説明

液晶表示装置

【課題】製造適性面を低下させることなく、簡易な構成で、光学フィルム全体のRthを確保し、透過率を向上させた液晶表示装置の提供。
【解決手段】一対の透明基板に液晶分子を含む液晶層が挟持された液晶セルと、
前記透明基板の各外側に設置され、偏光子と、少なくとも3層の光学異方性層を有する光学フィルムとを少なくとも有する偏光板とを備え、数式(1)〜(7)の条件を満たすことを特徴とする液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、特に、ベンド配向モードの液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、CRT(Cathode Ray Tube)と比較して、薄型、軽量、低消費電力等の大きな利点を有する。液晶表示装置は、液晶セル、及び該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する。液晶セルは、液晶性分子、及びそれを封入する二枚の基板、及び液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。
また、封入した液晶性分子を配向させるため、通常、二枚の基板には配向膜が設けられる。
また、液晶セルに表示される画像の着色を除去するため、液晶セルと、偏光板との間に光学フィルム(位相差板)を設けることが多い。
偏光板(偏光子)と、光学フィルムとの積層体は、楕円偏光板として機能する。また、光学フィルムに、液晶セルの視野角を拡大する機能を付与する場合もある。光学フィルムとしては、延伸複屈折フィルムが従来から使用されている。
【0003】
延伸複屈折フィルムに代えて、ディスコティック化合物を含む第1の光学異方性層を有する光学フィルムを使用することも提案されている(特許文献1〜4参照)。
第1の光学異方性層は、ディスコティック化合物を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。このディスコティック化合物は、一般に大きな複屈折率を有する。また、ディスコティック化合物には、多様な配向形態がある。
したがって、ディスコティック化合物を用いることで、従来の延伸複屈折フィルムでは得ることができない光学的性質を有する光学フィルムを製造することができる。
【0004】
例えば、液晶セルの上部と下部とで、実質的に逆の方向に(対称的に)棒状液晶性分子を配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置が提案されている(特許文献5〜6参照)。
このような液晶表示装置では、棒状液晶性分子が、液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
そして、ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0005】
ベンド配向モードには、一般的な液晶モード(TNモード、STNモード)と比較すると、視野角が広く、応答速度が速いとの特徴がある。
しかし、CRTと比較すると、更に改良が必要である。ベンド配向モードの液晶表示装置を更に改良するために、一般的な液晶モードと同様に光学フィルムを用いることが考えられる。
しかし、従来の延伸複屈折フィルムからなる光学フィルムは、ベンド配向モードの液晶表示装置では、光学補償機能が不十分であった。
前述したように、延伸複屈折フィルムに代えて、ディスコティック化合物を含む光学的異方性層と支持体とを有する光学フィルムを使用することが提案されている。
更に、ディスコティック化合物を含む光学フィルムを使用したベンド配向モードの液晶表示装置も提案されている(特許文献7〜8参照)。
ディスコティック化合物を含む光学フィルムを使用することで、ベンド配向モードの液晶表示装置の視野角は著しく改善される。
【0006】
ベンド配向モードの液晶表示装置に、ディスコティック化合物を含む光学フィルムを使用すると、特定の波長の光が漏れて、表示画像に着色を生じる問題が指摘されている(特許文献9参照)。
この着色の原因は、楕円偏光板(偏光子と光学フィルムとの積層体)の透過率の波長依存性にある旨が記載されている。
そして、ディスコティック化合物の円盤面の法線の第1の光学異方性層への正射影の平均方向と、偏光子の面内透過軸との角度が実質的に45°になるように、第1の光学異方性層と偏光子とを配置することで、ベンド配向モードの液晶セルに対する最大の光学補償効果が得られることが報告されている。
また、ディスコティック化合物を含む光学フィルムを使用したベンド配向液晶装置について、色味変化を低減し、階調反転を防止するために、様々な方法が提案されている(特許文献10〜12参照)。
【0007】
近年では、液晶表示装置の用途が拡大し、例えば、カーナビゲーションシステム、インストゥルメンタルパネル、後部座席の遊戯用途、及びヘッドアップディスプレイなどにまで採用されている。
したがって、このような用途のベンド配向液晶表示装置においては、より自由度の高い階調表示を実現する必要が生じ、更なる透過率の向上が求められることとなる。
【0008】
液晶表示装置の透過率を向上させるには、液晶セルのΔndを上げる方法や、光学フィルムのRthを高くする方法がある(特許文献13〜14参照)。
しかしながら、液晶セルのΔndを上げる方法では、液晶セルのΔndの値に伴って、光学フィルムの光学特性も最適化する必要がある。
また、光学フィルムのRthを高くする方法として、そのような光学特性を発現する添加剤を添加する場合、該添加剤の泣き出しや、ヘイズ悪化などが生じて製造適性が低下し、実現が困難であった。
【0009】
【特許文献1】特開平6−214116号公報
【特許文献2】米国特許第5583679号明細書
【特許文献3】米国特許第5646703号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第3911620号明細書
【特許文献5】米国特許第4583825号明細書
【特許文献6】米国特許第5410422号明細書
【特許文献7】特開平9−197397号公報
【特許文献8】国際公開WO96/37804号パンフレット
【特許文献9】特開平11−316378号公報
【特許文献10】特許第3056997号公報
【特許文献11】特開2002−40429号公報
【特許文献12】特開2006−243179号公報
【特許文献13】特開平9−211444号公報
【特許文献14】特開2006−243179公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、製造適性を低下させることなく、簡易な構成で、光学フィルム全体のRthを確保し、透過率を向上させた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、少なくとも3層の光学異方性層と、液晶セルとを有する液晶表示装置において、前記液晶セルのΔnd値と、前記光学異方性層のそれぞれの光学特性とを所定の関係を満たすように組み合わせることによって、前記課題が解決されることを知見した。
【0012】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> 一対の透明基板に液晶分子を含む液晶層が挟持された液晶セルと、
前記透明基板の各外側に設置され、偏光子と、少なくとも3層の光学異方性層を有する光学フィルムとを少なくとも有する偏光板とを備え、下記(1)〜(7)の条件を満たすことを特徴とする液晶表示装置である。
(1)前記液晶セルのΔnd値が、800以上1,200未満である。
(2)第1の光学異方性層のラビング角度が、偏光板の透過軸に対し、40°〜50°である。
(3)第1の光学異方性層の下記数式(I)で定義される面内レターデーション値Reが、波長550nmにおいて25nm以上50nm以下である。
(4)第1の光学異方性層の長手方向に対して、第1の光学異方性層の長手方向に対して45°をなす方向のうち、面内屈折率が小さくなる方向と、前記第1の光学異方性層の法線とを含む平面内で、前記法線から前記第1の光学異方性層の面方向に40°傾いた方向から測定したレターデーション値Re(40°)、及び前記法線から逆に40°傾いた方向から測定したレターデーション値Re(−40°)が、下記数式(II)を満たす。但し、下記数式(I)中、nx、及びnyはそれぞれ第1の光学異方性層の面内の遅相軸方向、及び進相軸方向の屈折率である。
Re=(nx−ny)×d・・・・・・・・・・・・・・・・・・・数式(I)
3≦Re(40°)/Re(−40°)≦20・・・・・・・・・・数式(II)
(5)第2の光学異方性層の上記数式(I)で定義される面内レターデーション値Reが、波長550nmにおいて−10nm以上60nm以下であり、第2の光学異方性層の下記数式(III)で定義される厚さ方向のレターデーション値Rthが、波長550nmにおいて0nm以上300nm以下である。
(6)第3の光学異方性層の上記数式(I)で定義される面内レターデーション値Reが、波長550nmにおいて−10nm以上60nm以下であり、第3の光学異方性層の下記数式(III)で定義される厚さ方向のレターデーション値Rthが、波長550nmにおいて25nm以上300nm以下である。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・・数式(III)
但し、上記数式(III)中、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dは厚さである。
(7)200(nm)≦Rth+Rth≦600(nm)
<2> 偏光板は、偏光子上に第3の光学異方性層が形成された第1の偏光板と、第1の光学異方性層、及び第2の光学異方性層を積層してなる第1の光学異方性層積層体とを有し、前記第3の光学異方性層と、前記第2の光学異方性層とが対向するように、前記第1の偏光板と、第1の光学異方性層積層体とが粘着剤を介して接合された前記<1>に記載の液晶表示装置である。
<3> 偏光板は、ロール状に作製された第1の偏光板と、ロール状に作製された第1の光学異方性層積層体とをロールtoロールで貼り合せることによって作製される前記<2>に記載の液晶表示装置である。
<4> 第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層の少なくともいずれかの光弾性係数が10×10−12/N以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の液晶表示装置である。
<5> 第1の光学異方性層は、ディスコティック液晶、及び棒状液晶の少なくともいずれかの液晶性化合物が膜厚方向にハイブリッド配向している前記<1>から<4>のいずれかに記載の液晶表示装置である。
<6> 第1の光学異方性層が、非液晶性ポリマーからなり、該非液晶性ポリマーが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、及びポリエステルイミドからなる群から少なくとも一つが選択される前記<1>から<5>のいずれかに記載の液晶表示装置である。
<7> 第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層の少なくともいずれか一方は、セルローストリアセテート樹脂(TAC)、環状オレフィン共重合体(COC)、環状オレフィン樹脂(COP)である前記<1>から<6>のいずれかに記載の液晶表示装置である。
