説明

液滴吐出ヘッドの流路形成部材の固定方法

【課題】材料選択が容易となる、液滴吐出ヘッドの流路の周囲を構成する枠部に流路の底部を構成する基材部を固定する固定方法を提供する。
【解決手段】高温の温度環境下に放置するとことで、枠部120を基材部150よりも膨張させ枠部120の内壁122と基材部150の外壁152との隙間145を広げた状態で、隙間145にガスケット140を配置して枠部120と基材部150とを組み付ける。そして、温度環境を高温から常温に下げ、枠部120が基材部150よりも収縮し枠部120の内壁122と基材部150の外壁152との隙間145を狭くすることによって、ガスケット140が弾性変形して密着して密閉(シール)し、枠部120に基材部150が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドの流路形成部材の固定方法、特に、流路の周囲を構成する枠部に前記流路の底部を構成する基材部を固定する固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)において、インク流路を構成する部材同士を接合(固定)する場合には、エポキシ系接着剤などの耐液性(耐インク性)に優れた接着剤を用いて部材同士を接着することが多い。しかし、優れた接着性能(固定性能)と優れた耐液性を両立させることは難しいとされている。
【0003】
よって、耐液性の優れたコーティング剤で弾性接着剤を覆うように弾性接着剤をコーティング(塗布)する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−216632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、弾性接着剤を耐液性の優れたコーティング剤でコーティング(塗布)する方法は、製造工程(製造プロセス)が煩雑になる。また、弾性接着剤の表面にボイドが形成されないように均一にコーティング剤でコーティングすることは難しい。
【0006】
更に、インク(液体)、各部材、接着剤、及びコーティング剤の種々ある組み合わせから、接着性能、耐液性、及び相性等を検討し、高い信頼性を確保できる最適な組み合わせを見出すことは容易なことではない。
【0007】
本発明は、上記を考慮し、材料選択が容易となる液滴吐出ヘッドの流路の周囲を構成する枠部に前記流路の底部を構成する基材部を固定する固定方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、液滴吐出ヘッドの流路の周囲を構成する枠部に前記流路の底部を構成する基材部を固定する固定方法であって、前記枠部が熱膨張係数の大きな材料で構成され、且つ、前記基材部が前記枠部よりも熱膨張係数の小さな材料で構成され、当該液滴吐出ヘッドの使用環境温度よりも高温の温度環境下で、前記枠部の内側に前記基材部を挿入して組み付けると共に、前記枠部の内壁と、前記枠部の前記内壁と対向する前記基材部の外壁と、の隙間に弾性部材を配置する第一工程と、温度環境を前記高温から前記使用環境温度に下げ、前記枠部が前記基材部よりも収縮し前記隙間を狭くすることによって前記弾性部材を弾性変形させ、前記枠部に前記基材部を固定する第二工程と、を有する液滴吐出ヘッドの流路の周囲を構成する枠部に前記流路の底部を構成する基材部を固定する固定方法。
【0009】
請求項1の発明では、当該液滴吐出ヘッドの使用環境温度よりも高温の温度環境下とするとことで、枠部を基材部よりも膨張させ、つまり枠部の内壁と基材部の外壁との隙間を広げた状態で、枠部に基材部を挿入して組み付けると共に、枠部の内壁と基材部の外壁との隙間に弾性部材を配置する。
【0010】
そして、温度環境を高温から使用環境温度に下げ、枠部が基材部よりも収縮し隙間が狭くなることによって、弾性部材が弾性変形して密着して隙間を密閉(シール)し、また弾性部材が壁を押す押圧力で枠部に基材部が固定される。
【0011】
つまり、接着剤を使用することなく、インク流路の周囲を構成する枠部に底部を構成する基材部が固定される。
【0012】
よって、枠部、基材部、及び弾性部材の材料選択は、接着剤による接着性を考慮することなく、流路を流れる液体に対する耐液性(液体が浸しても(接触しても)変化しにくい性質)を主眼として選択すればよい(接着が困難であるが耐液性に優れた材料が選択できる)。
【0013】
このため、材料選択が容易となると共に、材料選択の自由度が大幅に広がる。したがって、優れた固定性能(枠部に基材部が固定される固定力)と優れた耐液性とを容易に両立することができる。
【0014】
また、枠部に基材部を接着剤で接着した場合、温度変化に伴い、熱膨張係数の差による枠部と基材部との膨張差又は収縮差が発生し、接着され一体化された枠部及び基材に反り等の変形が生じる畏れがある。しかし、本発明では、弾性部材の潰れ代が変化することで膨張差又は収縮差が吸収されるので、反り等の変形が防止又は抑制される。
