説明

液材混合装置及び被覆対象部材の被覆構造部製造方法

【課題】液材の混合工程と硬化工程とを同一容器内で行い、液材混合作業における効率の向上を図ること。
【解決手段】被覆成型用容器70内に少なくとも主剤と硬化剤とを含む複数種の液材80を充填した状態で、被覆対象部材90を被覆成型用容器70内に挿入配置して、被覆成型用容器70内に充填した液材80を硬化させて被覆対象部材90を被覆するために、複数種の液材80を混合する液材混合装置10であって、複数種の液材80を充填した被覆成型用容器70を保持可能であると共に、保持した被覆成型用容器70を回転可能な回転機構部20と、被覆対象部材90を被覆成型用容器70内に充填された液材80に浸かる位置で保持可能な被覆対象部材保持部60とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数種の液材を混合し、混合した液材に被覆電線端末のスプライス部を浸して液材を硬化する端末処理技術及びこれに用いる液材混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スプライス部の端末処理技術として特許文献1に開示のものがある。特許文献1によると、一液性の熱硬化性樹脂を充填した容器にスプライス部を浸して、加熱装置により加熱して樹脂を硬化していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−252736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年は、被覆対象部材の被覆等の用途で、硬化性樹脂等の主剤と硬化促進剤等の硬化剤を混合することがある。このように液材を混合後に硬化させる場合には、一般の攪拌装置により混合した液材をスプライス部に応じた大きさの成型用容器に移し替えて、スプライス部を浸した状態で液材を硬化させる必要がある。
【0005】
従来の攪拌装置を使用してこのような液材を混合する場合、混合中に撹拌専用の容器及び撹拌部材に付着した液材が硬化固着してしまうことがある。その対策として、攪拌専用の容器及び撹拌部材をこまめに洗浄する必要がある。このように、洗浄作業が頻繁に必要となり、液材の混合作業及び硬化作業における効率の低下の恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、スプライス部の端末処理方法に関して、液材の混合工程と硬化工程とを同一容器内で行える液材混合装置及び被覆対象部材の被覆構造部製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る液材混合装置は、被覆成型用容器内に少なくとも主剤と硬化剤とを含む複数種の液材を充填した状態で、被覆対象部材を被覆成型用容器内に挿入配置して、前記充填した液材を硬化させて前記被覆対象部材を被覆するために、前記複数種の液材を混合する液材混合装置であって、前記複数種の液材を充填した前記被覆成型用容器を保持可能であると共に、保持した前記被覆成型用容器を回転可能な回転機構部と、前記被覆対象部材を前記被覆成型用容器内に充填された液材に浸かる位置で保持可能な被覆対象部材保持部と、を備えている。
【0008】
第2の態様に係る液材混合装置は、第1の態様に係る液材混合装置であって、前記被覆対象部材保持部は、異なる大きさの前記被覆対象部材を保持可能に構成されている。
【0009】
第3の態様に係る被覆対象部材の被覆構造部製造方法は、第1または第2の態様に係る液材混合装置を用いた被覆対象部材の被覆構造部製造方法であって、(a)前記被覆成型用容器を前記回転機構部にセットする工程と、(b)少なくとも光硬化性樹脂及び硬化促進剤を含む複数種の液材を前記被覆成型用容器に充填する工程と、(c)前記被覆対象部材を、前記被覆対象部材保持部により前記充填した液材に浸かる位置で保持する工程と、(d)前記被覆対象部材を前記被覆成型用容器内に充填した液材に浸かる位置で保持した状態で、前記被覆成型用容器を回転させる工程と、(e)前記被覆対象部材を前記被覆成型用容器内に充填した液材に浸かる位置で保持すると共に前記被覆成型用容器の回転を停止した状態で、前記充填した液材に光を照射して硬化させる工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
