液液抽出システム
【課題】液液抽出の処理の時間を短縮するとともに、溶質の抽出量のばらつきを低減し、抽出効率を向上させることを目的とする。
【解決手段】互いに混ざり合わない液体である連続相及び分散相と、少なくとも前記連続相と前記分散相の何れかに溶解した溶質とが収められた容器と、前記容器が収容され、前記容器の周囲に水を有する水槽と、前記水槽の外側であって、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な面に配置された乳化用超音波発振源と、前記水槽の外側に配置された分離用超音波発振源と、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させる超音波発振源駆動回路と、前記乳化用超音波発振源、前記分離用超音波発振源の順番で、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させるように、前記超音波発振源駆動回路を制御する制御部とを備える。
【解決手段】互いに混ざり合わない液体である連続相及び分散相と、少なくとも前記連続相と前記分散相の何れかに溶解した溶質とが収められた容器と、前記容器が収容され、前記容器の周囲に水を有する水槽と、前記水槽の外側であって、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な面に配置された乳化用超音波発振源と、前記水槽の外側に配置された分離用超音波発振源と、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させる超音波発振源駆動回路と、前記乳化用超音波発振源、前記分離用超音波発振源の順番で、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させるように、前記超音波発振源駆動回路を制御する制御部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶質の分離精製を行う液液抽出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液液抽出とは、互いに混ざり合わない液体である連続相と分散相の一方に溶解している溶質を他方へ移動させる、溶質の分離精製法である。この液液抽出は、連続相と分散相との界面積を大きくして抽出効率を向上するために、連続相の中に分散相の油滴を生成する乳化、一方の相に溶解している溶質をもう一方の相へ移動させる抽出,油滴を凝集して連続相と分散相の二相に分ける分離の三工程からなる。現行法(以下バッチ法という)では、この三工程は、分液漏斗を用いて行っており、乳化では手動の振とう,抽出・分離では静置を行っている。
【0003】
一方、超音波照射による乳化,分離技術があり、液液抽出に用いられる。
【0004】
超音波照射を用いた液液抽出には、発振周波数の異なる乳化用と分離用の二つの超音波発振源と、これらを個別に外側下方に配置している二つの水槽と、溶液を収容した容器を用いる。
【0005】
超音波照射による乳化は、容器中の連続相と分散相への超音波照射により生成した分散相の油滴が、同じく超音波照射で発生したキャビテーション気泡により微小化されることで行われる(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
一方、超音波照射による分離は、乳化液への超音波照射により超音波の節または腹に生成した油滴の凝集体が、超音波の停止により比重差で連続相と分散相の二相に分かれることで行われる(例えば、特許文献2,3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−293537号公報
【特許文献2】特開平08−010509号公報
【特許文献3】特開2007−136271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バッチ法では、乳化を振とう力の小さい手動振とうで、分離を静置で行うため、処理時間が長いという課題がある。また、乳化において、手動の振とうのため作業毎の振とうの再現性が低く抽出量のばらつきが大きいという課題もある。さらに、乳化において、振とう力が小さいために、生成される油滴径が小さく抽出効率が低いという課題もある。
【0009】
また、超音波照射を用いた液液抽出には、発振周波数の異なる乳化用と分離用の二つの超音波発振源と、これらを個別に外側下方に配置している二つの水槽と、溶液を収容した容器を用いる。そのため、容器を水槽間で移動させる必要があり、連続処理できないという課題がある。また、この移動により、時間がかかるという課題もある。さらに、水槽が大型化するという課題もある。
【0010】
さらに、超音波照射を用いた液液抽出を連続処理,短時間化,小型化するためには、乳化用超音波発振源と分離用超音波発振源とを、一つの水槽に配置しなければならない。特許文献2では、この超音波発振源が水槽の下方に配置されている。しかし、一つの水槽の下方に二つの超音波発振源を、重ね合わせ又は横並びで配置した場合、両方の性能を維持することは困難である。そのため、一つの水槽に乳化用超音波発振源と分離用超音波発振源とを配置する際に、乳化と分離の両方の性能を落とさないことが課題である。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、液液抽出の処理の時間を短縮するとともに、溶質の抽出量のばらつきを低減し、抽出効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、互いに混ざり合わない液体である連続相及び分散相と、少なくとも前記連続相と前記分散相の何れかに溶解した溶質とが収められた容器と、前記容器が収容され、前記容器の周囲に水を有する水槽と、前記水槽の外側であって、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な面に配置された乳化用超音波発振源と、前記水槽の外側に配置された分離用超音波発振源と、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させる超音波発振源駆動回路と、前記乳化用超音波発振源,前記分離用超音波発振源の順番で、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させるように、前記超音波発振源駆動回路を制御する制御部とを備える。
【0013】
さらに、前記分離用超音波発振源は、前記連続相と前記分散相との界面と略直交する面に配置される。
【0014】
さらに、前記水槽を、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な方向に移動させる移動機構を備え、前記分離用超音波発振源は、前記連続相と前記分散相の界面と略平行な面に設けられる。
【0015】
さらに、前記容器の壁面が、前記乳化用超音波発振源と略平行及び略直交となるように配置され、前記容器の壁面の厚さは、前記乳化用超音波発振源又は前記分離用超音波発振源から発せられた超音波の半波長の整数倍である。
【0016】
さらに、前記水槽の壁面の厚さは、前記乳化用超音波発振源又は前記分離用超音波発振源から発せられた超音波の半波長の整数倍である。
【0017】
また、互いに混ざり合わない液体である連続相と分散相との何れかに溶解した溶質を他方へ移動させて液液抽出を行う液液抽出システムであって、前記連続相の中に前記分散相の油滴を生成して、乳化するマイクロ流路を有するマイクロリアクタと、前記マイクロリアクタからの前記連続相と前記分散相と前記溶質とが収められた容器と、前記容器を収容し、前記容器の周囲に水を有する水槽と、前記水槽の外側に配置された分離用超音波発振源と、前記乳化が終了した後に、前記分離用超音波発振源を動作させる制御部とを備える。
【0018】
さらに、前記水槽の外側であって、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な面に配置された乳化用超音波発振源を備え、前記制御部は、前記乳化用超音波発振源,前記分離用超音波発振源の順で、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バッチ法での処理の時間を短縮するとともに、溶質の抽出量のばらつきを低減し、抽出効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1による液液抽出システムを示す図である。
【図2】実施例1による乳化用超音波発振源と分離用超音波発振源とが、連続相と分散相との界面と略平行な面に配置された液液抽出システムを示す図である。
【図3】実施例1による液液抽出システムのタイムチャートを示す図である。
【図4】実施例1による液液抽出システムの抽出効率を示す図である。
【図5】実施例2による液液抽出システムを示す図である。
【図6】実施例2による液液抽出システムの抽出効率を示す図である。
【図7】実施例3による液液抽出システムを示す図である。
【図8】実施例3による液液抽出システムの抽出効率を示す図である。
【図9】実施例4の現行の全血液中の薬剤検出のフローチャートである。
【図10】実施例4による全血液中の薬剤検出装置を示す図である。
【図11】実施例5によるマイクロリアクタと液液抽出システムをハイブリッド化した装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて実施例について説明する。
【0022】
まず、図1〜図4を用いて、実施例1について説明する。実施例1では、連続相と分散相の乳化は超音波を用いた乳化技術で行い、分散相の分離は超音波を用いた分離技術で行う。
【0023】
図1は、実施例1を示す図である。図1に示す様に、実施例1は、互いに混ざり合わない液体である連続相101及び分散相102,連続相101と分散相102の少なくとも何れか一方に溶解した溶質103,連続相101と分散相102と溶質103とを収める容器104,容器104を収容するとともに、容器104の周囲に水105を入れた水槽106,連続相101と分散相102を乳化するための乳化用超音波発振源107,乳化と溶質103の抽出の後工程である連続相101と分散相102の分離のための分離用超音波発振源108,乳化用超音波発振源107と分離用超音波発振源108とを駆動する超音波発振源駆動回路109,超音波発振源駆動回路109を動作する制御部110からなる。
【0024】
図1,図2に示す、実施例1の各要素の詳細を以下に述べる。
【0025】
連続相101及び分散相102は、互いに混ざり合わない液体である。連続相101と分散相102の何れか一方には、溶質103が溶解している。溶質103は、液液抽出により、他方へ移動する。
【0026】
容器104は、その壁面が連続相101と分散相102との界面と略平行及び略直交するように配置される。乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108に面する壁面の厚さd1及びd2は、超音波の減衰を最小限に抑えるために、少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。
