説明

液晶装置および液晶メガネ

【課題】比較的簡単な構成で、高い応答速度を実現できる液晶装置を提供する。
【解決手段】液晶装置10は、電圧印加によって位相差が減少する第1液晶パネル11と、第1液晶パネル11に重ねて形成され、電圧印加によって位相差が増加する第2液晶パネル12と、第1液晶パネル11および第2液晶パネル12を間に挟んで形成される一対の偏光板14と、一対の偏光板のうち、少なくともいずれか一方の偏光板に重ねて形成される光学補償板15と、第1液晶パネル11および第2液晶パネル12に印加する電圧を制御する制御部16とを少なくとも備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置および液晶メガネに関し、詳しくは、高速で透過光の開放、遮蔽を繰り返すことが可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元物体を2次元の平面上に映し出した映像を、観察者に対して立体視させる立体表示装置が知られている。例えば、人間の両眼にそれぞれ対応した右眼用映像と左眼用映像とを、両眼視差の分だけずらして時分割で交互に表示するとともに、観察者が専用のメガネを着用して映像を観察するものが知られている。
【0003】
この専用のメガネ(以下、立体視用メガネと称する)としては、液晶シャッターを2つ並列させた液晶メガネが知られている。例えば、右眼用映像の表示期間では、観察者の右眼に対応した右眼用の液晶シャッターを開放させる(映像光を透過させる)とともに、左眼用の液晶シャッターを遮蔽させる。また、左眼用映像の表示期間では、観察者の左眼に対応した左眼用の液晶シャッターを開放させるとともに、右眼用の液晶シャッターを遮蔽させる。こうした右眼用と左眼用の液晶シャッターの開閉を、右眼用映像と左眼用映像との交互表示に同期させることによって、観察者は、2次元の平面上に映し出された3次元物体の映像をリアルに立体視することができる。
【0004】
しかしながら、液晶シャッターの一般的な特性として、反応速度が遅いという課題がある。特に印加電圧の立ち下がり時は、立ち上がり時よりも位相差の変化が大幅に遅れるという特性がある。このため、液晶シャッターを立体視用メガネに用いると、右眼用映像と左眼用映像との切替時に、右眼用映像と左眼用映像とが同時に見えてしまい(クロストーク)、結果として映像がブレて見えてしまうなどの課題があった。
【0005】
こうしたクロストークを改善するために、例えば特許文献1には、TN型でかつノーマリーホワイトの液晶パネルと、TN型でかつノーマリーブラックの液晶パネルとを重ねて液晶シャッターを構成することによって、印加電圧の立ち下がり時の位相差変化の遅延を補う液晶シャッターが記載されている。
【0006】
また、例えば特許文献2には、強誘電性の液晶を用いて液晶シャッターを構成することによって、応答速度を改善した立体表示装置が記載されている。
更に、例えば特許文献3には、左眼用映像および右眼用映像の表示期間の垂直ブランキング期間だけ、液晶シャッターを開放することでクロストークを抑制した立体映像表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−171098号公報
【特許文献2】特開平11−38361号公報
【特許文献3】特開2009−152897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された液晶シャッターでは、少なくとも3枚以上の偏光板が必須となり、構造が複雑で製造コストが高くなるという課題がある。また、3枚以上の偏光板によって、透過光量が減少して映像が暗く見えるという懸念もある。
また、特許文献2に開示された立体表示装置では、強誘電性液晶を用いるためにその取り扱いが困難であるという課題がある。即ち、強誘電性液晶はスメクティック液晶相であり、ネマティック液晶相などと比べて固体に近いため、例えリキッドライクなC相を用いたとしても粘度が高く、液晶パネルのセルに注入するのが極めて困難である。また、長時間電場が固定されるため、分極によって液晶内部のイオンに偏りが生じ、焼付けを起こしやすいという課題もある。
更に、特許文献3に開示された立体映像表示装置は、左眼用映像および右眼用映像を表示する液晶ディスプレイの表示タイミングを変更することによってクロストークを抑制するものであり、液晶シャッターの開閉速度を向上させるものではないので、クロストーク防止の効果は限定的である。また、表示タイミングの設定によっては画像がチラついて見える懸念がある。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、比較的簡単な構成で、高い応答速度を実現できる液晶装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、高い応答速度の液晶装置をシャッターとして用い、クロストークの発生を効果的に抑制可能な液晶メガネを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は次のような液晶装置、および液晶メガネを提供した。