第1の態様に係る液材混合装置によると、回転機構部は、被覆成型用容器を保持可能であると共に、保持した被覆成型用容器を回転可能である。また、被覆対象部材保持部は、被覆対象部材を被覆成型用容器内に充填した液材に浸かる位置で保持可能である。これにより、被覆成型用容器に複数種の液材を充填すると共に被覆対象部材を被覆対象部材保持部で保持した状態で、回転機構部により被覆成型用容器を回転させると、被覆成型用容器内の複数種の液材が混合される。このように、複数種の液材を被覆成型用容器内で混合するため、液材の混合工程と硬化工程とを同一容器内で行うことができる。したがって、攪拌専用容器の洗浄作業を省略することができ、混合作業及び硬化作業において効率の向上を図ることができる。
【0011】
第2の態様に係る液材混合装置によると、被覆対象部材保持部が異なる大きさの被覆対象部材を保持可能に構成されている。このため、大きさが異なる被覆対象部材を用いた場合にも液材を混合することができる。
【0012】
第3の態様に係る被覆対象部材の被覆構造部製造方法によると、複数種の液材を被覆成型用容器内で混合するため、液材の混合工程と硬化工程とを同一容器内で行うことができる。したがって、攪拌専用容器の洗浄作業を省略することができ、混合作業及び硬化作業において効率の向上を図ることができる。また、光硬化性樹脂及び硬化促進剤を含む複数種の液材の混合後、被覆成型用容器に充填された状態で複数種の液材に光を照射する。このため、液材混合作業及び液材の硬化による被覆対象部材の被覆作業を全て成型容器内で行うことができ、液材混合作業及び被覆対象部材の被覆作業における効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】被覆対象部材を示す斜視図である。
【図2】被覆対象部材を複数種の液材を充填した被覆成型用容器内に挿入した状態を示す斜視図である。
【図3】実施形態に係る液材混合装置の概略斜視図である。
【図4】実施形態に係る液材混合装置の概略正面図である。
【図5】複数種の液材を充填した被覆成型用容器内に被覆対象部材を挿入する動作を示す図である。
【図6】複数種の液材の混合動作を示す図である。
【図7】混合後の液材の硬化処理を示す図である。
【図8】被覆された被覆対象部材を抜出した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係る液材混合装置について説明する。被覆対象部材の被覆は、被覆成型用容器内に少なくとも主剤と硬化剤とを含む複数種の液材を充填した状態で、被覆対象部材を被覆成型用容器内に挿入配置し、複数種の液材を硬化させることにより行う。本液材混合装置は、上記した被覆用の複数種の液材を混合するための装置である。
【0015】
<1.複数種の液材及び被覆対象部材及び被覆成型用容器の説明>
説明の便宜上、まず、複数種の液材及び被覆対象部材及び被覆成型用容器について説明する。図1は被覆対象部材90を示す図、図2は被覆対象部材90を複数種の液材80を充填した被覆成型用容器70内に挿入した状態を示す斜視図である。
【0016】
ここでは、被覆対象部材90は、接合された複数の電線92である。より具体的には、この複数の電線92の被覆を剥がして露出させた芯線部94と、この芯線部94を接合して形成されたスプライス部97と、電線92の被覆部96の芯線部側部分95とを含むスプライス部側端部98が被覆対象である(図1参照)。ここで、スプライス部97の例としては、複数の電線92において、上記芯線部94を超音波圧着や抵抗溶接、半田付け、端子圧着等の方法で接合して形成された接合部が挙げられる。そして、この被覆対象部材90は、混合された複数種の液材80の硬化によりスプライス部側端部98全体が被覆されることによって、止水及び絶縁される。以下、混合後の液材80が硬化された態様を被覆材82という。また、このスプライス部側端部98は、電線92の本数及び太さにより大きさが異なる。
【0017】
複数種の液材80は、光硬化性や熱硬化性等の硬化特性を有する硬化性樹脂等の主剤と硬化促進剤等の硬化剤とを含んでいる。ここでは、複数種の液材80は、主剤として紫外線硬化性樹脂(以下、UV硬化性樹脂)を用い、硬化剤として紫外線硬化促進剤(以下、UV硬化促進剤)を用いている。以下、複数種の液材80としてUV硬化性樹脂とUV硬化促進剤とを用いた例で説明する。
【0018】
