説明

液晶表示装置

【課題】画素電極と信号配線間の容量を低減して信号配線の信号電圧の影響を小さくし、横筋等のクロストークを防止する。
【解決手段】画素電極8と信号配線6の間の層間絶縁膜7に対して凹部10を形成し、この凹部10に層間絶縁膜7よりも比誘電率の小さな物質、例えば、配向膜11を充填する。これによって、画素電極8と信号配線6間の容量を低減して、画素電極8と信号配線6のクロストークを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクティブマトリクス型液晶表示装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT)をスイッチング素子としたアクティブマトリクス型液晶表示装置では、各画素は一フレーム期間所定の信号電圧を保持するので、画面を明るく出来るため、コンピュータモニター、TV等に需要が拡大している。液晶の弱点であった視野角についても、IPS(In Plane Switch)方式、VA(Vertical Alignment)方式等の開発により、改善されているが、中でもIPS方式は優れた視野角特性を有している。IPS方式も色々な改良が加えられているが、現在、TV等に用いられている代表的なIPS方式の画素構造の例を図16に示す。また図16のA−A断面構造を図17に示す。
【0003】
図16において、信号線からの信号はTFTを介して画素電極8に加えられ、保持される。一方、図17に示すように、ガラス基板上に一定電圧が印加されるコモン電極2が形成されている。コモン電極2の上にはゲート絶縁膜4、層間絶縁膜7が形成され、画素電極8は層間絶縁膜7の上に形成されている。画素電極8に特定の電圧が印加されると、図17に示すような、画素電極8からコモン電極2に向かう電気力線が発生し、液晶分子121を回転等させることにより、バックライトからの光Lを制御することによって、画像を形成する。このような構成を記載したものとして、「特許文献1」が上げられる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−300821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図16において、画素電極8に所定の信号電圧が印加されたあと、TFTがオフすることにより、画素電極8は1フレーム期間所定の電圧が保持されることになる。一方信号線には、走査ごとに他の画素に印加する信号電圧が通過する。画素電極8と信号線との間に容量が存在すると、容量を介して他の画素への信号電圧が、特定画素の電位に影響を与えることになる。特定画素の電位が変動すると、画面のクロストーク等として現れ、画質を低下させることになる。
【0006】
画素電極8は2つの信号線によって挟まれているため、他の画素への信号電圧による影響は両側から受けることになる。画素電極8の中心は常に2つの信号線の中点にあるとは限らず、製造誤差のために、図18に示すように、画素電極8が信号配線6に対して偏って形成される場合がある。そうすると、2つの信号線からの影響が異なることになり、画面の横筋の発生等さらに複雑な問題を生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以上述べたような、信号線と画素電極とのクロストークを小さくするために、信号線と画素電極間の容量を小さくする構成を提供するものである。容量の絶対値を小さくすれば2つの信号線と画素電極との容量の差も小さくすることができ、容量のアンバランスによって引き起こされる問題も小さくすることができる。具体的手段は下記の通りである。
【0008】
(1)第1の基板と第2の基板の間に液晶が挟持され、前記液晶に電界を作用させることによって画像を形成する液晶表示装置であって、前記第1の基板上にはコモン電極が形成され、前記コモン電極上には第1の絶縁膜が形成され、前記第1の絶縁膜上には信号配線が形成され、前記信号配線上には第2の絶縁膜が形成され、前記第2の絶縁膜上には画素電極が形成され、前記画素電極の上には前記液晶と接する配向膜が形成されており、前記第2の絶縁膜には、前記画素電極と前記信号配線との間に凹部が形成され、前記凹部には前記第2の絶縁膜よりも比誘電率の小さな物質が充填されていることを特徴とする液晶表示装置。
(2)前記比誘電率の小さな物質は前記配向膜であることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
