説明

液浸露光用レジスト保護膜用組成物およびレジストパターンの形成方法

【課題】相対的に移動する投影レンズに水が十分に追従し、液浸露光工程を安定して実施できるレジスト保護膜を提供する。
【解決手段】下記式(a3)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A3)、下記式(a4)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A4)、および下記式(a5)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A5)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する第1の重合体を含む液浸露光用レジスト保護膜用組成物を提供する。
CF=CFO(CFC(CFOH ………(a3)
CF=CFO(CFC(O)O(CHC(CFOH………(a4)
CF=CFO(CFC(O)OCH(CH)CHC(CFOH (a5)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液浸露光用レジスト保護膜用組成物、および液浸露光用レジスト保護膜用組成物を用いるレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の集積回路の製造においては、露光光源の光をマスクに照射して得られたマスクのパターン像を、基板上の感光性レジストに投影して転写するリソグラフィー法が用いられる。通常、前記パターン像は、感光性レジスト上を相対的に移動する投影レンズを介して、感光性レジストの所望の位置に投影される。
【0003】
一方、感光性レジストに転写されるパターン像の解像度は、露光光源の光が短波長になるほど向上するため、露光光源として波長220nm以下の短波長光(ArFエキシマレーザー光、Fレーザー光等。)が検討されている。そして、Fレーザー光を露光光源とする露光工程に用いられる感光性レジスト重合体として、下式で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位を含む重合体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【化1】

【0004】
さらに近年では、液状媒体中における光の波長が液状媒体の屈折率の逆数倍になる現象を利用した露光工程、すなわち投影レンズ下部と感光性レジスト上部との間を液状媒体(例えば水等。)で満たしつつ、投影レンズを介してマスクのパターン像を基板上の感光性レジストに投影する液浸露光工程を含む液浸リソグラフィー法が検討されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかし、液浸露光工程においては、投影レンズと感光性レジストの間が水で満たされるため、感光性レジスト中の成分(光酸発生剤等。)が水に溶出したり、水が感光性レジスト中に浸入して感光性レジストが膨潤する等の問題があった。そのため、感光性レジスト上にレジスト保護膜を設け、感光性レジストの水中への溶出や水の感光性レジスト中への浸入等を抑制する試みがなされている。
【0006】
レジスト保護膜としては、式:CF=CFCFC(CF)(OR)CHCH=CHで表される化合物の環化重合により形成される下記式(G1)で表される繰り返し単位を含むレジスト保護膜用組成物(例えば、特許文献3参照。)や、式:CH=CHC(O)OCHCFCFCFCHF等の非環状ポリフルオロ(メタ)アクリレートと、下記式(g2)で表される化合物との重合により形成されるレジスト保護膜用組成物(例えば、特許文献4参照。)が知られている。ただし、Rは、水素原子または炭素数1〜15のアルキルオキシ基もしくはアルキルオキシアルキル基を示す。
【化2】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−189726号公報
【特許文献2】国際公開99/049504号
【特許文献3】特開2005−264131号公報
【特許文献4】特開2006−070244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液浸露光工程において感光性レジスト上にレジスト保護膜を形成する場合には、レジスト保護膜上を相対的に移動する投影レンズに水がよく追従するような材料を選定するのが望ましい。
【0009】
しかし、特許文献3および特許文献4にそれぞれ開示されるレジスト保護膜用組成物は、撥水性を有するものの、動的撥水性が十分でないため、これらの重合体を液浸露光用レジスト保護膜として用いた場合には、レジスト保護膜上を相対的に移動する投影レンズに水が十分に追従せず、液浸露光工程を安定的に実施できないと考えられる。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、相対的に移動する投影レンズに水が十分に追従し、液浸露光工程を安定して実施できるレジスト保護膜を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、液浸レジスト保護膜としての特性(水の浸入による感光性レジストの膨潤抑制および感光性レジスト成分の液状媒体中への溶出抑制等。)に優れ、かつ動的撥水性に特に優れた水によく滑るレジスト保護膜を得るべく、鋭意検討を行なった。その結果、このような物性に優れた液浸露光用レジスト保護膜用の組成物を見出した。
【0012】
すなわち、本発明は下記の発明を提供する。
【0013】
[1]下記式(a1)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A1)と、下記式(a21)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A21)と、下記式(a22)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A22)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する第1の重合体を含むことを特徴とする液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
CF=CFO(CFC(=O)OH ………(a1)
CF=CFO(CFZ ………(a21)