【0015】
請求項2の発明は、前記枠部又は前記基材部が、液晶ポリマーで構成されている。
【0016】
請求項2の発明では、枠部又は基材部が、液晶ポリマーで構成されている。液晶ポリパーは種々の液体に対して優れた耐液性を有するが、接着接合しにくい材料とされている。しかし、本固定方法は接着剤を用いることなく優れた固定性能を有するので、液晶ポリマーを用いて耐液性と実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、材料選択が容易となり、その結果、優れた固定性能と優れた耐液性とを容易に両立することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明では、液晶ポリマーを用いることで、優れた耐液性を有する液滴吐出ヘッドの流路とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の固定方法が適用されて製造された第一実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】(A)は本発明の固定方法が適用されて製造された第一実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を模式的に示す斜視図であり、(B)は(A)のB−B線に沿った断面図である。
【図3】本発明の固定方法が適用されて製造された第二実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を模式的に示す分解斜視図である。
【図4】(A)は本発明の固定方法が適用されて製造された第二実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を模式的に示す斜視図であり、(B)は(A)のB−B線に沿った断面図である。
【図5】インクジェット記録ヘッドのインク流路の周囲を構成する枠部にインク流路の底部を構成する基材部を固定する様子を(A)から(C)へと順番に示した工程図である。
【図6】インクジェット記録ヘッドのインク流路の周囲を構成する枠部及び基材部が温度変化しても反り等の変形が生じないことを説明する説明図であり、(B)は基準の状態を示す図であり、(A)は(B)の状態から温度が上がった状態の図であり、(C)は(B)の状態から温度が下がった状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1、図2、図5、図6を用いて、本発明の第一実施形態に係る液滴吐出ヘッドの枠部に基材部を固定する固定方法について説明する。
【0021】
先ず、本発明の固定方法が適用されて組み立てられた(製造された)インクジェット記録ヘッド100の要部について、図1と図2とを用いて説明する。なお、図1は本発明の固定方法が適用されて製造された第一実施形態のインクジェット記録ヘッド100の要部を模式的に示す分解斜視図である。図2(A)は、本発明の固定方法が適用されて製造された第一実施形態のインクジェット記録ヘッド100の要部を模式的に示す斜視図である(図1の組図である)。図2(B)は(A)のB−B線に沿った断面図である。
【0022】
図1と図2とに示すように、インクジェット記録ヘッド100の要部は、平面視略四角形の板状の基材部150と、平面視四角形状の枠部120と、四角枠状の弾性体で構成されたガスケット140と、を主要な構成部材として構成されている。そして、インク流路110に周囲を枠部120が構成し、基材部150がインク流路110の底部を構成している。
【0023】
基材部150の下面にはインク滴を吐出する複数のノズル(図示略)が形成されたノズルプレート(図示略)が接合されている(基材部150とノズルプレートとは一体化されている)。
【0024】
また、基材部150の内部には、各ノズル(図示略)に連通した複数の圧力室(図示略)と、圧力室に連通するインク経路(図示略)が形成されている。また、圧力室壁面部分には圧力室に圧力を発生させノズルからインク滴を吐出させるための圧力発生手段(例えば、ピエゾ素子や発熱素子等)が設けられている。そして、基材部150の上面部154には、圧力室に連通するインク経路(図示略)の複数の開口部156が形成されている。なお、ここで説明した基材部150の内部やノノズル等の構造は一例であって、これに限定されない。他の構造であってもよい。
【0025】
図2に示すように、ガスケット140は、基材部150の外壁152(図1参照)と枠部120の内壁122とに挟まれ弾性変形して潰れ、基材部150の外壁152と枠部120の内壁122と隙間145を密閉(シール)する。また、ガスケット140が弾性変形して潰れたことよって生じる内壁122と外壁52を押す押圧力で、基材部150が枠部120に固定されている(基材部150と枠部120とが一体化されている)。