(3)前記配向膜はインクジェット法で形成されていることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
(4)前記第2の絶縁膜はSiN膜であることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
(5)前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記第2の絶縁膜の膜厚よりも小さく、かつ10nmよりも大きいことを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
(6)前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記第2の絶縁膜の膜厚と前記信号配線の膜厚の差よりも小さく、かつ20nmよりも大きいことを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
(7)前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記配向膜の膜厚よりも小さく、かつ20nmよりも大きいことを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0009】
(8)第1の基板と第2の基板の間に液晶が挟持され、前記液晶に電界を作用させることによって画像を形成する液晶表示装置であって、前記第1の基板上には透明導電膜からなるコモン電極が形成され、前記コモン電極上には第1の絶縁膜が形成され、前記第1の絶縁膜上には信号配線が形成され、前記信号配線上には第2の絶縁膜が形成され、前記第2の絶縁膜上には複数のスリットを有する透明導電膜からなる画素電極が形成され、前記画素電極の上には前記液晶と接する配向膜が形成され、前記画素電極と前記コモン電極との電位差によって前記液晶が駆動され、前記第2の絶縁膜には、前記画素電極と前記信号配線との間に凹部が形成され、前記凹部には前記第2の絶縁膜よりも比誘電率の小さな物質が充填されていることを特徴とする液晶表示装置。
(9)前記比誘電率の小さな物質は前記配向膜であることを特徴とする(8)に記載の液晶表示装置。
(10)前記配向膜はインクジェット法で形成されていることを特徴とする(8)に記載の液晶表示装置。
(11)前記第2の絶縁膜はSiN膜であることを特徴とする(8)に記載の液晶表示装置。
(12)前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記第2の絶縁膜の膜厚よりも小さく、かつ10nmよりも大きいことを特徴とする(8)に記載の液晶表示装置。
(13)前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記第2の絶縁膜の膜厚と前記信号配線の膜厚の差よりも小さく、かつ20nmよりも大きいことを特徴とする(8)に記載の液晶表示装置。
(14)前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記配向膜の膜厚よりも小さく、かつ20nmよりも大きいことを特徴とする(8)に記載の液晶表示装置。
【0010】
(15)第1の基板と第2の基板の間に液晶が挟持され、前記液晶に電界を作用させることによって画像を形成する液晶表示装置であって、前記第1の基板上にはコモン電極が形成され、前記コモン電極上には第1の絶縁膜が形成され、前記第1の絶縁膜上には信号配線が形成され、前記信号配線上には第2の絶縁膜が形成され、前記第2の絶縁膜上には画素電極が形成され、前記画素電極の上には前記液晶と接する配向膜が形成されており、前記画素電極と前記コモン電極との電位差によって前記液晶が駆動され、前記第2の絶縁膜には、前記画素電極と前記信号配線との間に凹部が形成され、前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部には前記画素電極の一部が形成されており、前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部には、前記第2の絶縁膜よりも比誘電率の小さな物質が充填されていることを特徴とする液晶表示装置。
(16)前記比誘電率の小さな物質は前記配向膜であることを特徴とする(15)に記載の液晶表示装置。
(17)前記配向膜はインクジェット法で形成されていることを特徴とする(15)に記載の液晶表示装置。
(18)前記第2の絶縁膜はSiN膜であることを特徴とする(15)に記載の液晶表示装置。
