、式(F−1)を使用したこと以外は実施例3Aと同様にして、「比較例3Aのポリアミック酸」を得た。次いで、ポリアミック酸aに代えて比較例3Aのポリアミック酸を使用したこと以外は実施例3aと同様にして、「比較例3bのポリイミド」を得た。
【0228】
そして、TFT基板20及びCF基板30のそれぞれに、これらのポリアミック酸及びポリイミドから成る配向膜材料をスピンコーターを用いて塗布した後、塗布膜を80゜Cのホットプレートで80秒間乾燥させた。続いて、TFT基板20及びCF基板30を、窒素ガス雰囲気下、200゜Cのオーブンで1時間加熱した。これにより、画素電極20B及び対向電極30B上における厚さが90nmの配向膜22,32を形成した。続いて、CF基板30上の画素部周縁に、粒径4μmのシリカ粒子を含む紫外線硬化樹脂を塗布することによりシール部を形成し、これに囲まれた部分に、ネガ型液晶であるMLC−7029(メルク社製)から成る液晶材料を滴下注入した。この後、画素電極20Bのライン部分の中央と、対向電極30Bのスリット部31とが対向するようにTFT基板20とCF基板30とを貼り合わせ、シール部を硬化させた。続いて、120゜Cのオーブンで1時間加熱し、シール部を完全に硬化させた。これにより、液晶層40が封止され、液晶セルを完成させることができた。
【0229】
続いて、このように作製された液晶セルに対して、実効値電圧20ボルトの矩形波の交流電界(60Hz)を印加した状態で、500mJ(波長365nmでの測定)の均一な紫外線を照射し、配向膜22,32中の配向処理前・化合物を反応させた。これにより、TFT基板20及びCF基板30の双方に、配向処理後・化合物を含む配向膜22,32を形成した。以上により、TFT基板20及びCF基板30側の液晶分子41A,41Bがプレチルトをなす図4に示した液晶表示装置(液晶表示素子)を完成させることができた。最後に、液晶表示装置の外側に、吸収軸が直交するように一対の偏光板を貼り付けた。このようにして作製された実施例3A〜実施例3J、実施例3a〜実施例3jの液晶表示装置(液晶表示素子)について、液晶分子のプレチルト角の測定値及び特性結果を表3に示す。表3からも、比較例3Aのポリアミック酸、比較例3aのポリイミドを用いた液晶表示装置(液晶表示素子)よりも、実施例3A〜実施例3Jのポリアミック酸、実施例3a〜実施例3jのポリイミドを用いた液晶表示装置(液晶表示素子)の方が、格段に応答速度が早くなっていることが判る。尚、表3中、「応答速度」は、実施例1〜実施例6と同様にして測定した。
【0230】
[表3]

【実施例4】
【0231】
実施例4は、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る液晶表示装置(液晶表示素子)、及び、本発明の第5の態様〜第12の態様に係る液晶表示装置(液晶表示素子)の製造方法に関する。実施例4にあっては、感光性官能基を有する配向処理前・化合物/配向処理後・化合物を用いた。具体的には、以下の式(AZ−11)〜式(AZ−17)に示すアゾベンゼン系化合物を、感光性官能基を有する配向処理前・化合物として用いて、
実施例1Aにおいて説明した、図11に示したと同様の構成、構造を有する液晶表示装置を作製し、応答特性を調べた。
【0232】