【0026】
このようにインクジェット記録ヘッド100は、インク流路110の周囲を枠部120が構成し、この枠部120の内側にインク流路110の底部を構成する基材部150がはめ込めまれ、固定された構造となっている。そして、インクタンク(図示略)から送られたインクが枠部120の中に充填され、充填されたインクが基材部150の上面部154に形成された開口部156から基材部150の内部に形成されたインク経路を介して圧力室(図示略)に充填される。圧力室に充填されたインクは圧力変動手段(図示略)によってノズル(図示略)から吐出される。
【0027】
なお、枠部120、基材部150、及びガスケット140は、インクジェット記録ヘッド100に使用するインクに対する耐インク性(耐液性)に優れた材料、つまりインクが接触しても(インクに浸しても)変化しにくい性質を有する材料で構成されている。
【0028】
また、枠部120の熱膨張係数(熱膨張率)K1は、基材部150の熱膨張係数(熱膨張率)K2よりも大きいとされている(K1>K2)。
【0029】
例えば、枠部120に適用する耐インク性に優れ且つ線膨張係数の大きな材料例としては、エポキシ材料、アクリル材料、液晶ポリマーなどの樹脂系材料があげられる(熱膨張係数K1は、〜数10×10−6/℃)。
【0030】
基材部150に適用する耐インク性に優れ且つ枠部120よりも線膨張係数の小さな材料例としては、シリコン、窒化ケイ素、窒化アルミなどがあげられる(熱膨張係数K2は、〜数×10−6/℃)。
【0031】
また、ガスケット140に適用する耐インク性に優れた弾性体としては、フッ素ゴムなどがあげられる。
【0032】
つぎに、インクジェット記録ヘッド100のインク流路110の周囲を構成する枠部120と基材部150との固定方法について、図5を用いて説明する。なお、図5は、インクジェット記録ヘッド100のインク流路110の周囲を構成する枠部120に底部を構成する基材部150を固定する様子を(A)から(C)へと順番に示した工程図である。
【0033】
図5(A)に示すように、先ず、枠部120、基材部150、及びガスケット140を高温の温度環境下に放置する。温度が上がることによって枠部120と基材部150とが熱膨張する。このとき、枠部120の熱膨張係数K1は基材部150の熱膨張係数K2よりも大きいので、枠部120の方が基材部150よりも膨張する。
【0034】
図5(B)に示すように、高温の温度環境下で熱膨張した状態で、枠部120の内側に基材部150を挿入し組み付ける。また、枠部120の内壁122と基材部150の外壁152との隙間145にガスケット140を配置する。このとき、枠部120の内壁122と基材部150の外壁152との隙間145は、熱膨張差によって常温よりも大きな幅t1となっている。そして、この隙間145の幅t1は、ガスケット140の厚みhよりも大きく設定、或いは殆ど同じに設定することで、ガスケット140に隙間145に配置して、枠部120と基材部150とを容易に組み付けることができる。
【0035】
なお、このときガスケット140は、弾性変形していない状態、或いは殆ど弾性変形してない状態である。
【0036】
つぎに、図5(C)に示すように、常温まで温度を下げる。このとき枠部120の熱膨張係数は基材部150よりも大きいので、枠部120の方が基材部150よりも収縮する。つまり、枠部120の内壁122と基材部150の外壁152との隙間145が狭くなる(幅t1が幅t2になる)。なお、幅t2はガスケット140の厚みhよりも、狭くなるように設定する。隙間145が幅t1から幅t2に狭くることによって、ガスケット140が弾性変形して潰れる。そして、ガスケット140が弾性変形して潰れることによって隙間145が密閉(シール)されると共に、ガスケット140が弾性変形して潰れることによって生じる押圧力によって枠部120に基材部150が固定される(基材部150と枠部120とが一体化される)。
【0037】
ここで、例えば、基材部150の長さ50mm且つ線膨張係数が2×10−6/℃とされ、枠部120の熱膨張係数が20×10−6/℃とされた場合、25℃(常温)から125℃(高温)まで下げた場合(温度差100℃)、50mm×1000℃×(20−2)=90μmの収縮差が生じる。そして、この収縮差(差分値)がガスケット140を弾性変形させる。
【0038】
なお、ガスケット140が弾性変形して潰れることによって隙間145が密閉(シール)されると共にこれによって生じる押圧力によって枠部120に基材部150が固定されるように、高温下における隙間145の幅t1、常温下における隙間145の幅t2、及びガスケット140の厚みh等が、適切な値となるように、各諸元(各部材の大きさや熱膨張係数等)を設定することは言うまでもない。
