説明

液晶露光装置

【課題】平面ミラーが反射する光によって高温になり変形する際、ミラー周辺と保持板との干渉を防止する。
【解決手段】ランプからの光の方向を曲げ、また、ランプからの光の波長を選択する第1平面鏡を保持する保持板の平面鏡周辺と干渉する面に溝を設ける。また、第1平面鏡周辺と保持板に隙間を開けるための部材を設けたものである。または、保持板に平面鏡サイズより小さい保持面を設ける。または、平面鏡周辺にテーパー形状を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示用パネルの製造装置に係り、特にマスクに描かれたパターンをガラス基板上に露光する液晶露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの製造では、フォトレジスト膜などが形成されたガラス基板とマスクとを1mm以下に近づけ、露光用ランプからの光を平行光にしてマスクに照射し、マスクパターンをガラス基板に転写するプロキシミティ方式の露光装置が用いられている。
【0003】
このような液晶用の露光装置において、近年は表示用パネルの大型化が進み、露光用ランプの輝度も高いものが要求されるようになった。このため、露光用に複数のランプを用いることで、高輝度化に対応することも提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1もその1つで、ここでは複数のランプを用いた場合に、隣接するランプの温度差が与える影響を分析し、その表面温度を均一化することで、露光光の照明を安定化することが記載されている。具体的には、各ランプ及び集光鏡間に隔壁を設け、この隔壁に冷却水を流すとともに、その後段の平面鏡をも含めてランプハウスに入れて空気を還流させることで、均一に冷やすことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−83586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1には、特に平面鏡の保持構造については考慮されていない。
【0007】
図9は、最近考えられている露光装置の動作を説明するもので、ランプ121は、その発光を安定させるため鉛直方向上方向きに設置し、これから出た光は、集光鏡119で集め、上方に設置した第1平面鏡117に向かう。第1平面鏡117では、露光に利用する波長365nmのi線,波長405nmのH線,波長436nmのg線の光を選択反射し、他の光は透過し、保持板201でそのエネルギーを吸収する。第1平面鏡117は、鉛直方向下向きで、反射した光が次のフライアレイレンズ115に向かうよう、45度斜めに設置する。第1平面鏡で反射した光は、フライアレイレンズ115を透過し強度分布が一様化し、凹面鏡113で平行光に変換する。平行光は、第2平面鏡111で鉛直方向下向きに曲げられ、マスク109のパターンをこれに接近して設置した基板ガラス107上に投影する。投影終了後、基板ガラス107を搭載したステージ105は、ステージ103とともにステップ移動し、基板ガラス107にマスク109のパターンを複数転写する。
【0008】
図10は、最近考えられている露光装置に用いられる高圧水銀ランプの発光波長強度特性を示している。図11は、最近考えられている露光装置に用いられる第1平面鏡117の光透過率特性を示したもので、前出第1平面鏡117は、波長500nmまでを反射、波長500nmより長波長は透過している。図11より、波長500nmよりも長波長では、光の透過率が90%程度であり、残りの10%の光は前出第1平面鏡117で反射、または、吸収している。前出第1平面鏡117が光を吸収すると温度が上昇する。図3は、図9の最近考えられている露光装置を構成する部品のうち、第1平面鏡117とこれを保持する保持板201を示している。第1平面鏡117は、周辺に配置した複数箇所のフック204で保持板201に固定されている。保持板201には、冷却水を通すパイプ202を設置し、第1平面鏡117を透過した光のエネルギーを吸収し温度上昇を防止する。第1平面鏡117が光を吸収して温度が上昇すると、第1平面鏡117が熱膨張により大きくなり、保持板201面内を移動することになり、第1平面鏡117に引張り応力が発生する。特に第1平面鏡117の端部に引張り応力が発生すると、端部の微細なクラックが拡大し第1平面鏡が割れてしまう恐れがある。
【0009】
本発明の一つの目的は、上記平面鏡の温度変化、或いは保持板との伸縮率の差にも強い、信頼性の高い液晶露光装置を提供するにある。
【0010】