【0027】
水槽106は、超音波が水槽106と乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、材質を乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108とのインピーダンス差が小さいものが望ましい。また、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108に面している壁面の厚さd3及びd4は、超音波の減衰を最小限に抑えるために、少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。
【0028】
乳化用超音波発振源107は、連続相101と分散相102の乳化のための乳化用の超音波を発振する。乳化用の超音波は、連続相101と分散相102の界面に波頭を形成するとともに、連続相101のキャビテーション気泡を発生するものとする。また、乳化用超音波発振源107は、水槽106の外側に連続相101と分散相102との界面と略平行な面に配置される。また、分離用超音波発振源108の発振開始前に動作し、連続相101中に分散相102の油滴を生成する。材質は、超音波が水槽106と乳化用超音波発振源107との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、水槽106とのインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0029】
分離用超音波発振源108は、乳化と溶質103の抽出の後の工程である連続相101と分散相102を分離する分離用の超音波を発振する。この分離用の超音波は、乳化により生成した油滴を超音波の節又は腹に凝集するとともに、連続相101のキャビテーション気泡を発生しないものとする。また、分離用超音波発振源108は、水槽106の外側に連続相101と分散相102との界面と略直交する面に配置される。また、分離用超音波発振源108は、乳化用超音波発振源107の動作終了後に動作し、連続相101と分散相102を分離する。材質は、超音波が水槽106と分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、水槽106とのインピーダンス差の小さいものが望ましい。また、分離用超音波発振源108は、乳化用超音波発振源107と略直交する位置に必ずしも配置されなくても良く、図2に示す様に、乳化用超音波発振源107との移動機構111により連続相101と分散相102との界面と略平行な面に配置しても良い。図2のシステムは、乳化用の超音波及び分離用の超音波を共に水槽106の下方から照射するために、移動機構111により超音波の照射のタイミングに合わせて水槽106を移動させ、水槽106の下方へ乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108を配置したものである。この水槽106が移動する方向は、連続相101と分散相102との界面と略平行な方向である。また、水槽106の移動は、ターンテーブルを用いて180度回転させる回転式としてもよい(図示せず)。
【0030】
超音波発振源駆動回路109は、電圧を発生して、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108を駆動する。
【0031】
制御部110は、超音波発振源駆動回路109を動作する。
【0032】
図3は、実施例1の液液抽出における乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108の駆動のタイムチャートを示す図である。以下、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108駆動のタイムチャートの詳細を説明する。
【0033】
まず、照射電力Aで乳化用超音波発振源107を時間0からt1まで駆動して、乳化用超音波により連続相101中に分散相102の油滴を生成して乳化する。照射電力Aは、乳化用超音波の周波数で連続相101と分散相102を乳化する電力である。照射電力A及び照射時間t1は、連続相101と分散相102の種類,液量,液量比等で決まる。
【0034】
乳化後、時間t1からt2まで静置して連続相101又は分散相102に溶解している溶質103を他方へ移動して抽出する。この抽出時間(t2−t1)は、連続相101と分散相102の種類,液量、及び液量比等で決まる。
【0035】
そして、照射電力Bで、分離用超音波発振源108を時間t2からt3まで駆動して、分離用の超音波により油滴を凝集して、連続相101と分散相102の二相に分けて分離する。この照射電力B及び分離時間(t3−t2)は、分離用の超音波の周波数で連続相101と分散相102を乳化する電力であり、連続相101と分散相102の種類,液量、及び液量比等で決まる。
【0036】
すなわち、乳化用超音波発振源107の動作終了後に、分離用超音波発振源108が動作する。また、超音波発振源駆動回路109は、乳化用超音波発振源107,分離用超音波発振源108の順番で、乳化用超音波発振源107と分離用超音波発振源108とを駆動させる。また、この駆動を制御するにあたり、超音波発振源駆動回路109を制御する制御部110を備える。
【0037】
図4は、実施例1による、水(連続相)からヘキサン(分散相)へのフタル酸エステルの液液抽出効率を示す図である。図4では、バッチ法と実施例1で液液抽出を行って抽出量を測定し、抽出量に対する注入量の比から抽出効率を算出して両者を比較している。また、実施例1の乳化用の超音波の照射は、周波数0.16MHz,電力400W,照射時間15分で行い、分離用の超音波の照射は、周波数1.6MHz,電力400W,照射時間20分で行った。
【0038】
ここでは、連続相101の液量は100ml、分散相102の液量は2.5mlとし、溶質103は連続相101に100μg溶解した。
【0039】
また、容器104は、材質をガラスとし、乳化用超音波発振源107に面している容器104の壁面の厚さd1を周波数0.16MHzのガラス中(音速5,640(m/s))の半波長である18mmとした。また、分離用超音波発振源108に面している容器104の壁面の厚さd2を周波数1.6MHzのガラス中(音速5,640(m/s))の半波長である1.8mmとした。
【0040】
水槽106は、材質をステンレスとし、乳化用超音波発振源107に面している容器104の壁面の厚さd3を、0.16MHz超音波のステンレス中(音速5,790(m/s))の半波長である18mmとした。また、分離用超音波発振源108に面している容器104の壁面の厚さd2を、1.6MHz超音波のステンレス中(音速5,790(m/s))の半波長である1.8mmとした。
【0041】
図4に示す様に、抽出効率はバッチ法で77.5%であったのに対し、実施例1では82.2%となり、バッチ法と同等以上の抽出効率を確認した。
【0042】
図5,図6を用いて、実施例2について説明する。実施例2では、連続相と分散相の乳化はマイクロ流路を有するマイクロリアクタを用いて行い、分散相の分離は超音波を用いて行う。
【0043】
図5は、実施例2を示す図である。図5に示す様に、実施例2は、互いに混ざり合わない液体である連続相101及び分散相102,連続相101又は分散相102の一方に溶解している溶質103,連続相101及び分散相102を送液するシリンジ201,シリンジ201中の液体を送液するシリンジポンプ202,マイクロ流路を有し連続相101と分散相102を乳化して乳化液203を生成するマイクロリアクタ204,乳化液203及び溶質103を収める容器205,容器205を収容するとともに、容器205の周囲に水105を入れた水槽206,乳化及び溶質103の抽出した後の工程である連続相101と分散相102の分離のための分離用超音波発振源108,分離用超音波発振源108及びシリンジポンプ202を駆動する駆動回路207,駆動回路207を動作する制御部208からなる。
【0044】
図5に示す、実施例2の各要素の詳細を以下に述べる。
【0045】
連続相101及び分散相102は、互いに混ざり合わない液体である。連続相101と分散相102の何れか一方には、溶質103が溶解しており、溶質103は液液抽出により他方へ移動する。
【0046】
分離用超音波発振源108は、乳化及び溶質103の抽出した後の工程である連続相101と分散相102の分離のための分離用の超音波を発振し、水槽106の外側に連続相101と分散相102との界面と略直交する面に配置される。この分離用の超音波は、乳化により生成した油滴を超音波の節又は腹に凝集するとともに、連続相101のキャビテーション気泡を発生しないものとする。乳化用超音波発振源107の動作終了後に動作し、連続相101と分散相102を分離する。また、材質は、超音波が水槽106と分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、水槽106とのインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0047】
シリンジ201は、連続相101,分散相102,溶質103を収め、マイクロリアクタ204中に各液体を送液する。
【0048】
シリンジポンプ202は、シリンジ201中の連続相101と分散相102とをマイクロリアクタ204中に送液するために駆動する。
【0049】
乳化液203は、マイクロリアクタ204中で連続相101と分散相102を乳化して生成する。
【0050】
マイクロリアクタ204は、流路を有し、連続相101と分散相102を乳化して、乳化液203を生成する。
【0051】
容器205は、分離用超音波発振源108に面する壁面の厚さを、超音波の減衰を最小限に抑えるために、分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。
【0052】
水槽206の分離用超音波発振源108と接する壁面の厚さは、超音波が共振して減衰を最小限に抑えるために、分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。また、材質は、超音波が水槽206と分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、分離用超音波発振源108のインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0053】
駆動回路207は、シリンジポンプ202及び分離用超音波発振源108を駆動する。
【0054】
制御部110は、駆動回路207を動作する。
【0055】
図5に示す実施例2での液液抽出の手順を以下に述べる。
【0056】