(19)前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記第2の絶縁膜の膜厚と前記信号配線の膜厚の差よりも小さく、かつ20nmよりも大きいことを特徴とする(15)に記載の液晶表示装置。
(20)前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記配向膜の膜厚よりも小さく、かつ20nmよりも大きいことを特徴とする(15)に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0011】
各手段毎の効果は次のとおりである。
【0012】
手段(1)から(7)によれば、画素電極と信号配線との間の凹部に誘電率の小さな物質が存在しているために、画素電極と信号配線との間の容量を小さくすることができ、信号配線を通る他の画素への信号電圧の影響を軽減し、画面のちらつき、横筋等の発生を抑止し、画質の低下を防ぐことができる。
【0013】
手段(8)から(14)によれば、手段(1)から(7)までの効果に加え、画素電極とコモン電極が透明電極で出来ているために、バックライトからの光の利用効率を上げることができ、明るい画像を得ることができる。
【0014】
手段(15)から(20)によれば、第2の絶縁膜に形成された凹部は幅が広く、画素電極の一部もこの凹部に形成されている。したがって、凹部の断面形状をなだらかな形状にすることができ、凹部の深さを深くして、画素電極と信号配線との容量の低減効果を増すことができるとともに、配向膜の平坦度に対する凹部の影響を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施例にしたがって、本発明の詳細な内容を開示する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の第1の実施例を示す画素部の平面図である。図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図である。図4は図1の画素部に対応する等価回路である。図1において、ゲート配線3にゲート電圧が印加されると、TFTがONし、信号線からの信号電圧が画素電極8に印加される。画素電極8に電圧が印加されると下層に形成されているコモン電極2との間に電気力線が発生し、この電界によって液晶分子121が回転することによって、バックライトからの光を制御して画像を形成する。
【0017】
画素電極8は透明電極で形成されており、長方形である。画素電極8の内側にスリット81が形成されており、このスリット81を通る電気力線が液晶層12にも浸透して液晶分子121を動作させる。下層に形成されたコモン電極2も透明電極で形成されており、外形は画素電極8と同様で長方形である。コモン電極2はコモン配線21と接続されており、コモン電極2には一定電圧であるコモン電圧が印加される。コモン配線21は電気抵抗を下げるために、ゲート配線3と同様、金属であるCrによって形成されている。
【0018】
画素電極8には信号線よりTFTを介して信号電圧が印加される。図3はTFTの断面構造を示す。ガラス基板上には走査電圧を供給するためのゲート配線3が形成されるが、TFTはこのゲート配線3上に形成される。そして、ゲート配線3がゲート電極31を兼用する。なお、ゲート電極31とTFT基板1との間に、基板からの不純物等を阻止するための、SiNあるいはSiO等の下地膜を形成することもある。
【0019】
ゲート電極31を覆ってゲート絶縁膜4が約400nmの厚さでSiN膜によって形成される。ゲート絶縁膜4上に半導体膜であるa−Si膜5が形成される。a−Si膜5のチャンネル部を挟んでソース電極52とドレイン電極51がCr膜によって形成される。a−Si膜5とソース電極52、ドレイン電極51との接触部にはオーミックコンタクトを取るために、n層が形成される。ソース電極52は信号配線6と一体で形成される。
【0020】
ソース/ドレイン電極51を覆って層間絶縁膜7がSiNによって形成される。層間絶縁膜7の厚さは例えば、600nmである。層間絶縁膜7の上に透明電極によって画素電極8が形成される。層間絶縁膜7にスルーホール9が形成され、このスルーホール9によって、ドレイン電極51と画素電極8が接続し、信号電圧が画素電極8に供給される。そしてゲート電極31がゼロになってTFTがオフすると画素電極8は所定の電圧を保持することになる。この場合、画素電極8は一定の電荷を保持したままフロート電位となるため、信号配線6上の他の画素への信号電圧の影響を受けやすくなる。
【0021】