本発明のその他の目的については、以下述べる実施例で詳述する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記第一の目的を達成するため、本発明の第一の特徴は、露光用ランプからの光を集光する集光鏡と、該集光鏡からの光の波長を選択して反射する平面鏡と、該平面鏡で反射した光の強度分布を一様化するフライアレイレンズとを備え、該フライアレイレンズからの光を用いて、マスクに描かれたパターンをレジストが塗布されたガラス基板に露光する液晶露光装置において、前記平面鏡の背面と面接触して当該平面鏡を保持する保持板を設け、前記平面鏡が高温になり変形する際、前記平面鏡周辺と前記保持板の干渉を防止する干渉防止部を形成したことを特徴とする液晶露光装置。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記保持板に、前記平面鏡周辺と保持板の干渉を防ぐ溝を設けたものである。また、本発明のその他の特徴は、前記保持板と前記平面鏡の間に、隙間を開けるための部材を設けたものである。また、本発明の更に他の特徴は、前記保持板に、前記平面鏡サイズより小さい保持面を設けたものである。また、本発明の更にその他の特徴は、前記平面鏡周辺をテーパー形状にしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第一の特徴によれば、平面鏡が反射する光によって高温になり変形する際、平面鏡の端部と保持板との干渉を防止することができ、平面鏡の端部が保持板によって引っ張られてこれが割れることを回避できる。
【0014】
その他の効果については、以下述べる実施例の中で詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による液晶露光装置の概要図。
【図2】ランプハウス110とミラーハウス108の内部を、説明する概要図。
【図3】最近考えられている液晶露光装置で、第1平面鏡117の設置方法を示した概要図。
【図4】第1平面鏡117の表示を省いて保持板201の構造を示す概要図。
【図5】本発明による液晶露光装置で、保持板201の実施形態を説明する概要図。
【図6】保持板201の別の実施形態を説明する概要図。
【図7】本発明による液晶露光装置で、第1平面鏡の別の実施形態を説明する概要図。
【図8】本発明による液晶露光装置で、保持板201に矩形材を取り付けた実施形態を説明する概要図。
【図9】最近考えられている液晶露光装置の構成と動作を説明する概要図。
【図10】液晶露光装置に用いられる高圧水銀ランプの発光波長強度特性を説明する概要図。
【図11】第1平面鏡117の光透過特性を説明する概要図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明による液晶露光装置の一実施例を示したものである。テーブル101上に、ステージ103を設置し、ステージ103上に、ステージ105が設置し、基板ガラス107をXY方向にステップ状に移動し位置決めする。ランプハウス110の光は、ミラーハウス108を通して図示しないマスクのパターンを基板ガラス107に転写する。ステージ103とステージ105は、1000ミリ毎秒以上の速度で高速に移動し、基板ガラス107を1ヶ月あたり数万枚処理する。
【0017】
図2は、ランプハウス110とミラーハウス108の内部の一例を、説明する概要図である。ランプ121には高圧水銀ランプを用い、これの放電発光を安定させるため、鉛直方向に設置する。ランプ121から出た光は、周辺に設置した集光鏡119で集める。集光鏡119は、ランプ121に接近して設置し高温になるため、その開口を鉛直方向上向きにして、放熱を行う。この集光鏡119は、図11に示す短波長反射,長波長透過のコールドミラーの機能を備えることが多い。集光鏡119で集めた光は、直上に設置した第1平面鏡117で、波長500nmまでを反射、波長500nmより長波長は透過する。第1平面鏡117で反射した光は、フライアレイレンズ115を透過し強度分布が一様化し、凹面鏡113で平行光に変換する。平行光は、第2平面鏡111で鉛直方向下向きに曲げられ、マスク109のパターンをこれに接近して設置した基板ガラス107上に投影する。基板ガラス107を1ヶ月あたり数万枚処理するには、投影時間は数秒になることが多く、マスク109サイズが大きくなり65インチを超える液晶パネルを製造するためには、ランプ121の出力を数10キロワットとすることが多い。集光鏡119は、その設置が鉛直方向上向きで放熱が容易な他、冷却手段の設置が容易である。
【0018】
図3は、最近考えられている液晶露光装置で、第1平面鏡117の設置方法を示したものである。第1平面鏡117は、これを45度斜め下向きに設置するため保持板201に、フック204で固定する。第1平面鏡117は、フック204によってその表面だけが保持板201方向に押さえる。第1平面鏡117とフック204が接する面は、金属製波形状板バネ、または、耐紫外線と耐熱性に優れるシリコン製ゴムとする。