【0233】

【0234】
実施例4にあっては、TFT基板20及びCF基板30のそれぞれに、9:1の重量比率の式(AZ−11)に示す化合物と式(A−16)に示す化合物をジアミン原料とし、式(C−2)に示したテトラカルボン酸二無水物を酸二無水物としたポリイミド材料をスピンコーターを用いて塗布した後、塗布膜を80゜Cのホットプレートで80秒間乾燥させた。続いて、TFT基板20及びCF基板30を、窒素ガス雰囲気下、200゜Cのオーブンで1時間加熱した。これにより、画素電極20B及び対向電極30B上における厚さが90nmの配向膜22,32を形成した。
【0235】
続いて、CF基板30上の画素部周縁に、粒径3.5μmのシリカ粒子を含む紫外線硬化樹脂を塗布することによりシール部を形成し、これに囲まれた部分に、ネガ型液晶であるMLC−7029(メルク社製)から成る液晶材料を滴下注入した。この後、画素電極20Bのライン部分の中央と、対向電極30Bのスリット部31とが対向するようにTFT基板20とCF基板30とを貼り合わせ、シール部を硬化させた。続いて、120゜Cのオーブンで1時間加熱し、シール部を完全に硬化させた。これにより、液晶層40が封止され、液晶セルを完成させることができた。
【0236】
続いて、このように作製された液晶セルに対して、実効値電圧20ボルトの矩形波の交流電界(60Hz)を印加した状態で、500mJ(波長365nmでの測定)の均一な紫外線を照射し、配向膜22,32中の配向処理前・化合物を変形させた。これにより、TFT基板20及びCF基板30の双方に、配向処理後・化合物(変形した高分子化合物)を含む配向膜22,32を形成した。以上により、TFT基板20及びCF基板30側の液晶分子41A,41Bがプレチルトをなす液晶表示装置(液晶表示素子)を完成させることができた。最後に、液晶表示装置の外側に、吸収軸が直交するように一対の偏光板を貼り付けた。
【0237】
式(AZ−11)に示す化合物の代わりに、式(AZ−12)〜式(AZ−17)に示す化合物を用いて、上述したと同様にして液晶表示装置(液晶表示素子)を完成させた。
【0238】
比較のために、式(AZ−11)に示す化合物の代わりに、以下の式で表される化合物を用いて、上述したと同様にして液晶表示装置(液晶表示素子)を完成させた。尚、この液晶表示装置(液晶表示素子)を、比較例4と呼ぶ。

【0239】
そして、このようにして作製された液晶表示装置(液晶表示素子)について、プレチルトθ及び応答時間を測定したところ、表4に示す結果が得られた。
【0240】
[表4]

【0241】
表6から、実施例4にあっては、応答速度が、比較例4よりも格段に早いことが判る。また、比較例4では、プレチルトθが殆ど付与されていない。
【0242】
以上、好ましい実施の形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、実施の形態及び実施例ではVAモードの液晶表示装置(液晶表示素子)について説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されず、TNモード、IPS(In Plane Switching )モード、FFS(Fringe Field Switching)モードあるいはOCB(Optically Compensated Bend)モード等の、他の表示モードにも適用可能である。この場合においても同様の効果が得られる。但し、本発明では、プレチルト処理が施されていないものと比較すると、VAモードにおいて、IPSモードやFFSモードよりも、特に高い応答特性の改善効果を発揮することができる。
【0243】
また、実施の形態及び実施例では、専ら透過型の液晶表示装置(液晶表示素子)について説明したが、本発明では必ずしも透過型に限られず、例えば、反射型としてもよい。反射型とした場合には、画素電極がアルミニウム等の光反射性を有する電極材料により構成される。
【符号の説明】
【0244】
1・・・電圧印加手段、10(10A,10B,10C)・・・画素、20・・・TFT基板、30・・・CF基板、20A,30A・・・ガラス基板、20B・・・画素電極、30B・・・対向電極、21,31・・・スリット部、22,32・・・配向膜、40・・・液晶層、41(41A,41B,41C)・・・液晶分子、60・・・表示領域、61・・・ソースドライバ、62・・・ゲートドライバ、63・・・タイミングコントローラ、64・・・電源回路、71・・・ソース線、72・・・ゲート線、A・・・架橋性官能基、Cr・・・連結部、Mc(Mc1,Mc2,Mc3)・・・主鎖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に式(1)〜式(11)で表される骨格のうちの少なくとも1種を含む高分子化合物の側鎖が架橋した化合物を含み、
側鎖が架橋した化合物は、液晶分子にプレチルトを付与する液晶表示装置。

【請求項2】
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造、又は、
(b)2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている骨格構造、
を含む高分子化合物の側鎖が架橋した化合物を含み、
側鎖が架橋した化合物は、液晶分子にプレチルトを付与する液晶表示装置。
【請求項3】
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)アダマンタン同族体、又は、
(b)スピロ化合物、又は、
(c)2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する式(21)で表される構造、
を含む高分子化合物の側鎖が架橋した化合物を含み、
側鎖が架橋した化合物は、液晶分子にプレチルトを付与する液晶表示装置。

