説明

液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子

【課題】優れた液晶配向性と電圧保持特性とを兼ね備えた液晶表示素子を得るための液晶配向剤を提供する。
【解決手段】テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体の少なくともいずれかを含有する液晶配向剤において、上記のテトラカルボン酸二無水物を、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれかを含むものとし、上記のジアミンを、下記式(D−1)で表される化合物を含むものとする。


(式中、R〜R10は、R〜Rのうちの1つ及びR〜R10のうちの1つが一級アミノ基であり、残りが、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子に関し、詳しくは、水平配向型液晶表示素子(水平配向モード)に好適に適用できる液晶配向剤及び液晶配向膜、並びに該液晶配向膜を具備する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子の一つとして、ツイステッドネマチック表示モード(TNモード)や横電界表示モード(IPSモード)、フリンジフィールドスイッチングモード(FFSモード)といった水平配向型液晶表示素子が知られている。この液晶表示素子では、対向配置した一対の基板間に液晶分子を封入し、基板面に対して液晶分子を平行に配向させ(水平配向させ)、これに電圧を印加することで液晶分子の向きを変化させる。これにより、液晶表示素子において、液晶分子による光スイッチング機能が発現される。
【0003】
液晶表示素子では、液晶配向膜によって液晶分子の配向制御が行われる。一般に、液晶配向膜は、ポリイミド又はポリアミック酸を含有する液晶配向剤を基板に塗布した後、これを焼成し、焼成後の薄膜表面を布で一定方向に擦る、いわゆるラビング処理を行うことによって得ることができる。
【0004】
液晶表示素子の表示性能を向上させるには、電圧無印加時において液晶分子を特定方向に配向させる必要があり、これを達成するべく種々の液晶配向剤が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。特許文献1には、ピロメリット酸二無水物(PMDA)とジアミンとの重合反応により得られるポリイミドを用いた液晶配向方法について開示されている。PMDAを用いて作製された芳香族ポリイミドは、ラビング処理による一軸配向性が高く、また液晶分子が有するベンゼン環との間で相互作用が誘起される等といったことから、液晶配向性が良好であると言われている。
【0005】
また、特許文献2,3には、シクロブタンテトラカルボン酸無水物(CB)等といった脂環式構造を有する酸二無水物とジアミンとの重合により得られるポリイミド等を含む液晶配向剤が開示されている。この脂環式のポリイミド等では、特許文献1のような芳香族ポリイミドに比べて、(1)可視光領域の吸収がないため液晶配向膜の光透過率が高い、(2)ラビング耐性が良好である、(3)溶液状態での粘度を調整しやすい、等といった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57−128318号公報
【特許文献2】特許4052308号公報
【特許文献3】特開2010−156934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、脂環式のポリイミド等により形成した液晶配向膜では、芳香族ポリイミドに比べて上記(1)〜(3)の利点を有する反面、基板間に液晶分子を注入した際に、液晶分子が注入時の流動方向に配向する流動配向が生じやすい。そのため、流動配向に起因して液晶配向能力が低下することが懸念される。また、脂環式のポリイミド等により液晶配向膜を形成する場合、機械的強度の向上等を目的として、エポキシ化合物などの架橋剤を添加することがあるが、架橋剤の添加により重合体の一軸延伸性が低下することがあり、かかる場合、流動配向が生じやすくなると考えられる。
【0008】
さらに、液晶表示素子では、表示品質を良好にするべく高い電圧保持率が要求されており、液晶配向膜を設計する上では液晶表示素子の電圧保持特性についても検討する必要がある。ところが、本発明者が検討したところ、上記特許文献1のように酸二無水物としてPMDAを用いた場合、液晶配向性は良好であるものの、液晶の電圧保持率が低くなることが確認された。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、優れた液晶配向性と電圧保持特性とを兼ね備えた液晶表示素子を得るための液晶配向剤、その液晶配向剤により形成した液晶配向膜及び該液晶配向膜を備える液晶表示素子を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造のジアミンを、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれかと反応させ、この反応により得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体の少なくともいずれかを液晶配向剤の重合体成分として含有させることで、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により以下の液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子が提供される。
【0011】
本発明は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体の少なくともいずれかを含有する液晶配向剤であって、前記テトラカルボン酸二無水物が、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれかを含むものであり、前記ジアミンが、下記式(D−1)で表される化合物を含むものであることを特徴とする。
【0012】
【化1】

(式中、R〜R10は、R〜Rのうちの1つ及びR〜R10のうちの1つが一級アミノ基であり、残りが、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基である。)
【0013】
本発明の液晶配向剤によれば、テトラカルボン酸二無水物として脂肪族テトラカルボン酸二無水物や脂環式テトラカルボン酸二無水物を含む場合にも、液晶分子の流動配向を抑制可能な液晶配向膜を形成することができる。また、本発明の液晶配向剤により形成した液晶配向膜を液晶表示素子に用いた場合、高い電圧保持率を示す。よって、本発明の液晶配向剤によれば、液晶配向性と電圧保持特性とをバランスよく備える液晶表示素子を得ることができる。
【0014】
また、本発明において、テトラカルボン酸二無水物として、前記脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれかと、芳香族テトラカルボン酸二無水物との混合物を用いてもよい。この場合、前者を単独で用いる場合に比べて液晶配向性を高めることができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、上記に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜、及びその液晶配向膜を具備する液晶表示素子が提供される。また、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれかと、上記式(D−1)で表されるジアミンとの反応により得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体(ポリイミド)が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体の少なくともいずれかを含有する。以下、本発明の液晶配向剤について詳細に説明する。
【0017】
<ポリアミック酸>