<8> 液晶セルがベンド配向である前記<1>から<7>のいずれかに記載の液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、製造適性面を低下させることなく、簡易な構成で、光学フィルム全体のRthを確保し、透過率を向上させた液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る液晶表示装置について詳細に説明する。
なお、本実施形態の説明において、「45°」、「平行」あるいは「直交」とは、厳密な角度±5°未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。
また、角度について、「+」は時計周り方向を意味し、「−」は反時計周り方向を意味するものとする。
また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味し、「可視光領域」とは、380〜780nmのことをいう。
更に、屈折率の測定波長は、特別な記述がない限り、可視光域(λ=550nm)での値である。
【0015】
また、本実施形態の説明において「偏光板」とは、特別な記述がない限り、長尺の偏光板、及び液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された偏光板の両者を含む意味で用いている。なお、ここでいう「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする。
また、本実施形態の説明では、「偏光子」と「偏光板」とを区別して用いるが、「偏光板」は「偏光子」の少なくとも片面に該偏光子を保護する透明保護膜を有する積層体のことを意味するものとする。
【0016】
また、本実施形態の説明において「分子対称軸」とは、分子が回転対称軸を有する場合は、当該対称軸を指すが、厳密な意味で、分子が回転対称性であることを要求するものではない。
一般的に、円盤状液晶性化合物において、分子対称軸は、円盤面の中心を貫く円盤面に対して垂直な軸と一致し、棒状液晶性化合物において、分子対称軸は、分子の長軸と一致する。
【0017】
また、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(III)よりRthを算出することもできる。
【0018】

・・・・・・式(A)
【0019】
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
【0020】
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(III)
【0021】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0022】
(光学フィルム)
<光学フィルムの構成>
本発明における光学フィルムは、少なくとも3層の光学異方性層が積層された積層構造を有する。
具体的には、第1の光学異方性層、第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層が、この順に積層されて、光学フィルムを構成する。なお、以下、第2の光学異方性層と、第3の光学異方性層との積層体を光学異方性層積層体ということがある。
本発明の液晶表示装置に用いられる光学フィルムは、後述する液晶セルの無電圧印加時のΔnd値が、800以上1,200未満であることを前提として、以下の(2)〜(7)の光学的要件を満たす光学フィルムである。
(2)第1の光学異方性層のラビング角度が、偏光板の透過軸に対し、40°〜50°
(3)第1の光学異方性層の下記数式(I)で定義される面内レターデーション値Reが、波長550nmにおいて25nm以上50nm以下である。
(4)第1の光学異方性層の長手方向に対して、第1の光学異方性層の長手方向に対して45°をなす方向のうち、面内屈折率が小さくなる方向と、前記第1の光学異方性層の法線とを含む平面内で、前記法線から前記第1の光学異方性層の面方向に40°傾いた方向から測定したレターデーション値Re(40°)、及び前記法線から逆に40°傾いた方向から測定したレターデーション値Re(−40°)が、下記数式(II)を満たす。但し、下記数式(I)中、nx、及びnyはそれぞれ第1の光学異方性層の面内の遅相軸方向、及び進相軸方向の屈折率である。
Re=(nx−ny)×d・・・・・・・・・・・・・・・・・・・数式(I)
3≦Re(40°)/Re(−40°)≦20・・・・・・・・・・数式(II)
(5)第2の光学異方性層の上記数式(I)で定義される面内レターデーション値Reが、波長550nmにおいて−10nm以上60nm以下であり、第2の光学異方性層の下記数式(III)で定義される厚さ方向のレターデーション値Rthが、波長550nmにおいて0nm以上300nm以下である。
(6)第3の光学異方性層の上記数式(I)で定義される面内レターデーション値Reが、波長550nmにおいて−10nm以上60nm以下であり、第3の光学異方性層の下記数式(III)で定義される厚さ方向のレターデーション値Rthが、波長550nmにおいて25nm以上300nm以下である。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・・数式(III)
但し、上記数式(III)中、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dは厚さである。
(7)200(nm)≦Rth+Rth≦600(nm)
【0023】
<<第1の光学異方性層>>
前記3層の光学異方性層のうち、第1の光学異方性層は、液晶化合物から形成された光学異方性層であることが好ましい。
前記第1の光学異方性層は、後述する第2の光学異方性層の表面に直接形成してもよいし、第2の光学異方性層上に配向膜を形成し、該配向膜上に形成してもよい。また、別の基材に形成した液晶化合物層を、粘着剤等を用いて、第2の光学異方性層上に転写することで、本発明の光学フィルムを作製することも可能である。
第1の光学異方性層の形成に用いる液晶化合物としては、棒状液晶化合物及びディスコティック液晶化合物が挙げられる。棒状液晶化合物及びディスコティック液晶化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、更に、低分子液晶が架橋され、液晶性を示さなくなったものも含まれる。
【0024】
[第1の光学異方性層の光学特性]
本発明の液晶表示装置に用いられる偏光板を構成する第1の光学異方性層は、その光学特性として、上記数式(I)で定義されるレターデーション値Reが、波長550nmにおいて25nm以上50nm以下であることが好ましい。
また、前記第1の光学異方性層の長手方向に対して、第1の光学異方性層の長手方向に対して45°をなす方向のうち、面内屈折率が小さくなる方向と、前記第1の光学異方性層の法線とを含む平面内で、前記法線から前記第1の光学異方性層の面方向に40°傾いた方向から測定したレターデーション値Re(40°)、及び前記法線から逆に40°傾いた方向から測定したレターデーション値Re(−40°)が、下記数式(II)を満たすことが好ましい。
3≦Re(40°)/Re(−40°)≦20・・・・・・・数式(II)
【0025】
[棒状液晶化合物]
本発明に使用可能な棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも用いることができる。言い換えると、棒状液晶化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶化合物については、季刊化学総説第22巻「液晶の化学(1994)日本化学会編」の第4章、第7章、及び第11章、及び液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
【0026】
本発明に用いる棒状液晶化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基又はエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基が更に好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。
【0027】
[ディスコティック液晶化合物]
ディスコティック液晶化合物には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0028】
前記ディスコティック液晶化合物には、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、又は置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の、液晶性を示す化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
ディスコティック液晶化合物から第1の光学異方性層を形成した場合、最終的に第1の光学異方性層に含まれる化合物は、もはや液晶性を示す必要はない。
例えば、低分子のディスコティック液晶化合物が熱、又は光で反応する基を有しており、熱又は光によって該基が反応して、重合又は架橋し、高分子量化することによって第1の光学異方性層が形成される場合などは、第1の光学異方性層中に含まれる化合物は、もはや液晶性を失っていてもよい。
ディスコティック液晶化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0029】
ディスコティック液晶化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。
従って、重合性基を有するディスコティック液晶化合物は、下記一般式(I)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0030】
【化1】

上記一般式(I)中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Qは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
【0031】
円盤状コア(D)の例として、(D1)〜(D15)を以下に示す。以下の各例において、LQ(又はQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。
【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
また、上記一般式(I)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。
二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリ−レン基、−CO−、−NH−、−O−及び−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが更に好ましい。
二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−及び−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが特に好ましい。