まず、連続相101,分散相102、及び連続相101又は分散相102の何れかに溶解した溶質103をシリンジ201中にそれぞれ収める。その後、乳化するために、シリンジ201中の連続相101と分散相102と溶質103とを、駆動回路207と制御部208とでシリンジポンプ202を駆動してマイクロリアクタ204中に送液する。マイクロリアクタ204の中で、連続相101と分散相102を乳化して乳化液203を生成する。目的量の乳化液203の生成を確認した後、シリンジポンプ202を停止して乳化を終了する。続いて、溶質103を他方へ移動させるために一定時間静置する。そして、連続相101と分散相102を分離するために、駆動回路207及び制御部208で分離用超音波発振源108を一定時間駆動して、連続相101中に分散相102の油滴の凝集体を形成する。目的量の凝集体の形成を確認した後、分離用超音波発振源108の駆動を停止して分離を終了する。
【0057】
図6は、実施例2による、水(連続相)からヘキサン(分散相)へのフタル酸エステルの液液抽出の効率を示す図である。図4では、バッチ法と実施例2での液液抽出を行って抽出量を測定し、抽出量に対する注入量の比から抽出効率を算出して両者を比較している。また、実施例2において、乳化用の超音波の照射は周波数0.16MHz,電力400W,分離用の超音波照射は周波数1.6MHz,電力400Wで行った。
【0058】
ここでは、連続相101の液量は100ml、分散相102の液量は2.5mlとし、溶質103は連続相101に100μg溶解した。
【0059】
また、容器104は、材質をガラスとし、分離用超音波発振源108に面している容器104の壁面の厚さd2を周波数1.6MHzのガラス中(音速5,640(m/s))の半波長である1.8mmとした。
【0060】
水槽106は、材質をステンレスとし、分離用超音波発振源108に面している容器104の壁面の厚さd2を、1.6MHz超音波のステンレス中(音速5,790(m/s))の半波長である1.8mmとした。
【0061】
図6に示す様に、抽出効率はバッチ法で77.5%であったのに対し、実施例2のシステムでは80.0%と、バッチ法と同等以上の抽出効率を確認した。
【0062】
図7,図8を用いて、実施例3について説明する。実施例3は、連続相と分散相の乳化は流路を有するマイクロリアクタ及び超音波を用いた乳化技術で行い、分散相の分離は超音波を用いた分離技術で行う。
【0063】
図7は、実施例3を示す図である。図7に示す様に、実施例3は、互いに混ざり合わない液体である連続相101及び分散相102,連続相101又は分散相102の何れか一方に溶解している溶質103,連続相101及び分散相102を送液するシリンジ201,シリンジ201中の液体を送液するシリンジポンプ202,流路を有し連続相101と分散相102を乳化して乳化液203を生成するマイクロリアクタ204,乳化液203及び溶質103を収める容器205,容器205を収容するとともに、容器205の周囲に水105を入れた水槽106,マイクロリアクタ204で生成された乳化液203中の油滴を更に微小化するための乳化用超音波発振源107,乳化と溶質103を抽出した後の工程である連続相101と分散相102の分離のための分離用超音波発振源108,乳化用超音波発振源107と分離用超音波発振源108とシリンジポンプ202とを駆動する駆動回路207,駆動回路207を動作する制御部208からなる。
【0064】
図7に示す、実施例3の各要素の詳細を以下に述べる。
【0065】
連続相101及び分散相102は、互いに混ざり合わない液体である。連続相101及び分散相102の何れか一方には、溶質103が溶解しており、溶質103は液液抽出により他方へ移動する。
【0066】
容器104は、その壁面が連続相101と分散相102との界面と略平行及び略直交するように配置される。その壁面の厚さは、超音波の減衰を最小限に抑えるために、少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。
【0067】
水槽106は、超音波が共振して減衰を最小限に抑えるために、その壁面の厚さを少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。また、材質は、超音波が水槽106と乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108のインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0068】
乳化用超音波発振源107は、連続相101と分散相102のための乳化用の超音波を発振する。乳化用の超音波は、連続相101と分散相102との界面に波頭を形成するとともに、連続相101のキャビテーション気泡を発生するものとする。乳化用超音波発振源107は、水槽106の外側に、連続相101と分散相102との界面と略平行な面に配置される。また、分離用超音波発振源108の発振開始前に動作し、連続相101中に分散相102の油滴を生成する。また、材質は、超音波が水槽106と乳化用超音波発振源107との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、水槽106とのインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0069】
分離用超音波発振源108は、乳化及び溶質103の抽出した後の工程である連続相101と分散相102の分離のための分離用の超音波を発振する。分離用の超音波は、乳化により生成された油滴を超音波の節又は腹に凝集するとともに、連続相101のキャビテーション気泡を発生しないものとする。分離用超音波発振源108は、水槽106の外側に連続相101と分散相102との界面と略直交する面に配置される。乳化用超音波発振源107の動作終了後に動作し、連続相101と分散相102を分離する。また、材質は、超音波が水槽106と分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、水槽106とのインピーダンス差の小さいものが望ましい。また、分離用超音波発振源108は、図1に示す様に乳化用超音波発振源107と略直交する位置に必ずしも配置されなくても良く、図2に示す様に、乳化用超音波発振源107との移動機構111により連続相101と分散相102との界面と略平行な面に配置しても良い。
【0070】
シリンジ201は、連続相101,分散相102及び溶質103を収め、マイクロリアクタ204中に連続相101及び分散相102を送液する。
【0071】
シリンジポンプ202は、シリンジ201中の連続相101及び分散相102をマイクロリアクタ204中に送液するために駆動する。
【0072】
乳化液203は、マイクロリアクタ204中で連続相101と分散相102を乳化して生成される。
【0073】
マイクロリアクタ204は、流路を有し、連続相101と分散相102を乳化して、乳化液203を生成する。
【0074】
駆動回路207は、シリンジポンプ202,乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108を駆動する。
【0075】
制御部208は、駆動回路207を動作する。
【0076】
図7に示す、実施例3での液液抽出の手順を以下に述べる。
【0077】
まず、連続相101,分散相102、及び連続相101又は分散相102の何れかに溶解した溶質103をシリンジ201中にそれぞれ収める。その後、乳化するために、シリンジ201中の連続相101,分散相102及び溶質103を、駆動回路207と制御部208とでシリンジポンプ202を駆動してマイクロリアクタ204中に送液する。マイクロリアクタ204中で連続相101と分散相102を乳化して乳化液203を生成する。目的量の乳化液203の生成を確認した後、シリンジポンプ202を停止する。そして、駆動回路207と制御部208とで乳化用超音波発振源107を駆動し、乳化液203中の油滴を微小化する。目的径への油滴の微小化を確認した後、乳化用超音波発振源107を停止して乳化を終了する。続いて、溶質103を他方へ移動させるために一定時間静置する。そして、連続相101と分散相102を分離するために、駆動回路207及び制御部208で分離用超音波発振源108を一定時間駆動して、連続相101中に分散相102の油滴の凝集体を形成する。目的量の凝集体の形成を確認した後、分離用超音波発振源108の駆動を停止して分離を終了する。
【0078】
図8は、実施例3による、水(連続相)からヘキサン(分散相)へのフタル酸エステルの液液抽出効率を示す図である。図8では、バッチ法と実施例3を用いて液液抽出を行って抽出量を測定し、抽出量に対する注入量の比から抽出効率を算出して両者を比較している。また、実施例3の乳化用の超音波の照射は、周波数0.16MHz及び電力400W、分離用の超音波の照射は周波数1.6MHz,電力400Wで行った。
【0079】
ここで、連続相101の液量は100ml,分散相102の液量は2.5mlとし、溶質103は連続相101に100μg溶解した。
【0080】
また、容器104は、材質をガラスとし、乳化用超音波発振源107に面している容器104の壁面の厚さd1を周波数0.16MHzのガラス中(音速5,640(m/s))の半波長である18mmとした。また、分離用超音波発振源108に面している容器104の壁面の厚さd2を周波数1.6MHzのガラス中(音速5,640(m/s))の半波長である1.8mmとした。
【0081】
水槽106は、材質をステンレスとし、乳化用超音波発振源107に面している容器104の壁面の厚さd3を、0.16MHz超音波のステンレス中(音速5,790(m/s))の半波長である18mmとした。また、分離用超音波発振源108に面している容器104の壁面の厚さd2を、1.6MHz超音波のステンレス中(音速5,790(m/s))の半波長である1.8mmとした。
【0082】
図8に示す様に、抽出効率はバッチ法で77.5%であったのに対し、実施例3で89.2%と、バッチ法と同等以上の抽出効率を確認した。
【0083】
図9,図10を用いて、実施例4について説明する。
【0084】
実施例4は、全血液中の薬剤の検出に、実施例1〜実施例3の何れかの液液抽出システムを適用したものである。実施例4により、現行では手作業、個々の装置で行っている全血液中の薬剤の検出を、自動,単一装置で行うことができる。
【0085】
図9には、現行の全血液中の薬剤検出のフローチャートを示す。図9に示す様に、全血液中の薬剤の検出は、液液抽出及び固相抽出によりタンパク質等の薬剤以外の物質を除いた後に、LC/MS(Liquid Chromatography/Mass Spectromater)の全三工程で行われている。現状では、これら全工程を手作業,個々の装置で行っている。
【0086】
図10は、実施例4を示す図である。この実施例4は、図9に示す、手作業,個々の装置で行っている全血液中の薬剤検出工程を、自動化,単一装置化したものである。図10に示す様に、実施例4は、液液抽出部401,固相抽出部402,LC/MS部403,制御部404からなる。図10では、液液抽出部401として実施例1の液液抽出システムを用いるが、実施例2又は3の液液抽出システムを用いても良い。
【0087】