すなわち、本発明の液晶装置は、電圧印加によって位相差が減少する第1液晶パネルと、該第1液晶パネルに重ねて形成され、電圧印加によって位相差が増加する第2液晶パネルと、前記第1液晶パネルおよび前記第2液晶パネルを間に挟んで形成される一対の偏光板と、前記一対の偏光板のうち、少なくともいずれか一方の偏光板に重ねて形成される光学補償板と、前記第1液晶パネルおよび前記第2液晶パネルに印加する電圧を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
液晶は印加電圧の立ち下がり時よりも立ち上がり時のほうが位相差の変化は早くなる。電圧印加によって位相差が減少する第1液晶パネルと、電圧印加によって位相差が増加する第2液晶パネルとを重ねて、印加電圧の立ち下がり時よりも立ち上がり時のほうが位相差の変化速度が速いことを利用して、第1液晶パネルの印加電圧の立ち下がり時に、第2液晶パネルの印加電圧の立ち上がりを重畳させることで、液晶シャッターの遮蔽状態から開放状態への移行を短時間に行うことが可能になる。これによって、高速な液晶シャッターを比較的簡易な構成で実現することが可能になる。
【0013】
前記制御部は、前記第1液晶パネルに対する印加電圧を立ち下げると同時に、前記第2液晶パネルに対する印加電圧を立ち上げ、かつ、前記第1液晶パネルに対して印加電圧を立ち下げた状態で所定期間が経過した後、前記第2液晶パネルに対する印加電圧を立ち下げる制御を行うことが好ましい。これによって、第1液晶パネルの位相差変化の遅延を第2液晶パネルによって確実に補うことができる。
【0014】
前記第2液晶パネルが印加電圧の立ち上げにより位相差が最大に増加するまでの期間よりも、前記第1液晶パネルが印加電圧の立ち下げにより位相差が最大に増加するまでの期間のほうが長ければよい。これによって、第1液晶パネルの位相差変化の遅延を第2液晶パネルによって確実に補い、第1液晶パネルと第2液晶パネルとを重ねたトータルでの位相差変化を高速に行うことができる。
【0015】
前記第1液晶パネルと前記第2液晶パネルとの遅相軸は略同一であり、かつ、前記光学補償板の遅相軸と略直交してなることが好ましい。これによって、第1液晶パネルまたは第2液晶パネルに生じた残留位相差を、光学補償板によって確実に補償することができる。
【0016】
前記第1液晶パネルはOCB型液晶パネルであり、前記第2液晶パネルはVA型液晶パネルであればよい。こうした液晶パネルの組み合わせによって、OCB型液晶パネルで生じた印加電圧の立ち下り時の位相差変化の遅れを、VA型液晶パネルの立ち上がり時の比較的早い位相差変化によって補い、液晶装置の位相差変化を高速に行うことができる。
【0017】
前記一対の偏光板のうち、少なくともいずれか一方の偏光板に重ねて光学補償板を形成することが好ましい。これによって、第1液晶パネルおよび/または第2液晶パネルの残留位相差を確実に補償することができる。
【0018】
前記光学補償板は、前記第1液晶パネルに対する印加電圧の立ち上がり期間に生じる透過光の残留位相差を補償するものであればよい。これによって、第1液晶パネルとして残留位相差のあるOCB型液晶パネルを用いても、この残留位相差を確実に補償できる。
【0019】
前記光学補償板は、一軸性の位相差板であればよい。これによって、液晶パネルの残留位相差を簡易にかつ確実に補償できる。
【0020】
本発明の液晶メガネは、前記各項記載の液晶装置を2つ並列に配置した液晶メガネであって、
一方の液晶装置を右眼用シャッター、他方の液晶装置を左眼用シャッターとして用い、右眼用映像と左眼用映像とを時分割で交互に表示する映像表示部を観察する際に、前記右眼用映像の表示期間では前記右眼用シャッターを開放するとともに前記左眼用シャッターを遮断し、前記左眼用映像の表示期間では前記右眼用シャッターを遮断するとともに前記左眼用シャッターを開放することを特徴とする。
【0021】
こうした液晶メガネによれば、電圧印加によって位相差が減少する第1液晶パネルと電圧印加によって位相差が増加する第2液晶パネルとを重ねて、印加電圧の立ち下がり時よりも立ち上がり時のほうが位相差の変化速度が速いことを利用して、第1液晶パネルの印加電圧の立ち下がり時に、第2液晶パネルの印加電圧の立ち上がりを重畳させることで、右眼用の液晶シャッターと,左眼用の液晶シャッターとの開放状態の切替を高速で行うことが可能になる。これによって、右眼用画像と左眼用画像とが観察者に同時に視認されてしまうといった、いわゆるクロストークの発生を防止して、三次元立体画像をブレなく鮮明に観察することが可能になる。
【0022】
前記右眼用映像と前記左眼用映像との表示切替に対応して発信されるタイミング信号を受信する受信部を更に備えたことが好ましい。これによって、表示されている画像と液晶メガネの左右シャッターの切り替えをズレなく行うことができる。
【0023】
前記右眼用映像と前記左眼用映像との表示切替時に、前記右眼用シャッターと前記左眼用シャッターとを所定期間だけ同時に遮断させることが好ましい。これによって、左眼用画像と右眼用画像の表示切り替え時に、左眼用画像と右眼用画像とがブレた状態で両方とも見えてしまうクロストークをより一層確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の液晶装置の一例である液晶シャッターの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】液晶シャッターを構成する各部材の遅相軸、透過軸の角度関係を示す説明図である。
【図3】液晶シャッターを構成する第1液晶パネルを示す説明図である。