CF=CFO(CF(C(=O)O)Z ………(a22)
ただし、式中の記号は、以下の意味を示す。
Z:式−C(CFOHで表される基、または式−C(CFOHで表される基を1つ以上有する、炭素数1から20の1価の有機基。
【0014】
[2]下記式(a3)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A3)、下記式(a4)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A4)、および下記式(a5)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A5)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する第1の重合体を含む、[1]に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
CF=CFO(CFC(CFOH ………(a3)
CF=CFO(CFC(=O)O(CHC(CFOH………(a4)
CF=CFO(CFC(=O)OCH(CH)CHC(CFOH(a5)
【0015】
[3]前記第1の重合体は、下記式(b1)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(B1)と、下記式(b2)で表される化合物の環化重合により形成される繰り返し単位(B2)との少なくとも一方をさらに有する、[1]または[2]に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
CF=CFO(CFC(=O)OR ………(b1)
CF=CFOCFXCFCF=CF ………(b2)
ただし、式中の記号は、以下の意味を示す。
R:炭素数12から20の1価のアルキル基。
X:フッ素原子または炭素数1から3のパーフルオロアルキル基。
【0016】
[4]前記第1の重合体は、前記繰り返し単位(A1)、前記繰り返し単位(A21)、前記繰り返し単位(A22)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を、これらの繰り返し単位の合計で全繰り返し単位に対して30〜95モル%含む、[1]または[3]に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【0017】
[5]前記第1の重合体は、前記繰り返し単位(A3)、前記繰り返し単位(A4)、前記繰り返し単位(A5)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を、これらの繰り返し単位の合計で全繰り返し単位に対して30〜95モル%含む、[2]または[3]に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【0018】
[6]前記第1の重合体は、前記繰り返し単位(B1)および/または前記繰り返し単位(B2)を、これらの繰り返し単位の合計で全繰り返し単位に対して5〜70モル%含む、[3]に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【0019】
[7][1]または[2]に記載の組成物と、
ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニルアミド基、アミノ基およびリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基を有する重合性化合物(c)の重合により形成される繰り返し単位(C)を有する第2の重合体と
を含有する液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【0020】
[8]前記重合性化合物(c)が、下記式(c1)で表される化合物、下記式(c2)で表される化合物、下記式(c3)で表される化合物、および下記式(c4)で表される化合物から選択される少なくとも1種である、[7]に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
CF=CF−Q−CH=CH ………(c1)
CH=CRC(=O)O−W(−C(CFOH) ………(c2)
CH=CH−W(−C(CFOH) ………(c3)
【化3】

ただし、式中の記号は、下記の意味を示す。
Q:式−CFC(CF)(OH)(CH−で表される基、式−CHCH((CHC(CF(OH))(CH−で表される基、または式−CHCH(COOH)(CH−で表される基。
m、nおよびp:それぞれ独立に、0、1または2。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のフルオロアルキル基。
およびW:それぞれ独立に、フッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の(r+1)価の炭化水素基。
r:1または2。
:単結合またはフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の2価の炭化水素基。
【0021】
[9]前記繰り返し単位(A1)、前記繰り返し単位(A21)、前記繰り返し単位(A22)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する第1の重合体を、全重合体に対して0.1〜30質量%の割合で含む、[7]または[8]に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【0022】
[10]前記第1の重合体および前記第2の重合体の重量平均分子量が、いずれも1000〜50000である、[1]〜[9]のいずれかに記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【0023】
[11][1]〜[10]のいずれかに記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物と、有機溶媒を含む液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【0024】
[12]液浸リソグラフィー法によるレジストパターンの形成方法であって、