【0039】
また、高温の温度環境下は、インクジェット記録ヘッド100の使用温度環境よりも高くする。インクジェット記録ヘッド100の使用温度環境は、インクジェット記録ヘッド100が搭載された画像形成装置(図示略)が使用される環境温度(外気温)だけでなく、画像形成装置内部の、例えば電源等の影響による温度上昇によって、インクジェット記録ヘッド100が環境温度(外気温度)よりも高くなる場合は、その温度上昇分も考慮する。
【0040】
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0041】
前述したように、高温の温度環境下に放置するとことで、枠部120を基材部150よりも膨張させ枠部120の内壁122と基材部150の外壁152との隙間145を広げた状態(幅t1)で、隙間145にガスケット140を配置して、枠部120と基材部150とを組み付ける。
【0042】
そして、温度環境を高温から常温に下げ、枠部120を基材部150よりも収縮させて隙間145を狭くすることによって(幅t1を幅t2に狭くすることによって)、ガスケット140を潰して密着させて密閉(シール)し、且つ押圧力によって枠部120に基材部150を固定させる。
【0043】
つまり、接着剤を使用することなく、インクジェット記録ヘッド100のインク流路110の周囲を構成する枠部120に底部を構成する基材部150が固定される。別の言い方をすると、枠部120と基材部150とを接合(剛接合)することなく、枠部120と基材部150とが一体化されている。
【0044】
よって、枠部120、基材部150、及びガスケット140の材料選択は、接着剤による接着性を考慮することなく、インク流路110を流れるインクに対する耐インク性(耐液性)を主眼に選択すればよい(接着性が困難であるが耐液性に優れた材料が選択できる)。
【0045】
これにより、材料選択が容易となると共に、材料選択の自由度が大幅に広がる。したがって、インクジェット記録ヘッド100のインク流路110の周囲を構成する枠部120と基材部150との固定部位(嵌合部位)における優れた固定性能と優れた耐液性とを容易に両立することができる。
【0046】
なお、枠部120又は基材部150を液晶ポリマーで構成することで、種々のインク(液体)に対して優れた耐液性を有するインクジェット記録ヘッド100のインク流路110となる。液晶ポリマーは種々の液体(インク)に対して優れた耐液性を有するが、接着接合しにくい材料とされている。
【0047】
しかし、本固定方法は接着剤を用いることなく優れた固定性能を有するので、液晶ポリマーを用いて優れた耐液性を実現することができる。
【0048】
なお、本発明を適用することで、液晶ポリマーに限らず接着接合が困難であるが、優れた耐液性を有する材料を用いることができる。
【0049】
ここで、枠部120と基材部150とを仮に接着剤で接着して一体化した場合(剛接合した場合)、温度変化に伴い枠部120と基材部150との膨張差又は収縮差によって、一体化した枠部120及び基材部150に反り等の変形が生じる畏れがある。
【0050】
しかし、本発明では、枠部120と基材部150とを接合(剛接合)することなく、枠部120と基材部150とが一体化されている。よって、図6に示すように、ガスケット140が弾性変形し且つ固定性能が確保される範囲であれば、隙間145が「(A)幅t3←→(B)幅t2←→(C)幅t1」と変化し、それによってガスケット140の潰れ代が変化するので、温度変化に伴う膨張差又は収縮差が吸収される。よって、一体化された枠部120及び基材部150の反り等の変形が防止又は抑制される。
【0051】
なお、図6は、インクジェット記録ヘッドのインク流路を構成する基材部150及び枠部120が温度変化によっても反り等の変形が生じないことを説明する説明図であり、(B)は基準の状態を示す図であり、(A)は(B)の状態から温度が上がった状態の図であり、(C)は(B)の状態から温度が下がった状態の図である。
【0052】
つぎに、本発明の第二実施形態のインクジェット記録ヘッドについて、図3と図4とを用いて説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0053】
図3は本発明の固定方法が適用されて製造された第二実施形態のインクジェット記録ヘッド200の要部を模式的に示す分解斜視図である。なお、図4(A)は、本発明の固定方法が適用されて製造された第二実施形態のインクジェット記録ヘッド200の要部を模式的に示す斜視図である(図3の組図である)。図4(B)は(A)のB−B線に沿った断面図である。
【0054】