前記アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。前記アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。前記アリ−レン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0037】
二価の連結基(L)の例として、(L1〜L24)を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基又はアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
【0038】
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
【0039】
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−S−AL−
L21:−S−AL−O−
L22:−S−AL−O−CO−
L23:−S−AL−S−AL−
L24:−S−AR−AL−
【0040】
上記一般式(I)の重合性基(Q)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(Q)は、不飽和重合性基又はエポキシ基であることが好ましく、不飽和重合性基であることが更に好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、上記一般式(I)において、nは4〜12の整数である。具体的な数字は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0041】
前記第1の光学異方性層中に液晶化合物の配向については、第1の光学異方性層の分子対称軸の平均方向が、長手方向に対して43°〜47°であることが好ましい。
ハイブリッド配向では、液晶化合物の分子対称軸と第2の光学異方性層の面との角度が、第1の光学異方性層の深さ方向でかつ第2の光学異方性層の面からの距離の増加と共に増加又は減少している。
角度は、距離の増加と共に増加することが好ましい。更に、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加及び減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。
角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加又は減少していればよい。更に、角度は連続的に変化することが好ましい。
【0042】
液晶化合物の分子対称軸の平均方向は、一般に液晶化合物もしくは配向膜の材料を選択することにより、又はラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。
本発明の好ましい実施態様として、第2の光学異方性層と液晶化合物層の遅相軸が互いに直交でも平行でもない光学フィルムの場合、第2の光学異方性層の遅相軸と異なる方向にラビング処理をすることで、液晶化合物層の遅相軸は、いかようにも簡便に調整することができる。
また、表面側(空気側)の液晶化合物の分子対称軸方向は、一般に、液晶化合物又は液晶化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
液晶化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることができる。分子対称軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶化合物と添加剤との選択により調整できる。特に界面活性剤に関しては、上述の塗布液の表面張力制御と両立することが好ましい。
【0043】
液晶化合物と共に使用する可塑剤、界面活性剤及び重合性モノマーは、ディスコティック液晶化合物と相溶性を有し、液晶化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。前記重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。
また、上記化合物の添加量は、液晶化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が4以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と第1の光学異方性層間の密着性を高めることができる。
【0044】
液晶化合物としてディスコティック液晶化合物を用いる場合は、ディスコティック液晶化合物とある程度の相溶性を有し、ディスコティック液晶化合物に傾斜角の変化を与えられるポリマーを用いるのが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
ディスコティック液晶化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、ディスコティック液晶化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることが更に好ましい。
ディスコティック液晶化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がより好ましい。
【0045】
本発明において、第1の光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることが更に好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。
【0046】
<<配向膜>>
本発明の光学フィルムは、第2の光学異方性層と第1の光学異方性層との間に配向膜を有しているのが好ましい。
本発明において、前記配向膜は、架橋されたポリマーからなる層であるのが好ましい。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーであっても、架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。
上記配向膜は、官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入したものを、光、熱又はPH変化等により、ポリマー間で反応させて形成するか、又は、反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成することができる。
【0047】
架橋されたポリマーからなる配向膜は、通常、上記ポリマー又はポリマーと架橋剤との混合物を含む塗布液を、第2の光学異方性層上に塗布した後、加熱等を行なうことにより形成することができる。
後述のラビング工程において、配向膜の発塵を抑制するために、架橋度を上げておくことが好ましい。前記塗布液中に添加する架橋剤の量(Mb)に対して、架橋後に残存している架橋剤の量(Ma)の比率(Ma/Mb)を1から引いた値(1−(Ma/Mb))を架橋度と定義した場合、架橋度は50〜100%が好ましく、65〜100%がより好ましく、75〜100%が特に好ましい。
【0048】
本発明において、前記配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。なお、双方の機能を有するポリマーを使用することもできる。
上記ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。
好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、更にゼラチン、ポリビルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0049】
上記ポリマーの中で、ポリビニルアルコール、又は変性ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールとしては、例えば鹸化度70〜100%のものであり、一般に鹸化度80〜100%のものであり、より好ましくは鹸化度85〜95%のものである。
重合度としては、100〜3,000の範囲が好ましい。変性ポリビニルアルコールとしては、共重合変性したもの(変性基として、例えば、COONa、Si(OX)、N(CH・Cl、C19COO、SO、Na、C1225等が導入される)、連鎖移動により変性したもの(変性基として、例えば、COONa、SH、C1225等が導入されている)、ブロック重合による変性をしたもの(変性基として、例えば、COOH、CONH、COOR、C等が導入される)等のポリビニルアルコールの変性物を挙げることができる。
重合度としては、100〜3,000の範囲が好ましい。これらの中で、鹸化度80〜100%の未変性〜変性ポリビニルアルコールが好ましく、より好ましくは鹸化度85〜95%の未変性、又はアルキルチオ変性ポリビニルアルコールである。
【0050】
配向膜に用いる変性ポリビニルアルコールとして、下記一般式(2)で表わされる化合物とポリビニルアルコールとの反応物が好ましい。なお、下記一般式(2)において、Rは無置換のアルキル基、又はアクリロリル基、メタクリロイル基もしくはエポキシ基で置換されたアルキル基を表わし、Wはハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表わし、Xは活性エステル、酸無水物又は酸ハロゲン化物を形成するために必要な原子群を表わし、lは0又は1を表わし、nは0〜4の整数を表わす。
【0051】
【化6】

【0052】
また、配向膜に用いる変性ポリビニルアルコールとして、下記一般式(3)で表わされる化合物とポリビニルアルコールとの反応物も好ましい。なお、下記一般式(3)において、Xは活性エステル、酸無水物又は酸ハロゲン化物を形成するために必要な原子群を表わし、mは2〜24の整数を表わす。
【0053】
【化7】

【0054】
前記一般式(2)、及び一般式(3)により表される化合物と反応させるために用いられるポリビニルアルコールとしては、上記変性されていないポリビニルアルコール、及び上記共重合変性したもの、即ち連鎖移動により変性したもの、ブロック重合による変性をしたもの等のポリビニルアルコールの変性物、を挙げることができる。
上記特定の変性ポリビニルアルコールの好ましい例としては、特開平8−338913号公報に詳しく記載されている。
配向膜にポリビニルアルコール等の親水性ポリマーを使用する場合、硬膜度の観点から、含水率を制御することが好ましく、制御される含水率としては、0.4〜2.5%であることが好ましく、0.6〜1.6%であることがより好ましい。含水率は、市販のカールフィッシャー法の水分率測定器で測定することができる。
なお、配向膜は、10μm以下の膜厚であるのが好ましい。
【0055】
<<第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層>>
前記第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層は、透明であるのが好ましく、具体的には、光透過率が80%以上である透明なポリマーフィルムが好ましい。