基板上の感光性レジスト膜表面に、[11]に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物を塗布した後、前記基板を乾燥してレジスト保護膜を形成する工程と、液浸露光工程、および現像工程を順に行うことにより、前記基板上にレジストパターンを形成することを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、液浸露光用レジスト保護膜特性(水の浸入による感光性レジストの膨潤抑制、感光性レジスト成分の液状媒体中への溶出抑制等。)に優れ、特に動的撥水性に優れた液浸露光用レジスト保護膜用の組成物が提供される。そして、本発明の液浸露光用レジスト保護膜用組成物を用いることにより、液浸リソグラフィー法による高精度で効率的なレジストパターンの形成方法を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書において、式(a)で表される化合物を化合物(a)とも記し、式(A)で表される繰り返し単位を単位(A)とも記す。他の式で表される化合物と繰り返し単位も同様に記す。
【0027】
本発明の液浸露光用レジスト保護膜用組成物(以下、保護膜用組成物ともいう。)の第1の実施形態は、下記化合物(a1)の重合により形成される繰り返し単位(A1)、下記式(a21)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A21)、下記式(a22)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A22)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する重合体(第1の重合体)を含有する。
CF=CFO(CFC(=O)OH ………(a1)
CF=CFO(CFZ ………(a21)
CF=CFO(CF(C(=O)O)Z ………(a22)
【0028】
化合物(a21)および化合物(a22)において、Zは式:−C(CFOHで表される基、または式:−C(CFOHで表される基を1つ以上有する炭素数1から20の1価の有機基を示す。
【0029】
本発明の液浸露光用レジスト保護膜用組成物の第2の実施形態は、下記化合物(a3)の重合により形成される繰り返し単位(A3)、下記化合物(a4)の重合により形成される繰り返し単位(A4)、および下記化合物(a5)の重合により形成される繰り返し単位(A5)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する第1の重合体を含む。なお、化合物(a3)は、前記化合物(a21)の具体例の1種であり、化合物(a21)において、Zが−C(CFOH基である場合に相当する。また、化合物(a4)は、化合物(a22)の具体例の1種であり、化合物(a22)において、Zが−(CHC(CFOH基である場合に相当する。さらに、化合物(a5)も化合物(a22)の具体例の1種であり、化合物(a22)において、Zが−CH(CH)CHC(CFOH基である場合に相当する。
CF=CFO(CFC(CFOH ………(a3)
CF=CFO(CFC(=O)O(CHC(CFOH………(a4)
CF=CFO(CFC(=O)OCH(CH)CHC(CFOH(a5)
【0030】
本発明の第1の実施形態および第2に実施形態の液浸露光用レジスト保護膜用組成物は、撥水性に優れ、特に動的撥水性に特に優れている。したがって、これらの保護膜用組成物を含む保護膜は、高撥水性で水に浸入されにくく、かつ動的撥水性に特に優れており、水がよく滑る液浸露光用レジスト保護膜となる。
【0031】
本発明の第1の実施形態の保護膜用組成物において、第1の重合体は、撥水性特に動的撥水性の観点から、前記繰り返し単位(A1)、前記繰り返し単位(A21)、前記繰り返し単位(A22)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を、これらの繰り返し単位の合計で全繰り返し単位に対して30〜95モル%の割合で含むことが好ましい。また、本発明の第2の実施形態の保護膜用組成物において、第1の重合体は、同様に撥水性特に動的撥水性の観点から、前記繰り返し単位(A3)、(A4)、(A5)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位をこれらの繰り返し単位の合計で、全繰り返し単位に対して30〜95モル%の割合で含むことが好ましい。
【0032】
本発明の第1の実施形態および第2に実施形態の保護膜用組成物(以下、本発明の保護膜用組成物ということがある。)は、下記化合物(b1)の重合により形成される繰り返し単位(B1)と、下記化合物(b2)で表される化合物の環化重合により形成される繰り返し単位(B2)との少なくとも一方をさらに有する共重合体であることができる。
CF=CFO(CFC(=O)OR ………(b1)
CF=CFOCFXCFCF=CF ………(b2)
【0033】
化合物(b1)において、Rは炭素数12から20の1価のアルキル基を示す。また、化合物(b2)において、Xはフッ素原子または炭素数1から3のパーフルオロアルキル基を示す。
【0034】
さらに、本発明の第3の実施形態の保護膜用組成物は、前記繰り返し単位(A1)、前記繰り返し単位(A21)、前記繰り返し単位(A22)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する第1の重合体を含む組成物(第1の実施形態の組成物)、または前記繰り返し単位(A3)、(A4)、(A5)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する第1の重合体を含む組成物(第2の実施形態の組成物)と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニルアミド基、アミノ基およびリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基を有する重合性化合物(c)の重合により形成される繰り返し単位(C)を有する第2の重合体とを、それぞれ含有することができる。
【0035】
この保護膜用組成物においては、前記繰り返し単位(A1)、前記繰り返し単位(A21)、前記繰り返し単位(A22)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する第1の重合体を、全重合体に対して0.1〜30質量%の割合で含むことが好ましい。