被覆成型用容器70は、複数種の液材80を充填した状態で被覆対象部材90を挿入可能に形成されている。ここでは、被覆成型用容器70は、複数種の液材80を充填可能かつ被覆対象部材90を挿入可能な容器部72と、後述する回転機構部20の保持部32により保持可能な形状に形成された被保持部78とを有している(図2参照)。
【0019】
容器部72は、略直方体の凹部74を形成している。この凹部74の深さ寸法は、電線92の長手方向(被覆対象部材90の挿入方向)におけるスプライス部側端部98の寸法より長く設定されている。また、凹部74の深さ方向に直交する平面方向の寸法は、被覆対象部材90の挿入方向に直交する平面方向におけるスプライス部側端部98の断面寸法より大きく設定されている。換言すると、凹部74は、その内側にスプライス部側端部98が挿入されたとき、スプライス部側端部98を凹部74の内側面に非接触の状態で配設可能な寸法に形成されている。すなわち、凹部74内に挿入されたスプライス部側端部98と凹部74の内側面との間には、凹部74内に充填された複数種の液材80を配設可能な隙間が設けられている。これにより、凹部74に充填された複数種の液材80が、凹部74に挿入された被覆対象部材90のスプライス部側端部98全体を覆うことが可能である。
【0020】
ここで、容器部72は、当該形状に限られるものではなく、凹部74内に複数種の液材80を充填可能かつ被覆対象部材90のスプライス部側端部98を挿入可能な形状に形成されていればよい。例えば、容器部72は略円柱形状の凹部が形成されていているものでもよい。
【0021】
被保持部78は、上記容器部72の凹部74底側に連続して一体形成されている。この被保持部78が後述する保持部32により保持されることで、容器部72はその凹部74内に複数種の液材80を充填可能な姿勢に維持される。ここでは、被保持部78は、略円柱形状に形成されており、その軸方向が容器部72の凹部74の深さ方向と略一致するように形成されている。なお、被保持部78が省略され、容器部72が直接的に保持部32により保持されてもよい。
【0022】
なお、被覆成型用容器70については、スプライス部側端部98の大きさに応じて、異なる大きさの容器部72(凹部74)を有するものが複数準備されることが好ましい。また、容器部72の大きさが異なる場合でも、被保持部78は共通の大きさに設定されているとよい。
【0023】
また、ここでは、被覆成型用容器70は紫外線透過性を有している。被覆成型用容器70を形成する材料としては、例えば、ガラス材、紫外線透過性を有する樹脂材等を採用することができる。また、被覆成型用容器70は、容器部72の壁厚さが薄く紫外線を透過可能に形成されたものでも良い。そして、この被覆成型用容器70には、複数種の液材80を混合して硬化させた後、後述する被覆構造部84を抜出し容易にするため、容器内周面或いは全体にフッ素コーティングが施されていると良い。
【0024】
複数種の液材80を混合する際には、複数種の液材80は、被覆成型用容器70の容器部72の凹部74内に充填される。この時、凹部74内に充填される複数種の液材80の量は、被覆対象部材90をその中に挿入したときにスプライス部側端部98全体を被覆可能な程度の量である。そして、複数種の液材80が充填された凹部74内に被覆対象部材90が挿入される。複数種の液材80は、混合後、被覆対象部材90のスプライス部側端部98を覆った状態で硬化される。図1の二点鎖線は、複数種の液材80を硬化後、スプライス部側端部98が被覆材82(液材80の硬化後の態様)に被覆された状態を示している。これにより、スプライス部側端部98が被覆材82で被覆された被覆構造部84が製造される。
【0025】
<2.液材混合装置の構成>
液材混合装置10の構成について説明する。図3は液材混合装置10の概略斜視図、図4は液材混合装置10の概略正面図である。
【0026】
液材混合装置10は、被覆成型用容器70を保持可能かつ回転可能な回転機構部20と、被覆対象部材90を保持可能な被覆対象部材保持部60とを有している。
【0027】
回転機構部20は、複数種の液材80を充填した被覆成型用容器70を保持可能であると共に、保持した被覆成型用容器70を回転可能に構成されている。この回転機構部20は、伝達機構部40を備える基台部24と、被覆成型用容器70を保持可能な保持部32と、当該保持部32を伝達機構部40を介して回転駆動可能な電動機36とを有している。
