説明

液晶表示装置

【課題】簡素な構造で表示ムラを低減することが可能な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】第1基板と、第1基板の一面側に設けられた複数の第1電極と、各々が複数の第1電極のいずれかと接続しており、第1基板の一面側に設けられた複数の第1配線と、一面側を第1基板の一面側と対向させて配置された第2基板と、第2基板の一面側に設けられた複数の第2電極と、各々が複数の第2電極のいずれかと接続しており、第2基板の一面側に設けられた複数の第2配線と、第1基板と第2基板との間に設けられた液晶層と、を含み、複数の第1配線31a,31bのうちのいずれか1つ以上の第1配線と複数の第2配線32a,32b,32cのうちの少なくとも1つ以上の第2配線とが平面視において部分的に重なることにより1つ以上の交差箇所が構成された、液晶表示装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に液晶表示装置における表示ムラを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
キャラクタタイプの液晶表示装置は、様々な表示デザインを実現可能であることから幅広く用いられている。キャラクタタイプの液晶表示装置では、2枚の基板(例えばガラス基板)のそれぞれに設けられた透明電極(コモン電極、セグメント電極)が相互に重なった部分によって表示パターンが構成される。コモン電極およびセグメント電極のそれぞれを任意の形状にパターニングしておくことにより、所望の表示パターンを表現することができる。コモン電極およびセグメント電極にはそれぞれに電圧を与えるための配線(引き回しパターン)が接続される。これらの配線は、コモン電極等と同じく透明電極をパターニングすることによって形成される。通常、コモン電極側の配線とセグメント電極側の配線とは互いに重ならないようにレイアウトが設計される。両者が重なった領域における不必要な表示(点灯)を防ぐためである。
【0003】
ところで、キャラクタタイプの液晶表示装置では、表示パターンの表示密度が高い場合に、各電極に接続される配線のレイアウト可能な領域が少なくなり、この結果、配線の線幅を細くする必要が生じる。各電極および配線の形成には、Snドープ酸化インジウム(ITO)などの酸化物導電体が一般に用いられるが、これらは比抵抗が10−4Ωcm程度であるために金属を用いた配線に比べて高抵抗である。そのため、配線の線幅を細くすればするほど配線抵抗が高くなるため配線での電圧降下が顕著となり、各電極に印加される電圧が低下する。キャラクタタイプの液晶表示装置では、コモン電極毎に配線形状(線幅、線長)が異なるため、コモン電極毎に異なる配線抵抗が生じてしまい、各コモン電極に印加される電圧にばらつきが生じてしまう。セグメント電極についても同様である。このような印加電圧のばらつきは透過率の差を生じさせるため、表示ムラの要因となる。
【0004】
これに関し、特開平5−203997号公報(特許文献1)には、引出電極に液晶を介して対向する部分に補正電極を配置し、この補正電極の引出電極に対向する面積を、長い引出電極に対向する部分では小さく、短い引出電極に対向する部分では大きくすることにより、引出電極の抵抗値の違いに起因する表示ムラを低減する技術が開示されている。しかしながら、この従来例では、液晶表示装置として本来的に必要な電極等を配置するスペースに加え、補正電極を設けるための領域を新たに確保する必要が生じるという不都合がある。また、補正電極と重なる配線の長さを増減させることによってその補正電極と重なる配線の面積を調整するため、各補正電極の形状を個別に設定する必要があり、構造の複雑化を招くと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−203997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明に係る具体的態様は、簡素な構造で表示ムラを低減することが可能な液晶表示装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の液晶表示装置は、表示部と当該表示部の外縁に設けられた非表示部と、を有する液晶表示装置であって、(a)第1基板と、(b)上記第1基板の一面側に設けられた複数の第1電極(例えばコモン電極)と、(c)各々が上記複数の第1電極のいずれかと接続しており、上記第1基板の一面側に設けられた複数の第1配線と、(d)一面側を上記第1基板の一面側と対向させて配置された第2基板と、(e)上記第2基板の一面側に設けられた複数の第2電極(例えばセグメント電極)と、(f)各々が上記複数の第2電極のいずれかと接続しており、上記第2基板の一面側に設けられた複数の第2配線と、(g)上記第1基板と上記第2基板との間に設けられた液晶層と、を含んでおり、上記複数の第1配線のうちのいずれか1つ以上の第1配線と上記複数の第2配線のうちの少なくとも1つ以上の第2配線とが平面視において部分的に重なることにより1つ以上の交差箇所が構成されている。
