説明

液滴吐出ヘッド、充填方法、メンテナンス方法及び画像形成装置

【課題】ノズルから吐出される液体の粘度の増加を抑制する。
【解決手段】加湿液流路42を循環する加湿液が、加湿液流路42から開口部40へ供給され、開口部40に加湿液が充填される。開口部40に充填された加湿液は、加湿液の表面張力により開口部40で保持され、開口部40で保持された加湿液の液面から、加湿液が自然蒸発し、ノズル22付近が加湿される。これにより、ノズル22から吐出される液体の粘度の増加を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド、充填方法、メンテナンス方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出ヘッドとしては、インク滴を吐出して画像を記録するインクジェット記録ヘッドが知られている。インクジェット記録ヘッドとしては、特許文献1に開示されるインクジェット記録ヘッドが公知である。
【0003】
特許文献1のインクジェットヘッドでは、オリフィスプレートの表面のノズルの近傍に、レーヨンやポリエステル等からなる保持体を設け、水性インクに用いる溶媒が入ったタンクから毛管現象あるいはポンプにより、チューブを介して保持体に溶媒を補給する。
【0004】
これにより、ノズル開口部近傍の空間の湿度は、ヘッド設置環境温度での飽和蒸気圧レベルとなり、設置が低湿環境下におかれても、ノズル開口部での溶媒の乾燥を防ぐことができる。
【特許文献1】特開2003−145783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液滴吐出ヘッド及び画像形成装置においては、ノズルから吐出される液体の粘度の増加を抑制することが望まれている。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、加湿液をノズル近傍に供給し、ノズルから吐出される液体の粘度の増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルと、前記ノズルに通じた圧力室と、前記圧力室へ液体を供給する第1流路と、前記ノズルの周囲に形成された開口部と、前記開口部へ加湿液を供給する第2流路と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る液滴吐出ヘッドは、請求項1の構成において、前記開口部は、前記第2流路下に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る液滴吐出ヘッドは、請求項1又は請求項2の構成において、前記第2流路は、前記ノズルの外周に沿って形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係る液滴吐出ヘッドは、請求項1〜3のいずれか1項の構成において、前記第2流路の両端部に加湿液供給口と加湿液排出口が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に係る液滴吐出ヘッドは、請求項1〜4のいずれか1項の構成において、前記開口部は、その平面形状がスリット状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に係る液滴吐出ヘッドは、請求項1〜5のいずれか1項の構成において、前記開口部は、前記ノズルに対して複数形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項7に係る液滴吐出ヘッドは、請求項1〜6のいずれか1項の構成において、前記開口部から前記ノズルに向かって形成され、前記開口部から前記加湿液が供給される溝部を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項8に係る液滴吐出ヘッドは、請求項7の構成において、前記開口部と前記ノズルが形成された面に撥水処理がなされ、前記溝部の溝内は、撥水処理されていないことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項9に係る液滴吐出ヘッドは、請求項7又は請求項8の構成において、前記ノズルの周縁に前記開口部が形成された面より凹に形成された凹部を有し、前記溝部は、前記凹部の周囲に形成されたことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項10に係る液滴吐出ヘッドは、請求項7〜9のいずれか1項の構成において、前記溝部は、一の開口部から他の開口部へ前記加湿液を循環させることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項11に係る液滴吐出ヘッドにおける充填方法は、前記ノズル及び前記開口部に正圧を与える第1工程と、前記加湿液の供給を停止して、前記液体を前記ノズルに充填する第2工程と、前記加湿液の供給の停止を解除して、前記加湿液を前記開口部に