図4は信号配線6によって画素電極8に電位が影響を受ける様子を示す等価回路である。図4において、信号配線DynとDyn+1、および、ゲート配線Gxn−1とGxnによって囲まれた部分が図1の画素部分に対応する。図4において、コモン配線であるCstnから一定電位であるVcomがコモン電極2に与えられる。ゲート配線Gxnが選択されると、TFTがONして信号電圧が画素電極8に供給されて画素電位はVpxとなる。その後TFTがOFFすると、画素電極8はVpxに対応する電荷を保持したままフロート電位になる。画素電位は画素電極8と液晶を介したコモン電極2との容量Clcと画素電極8とコモン電極2間の直接の容量Cstによって保持される。
【0022】
しかし、画素電極8と信号配線DnyおよびDny+1との間にもそれぞれ容量Cds2およびCds1が形成されるために、これらの容量を介して画素電極8の電位Vpxが信号配線6の電位の影響を受けることになる。容量Cds1およびCds2の値が大きいほど信号配線6の電位の影響は大きい。そしてCds1とCds2の値にアンバランスがあれば、それに起因するVpxの変動が生じ、画質の低下が生ずる。
【0023】
したがって、信号配線6と画素電極8間の容量Cdsの値が小さければ、信号配線6の電位の影響を小さくでき、また、画素電極8の両側の容量、Cds1とCds2の差の影響も小さくできる。図2は実施例1の特徴を示す断面図である。図2において、TFT基板1上にコモン電極2が透明導電膜ITOによって形成されている。コモン電極2にはコモン配線21を介して一定電圧であるコモン電圧が印加される。コモン電極2を覆ってゲート絶縁膜4がSiNによって形成される。ゲート絶縁膜4の膜厚は400nmである。ゲート絶縁膜4上に信号配線6が形成される。信号配線6を覆って層間絶縁膜7がSiNによって形成される。層間絶縁膜7の膜厚は600nmである。
【0024】
層間絶縁膜7の上には画素電極8が櫛歯状に形成される。櫛歯の間のスリット81を通る電位力線が液晶層12にも浸透してバックライトからの光Lを制御する。画素電極8を覆って液晶を配向させるための配向膜11が形成される。配向膜11はポリイミド膜によって形成され、膜厚は約100nmである。
【0025】
液晶層12を挟んでカラーフィルタ基板13がTFT基板1と対向して設置される。カラーフィルタ基板13上にはカラーフィルタ14および配向膜11が形成される。カラーフィルタ基板13に形成される配向膜11もTFT基板1に形成される配向膜11と材料、膜厚とも同様である。
【0026】
信号配線6と画素電極8と間の容量Cdsは、長方形の画素電極8の信号配線6と対向する辺部と信号配線6間の容量が支配的である。したがって、画素電極8の長さが一定であれば、信号配線6と画素電極8と間の容量Cdsは、画素電極8と信号配線6との距離PSに反比例し、層間絶縁膜7の誘電率に比例することになる。
【0027】
したがって、信号配線6と画素電極8と間の容量Cdsを減らすには先ず、信号配線6と画素電極8の距離を大きくすることが考えられる。しかし、信号配線6と画素電極8の距離を大きくすることは画素電極8の面積が小さくなり、液晶表示パネルの透過率が低下して明るさにとって不利である。
【0028】
一方層間絶縁膜7の材料としてSiNが使用されているが、SiNの比誘電率は約7と大きい。したがって、SiNよりも小さな比誘電率を持つ材料を層間絶縁膜7として使用することも考えられるが、SiNは優れた絶縁特性を有しているために、層間絶縁という本来の目的を考慮すると他の材料に変えることは困難である。
【0029】
本実施例では、図2に示すように、画素電極8と信号配線6との間に凹部10を形成し、この凹部10には比誘電率の小さい配向膜11を満たすことにより信号配線6と画素電極8と間の容量Cdsを減らそうとするものである。配向膜11はポリイミドで形成されるが、ポリイミドの比誘電率は約3である。したがって、画素電極8と信号配線6間を実質的に配向膜11で満たしてしまえば、信号配線6と画素電極8と間の容量Cdsは3/7となり、大幅に低減することが出来る。
【0030】
図1に示す、画素電極8と信号配線6の間の破線で囲まれた細長い長方形部が図2の凹部10に対応する。図1および図2に示すように、画素電極8と信号配線6との間には導電膜が交叉する部分はないため、配向膜程度の絶縁特性でも問題となることはない。本実施例において、画素電極8と信号配線6との距離は8μmである。
【0031】