【0008】
上記の液晶表示装置においては、第1配線と第2配線とを上下方向に重ねた交差箇所において液晶層による容量成分を生じさせることができる。このような交差箇所を適当な数だけ設けることにより、交差箇所に関わる第1配線とこの第1配線に接続された第1電極に対して容量成分を付加して全体のインピーダンスを調整することができる。付加する容量成分の大きさに関しては交差箇所の数を増減することにより加減できる。従って、ある第1電極−第1配線対と別の第1電極−第1配線対との間におけるインピーダンスの差を是正し、それぞれの第1電極に印加される電圧のばらつきを抑制することが可能となる。このような本発明に係る液晶表示装置によれば、第1配線と第2配線とを部分的に交差させるという簡素な構成により表示ムラを低減することができる。
【0009】
上述した交差箇所は、例えば上記表示部内に配置することができ、その場合には交差箇所の少なくとも一方向の長さが100μm以下であることが好ましい。交差箇所を100μm角よりも小さくすると更に好ましい。
【0010】
一般に、人間の目は分解能が100μm程度であると言われる。このため、交差箇所の少なくとも一方向の長さを100μm以下とすることにより、表示部内に交差箇所を配置したとしても交差箇所が視認されにくくすることができる。このように、表示部内に交差箇所を設けることができることにより、配線や画素のレイアウト設計に自由度が増すので、設計がより容易になる。
【0011】
また、上述した交差箇所は、上記非表示部内に配置されていてもよい。
【0012】
この場合には、交差箇所が視認されることがないので、交差箇所のサイズに関する制約が少なくなる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、表示ムラの検討に用いたシミュレーションモデルの液晶セルを示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示すシミュレーションモデルの回路図である。
【図3】図3は、シミュレーションモデルに基づいて、液晶セルの表示面積を変化させたときの実効電圧比と配線抵抗の影響をシミュレーションした結果を示す図である。
【図4】図4は、シミュレーションモデルに基づいて、液晶セルの表示面積を変化させたときの実効電圧比と配線抵抗の影響をシミュレーションした結果を示す図である。
【図5】図5は、表示面積および配線抵抗の各値が異なる複数の条件を想定し、実効電圧比と表示ムラとの関係をシミュレーションした結果を示す図である。
【図6】図6は、表示面積および配線抵抗の各値が異なる複数の条件を想定し、実効電圧比と表示ムラとの関係をシミュレーションした結果を示す図である。
【図7】図7は、一実施形態の液晶表示装置を模式的に示す平面図である。
【図8】図8は、図7に示すVIII-VIII線に対応する断面構造を示した部分断面図である。
【図9】図9は、第1電極および第1配線の構造を示す部分的な平面図である。
【図10】図10は、第2電極および第2配線の構造を示す部分的な平面図である。
【図11】図11は、第1配線および第2配線の構成について示す部分拡大平面図である。
【図12】図12は、第1配線と第2配線との交差箇所の一例の拡大図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本願発明者は、鋭意検討の結果、液晶表示装置において表示ムラが発生する際の傾向について、表示パターンの面積と配線抵抗の2つのパラメータとの相関関係を見出し、この知見に基づいて、表示ムラを抑制し得る構造についての着想を得た。以下では、まず始めに本願発明者が得た知見について説明し、次いでその知見に基づいて着想された一実施形態の液晶表示装置の構成を説明する。
【0015】
(本願発明者が見出した知見)