充填する第3工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項12に係る液滴吐出ヘッドにおけるメンテナンス方法は、前記ノズル及び開口部が形成された形成面を払拭する第1工程と、前記液滴を予備吐出する第2工程と、前記加湿液を循環させる第3工程と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項13に係る画像形成装置は、前記加湿液を循環させる加湿液循環手段と、請求項1〜10のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項14に係る画像形成装置は、前記加湿液の供給を停止する停止手段と、請求項1〜10のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1の構成によれば、本構成を有しない場合に比べ、加湿液をノズル近傍に供給でき、ノズルから吐出される液体の粘度の増加を抑制できる。
【0022】
本発明の請求項2の構成によれば、本構成を有しない場合に比べ、第2流路から開口部へ加湿液を供給する供給効率が上がる。
【0023】
本発明の請求項3の構成によれば、本構成を有しない場合に比べ、第2流路を流れる加湿液の澱みが抑制される。
【0024】
本発明の請求項4の構成によれば、本構成を有しない場合に比べ、新鮮な加湿液を開口部へ供給できる。
【0025】
本発明の請求項5の構成によれば、加湿液の自由表面の保持性を維持しつつ開口部の開口面積を大きくでき、蒸発効率を高くできる。
【0026】
本発明の請求項6の構成によれば、複数の開口部により開口面積を大きくでき、ノズルから吐出される液体の粘度の増加をより抑制できる。
【0027】
本発明の請求項7の構成によれば、溝部により、加湿液をよりノズル近傍に供給でき、ノズルから吐出される液体の粘度の増加をより抑制できる。
【0028】
本発明の請求項8の構成によれば、溝部の溝内は親水性を高められ、溝の外側が撥水処理されているため、加湿液は、加湿液の表面張力により溝内に保持できる。
【0029】
本発明の請求項9の構成によれば、ノズル周縁に凹部が形成された構成であっても、吐出される液体の粘度の増加を抑制できる。
【0030】
本発明の請求項10の構成によれば、より新鮮な加湿液を溝部へ供給できる。
【0031】
本発明の請求項11の構成によれば、液体と加湿液の充填を行うことができる。
【0032】
本発明の請求項12の構成によれば、液体と加湿液が互いに混合しても容易に回復することができる。
【0033】
本発明の請求項13の構成によれば、ノズルから吐出される液体の粘度の増加を抑制できる。
【0034】
本発明の請求項14の構成によれば、開口部へ供給される加湿液を調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
本実施形態では、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドとして、インク滴を吐出して画像を記録媒体へ記録するインクジェット記録ヘッドについて説明する。
【0036】
[第1実施形態]
(第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの構成)
第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの構成について説明する。図2(B)は、第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの構成を示す概略図である。図2(A)は、図2(B)における2A−2A線断面図である。図1は、図2(B)のおけるA部分を拡大した分解斜視図である。図3は、図1における3−3線断面図である。
【0037】
第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッド10は、図1及び図2(A)に示すように、ノズルプレート12、加湿液流路プレート14、流通路プレート16、圧力室プレート18及び振動板20を備えている。
【0038】
このノズルプレート12、加湿液流路プレート14、流通路プレート16、圧力室プレート18及び振動板20は、この順で積層され、各プレートが接合されている。
【0039】
ノズルプレート12には、インク滴を吐出するノズル22が形成されている。このノズル22は、ノズルプレート12を貫通する円孔であり、図2(B)に示すように、複数(図2(B)において、8つ)のノズル22が、ノズルプレート12に一列に配列されている。
【0040】
加湿液流路プレート14及び流通路プレート16には、ノズルプレート12のノズル22に対応する上方位置に、ノズル径よりも少し大径の円孔からなる流通路24がそれぞれ形成されている。この流通路24は、ノズル22と通じており、流通路24からノズル22へ液体としてのインクが流通可能となっている。
【0041】