図10に示す、液液抽出部401,固相抽出部402,LC/MS部403の各要素の詳細を以下に述べる。
【0088】
液液抽出部401は、連続相101,分散相102,溶質103,シリンジ201,シリンジポンプ202,容器104,水槽106,乳化用超音波発振源107,分離用超音波発振源108からなる。
【0089】
固相抽出部402は、液液抽出部401で生成した容器104中の粗精製サンプルを回収する回収用シリンジ405,液液抽出後の粗精製サンプルからタンパク質等の薬剤以外の物質を除去する固相抽出カラム406,容器104,回収用シリンジ405及び固相抽出カラム406間の通水方向を制御する三方弁407からなる。
【0090】
LC/MS部403は、固相抽出後の精製サンプルからタンパク質等の薬剤以外の物質を除去する液体クロマトグラフィーカラム408,薬剤を検出する検出部409からなる。
【0091】
制御部404は、乳化用超音波発振源107,分離用超音波発振源108,シリンジポンプ202を駆動し、検出部409のデータを処理する。
【0092】
図10に示す、実施例4での全血液中の薬剤検出の手順を以下に述べる。
【0093】
第一に、液液抽出部401で、実施例1〜3の何れかと同様の手順で液液抽出を行い、タンパク質等の薬剤以外の物質を粗く除いた、粗精製サンプルを得る。
【0094】
第二に、三方弁407を容器104と回収用シリンジ405間で開放とし、容器104中の粗精製サンプルを、シリンジポンプ202を用いて回収用シリンジ405に回収する。回収後、三方弁407を回収用シリンジ405と固相抽出カラム406間で開放とし、粗精製サンプルを、シリンジポンプ202を用いて固相抽出カラム406に送液して固相抽出を行い、タンパク質等の薬剤以外の物質を細かく除いた精製サンプルを得る。
【0095】
第三に、固相抽出後の精製サンプルを液体クロマトグラフィーカラム408に送液して液体クロマトグラフィーを行い、検出に用いる検出サンプルを得る。
【0096】
検出サンプル中の薬剤を検出部409で検出し、制御部404で検出データを処理する。
【0097】
また、実施例1と同様に、容器104は、その壁面が連続相101と分散相102との界面と略平行及び略直交するように配置される。その壁面の厚さは、超音波の減衰を最小限に抑えるために、少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。さらに、水槽106は、超音波が共振して減衰を最小限に抑えるために、その壁面の厚さを少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。また、材質は、超音波が水槽106と乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108のインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0098】
図11を用いて、実施例5について説明する。
【0099】
実施例5は、マイクロリアクタと液液抽出システムをハイブリッド化した装置である。
【0100】
実施例5では、マイクロリアクタで乳化液を生成した後に、乳化用の超音波を照射することで乳化液中の油滴をさらに微小化するため、マイクロリアクタ単独よりも抽出効率が向上する。さらに、超音波照射により、油滴の分離を促進するため短時間化できる。
【0101】
図11は、実施例5を示す図である。図11に示す様に、実施例5は、マイクロリアクタ部501,液液抽出部502,制御部503からなる。
【0102】
図11に示す、マイクロリアクタ部501,液液抽出部502の各要素の詳細を以下に述べる。
【0103】
マイクロリアクタ部501は、連続相101,分散相102,溶質103,シリンジ201,シリンジポンプ202,マイクロリアクタ204,マイクロリアクタ204中の温度をコントロールする温度調節ユニット504からなる。
【0104】
液液抽出部502は、乳化液203,容器205,水槽106,乳化用超音波発振源107,分離用超音波発振源108からなる。図11では、水槽106に、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108を配置している。しかし、乳化用超音波発振源107を配置せずに、分離用超音波発振源108のみを配置しても良い。
【0105】
制御部503では、乳化用超音波発振源107,分離用超音波発振源108,シリンジポンプ202の駆動を行うとともに、駆動を制御する。
【0106】
図11に示す、実施例5での液液抽出の手順を以下に述べる。
【0107】
第一に、連続相101,分散相102、及び連続相101又は分散相102の何れかに溶解した溶質103をシリンジ201中にそれぞれ収める。そして、シリンジ201中の液体を、シリンジポンプ202を制御部503で駆動してマイクロリアクタ204中に送液し、マイクロリアクタ204の中で連続相101と分散相102を乳化して乳化液203を生成する。目的液量の乳化液203の生成を確認した後、シリンジポンプ202を停止して乳化を終了する。
【0108】
第二に、制御部503で乳化用超音波発振源107を駆動させ、乳化液203中の油滴を微小化する。すなわち、制御部503は、乳化が終了した後に、分離用超音波発振源108を動作させる。乳化用超音波発振源107の駆動は必ずしも必要でなく、マイクロリアクタ204単体で目的径の油滴の生成を確認した場合は駆動しなくても良い。目的径への油滴の生成を確認した後、乳化用超音波発振源107を停止して乳化を終了する。そして、溶質103を他方へ移動させるために一定時間静置する。その後、連続相101と分散相102を分離するために、制御部503で分離用超音波発振源108を一定時間駆動して、連続相101中に分散相102の油滴の凝集体を形成する。目的量の凝集体の形成を確認した後、分離用超音波発振源108の駆動を停止して分離を終了する。
【0109】
すなわち、実施例5は、互いに混ざり合わない液体である連続相101と分散相102との何れかに溶解した溶質103を他方へ移動させて液液抽出を行う液液抽出システムであって、連続相101の中に分散相102の溶質103を生成して、乳化するマイクロ流路を有するマイクロリアクタ204と、マイクロリアクタ204から送液された連続相101と分散相102と溶質103とが収められた容器205と、容器205を収容し、容器205の周囲に水を有する水槽106と、水槽106の外側に配置された分離用超音波発振源108と、乳化が終了した後に、分離用超音波発振源108を動作させる制御部503とを備える。また、制御部503は、乳化用超音波発振源107,分離用超音波発振源108の順で、乳化用超音波発振源107と分離用超音波発振源108とを駆動させる。
【0110】
実施例1と同様に、容器104は、その壁面が連続相101と分散相102との界面と略平行及び略直交するように配置される。その壁面の厚さは、超音波の減衰を最小限に抑えるために、少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。水槽106は、超音波が共振して減衰を最小限に抑えるために、その壁面の厚さを少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。また、材質は、超音波が水槽106と乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108のインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0111】
以上の実施例によれば、液液抽出の時間を短縮するとともに、溶質の抽出量のばらつきを向上させ、抽出効率を向上させることが可能となる。さらに、超音波を用いた乳化分離を用いた液液抽出の連続処理及び短時間化するとともに、液液抽出システムの小型化が可能となる。また、乳化及び分離の両方の性能を落とさずに、一つの水槽に乳化用及び分離用二つの超音波発振源を配置することが可能となる。
【符号の説明】
【0112】
101 連続相
102 分散相
103 溶質
104,205 容器
105 水
106,206 水槽
107 乳化用超音波発振源
108 分離用超音波発振源
109 超音波発振源駆動回路
110,208,404,503 制御部
111 移動機構
201 シリンジ
202 シリンジポンプ
203 乳化液
204 マイクロリアクタ
207 駆動回路
401,502 液液抽出部
402 固相抽出部
403 LC/MS部
405 回収用シリンジ
406 固相抽出カラム
407 三方弁
408 液体クロマトグラフィーカラム
409 検出部
501 マイクロリアクタ部
504 温度調節ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶質の分離精製を行う液液抽出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液液抽出とは、互いに混ざり合わない液体である連続相と分散相の一方に溶解している溶質を他方へ移動させる、溶質の分離精製法である。この液液抽出は、連続相と分散相との界面積を大きくして抽出効率を向上するために、連続相の中に分散相の油滴を生成する乳化、一方の相に溶解している溶質をもう一方の相へ移動させる抽出,油滴を凝集して連続相と分散相の二相に分ける分離の三工程からなる。現行法(以下バッチ法という)では、この三工程は、分液漏斗を用いて行っており、乳化では手動の振とう,抽出・分離では静置を行っている。
【0003】
一方、超音波照射による乳化,分離技術があり、液液抽出に用いられる。
【0004】
超音波照射を用いた液液抽出には、発振周波数の異なる乳化用と分離用の二つの超音波発振源と、これらを個別に外側下方に配置している二つの水槽と、溶液を収容した容器を用いる。
【0005】
超音波照射による乳化は、容器中の連続相と分散相への超音波照射により生成した分散相の油滴が、同じく超音波照射で発生したキャビテーション気泡により微小化されることで行われる(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
一方、超音波照射による分離は、乳化液への超音波照射により超音波の節または腹に生成した油滴の凝集体が、超音波の停止により比重差で連続相と分散相の二相に分かれることで行われる(例えば、特許文献2,3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−293537号公報
【特許文献2】特開平08−010509号公報
【特許文献3】特開2007−136271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バッチ法では、乳化を振とう力の小さい手動振とうで、分離を静置で行うため、処理時間が長いという課題がある。また、乳化において、手動の振とうのため作業毎の振とうの再現性が低く抽出量のばらつきが大きいという課題もある。さらに、乳化において、振とう力が小さいために、生成される油滴径が小さく抽出効率が低いという課題もある。