図1は、表示ムラの検討に用いたシミュレーションモデルの液晶セルを示す概略図である。また、図2は、図1に示すシミュレーションモデルの回路図である。図1に示すモデルは、コモン電極100と、このコモン電極100に接続された配線101と、コモン電極100と対向配置されたセグメント電極102と、コモン電極100とセグメント電極102の間に介在する液晶層104と、を含んで構成される。このようなモデルを電気回路として表したのが図2に示した回路図である。図2において、V_inは外部から与えられる電圧、RITOは配線101の配線抵抗、CLCは液晶層104の容量成分、V_outはコモン電極100とセグメント電極102の間に生じる電圧(以下これを「実効電圧」と称する)をそれぞれ表している。シミュレーションに用いるパラメータは、上記のほか、単純マトリクス駆動条件のduty比(1/D)、Bias比(1/b)、駆動周波数f(Hz)、波形形状(A波形:フレーム内反転波形、B波形:フレーム反転波形など)と、液晶セル条件の表示面積、セル厚、液晶材料の比誘電率である。これらのパラメータからコモン電極100に印加される選択波形の鈍りを計算し、実効電圧をシミュレーションした。ここで、実効電圧Von_rmsのシミュレーションは以下に示す計算式に基づいて行われた。なお、液晶材料の比誘電率は5.1、セル厚は4μmとし、これらの数値と液晶セルの表示面積(換言すればコモン電極100の電極面積)に基づいて液晶セルの容量成分CLCを算出した。配線101の配線抵抗RITOは2.5kΩ、4.5kΩまたは6.5kΩとした。駆動条件は、duty比を1/64、bias比を1/9、駆動周波数fを120Hzとした。
【数1】

【0016】
ただし、上記計算式において、選択期間電圧Vs(t)、非選択期間電圧Vns(t)はそれぞれ以下のように表される。ここで、選択期間は0≦t≦{1/(f×D)}、非選択期間は{1/(f×D)}≦t≦{1/f}で表される。V0はオンセグメント駆動ピーク電圧である。
【数2】

【数3】

【0017】
上記のシミュレーションモデルに基づいて、液晶セルの表示面積を変化させたときの実効電圧比と配線抵抗の影響をシミュレーションした結果を図3および図4に示す。ここで、実効電圧比の基準値は、配線抵抗を2.5kΩ、表示面積を50mmとしたときの実効電圧とした。図3および図4の各結果から分かるように、配線抵抗が高いほど実効電圧比は基準値から離れ、また表示面積が大きいほど実効電圧比が基準値から離れる。図3と図4の各結果の比較では、駆動周波数が高いほど表示面積に対する実効電圧比の傾斜が急になる(傾きが大きくなる)ことが分かる。これらの結果を別言すると、表示面積または配線抵抗をパラメータとして実効電圧比を適切に設定することにより、表示ムラを改善し得るということになる。
【0018】
図5および図6は、表示面積および配線抵抗の各値が異なる複数の条件を想定し、実効電圧比と表示ムラとの関係をシミュレーションした結果を示す図である。com1〜9は配線抵抗、表示面積の値がそれぞれ異なる複数のコモン電極を意味する。本例では、com6と標記されるコモン電極を基準として、表示面積または配線抵抗と表示ムラとの関係を考察した。図5に示す結果においては、元々、配線抵抗が1800Ω(1.8kΩ)かつ表示面積が61.7mmであるコモン電極com6を基準とし、このcom6の表示面積を120.0mmに増やした場合が示されている。com6の表示面積を約2倍とすることによって実効電圧を3.32Vから3.30Vへ低下させることができる。これにより、com6の実効電圧を基準実効電圧として求められるcom1〜5、com7〜9のそれぞれの実効電圧比が0.98以上に揃い、表示ムラの発生が抑えられることが分かる。また、図6に示す結果においては、元々、配線抵抗が1800Ω(1.8kΩ)かつ表示面積が61.7mmであるコモン電極com6を基準とし、このcom6の配線抵抗を3500Ω(3.5kΩ)に増やした場合が示されている。com6の配線抵抗を約2倍とすることによっても実効電圧を3.32Vから3.30Vへ低下させることができる。これにより、com6の実効電圧を基準実効電圧として求められるcom1〜5、com7〜9のそれぞれの実効電圧比が0.98以上に揃い、表示ムラの発生が抑えられることが分かる。
【0019】
以上の検討結果から、本願発明者は、表示面積または配線抵抗の少なくとも一方を増減させることによって複数のコモン電極における実効電圧のばらつきを抑え、それによって表示ムラを抑制し得るという知見を得た。次いで、この知見に基づいて構成された一実施形態の液晶表示装置について説明する。
【0020】
(知見に基づいた一実施形態の液晶表示装置)