圧力室プレート18には、流通路プレート16の流通路24の上方に、所定の大きさの空間とされた圧力室26が形成されている。
【0042】
圧力室26の一端部が流通路24と通じており、圧力室26から流通路24へインクが流通可能となっている。すなわち、圧力室26は、流通路24を介して、ノズル22と通じている。
【0043】
また、圧力室プレート18には、圧力室26の他端部と通ずる第1流路としての供給路28が形成されている。この供給路28は、インクを貯留するインクプール30と通じており、インクプール30から送られるインクを圧力室26へ供給する構成となっている。なお、供給路28の通路幅は、圧力室26の空間の幅よりも狭く形成されている。
【0044】
振動板20の上面には、図2(A)に示すように、圧電素子からなる駆動部32が設けられている。駆動部32は、電気信号(駆動信号)が加えられて、圧力室26内の容積を減少させるように変形し、圧力室26内のインクへ圧力を付与する。これより、圧力室26と通じるノズル22からインク滴が吐出される。
【0045】
(ノズル22付近を加湿する構成)
次に、ノズル22付近を加湿する構成について説明する。
【0046】
ノズルプレート12には、各ノズル22の周囲に開口部40が形成されている。開口部40は、ノズルプレート12を貫通する円孔であり、図1及び図2(B)に示すように、一のノズル22に対して複数(図1及び図2(B)において、10つ)形成されている。また、開口部40は、ノズル22の外周に沿って、円弧状に配列されている。
【0047】
加湿液流路プレート14には、開口部40の上方位置に、加湿液を開口部40へ供給する第2流路としての加湿液流路42が2本形成されている。各加湿液流路42は、インクが流通するインク流路(インクプール30、供給路28、圧力室26、流通路24及びノズル22で構成される流路)とは別系統の流路とされており、全体として波線形状に形成されている。加湿液流路42の一部は、ノズル22の外周に沿って湾曲しており、ノズル22の外周の半周程度にわたる円弧状をなしている。
【0048】
加湿液流路42は、供給路28から圧力室26へインクが供給される方向と交差する方向(より詳細には、直交する方向)に沿って形成され、加湿液流路42を流通する加湿液は、インクの供給方向と交差する方向に流れる。
【0049】
開口部40は、図3に示すように、加湿液流路42の直下に形成されている。例えば、図4に示すように、開口部40を加湿液流路42の直下でなく、加湿液流路42からずらした斜め下方の位置に形成する場合には、加湿液流路42と開口部40をつなぐ横方向に延びる流路を形成する必要がある。
【0050】
また、開口部40へ供給される加湿液としては、例えば、水(より詳細には純水)、アルコールなどが用いられる。その他にも、溶媒蒸発が起こっても粘度の増加しない液体であればよい。
【0051】
また、2つの加湿液流路42の一端部には、図2(B)に示すように、加湿液が供給される加湿液供給口44が形成され、加湿液流路42の他端部には、加湿液が排出される加湿液排出口46が形成されている。
【0052】
この加湿液供給口44及び加湿液排出口46は、チューブ等の流通管47を介して、加湿液を加湿液排出口46から加湿液供給口44へ送液する送液ポンプ48が接続されている。この送液ポンプ48が、加湿液排出口46から加湿液を吸い上げて、加湿液供給口44に送り込むことにより、加湿液が加湿液流路42を循環するようになっている。
【0053】
(第1実施形態に係る作用)
第1実施形態の構成によれば、加湿液は、送液ポンプ48により加湿液流路42を循環する。加湿液流路42を循環する加湿液が、加湿液流路42から開口部40へ供給され、開口部40に加湿液が充填される。開口部40に充填された加湿液は、加湿液の表面張力により開口部40で保持され、開口部40で保持された加湿液の液面から、加湿液が自然蒸発し、ノズル22付近を加湿する。
【0054】
なお、上記の構成では、ノズル22の周囲に、円孔に形成された開口部40を配列していたが、図5に示すように、平面形状がスリット状に形成された開口部41であっても良い。
【0055】
この構成では、開口部41が2つ形成され、各開口部41は、ノズル22の外周に沿って湾曲しており、ノズル22の外周の半周程度にわたる円弧状をなしている。開口部41は、加湿液の表面張力により加湿液が保持される幅に形成されると共に、複数形成された円孔状の開口部40よりも、開口面積が大きくなっている。
【0056】
また、上記の構成では、ノズル22は、一列に配列されていたが、図6に示すように、ノズル22が2次元に配列される構成であってもよい。この場合においても、上記と同様に、加湿液流路42及び開口部40を形成して、ノズル22付近が加湿される。なお、図6においては、チューブ等の流通管47を介して、加湿液を加湿液排出口46から加湿液供給口44へ送液する送液ポンプ48を省略して図示している。