【図4】液晶シャッターを構成する第2液晶パネルを示す説明図である。
【図5】本発明の液晶装置の一例である液晶シャッターの動作を示す説明図である。
【図6】液晶メガネを利用した立体映像観察システムを示す概要図である。
【図7】本発明の液晶装置を備えた液晶メガネの要部拡大断面図である。
【図8】本発明の液晶メガネの動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係る液晶装置の一実施形態について説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0026】
図1は、本発明の液晶装置の一例である液晶シャッターの概要を示す構成図である。
液晶シャッター(液晶装置)10は、例えば光の入射側から出射側に至る光路Rの途上に配置されて、透過光Lpの透過、遮蔽を制御する。以下、液晶シャッター10の開放状態とは、この透過光Lpの透過を許容する状態を示し、遮蔽状態とは、透過光Lpの透過を阻止(遮蔽)する状態を示すものとする。
【0027】
液晶シャッター(液晶装置)10は、第1液晶パネル11、第2液晶パネル12と、この第1液晶パネル11および第2液晶パネル12を間に挟んで形成される一対の偏光板を成す第1偏光板13、第2偏光板14を備えている。また、第1偏光板13と第1液晶パネル11との間には、更に光学補償板15が形成されている。そして、第1液晶パネル11および第2液晶パネル12に印加される電圧を制御する制御部16が形成されている。
【0028】
図2は、液晶シャッター(液晶装置)10のそれぞれの構成部分の遅相軸と透過軸との角度関係を示す概要図である。この図2は、液晶シャッター10の光軸を中心に上から俯瞰した状態を示している。
第1液晶パネル11と第2液晶パネル12は、互いの遅相軸sa1が一致するように配置されている。また、光学補償板15は、その遅相軸sa2が、第1液晶パネル11や第2液晶パネル12の遅相軸sa1に対して略90°で直交するように配置されている。
【0029】
更に、第1偏光板13の透過軸pa1と第2偏光板14の透過軸pa2とが略90°で直交するように配置され、かつ、この第1偏光板13の透過軸pa1と第2偏光板14の透過軸pa2は、第1液晶パネル11や第2液晶パネル12の遅相軸sa1、および光学補償板15の遅相軸sa2に対しても全て略45°で交差する方向に配置されている。即ち、遅相軸sa1(第1液晶パネル11,第2液晶パネル12)、遅相軸sa2(光学補償板15)、透過軸pa1(第1偏光板13)、透過軸pa2(第2偏光板14)が、全て互いに略45°で交差するように、それぞれの部材が配置されている。
なお、この実施形態においては、光学補償板15は第1偏光板13と第1液晶パネル11との間に配されているが、第2液晶パネル12と第2偏光板14との間に光学補償板を形成しても良い。
【0030】
図3は、第1液晶パネル11の一例を示す説明図である。
第1液晶パネル11は、電圧印加時に位相差が減少するOCB(Optical Compensated Bend)型の液晶装置が用いられる。第1液晶パネル11は、上基板21と、これに対向配置された下基板(対向基板)22と、これらの間に挟持された液晶層23とを主体として構成されている。
【0031】
上基板21は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基材21aを基体としてなり、この基材21aの一面に、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料からなる上電極21bと、シリコン酸化物等からなる配向膜21cとが順に積層されている。また、配向膜21cには所定方向にラビング処理が施されている。
【0032】
一方、下基板(対向基板)22は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基材22aを基体としてなり、その内側にITO等の透明導電材料からなる下電極22bと、シリコン酸化物等からなる配向膜22cとが順に積層されている。配向膜22cには、上記配向膜21cのラビング方向と平行で且つ逆の方向にラビング処理が施されている。液晶層23は誘電異方性が正の液晶からなる。
【0033】
このOCB型の液晶装置である第1液晶パネル11は、上電極21bと下電極22bとの間に所定値の電圧が印加された電圧印加状態では、図3(a)に示すように、液晶層23成す液晶分子Q1の湾曲度合いが小さくなり、液晶層23の厚み方向に沿って並ぶように規制される。この電圧印加状態では、位相差が最小となり上基板21側から入射した透過光Lpは、透過が阻止される。これによって、第1液晶パネル11は、電圧印加状態では黒表示(透過光の遮断状態)とされる。
【0034】
一方、第1液晶パネル11の上電極21bと下電極22bとの間に電圧を印加しない電圧非印加状態では、図3(b)に示すように、液晶層23を成す液晶分子の配向が上下の基板21,22間で弓なりに大きく湾曲するように規制される。この電圧非印加状態では、位相差が最大となり上基板21側から入射した透過光Lpは透過が許容され、白表示(透過光の透過許容状態)とされる。
【0035】