本発明の液晶配向剤に含まれるポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物と、上記式(D−1)で表されるジアミンとを反応させることにより得ることができる。
【0018】
[テトラカルボン酸二無水物]
本発明におけるポリアミック酸を合成するためのテトラカルボン酸二無水物としては、脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物(以下、脂肪族テトラカルボン酸二無水物ともいう)、及び脂環式構造を有するテトラカルボン酸二無水物(以下、脂環式テトラカルボン酸二無水物ともいう)の少なくともいずれかを含む。
【0019】
ここで、「脂肪族テトラカルボン酸二無水物」は、飽和炭化水素基に結合する4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物をいう。ただし、脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、鎖状構造のみで構成されている必要はなく、その一部に環状炭化水素の構造や芳香環構造を有していてもよい。また、「脂環式テトラカルボン酸二無水物」は、脂肪族環に結合する少なくとも2つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物をいう。ただし、脂環式テトラカルボン酸二無水物は、脂環式構造や鎖状構造のみで構成されている必要はなく、その一部に芳香環構造を有していてもよい。
【0020】
具体的には、脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。また、脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。その他、特開2010−97188号公報に記載の脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式のテトラカルボン酸二無水物であって上記以外のものを用いることができる。
【0021】
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いる脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、これらの中でも特に、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。また、電圧保持率をより高くできる観点からすると、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、(1S,2S,4R,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、(1R,2S,4S,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましく、架橋剤としてのエポキシ化合物を添加した場合にも良好な液晶配向性を発現できる観点からすると、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、及び1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。これらの中でも、特に好ましくは、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物である。
【0022】
なお、上記の脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
テトラカルボン酸二無水物としては、上記の脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれかのみを用いてもよいが、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれかと、芳香環構造を有するテトラカルボン酸二無水物(芳香族テトラカルボン酸二無水物)とを組み合わせて用いてもよい。ここで、「芳香族テトラカルボン酸二無水物」は、同一の又は異なる芳香環に結合する4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物をいう。
【0024】
芳香族テトラカルボン酸二無水物として具体的には、ピロメリット酸二無水物(PMDA)や、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、その他、特開2010−97188号公報に記載の芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いることができる。好ましくは、PMDAである。PMDAは液晶配向性に優れているため、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれかとPMDAとを組合せることで、前者を単独で用いる場合に比べて、液晶配向膜における配向性を向上できる点で好ましい。一方、脂肪族テトラカルボン酸や脂環式テトラカルボン酸二無水物を単独で用いた場合には、芳香族テトラカルボン酸二無水物との混合系に比べて、電圧保持率を高くできる点で好ましい。
【0025】
テトラカルボン酸二無水物として、脂肪族又は脂環式のものと芳香族のものとを混合して用いる場合、脂肪族又は脂環式のテトラカルボン酸二無水物の比率は、その合計量が、テトラカルボン酸二無水物の全量に対して10〜95モル%が好ましく、30〜90モル%がより好ましく、50〜85モル%が更に好ましく、60〜80モル%が特に好ましい。この場合、混合系における芳香族テトラカルボン酸二無水物の比率は、テトラカルボン酸二無水物の全量に対して5〜90モル%が好ましく、10〜70モル%がより好ましく、15〜50モル%が更に好ましく、20〜40モル%が特に好ましい。それぞれ上記範囲とすることにより、液晶配向膜としたときに高い電圧保持率と優れた液晶配向性との両者をバランスよく発現できる。また、ラビング耐性も良好となる。
【0026】
[ジアミン]
本発明におけるポリアミック酸を合成するために使用するジアミンの少なくとも一部は、上記式(D−1)で表される化合物である。上記式(D−1)において、R〜Rのうちの1つ及びR〜R10のうちの1つは一級アミノ基である。つまり、上記式(D−1)で表される化合物は、異なるベンゼン環にそれぞれ1つの一級アミノ基が結合されたジアミンである。
【0027】
〜R10のうち、一級アミノ基以外の残りは、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基であり、それぞれ同じであってもよいし異なってもよい。炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0028】
炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、上記の炭素数1〜6のアルキル基として挙げた基の少なくとも1つの水素原子をフッ素原子で置換したものを挙げることができる。また、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、上記の炭素数1〜6のアルキル基として挙げた基が酸素原子に結合したものが挙げられ、具体的には、例えばメトキシ基やエトキシ基等を挙げることができる。
【0029】
式(D−1)におけるそれぞれの一級アミノ基は、−COO−に対して4−位に結合されているのが好ましい。また、R〜R10のうち、一級アミノ基以外の残りについては、全部が水素原子であるか、又は一級アミノ基に隣接するうちの少なくとも1つが水素原子以外であって、その他が水素原子であるのが好ましい。前者の場合、ポリアミック酸やそのイミド化重合体の平面性を高めることができ、これにより液晶配向性を向上させることができる。また、後者の場合、アミノ基に隣接する基によってポリアミック酸等の平面性が低下し、これにより重合体の有機溶媒に対する溶解性を向上させることができる。平面性を適度に保つ観点からすると、アミノ基に隣接する基は、炭素数1〜3のものが好ましく、その中でも特にメチル基又はエチル基が好ましい。
【0030】