【0057】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。図8(B)は、第2実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの構成を示す概略図である。図8(A)は、図8(B)における8A−8A線断面図である。図7は、図8(B)のおけるA部分を拡大した分解斜視図である。図11は、図7における11−11線断面図である。
【0058】
第2実施形態では、図7及び図8(B)に示すように、2つの開口部40が形成されており、この開口部40の各々からノズル22に向かって延びる溝部50が、ノズルプレート12の表面に形成されている。
【0059】
溝部50は、ノズルプレート12を貫通していない状態で形成されており、開口部40からノズル22へ向かって縦に延びる直線状の直線部50Aと、直線部50Aの先端部から横に二股に枝分かれする2つの枝部50Bとから構成されている。岐部50Bは、ノズル22の外周に沿って形成され、それぞれが、ノズル22の外周の1/4程度にわたる円弧状をなしている。
【0060】
また、溝部50は、開口部40及びノズル22が形成された表面に撥水処理がなされた後に、溝加工することにより形成されており、溝部50の溝内は、撥水加工がなされていない。
【0061】
この溝部50には、毛細管現象により、開口部40から加湿液が供給されて、直線部50Aから枝部50Bへ運ばれる。供給された加湿液は、加湿液の表面張力により、溝部50に保持される。
【0062】
なお、溝部50の形状は、任意の形状に変形することができる。例えば、第1変形例に係る溝部60、61は、図9に示すように、開口部40からノズル22へ向かって縦方向(図9においてA方向)に延びる直線状の直線部60A、61Aと、直線部60A、61Aから横方向(図9においてB方向)に枝分かれする複数(図9において6つ)の枝部60B、61Bとから構成されている。
【0063】
枝部60B、61Bは、直線部60A、61Aの先端部から横方向に二股に枝分かれしている。また、枝部60B、61Bは、直線部60A、61Aの基端部及び中間部(先端部と基端部の間の位置)から横方向の両側へ枝分かれしている。この枝部60B、61Bは、ノズル22の外周に沿って形成され、それぞれが、ノズル22の外周の半周程度にわたる円弧状をなしている。
【0064】
直線部60Aの先端部から延びる枝部60Bが、ノズル22の最近しており、直線部61Aの先端部から延びる枝部61B、直線部60Aの中間部から延びる枝部60B、直線部61Aの中間部から延びる枝部61B、直線部60Aの基端部から延びる枝部60B、直線部61Aの基端部から延びる枝部61Bの順に、ノズル22から遠ざかるように形成されている。すなわち、枝部60Bと枝部61Bとが交互に、ノズル22の周囲を囲むように形成されている。
【0065】
また、第2変形例に係る溝部70、71は、図10(A)に示すように、開口部40からノズル22へ向かって縦方向(図10(A)においてA方向)に延びる直線状の直線部70A、71Aと、直線部70A、71Aから横方向(図10(A)においてB方向)に枝分かれする複数(図10において3つ)の枝部70B、71Bとから構成されている。
【0066】
枝部70B、71Bは、直線部70A、71Aの先端部から横方向に枝分かれしている。また、枝部70B、71Bは、直線部70A、71Aの基端部及び中間部(先端部と基端部の間の位置)から横方向へ枝分かれしている。
【0067】
この枝部70B、71Bは、ノズル22の外周に沿って形成され、それぞれが、ノズル22の外周の半周程度にわたる円弧状をなしている。この枝部70B及び枝部71Bにより、ノズル22の外周の全周にわたって、ノズル22の周囲を囲っている。
【0068】
なお、図10(B)に示すように、溝部50の溝幅と、開口部40の径を同一としてもよい。これは、図7及び図8(B)に示す溝部50の形状の場合のおいても、図9に示す溝部60の形状の場合においても、後述の図13に示す溝部80の形状の場合においても、後述の図15に示す溝部90の形状の場合においても、同様である。
【0069】
また、第2実施形態では、図8(B)に示すように、送液ポンプ48が接続された流通管47には、開口部40への加湿液の供給を停止する停止手段としてのバルブ49が設けられている。バルブ49を閉じることにより、加湿液流路42への加湿液の供給を停止して、開口部40への加湿液の供給が停止される。バルブ49を開くことにより、加湿液の供給停止が解除され、開口部40へ加湿液が供給される。
【0070】
従って、ノズル22にインクを充填し、開口部40に加湿液を充填する際には、このバルブ49を用いて、以下の充填方法により充填することが望ましい。
【0071】
まず、バルブ49を閉めることにより、加湿液の供給を停止する。次に、ノズル22及び開口部40から負圧吸引キャップ等の手段を用いて吸引して、インクをノズル22に充填すると共に、バルブ49による加湿液の供給停止をインクの充填開始後に解除して、加湿液を開口部40へ充填する。これにより、インクの充填時間と、加湿液の充填時間とに差がなく、インク及び加湿液が充填される。