【0036】
重合性化合物(c)としては、下記化合物(c1)〜(c4)を挙げることができる。すなわち、第3の実施形態の保護膜用組成物は、下記化合物(c1)の環化重合によって形成される繰り返し単位(C1)、下記化合物(c2)の重合によって形成される繰り返し単位(C2)、下記化合物(c3)の重合によって形成される繰り返し単位(C3)、および下記化合物(c4)の重合によって形成される繰り返し単位(C4)から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(C)を有する第2の重合体を含有する。
CF=CF−Q−CH=CH ………(c1)
CH=CRC(=O)O−W(−C(CFOH) ………(c2)
CH=CH−W(−C(CFOH) ………(c3)
【化4】

【0037】
化合物(c1)において、Qは式:−CFC(CF)(OH)(CH−で表される基、式−:CHCH((CHC(CF(OH))(CH−で表される基、または式:−CHCH(COOH)(CH−で表される基である。ここで、m、nおよびpはそれぞれ独立に、0、1または2である。また、化合物(c2)において、Rは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のフルオロアルキル基であり、Wはフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の(r+1)価の炭化水素基である。化合物(c3)において、Wはフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の(r+1)価の炭化水素基である。ここで、rは1または2である。さらに、化合物(c4)において、Wは単結合またはフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。
【0038】
本発明の第1の実施形態、第2の実施形態および第3の実施形態の保護膜用組成物において、第1の重合体および第2の重合体の重量平均分子量Mwは、いずれも1,000〜50,000であることが好ましい。1,000〜20,000であることがさらに好ましく、5,000〜15,000が特に好ましい。
【0039】
本発明の第4の実施形態である液浸露光用レジスト保護膜用組成物は、ポリマーαを含む。ポリマーαとは、前記繰り返し単位(A1)、前記繰り返し単位(A21)、前記繰り返し単位(A22)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有し、必要に応じて前記繰り返し単位(B1)および/または(B2)をさらに含む第1の重合体(第1の実施形態における第1の重合体)、あるいは、前記繰り返し単位(A3)、(A4)、(A5)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を含み、必要に応じて前記繰り返し単位(B1)および/または(B2)をさらに含む第1の重合体(第2の実施形態における第1の重合体)である。ポリマーαは、前記繰り返し単位(A1)、(A21)、(A22)、(A3)、(A4)、(A5)、(B1)、(B2)以外の他の繰り返し単位を有していてもよい。本発明の保護膜組成物において、前記ポリマーαの含有量は0.5〜10質量%であることが好ましい。
【0040】
さらに、前記ポリマーαを含む本発明の保護膜用組成物は、前記繰り返し単位(C)を有する第2の重合体を含むことが好ましい。なお、本発明の保護膜用組成物が繰り返し単位(C)を有する第1の重合体を含む場合とは、ポリマーαが繰り返し単位(C)を有する場合(コポリマーである場合)と、ポリマーαは繰り返し単位(C)を有さず、本発明の保護膜用組成物がポリマーγを含む場合の2つの態様がそれぞれ例示できる。ここで、ポリマーγとは、繰り返し単位(C)を有し、かつ繰り返し単位(A1)〜(A5)のいずれも有していないポリマーを示すものとする。
【0041】
本発明の保護膜用組成物が、前記ポリマーαおよび前記ポリマーγを含む組成物である場合、ポリマーαとポリマーγの合計の質量が組成物中で占める割合は、0.5〜10質量%が好ましい。また、ポリマーαとポリマーγの合計に占めるポリマーαの割合は、0.1〜30質量%が好ましい。
【0042】
本発明の保護膜組成物において、前記ポリマーαが繰り返し単位(C)を有する場合(コポリマーである場合)は、繰り返し単位(A1)、(A21)、(A22)、(A3)、(A4)、(A5)と繰り返し単位(C)との合計が全重合体中に占める割合は、30〜100モル%が好ましい。またこの場合、繰り返し単位(A1)、(A21)、(A22)、(A3)、(A4)、(A5)と繰り返し単位(C)との合計に占める繰り返し単位(C)の割合は、1〜50モル%が好ましい。
【0043】
本発明の保護膜組成物は、基板(シリコンウエハ等。)上に形成されたレジスト膜上に塗布され成膜されて用いられるため、成膜性の観点から、有機溶媒を含み液状に調製されるものが好ましい。以下、本発明の保護膜組成物のうちで、有機溶媒を含む液状のものを組成物溶液と示すことがある。有機溶媒としては、前記繰り返し単位(A1)、(A21)、(A22)、(A3)、(A4)、(A5)、(B1)、(B2)および(C)を含む重合体に対する相溶性の高い溶媒であれば特に限定されない。有機溶媒としては、含フッ素化合物からなるフッ素系有機溶媒、フッ素原子を含まない化合物からなる非フッ素系有機溶媒が挙げられる。
【0044】
フッ素系有機溶媒の具体例としては、CClFCH、CFCFCHCl、CClFCFCHClF等のハイドロクロロフルオロカーボン類;CFCHFCHFCFCF、CF(CFH、CF(CF、CF(CF、CF(CF等のハイドロフルオロカーボン類;1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、メタキシレンヘキサフルオライド等のハイドロフルオロベンゼン類;ハイドロフルオロケトン類;ハイドロフルオロアルキルベンゼン類;CFCFCFCFOCH、(CFCFCF(CF)CFOCH、CFCHOCFCHF等のハイドロフルオロエーテル類;CHFCFCHOH等のハイドロフルオロアルコール類が挙げられる。
【0045】