図7は、一実施形態の液晶表示装置を模式的に示す平面図である。図7に示す本実施形態の液晶表示装置1は、表示部(表示領域)2と、この表示部2の外縁に環状(額縁状)に設けられた非表示部(非表示領域)3と、表示部2へ外部から駆動信号を供給するための複数の接続端子を有する端子部4と、を備えている。本実施形態においては、表示部2として図示のようにセグメント型の表示部を考える。この液晶表示装置1は、例えば車載用の情報表示部として用いられる。
【0021】
図8は、図7に示すVIII-VIII線に対応する断面構造を示した部分断面図である。図8に示すように、本実施形態の液晶表示装置1は、対向配置された第1基板11および第2基板15と、両基板の間に配置された液晶層14と、を基本構成として備える。なお、液晶層14の周囲を封止するシール材等の部材については図示および説明を省略する。
【0022】
第1基板(コモン側基板)11は、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。第2基板(セグメント側基板)15は、第1基板11と同様に、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。図示のように、第1基板11と第2基板15とは、第1電極12と第2電極16とが対向するようにして、所定の間隙(例えば4μm程度)を設けて貼り合わされている。
【0023】
第1電極(コモン電極)12は、第1基板11の一面側に設けられている。第1電極12は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。この第1電極12には、詳細を後述するように第1配線が接続されている。
【0024】
第2電極(セグメント電極)16は、第2基板15の一面側に設けられている。第2電極16は、第1電極12と同様に、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明な導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。この第2電極16には、詳細を後述するように第2配線が接続されている。
【0025】
配向膜13は、第1基板11の一面側に、第1電極12を覆うようにして設けられている。この配向膜13は、液晶層14の液晶分子の初期状態(電圧無印加時)における配向状態を規制するものである。本実施形態では、配向膜13として液晶層14の液晶分子の初期配向状態を垂直配向に規制するもの(垂直配向膜)を用いる。本実施形態での配向膜13は、液晶層14に対して約89.5°のプレチルト角を付与し得るように、ラビング等の処理が施されている(後述する配向膜17も同様)。
【0026】
配向膜17は、第2基板15の一面側に、第2電極16を覆うようにして設けられている。この配向膜17は、上述の配向膜13と同様に液晶層14の配向状態を規制するものである。本実施形態では、配向膜17としても垂直配向膜を用いる。この配向膜17は、配向膜13との間をアンチパラレル配向とするように配置されている。
【0027】
液晶層14は、第1基板11の第1電極12と第2基板15の第2電極16との間に設けられている。本実施形態においては、誘電率異方性Δεが負の液晶材料を用いて液晶層14が構成される。液晶材料は、例えば誘電率異方性Δεが−2.6、屈折率異方性Δnが0.20、比誘電率が5.1のものである。液晶層14に図示された太線は、液晶層14に電圧が印加されていない初期状態における液晶分子の配向方位を模式的に示したものである。本実施形態の液晶層14は、電圧無印加時における液晶分子の配向方位が第1基板11および第2基板15の各基板面に対して略垂直となる垂直配向モードに設定されている。
【0028】
第1偏光板21は、第1基板11の外側に配置されている。同様に、第2偏光板22は、第2基板15の外側に配置されている。各偏光板の吸収軸は、例えば第1偏光板21が45°、第2偏光板22が135°の角度に配置される。また、いずれかの偏光板(本例では第2偏光板22)と基板(本例では第2基板15)との間には光学補償板23が配置されている。光学補償板23は、例えば面内リタデーションΔRe=0nm、厚み方向リタデーションΔRth=220nmのもの(Cプレート)を2枚積層して構成されている。
【0029】
次に、本実施形態の液晶表示装置1における第1電極、第1配線、第2電極および第2配線の構成についてさらに詳細に説明する。
【0030】