【0072】
また、ノズル22及び開口部40が形成された形成面を払拭して、その形成面をメンテナンス(清掃)する際には、インクが開口部40に入る可能性があり、加湿液がノズル22に入る可能性があるので、以下のメンテナンス方法により、メンテナンスすることが望ましい。
【0073】
まず、ノズル22と開口部40のそれぞれに、あふれない程度の正圧を与える。次に、ノズル22及び開口部40が形成された形成面をワイパーにより払拭する。次に、ノズル22からインク滴を予備吐出して、ノズル22に侵入した加湿液を放出する。さらに望ましくは、加湿液流路42内の加湿液を循環させる。
【0074】
(第2実施形態に係る作用)
第2実施形態の構成によれば、加湿液は、送液ポンプ48により加湿液流路42を循環する。加湿液流路42を循環する加湿液が、加湿液流路42から開口部40へ供給され、開口部40に加湿液が充填される。開口部40に充填された加湿液は、開口部40から毛細管現象により溝部50に充填され、加湿液の表面張力により溝部50に保持される。
【0075】
溝部50がなく開口部40のみが形成されている構成では、開口部40とノズル22の距離(図3においてL2)が所定長さ必要であった(図3参照)。これは、加湿液流路42と流通路24との間にある隔壁の剛性が必要なため、加湿液流路42と流通路24の距離(図3においてL1)が縮められず、また、ノズルプレート12と流通路プレート16との接着面積を確保する必要があるためである。これに対して、溝部50を形成した第2実施形態では、図11に示すように、加湿液は溝部50に充填され、溝部50がなく開口部40のみが形成されている構成と比べて、加湿液はノズル22に近づいた位置で溝部50に保持される(図11におけるL3参照)。
【0076】
溝部50に保持された加湿液の液面から、加湿液が自然蒸発し、ノズル22付近を加湿する。
【0077】
図12には、加湿液とノズル22との距離と、吐出待機後の1滴目の滴速との関係が示されている。図12におけるXの領域は、開口部40のみが形成された構成において、開口部40に充填された加湿液とノズル22との距離が示されている。この構成では、上述のように、開口部40とノズル22の距離が所定長さ必要であるため、開口部40に充填された加湿液とノズル22との距離の下限値は、X1となる。
【0078】
図12におけるYの領域は、溝部50が形成された第2実施形態に係る構成において、溝部50に充填された加湿液とノズル22との距離が示されている。この構成では、溝部50で加湿液が保持されるので、加湿液をノズル22に接近する。
【0079】
このため、ノズル22付近がさらに高湿環境となり、ノズル22での粘度の増加が抑制され、吐出待機後の1滴目の滴速が理想値に近づく。なお、理想値とは、連続的に吐出しているときの滴速であり、本来的に必要とされる滴速である。
【0080】
なお、上記の第2実施形態において、溝部50は、加湿液を循環させていなかったが、図13及び図14(A)、(B)に示すように、溝部80は、一の開口部40から他の開口部40へ加湿液を循環させる構成であっても良い。
【0081】
この溝部80は、一の開口部40から他の開口部40へ繋がっており、開口部40からノズル22へ向かって縦方向(図13においてA方向)に延びる直線状の直線部80A、81Aと、直線部80Aから横方向(図13においてB方向)に枝分かれし、直線部81Aへ合流する複数(図13において6つ)の枝部80Bとから構成されている。
【0082】
枝部80Bは、直線部80Aの先端部から横方向に二股に枝分かれし、直線部81Aの先端部へ合流している。また、枝部80Bは、直線部80Aの基端部及び中間部(先端部と基端部の間の位置)から横方向の両側へ枝分かれし、直線部81Aの基端部及び中間部へ合流している。この枝部80Bは、ノズル22の外周に沿って形成され、直線部80Aから枝分かれし、直線部81Aへ合流することにより、ノズル22の外周の全周にわたる円形状をなしている。
【0083】
また、2つの加湿液流路42のうち、一方の加湿液流路42の一端部には、図14(B)に示すように、加湿液が供給される加湿液供給口44が形成されている。2つの加湿液流路42のうち、他方の加湿液流路42の他端部には、加湿液が排出される加湿液排出口46が形成されている。
【0084】
この加湿液供給口44には、加湿液を貯留するタンク45が接続されている。このタンク45及び加湿液排出口46は、チューブ等の流通管47を介して、加湿液を加湿液排出口46からタンク45へ送液する送液ポンプ48が接続されている。この送液ポンプ48が、加湿液排出口46から加湿液を吸い上げて、タンク45に送り込むことにより、タンク45から加湿液が一方の加湿液流路42を流れる。一方の加湿液流路42に流れた加湿液が、溝部80を通じて、他方の加湿液流路42へ流れて、加湿液が循環するようになっている。
【0085】