図3(c)は、こうした第1液晶パネル11の印加電圧Vと位相差Rとの関係を示したグラフである。第1液晶パネル11は、所定値の印加電圧V1を上電極21bと下電極22bとの間に印加すると、第1液晶パネル11の位相差(リタデーション)は、位相差0に近い位相差R1になっている。この電圧印加時に僅かに残っている位相差が、残留位相差Rrであり、OCB型液晶では特性として生じる。第1偏光板13と第1液晶パネル11との間に配された光学補償板15(図1参照)は、この残留位相差Rrを光学的に補償するものである。こうした光学補償板15は、遅相軸方向に沿った一軸性の位相差板、例えばCプレートを用いることができる。
【0036】
次に、上電極21bと下電極22bとの間の印加電圧Vを立ち下げる、即ち印加電圧をV1から0にすると(電圧非印加状態)、第1液晶パネル11の位相差(リタデーション)は、所定の位相差R2まで広がる。この時、位相差の変化は、所定の遅延時間ΔT1をかけて位相差R2まで緩やかに変化する。これは、液晶の一般的な特性である、印加電圧の立ち下り時には、位相差変化の遅延が大きいことに起因する。
【0037】
再び上電極21bと下電極22bとの間の印加電圧Vを立ち上げる、即ち印加電圧をV1にすると、第1液晶パネル11の位相差(リタデーション)は、再び残留位相差Rrを残して減少する。この時、位相差の変化は、所定の遅延時間ΔT2をかけて位相差R2から位相差R1まで変化するが、この印加電圧の立ち上げ時の位相差変化の遅延時間ΔT2は、印加電圧Vの立ち下がり時の位相差変化の遅延時間ΔT1よりも短い。これは、印加電圧Vの立ち上がり時の位相差変化の遅延時間ΔT2は、印加電圧の立ち下がり時の位相差変化の遅延時間ΔT1よりも早い(短い)という、液晶の一般的な特性に起因する。
【0038】
図4は、第2液晶パネル12の一例を示す説明図である。
第2液晶パネル12は、電圧印加時に位相差が増加するVA(Vertical Alignment Nematic)型の液晶装置が用いられる。第2液晶パネル21は、上基板31と、これに対向配置された下基板(対向基板)32と、これらの間に挟持された液晶層33とを主体として構成されている。
【0039】
上基板31は、例えばガラス、石英、プラスチック等の透明基板からなる基材31aを基体としてなり、上基板31の外面から、図2示した第1液晶パネル11を透過した透過光Lpが入射し、液晶層33を透過した後、下基板32の外面に射出される構成となっている。
【0040】
基材31aの内面には、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide, 以下、ITOと略記する)等の透明導電膜からなる上電極31bが形成されている。さらに、上電極31bに重ねて液晶層33の液晶分子Q2に対してプレティルトを付与する機能を持つ垂直配向膜31c(以下、この配向膜のことを「傾斜垂直配向膜」と称する)が形成されている。
【0041】
一方、下基板32は、例えばガラス、石英、プラスチック等の透明基板からなる基材32aを基体としてなり、この内面に、ITO等の透明導電膜からなる下電極(対向電極)32bが形成されている。さらに、下電極32b上には、液晶層33の液晶分子Q2に対してプレティルトを付与する機能を持つ垂直配向膜32c(以下、この配向膜のことを「傾斜垂直配向膜」と称する)が形成されている。
【0042】
これら傾斜垂直配向膜31c,32cは、例えばポリアミック酸材料等の垂直配向膜材料を塗布、焼成し、垂直配向膜を形成した後、ラビング処理することで形成できる。あるいは、垂直配向膜に対して斜め方向から偏光紫外線を照射したり、SiO斜方蒸着膜上に垂直配向膜を形成したり、SiO、SiO、MgF等の無機化合物の斜方蒸着によっても形成できる。
【0043】
液晶層33は誘電異方性が負の液晶からなり、例えば傾斜垂直配向膜31c,32cにおけるプレティルト角(θp)が2°に設定されている。なお、液晶分子のダイレクターが基板面の法線方向となす角をプレティルト角としている。
【0044】
このVA型の液晶装置である第2液晶パネル12は、上電極31bと下電極32bとの間に所定値の電圧が印加された電圧印加状態では、図4(a)に示すように、上基板31の傾斜垂直配向膜31cから下基板32の傾斜垂直配向膜32cに向けて、液晶分子Q2が、θp=2°のプレティルト角を持って垂直な方向に配向している。
【0045】
一方、上電極31bと下電極32bとの間に電圧を印加しない電圧非印加状態では、図4(b)に示すように、上基板31の傾斜垂直配向膜31c側、および下基板32の傾斜垂直配向膜32c側の液晶分子Q2が、θp=2°のプレティルト角を持つとともに、それらの間の液晶分子Q2が方位角方向においては略水平方向に傾倒している。
【0046】
図4(c)は、こうした第2液晶パネル21の印加電圧Vと位相差Rとの関係を示したグラフである。第2液晶パネル21は、所定値の印加電圧V2を上電極31bと下電極32bとの間に印加すると、第2液晶パネル12の位相差(リタデーション)は、所定の位相差R3まで広がった状態とされる。
【0047】
次に、上電極31bと下電極32bとの間の印加電圧Vを立ち下げる、即ち印加電圧をV2から0にすると(電圧非印加状態)、第2液晶パネル12の位相差(リタデーション)は位相差0になる。この時、位相差の変化は、所定の遅延時間ΔT3をかけて位相差0まで緩やかに変化する。これは、液晶の一般的な特性である、印加電圧の立ち下り時には、位相差変化の遅延が大きいことに起因する。
【0048】