図5から図8に、図2に示す層間絶縁膜7であるSiN膜への凹部10の形成方法の一例を示す。図5から図8は本プロセスを説明するための模式図であり、実際の画素の断面構造を示すものではない。図5において、SiN膜71がガラス基板70上に形成されている。SiN膜上にレジスト61をコートする。このレジスト膜に対して露光マスク40を用いて露光し、露光マスク40のパターンに従ってレジストパターンを形成する。
【0032】
露光マスク40のパターンには露光の光を完全に遮蔽する完全なパターン41と、露光の光を半透過する半透過パターン41とが形成されている。このような露光マスクを用いると、図5に示すように、SiN膜上に形成されるレジストパターンとして、レジストが完全に除去された部分63、レジストが完全に残っている部分61、レジストが薄く残っている部分62を形成することができる。
【0033】
次に図6に示すように、SiN膜71のエッチング液を用いてレジストのない部分のSiN膜を除去する。その後、レジスト除去液によって薄く残ったレジスト部62を除去する。この状態でSiNをエッチングによって除去するが、エッチング時間を調整することによって、SiN膜71を完全に除去せずに、一部残す。その後レジスト61を除去することにより、図8に示すように膜厚の異なるSiN膜71を得ることができる。図5から図8で説明したプロセスをハーフ露光法と称する。
【0034】
実施例1の構成においては、図3に示すように、画素電極8を形成する前に層間絶縁膜7であるSiN膜に対してスルーホール9を形成する。このスルーホール9はSiN膜7を貫通する。このスルーホール9を形成すると同時に図5から図8において説明したハーフ露光方法を用いることにより、図2に示す画素電極8と信号配線6との間の凹部10を形成することができる。
【0035】
凹部10の深さはSiNのエッチング時間によって調整することが出来る。また、凹部10の面積は露光マスク50の半透過部52によって決めることができる。エッチング条件を適切に選定することにより、凹部10の深さは理論的にはSiN膜7の厚さ付近まで大きくすることができる。一方、画素電極8と信号配線6とのあいだの容量Cdsを減少させる目的からは、凹部10の深さをSiN膜7の膜厚と信号配線6膜厚との差まで深くすることにより相当の効果を得ることができる。
【0036】
本実施例ではSiN膜7の厚さは600nmで、信号配線6の膜厚は200nmである。したがって、本実施例では凹部10の深さは400nm程度あれば信号配線6と画素電極8と間の容量Cdsの低減に対しては大きな効果を見込むことができる。一方、SiN膜7に形成された凹部10があまり深いと配向膜11の平坦度に影響を与える。配向膜11は後に説明するインクジェット方式によって形成すれば、凹部10による配向膜11の平坦度への影響は小さくすることはできるが、凹部10が深いほど、配向膜11の平坦度への影響が大きくなることは避けられない。しかし、凹部10の深さが配向膜11の膜厚と同じ程度まであれば、インクジェット方式によって配向膜11を形成した場合、配向膜11の平坦度への凹部10の影響はほとんど無くすことができる。したがって、凹部10の深さは400nm以内で、配向膜11の表面に凹凸が生じない範囲とすればよい。
【0037】
図2における凹部10の幅HWは画素電極パターンとSiN膜7のスルーホールパターンとの合わせ精度が関係する。画素電極8の端部と凹部10の端部の距離DPHよりも上記合わせ精度が悪いと画素電極8の一部が凹部10内に形成されることになる。画素電極8の端部は液晶透過には大きな影響は無いため、画質に対する影響は小さいが、凹部10が深く、面積が大きい場合は問題になる場合がありうる。SiN膜エッチングパターンと画素電極8のパターンのズレが大きい場合は、画素電極8の端部がSiN膜7の凹部10に形成されることになる。そうすると画素電極8の端部と信号配線6の端部が近づくことになり、本発明の効果が発揮されない場合もありうる。したがって、図2におけるSiN膜7の凹部10の端部と画素電極8の端部との距離DPHはSiN膜7のスルーホールマスクパターンと画素電極8のマスクパターンの合わせ精度を勘案して決める必要がある。スルーホールマスクパターンと画素電極8のマスクパターンの合わせ精度は3μm程度と考えられるので、理想的にはSiN膜7の凹部10の端部と画素電極8の端部との距離DPHは3μm程度とるのが良い。一方、画素電極8と信号配線6との間隔は8μm程度であるからこの場合でも凹部10の幅は5μm程度とすることが出来る。
【0038】