非フッ素系有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−エチルブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等のケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸2−エトキシエチル、酢酸イソアミル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノまたはジアルキルエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類が挙げられる。
【0046】
前記保護膜組成物溶液は、有機溶媒を前記第1の重合体の総質量に対して等倍量〜100倍量含むことが好ましい。
【0047】
前記保護膜組成物溶液は、感光性レジスト膜上にスピンコート法等によって塗布されるため、前記有機溶媒は、感光性レジスト膜を溶解しない溶媒がより好ましく、アルコール類、フルオロエーテル類、フルオロアルコール類、フルオロケトン、フルオロベンゼン類が特に好ましい。
【0048】
アルコール類としては、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−オクタノールが好ましく、2−メチル−1−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノールが特に好ましい。フルオロアルコール類としては、CCHOHまたはCCHCHOHが好ましい。フルオロベンゼン類としては、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが好ましい。
【0049】
前記保護膜組成物溶液は、さらに他の成分を含んでいてもよい。そのような成分の具体例としては、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤が挙げられる。
【0050】
前記保護膜組成物溶液は、液浸露光リソグラフィー法における感光性レジスト膜の保護膜材料として用いられる。液浸露光リソグラフィー法としては、基板上に感光性レジスト材料を塗布して感光性レジスト膜を形成する工程と、感光性レジスト膜の表面に、有機溶媒を含む前記保護膜組成物溶液を塗布してレジスト保護膜を形成する工程と、液浸露光工程、および現像工程をこの順に行い、基板上にレジストパターンを形成する方法を採ることが好ましい。
【0051】
感光性レジスト材料は、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する重合体と、光酸発生剤とを含む感光性レジスト組成物であれば、特に限定されない。感光性レジスト材料の具体例としては、特開2005−234178号公報等に記載の感光性レジスト材料が挙げられる。より具体的には、光酸発生剤としてトリフェニルスルホニウムトリフレートを含み、かつ前記重合体として下記3種の化合物の共重合体を含む感光性レジスト組成物が挙げられる。
【化5】

【0052】
液浸露光工程としては、露光光源の光をマスクに照射して得られたマスクのパターン像を、投影レンズとレジスト膜の間をイマージョン液で満たしつつ、レジスト膜上を相対的に移動する投影レンズを介してレジスト膜の所望の位置に投影する工程が挙げられる。
【0053】
露光光源は、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、またはFエキシマレーザー光(波長157nm)が好ましく、ArFエキシマレーザー光またはFエキシマレーザー光がより好ましく、ArFエキシマレーザー光が特に好ましい。
【0054】
イマージョン液は、油性液状媒体(デカリン等。)であってもよく、水性液状媒体(超純水等。)であってもよい。水を主成分とする液状媒体が好ましく、超純水が特に好ましい。
【0055】
本発明における液浸露光工程においては、レジスト膜は、本発明の保護膜用組成物からなる保護膜によって液状媒体(水等。)から遮断されており、液状媒体に侵入されにくく、かつレジスト膜中の成分が液状媒体に溶出しにくい。そのため、レジスト膜が膨潤しにくく、液状媒体の屈折率等の光学的特性が変化しにくい。さらに、レジスト保護膜上を相対的に移動する投影レンズに水がよく追従するため、安定した液浸露光工程の実施が可能である。
【0056】
現像工程としては、レジスト膜の露光部分とレジスト保護膜とをアルカリ溶液により除去する工程が挙げられる。アルカリ溶液としては、特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドおよびトリエチルアミンから選ばれるアルカリ化合物を含むアルカリ水溶液が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例においては、テトラヒドロフランをTHFと、ジクロロペンタフルオロプロパンをR225と、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートをIPPと、イソプロピルアルコールをIPAと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをPGMEAと、テトラメチルシランをTMSとそれぞれ記す。また、重量平均分子量をMwと、数平均分子量をMnと記す。MwとMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法を用いて測定した。測定に際しては、THFを展開溶媒に用い、ポリスチレンを内部標準に用いた。
【0058】
[例1]重合性化合物の製造例
[例1−1](a4)CF=CFO(CFC(=O)O(CHC(CFOH(以下、化合物(11)という。)の製造例
反応器内にNaF(2.1g,0.05mol)と(OH)(CHC(CFOH(5.6g,0.025mol)およびCHCl(20mL)を入れ、混合・撹拌しながら、25℃でGC純度81%のCF=CFO(CFC(=O)OF(9.0g,0.025mol)を20分かけて滴下した。滴下終了後、25℃でそのまま1時間撹拌した。濃縮した粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒は、ヘキサン:酢酸エチル=5:1を使用。)で精製し、GC純度98%の標記化合物(11)6.0gを得た。
【0059】