第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層として使用可能なポリマーフィルムとしては、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースジアセテート)、ノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等からなるポリマーフィルムが挙げられる。市販のポリマー(ノルボルネン系ポリマーでは、ア−トン(登録商標)、及びゼオネックス(登録商標)を用いてもよい。中でもセルロースエステルからなるフィルムが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルからなるフィルムが更に好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。特に、炭素原子数が2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)又は4(セルロースブチレート)が好ましい。
そして、これらの中でも、セルロースアセテートからなるフィルムが特に好ましい。また、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いることもできる。
【0056】
なお、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても、国際公開WO00/26705号パンフレットに記載のように、分子を修飾することで複屈折の発現性を制御すれば、本発明において、第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層として用いることもできる。
【0057】
ここで、本発明における光学フィルムを、偏光板の保護フィルム又は位相差フィルムとして使用する場合は、ポリマーフィルムとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。酢化度は、57.0〜62.0%であることが更に好ましい。ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。
酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算によって求められる。
セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。また、セルロースアセテートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。
具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜40であることが好ましく、1.0〜1.65であることが更に好ましく、1.0〜1.6であることが特に好ましい。
【0058】
セルロースアセテートでは、セルロースの2位、3位及び6位のヒドロキシルが均等に置換されるのではなく、6位の置換度が小さくなる傾向がある。
第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層として用いるポリマーフィルムでは、セルロースの6位置換度が、2位、3位に比べて同程度又は多い方が好ましい。
2位、3位及び6位の置換度の合計に対する6位の置換度の割合は、30〜40%であることが好ましく、31〜40%であることがより好ましく、32〜40%であることが特に好ましい。また、6位の置換度は0.88以上であることが好ましい。なお、各位置の置換度は、NMRによって測定することできる。
6位置換度が高いセルロースアセテートは、特開平11−5851号公報の段落番号[0043]〜「0044」に記載の合成例1、段落番号[0048]〜[0049]に記載の合成例2、及び段落番号[0051]〜[0052]に記載の合成例3の方法を参照して合成することができる。
【0059】
第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層のReレターデーション値、及びRthレターデーション値は、それぞれ、下記式(I)及び(III)で定義される。なお、下記式(I)、及び(III)において、nxはフィルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率を指し、nyは、フィルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率を指し、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を指し、dは単位をnmとするフィルムの厚さを指す。
Re=(nx−ny)×d・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(I)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d・・・・・・・・・・・・式(III)
【0060】
ここで、第2の光学異方性層の面内レターデーション値Reは、−10〜60nmが好ましい。
また、第2の光学異方性層の厚さ方向のレターデーション値Rthは、0〜300nmであることが好ましい。
一方、第3の光学異方性層の面内レターデーション値Reは、−10〜60nmが好ましく、第3の光学異方性層の厚さ方向のレターデーション値Rthは、25〜300nmであることが好ましい。
更に、第2の光学異方性層の厚さ方向のレターデーション値Rthと、第3の光学異方性層の厚さ方向のレターデーション値Rthの和が、200nm〜600nmであることが好ましい。
なお、セルロースアセテートフィルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、0.00025〜0.00088であることが好ましい。また、セルロースアセテートフィルムの厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0.00088〜0.005であることが好ましい。
【0061】
また、第2の光学異方性層、及び第2の光学異方性層は、それらの製膜方向、及び該製膜方向に直交する方向の光弾性係数の絶対値が、共に10×10−12/N以下であることが好ましい。
【0062】
更に、第1〜第3の光学異方性層の積層体において、長手方向に対して45°をなす方向のうち、面内屈折率が小さくなる方向と、前記第1の光学異方性層の法線とを含む平面内で、前記法線から前記第1の光学異方性層の面方向に40°傾いた方向から測定したレターデーション値Re(40°)、及び前記法線から逆に40°傾いた方向から測定したレターデーション値Re(−40°)が、下記数式(II)を満たす事がさらに好ましい。但し、下記数式(I)中、nx、及びnyはそれぞれ第1から第3の光学異方性層の積層体の面内の遅相軸方向、及び進相軸方向の屈折率である。
Re=(nx−ny)×d・・・・・・・・・・・・・・・・・・・数式(I)
3≦Re(40°)/Re(−40°)≦10・・・・・・・・・・数式(II)
【0063】
また、第2の光学異方性層、及び第2の光学異方性層にセルロースアセテートフィルムを用いる場合は、レターデーション上昇剤をフィルム中に含有させるのが好ましく、好ましい化合物例、及びその製造方法に関しては、特開2000−154261号公報、及び特開2000−111914号公報に記載されている。
【0064】
<光学フィルムの製造方法>
次に、本発明の好ましい光学フィルムを連続的に製造する方法について説明する。
【0065】
<<ロール状光学フィルムの製造方法>>
本発明のロール状光学フィルムの製造方法は、下記工程(1)〜(4)を連続して行う。
工程(1):長手方向に搬送される長尺状の光学異方性層積層体の第2の光学異方性層の表面、又は該第2の光学異方性層上に形成された配向膜の表面に、ラビングロールによりラビング処理を施す工程。
工程(2):液晶性化合物を含む塗布液を前記ラビング処理面に塗布する工程。
工程(3):塗布された塗布液を乾燥するのと同時に又は乾燥した後に、液晶転移温度以上の温度で前記液晶化合物を配向させ、その配向を固定して第1の光学異方性層を作製する工程。
工程(4):前記第1の光学異方性層が形成された長尺状の積層体を巻き取る工程。
【0066】
ここで、工程(3)における液晶転移温度以上の温度で前記液晶化合物を配向させる間に、前記ラビング処理された方向以外の方向に吹く液晶化合物表面の膜面風速が、下記数式(3)を満たすことが好ましく、下記式(3)において、Vが0〜2.5×10−3×ηであることがより好ましい。なお、下記式(3)中、Vは液晶化合物表面の膜面風速(m/sec)、ηは液晶化合物の配向温度での液晶化合物層の粘度(cp)である。
【0067】
0<V<5.0×10−3×η・・・・・・・・・・・・・・・・・式(3)
【0068】
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、液晶化合物の分子対称軸の第2の光学異方性層面への正射影の平均方向、即ち、前記第1の光学異方性層の分子対称軸の平均方向と、第2の光学異方性層の面内遅相軸、即ち、第2の光学異方性層の長手方向とが異なり、更に該分子対称軸の平均方向とラビング方向の間の角度が、実質的に0°、好ましくは−2〜2°、更に好ましくは−1〜1°である光学フィルムを連続的に安定に製造することができ、大量生産に適する。
OCBモードの液晶表示装置に本発明の光学フィルムを適用する場合は、該光学フィルムと、偏光子とを、ロールtoロールで貼合することが好ましく、該分子対称軸の平均方向と第2の光学異方性層の面内の遅相軸、即ち、第2の光学異方性層の長手方向との角度が、実質的に45°であることが好ましい。
【0069】
更に、本発明の光学フィルムの製造方法においては、以下の(a)〜(d)のいずれかの要件を含むことが望ましい。なお、これらの各工程の詳細は、特開平9−73081号公報に記載されている。
(a)上記工程(2)において、液晶化合物として架橋性官能基を有する重合性液晶化合物を用い、上記工程(3)において、連続的に塗布層を光照射して重合性液晶化合物を重合により硬化させて配向状態に固定し、その後、連続的に上記工程(4)を行なう。
(b)上記工程(1)において、前記第2の光学異方性層又は配向膜の表面を除塵しながら、ラビングロールでラビング処理する。
(c)上記工程(2)の前に、ラビング処理した前記第2の光学異方性層又は前記配向膜の表面を除塵する工程を行う。
(d)上記工程(4)の前に、形成した第1の光学異方性層の光学特性を連続的に測定することにより検査する検査工程。
【0070】
ここで、上記工程(1)〜(4)の詳細について、以下に説明する。
【0071】
[工程(1)]
前記工程(1)では、長手方向に搬送される長尺状の光学異方性層積層体の第2の光学異方性層の表面、又は該第2の光学異方性層上に形成された配向膜の表面に、ラビングロールによりラビング処理を施す。
【0072】
前記工程(1)に用いるラビングロールの直径は、ハンドリング適性、及び布寿命の観点から、100〜500mmであることが好ましく、200〜400mmであることが更に好ましい。
ラビングロールの幅は、搬送するフィルムの幅よりも広いことが必要であり、フィルム幅×21/2以上であることが好ましい。
