説明

液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置

【課題】ガラス基材とシリコン基材との接合位置精度を向上させる。
【解決手段】電極部を有するガラス基材と、振動部を有するシリコン基材と、ノズル部を有するノズル基材と、を備えた液滴吐出ヘッドの製造方法であって、前記ガラス基材と前記シリコン基材のうち少なくとも一方の面に、レーザー光を吸収する吸収材を付着する吸収材付着工程と、前記吸収材を介して、前記ガラス基材とシリコン基材とを重ね合わせるとともに、接合の位置の位置決めを行うアライメント工程と、常温下において、前記吸収材に向けてレーザー光を照射して、前記ガラス基材と前記シリコン基材とを接合する第1接合工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出ヘッドは、例えば、電極部を有するガラス基材と、振動部を有するシリコン基材と、ノズル部を有するノズル基材と、を備え、これらの基材を互いに接合した積層構造を有している。ここで、上記の基材の接合方法としては、例えば、ガラス基材とシリコン基材とを陽極接合によって接合させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−27155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の基材の接合方法における陽極接合は、300℃以上の高温下で行われる。このため、陽極接合時において、ガラス基材とシリコン基材との熱膨張係数の差に起因して、位置ずれが発生してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる液滴吐出ヘッドの製造方法は、電極部を有するガラス基材と、振動部を有するシリコン基材と、ノズル部を有するノズル基材と、を備えた液滴吐出ヘッドの製造方法であって、前記ガラス基材と前記シリコン基材のうち少なくとも一方の面に、レーザー光を吸収する吸収材を付着する吸収材付着工程と、前記吸収材を介して、前記ガラス基材とシリコン基材とを重ね合わせ、位置決めを行うアライメント工程と、常温下において、前記吸収材に向けてレーザー光を照射して、前記ガラス基材と前記シリコン基材とを接合する第1接合工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ガラス基材とシリコン基材のうち少なくとも一方の面に吸収材が付着され、当該吸収材を介して、ガラス基材とシリコン基材とが重ね合わされる。そして、吸収材に向けてレーザー光が照射される。照射されたレーザー光は、吸収材に吸収され、このときの吸収熱によって、ガラス基材とシリコン基材の界面が溶融して両基材が接合される。ここで、レーザー光の照射は、常温下で行われるため、ガラス基材やシリコン基材が受ける熱的影響が少ない。従って、ガラス基材及びシリコン基材の熱膨張が低減され、位置ずれを防止し、精度良く基材の接合を行うことができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる液滴吐出ヘッドの製造方法の前記吸収材付着工程では、前記ガラス基材を複数含む第1基板と前記シリコン基材を複数含む第2基板のうち少なくとも一方の面であって、前記ガラス基材または前記シリコン基材が形成された機能部形成領域以外の領域に前記吸収材を付着し、前記アライメント工程では、前記吸収材を介して、前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせ、位置決めを行い、前記第1接合工程では、付着された前記吸収材に向けてレーザー光を照射し、前記第1接合工程の後に、陽極接合により前記第1基板と前記第2基板とを接合する第2接合工程を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1基板と第2基板のうち少なくとも一方の面であって、ガラス基材またはシリコン基材が形成された機能部形成領域以外の領域に吸収材が付着される。ここで、第1基板は、ガラス基材を複数含む基板であり、例えば、ガラスウエハである。また、第2基板は、シリコン基材を複数含む基板であり、例えば、シリコンウエハである。そして、吸収材を介して、第1基板と第2基板とが重ね合わさ、吸収材に向けてレーザー光が照射される。照射されたレーザー光は、吸収材に吸収され、このときの吸収熱によって、ガラス基材とシリコン基材の界面が溶融して両基板が接合される。ここで、レーザー光は、ガラス基材またはシリコン基材が形成された機能部形成領域以外の領域に付着された吸収材に向けて照射される。つまり、電極部や振動部等の機能部には、レーザー光が照射されないので、レーザー光の照射による電極部等の損傷を防止することができる。また、機能部形成領域以外の領域とは、例えば、ウエハの外周部等に該当し、通常は、液滴吐出ヘッドとしては機能しない不要領域であるため、レーザー光の照射精度を高く求める必要がない。つまり、工程管理が容易となる。ところで、第1基板と第2基板は、それぞれの外周面のみ(部分的に)接合されているため、機能部が形成された部分の接合が不十分である。そこで、第1接合工程の後に、陽極接合を行い、第1基板と第2基板とを全体的に接合する。つまり、第1接合工程において、仮接合が行われ、その後の第2接合工程において、本接合が行われる。従って、陽極接合(本接合)の前に、仮接合を施すことにより、陽極接合時の高温化におけるガラス基材とシリコン基材との熱膨張係数の差による位置ずれを低減させることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる液滴吐出ヘッドの製造方法の前記第1接合工程では、前記ガラス基材側から前記シリコン基材側に向けて前記レーザー光を照射することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、レーザー光が、ガラス基材を透過するため、ガラス基材の表面を損傷させることなく、効率よく吸収材に向けて照射することができる。