配向膜11の膜厚は100nmであり、SiN膜7に凹部10が形成されると配向膜表面の凹凸が問題になりうる。これに対しては配向膜11の形成方法を工夫することによって対処することができる。図9は配向膜11の形成方法を示す模式図である。図9において、画素電極8まで形成されたTFT基板1のわずか上方に、配向膜11をインクジェット法で形成するためのインラインノズル80が設置されている。このインラインノズル80には液状の配向膜材料をインクジェット法によって吹き付けるための複数のノズルがインライン状にとりつけられている。図9における斜線を施した矢印がインクジェット法によって射出される配向膜材料である。液状配向膜材料を複数のノズルから同時に吐出するとともに、TFT基板1上を走査することによりTFT基板1の全面に配向膜11を形成することができる。
【0039】
このような配向膜11の形成方法であれば、液状配向膜はインクジェットによってTFT基板1に射突するため、SiN膜7に形成された凹部10を簡単に液状配向膜材料によって埋めることができる。液状配向膜がTFT基板1全面に形成されたあと、TFT基板1を揺動することにより、液状配向膜の表面を均一にする。その後ベーキングによって、配向膜材料を固化し、配向膜11を形成する。インクジェット法を用い、条件を適正化すれば、SiN膜7に形成された深さ400nm程度までの凹部10は、配向膜表面を実用的な凹凸の範囲内に保ちつつ形成することが可能である。
【0040】
本実施例により、信号配線6と画素電極8と間の容量Cdsは従来の半分程度に低減することができ、信号配線6を画素電極8とのクロストークによる、横筋発生等の画質の劣化は大幅に低減することができる。
【実施例2】
【0041】
図10に本発明の第2の実施例の平面図を、図11に本発明の第2の実施例の断面図を示す。図11は図10のA−A断面図である。図10のB−B断面図は図3とほぼ同一である。
【0042】
実施例2においては、図11に示すように、層間絶縁膜7であるSiN膜7に凹部10を形成する範囲は画素電極8の内部にまで広がっている。このような構成とすることにより、凹部10の断面形状をなめらかなものとすることが出来る。SiN膜7に形成される凹部10は深いほうが、画素電極8と信号配線6間の容量Cdsの低減に効果があるが、凹部10の面積が小さければ、凹部10を深くすると凹部10の断面形状の変化が大きくなり、マスクズレが生じたときの画素電極8に対する影響、配向膜11の表面凹凸に対する影響が大きくなる。
【0043】
本実施例においては、画素電極8の周辺部がすでにSiN膜7の凹部10内に形成されていることになり、周辺の画素電極8は図11に示すように、傾斜状の面に形成されることはありうる。しかし、凹部10の深さ方向と平面方向のディメンジョンを考慮するとこの傾きは小さなものであり、液晶動作に与える影響は実質的には無視することができる。また、このようにSiN膜7の凹部10の範囲を広くしても、信号配線6と画素電極8が重なることはないため、耐電圧上問題となることもない。
【0044】
SiN膜7の凹部10の断面形状は画素電極8が形成されている側では浅く、信号配線6側で深くするのがよい。画素電極8と信号配線6間の容量Cdsの低減には、SiN膜7の凹部10の深さは信号配線6側で大きいほうが効果が大きいからである。凹部10をこのような断面形状とすることにより、信号配線6側の凹部10の深さは400nm程度にすることもでき、画素電極8と信号配線6間の容量Cdsの低減には非常に効果がある。
【0045】
図11に示すような、底部がテーパー状の凹部10をSiN膜7に対して形成する方法の例として2つの方法をあげることができる。いずれも実施例1で説明したハーフ露光法を使用する。
【0046】
第1の方法はドライエッチングを用いる場合であり、概略を図12から図14に示す。図12は露光マスク40と対応するレジストの断面形状を示すものである。露光マスク40のハーフ露光に対応する部分42には光透過率がテーパー状になるようなマスクとしておく。そうするとレジスト膜厚もマスクの透過率に対応した膜厚に形成される。このようなレジストがコートされたSiN膜71を図13に示すようにレジストごとドライエッチングする。そうするとレジストが薄い部分はSiN膜71が早くエッチングされることになるため、図14に示すように、テーパー状の厚さをもったSiN膜71を得ることができる。この場合のドライエッチングのエッチャントとしてはSF、CF+O等を用いることができる。
【0047】