式(D−1)で表される化合物として具体的には、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、3,3’−ジメチル−4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、3−メチル−4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエートが好ましく、これらのうち、特に4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエートが好ましい。
【0031】
本発明におけるポリアミック酸を合成するためのジアミンとしては、上記式(D−1)で表される化合物のみを使用してもよいし、上記式(D−1)で表される化合物とともにその他のジアミンを併用してもよい。
【0032】
ここで使用することのできるその他のジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
【0033】
芳香族ジアミンとして、例えばo−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、1−(2,4−ジアミノフェニル)ピペラジン−4−カルボン酸、4−(モルホリン−4−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン、1,3−ビス(N−(4−アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン、α−アミノ−ω−アミノフェニルアルキレン、及び下記式(A−1)
【0034】
【化2】

(式中、XI及びXIIは、それぞれ、単結合、*−O−、*−COO−又は*−OCO−(但し、「*」を付した結合手がベンゼン環に結合する。)であり、Rは、単結合、メチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、nは0又は1である。ただし、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などを;
【0035】
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンのうち上記以外のものを用いることができる。
【0036】
上記式(A−1)における−X−R−XII−で表される2価の基としては、メチレン基、炭素数2もしくは3のアルキレン基、*−O−、*−COO−又は*−O−CHCH−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基「−C2c+1」の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
【0037】
上記式(A−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(A−1−1)〜(A−1−3)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
【0038】
【化3】

【0039】
上記式(D−1)で表される化合物の比率は、ジアミンの全量に対して10〜100モル%であるのが好ましい。上記範囲とすることにより、テトラカルボン酸二無水物として脂肪族又は脂環式のものを用いた場合でも、液晶の電圧保持率を良好にしつつ、優れた液晶配向性を発現可能な液晶配向膜を形成することができる。
【0040】
<分子量調節剤>
ポリアミック酸を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物及びジミアンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)をさらに改善することができる。
【0041】
分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
【0042】
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
【0043】
<ポリアミック酸の合成>
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合が更に好ましい。
【0044】
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
【0045】
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール及びその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。
【0046】
これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;
上記フェノール誘導体として、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとして、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;
上記ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
【0047】
上記エステルとして、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;
上記エーテルとして、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを;
上記ハロゲン化炭化水素として、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンなどを;
上記炭化水素として、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
【0048】
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒並びにフェノール及びその誘導体よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、又は上記第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
【0049】
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜50重量%になるような量とすることが好ましい。
【0050】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。あるいは、単離したポリアミック酸を精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0051】
<イミド化重合体>
本発明におけるイミド化重合体(ポリイミド)は、上記合成したポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。この場合、ポリアミック酸を溶解してなる上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよい。あるいは、単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
【0052】
本発明におけるポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、50〜99%であることがより好ましく、65〜99%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0053】
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
【0054】
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
【0055】
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0056】
<重合体の溶液粘度>