図3と図4とに示すように、インクジェット記録ヘッド200は、平面視略四角形の板状の基材部250と、平面視日字状の枠部220と、弾性体で構成された四角枠状のガスケット242、244と、を主要な構成部材として構成されている。そして、インク流路210、212の周囲を枠部220が構成し、インク流路210、212の底部を基材部250が構成している。
【0055】
枠部220は、平面視において対向する内壁222間を連結する連結梁部224が設けられている。言い換えると、枠部220は二つの枠部220A、220Bで構成されている。
【0056】
基材部250の中央部分には、枠部220の連結梁部224の幅よりも幅広の凹溝258が形成されている。言い換えると、基材部250は、二つの基材部250A,250Bで構成されている。
【0057】
また、基材部250は、第一実施形態と同様に下面にはインク滴を吐出する複数のノズル(図示略)が形成されたノズルプレート(図示略)が接合されている。また、内部構造も第一実施形態と同様に、圧力室(図示略)、インク経路(図示略)、及び圧力発生手段(例えば、ピエゾ素子や発熱素子等)が設けられている。そして、基材部250の上面部254(254A,254B)には、圧力室に連通するインク経路(図示略)の複数の開口部256が形成されている。
【0058】
図4に示すように、枠部220の内壁222及び連結梁部224の内壁223Aと、基材部250の外壁252及び凹溝258の側壁260Aとの隙間247に、ガスケット244が挟まれ弾性変形して潰れることによって密閉(シール)されている。同様に、枠部220の内壁222及び連結梁部224の内壁223Bと、基材部250の外壁252及び凹溝258の側壁260Bとの隙間245に、ガスケット242が挟まれ弾性変形して潰れることによって密閉(シール)されている。また、ガスケット242、244が弾性変形し潰れたことによって生じる押圧力によって、基材部250が枠部220に固定されている(基材部250と枠部220とが一体化されている)。
【0059】
なお、インク流路210の周囲を枠部220Aが構成し、この枠部220Aにインク流路210の底部を構成する基材部250A(上面部254A側)がはめ込まれて固定された構成とされ、インク流路212の周囲を枠部220Bが構成し、この枠部220Bにインク流路212の底部を構成する基材部250B(上面部254B側)がはめ込まれて固定された構成とされている。
【0060】
そして、インクタンク(図示略)から送られたインクが枠部220A,220Bの中に充填され、充填されたインクが基材部250の上面部254A,254Bに形成された開口部256から基材部250の内部に形成されたインク経路を介して圧力室(図示略)に充填される。圧力室に充填されたインクは圧力変動手段(図示略)によってノズル(図示略)から吐出される。
【0061】
また、枠部220は耐インク性に優れ、且つ熱膨張係数(熱膨張率)が基材部250の熱膨張係数(熱膨張率)も大きな材料で構成されている。また、基材部150は耐インク性に優れ且つ枠部120よりも線膨張係数(熱膨張率)が小さな材料で構成されている。
【0062】
なお、枠部220、基材部250、及びガスケット242、244の具体的な材料及び熱膨張率は、第一実施形態と同様であるので詳しい説明を省略する。
【0063】
また、インクジェット記録ヘッド200のインク流路210、212の周囲を構成する枠部150(150A,150B)と基材部250(205A,250B)との固定方法については、第一実施形態と同様である。よって、以下に簡単に説明する。
【0064】
すなわち、先ず、枠部220及び基材部250を高温の温度環境下で熱膨張させた状態で、枠部220に基材部250を挿入すると共に、ガスケット242、244を隙間245、247に配置する。このとき、枠部220の連結梁部224を基材部250の凹溝258にはめ込むように組み付ける。
【0065】
言い換えると、枠部220Aと基材部250Aとの隙間247にガスケット242を配置し、枠部220Bと基材部250Bとの隙間245にガスケット244を配置する。
【0066】
そして、常温まで温度を下げることによって、ガスケット242、244が弾性変形して潰れる。そして、ガスケット242、244が弾性変形して潰れることによって隙間245,247が密閉(シール)されると共に、ガスケット242、244が弾性変形することによって生じる押圧力によって枠部220に基材部250が固定される(基材部250と枠部220とが一体化される)。
【0067】
本実施形態の作用効果も、第一実施形態と同様に、接着剤を使用することなく、インクジェット記録ヘッド200のインク流路210、212の周囲を構成する枠部220(枠部220A,220B)に基材部250(基材部250A,250B)が固定される。別の言い方をすると、枠部220(枠部220A,220B)と基材部250(基材部250A,250B)とを接合(剛接合)することなく、枠部220(枠部220A,220B)と基材部250(基材部250A,250B)とが一体化されている。