また、ノズル22の周縁に凹部92を形成する凹部形成プレート94が、ノズル22が形成されたノズル面に積層された構成においては、図15に示すように、溝部90を、凹部形成プレート94の表面であって凹部92の周囲に形成してもよい。
【0086】
なお、凹部92は、ノズル22の周縁に形成された段差であり、ノズル22が形成された部分を周囲のプレート面よりも後退させることで、例えば、ノズル22周辺の撥水膜が、用紙の接触による摩擦や、ワイピング等による機械的な摩擦を受けないようにするものである。
【0087】
また、図15に示す凹部92では、各ノズル22の周縁だけでなく、各ノズル22の周縁にある段差に連なって、一のノズル22から他のノズル22へ延びる段差92Aが形成されている。
【0088】
また、上記の構成では、ノズル22は、一列に配列されていたが、図16に示すように、ノズル22が2次元に配列される構成であってもよい。この場合においても、上記と同様に、加湿液流路42、開口部40、溝部50を形成して、ノズル22付近が高湿環境とする。なお、図16においては、チューブ等の流通管47を介して、加湿液を加湿液排出口46から加湿液供給口44へ送液する送液ポンプ48を省略して図示している。また、溝部50は、各ノズル22の周囲に形成されているが、図16において左上の溝部50のみを図示している。
【0089】
図17には、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドが適用される画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置の構成が示されている。インクジェット記録装置102は、インクジェット記録ヘッド10が装着されるキャリッジ104と、キャリッジ104を主走査方向Mに沿って走査させる主走査機構106と、記録紙Pを副走査方向Sに沿って搬送する副走査機構108と、メンテナンス部110とを有している。なお、流路管47、送液ポンプ47、タンク45、バルブ49については図示を省略している。また、送液ポンプ47、バルブ49、メンテナンス部を制御する図示しない制御部を有する。
【0090】
このインクジェット記録装置102では、キャリッジ104が主走査機構106によって主走査方向Mに移動しながら、インクジェット記録ヘッド10のノズル22から記録紙Pへ選択的にインク滴を吐出することにより、所定のバンド領域BEに対して画像データに基づく画像の一部が記録される。
【0091】
そして、主走査方向への1回の移動が終了すると、記録紙Pは、副走査機構108によって副走査方向Sに所定ピッチ搬送され、再びインクジェット記録ヘッド10が主走査方向(前述とは反対方向)Mに移動しながら、次のバンド領域に対して画像データに基づく画像の一部が記録されるようになっており、このような動作を複数回繰り返すことによって、記録紙Pに画像データに基づく全体画像がフルカラーで記録される。
【0092】
なお、上記各実施形態では、用紙に印刷するインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明したが、インクに限らず液滴を吐出する装置であれば他の装置、例えばカラーフィルタ製造装置、半導体製造装置、各種成膜装置等に本発明を適用可能である。また、本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、図2(B)のおけるA部分を拡大した分解斜視図である。
【図2】図2(A)は、図2(B)における2A−2A線断面図である。図2(B)は、第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの構成を示す概略図である。
【図3】図3は、図1における3−3線断面図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る開口部を加湿液流路の直下でなく、加湿液流路からずらした斜め下方の位置に形成した場合を示す断面図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係る開口部をスリット状に形成した場合を示す図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドにおいて、ノズルが2次元に配列される構成を示す図である。
【図7】図7は、図8(B)のおけるA部分を拡大した分解斜視図である。
【図8】図8(A)は、図8(B)における8A−8A線断面図である。図8(B)は、第2実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの構成を示す概略図である。
【図9】図9は、第2実施形態に係る溝部の第1変形例を示す図である。
【図10】図10(A)は、第2実施形態に係る溝部の第2変形例を示す図である。図10(B)は、開口部の径を溝部の溝幅と同一にした例を示す図である。
【図11】図11は、図7における11−11線断面図である。