【0028】
基台部24は、その天板上に保持部32及び電動機36を支持可能であると共に、内側に伝達機構部40を配設可能な筐体に形成されている。そして、基台部24内に配設される伝達機構部40は、後述する回転プーリ44と伝達ベルト46と駆動プーリ48とを有している。
【0029】
保持部32は、被覆成型用容器70の被保持部78を保持可能に形成されている。保持部32の機構としては、円柱形状部材を直立姿勢で保持可能な種々の保持機構を採用することができる。ここでは、保持部32には被保持部78の一部を挿入可能な穴部32hが形成されている。そして、保持部32には、被保持部78の挿入方向と略直交する平面方向において、当該穴部内に向けて締付け可能なネジSが複数配設されている。このネジSを締付けすることで、保持部32の穴部32h内に挿入された被保持部78を固定し、被覆成型用容器70を保持することができる。これにより、保持部32の回転に伴って被覆成型用容器70も回転されるように固定される。
【0030】
すなわち、保持部32は、共通の大きさに設定された被保持部78を保持可能である。これにより、保持部32は、容器部72(凹部74)の大きさが異なる場合でも、被覆成型用容器70を保持可能である。
【0031】
また、この保持部32は、被覆成型用容器70をその凹部74内に充填される複数種の液材80がこぼれない姿勢で保持可能である。より具体的には、保持部32は被覆成型用容器70を凹部74の開口が鉛直方向上側(図4の上側)に向くような姿勢で保持する。そして、回転機構部20は、この保持部32が保持する姿勢で鉛直軸周りに被覆成型用容器70を回転可能である。
【0032】
また、保持部32は、回転軸部34を有し、この回転軸部34を介して基台部24に回転可能に支持されている。この回転軸部34には、後述する電動機36の駆動力を保持部32に伝達する伝達機構部40を構成している回転プーリ44が取り付けられている。
【0033】
電動機36は、単相モータ或いは三相モータ等の一般的なモータである。この電動機36は、その駆動軸部38が基台部24内に配設される姿勢で基台部24に支持されている。この駆動軸部38には、電動機36の駆動力を保持部32に伝達する伝達機構部40を構成している駆動プーリ48が取り付けられている。
【0034】
上記回転プーリ44と駆動プーリ48とは、伝達ベルト46で連結されている。そして、電動機36の駆動により駆動プーリ48が回転し、この駆動プーリ48の回転力が伝達ベルト46を介して回転プーリ44に伝達され、保持部32が回転駆動される。
【0035】
上記回転機構部20は、電動機36の正転、逆転を切換え可能に構成されていても良い。これにより、回転機構部20は、被覆成型用容器70を正転、逆転させることができ、複数種の液材80をより十分に混合することができる。また、この回転機構部20は、保持部32の回転速度を制御可能に構成されていても良い。これにより、回転機構部20は、複数種の液材80の種類或いは組合せに応じた回転速度で被覆成型用容器70を回転させ、当該複数種の液材80を混合することができる。
【0036】
また、回転機構部20は上記構成に限られるものではなく、被覆成型用容器70を保持及び回転可能であればよく、例えば、電動機36が伝達機構部40を介さずに直接保持部32を回転駆動するものであってもよい。
【0037】
被覆対象部材保持部60は、被覆対象部材90を被覆成型用容器70内に充填される複数種の液材80に浸かる位置で保持可能に構成されている。この被覆対象部材保持部60は、基台部24に支持され、被覆対象部材90に直接作用する把持部62が保持部32の略直上に位置するように配設されている。この位置は、保持部32に保持された被覆成型用容器70の凹部74の略直上の位置である。そして、被覆対象部材保持部60は、把持部62により、被覆対象部材90の略中心軸を凹部74の略直上で鉛直方向に沿わせた姿勢で、被覆対象部材90の長手方向任意の位置で当該被覆対象部材90を保持可能とされている。これにより、被覆対象部材保持部60は、被覆対象部材90をそのスプライス部側端部98が複数種の液材80に浸かる位置で保持可能である。
【0038】