また、ラビングロールの回転数は、発塵の観点から低く設定することが好ましく、液晶化合物の配向性にもよるが、100〜1,000rpmであることが好ましく、250〜850rpmであることが更に好ましい。
【0073】
ラビングロールの回転数を低くしても液晶化合物の配向性を維持するには、ラビング時の第2の光学異方性層又は配向膜を加熱することが好ましい。加熱温度は、第2の光学異方性層又は配向膜表面の膜面温度で、(素材のTg−50℃)〜(素材のTg+50℃)であることが好ましい。ポリビニルアルコールからなる配向膜を使用する場合は、ラビングの環境湿度を制御することが好ましく、25℃の相対湿度として25〜70%RHであることが好ましく、30〜60%RHであることが更に好ましく、35〜55%RHであることが特に好ましい。
【0074】
前記光学異方性層積層体の搬送速度は、生産性の観点と液晶の配向性の観点から、10〜100m/分であることが好ましく、15〜80m/分であることが更に好ましい。搬送は、従来、フィルムの搬送に用いられる種々の装置を用いて行うことができ、特に搬送方式については制限されない。
【0075】
なお、配向膜は、前述のポリビニルアルコール等の素材を、水及び/又は有機溶媒等に溶解した塗布液を、第2の光学異方性層の表面に塗布して、乾燥することによって作製することができる。配向膜の作製は、上記一連の工程の前に行うことができ、搬送される長尺状の第2の光学異方性層の表面に配向膜を連続的に作製してもよい。
【0076】
[工程(2)]
上記工程(2)では、液晶性化合物を含む塗布液を前記ラビング処理面に塗布する。第1の光学異方性層形成用の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。
有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0077】
均一性の高い第1の光学異方性層を作製するためには、塗布液の表面張力は、25mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以下であるのが更に好ましい。
この低表面張力を実現するには、該第1の光学異方性層を形成する塗布液に、界面活性剤、又はフッ素化合物、特に、下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位及び下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体等のフッ素系ポリマーを含有することが好ましい。
(i)下記一般式(4)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
(ii)ポリ(オキシアルキレン)アクリレート及び/又はポリ(オキシアルキレン)メタクリレート
【0078】
【化8】

【0079】
上記一般式(4)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、又は−N(R)−を表し、mは、1以上6以下の整数、nは、2〜4の整数を表す。また、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0080】
第1の光学異方性層形成用塗布液中に添加する前記フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、6,000〜80,000がより好ましい。
更に、前記フッ素系ポリマーの添加量は、液晶化合物を主とする塗布組成物(溶媒を除いた塗布成分)に対して0.005〜8質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましく、0.05〜0.5質量%が更に好ましい。
前記フッ素系ポリマーの添加量が、0.005質量%未満では効果が不十分であり、また8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学フィルムとしての性能(例えばレターデーションの均一性、等)に悪影響を及ぼす。
【0081】
前記塗布液のラビング処理面への塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施することができる。塗布量は、第1の光学異方性層の所望の厚みに基づいて適宜決定することができる。
【0082】
[工程(3)]
上記工程(3)では、塗布された塗布液を乾燥するのと同時、又は乾燥した後に、液晶転移温度以上の温度で前記液晶化合物を配向させ、その配向を固定して第1の光学異方性層を作製する。液晶化合物は、乾燥時の加熱によってもしくは乾燥後の加熱によって、所望の配向となる。
乾燥温度は、塗布液に用いた溶媒の沸点、並びに第2の光学異方性層、第3の光学異方性層及び配向膜の素材を考慮して決定することができる。液晶化合物の配向温度は、用いる液晶化合物の液晶相−固相転移温度に応じて決定することができる。
液晶化合物として、ディスコティック液晶化合物を用いる場合は、配向温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃が更に好ましい。
また、液晶状態の粘度は、10〜10,000cpであることが好ましく、100〜1,000cpであることが更に好ましい。
粘度が低すぎると、配向時の風の影響を受けやすく、連続生産のために、非常に高精度の風速/風向制御が必要となる。一方、粘度が高いと風の影響は受けにくいが、液晶の配向が遅くなり、生産性が非常に悪化することとなる。
液晶層の粘度は、液晶化合物の分子構造によって適宜制御できる。また、上述の添加剤(特にセルロース系のポリマー、等)、及びゲル化剤等を適量使用することで所望の粘度に調整する方法が好ましく用いられる。
加熱は、所定の温度の温風を送風することによって、又は所定の温度に維持された加熱室内を搬送することによって実施できる。
このときの温風は、下記式(3)に示すように、液晶化合物層に当たるラビング方向以外の風速を制御されることが好ましい。なお、下記式(3)中、Vは液晶化合物表面の膜面風速(m/sec)、ηは液晶化合物の配向温度での液晶化合物層の粘度(cp)である。
【0083】
0<V<5.0×10−3×η・・・・・・・・・・式(3)
【0084】
更に、配向させた液晶化合物を、配向状態を維持して固定し、第1の光学異方性層を形成する。液晶化合物の固定は、固相転移温度まで冷却することによって、又は重合反応により実施することができるが、重合反応により行うのが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、及び米国特許2367670号の各明細書に記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書に記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書に記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、及び米国特許2951758号の各明細書に記載)、トリアリールイミダゾールダイマーと、p−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書に記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、及び米国特許4239850号明細書に記載)、及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書に記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることが更に好ましい。
【0085】
液晶化合物の重合を進行させて固定するための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20〜50J/cmの範囲にあることが好ましく、20〜5,000mJ/cmの範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cmの範囲にあることが更に好ましい。
また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。光照射は、第1の光学異方性層形成用塗布液を塗布した第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層を、1以上の光源が上下及び左右のいずれかの位置に配置された搬送路を通過させることによって実施することができる。
【0086】
上記工程(4)に移行する前に、上記工程(3)で作製した第1の光学異方性層の上に、保護層を設けることもできる。例えば、あらかじめ作製した保護層用フィルムを、長尺状に作製された第1の光学異方性層の表面に連続的にラミネートしてもよい。
【0087】
上記工程(4)では、前記第1の光学異方性層が形成された長尺状の積層体を巻き取る。巻き取りは、例えば、連続的に搬送される第1の光学異方性層を有する第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層を、円筒状の芯に巻きつけることによって行ってもよい。
上記工程(4)により得られる光学フィルムは、ロール形態であるので、大量に製造した場合にもその取り扱いが容易である。そのままの形態で保管・搬送できる。
【0088】
本発明の製造方法の各工程の諸条件、使用可能な装置等の詳細については、特開平9−73081号公報に記載の諸条件、装置を適用することができる。
【0089】
(偏光板)
本発明における偏光板は、第3の光学異方性層が、偏光子上に積層されることによって第1の偏光板を構成し、前記第1の光学異方性層が、第2の光学異方性層上に積層されることによって第1の光学異方性層積層体を構成し、前記第3の光学異方性層と、前記第2の光学異方性層とが対向するように、前記第1の偏光板と、第1の光学異方性層積層体とが粘着剤を介して接合されることによって構成される。
なお、前記偏光板は、例えば、矩形状等の所望の形状に切断した後、上述の光学フィルムを偏光子と貼り合せてもよいし、長尺状の偏光子と貼り合せた後、所望の形状に切断して形成してもよい。
前記偏光板は、偏光機能のみならず、優れた光学補償機能をも有し、しかも容易に液晶表示装置に組み込むことができる。また、前記光学フィルムを偏光子の保護膜とした態様は、液晶表示装置の薄型化にも寄与する。
【0090】
<偏光子>
前記偏光子は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光子、又はバインダーとヨウ素、もしくは二色性色素とからなる偏光子が好ましい。
前記ヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
現在市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
また、市販の偏光子は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素もしくは二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