標記化合物(11)のNMRデータを、以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,CDCL,TMS)δ(ppm):1.99〜1.2.10(s,4H),3.23〜3.29(s,1H),4.38〜4.47(m,2H)。
19F−NMR(282.7MHz;CDCL,CFCl)δ(ppm):77.5(m,6F),−85.5〜−85.3(m,2F),−113.9〜−113.45(m,1F),−119.47〜−119.38(m,2F),−122.2〜−121.5(m,1F),−126.9(m,F),−135.8〜−135.2(m,1F)。
【0060】
[例1−2](b1)CF=CFO(CFC(=O)O(CH17CH(以下、 化合物(12)という。)の第1の製造例
反応器内にCH(CH17OH(4.1g,0.015mol)とCHCl(40mL)を入れて35℃で溶解した後、NaF(1.4g,0.034mol)を加えた。これを混合・撹拌しながら、30℃でGC純度81%のCF=CF(=O)(CFC(=O)OF(5.0g,0.014mol)を20分かけて滴下した。滴下終了後、30℃でそのまま1時間撹拌した。ろ過後濃縮した粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒は、ヘキサン:酢酸エチル=20:1を使用。)で精製し、GC純度75%の標記化合物(12)7.0gを得た。
【0061】
標記化合物(12)のNMRデータを、以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,CDCL,TMS)δ(ppm):0.81〜0.92(3H),1.21〜1.31(30H),1.67〜1.78(2H),4.33〜4.39(2H)。
19F−NMR(282.7MHz;CDCL,CFCl)δ(ppm):−85.5〜−85.3(m,2F),−114.01〜−113.46(m,1F),−119.47〜−119.36(m,2F),−122.25〜−121.51(m,1F),−126.76(m,2F),−135.7〜−135.1(m,1F)。
【0062】
[例1−3]化合物(12)の第2の製造例
反応器内にCH(CH17OH(13.2g,0.049mol)を入れて70℃で溶解した後、GC純度97%のCF=CFO(CFC(=O)OCH(10g,0.032mol)を10分かけて滴下した。その後、混合撹拌しながら70℃でHSO(0.5g,5.4mmol)を加え、80℃でそのまま15時間撹拌した。次いで、溶媒としてメタキシレンヘキサフルオライド30gを入れてろ過した後、濃縮した粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒は、ヘキサン:酢酸エチル=20:1を使用。)で精製し、GC純度98%の標記化合物(12)7.0gを得た。
【0063】
[例1−4](a3)CF=CFO(CFC(CFOH(以下、化合物(13)という。)の製造例
反応器にCsF(72g,0.47mol)とジエチルエーテル(380g)を入れ、0℃に冷却した後、(CHSiCF(61.1g,0.430mol)をゆっくり滴下した。系内に半量滴下した時点で、純度94%のCF=CFO(CFC(=O)OF(64g,0.20mol)を1時間かけてゆっくり滴下した。25℃で1時間撹拌した後、反応器内溶液を2N−HCl(400ml)でクエンチし、有機層を分液後、硫酸ナトリウムで脱水、ろ過、溶媒留去し、粗生成物を得た。粗生成物を減圧蒸留により精製して、標記化合物(13)43gを得た。
【0064】
標記化合物(13)のNMRデータを、以下に示す。
19F−NMR(282.7MHz;CDCL,CFCl)δ(ppm):−84.0〜−83.3(m,1F),−86.2〜−85.5(1F),−92.0(2F),−115.6(2F),−123.9(2F),−145.0〜−144.8(1F)。
【0065】
[例2]組成物の製造例
[例2−1]組成物(21)の製造例
耐圧反応器(内容積30mL、ガラス製)に、化合物(11)1.0gと、50質量%のR225溶液としてIPPの0.01gを仕込み、40℃で70時間重合反応を行った。反応器内溶液を回収し、60℃で2時間、80℃で2時間、100℃で20時間真空乾燥して組成物(21)0.2gを得た。
【0066】
組成物(21)をNMRで分析した結果、組成物(21)は、以下の式(21)で表される繰り返し単位からなる重合体であることがわかった。組成物(21)のMwは5700であり、Mnは4300であった。また、組成物(21)は、25℃でゴム状であり、アセトン、THF、4−メチル−2−ペンタノールにそれぞれ可溶であった。
【化6】

【0067】
次いで、組成物(21)を5質量%の4−メチル−2−ペンタノール溶液にした後、この溶液をスピンコート法によりシリコン基板の表面に塗布した。次いで、シリコン基板を加熱処理して、組成物(21)からなる130nm厚の薄膜を形成した。なお、シリコン基板の加熱処理は、100℃で90秒間加熱することにより行なった。
【0068】
次に、前記薄膜の水に対する接触角を測定したところ、92度であった。また、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法を用いて、前記薄膜のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、TMAHと記す。)2.38質量%に対する減膜速度を現像速度(単位:nm/s)として測定したところ、400nm/sであった。
【0069】
[例2−2]組成物(22)の製造例
耐圧反応器(内容積30mL、ガラス製)に、化合物(12)1.0gと、50質量%のR225溶液としてIPPの0.01gを仕込み、40℃で70時間重合反応を行った。反応器内溶液を回収し、60℃で2時間、80℃で2時間、100℃で20時間真空乾燥して組成物(22)0.7gを得た。
【0070】
組成物(22)をNMR分析した結果、組成物(22)は、以下の式(22)で表される繰り返し単位からなる重合体であることがわかった。組成物(22)のMwは8500であり、Mnは6200であった。また、組成物(22)は、25℃でゴム状であり、アセトン、THF、メタキシレンヘキサフルオライドにそれぞれ可溶であった。
【化7】

【0071】