また、把持部62は、操作部64の操作により開閉可能に構成されている。より具体的には、把持部62は、付勢部材68により把持方向に付勢され、操作部64を押圧操作すると開き、操作部64の押圧操作を解除すると閉じるように構成されている。この把持部62は、上記操作部64への操作力に応じて開き量を調節可能である。これにより、被覆対象部材保持部60は、異なる大きさの被覆対象部材90を保持可能、すなわち、電線92の本数或いは太さが異なる場合でも保持可能である。
【0039】
他にも把持部62としては、弾性力を有する2つの把持片の間でその弾性力により被覆対象部材90を把持する機構等、種々の把持機構を採用することができる。
【0040】
<3.液材混合装置の動作及び被覆構造部製造方法の説明>
次に、液材混合装置10の動作及び液材混合装置10を用いた被覆構造部84の製造方法について説明する。図5は複数種の液材80を充填した被覆成型用容器70内に被覆対象部材90を挿入する動作を示す図、図6は複数種の液材80の混合動作を示す図、図7は混合後の液材80の硬化処理を示す図、図8は被覆された被覆対象部材90を抜出した状態を示す図である。ここで、図5〜図8は、図4において被覆成型用容器70及び被覆対象部材90のみを示した図である。
【0041】
まず、被覆対象部材90に応じた大きさの被覆成型用容器70を保持部32により保持する。そして、保持部32に保持された被覆成型用容器70内に既定量の複数種の液材80を充填する。この状態で、被覆対象部材保持部60により、被覆対象部材90を被覆成型用容器70内に充填された複数種の液材80に浸る位置で保持する(図5参照)。この位置は、被覆対象部材90のスプライス部側端部98全体が当該複数種の液材80に浸る位置でも、スプライス部側端部98の一部が浸る位置でもよい。すなわち、複数種の液材80を混合する際の被覆対象部材保持部60による被覆対象部材90の保持位置は、複数種の液材80を被覆対象部材90により混合可能な位置であればよい。好ましくは、スプライス部側端部98全体が複数種の液材80に浸かる位置で保持されているとよい。
【0042】
次に、上記状態で、電動機36を駆動させて保持部32を回転させる。このとき、被覆成型用容器70は回転され、その凹部74内に挿入されている被覆対象部材90は被覆対象部材保持部60により回転不能に保持されている。この被覆成型用容器70と被覆対象部材90との相対回転により、被覆成型用容器70内の複数種の液材80が混合される(図6参照)。複数種の液材80の混合が完了すると、電動機36による保持部32の回転駆動を止めて、被覆成型用容器70の回転を停止させる。
【0043】
複数種の液材80を混合後、被覆対象部材保持部60により被覆対象部材90をスプライス部側端部98全体が混合後の液材80に浸かる位置に保持する。ただし、複数種の液材80の混合時に、被覆対象部材90をスプライス部側端部98全体が混合後の液材80に浸る位置で保持していた場合は、保持位置を移動する必要はない。また、このとき被覆対象部材90は、スプライス部側端部98が容器部72の内面に接触しない位置で保持されることが好ましい。そして、この状態で被覆成型用容器70の外側から紫外線照射器50により紫外線を照射し、混合後の液材80を硬化させる(図7参照)。
【0044】
混合後の液材80を硬化後、被覆された被覆対象部材90を被覆成型用容器70から抜出す(図8参照)。このとき、被覆対象部材90は、被覆材82(液材80の硬化後の態様)によりスプライス部側端部98が被覆された状態になっている。これにより、被覆対象部材90の被覆構造部84を製造することができる。
【0045】
そして、上記工程を繰り返して、次の被覆対象部材90を被覆するための複数種の液材80を混合し、被覆対象部材90の被覆構造部84を繰返し製造することができる。
【0046】
上記のような液材混合装置10及び被覆対象部材90の被覆構造部製造方法によると、被覆成型用容器70に複数種の液材80を充填すると共に被覆対象部材90を被覆対象部材保持部60で保持した状態で、回転機構部20により被覆成型用容器70を回転させる。すると、被覆成型用容器70と被覆対象部材90との相対回転により、被覆成型用容器70内に充填されている複数種の液材80が混合される。このように、複数種の液材80を被覆成型用容器70内で混合するため、液材80の混合工程と硬化工程とを同一容器内で行うことができる。したがって、攪拌専用容器の洗浄作業を省略することができ、混合作業及び硬化作業において効率の向上を図ることができる。また、複数種の液材80を混合するときに攪拌部材を不要とすることができるため、攪拌部材に掛かるコストを削減することによる低コスト化、攪拌部材の洗浄作業及び交換作業を省略することによる液材混合作業における効率の向上を図ることができる。