ここで、A及びBは、同一又は異なる3価以上の有機基である。
【請求項4】
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、式(31)又は式(32)で表される化合物の少なくとも一方を前駆体ジアミンとするポリイミド化合物の側鎖が架橋した化合物を含み、
側鎖が架橋した化合物は、液晶分子にプレチルトを付与する液晶表示装置。

ここで、R2、R5、R6及びR7は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R3及びR4は、同一又は異なる2価の有機基であり、a、d、e及びfは0以上、4以下の整数であり、b及びcは0又は1であり、R8、R11、R12及びR13は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R9及びR10は、同一又は異なる2価の有機基であり、g、j、k及びlは0以上、4以下の整数であり、h及びiは0又は1である。
【請求項5】
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に式(1)〜式(11)で表される骨格のうちの少なくとも1種を含む化合物を含み、
化合物は、液晶分子にプレチルトを付与する液晶表示装置。

【請求項6】
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造、又は、
(b)2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている骨格構造、
を含む化合物を含み、
化合物は、液晶分子にプレチルトを付与する液晶表示装置。
【請求項7】
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)アダマンタン同族体、又は、
(b)スピロ化合物、又は、
(c)2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する式(21)で表される構造、
を含む化合物を含み、
化合物は、液晶分子にプレチルトを付与する液晶表示装置。

ここで、A及びBは、同一又は異なる3価以上の有機基である。
【請求項8】
一対の基板の対向面側に設けられた一対の配向膜と、一対の配向膜の間に設けられた液晶分子を含む液晶層とを有する液晶表示素子を備え、
一対の配向膜のうちの少なくとも一方は、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、式(31)又は式(32)で表される化合物の少なくとも一方を前駆体ジアミンとするポリイミド化合物を有する化合物を含み、
化合物は、液晶分子にプレチルトを付与する液晶表示装置。

ここで、R2、R5、R6及びR7は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R3及びR4は、同一又は異なる2価の有機基であり、a、d、e及びfは0以上、4以下の整数であり、b及びcは0又は1であり、R8、R11、R12及びR13は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R9及びR10は、同一又は異なる2価の有機基であり、g、j、k及びlは0以上、4以下の整数であり、h及びiは0又は1である。
【請求項9】
一対の配向膜は同じ組成を有する請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
主鎖は繰り返し単位中にイミド結合を含む請求項1乃至請求項3及び請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
一対の配向膜のうちの一方の膜密度は1.30g/cm3以下である請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
化合物は、液晶分子を一対の基板に対して所定の方向に配列させる構造を含む請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
一対の基板は、画素電極を有する基板、及び、対向電極を有する基板から構成されており、液晶分子は負の誘電率異方性を有する請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
一対の基板のうち少なくとも一方には、液晶層側に、スリットを有する電極又は突起が設けられている請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に式(1)〜式(11)で表される骨格のうちの少なくとも1種を含む高分子化合物から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物の側鎖を架橋させて、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む液晶表示装置の製造方法。

【請求項16】
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造、又は、
(b)2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている骨格構造、
を含む高分子化合物から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物の側鎖を架橋させて、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む液晶表示装置の製造方法。
【請求項17】
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)アダマンタン同族体、又は、
(b)スピロ化合物、又は、
(c)2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する式(21)で表される構造、
を含む高分子化合物から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物の側鎖を架橋させて、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む液晶表示装置の製造方法。

ここで、A及びBは、同一又は異なる3価以上の有機基である。
【請求項18】
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基を有すると共に、主鎖中に、式(31)又は式(32)で表される化合物の少なくとも一方を前駆体ジアミンとするポリイミド化合物を有する高分子化合物から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物の側鎖を架橋させて、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む液晶表示装置の製造方法。