再び上電極31bと下電極32bとの間の印加電圧Vを立ち上げる、即ち印加電圧をV2にすると、第2液晶パネル12の位相差は、再び所定の位相差R3まで広がった状態になる。この時、位相差の変化は、所定の遅延時間ΔT4をかけて位相差R3まで変化するが、この時の遅延時間ΔT4は、印加電圧Vの立ち下がり時の遅延時間ΔT3よりも短い。これは、印加電圧Vの立ち上がり時の位相差変化の遅延時間ΔT4は、印加電圧の立ち下がり時の位相差変化の遅延時間ΔT3よりも早い(短い)という、液晶の一般的な特性に起因する。
【0049】
以上のような構成の本発明の液晶シャッター(液晶装置)10の作用を図1、および図5を用いて説明する。図5は、液晶シャッターの動作を示す説明図である。
液晶シャッター(液晶装置)10は、透過光Lpの透過を許容する開放状態と、透過光Lpの透過を遮断する遮蔽状態の2つの状態をとることができ、これによって、透過光のシャッターの役割を果たす。図5において、開放期間とは、液晶シャッター10が開放状態にある期間を示し、遮蔽期間とは、液晶シャッター10が遮蔽状態にある期間を示している。
【0050】
図5において、液晶シャッター10の遮蔽期間では、第1液晶パネル11に対しては所定の電圧V1が印加される。これによって、第1液晶パネル11の位相差は0に近い位相差R1にされる。なお、この位相差R1と位相差0との残留位相差Rrは光学補償板15で補償されるので、遮蔽期間における液晶シャッター10の位相差は実質的に0にされる。
【0051】
一方、液晶シャッター10の遮蔽期間では、第2液晶パネル12に対しては電圧は印加されない(電圧0)。第2液晶パネル12はこの電圧の非印加状態では、位相差は0にされる。
【0052】
その結果、これら第1液晶パネル11と第2液晶パネル12とが重なった液晶シャッター10の光の透過率はT0、即ち透過光を遮蔽する状態になる。
【0053】
次に、この遮蔽状態から開放状態にさせる際には、第1液晶パネル11の印加電圧を立ち下げて、印加電圧を0にする。同時に、第2液晶パネル12に対する印加電圧を立ち上げで、所定の印加電圧V2にする。これによって、第1液晶パネル11の位相差はR1からR2まで緩やかに増加する。同時に、第2液晶パネル12の位相差も0からR3まで増加する。
【0054】
これによって、液晶シャッター10の開放期間では、第1液晶パネル11と第2液晶パネル12とが重なった液晶シャッター10の光の透過率は所定のD1まで増加し、透過光を透過させる開放状態になる。
【0055】
こうした液晶シャッター10を遮蔽状態から開放状態に移行させる際に、第1液晶パネル11の印加電圧を立ち下げて位相差を増加させると同時に、第2液晶パネル12の印加電圧を立ち上げて位相差を増加させることによって、液晶シャッター10の透過率の変化を急激に行うことができる。この結果、液晶シャッター10の開放状態への移行時に透過率の変化が急峻になる(図5の線Te1を参照)。
【0056】
即ち、液晶は印加電圧の立ち下がり時よりも立ち上がり時のほうが位相差の変化は早くなる。これを利用して、印加電圧の立ち下がり時に長い遅延時間ΔT1をかけて位相差R1からR2まで緩やかに変化する第1液晶パネル11の動作遅延を補償するために、印加電圧の立ち上がり時の比較的短い(遅延時間ΔT1よりも大幅に短い)遅延時間ΔT4で位相差0からR3まで変化する第2液晶パネル12を用いる。
【0057】
これによって、第1液晶パネル11の印加電圧の立ち下がり時に、第2液晶パネル12の印加電圧の立ち下がりを重ねることで、光の透過率を0からD1まで急激に変化させることが可能になる。
【0058】
再び液晶シャッター10を開放状態から遮蔽状態に移行させる際には、第1液晶パネル11の印加電圧を立ち上げて位相差をR1まで減少させる。なお、第2液晶パネル12は、第2液晶パネル12の位相差が所定のR3まで変化した後(遅延時間ΔT4経過後)、または第1液晶パネル11の位相差がR2まで変化した後(遅延時間ΔT1経過後)に立ち下げておけばよい。即ち、第1液晶パネル11に対して印加電圧を立ち下げた状態で所定期間が経過した後に、第2液晶パネル12の印加電圧を立ち下げておけばよい。
この液晶シャッター10の遮蔽状態への移行時は、第1液晶パネル11の印加電圧の立ち上がりを利用するため、比較的短い(遅延時間ΔT1よりも大幅に短い)遅延時間ΔT2で位相差をR2からR1まで減少させることが可能になる。これにより、液晶シャッター10の遮蔽状態への移行時にも、透過率の変化を急峻にすることができる(図5の線Te2を参照)。
【0059】
以上のように、本発明の液晶シャッター(液晶装置)10によれば、電圧印加によって位相差が減少する第1液晶パネル11と電圧印加によって位相差が増加する第2液晶パネル12とを重ねて、印加電圧の立ち下がり時よりも立ち上がり時のほうが位相差の変化速度が速いことを利用して、第1液晶パネル11の印加電圧の立ち下がり時に、第2液晶パネル12の印加電圧の立ち上がりを重畳させることで、液晶シャッター10の遮蔽状態から開放状態への移行を短時間に行うことが可能になる。これによって、高速な液晶シャッターを比較的簡易な構成で実現することが可能になる。
【0060】
次に、上述した本発明の液晶シャッター(液晶装置)を利用した液晶メガネについて説明する。