したがって、上記のように、バインダーの厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、偏光板を液晶表示装置に使用した場合に発生する光漏れ現象の観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下が更に好ましい。20μm以下であると、光漏れ現象は、17インチの液晶表示装置で観察されなくなる。
【0091】
偏光子のバインダーは架橋していてもよい。偏光子のバインダーとして、それ自体架橋可能なポリマーを用いてもよい。官能基を有するポリマー、又はポリマーに官能基を導入して得られたポリマーに、光、熱あるいはpH変化を与えて、官能基を反応させてポリマー間を架橋させ、偏光子を形成することができる。
また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてバインダー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、バインダー間を架橋することにより形成することができる。
架橋は一般に、架橋可能なポリマー、又はポリマーと架橋剤との混合物を含む塗布液を、支持体上に塗布した後、加熱することにより実施できる。最終商品の段階で耐久性が確保できればよいため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行なってもよい。
【0092】
上記した様に、偏光子のバインダーとしては、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。
ポリマーの例には、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルトルエン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、塩素化ポリオレフィン(例、ポリ塩化ビニル)、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びそれらのコポリマー(例、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体)が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いてもよい。
水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが更に好ましく、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0093】
ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%が更に好ましく、95〜100%が特に好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5,000が好ましい。
変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールに対して、共重合変性、連鎖移動変性あるいはブロック重合変性により変性基を導入して得られる。共重合変性では、変性基として、COONa、Si(OH)、N(CH・Cl、C19COO、SO3Na、C1225を導入することができる。連鎖移動変性では、変性基として、COONa、SH、SC1225を導入することができる。
変性ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3,000が好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号公報、特開平9−152509号公報、及び特開平9−316127号公報に記載がある。
また、鹸化度が85〜95%の未変性ポリビニルアルコール、及びアルキルチオ変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
更に、ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
【0094】
架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載があり、本発明に用いることができる。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。
バインダーの架橋剤は、多く添加すると、偏光子の耐湿熱性を向上させることができる。ただし、バインダーに対して架橋剤を50質量%以上添加すると、ヨウ素、もしくは二色性色素の配向性が低下する。架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%が更に好ましい。
バインダーは、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。ただし、残存する架橋剤の量は、バインダー中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
バインダー中に1.0質量%を超える量で架橋剤が含まれていると、耐久性に問題が生じる場合がある。すなわち、架橋剤の残留量が多い偏光子を液晶表示装置に組み込み、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、偏光度の低下が生じることがある。
【0095】
前記二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。
二色性色素の例には、C.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・オレンジ39、C.I.ダイレクト・オレンジ72、C.I.ダイレクト・レッド39、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド81、C.I.ダイレクト・レッド83、C.I.ダイレクト・レッド89、C.I.ダイレクト・バイオレット48、C.I.ダイレクト・ブルー67、C.I.ダイレクト・ブルー90、C.I.ダイレクト・グリ−ン59、C.I.アシッド・レッド37が含まれる。
二色性色素については、特開平1−161202号公報、特開平1−172906号公報、特開平1−172907号公報、特開平1−183602号公報、特開平1−248105号公報、特開平1−265205号公報、特開平7−261024号公報に記載がある。
【0096】
二色性色素は、遊離酸、又はアルカリ金属塩、アンモニウム塩、もしくはアミン塩等の塩として用いられる。二種類以上の二色性色素を配合することにより、各種の色相を有する偏光子を製造することができる。偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)を用いた偏光子、あるいは黒色を呈するように各種の二色性分子を配合した偏光子又は偏光板が、単板透過率及び偏光率とも優れており、好ましい。
【0097】
<<偏光子の製造方法>>
偏光子は、バインダーを偏光子の長手方向(MD方向)に延伸した後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
【0098】
延伸法の場合、延伸倍率は、2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍が更に好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。
また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。
延伸工程は、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。
延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。上記二軸延伸は、通常のフィルム製膜において行われている延伸方法と同様である。
【0099】
偏光子の両面には、保護フィルムを配置するのが好ましく、一方の面の保護フィルムとして、本発明のロール状光学フィルムの一部を用いるのが好ましい。
例えば、保護フィルム/偏光子/第3の光学異方性層/第2の光学異方性層/第1の光学異方性層の順に積層されるか、保護フィルム/偏光子/第3の光学異方性層/第2の光学異方性層/配向膜/第1の光学異方性層の順に積層されることが好ましい。
但し、この構成に限定されず、偏光子と第1の光学異方性層の表面側とを貼りあわせてもよい。貼り合せには接着剤を用いてもよく、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を接着剤として用いることができる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜5μmの範囲にあることが特に好ましい。
【0100】
また、本発明の偏光板を液晶表示装置に用いる場合、視認側表面に反射防止層を設置するのが好ましく、該反射防止層を偏光子の視認側の保護層と兼用してもよい。
液晶表示装置の視角による色味変化抑制の観点から、反射防止層の内部ヘイズを50%以上にすることが好ましい。これら好ましい具体例としては、特開2001−33783号公報、特開2001−343646号公報、及び特開2002−328228号公報に記載がある。
【0101】
液晶表示装置のコントラスト比を高めるためには、偏光子の透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。
本発明の偏光子の透過率は、波長550nmの光において、30〜50%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることが更に好ましく、40〜50%の範囲にあることが特に好ましい。
偏光度は、波長550nmの光において、90〜100%の範囲にあることが好ましく、95〜100%の範囲にあることが更に好ましく、99〜100%の範囲にあることが特に好ましい。
【0102】
(液晶表示装置)
本発明の光学フィルム、又は該光学フィルムを用いた偏光板は、複屈折モードの液晶表示装置、特にOCB方式の液晶表示装置、及びECB型反射型液晶表示装置、等、光学フィルムが装着されないと黒/白表示が困難な液晶表示装置に有利に用いられる。
透過型液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された二枚の偏光板からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
光学フィルムは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
【0103】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号明細書、及び米国特許5410422号明細書に開示されている。棒状液晶分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。
そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
また、OCB方式は、高速応答駆動が可能なため、フィールドシーケンシャル駆動方式と組み合わせることが好ましい。
【0104】