第2の方法はウェットエッチングを用いる場合である。実施例1で説明した図5に示すハーフ露光法により、SiN膜71上に膜厚の異なるレジストを形成し、図6に示すようなSiN膜71のパターンを形成する。その後レジスト膜の薄い部分を除去してハーフエッチングを行う。このハーフエッチングを行うときにレジスト61との界面に沿って早くエッチングが進むようなエッチャントを用いることにより、図15に示すようなテーパーを持ったSiN膜71を形成することができる。このような性質を持つSiNのエチャントとしては、HFとNH4Fの混合エッチャントがあげられる。
【0048】
以上のような方法により、図11に示す凹部10をSiN膜7に形成したあと、画素電極8となるITO膜をスパッタリングによって、形成し、パターニングする。この場合、凹部断面は緩やかなテーパとなっているため、マスクあわせの裕度は実施例1の場合よりも大きくとることができる。その後、インクジェット法によって配向膜11を形成することは実施例1と同様である。
【0049】
以上の実施例においては、層間絶縁膜7はSiN膜であるとして説明したが、本発明はSiN膜に限る必要はない。また、層間絶縁膜7に形成された凹部10に充填する物質は配向膜材料であるとして説明したが、該物質は配向膜材料に限る必要はない。本発明は層間絶縁膜7に対し、画素電極8と信号配線6との間に凹部10を設け、その凹部10に層間絶縁膜7の比誘電率より比誘電率の小さな物質を充填することにより、画素電極8と信号配線6間の容量Cdsを小さくすることが目的である。したがって、層間絶縁膜7と充填物質とが上記のような関係を有する範囲内で色々な組み合わせをとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施例の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】画素部の等価回路図である。
【図5】ハーフ露光のマスクとレジストの関係を示す模式図である。
【図6】ハーフ露光の途中工程を示す模式図である。
【図7】ハーフエッチング状態を示す模式図である。
【図8】ハーフ露光工程による膜形成結果を示す断面模式図である。
【図9】インクジェットによる配向膜形成の模式図である。
【図10】本発明の第2実施例の平面図である。
【図11】図10のA−A断面図である。
【図12】テーパー断面を形成するハーフ露光法の模式図である。
【図13】テーパー断面を形成するハーフ露光法の途中工程図である。
【図14】テーパー断面を有する膜形成結果を示す断面模式図である。
【図15】テーパー断面を有する他の膜形成方法の模式図である。
【図16】従来技術による画素部分の平面図である。
【図17】図16のA−A断面図である。
【図18】マスクあわせが完全でない場合の図16のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…TFT基板、2…コモン電極、 3…ゲート配線、 4…ゲート絶縁膜、 5…a−Si膜、 6…信号配線、 7…層間絶縁膜、8…画素電極、 9…スルーホール、 10…凹部、 11…配向膜、 12…液晶層、 13…カラーフィルタ基板、 14…カラーフィルタ、 21…コモン配線、 51…ドレイン電極、 52…ソース電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板の間に液晶が挟持され、前記液晶に電界を作用させることによって画像を形成する液晶表示装置であって、前記第1の基板上にはコモン電極が形成され、前記コモン電極上には第1の絶縁膜が形成され、前記第1の絶縁膜上には信号配線が形成され、前記信号配線上には第2の絶縁膜が形成され、前記第2の絶縁膜上には画素電極が形成され、前記画素電極の上には前記液晶と接する配向膜が形成されており、
前記第2の絶縁膜には、前記画素電極と前記信号配線との間に凹部が形成され、前記凹部には前記第2の絶縁膜よりも比誘電率の小さな物質が充填されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記比誘電率の小さな物質は前記配向膜であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記配向膜はインクジェット法で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第2の絶縁膜はSiN膜であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記第2の絶縁膜の膜厚よりも小さく、かつ10nmよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記第2の絶縁膜の膜厚と前記信号配線の膜厚の差よりも小さく、かつ20nmよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記配向膜の膜厚よりも小さく、かつ20nmよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