以上のようにして得られる本発明におけるポリアミック酸及びイミド化重合体(以下、特定重合体ともいう)は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、20〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。
【0057】
なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0058】
<その他の添加剤>
本発明の液晶配向剤は特定重合体を含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば、上記の特定重合体以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物などを挙げることができる。
【0059】
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性及び電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体は、特定重合体以外の重合体であり、例えば式(D−1)で表される化合物を含まないジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸及び芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸」という。)、該他のポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「他のポリイミド」という。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、他のポリアミック酸又は他のポリイミドが好ましく、他のポリアミック酸がより好ましい。なお、他のポリアミック酸及び他のポリイミドを合成するために用いるテトラカルボン酸二無水物及びジアミンとしては、上記特定重合体を合成するために用いられる化合物を挙げることができる。
【0060】
その他の重合体を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、液晶配向剤中の全重合体量に対して50重量%以下が好ましく、0.1〜40重量%がより好ましく、0.1〜30重量%が更に好ましい。
【0061】
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物は、液晶配向膜における機械的強度の向上のために使用することができる。これにより、ラビング処理に際し膜の剥離等を抑制することができ(ラビング耐性を向上でき)、ひいては、液晶表示素子における表示不良を抑制できる。また、エポキシ化合物は、液晶配向膜と基材との接着性向上を目的として使用することもできる。
【0062】
上記エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミンなどを好ましいものとして挙げることができる。
【0063】
これらエポキシ化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して40重量部以下が好ましく、0.1〜30重量部がより好ましい。
【0064】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0065】
これら官能性シラン化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、重合体の合計100重量部に対して2重量部以下が好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
【0066】
[有機溶媒]
本発明の液晶配向剤は、特定重合体及び必要に応じて任意的に配合されるその他の添加剤が、好ましくは有機溶媒中に溶解含有されて構成される。
【0067】
本発明の液晶配向剤に使用される有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。これらは単独で使用することができ、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0068】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得にくい。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るおそれがある。
【0069】
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には固形分濃度1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
【0070】
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
【0071】
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記の液晶配向剤により形成される。また、本発明の液晶表示素子は、該液晶配向膜を具備するものである。本発明の液晶表示素子は、IPS型やTN型、STN型、FFS型といった水平配向型の動作モードに適用してもよいし、VA型のような垂直配向型の動作モードに適用してもよいが、好ましくは水平配向型であり、その中でも特にIPS型に適用するのが好ましい。
【0072】
以下に、本発明の液晶表示素子の製造方法を説明するとともに、その説明の中で本発明の液晶配向膜の製造方法についても説明する。本発明の液晶表示素子は、例えば以下(1)〜(3)の工程により製造することができる。工程(1)は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程(2)及び(3)は各動作モードに共通である。
【0073】
[工程(1):塗膜の形成]
先ず基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
【0074】
(1−1)TN型、STN型又はVA型液晶表示素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布し、次いで、各塗布面を加熱(好ましくは予備加熱(プレベーク)及び焼成(ポストベーク)からなる二段階加熱)することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができ、パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
【0075】
液晶配向剤塗布後の塗布面を、次いで予備加熱(プレベーク)し、さらに焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40〜120℃において0.1〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120〜300℃、より好ましくは150〜250℃において、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。形成される塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0076】
(1−2)一方、IPS型液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない対向基板の一面とに、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜のパターニング方法、基板の前処理ならびに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(1−1)と同様である。
【0077】
上記(1−1)及び(1−2)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって配向膜となる塗膜が形成される。このとき、本発明の液晶配向剤に含有される重合体が、ポリアミック酸であるか、又はイミド環構造とアミック酸構造とを有するイミド化重合体である場合には、塗膜形成後に更に加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