本発明の液晶表示装置に用いられる液晶セルは、無電圧印加状態(液晶層に電圧を印加しない状態での液晶セルA中の液晶材料の配向状態下)でのΔnd値が、800以上1,200未満であることが好ましい。
【実施例】
【0105】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0106】
(実施例1)
<第3の光学異方性層の作製>
<<セルロースアセテート溶液Aの調製>>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
【0107】
[セルロースアセテートA溶液組成]
・酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
・トリフェニルホスフェート 7.8質量部
・ビフェニルジフェニルホスフェート 3.9質量部
・メチレンクロリド 300質量部
・メタノール 45質量部
【0108】
別のミキシングタンクに、酢化度60.9%のセルロースアセテート(リンター)4質量部、下記のレターデーション上昇剤25質量部、シリカ微粒子(平均粒子サイズ:20nm)0.5質量部、メチレンクロリド80質量部、及びメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
【0109】
【化9】

【0110】
上記セルロースアセテート溶液A 470質量部に、上記レターデーション上昇剤溶液34.4質量部を混合し、十分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比は6.5%であった。残留溶剤量が35質量%のフィルムをバンドから剥離した後、140℃の温度で、フィルムのテンターを用いて未延伸の状態で搬送した後、クリップを外して130℃で45秒間乾燥させ、フィルム形態の第3の光学異方性層を製造した。製造された第3の光学異方性層の残留溶剤量は0.2質量%であり、膜厚は92μmであった。
【0111】
<光学特性の測定>
作製した第3の光学異方性層について、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用い、波長550nmの光でRe値を測定した。また面内の遅相軸をあおり軸とし、あおり角を40°、及び−40°として、Re値を測定した。結果を表1に示す。
また、膜厚、及び遅相軸方向の屈折率nxをパラメータとし、これらの測定値Re(550nm)、Re(40°)、Re(−40°)にフィッティングするように進相軸方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nzを計算で求め、Rth値を決定した。結果を表1に示す。
【0112】
<第2の光学異方性層の作製>
<<セルロースアセテート溶液Bの調製>>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Bを調製した。
【0113】
[セルロースアセテート溶液B組成]
・酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
・トリフェニルホスフェート 7.8質量部
・ビフェニルジフェニルホスフェート 3.9質量部
・メチレンクロリド 300質量部
・メタノール 45質量部
【0114】
上記セルロースアセテート溶液470質量部に、上記レターデーション上昇剤溶液18.5質量部を混合し、十分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比は3.5%であった。残留溶剤量が35質量%のフィルムをバンドから剥離した後、140℃の温度で、フィルムのテンターを用いて38%の延伸倍率で横延伸した後、クリップを外して130℃で45秒間乾燥させ、フィルム形態の第2の光学異方性層を製造した。製造されたセルロースアセテートフィルムの残留溶剤量は0.2質量%であり、膜厚は88μmであった。
【0115】
<光学特性の測定>
作製した第2の光学異方性層について、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用い、波長550nmの光でRe値を測定した。また面内の遅相軸をあおり軸とし、あおり角を40°、及び−40°として、Re値を測定した。結果を表1に示す。
また、膜厚、及び遅相軸方向の屈折率nxをパラメータとし、これらの測定値Re(550nm)、Re(40°)、Re(−40°)にフィッティングするように進相軸方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nzを計算で求め、Rth値を決定した。結果を表1に示す。
【0116】
<第2の光学異方性層の鹸化処理>
作製した第2の光学異方性層の一方の面に、1.5規定の水酸化カリウムのイソプロピルアルコール溶液を25ml/mとなるように塗布し、25℃で5秒間放置した後、流水で10秒洗浄し、25℃の空気を吹き付けることでフィルムの表面を乾燥した。このようにして、第2の光学異方性層の一方の表面のみを鹸化した。
【0117】
<配向膜の形成>
鹸化処理した第2の光学異方性層の一方の面に、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24ml/m塗布した。60℃の温風で60秒、更に90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、第2の光学異方性層の延伸方向(遅相軸とほぼ一致)と45°の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
【0118】
[配向膜塗布液組成]
・下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
・水 371質量部
・メタノール 119質量部
・グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
【0119】
【化10】

【0120】
<第1の光学異方性層の形成>
204.0質量部のメチルエチルケトンに、下記のディスコティック化合物91質量部、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)9質量部、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.5質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)3質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1質量部を溶解して塗布液を調製した。
配向膜上に塗布液を、#3.2のワイヤーバーで5.52ml/m塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。
次に、90℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、4分間紫外線照射しディスコティック化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、第1の光学異方性層を形成し、光学フィルムを作製した。
【0121】
【化11】

【0122】
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用い、波長550nmの光で、第1の光学異方性層のRe値を測定した。
また、面内の遅相軸をあおり角として40°、及び−40°あおってレターデーションRe(40)、及びRe(−40)を測定した。その結果を表2に示す。
【0123】
(楕円偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。次に、作製した光学フィルムの第3の光学異方性層側を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付けた。第3の光学異方性層の遅相軸と偏光膜の透過軸とが平行になるように配置した。
市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)を前記と同様に鹸化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側(光学フィルムを貼り付けなかった側)に貼り付けた。このようにして、楕円偏光板を作製した。
【0124】
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、液晶セルの厚さを7.2μmに設定した。液晶セルの間隙にΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向の液晶セルAを作製した。
【0125】
(液晶表示装置の作製)
ベンド配向液晶セルAと、上記一対の偏光板とを組み合わせて液晶表示装置を作製した。
なお、液晶セルAと、一対の偏光板との配置は、偏光板が第1の光学異方性層、及び液晶セルAの基板が対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対向する第1の光学異方性層のラビング方向とが反平行になるようにした。
作製した液晶セルAを挟むように、それぞれ別の透明基板に、視認側、及びバックライト側に偏光板をそれぞれ貼り付けた。
偏光板の第1の光学異方性層が前記透明基板に対向し、液晶セルAのラビング方向とそれに対向する第1の光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置し、液晶セルAの大きさが20インチである液晶表示装置を作製した。
【0126】
<液晶表示装置の評価>
作製された液晶表示装置について、製造適正、透過率、コントラスト視野角、及び耐久性(高温高湿下でのムラ)を評価した。
【0127】
<<製造適正の評価>>
作製された液晶表示装置について、ヘイズメータ−装置(NDH2000、日本電色製)を用いて、下記評価基準に基づいて製造適正を評価した。評価結果を表1に示す。
【0128】
[評価基準]
◎:ヘイズが更に低い
○:ヘイズが低い
△:普通
×:ヘイズが高い
【0129】
<<透過率の評価>>
作製された液晶表示装置について、輝度計(BM−5、TOPCON製)を用いて、液晶セル有無での輝度を測定し、透過率を評価した。評価結果を表1に示す。
【0130】
[評価基準]
◎:最も明るい
○:明るい
△:普通
×:暗い
【0131】
<<コントラスト視野角の評価>>
25℃60%の環境下において、作製した液晶表示装置をバックライト上に配置し、ベンド配向液晶セルに55Hz矩形波で電圧を印加した。
電圧を調整しながら輝度計(BM−5、TOPCON製)を用い、黒輝度(正面輝度)が最も小さくなる電圧を判定した。
次に、同様に前記輝度計を用い、画面中央での黒輝度と白輝度(正面輝度)を測定し、コントラスト視野角を下記評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
【0132】
[評価基準]
◎:最もよい
○:よい
△:普通
×:悪い
【0133】
(実施例2)