図6は、液晶メガネを利用した立体映像観察システムを示す概要図である。立体映像観察システム50は、液晶メガネ51と、立体映像表示装置52とを備えている。立体映像表示装置52は、観察者(人間)の右眼と左眼との視差Wに相当する分だけずらした、右眼用画像PRと右眼用画像PLとを所定のタイミングで交互に表示する。こうした立体映像表示装置52には、右眼用画像PRと左眼用画像PLとの切替タイミングに合わせて発信されるタイミング信号発信機53が形成されている。
【0061】
図7は、液晶メガネを示す要部拡大断面図である。
液晶メガネ51は、上述した液晶シャッター(液晶装置)10を2つ並列に備えるとともに、この2つの液晶シャッター10a,10bを支持するメガネフレーム61を有する。このうち、液晶シャッター10aは観察者の右眼REの視線上に位置し、液晶シャッター10bは左眼LEの視線上に位置する(以下、それぞれ右眼用シャッター、左眼用シャッターと称することがある)。また、このメガネフレーム61には、タイミング信号発信機53から発信されたタイミング信号を受信するタイミング信号受信部62が形成されている。
【0062】
右眼用の液晶シャッター10aは、第1液晶パネル11R、第2液晶パネル12Rと、この第1液晶パネル11Rおよび第2液晶パネル12Rを間に挟んで形成される一対の偏光板を成す第1偏光板13R、第2偏光板14Rを備えている。また、第1偏光板13Rと第1液晶パネル11Rとの間には、更に光学補償板15Rが形成されている。
【0063】
同様に、左眼用の液晶シャッター10bは、第1液晶パネル11L、第2液晶パネル12Lと、この第1液晶パネル11Lおよび第2液晶パネル12Lを間に挟んで形成される一対の偏光板を成す第1偏光板13L、第2偏光板14Lを備えている。また、第1偏光板13Lと第1液晶パネル11Lとの間には、更に光学補償板15Lが形成されている。
【0064】
また、メガネフレーム61には、右眼用の液晶シャッター10aを成す第1液晶パネル11Rおよび第2液晶パネル12Rと、左眼用の液晶シャッター10bを成す第1液晶パネル11Lおよび第2液晶パネル12Lの印加電圧を纏めて制御する制御部16が内蔵されている。この制御部16には、タイミング信号受信部62で受信された受信信号が入力される。
【0065】
第1液晶パネル11L、および第1液晶パネル11Rは、上述した実施形態の第1液晶パネル11と同様に、電圧印加時に位相差が減少するOCB型液晶装置であればよい。また、第2液晶パネル12L、および第2液晶パネル12Rは、上述した実施形態の第2液晶パネル12と同様に、電圧印加時に位相差が増加するVA型液晶装置であればよい。
【0066】
以上のような構成の本発明の液晶メガネ51の作用を図7、図8を用いて説明する。図8は、液晶メガネのシャッター動作を示す説明図である。
液晶メガネ51は、立体映像表示装置52に左眼用画像PLが表示される左眼用画像表示期間に左眼用の液晶シャッター10bを開放させるとともに右眼用の液晶シャッター10aを遮蔽させる。また、立体映像表示装置52に右眼用画像PRが表示される右眼用画像表示期間に右眼用の液晶シャッター10aを開放させるとともに左眼用の液晶シャッター10bを遮蔽させる。
【0067】
このように、液晶メガネ51は、左眼用画像表示期間と右眼用画像表示期間とで、開放および遮蔽する液晶シャッターを右眼用と左眼用とで交互に切り替える。この液晶シャッター10aと液晶シャッター10bとの開放ないし遮蔽状態の切り替えは、タイミング信号受信部62で受信された受信信号の入力によって行われる。
【0068】
即ち、立体映像表示装置52は、左眼用画像PLから右眼用画像PRに表示を切り替える際、および右眼用画像PRから左眼用画像PLに表示を切り替える際に、タイミング信号発信機53からタイミング信号を発信する。液晶メガネ51のタイミング信号受信部62では、このタイミング信号を発信すると受信信号を制御部16に出力する。制御部16は、この受信信号の入力に基づいて、右眼用の液晶シャッター10aを構成する第1液晶パネル11R、第2液晶パネル12R、および左眼用の液晶シャッター10bを構成する第1液晶パネル11L、第2液晶パネル12Lの印加電圧をそれぞれ制御する。
【0069】
図8に示すように、立体映像表示装置52が左眼用画像表示期間になると、液晶メガネ51は、左眼用の液晶シャッター10bの開放状態に移行する。まず、第1液晶パネル11Lの印加電圧を立ち下げて、印加電圧を0にする。同時に、第2液晶パネル12Lに対する印加電圧を立ち上げで、所定の印加電圧V2にする。これによって、第1液晶パネル11Lの位相差はR1からR2まで緩やかに増加する。同時に、第2液晶パネル12Lの位相差も0からR3まで増加する。
【0070】
これによって、左眼用の液晶シャッター10bは、第1液晶パネル11Lと第2液晶パネル12Lとが重なった液晶シャッター10bの光の透過率は所定のD1まで増加し、左眼用画像PLの画像光を透過させる開放状態になり、観察者の左眼LEは左眼用画像PLを視認できる状態となる。
【0071】
こうした液晶シャッター10bを遮蔽状態から開放状態に移行させる際に、第1液晶パネル11Lの印加電圧を立ち下げて位相差を増加させると同時に、第2液晶パネル12Lの印加電圧を立ち上げて位相差を増加させることによって、液晶シャッター10bの透過率の変化を急激に行うことができる。この結果、液晶シャッター10bの開放状態への移行時に透過率の変化が急峻になる(図8の線Te1を参照)。
【0072】