図9は、第1電極および第1配線の構造を示す部分的な平面図である。図10は、第2電極および第2配線の構造を示す部分的な平面図である。これらは、図7に例示した液晶表示装置1の表示部2における左側に配置された「88」および「TEMP」の各セグメント表示部に対応する部位を示した図である。図9に示すように、コモン電極である第1電極12のそれぞれには第1配線31が接続されている。各第1配線31は、第1電極12と同様にITOなどの透明導電膜をパターニングすることによって形成される。各第1配線31は、他の第1配線31と接触しないようにレイアウトされ、上記した端子部4まで引き回されている。また、図10に示すように、セグメント電極である第2電極16のそれぞれには第2配線32が接続されている。各第2配線32は、第2電極16と同様にITOなどの透明導電膜をパターニングすることによって形成される。各第2配線32は、他の第2配線32と接触しないようにレイアウトされ、上記した端子部4まで引き回されている。
【0031】
図11は、第1配線および第2配線の構成について示す部分拡大平面図である。一般的な液晶表示装置と同様に、本実施形態の液晶表示装置1においても、原則的には第1配線31と第2配線32とは互いに重ならないようにレイアウト設計がなされる。しかし、図1に示すように、本実施形態の液層表示装置1は、第1配線31と第2配線32と部分的に交差させて両者が重なるようにした構造も備えている。このような構造は、例えば、表示部2内に設けることが可能である。具体的には、表示部2の一部である領域41には、第1配線31と第2配線32とが部分的に交差した構造が設けられている。ここで便宜上、図11においては、2つの第1配線31をそれぞれ第1配線31a、31bと表記し、3つの第2配線32をそれぞれ第2配線32a、32b、32cと表記する。図11においては、この領域41における各第1配線31a、31bおよび各第2配線32a、32b、32cの構造が部分拡大平面図で示されている。
【0032】
図示のように、第1配線31aは、第2配線32a、32b、32cのいずれとも交差している。第2配線32a等は、図示のように折り返した構造を有しており、それぞれが第1配線31aと2箇所で交差している。これにより、第1配線31aについて着目すると合計で6つの交差箇所が構成されている。図中においては各交差箇所をグレーに色づけして示す。第1配線31aに関して6つの交差箇所が設けられることで、この第1配線31aと接続した第1電極12に対して容量成分を付加し、これらの第1配線31aと第1電極12の全体のインピーダンスを調整することができる。このことは、換言すれば上記した知見に基づいて、第1配線31aに関わる実質的な表示面積を増やしたことに相当する。また、図示のように第1配線31bは、第2配線32a、32b、32cのいずれとも交差している。第1配線31bに関しては、図示のように合計で3つの交差箇所が構成されている。これにより、第1配線31bとこれに接続した第1電極12の全体のインピーダンスを調整することができる。また、第1配線31aと第1配線31とは、それぞれに対応付けられる交差箇所の数が異なっている。このように交差箇所の数を適宜増減して設定することにより、容量成分の付加量を加減することができる。
【0033】
ここで、各交差箇所を表示部2内に設ける場合には、そのサイズによっては、交差箇所が視認され得る状態となる。これについては、デザイン上差し障りないようであれば特段の配慮は不要であるが、そうでない場合には以下に説明するように各交差箇所のサイズを工夫することにより被視認性を低下させることができる。図12に、第1配線31と第2配線32との交差箇所の一例の拡大図を示す。図12に示す交差箇所は、略矩形状であり、一辺の長さがL1、他の一辺の長さがL2である。このとき、少なくとも一方向の長さを100μm以下とすることが好ましい。本例においては、L1、L2の少なくともいずれかを100μm以下とすればよい。それにより、被視認性を低下させることができる。また、L1、L2のいずれも100μm以下とした場合、別言すれば交差箇所を100μm角よりも小さくした場合には、被視認性をさらに低下させることができる。その理由は、上記したように人間の目の分解能が100μm程度であることによる。
【0034】