次いで、この組成物(22)を3質量%のメタキシレンヘキサフルオライド溶液にした後、この溶液をスピンコート法によりシリコン基板の表面に塗布した。次いで、シリコン基板を加熱処理して、組成物(22)からなる200nm厚の薄膜を形成した。なお、シリコン基板の加熱処理は、100℃で90秒間加熱することにより行なった。
【0072】
次に、前記薄膜の水に対する接触角、転落角、および後退接触角をそれぞれ測定したところ、接触角89度、転落角4度、後退接触角83度であった。
【0073】
[例2−3]組成物(23)の製造例
耐圧反応器(内容積30mL、ガラス製)に、化合物(11)0.85g、第1の製造方法で得られた化合物(12)0.5g、および50質量%のR225溶液としてIPPの0.01gをそれぞれ仕込み、40℃で70時間重合反応を行った。反応器内溶液を回収し、60℃で2時間、80℃で2時間、100℃で20時間真空乾燥して組成物(23)0.6gを得た。
【0074】
組成物(23)をNMR分析した結果、組成物(23)は、化合物(11)であるCF=CFO(CFC(=O)O(CHC(CFOHの重合により形成される繰り返し単位(A4)と、化合物(12)であるCF=CFO(CFC(=O)O(CH17CHの重合により形成される繰り返し単位(B1)とのモル比が、(A4)/(B1)=55/45のものであることがわかった。組成物(23)のMwは4800であった。また、組成物(23)は、25℃でゴム状であり、アセトン、THF、4−メチル−2−ペンタノール、メタキシレンヘキサフルオライドにそれぞれ可溶であった。
【0075】
次に、組成物(23)を7質量%の4−メチル−2−ペンタノール溶液にした後、この溶液をスピンコート法によりシリコン基板の表面に塗布した。次いで、シリコン基板を加熱処理して、組成物(23)からなる100nm厚の薄膜を形成した。なお、シリコン基板の加熱処理は、100℃で90秒間加熱することにより行なった。
【0076】
次に、前記薄膜の水に対する接触角、転落角、および後退接触角をそれぞれ測定したところ、接触角86度、転落角25度、後退接触角47度であった。また、QCM法を用いて、前記薄膜のTMAH2.38質量%に対する減膜速度を現像速度(単位:nm/s)として測定したところ、200nm/sであった。
【0077】
[例2−4]組成物(24)の製造例
耐圧反応器(内容積30mL、ガラス製)に、化合物(13)2.0gと、50質量%のR225溶液としてIPPの0.02gを仕込み、40℃で70時間重合反応を行った。反応器内溶液を回収し、60℃で2時間、80℃で2時間、100℃で20時間真空乾燥して組成物(24)0.45gを得た。
【0078】
組成物(24)をNMR分析した結果、組成物(24)は、化合物(13)であるCF=CFO(CFC(CFOHの重合により形成される繰り返し単位からなる重合体であることがわかった。組成物(24)のMwは7300であった。また、組成物(24)は、アセトン、THF、4−メチル−2−ペンタノールにそれぞれ可溶であった。
【0079】
次に、組成物(24)を7質量%の4−メチル−2−ペンタノール溶液にした後、この溶液をスピンコート法によりシリコン基板の表面に塗布した。次いで、シリコン基板を加熱処理して、重合体(24)からなる150nm厚の薄膜を形成した。なお、シリコン基板の加熱処理は、100℃で90秒間加熱することにより行なった。
【0080】
次に、前記薄膜の水に対する接触角を測定したところ93度であった。また、QCM法を用いて、前記薄膜のTMAH2.38質量%に対する減膜速度を現像速度(単位:nm/s)として測定したところ、490nm/sであった。
【0081】
[例2−5]組成物(25)の製造例
耐圧反応器(内容積30mL、ガラス製)に、化合物(13)1.5g、化合物(12)0.5g、および50質量%のR225溶液としてIPPの0.018gをそれぞれ仕込み、40℃で70時間重合反応を行った。反応器内溶液を回収し、60℃で2時間、80℃で2時間、100℃で20時間真空乾燥して組成物(25)0.8gを得た。
【0082】
組成物(25)のMwは4500であった。また、組成物(25)は、アセトン、THF、4−メチル−2−ペンタノール、メタキシレンヘキサフルオライドにそれぞれ可溶であった。
【0083】
次に、組成物(25)を7質量%の4−メチル−2−ペンタノール溶液にして、この溶液をスピンコート法によりシリコン基板の表面に塗布した。次いで、シリコン基板を加熱処理して、組成物(25)からなる100nm厚の薄膜を形成した。なお、シリコン基板の加熱処理は、100℃で90秒間加熱することにより行なった。
【0084】
次に、前記薄膜の水に対する接触角、転落角、および後退接触角をそれぞれ測定したところ、接触角80度、転落角24度、後退接触角33度であった。また、QCM法を用いて、前記薄膜のTMAH2.38質量%に対する減膜速度を現像速度(単位:nm/s)として測定したところ、260nm/sであった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、水の浸入による感光性レジストの膨潤抑制、感光性レジスト成分の液状媒体中への溶出抑制のような液浸露光用レジスト保護膜特性に優れ、高撥水性で水に浸入されにくく、動的撥水性に特に優れた液浸露光用レジスト保護膜が提供される。また、この液浸露光用レジスト保護膜を用いることにより、マスクのパターン像を高解像度に転写可能な安定した液浸リソグラフィー法が実現される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(a1)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A1)と、下記式(a21)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A21)と、下記式(a22)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A22)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する第1の重合体を含むことを特徴とする液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
CF=CFO(CFC(=O)OH ………(a1)
CF=CFO(CFZ ………(a21)
CF=CFO(CF(C(=O)O)Z ………(a22)
ただし、式中の記号は、以下の意味を示す。