第1の基板と第2の基板の間に液晶が挟持され、前記液晶に電界を作用させることによって画像を形成する液晶表示装置であって、前記第1の基板上には透明導電膜からなるコモン電極が形成され、前記コモン電極上には第1の絶縁膜が形成され、前記第1の絶縁膜上には信号配線が形成され、前記信号配線上には第2の絶縁膜が形成され、前記第2の絶縁膜上には複数のスリットを有する透明導電膜からなる画素電極が形成され、前記画素電極の上には前記液晶と接する配向膜が形成され、前記画素電極と前記コモン電極との電位差によって前記液晶が駆動され、
前記第2の絶縁膜には、前記画素電極と前記信号配線との間に凹部が形成され、前記凹部には前記第2の絶縁膜よりも比誘電率の小さな物質が充填されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
前記比誘電率の小さな物質は前記配向膜であることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記配向膜はインクジェット法で形成されていることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記第2の絶縁膜はSiN膜であることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記第2の絶縁膜の膜厚よりも小さく、かつ10nmよりも大きいことを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記第2の絶縁膜の膜厚と前記信号配線の膜厚の差よりも小さく、かつ20nmよりも大きいことを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記配向膜の膜厚よりも小さく、かつ20nmよりも大きいことを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
第1の基板と第2の基板の間に液晶が挟持され、前記液晶に電界を作用させることによって画像を形成する液晶表示装置であって、前記第1の基板上にはコモン電極が形成され、前記コモン電極上には第1の絶縁膜が形成され、前記第1の絶縁膜上には信号配線が形成され、前記信号配線上には第2の絶縁膜が形成され、前記第2の絶縁膜上には画素電極が形成され、前記画素電極の上には前記液晶と接する配向膜が形成されており、前記画素電極と前記コモン電極との電位差によって前記液晶が駆動され、
前記第2の絶縁膜には、前記画素電極と前記信号配線との間に凹部が形成され、前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部には前記画素電極の一部が形成されており、前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部には、前記第2の絶縁膜よりも比誘電率の小さな物質が充填されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項16】
前記比誘電率の小さな物質は前記配向膜であることを特徴とする請求項15に記載の液晶表示装置。
【請求項17】
前記配向膜はインクジェット法で形成されていることを特徴とする請求項15に記載の液晶表示装置。
【請求項18】
前記第2の絶縁膜はSiN膜であることを特徴とする請求項15に記載の液晶表示装置。
【請求項19】
前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記第2の絶縁膜の膜厚と前記信号配線の膜厚の差よりも小さく、かつ20nmよりも大きいことを特徴とする請求項15に記載の液晶表示装置。
【請求項20】
前記第2の絶縁膜に形成された前記凹部の深さは前記配向膜の膜厚よりも小さく、かつ20nmよりも大きいことを特徴とする請求項15に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2008−39812(P2008−39812A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209689(P2006−209689)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】