【0009】
また、超音波照射を用いた液液抽出には、発振周波数の異なる乳化用と分離用の二つの超音波発振源と、これらを個別に外側下方に配置している二つの水槽と、溶液を収容した容器を用いる。そのため、容器を水槽間で移動させる必要があり、連続処理できないという課題がある。また、この移動により、時間がかかるという課題もある。さらに、水槽が大型化するという課題もある。
【0010】
さらに、超音波照射を用いた液液抽出を連続処理,短時間化,小型化するためには、乳化用超音波発振源と分離用超音波発振源とを、一つの水槽に配置しなければならない。特許文献2では、この超音波発振源が水槽の下方に配置されている。しかし、一つの水槽の下方に二つの超音波発振源を、重ね合わせ又は横並びで配置した場合、両方の性能を維持することは困難である。そのため、一つの水槽に乳化用超音波発振源と分離用超音波発振源とを配置する際に、乳化と分離の両方の性能を落とさないことが課題である。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、液液抽出の処理の時間を短縮するとともに、溶質の抽出量のばらつきを低減し、抽出効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、互いに混ざり合わない液体である連続相及び分散相と、少なくとも前記連続相と前記分散相の何れかに溶解した溶質とが収められた容器と、前記容器が収容され、前記容器の周囲に水を有する水槽と、前記水槽の外側であって、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な面に配置された乳化用超音波発振源と、前記水槽の外側に配置された分離用超音波発振源と、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させる超音波発振源駆動回路と、前記乳化用超音波発振源,前記分離用超音波発振源の順番で、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させるように、前記超音波発振源駆動回路を制御する制御部とを備える。
【0013】
さらに、前記分離用超音波発振源は、前記連続相と前記分散相との界面と略直交する面に配置される。
【0014】
さらに、前記水槽を、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な方向に移動させる移動機構を備え、前記分離用超音波発振源は、前記連続相と前記分散相の界面と略平行な面に設けられる。
【0015】
さらに、前記容器の壁面が、前記乳化用超音波発振源と略平行及び略直交となるように配置され、前記容器の壁面の厚さは、前記乳化用超音波発振源又は前記分離用超音波発振源から発せられた超音波の半波長の整数倍である。
【0016】
さらに、前記水槽の壁面の厚さは、前記乳化用超音波発振源又は前記分離用超音波発振源から発せられた超音波の半波長の整数倍である。
【0017】
また、互いに混ざり合わない液体である連続相と分散相との何れかに溶解した溶質を他方へ移動させて液液抽出を行う液液抽出システムであって、前記連続相の中に前記分散相の油滴を生成して、乳化するマイクロ流路を有するマイクロリアクタと、前記マイクロリアクタからの前記連続相と前記分散相と前記溶質とが収められた容器と、前記容器を収容し、前記容器の周囲に水を有する水槽と、前記水槽の外側に配置された分離用超音波発振源と、前記乳化が終了した後に、前記分離用超音波発振源を動作させる制御部とを備える。
【0018】
さらに、前記水槽の外側であって、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な面に配置された乳化用超音波発振源を備え、前記制御部は、前記乳化用超音波発振源,前記分離用超音波発振源の順で、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バッチ法での処理の時間を短縮するとともに、溶質の抽出量のばらつきを低減し、抽出効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1による液液抽出システムを示す図である。
【図2】実施例1による乳化用超音波発振源と分離用超音波発振源とが、連続相と分散相との界面と略平行な面に配置された液液抽出システムを示す図である。
【図3】実施例1による液液抽出システムのタイムチャートを示す図である。
【図4】実施例1による液液抽出システムの抽出効率を示す図である。
【図5】実施例2による液液抽出システムを示す図である。
【図6】実施例2による液液抽出システムの抽出効率を示す図である。
【図7】実施例3による液液抽出システムを示す図である。
【図8】実施例3による液液抽出システムの抽出効率を示す図である。
【図9】実施例4の現行の全血液中の薬剤検出のフローチャートである。
【図10】実施例4による全血液中の薬剤検出装置を示す図である。
【図11】実施例5によるマイクロリアクタと液液抽出システムをハイブリッド化した装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて実施例について説明する。
【0022】
まず、図1〜図4を用いて、実施例1について説明する。実施例1では、連続相と分散相の乳化は超音波を用いた乳化技術で行い、分散相の分離は超音波を用いた分離技術で行う。
【0023】
図1は、実施例1を示す図である。図1に示す様に、実施例1は、互いに混ざり合わない液体である連続相101及び分散相102,連続相101と分散相102の少なくとも何れか一方に溶解した溶質103,連続相101と分散相102と溶質103とを収める容器104,容器104を収容するとともに、容器104の周囲に水105を入れた水槽106,連続相101と分散相102を乳化するための乳化用超音波発振源107,乳化と溶質103の抽出の後工程である連続相101と分散相102の分離のための分離用超音波発振源108,乳化用超音波発振源107と分離用超音波発振源108とを駆動する超音波発振源駆動回路109,超音波発振源駆動回路109を動作する制御部110からなる。
【0024】
図1,図2に示す、実施例1の各要素の詳細を以下に述べる。
【0025】
連続相101及び分散相102は、互いに混ざり合わない液体である。連続相101と分散相102の何れか一方には、溶質103が溶解している。溶質103は、液液抽出により、他方へ移動する。
【0026】
容器104は、その壁面が連続相101と分散相102との界面と略平行及び略直交するように配置される。乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108に面する壁面の厚さd1及びd2は、超音波の減衰を最小限に抑えるために、少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。
【0027】
水槽106は、超音波が水槽106と乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、材質を乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108とのインピーダンス差が小さいものが望ましい。また、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108に面している壁面の厚さd3及びd4は、超音波の減衰を最小限に抑えるために、少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。
【0028】
乳化用超音波発振源107は、連続相101と分散相102の乳化のための乳化用の超音波を発振する。乳化用の超音波は、連続相101と分散相102の界面に波頭を形成するとともに、連続相101のキャビテーション気泡を発生するものとする。また、乳化用超音波発振源107は、水槽106の外側に連続相101と分散相102との界面と略平行な面に配置される。また、分離用超音波発振源108の発振開始前に動作し、連続相101中に分散相102の油滴を生成する。材質は、超音波が水槽106と乳化用超音波発振源107との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、水槽106とのインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0029】
分離用超音波発振源108は、乳化と溶質103の抽出の後の工程である連続相101と分散相102を分離する分離用の超音波を発振する。この分離用の超音波は、乳化により生成した油滴を超音波の節又は腹に凝集するとともに、連続相101のキャビテーション気泡を発生しないものとする。また、分離用超音波発振源108は、水槽106の外側に連続相101と分散相102との界面と略直交する面に配置される。また、分離用超音波発振源108は、乳化用超音波発振源107の動作終了後に動作し、連続相101と分散相102を分離する。材質は、超音波が水槽106と分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、水槽106とのインピーダンス差の小さいものが望ましい。また、分離用超音波発振源108は、乳化用超音波発振源107と略直交する位置に必ずしも配置されなくても良く、図2に示す様に、乳化用超音波発振源107との移動機構111により連続相101と分散相102との界面と略平行な面に配置しても良い。図2のシステムは、乳化用の超音波及び分離用の超音波を共に水槽106の下方から照射するために、移動機構111により超音波の照射のタイミングに合わせて水槽106を移動させ、水槽106の下方へ乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108を配置したものである。この水槽106が移動する方向は、連続相101と分散相102との界面と略平行な方向である。また、水槽106の移動は、ターンテーブルを用いて180度回転させる回転式としてもよい(図示せず)。
【0030】
超音波発振源駆動回路109は、電圧を発生して、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108を駆動する。
【0031】
制御部110は、超音波発振源駆動回路109を動作する。
【0032】
図3は、実施例1の液液抽出における乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108の駆動のタイムチャートを示す図である。以下、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108駆動のタイムチャートの詳細を説明する。
【0033】
まず、照射電力Aで乳化用超音波発振源107を時間0からt1まで駆動して、乳化用超音波により連続相101中に分散相102の油滴を生成して乳化する。照射電力Aは、乳化用超音波の周波数で連続相101と分散相102を乳化する電力である。照射電力A及び照射時間t1は、連続相101と分散相102の種類,液量,液量比等で決まる。