Z:式−C(CFOHで表される基、または式−C(CFOHで表される基を1つ以上有する、炭素数1から20の1価の有機基。
【請求項2】
下記式(a3)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A3)、下記式(a4)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A4)、および下記式(a5)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(A5)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する第1の重合体を含む、請求項1に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
CF=CFO(CFC(CFOH ………(a3)
CF=CFO(CFC(=O)O(CHC(CFOH ………(a4)
CF=CFO(CFC(=O)OCH(CH)CHC(CFOH(a5)
【請求項3】
前記第1の重合体は、下記式(b1)で表される化合物の重合により形成される繰り返し単位(B1)と、下記式(b2)で表される化合物の環化重合により形成される繰り返し単位(B2)との少なくとも一方をさらに有する、請求項1または2に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
CF=CFO(CFC(=O)OR ………(b1)
CF=CFOCFXCFCF=CF ………(b2)
ただし、式中の記号は、以下の意味を示す。
R:炭素数12から20の1価のアルキル基。
X:フッ素原子または炭素数1から3のパーフルオロアルキル基。
【請求項4】
前記第1の重合体は、前記繰り返し単位(A1)、前記繰り返し単位(A21)、前記繰り返し単位(A22)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を、これらの繰り返し単位の合計で全繰り返し単位に対して30〜95モル%含む、請求項1または3に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【請求項5】
前記第1の重合体は、前記繰り返し単位(A3)、前記繰り返し単位(A4)、前記繰り返し単位(A5)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を、これらの繰り返し単位の合計で全繰り返し単位に対して30〜95モル%含む、請求項2または3に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【請求項6】
前記第1の重合体は、前記繰り返し単位(B1)および/または前記繰り返し単位(B2)を、これらの繰り返し単位の合計で全繰り返し単位に対して5〜70モル%含む、請求項3に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の組成物と、
ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニルアミド基、アミノ基およびリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基を有する重合性化合物(c)の重合により形成される繰り返し単位(C)を有する第2の重合体を含有する液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【請求項8】
前記重合性化合物(c)が、下記式(c1)で表される化合物、下記式(c2)で表される化合物、下記式(c3)で表される化合物、および下記式(c4)で表される化合物から選択される少なくとも1種である、請求項7に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
CF=CF−Q−CH=CH ………(c1)
CH=CRC(=O)O−W(−C(CFOH)………(c2)
CH=CH−W(−C(CFOH) ………(c3)
【化1】

ただし、式中の記号は、下記の意味を示す。
Q:式−CFC(CF)(OH)(CH−で表される基、式−CHCH((CHC(CF(OH))(CH−で表される基、または式−CHCH(COOH)(CH−で表される基。
m、nおよびp:それぞれ独立に、0、1または2。
:水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のフルオロアルキル基。
およびW:それぞれ独立に、フッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の(r+1)価の炭化水素基。
r:1または2。
:単結合またはフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の2価の炭化水素基。
【請求項9】
前記繰り返し単位(A1)、前記繰り返し単位(A21)、前記繰り返し単位(A22)から選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する第1の重合体を、全重合体に対して0.1〜30質量%の割合で含む、請求項7または8に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【請求項10】
前記第1の重合体および前記第2の重合体の重量平均分子量が、いずれも1000〜50000である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物と、有機溶媒を含む液浸露光用レジスト保護膜用組成物。
【請求項12】
液浸リソグラフィー法によるレジストパターンの形成方法であって、
基板上の感光性レジスト膜表面に、請求項11に記載の液浸露光用レジスト保護膜用組成物を塗布した後、前記基板を乾燥してレジスト保護膜を形成する工程と、液浸露光工程、および現像工程を順に行うことにより、前記基板上にレジストパターンを形成することを特徴とするレジストパターンの形成方法。

【公開番号】特開2012−173501(P2012−173501A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35115(P2011−35115)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】