即ち、液晶は印加電圧の立ち下がり時よりも立ち上がり時のほうが位相差の変化は早くなる。これを利用して、印加電圧の立ち下がり時に長い遅延時間ΔT1をかけて位相差R1からR2まで緩やかに変化する第1液晶パネル11Lの動作遅延を補償するために、印加電圧の立ち上がり時の比較的短い(遅延時間ΔT1よりも大幅に短い)遅延時間ΔT4で位相差0からR3まで変化する第2液晶パネル12Lを用いる。
【0073】
これによって、第1液晶パネル11Lの印加電圧の立ち下がり時に、第2液晶パネル12Lの印加電圧の立ち下がりを重ねることで、光の透過率を0からD1まで急激に変化させ、左眼用の液晶シャッター10bを遮蔽状態から開放状態へ高速で変位させることが可能になる。なお、第2液晶パネル12Lの印加電圧V2は、第2液晶パネル12Lの位相差が所定のR3まで達した後(遅延時間ΔT4経過後)、立ち下げておけばよい。
【0074】
一方、立体映像表示装置52が左眼用画像表示期間になる前に、右眼用の液晶シャッター10aは遮蔽状態に移行している。即ち、第1液晶パネル11Rは印加電圧が所定のV1まで立ち上げられているとともに、第2液晶パネル11Rは印加電圧が0まで立ち下げられている。これによって、右眼用の液晶シャッター10aは、第1液晶パネル11Rと第2液晶パネル12Rとが重なった液晶シャッター10aの光の透過率は0となっている。よって、左眼用画像PLの画像光を遮蔽させる遮蔽状態になり、観察者の右眼REは左眼用画像PLを視認できない状態とされる。
【0075】
左眼用画像表示期間が所定の時間経過すると、液晶メガネ51は、左眼用の液晶シャッター10bを遮蔽状態に移行させる。即ち、第1液晶パネル11Lの印加電圧を立ち上げて、印加電圧をV1にする。これにより、第1液晶パネル11Lの位相差をR1まで減少させる。この左眼用の液晶シャッター10bの遮蔽状態への移行時は、第1液晶パネル11の印加電圧の立ち上がりを利用するため、比較的短い(遅延時間ΔT1よりも大幅に短い)遅延時間ΔT2で位相差をR2からR1まで減少させることが可能になる。これにより、左眼用の液晶シャッター10bの遮蔽状態への移行時にも、透過率の変化を急峻にすることができる(図8の線Te2を参照)。なお、この位相差R1と位相差0との残留位相差Rrは光学補償板15Lで補償され実質的に0にされる。
【0076】
こうして左眼用画像表示期間が終了し右眼用画像表示期間が始まると、今度は左眼用の液晶シャッター10bの遮蔽状態を維持したまま、右眼用の液晶シャッター10aを開放状態に移行させるが、その際に、所定の期間だけ両方の液晶シャッター10a,10bを遮蔽状態にしておく期間が存在する。
【0077】
即ち、左眼用画像の表示と右眼用画像の表示との切り替え時に、短時間だけ両方の液晶シャッター10a,10bを遮蔽状態にすることで、観察者に左眼用画像と右眼用画像とが両方とも視認されることを防止する。人間の眼は残像現象があるため、左眼用画像が消えた直後に右眼用画像が表示されると、左眼用画像の残像によって、左眼用画像と右眼用画像とがブレた状態で両方とも見えてしまう(クロストーク)。左眼用画像の表示と右眼用画像の表示との切り替え時に、両方の液晶シャッター10a,10bを短時間だけ遮蔽状態にすることで、こうしたクロストークを防止する。
【0078】
右眼用画像表示期間が始まると、今度は第1液晶パネル11Rの印加電圧を立ち下げて、印加電圧を0にする。同時に、第2液晶パネル12Rに対する印加電圧を立ち上げで、所定の印加電圧V2にする。これによって、第1液晶パネル11Rの位相差はR1からR2まで緩やかに増加する。同時に、第2液晶パネル12Rの位相差も0からR3まで増加する。
【0079】
これによって、右眼用の液晶シャッター10aは、第1液晶パネル11Rと第2液晶パネル12Rとが重なった液晶シャッター10aの光の透過率は所定のD1まで増加し、右眼用画像PRの画像光を透過させる開放状態になり、観察者の右眼REは左眼用画像PRを視認できる状態となる。
【0080】
こうした液晶シャッター10aを遮蔽状態から開放状態に移行させる際に、第1液晶パネル11Rの印加電圧を立ち下げて位相差を増加させると同時に、第2液晶パネル12Rの印加電圧を立ち上げて位相差を増加させることによって、液晶シャッター10aの透過率の変化を急激に行うことができる。この結果、液晶シャッター10aの開放状態への移行時に透過率の変化が急峻になる(図8の線Te3を参照)。
【0081】
第1液晶パネル11Rの印加電圧の立ち下がり時に、第2液晶パネル12Rの印加電圧の立ち下がりを重ねることで、液晶シャッター10aの光の透過率を0からD1まで急激に変化させ、右眼用の液晶シャッター10aを遮蔽状態から開放状態へ高速で変位させることが可能になる。なお、立体映像表示装置52が右眼用画像表示期間になる前に、左眼用の液晶シャッター10bは遮蔽状態に移行しているので、観察者の左眼LEは右眼用画像PRを視認できない状態とされる。
【0082】
この後、右眼用画像表示期間が所定の時間経過すると、液晶メガネ51は、右眼用の液晶シャッター10aを遮蔽状態に移行させる。即ち、第1液晶パネル11Rの印加電圧を立ち上げて、印加電圧をV1にする。これにより、第1液晶パネル11Rの位相差をR1まで減少させる。この右眼用の液晶シャッター10aの遮蔽状態への移行時は、第1液晶パネル11Rの印加電圧の立ち上がりを利用するため、比較的短い(遅延時間ΔT1よりも大幅に短い)遅延時間ΔT2で位相差をR2からR1まで減少させることが可能になる。これにより、右眼用の液晶シャッター10aの遮蔽状態への移行時にも、透過率の変化を急峻にすることができる(図8の線Te2を参照)。