【0034】
乳化後、時間t1からt2まで静置して連続相101又は分散相102に溶解している溶質103を他方へ移動して抽出する。この抽出時間(t2−t1)は、連続相101と分散相102の種類,液量、及び液量比等で決まる。
【0035】
そして、照射電力Bで、分離用超音波発振源108を時間t2からt3まで駆動して、分離用の超音波により油滴を凝集して、連続相101と分散相102の二相に分けて分離する。この照射電力B及び分離時間(t3−t2)は、分離用の超音波の周波数で連続相101と分散相102を乳化する電力であり、連続相101と分散相102の種類,液量、及び液量比等で決まる。
【0036】
すなわち、乳化用超音波発振源107の動作終了後に、分離用超音波発振源108が動作する。また、超音波発振源駆動回路109は、乳化用超音波発振源107,分離用超音波発振源108の順番で、乳化用超音波発振源107と分離用超音波発振源108とを駆動させる。また、この駆動を制御するにあたり、超音波発振源駆動回路109を制御する制御部110を備える。
【0037】
図4は、実施例1による、水(連続相)からヘキサン(分散相)へのフタル酸エステルの液液抽出効率を示す図である。図4では、バッチ法と実施例1で液液抽出を行って抽出量を測定し、抽出量に対する注入量の比から抽出効率を算出して両者を比較している。また、実施例1の乳化用の超音波の照射は、周波数0.16MHz,電力400W,照射時間15分で行い、分離用の超音波の照射は、周波数1.6MHz,電力400W,照射時間20分で行った。
【0038】
ここでは、連続相101の液量は100ml、分散相102の液量は2.5mlとし、溶質103は連続相101に100μg溶解した。
【0039】
また、容器104は、材質をガラスとし、乳化用超音波発振源107に面している容器104の壁面の厚さd1を周波数0.16MHzのガラス中(音速5,640(m/s))の半波長である18mmとした。また、分離用超音波発振源108に面している容器104の壁面の厚さd2を周波数1.6MHzのガラス中(音速5,640(m/s))の半波長である1.8mmとした。
【0040】
水槽106は、材質をステンレスとし、乳化用超音波発振源107に面している容器104の壁面の厚さd3を、0.16MHz超音波のステンレス中(音速5,790(m/s))の半波長である18mmとした。また、分離用超音波発振源108に面している容器104の壁面の厚さd2を、1.6MHz超音波のステンレス中(音速5,790(m/s))の半波長である1.8mmとした。
【0041】
図4に示す様に、抽出効率はバッチ法で77.5%であったのに対し、実施例1では82.2%となり、バッチ法と同等以上の抽出効率を確認した。
【0042】
図5,図6を用いて、実施例2について説明する。実施例2では、連続相と分散相の乳化はマイクロ流路を有するマイクロリアクタを用いて行い、分散相の分離は超音波を用いて行う。
【0043】
図5は、実施例2を示す図である。図5に示す様に、実施例2は、互いに混ざり合わない液体である連続相101及び分散相102,連続相101又は分散相102の一方に溶解している溶質103,連続相101及び分散相102を送液するシリンジ201,シリンジ201中の液体を送液するシリンジポンプ202,マイクロ流路を有し連続相101と分散相102を乳化して乳化液203を生成するマイクロリアクタ204,乳化液203及び溶質103を収める容器205,容器205を収容するとともに、容器205の周囲に水105を入れた水槽206,乳化及び溶質103の抽出した後の工程である連続相101と分散相102の分離のための分離用超音波発振源108,分離用超音波発振源108及びシリンジポンプ202を駆動する駆動回路207,駆動回路207を動作する制御部208からなる。
【0044】
図5に示す、実施例2の各要素の詳細を以下に述べる。
【0045】
連続相101及び分散相102は、互いに混ざり合わない液体である。連続相101と分散相102の何れか一方には、溶質103が溶解しており、溶質103は液液抽出により他方へ移動する。
【0046】
分離用超音波発振源108は、乳化及び溶質103の抽出した後の工程である連続相101と分散相102の分離のための分離用の超音波を発振し、水槽106の外側に連続相101と分散相102との界面と略直交する面に配置される。この分離用の超音波は、乳化により生成した油滴を超音波の節又は腹に凝集するとともに、連続相101のキャビテーション気泡を発生しないものとする。乳化用超音波発振源107の動作終了後に動作し、連続相101と分散相102を分離する。また、材質は、超音波が水槽106と分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、水槽106とのインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0047】
シリンジ201は、連続相101,分散相102,溶質103を収め、マイクロリアクタ204中に各液体を送液する。
【0048】
シリンジポンプ202は、シリンジ201中の連続相101と分散相102とをマイクロリアクタ204中に送液するために駆動する。
【0049】
乳化液203は、マイクロリアクタ204中で連続相101と分散相102を乳化して生成する。
【0050】
マイクロリアクタ204は、流路を有し、連続相101と分散相102を乳化して、乳化液203を生成する。
【0051】
容器205は、分離用超音波発振源108に面する壁面の厚さを、超音波の減衰を最小限に抑えるために、分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。
【0052】
水槽206の分離用超音波発振源108と接する壁面の厚さは、超音波が共振して減衰を最小限に抑えるために、分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。また、材質は、超音波が水槽206と分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、分離用超音波発振源108のインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0053】
駆動回路207は、シリンジポンプ202及び分離用超音波発振源108を駆動する。
【0054】
制御部110は、駆動回路207を動作する。
【0055】
図5に示す実施例2での液液抽出の手順を以下に述べる。
【0056】
まず、連続相101,分散相102、及び連続相101又は分散相102の何れかに溶解した溶質103をシリンジ201中にそれぞれ収める。その後、乳化するために、シリンジ201中の連続相101と分散相102と溶質103とを、駆動回路207と制御部208とでシリンジポンプ202を駆動してマイクロリアクタ204中に送液する。マイクロリアクタ204の中で、連続相101と分散相102を乳化して乳化液203を生成する。目的量の乳化液203の生成を確認した後、シリンジポンプ202を停止して乳化を終了する。続いて、溶質103を他方へ移動させるために一定時間静置する。そして、連続相101と分散相102を分離するために、駆動回路207及び制御部208で分離用超音波発振源108を一定時間駆動して、連続相101中に分散相102の油滴の凝集体を形成する。目的量の凝集体の形成を確認した後、分離用超音波発振源108の駆動を停止して分離を終了する。
【0057】
図6は、実施例2による、水(連続相)からヘキサン(分散相)へのフタル酸エステルの液液抽出の効率を示す図である。図4では、バッチ法と実施例2での液液抽出を行って抽出量を測定し、抽出量に対する注入量の比から抽出効率を算出して両者を比較している。また、実施例2において、乳化用の超音波の照射は周波数0.16MHz,電力400W,分離用の超音波照射は周波数1.6MHz,電力400Wで行った。
【0058】
ここでは、連続相101の液量は100ml、分散相102の液量は2.5mlとし、溶質103は連続相101に100μg溶解した。
【0059】
また、容器104は、材質をガラスとし、分離用超音波発振源108に面している容器104の壁面の厚さd2を周波数1.6MHzのガラス中(音速5,640(m/s))の半波長である1.8mmとした。
【0060】
水槽106は、材質をステンレスとし、分離用超音波発振源108に面している容器104の壁面の厚さd2を、1.6MHz超音波のステンレス中(音速5,790(m/s))の半波長である1.8mmとした。
【0061】
図6に示す様に、抽出効率はバッチ法で77.5%であったのに対し、実施例2のシステムでは80.0%と、バッチ法と同等以上の抽出効率を確認した。
【0062】
図7,図8を用いて、実施例3について説明する。実施例3は、連続相と分散相の乳化は流路を有するマイクロリアクタ及び超音波を用いた乳化技術で行い、分散相の分離は超音波を用いた分離技術で行う。
【0063】
図7は、実施例3を示す図である。図7に示す様に、実施例3は、互いに混ざり合わない液体である連続相101及び分散相102,連続相101又は分散相102の何れか一方に溶解している溶質103,連続相101及び分散相102を送液するシリンジ201,シリンジ201中の液体を送液するシリンジポンプ202,流路を有し連続相101と分散相102を乳化して乳化液203を生成するマイクロリアクタ204,乳化液203及び溶質103を収める容器205,容器205を収容するとともに、容器205の周囲に水105を入れた水槽106,マイクロリアクタ204で生成された乳化液203中の油滴を更に微小化するための乳化用超音波発振源107,乳化と溶質103を抽出した後の工程である連続相101と分散相102の分離のための分離用超音波発振源108,乳化用超音波発振源107と分離用超音波発振源108とシリンジポンプ202とを駆動する駆動回路207,駆動回路207を動作する制御部208からなる。
【0064】
図7に示す、実施例3の各要素の詳細を以下に述べる。
【0065】
連続相101及び分散相102は、互いに混ざり合わない液体である。連続相101及び分散相102の何れか一方には、溶質103が溶解しており、溶質103は液液抽出により他方へ移動する。
【0066】
容器104は、その壁面が連続相101と分散相102との界面と略平行及び略直交するように配置される。その壁面の厚さは、超音波の減衰を最小限に抑えるために、少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。
【0067】
水槽106は、超音波が共振して減衰を最小限に抑えるために、その壁面の厚さを少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。また、材質は、超音波が水槽106と乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108のインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0068】