【0068】
よって、枠部220、基材部250、及びガスケット242、244の材料選択は、接着剤による接着性を考慮することなく、インク流路210、212を流れるインクに対する耐インク性を主眼に選択すればよい。
【0069】
これにより、材料選択が容易となると共に、材料選択の自由度が大幅に広がる。したがって、インクジェット記録ヘッド200のインク流路210、212の周囲を構成する枠部220(枠部220A,220B)と基材部250(基材部250A,250B)との固定部位(嵌合部位)における優れた固定性能と優れた耐液性とを容易に両立することができる。
【0070】
また、枠部220又は基材部250を液晶ポリマーで構成することで、種々のインク(液体)に対して優れた耐液性を有するインクジェット記録ヘッド200のインク流路210、212となる。液晶ポリパーは種々のインク(液体)に対して優れた耐液性を有するが、接着接合しにくい材料とされている。しかし、本固定方法は接着剤を用いることなく優れた固定性能を有するので、液晶ポリマーを用いて優れた耐液性を実現することができる。なお、本発明を適用することで、液晶ポリマーに限らず接着接合が困難であるが、優れた耐液性を有する材料を流路基材として用いることができる。
【0071】
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0072】
例えば、上記実施形態では、枠部と基材部は平面視四角形状であったがこれに限定されない。四角形以外の、例えば多角形状や円形(楕円も含む)であってもよい。
【0073】
また、例えば、上記インクジェット記録ヘッドは、所謂オンデマンド方式のインクジェット記録ヘッドであるが、他の方式のインクジェット記録ヘッドであってもよい。例えば、帯電式(連続式)のインクジェット記録ヘッドにも適用することができる。なお、帯電式(連続式)のインクジェットはMEKなどの溶剤系のインクを使用することが多いので、本発明を適用することは好適とされる。
【0074】
なお、本発明が適用されたインクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)から吐出する液体は画像形成に用いるインクに限定されない。様々な工業的用途を対象とした液滴を吐出するインクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)に対して、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
100 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
110 インク流路(流路)
120 枠部
122 内壁
140 ガスケット(弾性部材)
150 基材部
152 外壁
200 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
210 インク流路(流路)
212 インク流疎(流路)
220 枠部
220A 枠部
220B 枠部
222 内壁
223A 内壁
223B 内壁
242 ガスケット(弾性部材)
244 ガスケット(弾性部材)
250 基材部
250A 基材部
250B 基材部
252 外壁
260A 側壁(外壁)
260B 側壁(外壁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出ヘッドの流路の周囲を構成する枠部に前記流路の底部を構成する基材部を固定する固定方法であって、
前記枠部が熱膨張係数の大きな材料で構成され、且つ、前記基材部が前記枠部よりも熱膨張係数の小さな材料で構成され、
当該液滴吐出ヘッドの使用環境温度よりも高温の温度環境下で、前記枠部の内側に前記基材部を挿入して組み付けると共に、前記枠部の内壁と、前記枠部の前記内壁と対向する前記基材部の外壁と、の隙間に弾性部材を配置する第一工程と、
温度環境を前記高温から前記使用環境温度に下げ、前記枠部が前記基材部よりも収縮し前記隙間を狭くすることによって前記弾性部材を弾性変形させ、前記枠部に前記基材部を固定する第二工程と、
を有する液滴吐出ヘッドの流路の周囲を構成する枠部に前記流路の底部を構成する基材部を固定する固定方法。
【請求項2】
前記枠部又は前記基材部が、液晶ポリマーで構成されている請求項1に記載の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−208130(P2010−208130A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56238(P2009−56238)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】