なお、第1配線31と第2配線32とが部分的に交差した構造を非表示部3の一部である領域42に設けてもよい。図11においては、この領域42における第1配線31dと第2配線32dの構造も部分拡大平面図で示されている。ここで、本実施形態における非表示部3は、第1基板11、液晶層14及び第2基板15等からなるパネルの外縁に相当する部分であり、外部から視認できないようにカバー体等によって遮られている。このような非表示部3に第1配線31と第2配線32との交差箇所を設ける場合には、交差箇所も視認されないことから、交差箇所のサイズには特段の制約がない。
【0035】
以上のような本実施形態によれば、第1配線と第2配線とを上下方向に重ねた交差箇所による容量成分を利用してこの交差箇所に関わる第1配線とこの第1配線に接続された第1電極に対して容量成分を付加し、全体のインピーダンスを調整することができる。従って、ある第1電極−第1配線対と別の第1電極−第1配線対との間におけるインピーダンスの差を是正し、それぞれの第1電極に印加される電圧のばらつきを抑制することができる。このような液晶表示装置によれば、第1配線と第2配線とを部分的に交差させるという簡素な構成により表示ムラを低減することができる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上述した実施形態においては垂直配向型の液晶表示装置について例示していたが、TN配向型の液晶表示装置やSTN配向型の液晶表示装置など種々の液晶表示装置に対して本発明を適用することが可能である。その際は、実効電圧比に対する透過率変化の特性が上記実施形態の場合とは異なり、表示ムラ抑制の指針である実効電圧比の値も異なってくるので、液晶表示装置のタイプに応じて適宜実効電圧比を決定するとよい。また、交差箇所を表示部2内に設ける場合、印刷法やスパッタリング法など公知の方法によりブラックマスクを交差部分を覆うように設けてもよい。ブラックマスクは第1基板、第2基板の何れに設けてもかまわない。また、第1基板、第2基板の液晶層側であっても非液晶層側であってもかまわない。ブラックマスクを他の表示に影響させないためには基板板厚による視差の発生が無い液晶層側に設けることが好ましい。ブラックマスクは、特にネガタイプの液晶表示素子において交差箇所の点灯動作における透光を抑制するため、透過光強度が特に強い用途や拡大して使用する用途などで交差部が視認されることを効果的に防ぐ。ブラックマスクを設ける場合における交差箇所の大きさの上限は、ブラックマスクの大きさに依存する。
【符号の説明】
【0037】
1…液晶表示装置、2…表示部、3…非表示部、4…端子部、11…第1基板、12…第1電極、13…配向膜、14…液晶層、15…第2基板、16…第2電極、17…配向膜、21…第1偏光板、22…第2偏光板、31…第1配線、32…第2配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と当該表示部の外縁に設けられた非表示部と、を有する液晶表示装置であって、
第1基板と、
前記第1基板の一面側に設けられた複数の第1電極と、
各々が前記複数の第1電極のいずれかと接続しており、前記第1基板の一面側に設けられた複数の第1配線と、
一面側を前記第1基板の一面側と対向させて配置された第2基板と、
前記第2基板の一面側に設けられた複数の第2電極と、
各々が前記複数の第2電極のいずれかと接続しており、前記第2基板の一面側に設けられた複数の第2配線と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた液晶層と、
を含み、
前記複数の第1配線のうちのいずれか1つ以上の第1配線と前記複数の第2配線のうちの少なくとも1つ以上の第2配線とが平面視において部分的に重なることにより1つ以上の交差箇所が構成された、液晶表示装置。
【請求項2】
前記交差箇所は、少なくとも一方向の長さが100μm以下であり、かつ前記表示部内に配置される、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記交差箇所は、100μm角よりも小さく、かつ前記表示部内に配置される、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記交差箇所は、前記非表示部内に配置されている、請求項1に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−271423(P2010−271423A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121426(P2009−121426)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】