【0012】
[適用例4]本適用例にかかる液滴吐出ヘッドは、上記の液滴吐出ヘッドの製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ガラス基材とシリコン基材との接合位置精度に優れた液滴吐出ヘッドを提供することができる。
【0014】
[適用例5]本適用例にかかる液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、高品位な液滴吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図。
【図2】液滴吐出ヘッドの製造方法を示す工程図。
【図3】液滴吐出ヘッドの製造方法を示す工程図。
【図4】レーザー光照射装置の構成を示す概略図。
【図5】液滴吐出装置の構成を示す概略図。
【図6】変形例における液滴吐出ヘッドの製造方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮小を異ならせて図示している。
【0018】
(液滴吐出ヘッドの構成)
まず、本実施形態にかかる液滴吐出ヘッドの構成について説明する。図1は、液滴吐出ヘッドの構造を示す断面図である。
【0019】
図1に示すように、液滴吐出ヘッド1は、電極部11を有するガラス基材10と、振動部21を有するシリコン基材20と、ノズル部31を有するノズル基材30を備えている。そして、これらの部材が積層された三層構造となっている。
【0020】
液滴吐出ヘッド1は、振動部21と振動部21に所定の間隔Gで対向配置された電極部11とからなる静電アクチュエーターAによって振動部21を変位させて、液体(インク)を収容した液体室22の容積を変化させることにより、ノズル部31から液体(インク)を液滴として吐出するものである。また、液滴吐出ヘッド1には、複数のノズル部31が形成され、各ノズル部31に連通する液体室22と静電アクチュエーターAが、各ノズル部31に対応して各基材に複数区画形成されている。
【0021】
ガラス基材10は、厚みがおよそ1mmのホウ珪酸系の耐熱硬質硝子である。図1に示すように、ガラス基材10には、凹部12が形成され、当該凹部12の底面に静電アクチュエーターAの一部を構成する電極部11が形成されている。電極部11は、透明性を有する導電膜であり、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)をスパッタ法等で厚みおよそ0.1μmに成膜したものである。また、ガラス基材10には、液体(インク)を外部から供給するためのインク供給孔40の一部が形成されている。
【0022】
シリコン基材20は、厚みおよそ140μmの面方位(110)の単結晶シリコン基材である。図1に示すように、シリコン基材20には、振動部21を一構成面とする液体室22と液体室22にインク(液体)を供給するための共通インクキャビティであるリザーバー24とが異方性エッチングによって形成されている。また、リザーバー24の底面には、インクを外部から供給するためのインク供給孔40の一部が形成されている。また、静電アクチュエーターAを駆動したときに、振動部21と電極部11とが当接して電気的に短絡しないように、シリコン基材20の接合面には、絶縁膜26が形成されている。この絶縁膜26は、TEOS(Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane)をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、厚みおよそ0.1μmに成膜して形成されている。また、シリコン基材20には、各振動部21に共通する共通電極25が形成されている。そして、ガラス基材10とシリコン基材20とが接合され、振動部21とこれに所定の間隔Gで対向配置された電極部11との間に形成される隙間の一部が封止剤45によって封止されている。
【0023】
ノズル基材30は、厚みがおよそ180μmのシリコンの薄板材である。ノズル基材30には、液体室22と連通するノズル部31が複数形成されている。また、液体室22にリザーバー24から液体(インク)を供給するための流路であるオリフィス23を構成するための凹部23aが異方性エッチングにより形成されている。そして、オリフィス23を構成する凹部23aを覆うように、シリコン基材20とノズル基材30とが接合されている。尚、ノズル基材30は、シリコン材料の他、ホウ珪酸系の硬質ガラスやステンレス等の鋼板、プラスチック等の樹脂板等が材料として用いられる。
【0024】