【0019】
図4は、最近考えられている液晶露光装置で、第1平面鏡117の設置方法を示した図3で、第1平面鏡117の表示を省いて保持板201の構造を示したものである。図4で、保持板201はその冷却のために冷却媒体を流すパイプ202を設置する。冷却媒体としては水、または、エチレングリコールを溶解した液体を、このパイプを通して保持板201の内部に設置した冷却水管穴203に流し保持板201に接した第1平面鏡117を冷却する。
【0020】
図5は、本発明による液晶露光装置で、図4で示した保持板201で、第1平面鏡117の周辺が接する表面に溝303を設け、第1平面鏡117の周辺と保持板201の干渉を防ぐ方法・構成の一例を示したものである。本実施例によれば、保持板201の表面に溝を設置するので加工が容易になるという特徴がある。
【0021】
また、図8は、第1平面鏡117の背面で、これを背面から支える保持板201上に第1平面鏡117との間に隙間を開けるために、たとえば、ポリミイド樹脂やテフロン(登録商標)樹脂等耐熱性と耐紫外線に優れた材料で、第1平面鏡117を45度下向きに設置したとき第1平面鏡117の背面がこれを背面から支える保持板201と接しないようになる厚さ、たとえば、0.2mm以上の矩形状部材301を設け、第1平面鏡117が保持板201との干渉を防ぐ方法・構成を示したものである。矩形状の他,円形,楕円形,三角形等でも可能である。
【0022】
本実施例によれば、保持板201と第1平面鏡201との間に、たとえばポリミイド樹脂で作られたテープ、たとえばカプトンテープを挿入して構成することで設置が容易になるという特徴がある。テフロン(登録商標)樹脂で構成しても同様の効果を得ることは明らかである。
または、図6は、図4で示した保持板201で第1平面鏡117サイズより小さい保持面(突起)309を設け、第1平面鏡117の周辺と保持板201の干渉を防ぐ方法・構成を示したものである。
【0023】
または、図7は第1平面鏡117周辺をテーパー形状308にすることで第1平面鏡117の周辺と保持板201の干渉を防ぐ方法・構成を示したものである。本実施例によれば、第1平面鏡117周辺にテーパー形状を設けるだけなので加工が容易になるという特徴がある。
【0024】
以上に説明した本発明による液晶露光装置によれば、第1平面鏡117全周辺にわたって保持板201との干渉を防ぐことが可能となり、第1平面鏡117が温度により変形しても、第1平面鏡117周辺に引張り応力が発生しないため、保持板201が第1平面鏡117を引っ張ることによる割れを防止することができる。
【符号の説明】
【0025】
101 テーブル
103,105 ステージ
107 基板ガラス
108 ミラーハウス
109 マスク
110 ランプハウス
111 第2平面鏡
113 凹面鏡
115 フライアレイレンズ
117 第1平面鏡
119 集光鏡
121 ランプ
201 保持板
202 パイプ
203 冷却水管
204 フック
301 矩形状部材
303 溝
308 テーパー形状
309 保持面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光用ランプからの光を集光する集光鏡と、該集光鏡からの光の波長を選択して反射する平面鏡と、該平面鏡で反射した光の強度分布を一様化するフライアレイレンズとを備え、該フライアレイレンズからの光を用いて、マスクに描かれたパターンをレジストが塗布されたガラス基板に露光する液晶露光装置において、前記平面鏡の背面と面接触して当該平面鏡を保持する保持板を設け、前記平面鏡が高温になり変形する際、前記平面鏡周辺と前記保持板の干渉を防止する干渉防止部を形成したことを特徴とする液晶露光装置。
【請求項2】
請求項1において、前記干渉防止部は、前記保持板で前記平面鏡周辺と接する面に溝を設けて構成したことを特徴とする液晶露光装置。
【請求項3】
請求項1において、前記干渉防止部は、前記保持板と前記平面鏡との間に隙間を開けるための部材を設けて構成したことを特徴とする液晶露光装置。
【請求項4】
請求項1において、前記干渉防止部は、前記保持板において、前記平面鏡サイズより小さい保持面を設けて構成したことを特徴とする液晶露光装置。
【請求項5】
請求項1において、前記干渉防止部は、前記保持板において、前記平面鏡周辺にテーパー形状を設けて構成したことを特徴とする液晶露光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−13513(P2011−13513A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158369(P2009−158369)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】