【0078】
[工程(2):ラビング処理]
TN型、STN型又はIPS型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成した塗膜を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を施す。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
【0079】
さらに、上記の液晶配向膜に対し、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにしてもよい。この場合、得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0080】
なお、VA型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対しラビング処理を施してもよい。
【0081】
[工程(3):液晶セルの構築]
上記のようにして液晶配向膜が形成された一対の基板につき、二枚の基板の液晶配向膜のラビング方向が直交又は逆平行となるように間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、二枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面に、偏光板を、その偏光方向が各基板に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致又は直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子を得ることができる。
【0082】
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0083】
液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
【0084】
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0085】
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビなどの表示装置に用いることができる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0087】
なお、以下の各合成例における重合体の溶液粘度は、いずれもE型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。また、ポリイミドのイミド化率は、次のようにして測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した。得られたH−NMRスペクトルから、下記数式(1)で示される式によりイミド化率を求めた。
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100 …(1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
【0088】
<重合体の合成>
[合成例1〜7及び比較合成例1〜11]
N−メチル−2−ピロリドンに、下記表1に示す量のジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を、この順で加えて、モノマー濃度15重量%の溶液とした。その後、室温において6時間の反応を行って、ポリアミック酸(PA−1)〜(PA−9)及び(PAR−1)〜(PAR−11)を含有する溶液をそれぞれ得た。各溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加え、ポリアミック酸濃度10重量%の溶液とした。その溶液粘度を測定した結果を下記表1に示す。なお、これらポリアミック酸溶液のうちの各半量を確保し、それぞれ、以降の実施例1〜9及び比較例1〜11で使用した。
【0089】
上記ポリアミック酸溶液のうち、(PA−2)〜(PA−4)及び(PAR−5)〜(PAR−7)について、その残りの半量にN−メチル−2−ピロリドンを加え、ポリアミック酸濃度6重量%の溶液とした。ここに、ピリジン及び無水酢酸を、それぞれポリアミック酸の有するアミック酸単位1モルに対して、下記表1に記載のモル比となるように添加した後、110℃に加熱して4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換(本操作にて脱水閉環反応に使用したピリジン及び無水酢酸を系外に除去)することにより、ポリイミド(PI−1)〜(PI−3)及び(PIR−1)〜(PIR−3)をそれぞれ15重量%含有する溶液を得た。これらポリイミド溶液に含まれる各ポリイミドのイミド化率を測定するとともに、各溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液としたときの溶液粘度を測定した。それぞれの測定結果を下記表1に示す。なお、これらポリイミド溶液は、それぞれ、以降の実施例10〜12及び比較例12〜14で使用した。
【0090】
【表1】

【0091】
表1中、ジアミン及びテトラカルボン酸無水物の略称は、それぞれ以下の意味である。
<ジアミン>
d−1:4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート
d−2:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
d−3:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
d−4:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
d−5:p−フェニレンジアミン
<テトラカルボン酸二無水物>
t−1:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CB)
t−2:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
t−3:1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン
t−4:1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン
t−5:(1S,2S,4R,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
t−6:(1R,2S,4S,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
t−7:1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物
t−8:ピロメリット酸二無水物(PMDA)
【0092】
(実施例1)
<液晶配向剤の調製>
上記合成例1で得られたポリアミック酸(PA−1)を含有する溶液にγ−ブチロラクトン(BL)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びブチルセロソルブ(BC)を加え、さらに架橋剤(接着性向上剤)として、エポキシ化合物であるN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを10重量部加えて、溶媒比がBL:NMP:BC=40:40:20(重量比)、固形分濃度4.0重量%の溶液とした。この溶液を十分に撹拌後、孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより液晶配向剤を調製した。このときの配向剤を「架橋剤あり」とし、上記、液晶配向剤の調製でN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを加えないものを「架橋剤なし」とした。
【0093】
<液晶セルの製造及び評価>