実施例1において、第1の光学異方性層のセルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.5質量部を1.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして実施例2の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0134】
(実施例3)
実施例1において、第1の光学異方性層のセルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.5質量部を1.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして実施例3の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0135】
(実施例4)
実施例3において、第1の光学異方性層のディスコティック液晶層を下記の棒状液晶NG-1に変えた以外は、実施例3と同様にして実施例4の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0136】

【0137】
(実施例5)
実施例1において、第2の光学異方性層を、幅1,340mmのロール状をなす環状オレフィンコポリマー系フィルム(三井化学社製、商品名アペル)に変え、一方の面にコロナ放電処理を施した以外は、実施例1と同様にして実施例5の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0138】
(実施例6)
実施例1において、第2の光学異方性層として、幅1,340mmのロール状をなすノルボルネン系フィルム(JSR社製、商品名アートン)を用い、一方の面にコロナ放電処理を施した以外は、実施例1と同様にして実施例6の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0139】
(実施例7)
実施例3において、第3の光学異方性層のレターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比6.5%を3.3%とした以外は、実施例1と同様にして実施例7の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
【0140】
(実施例11)
実施例3において、第3の光学異方性層のレターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比6.5%を9.9%とした以外は、実施例1と同様にして実施例8の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
【0141】
(比較例1)
実施例1において、第1の光学異方性層のワイヤーバー#3.2を#2.1とした以外は、実施例1と同様にして比較例1の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0142】
(比較例2)
実施例1において、第1の光学異方性層のセルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.5質量部を3.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして比較例2の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0143】
(比較例3)
実施例3において、第3の光学異方性層をなくした以外は、実施例1と同様にして比較例3の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0144】
(比較例4)
実施例3において、第3の光学異方性層をなくし、かつ第2の光学異方性層のレターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比3.2%を12.0%とした以外は、実施例1と同様にして比較例4の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0145】
(比較例5)
実施例1において、液晶セルの厚み7.2μmを5.0μmとした以外は、実施例1と同様にして比較例5の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
【0146】
(比較例6)
実施例1において、液晶セルの厚み7.2μmを8.6μmとした以外は、実施例1と同様にして比較例6の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
【0147】
(比較例7)
実施例9において、第2の光学異方性層のレターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比3.2%を1.6%とした以外は、実施例1と同様にして比較例7の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
【0148】
(比較例8)
比較例4において、第3の光学異方性層のレターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比6.5%を19.8%とした以外は、実施例1と同様にして比較例8の液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】

【0151】
【表3】

【0152】
表1〜3に示すように、数式(1)〜(7)を満たす実施例1〜8の液晶表示装置は、製造適正が高く、透過率が高く、適度な視野角が確保され、耐久性が高いことが認められた。
【0153】
一方、第1の光学異方性層の光学特性が本発明の要件を満たさない比較例1〜2では、透過率、及び視野角の評価が好ましくなく、第3の光学異方性層を設けなかった比較例3〜4では、製造適正、及び透過率が好ましくなく、液晶セルのΔnd値が本発明の要件を満たさない比較例5〜6では、透過率、及び視野角の評価が好ましくなく、第2の光学異方性層の厚さ方向のレターデーション値Rthと第3の光学異方性層の厚さ方向のレターデーション値Rthとの和が本発明の要件を満たさない比較例7〜8では、製造適正、及び視野角の評価が好ましくないことが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の液晶表示装置は、製造適正が高く、適度な視野角が確保され、耐久性が高く、特に透過率が高いので、カーナビゲーションシステム、インストゥルメンタルパネル、後部座席の遊戯用途、及びヘッドアップディスプレイなどに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の透明基板に液晶分子を含む液晶層が挟持された液晶セルと、
前記透明基板の各外側に設置され、偏光子と、少なくとも3層の光学異方性層を有する光学フィルムとを少なくとも有する偏光板とを備え、下記(1)〜(7)の条件を満たすことを特徴とする液晶表示装置。
(1)前記液晶セルのΔnd値が、800以上1,200未満である。
(2)第1の光学異方性層のラビング角度が、偏光板の透過軸に対し、40°〜50°である。
(3)第1の光学異方性層の下記数式(I)で定義される面内レターデーション値Reが、波長550nmにおいて25nm以上50nm以下である。
(4)第1の光学異方性層の長手方向に対して45°をなす方向のうち、面内屈折率が小さくなる方向と、前記第1の光学異方性層の法線とを含む平面内で、前記法線から前記第1の光学異方性層の面方向に40°傾いた方向から測定したレターデーション値Re(40°)、及び前記法線から逆に40°傾いた方向から測定したレターデーション値Re(−40°)が、下記数式(II)を満たす。但し、下記数式(I)中、nx、及びnyはそれぞれ第1の光学異方性層の面内の遅相軸方向、及び進相軸方向の屈折率である。
Re=(nx−ny)×d・・・・・・・・・・・・・・・・・・・数式(I)
3≦Re(40°)/Re(−40°)≦20・・・・・・・・・・数式(II)
(5)第2の光学異方性層の上記数式(I)で定義される面内レターデーション値Reが、波長550nmにおいて−10nm以上60nm以下であり、第2の光学異方性層の下記数式(III)で定義される厚さ方向のレターデーション値Rthが、波長550nmにおいて0nm以上300nm以下である。
(6)第3の光学異方性層の上記数式(I)で定義される面内レターデーション値Reが、波長550nmにおいて−10nm以上60nm以下であり、第3の光学異方性層の下記数式(III)で定義される厚さ方向のレターデーション値Rthが、波長550nmにおいて25nm以上300nm以下である。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・・数式(III)
但し、上記数式(III)中、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dは厚さである。
(7)200(nm)≦Rth+Rth≦600(nm)
【請求項2】
偏光板は、偏光子上に第3の光学異方性層が形成された第1の偏光板と、第1の光学異方性層、及び第2の光学異方性層を積層してなる第1の光学異方性層積層体とを有し、前記第3の光学異方性層と、前記第2の光学異方性層とが対向するように、前記第1の偏光板と、第1の光学異方性層積層体とが粘着剤を介して接合された請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
偏光板は、ロール状に作製された第1の偏光板と、ロール状に作製された第1の光学異方性層積層体とをロールtoロールで貼り合せることによって作製される請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層の少なくともいずれかの光弾性係数が10×10−12/N以下である請求項1から3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
第1の光学異方性層は、ディスコティック液晶、及び棒状液晶の少なくともいずれかの液晶性化合物が膜厚方向にハイブリッド配向している請求項1から4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
第1の光学異方性層が、非液晶性ポリマーを含み、該非液晶性ポリマーが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、及びポリエステルイミドからなる群から少なくとも一つが選択される請求項1から5のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層の少なくともいずれか一方は、セルローストリアセテート樹脂(TAC)、環状オレフィン共重合体(COC)、環状オレフィン樹脂(COP)である請求項1から6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
液晶セルがベンド配向である請求項1から7のいずれかに記載の液晶表示装置。

【公開番号】特開2008−250234(P2008−250234A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94843(P2007−94843)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】