ここで、R2、R5、R6及びR7は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R3及びR4は、同一又は異なる2価の有機基であり、a、d、e及びfは0以上、4以下の整数であり、b及びcは0又は1であり、R8、R11、R12及びR13は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R9及びR10は、同一又は異なる2価の有機基であり、g、j、k及びlは0以上、4以下の整数であり、h及びiは0又は1である。
【請求項19】
液晶層に対して所定の電場を印加することにより液晶分子を配向させつつ、紫外線を照射して高分子化合物の側鎖を架橋させる請求項15乃至請求項18のいずれか1項に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項20】
一対の基板の一方に、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に式(1)〜式(11)で表される骨格のうちの少なくとも1種を含む高分子化合物から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物の側鎖を変形させることで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む液晶表示装置の製造方法。

【請求項21】
一対の基板の一方に、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造、又は、
(b)2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている骨格構造、
を含む高分子化合物から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物の側鎖を変形させることで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む液晶表示装置の製造方法。
【請求項22】
一対の基板の一方に、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)アダマンタン同族体、又は、
(b)スピロ化合物、又は、
(c)2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する式(21)で表される構造、
を含む高分子化合物から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物の側鎖を変形させることで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む液晶表示装置の製造方法。

ここで、A及びBは、同一又は異なる3価以上の有機基である。
【請求項23】
一対の基板の一方に、側鎖として感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、式(31)又は式(32)で表される化合物の少なくとも一方を前駆体ジアミンとするポリイミド化合物を有する高分子化合物から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物の側鎖を変形させることで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む液晶表示装置の製造方法。

ここで、R2、R5、R6及びR7は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R3及びR4は、同一又は異なる2価の有機基であり、a、d、e及びfは0以上、4以下の整数であり、b及びcは0又は1であり、R8、R11、R12及びR13は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R9及びR10は、同一又は異なる2価の有機基であり、g、j、k及びlは0以上、4以下の整数であり、h及びiは0又は1である。
【請求項24】
液晶層に対して所定の電場を印加することにより液晶分子を配向させつつ、紫外線を照射して高分子化合物の側鎖を変形させる請求項20乃至請求項23のいずれか1項に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項25】
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基又は感光性官能基を有すると共に、主鎖中に式(1)〜式(11)で表される骨格のうちの少なくとも1種を含む高分子化合物から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物にエネルギー線を照射することで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む液晶表示装置の製造方法。

【請求項26】
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基又は感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)2つ以上の面構造が互いに捩れている骨格構造、又は、
(b)2つ以上の八員環以下の立体構造が互いに捩れている骨格構造、
を含む高分子化合物から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物にエネルギー線を照射することで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む液晶表示装置の製造方法。
【請求項27】
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基又は感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、
(a)アダマンタン同族体、又は、
(b)スピロ化合物、又は、
(c)2つ以上の環構造を含み、且つ、少なくとも2つの環構造が互いに少なくとも2つ以上の原子を共有する式(21)で表される構造、
を含む高分子化合物から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物にエネルギー線を照射することで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む液晶表示装置の製造方法。

ここで、A及びBは、同一又は異なる3価以上の有機基である。
【請求項28】
一対の基板の一方に、側鎖として架橋性官能基又は感光性官能基を有すると共に、主鎖中に、式(31)又は式(32)で表される化合物の少なくとも一方を前駆体ジアミンとするポリイミド化合物を有する高分子化合物から成る第1配向膜を形成する工程と、
一対の基板の他方に、第2配向膜を形成する工程と、
一対の基板を、第1配向膜と第2配向膜とが対向するように配置し、第1配向膜と第2配向膜との間に液晶分子を含む液晶層を封止する工程と、
液晶層を封止した後、高分子化合物にエネルギー線を照射することで、液晶分子にプレチルトを付与する工程、
とを含む液晶表示装置の製造方法。

ここで、R2、R5、R6及びR7は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R3及びR4は、同一又は異なる2価の有機基であり、a、d、e及びfは0以上、4以下の整数であり、b及びcは0又は1であり、R8、R11、R12及びR13は、同一又は異なるアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R9及びR10は、同一又は異なる2価の有機基であり、g、j、k及びlは0以上、4以下の整数であり、h及びiは0又は1である。
【請求項29】
液晶層に対して所定の電場を印加することにより液晶分子を配向させつつ、高分子化合物に紫外線を照射する請求項25乃至請求項28のいずれか1項に記載の液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−95697(P2011−95697A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290980(P2009−290980)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】