この液晶配向剤を用いて液晶セルを製造し、以下のようにして評価を行った。
[液晶セルの製造]
片面に櫛歯状に設けられたクロム電極を有する厚さ1mmのガラス基板上に、上記で調製した液晶配向剤をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレート上で1分間のプレベークを行った後、230℃のホットプレート上で10分間ポストベークして、膜厚約800Åの塗膜を形成した。形成された塗膜面に対し、ナイロン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンを用いて、ロールの回転数1,000rpm、ステージの移動速度25mm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmにてラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。さらにこの基板を超純水中で1分間超音波洗浄し、100℃クリーンオーブンで10分間乾燥することにより、櫛歯状のクロム電極を有する面上に液晶配向膜を有する基板を製造した。この液晶配向膜を有する基板を「基板A」とした。
【0094】
これとは別に、電極を有さない厚さ1mmのガラス基板の一面に、上記と同様にして液晶配向剤の塗膜を形成し、ラビング処理を行い、洗浄、乾燥して、片面上に液晶配向膜を有する基板を製造した。この液晶配向膜を有する基板を「基板B」とした。
【0095】
続いて、基板のラビング処理された液晶配向膜を有する面の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、各液晶配向膜におけるラビング方向が逆平行となるように2枚の基板A,Bを間隙を介して対向配置し、外縁部同士を当接して圧着して接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック液晶(メルク社製、MLC−2042)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、IPS型液晶セルを製造した。
【0096】
[液晶表示素子の評価]
・液晶配向性の評価
上記で製造した液晶セルにつき、偏光顕微鏡を用いて観察した。液晶配向性の評価は、光漏れがほとんど認められなかったものを「優良」、光漏れがごくわずかに認められたものを「良好」、流動配向・光漏れが明確に認められたものを「不良」として行った。また、液晶配向性「優良」と評価したものについては、更に3段階評価を行い、液晶配向性が良好な順に1,2,3と評価した。その結果を下記表2に示す。
【0097】
・電圧保持特性の評価
上記で製造した液晶セルのうち「架橋剤あり」のものについて、60℃において1Vの電圧を30秒印加し、印加解除後の電圧保持率を1V,60℃においてフレーム周期167msecにて測定した。その測定結果を下記表2に示す。なお、表2には、電圧保持率の値と併せて電圧保持特性の3段階評価の結果を示し、電圧保持率が99%以上のものを◎、98%以上99%未満のものを○、98%未満のものを×と示した。
【0098】
(実施例2〜12及び比較例1〜14)
上記実施例1において、重合体溶液として上記表1に示した重合体を含有する溶液をそれぞれ使用したほかは実施例1と同様にして液晶配向剤を調製し、液晶セルを製造して、液晶配向性及び電圧保持特性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
液晶配向性について、架橋剤なしの場合では、実施例1〜12のいずれも光漏れがほとんど認められなかった。これらの中でも、実施例1,3,4,8,10〜12では、架橋剤ありの場合にも光漏れがほとんど認められず、架橋剤の添加に起因する流動配向が生じにくいことが分かった。また、架橋剤ありの場合の電圧保持率については、実施例1,2,5,6,10において特に高い値を示した。
【0101】
その中でも、テトラカルボン酸二無水物としてCBを単独で用いた実施例1,10では電圧保持率についても99.4%以上と高く、液晶配向性と電圧保持特性とを両立できる点において特に優れていた。また、CBとPMDAとの混合系である実施例8では、実施例1〜12の中で液晶配向性が最も良好であり、電圧保持率についても、実施例1,10よりは低いものの十分に高かった。
【0102】
一方、比較例1〜10,12〜14では、電圧保持率は実施例1〜12と同等であったが、液晶配向性において実施例1〜12のものよりも劣っていた。特に、ポリアミック酸PAR−1〜PAR−10をそれぞれ含む比較例1〜10では、架橋剤を添加した場合に流動配向・光漏れが明確に認められた。このことから、PAR−1〜PAR−10では、架橋剤を添加することにより液晶配向性の低下が生じやすくなると言える。
【0103】
また、芳香環テトラカルボン酸二無水物を用いたもの(比較例11)では、液晶配向性については優れているものの、電圧保持率が98%未満と低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体の少なくともいずれかを含有する液晶配向剤であって、
前記テトラカルボン酸二無水物が、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれかを含むものであり、
前記ジアミンが、下記式(D−1)で表される化合物を含むものであることを特徴とする液晶配向剤。
【化1】

(式中、R〜R10は、R〜Rのうちの1つ及びR〜R10のうちの1つが一級アミノ基であり、残りが、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基である。)
【請求項2】
前記脂肪族テトラカルボン酸二無水物が、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物であり、
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物が、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、及びシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記テトラカルボン酸二無水物が、前記脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれかと、芳香族テトラカルボン酸二無水物との混合物である請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物が、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、(1S,2S,4R,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、(1R,2S,4S,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液晶配向剤により形成された液晶配向膜。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項7】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれかと、下記式(D−1)で表されるジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸。
【化2】

(式中、R〜R10は、R〜Rのうちの1つ及びR〜R10のうちの1つが一級アミノ基であり、残りが、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基である。)
【請求項8】
請求項7に記載のポリアミック酸をイミド化することにより得られるポリイミド。

【公開番号】特開2012−68612(P2012−68612A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56195(P2011−56195)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】