【図12】図12は、加湿液とノズルとの距離と、吐出待機後の1滴目の滴速との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、第2実施形態に係る溝部が、一の開口部から他の開口部へ加湿液を循環させる構成おける溝部の構成を示す図である。
【図14】図14(A)は、図14(B)における14A−14A線断面図である。図14(B)は、第2実施形態に係る溝部が、一の開口部から他の開口部へ加湿液を循環させる構成における全体構成を示す図である。
【図15】図15は、本実施形態に係る凹部を形成する凹部形成プレートが、ノズルが形成されたノズル面に積層された構成における溝部の構成を示す図である。
【図16】図16は、第2実施形態に係るインクジェット記録ヘッドにおいて、ノズルが2次元に配列される構成を示す図である。
【図17】図17は、インクジェット記録装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0094】
10 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
22 ノズル
26 圧力室
28 供給路(第1流路)
40 開口部
41 開口部
42 加湿液流路(第2流路)
48 送液ポンプ(加湿液循環手段)
49 バルブ(停止手段)
50 溝部
60 溝部
70 溝部
80 溝部
90 溝部
92 凹部
94 凹部形成プレート
102 インクジェット記録装置(画像形成装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルと、
前記ノズルに通じた圧力室と、
前記圧力室へ液体を供給する第1流路と、
前記ノズルの周囲に形成された開口部と、
前記開口部へ加湿液を供給する第2流路と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記開口部は、前記第2流路下に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第2流路は、前記ノズルの外周に沿って形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第2流路の両端部に加湿液供給口と加湿液排出口が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
前記開口部は、その平面形状がスリット状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
前記開口部は、前記ノズルに対して複数形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
前記開口部から前記ノズルに向かって形成され、前記開口部から前記加湿液が供給される溝部を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
前記開口部と前記ノズルが形成された面に撥水処理がなされ、前記溝部の溝内は、撥水処理されていないことを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
前記ノズルの周縁に前記開口部が形成された面より凹に形成された凹部を有し、
前記溝部は、前記凹部の周囲に形成されたことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
前記溝部は、一の開口部から他の開口部へ前記加湿液を循環させることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項11】
前記ノズル及び前記開口部に正圧を与える第1工程と、
前記加湿液の供給を停止して、前記液体を前記ノズルに充填する第2工程と、
前記加湿液の供給の停止を解除して、前記加湿液を前記開口部に充填する第3工程と、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載の液滴吐出ヘッドにおける充填方法。
【請求項12】
前記ノズル及び開口部が形成された形成面を払拭する第1工程と、
前記液滴を予備吐出する第2工程と、
前記加湿液を循環させる第3工程と、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出ヘッドにおけるメンテナンス方法。
【請求項13】
前記加湿液を循環させる加湿液循環手段と、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
前記加湿液の供給を停止する停止手段と、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−114511(P2008−114511A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300960(P2006−300960)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】