乳化用超音波発振源107は、連続相101と分散相102のための乳化用の超音波を発振する。乳化用の超音波は、連続相101と分散相102との界面に波頭を形成するとともに、連続相101のキャビテーション気泡を発生するものとする。乳化用超音波発振源107は、水槽106の外側に、連続相101と分散相102との界面と略平行な面に配置される。また、分離用超音波発振源108の発振開始前に動作し、連続相101中に分散相102の油滴を生成する。また、材質は、超音波が水槽106と乳化用超音波発振源107との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、水槽106とのインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0069】
分離用超音波発振源108は、乳化及び溶質103の抽出した後の工程である連続相101と分散相102の分離のための分離用の超音波を発振する。分離用の超音波は、乳化により生成された油滴を超音波の節又は腹に凝集するとともに、連続相101のキャビテーション気泡を発生しないものとする。分離用超音波発振源108は、水槽106の外側に連続相101と分散相102との界面と略直交する面に配置される。乳化用超音波発振源107の動作終了後に動作し、連続相101と分散相102を分離する。また、材質は、超音波が水槽106と分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、水槽106とのインピーダンス差の小さいものが望ましい。また、分離用超音波発振源108は、図1に示す様に乳化用超音波発振源107と略直交する位置に必ずしも配置されなくても良く、図2に示す様に、乳化用超音波発振源107との移動機構111により連続相101と分散相102との界面と略平行な面に配置しても良い。
【0070】
シリンジ201は、連続相101,分散相102及び溶質103を収め、マイクロリアクタ204中に連続相101及び分散相102を送液する。
【0071】
シリンジポンプ202は、シリンジ201中の連続相101及び分散相102をマイクロリアクタ204中に送液するために駆動する。
【0072】
乳化液203は、マイクロリアクタ204中で連続相101と分散相102を乳化して生成される。
【0073】
マイクロリアクタ204は、流路を有し、連続相101と分散相102を乳化して、乳化液203を生成する。
【0074】
駆動回路207は、シリンジポンプ202,乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108を駆動する。
【0075】
制御部208は、駆動回路207を動作する。
【0076】
図7に示す、実施例3での液液抽出の手順を以下に述べる。
【0077】
まず、連続相101,分散相102、及び連続相101又は分散相102の何れかに溶解した溶質103をシリンジ201中にそれぞれ収める。その後、乳化するために、シリンジ201中の連続相101,分散相102及び溶質103を、駆動回路207と制御部208とでシリンジポンプ202を駆動してマイクロリアクタ204中に送液する。マイクロリアクタ204中で連続相101と分散相102を乳化して乳化液203を生成する。目的量の乳化液203の生成を確認した後、シリンジポンプ202を停止する。そして、駆動回路207と制御部208とで乳化用超音波発振源107を駆動し、乳化液203中の油滴を微小化する。目的径への油滴の微小化を確認した後、乳化用超音波発振源107を停止して乳化を終了する。続いて、溶質103を他方へ移動させるために一定時間静置する。そして、連続相101と分散相102を分離するために、駆動回路207及び制御部208で分離用超音波発振源108を一定時間駆動して、連続相101中に分散相102の油滴の凝集体を形成する。目的量の凝集体の形成を確認した後、分離用超音波発振源108の駆動を停止して分離を終了する。
【0078】
図8は、実施例3による、水(連続相)からヘキサン(分散相)へのフタル酸エステルの液液抽出効率を示す図である。図8では、バッチ法と実施例3を用いて液液抽出を行って抽出量を測定し、抽出量に対する注入量の比から抽出効率を算出して両者を比較している。また、実施例3の乳化用の超音波の照射は、周波数0.16MHz及び電力400W、分離用の超音波の照射は周波数1.6MHz,電力400Wで行った。
【0079】
ここで、連続相101の液量は100ml,分散相102の液量は2.5mlとし、溶質103は連続相101に100μg溶解した。
【0080】
また、容器104は、材質をガラスとし、乳化用超音波発振源107に面している容器104の壁面の厚さd1を周波数0.16MHzのガラス中(音速5,640(m/s))の半波長である18mmとした。また、分離用超音波発振源108に面している容器104の壁面の厚さd2を周波数1.6MHzのガラス中(音速5,640(m/s))の半波長である1.8mmとした。
【0081】
水槽106は、材質をステンレスとし、乳化用超音波発振源107に面している容器104の壁面の厚さd3を、0.16MHz超音波のステンレス中(音速5,790(m/s))の半波長である18mmとした。また、分離用超音波発振源108に面している容器104の壁面の厚さd2を、1.6MHz超音波のステンレス中(音速5,790(m/s))の半波長である1.8mmとした。
【0082】
図8に示す様に、抽出効率はバッチ法で77.5%であったのに対し、実施例3で89.2%と、バッチ法と同等以上の抽出効率を確認した。
【0083】
図9,図10を用いて、実施例4について説明する。
【0084】
実施例4は、全血液中の薬剤の検出に、実施例1〜実施例3の何れかの液液抽出システムを適用したものである。実施例4により、現行では手作業、個々の装置で行っている全血液中の薬剤の検出を、自動,単一装置で行うことができる。
【0085】
図9には、現行の全血液中の薬剤検出のフローチャートを示す。図9に示す様に、全血液中の薬剤の検出は、液液抽出及び固相抽出によりタンパク質等の薬剤以外の物質を除いた後に、LC/MS(Liquid Chromatography/Mass Spectromater)の全三工程で行われている。現状では、これら全工程を手作業,個々の装置で行っている。
【0086】
図10は、実施例4を示す図である。この実施例4は、図9に示す、手作業,個々の装置で行っている全血液中の薬剤検出工程を、自動化,単一装置化したものである。図10に示す様に、実施例4は、液液抽出部401,固相抽出部402,LC/MS部403,制御部404からなる。図10では、液液抽出部401として実施例1の液液抽出システムを用いるが、実施例2又は3の液液抽出システムを用いても良い。
【0087】
図10に示す、液液抽出部401,固相抽出部402,LC/MS部403の各要素の詳細を以下に述べる。
【0088】
液液抽出部401は、連続相101,分散相102,溶質103,シリンジ201,シリンジポンプ202,容器104,水槽106,乳化用超音波発振源107,分離用超音波発振源108からなる。
【0089】
固相抽出部402は、液液抽出部401で生成した容器104中の粗精製サンプルを回収する回収用シリンジ405,液液抽出後の粗精製サンプルからタンパク質等の薬剤以外の物質を除去する固相抽出カラム406,容器104,回収用シリンジ405及び固相抽出カラム406間の通水方向を制御する三方弁407からなる。
【0090】
LC/MS部403は、固相抽出後の精製サンプルからタンパク質等の薬剤以外の物質を除去する液体クロマトグラフィーカラム408,薬剤を検出する検出部409からなる。
【0091】
制御部404は、乳化用超音波発振源107,分離用超音波発振源108,シリンジポンプ202を駆動し、検出部409のデータを処理する。
【0092】
図10に示す、実施例4での全血液中の薬剤検出の手順を以下に述べる。
【0093】
第一に、液液抽出部401で、実施例1〜3の何れかと同様の手順で液液抽出を行い、タンパク質等の薬剤以外の物質を粗く除いた、粗精製サンプルを得る。
【0094】
第二に、三方弁407を容器104と回収用シリンジ405間で開放とし、容器104中の粗精製サンプルを、シリンジポンプ202を用いて回収用シリンジ405に回収する。回収後、三方弁407を回収用シリンジ405と固相抽出カラム406間で開放とし、粗精製サンプルを、シリンジポンプ202を用いて固相抽出カラム406に送液して固相抽出を行い、タンパク質等の薬剤以外の物質を細かく除いた精製サンプルを得る。
【0095】
第三に、固相抽出後の精製サンプルを液体クロマトグラフィーカラム408に送液して液体クロマトグラフィーを行い、検出に用いる検出サンプルを得る。
【0096】
検出サンプル中の薬剤を検出部409で検出し、制御部404で検出データを処理する。
【0097】
また、実施例1と同様に、容器104は、その壁面が連続相101と分散相102との界面と略平行及び略直交するように配置される。その壁面の厚さは、超音波の減衰を最小限に抑えるために、少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。さらに、水槽106は、超音波が共振して減衰を最小限に抑えるために、その壁面の厚さを少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。また、材質は、超音波が水槽106と乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108のインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0098】
図11を用いて、実施例5について説明する。
【0099】
実施例5は、マイクロリアクタと液液抽出システムをハイブリッド化した装置である。
【0100】
実施例5では、マイクロリアクタで乳化液を生成した後に、乳化用の超音波を照射することで乳化液中の油滴をさらに微小化するため、マイクロリアクタ単独よりも抽出効率が向上する。さらに、超音波照射により、油滴の分離を促進するため短時間化できる。
【0101】
図11は、実施例5を示す図である。図11に示す様に、実施例5は、マイクロリアクタ部501,液液抽出部502,制御部503からなる。
【0102】
図11に示す、マイクロリアクタ部501,液液抽出部502の各要素の詳細を以下に述べる。
【0103】
マイクロリアクタ部501は、連続相101,分散相102,溶質103,シリンジ201,シリンジポンプ202,マイクロリアクタ204,マイクロリアクタ204中の温度をコントロールする温度調節ユニット504からなる。
【0104】
液液抽出部502は、乳化液203,容器205,水槽106,乳化用超音波発振源107,分離用超音波発振源108からなる。図11では、水槽106に、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108を配置している。しかし、乳化用超音波発振源107を配置せずに、分離用超音波発振源108のみを配置しても良い。