【0083】
この後、再び左眼用画像表示期間が始まると、再度、所定の期間だけ両方の液晶シャッター10a,10bを遮蔽状態にしておく期間を経て、上述した過程によって液晶シャッター10bを遮蔽状態から開放状態にさせる。
【0084】
以上のように、本発明の液晶メガネによれば、電圧印加によって位相差が減少する第1液晶パネル11a,11bと電圧印加によって位相差が増加する第2液晶パネル12a,12bとを重ねて、印加電圧の立ち下がり時よりも立ち上がり時のほうが位相差の変化速度が速いことを利用して、第1液晶パネル11a,11bの印加電圧の立ち下がり時に、第2液晶パネル12a,12bの印加電圧の立ち上がりを重畳させることで、右眼用の液晶シャッター10aと,左眼用の液晶シャッター10bとの開放状態の切替を高速で行うことが可能になる。これによって、右眼用画像と左眼用画像とが観察者に同時に視認されてしまうといった、いわゆるクロストークの発生を防止して、三次元立体画像をブレなく鮮明に観察することが可能になる。
【符号の説明】
【0085】
10…液晶シャッター(液晶装置)、11…第1液晶パネル、12…第2液晶パネル、13…第1偏光板、14…第2偏光板、15…光学補償板、16…制御部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧印加によって位相差が減少する第1液晶パネルと、
該第1液晶パネルに重ねて形成され、電圧印加によって位相差が増加する第2液晶パネルと、
前記第1液晶パネルおよび前記第2液晶パネルを間に挟んで形成される一対の偏光板と、
前記一対の偏光板のうち、少なくともいずれか一方の偏光板に重ねて形成される光学補償板と、
前記第1液晶パネルおよび前記第2液晶パネルに印加する電圧をそれぞれ独立に制御可能な制御部と、
を備えたことを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1液晶パネルに対する印加電圧を立ち下げると同時に、前記第2液晶パネルに対する印加電圧を立ち上げ、かつ、前記第1液晶パネルに対して印加電圧を立ち下げた状態で所定期間が経過した後、前記第2液晶パネルに対する印加電圧を立ち下げる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の液晶装置。
【請求項3】
前記第2液晶パネルが印加電圧の立ち上げにより位相差が最大に増加するまでの期間よりも、前記第1液晶パネルが印加電圧の立ち下げにより位相差が最大に増加するまでの期間のほうが長いことを特徴とする請求項1または2記載の液晶装置。
【請求項4】
前記第1液晶パネルと前記第2液晶パネルとの遅相軸は略同一であり、かつ、前記光学補償板の遅相軸と略直交してなることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の液晶装置。
【請求項5】
前記第1液晶パネルはOCB型液晶パネルであり、前記第2液晶パネルはVA型液晶パネルであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の液晶装置。
【請求項6】
前記一対の偏光板のうち、少なくともいずれか一方の偏光板に重ねて光学補償板を形成したことを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載の液晶装置。
【請求項7】
前記光学補償板は、前記第1液晶パネルに対する印加電圧の立ち上がり期間に生じる透過光の残留位相差を補償するものであることを特徴とする請求項6記載の液晶装置。
【請求項8】
前記光学補償板は、一軸性の位相差板であることを特徴とする請求項6または7記載の液晶装置。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか1項記載の液晶装置を2つ並列に配置した液晶メガネであって、
一方の液晶装置を右眼用シャッター、他方の液晶装置を左眼用シャッターとして用い、
右眼用映像と左眼用映像とを時分割で交互に表示する映像表示部を観察する際に、前記右眼用映像の表示期間では前記右眼用シャッターを開放するとともに前記左眼用シャッターを遮断し、前記左眼用映像の表示期間では前記右眼用シャッターを遮断するとともに前記左眼用シャッターを開放することを特徴とする液晶メガネ。
【請求項10】
前記右眼用映像と前記左眼用映像との表示切替に対応して発信されるタイミング信号を受信する受信部を更に備えたことを特徴とする請求項9記載の液晶メガネ。
【請求項11】
前記右眼用映像と前記左眼用映像との表示切替時に、前記右眼用シャッターと前記左眼用シャッターとを所定期間だけ同時に遮断させることを特徴とする請求項9または10記載の液晶メガネ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−186331(P2011−186331A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53630(P2010−53630)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】