【0047】
また、複数種の液材80を被覆成型用容器70内で混合するため、複数種の液材80を混合した後、攪拌専用容器から成型用容器に移し替える作業を省略することができる。これにより、液材混合作業における効率を向上させることができる。
【0048】
また、被覆対象部材保持部60の把持部62が、電線92の本数或いは太さの違いにより大きさが異なる被覆対象部材90を保持可能に構成されている。このため、大きさが異なる被覆対象部材90を用いた場合にも複数種の液材80を混合することができる。
【0049】
また、UV硬化性樹脂及びUV硬化促進剤を含む複数種の液材80の混合後、被覆成型用容器70に充填された状態で紫外線照射器50により複数種の液材80に紫外線を照射する。このため、液材混合作業及び被覆対象部材の被覆作業を全て被覆成型用容器70内で行うことができ、液材混合作業及び被覆対象部材90の被覆作業における効率の向上を図ることができる。
【0050】
{変形例}
液材混合装置10には、回転機構部20の側方に紫外線照射器50が配設されていても良い。これにより、UV硬化性樹脂とUV硬化促進剤とを混合した後、すぐに紫外線照射器50により紫外線を照射して硬化させることができ、被覆対象部材90の被覆作業の効率を向上させることができる。また、これにより、次の混合作業までの時間を短縮して液材混合作業の効率を向上させることができる。
【0051】
また、被覆構造部84を製造するための複数種の液材80は、UV硬化性樹脂とUV硬化促進剤とに限られるものではなく、紫外線以外の波長の光で硬化する光硬化性樹脂とその硬化促進剤とを含んでいればよい。そして、硬化対象である複数種の液材を硬化可能な波長の光を照射してこの複数種の液材を硬化させ、被覆構造部84を製造すればよい。
【符号の説明】
【0052】
10 液材混合装置
20 回転機構部
60 被覆対象部材保持部
70 被覆成型用容器
80 液材
90 被覆対象部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆成型用容器内に少なくとも主剤と硬化剤とを含む複数種の液材を充填した状態で、被覆対象部材を被覆成型用容器内に挿入配置して、前記充填した液材を硬化させて前記被覆対象部材を被覆するために、前記複数種の液材を混合する液材混合装置であって、
前記複数種の液材を充填した前記被覆成型用容器を保持可能であると共に、保持した前記被覆成型用容器を回転可能な回転機構部と、
前記被覆対象部材を前記被覆成型用容器内に充填された液材に浸かる位置で保持可能な被覆対象部材保持部と、
を備えた液材混合装置。
【請求項2】
請求項1記載の液材混合装置であって、
前記被覆対象部材保持部は、異なる大きさの前記被覆対象部材を保持可能に構成されている、液材混合装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の液材混合装置を用いた被覆対象部材の被覆構造部製造方法であって、
(a)前記被覆成型用容器を前記回転機構部にセットする工程と、
(b)少なくとも光硬化性樹脂及び硬化促進剤を含む前記複数種の液材を前記被覆成型用容器に充填する工程と、
(c)前記被覆対象部材を、前記被覆対象部材保持部により前記充填した液材に浸かる位置で保持する工程と、
(d)前記被覆対象部材を前記被覆成型用容器内に充填した液材に浸かる位置で保持した状態で、前記被覆成型用容器を回転させる工程と、
(e)前記被覆対象部材を前記被覆成型用容器内に充填した液材に浸かる位置で保持すると共に前記被覆成型用容器の回転を停止した状態で、前記充填した液材に光を照射して硬化させる工程と、
を含む被覆対象部材の被覆構造部製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−172163(P2010−172163A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14317(P2009−14317)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】