【0105】
制御部503では、乳化用超音波発振源107,分離用超音波発振源108,シリンジポンプ202の駆動を行うとともに、駆動を制御する。
【0106】
図11に示す、実施例5での液液抽出の手順を以下に述べる。
【0107】
第一に、連続相101,分散相102、及び連続相101又は分散相102の何れかに溶解した溶質103をシリンジ201中にそれぞれ収める。そして、シリンジ201中の液体を、シリンジポンプ202を制御部503で駆動してマイクロリアクタ204中に送液し、マイクロリアクタ204の中で連続相101と分散相102を乳化して乳化液203を生成する。目的液量の乳化液203の生成を確認した後、シリンジポンプ202を停止して乳化を終了する。
【0108】
第二に、制御部503で乳化用超音波発振源107を駆動させ、乳化液203中の油滴を微小化する。すなわち、制御部503は、乳化が終了した後に、分離用超音波発振源108を動作させる。乳化用超音波発振源107の駆動は必ずしも必要でなく、マイクロリアクタ204単体で目的径の油滴の生成を確認した場合は駆動しなくても良い。目的径への油滴の生成を確認した後、乳化用超音波発振源107を停止して乳化を終了する。そして、溶質103を他方へ移動させるために一定時間静置する。その後、連続相101と分散相102を分離するために、制御部503で分離用超音波発振源108を一定時間駆動して、連続相101中に分散相102の油滴の凝集体を形成する。目的量の凝集体の形成を確認した後、分離用超音波発振源108の駆動を停止して分離を終了する。
【0109】
すなわち、実施例5は、互いに混ざり合わない液体である連続相101と分散相102との何れかに溶解した溶質103を他方へ移動させて液液抽出を行う液液抽出システムであって、連続相101の中に分散相102の溶質103を生成して、乳化するマイクロ流路を有するマイクロリアクタ204と、マイクロリアクタ204から送液された連続相101と分散相102と溶質103とが収められた容器205と、容器205を収容し、容器205の周囲に水を有する水槽106と、水槽106の外側に配置された分離用超音波発振源108と、乳化が終了した後に、分離用超音波発振源108を動作させる制御部503とを備える。また、制御部503は、乳化用超音波発振源107,分離用超音波発振源108の順で、乳化用超音波発振源107と分離用超音波発振源108とを駆動させる。
【0110】
実施例1と同様に、容器104は、その壁面が連続相101と分散相102との界面と略平行及び略直交するように配置される。その壁面の厚さは、超音波の減衰を最小限に抑えるために、少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。水槽106は、超音波が共振して減衰を最小限に抑えるために、その壁面の厚さを少なくとも乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108が発振する超音波の半波長の整数倍とする。また、材質は、超音波が水槽106と乳化用超音波発振源107又は分離用超音波発振源108との間の界面で反射して減衰することを最小限に抑えるために、乳化用超音波発振源107及び分離用超音波発振源108のインピーダンス差の小さいものが望ましい。
【0111】
以上の実施例によれば、液液抽出の時間を短縮するとともに、溶質の抽出量のばらつきを向上させ、抽出効率を向上させることが可能となる。さらに、超音波を用いた乳化分離を用いた液液抽出の連続処理及び短時間化するとともに、液液抽出システムの小型化が可能となる。また、乳化及び分離の両方の性能を落とさずに、一つの水槽に乳化用及び分離用二つの超音波発振源を配置することが可能となる。
【符号の説明】
【0112】
101 連続相
102 分散相
103 溶質
104,205 容器
105 水
106,206 水槽
107 乳化用超音波発振源
108 分離用超音波発振源
109 超音波発振源駆動回路
110,208,404,503 制御部
111 移動機構
201 シリンジ
202 シリンジポンプ
203 乳化液
204 マイクロリアクタ
207 駆動回路
401,502 液液抽出部
402 固相抽出部
403 LC/MS部
405 回収用シリンジ
406 固相抽出カラム
407 三方弁
408 液体クロマトグラフィーカラム
409 検出部
501 マイクロリアクタ部
504 温度調節ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに混ざり合わない液体である連続相及び分散相と、少なくとも前記連続相と前記分散相の何れかに溶解した溶質とが収められた容器と、
前記容器が収容され、前記容器の周囲に水を有する水槽と、
前記水槽の外側であって、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な面に配置された乳化用超音波発振源と、
前記水槽の外側に配置された分離用超音波発振源と、
前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させる超音波発振源駆動回路と、
前記乳化用超音波発振源,前記分離用超音波発振源の順番で、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させるように、前記超音波発振源駆動回路を制御する制御部とを備えた液液抽出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の液液抽出システムにおいて、
前記分離用超音波発振源は、前記連続相と前記分散相との界面と略直交する面に配置された液液抽出システム。
【請求項3】
請求項1に記載の液液抽出システムにおいて、
前記水槽を、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な方向に移動させる移動機構を備え、
前記分離用超音波発振源は、前記連続相と前記分散相の界面と略平行な面に設けられた液液抽出システム。
【請求項4】
請求項1に記載の液液抽出システムにおいて、
前記容器の壁面が、前記乳化用超音波発振源と略平行及び略直交となるように配置され、
前記容器の壁面の厚さは、前記乳化用超音波発振源又は前記分離用超音波発振源から発せられた超音波の半波長の整数倍である液液抽出システム。
【請求項5】
請求項1に記載の液液抽出システムにおいて、
前記水槽の壁面の厚さは、前記乳化用超音波発振源又は前記分離用超音波発振源から発せられた超音波の半波長の整数倍である液液抽出システム。
【請求項6】
互いに混ざり合わない液体である連続相と分散相との何れかに溶解した溶質を他方へ移動させて液液抽出を行う液液抽出システムであって、
前記連続相の中に前記分散相の油滴を生成して、乳化するマイクロ流路を有するマイクロリアクタと、
前記マイクロリアクタからの前記連続相と前記分散相と前記溶質とが収められた容器と、
前記容器を収容し、前記容器の周囲に水を有する水槽と、
前記水槽の外側に配置された分離用超音波発振源と、
前記乳化が終了した後に、前記分離用超音波発振源を動作させる制御部とを備えた液液抽出システム。
【請求項7】
請求項6に記載の液液抽出システムにおいて、
前記水槽の外側であって、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な面に配置された乳化用超音波発振源を備え、
前記制御部は、前記乳化用超音波発振源,前記分離用超音波発振源の順で、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させる液液抽出システム。
【請求項1】
互いに混ざり合わない液体である連続相及び分散相と、少なくとも前記連続相と前記分散相の何れかに溶解した溶質とが収められた容器と、
前記容器が収容され、前記容器の周囲に水を有する水槽と、
前記水槽の外側であって、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な面に配置された乳化用超音波発振源と、
前記水槽の外側に配置された分離用超音波発振源と、
前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させる超音波発振源駆動回路と、
前記乳化用超音波発振源,前記分離用超音波発振源の順番で、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させるように、前記超音波発振源駆動回路を制御する制御部とを備えた液液抽出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の液液抽出システムにおいて、
前記分離用超音波発振源は、前記連続相と前記分散相との界面と略直交する面に配置された液液抽出システム。
【請求項3】
請求項1に記載の液液抽出システムにおいて、
前記水槽を、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な方向に移動させる移動機構を備え、
前記分離用超音波発振源は、前記連続相と前記分散相の界面と略平行な面に設けられた液液抽出システム。
【請求項4】
請求項1に記載の液液抽出システムにおいて、
前記容器の壁面が、前記乳化用超音波発振源と略平行及び略直交となるように配置され、
前記容器の壁面の厚さは、前記乳化用超音波発振源又は前記分離用超音波発振源から発せられた超音波の半波長の整数倍である液液抽出システム。
【請求項5】
請求項1に記載の液液抽出システムにおいて、
前記水槽の壁面の厚さは、前記乳化用超音波発振源又は前記分離用超音波発振源から発せられた超音波の半波長の整数倍である液液抽出システム。
【請求項6】
互いに混ざり合わない液体である連続相と分散相との何れかに溶解した溶質を他方へ移動させて液液抽出を行う液液抽出システムであって、
前記連続相の中に前記分散相の油滴を生成して、乳化するマイクロ流路を有するマイクロリアクタと、
前記マイクロリアクタからの前記連続相と前記分散相と前記溶質とが収められた容器と、
前記容器を収容し、前記容器の周囲に水を有する水槽と、
前記水槽の外側に配置された分離用超音波発振源と、
前記乳化が終了した後に、前記分離用超音波発振源を動作させる制御部とを備えた液液抽出システム。
【請求項7】
請求項6に記載の液液抽出システムにおいて、
前記水槽の外側であって、前記連続相と前記分散相との界面と略平行な面に配置された乳化用超音波発振源を備え、
前記制御部は、前記乳化用超音波発振源,前記分離用超音波発振源の順で、前記乳化用超音波発振源と前記分離用超音波発振源とを駆動させる液液抽出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−269256(P2010−269256A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123683(P2009−123683)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]