上記のような液滴吐出ヘッド1の駆動方法について説明する。液滴吐出ヘッド1には、電極部11とシリコン基材20に設けられた共通電極25との間に発振回路50が電気的に接続されており、当該発振回路50から例えば24kHzで電極部11と共通電極25との間に駆動電圧30Vの電圧パルスを印加する。すると、電極部11が正に帯電した場合、電極部11に対向する振動部21は負に帯電して振動部21は静電気力により電極部11に引き付けられる。電圧パルスの印加が解除され蓄えられた電荷が放電されると振動部21は元の位置に戻る。このような振動部21の変位により液体室22の容積が変化して、液体室22に充填された液体(インク)が加圧されノズル部31から液滴として吐出される。
【0025】
尚、使用される液体(インク)は、水、アルコール等の主溶媒にエチレングリコール等の界面活性剤と、染料または顔料とを溶解または分散させることにより調整される。さらに、液滴吐出ヘッド1にヒーター等を付設すれば、ホットメルトタイプのインクも使用できる。また、本実施形態の液滴吐出ヘッド1は、フェイスインクジェット方式であるが、インクを吐出するノズル部31をシリコン基材20またはノズル基材30の端面に開口させたエッジインクジェット方式であってもよい。
【0026】
(液滴吐出ヘッドの製造方法)
次に、液滴吐出ヘッドの製造方法について説明する。図2及び図3は、液滴吐出ヘッドの製造方法を示す工程図である。液滴吐出ヘッド1の製造方法は、ガラス基材10とシリコン基材20のうち少なくとも一方の面に、レーザー光Lを吸収する吸収材eを付着する吸収材付着工程と、吸収材eを介して、ガラス基材10とシリコン基材20とを重ね合わせ、位置決めを行うアライメント工程と、常温下において、吸収材eに向けてレーザー光Lを照射して、ガラス基材10とシリコン基材20とを接合する第1接合工程と、を含むものである。
【0027】
なお、本実施形態にかかる液滴吐出ヘッドの製造方法では、レーザー光Lを照射するレーザー光照射装置100を用いる。そこで、まず、レーザー光照射装置100の構成について説明する。図4は、レーザー光照射装置の構成を示す概略図である。図4に示すように、レーザー光照射装置100は、レーザー発振器101と、レーザー発振器に接続されたレンズホルダー102と、レンズホルダー102を支持する3軸コントロール装置103と、レーザー発振器101及び3軸コントロール装置103を制御する制御部104等で構成されている。レーザー光照射装置100では、レーザー発振器101で発振されたレーザー光Lが、レンズホルダー102の内部に配置された集光レンズを通してワークWに向けて照射される。また、レーザー光Lの集光スポット等は、レンズホルダー102を支持する3軸コントロール装置103を駆動させ、レンズホルダー102の位置を移動させることにより制御することができる。なお、ワークWを載置するステージ側を3軸コントロールし、照射位置を制御することも可能である。さらに必要に応じてレーザー発振器101から出力されたレーザー光Lを複数に分岐させ、異なる位置にレーザー光Lを照射させることも可能である。レーザー光Lとしては、透明な被接合材を透過することができる性質をもつYAGレーザー等が好適である。
【0028】
液滴吐出ヘッドの製造方法に戻って説明する。本実施形態の吸収材付着工程では、ガラス基材10を複数含む第1基板10Aとシリコン基材20を複数含む第2基板20Aのうち少なくとも一方の面であって、ガラス基材10またはシリコン基材20が形成された機能部形成領域F以外の領域Nに吸収材eを付着し、アライメント工程では、吸収材eを介して、第1基板10Aと第2基板20Aとを重ね合わせるとともに、接合の位置の位置決めを行い、第1接合工程では、付着された吸収材eに向けてレーザー光Lを照射し、第1接合工程の後に、第1基板10Aと第2基板20Aとを陽極接合する第2接合工程を有するものである。
【0029】
本実施形態の液滴吐出ヘッド1の製造方法では、図2に示すように、複数のガラス基材10を含む第1基板10Aと複数のシリコン基材20を含む第2基板20Aが用いられる。第1基板10Aは、ガラス基材10を複数含むガラスウエハである。また、第2基板20Aは、シリコン基材20を複数含むシリコンウエハである。そして、第1基板10Aは、電極部11やインク供給孔40の一部が形成された複数のガラス基材10を含む機能部形成領域Fと機能部形成領域F以外の領域Nとを有している。機能部形成領域Fに形成されたガラス基材10は、液滴吐出ヘッド1の一部分を構成するものであるが、機能部形成領域F以外の領域Nは、液滴吐出ヘッド1としては寄与しない部分であり、後に、不要となる部分である。同様にして、第2基板20Aは、振動部21、液体室22、リザーバー24、絶縁膜26及びインク供給孔40の一部が形成された複数のシリコン基材20を含む機能部形成領域Fと機能部形成領域F以外の領域Nとを有している。機能部形成領域Fに形成されたシリコン基材20は、液滴吐出ヘッド1の一部分を構成するものであるが、機能部形成領域F以外の領域Nの部分は、液滴吐出ヘッド1としては寄与しない部分である。
【0030】
まず、図3(a)の吸収材付着工程では、第1基板10Aと第2基板20Aのうち少なくとも一方の面であって、機能部形成領域F以外の領域Nに吸収材eを付着する。本実施形態では、図3(a)に示すように、第1基板10Aの一方面に吸収材eを付着する。また、機能部形成領域F以外の領域Nを付着領域S1とし、付着領域S1に吸収材eを付着する(図2参照)。
【0031】
吸収材eは、レーザー光Lを吸収する材料であり、例えば、Fe等の金属の真空蒸着膜、金属のスパッタ蒸着膜、セラミック材蒸着膜、黒色塗料、油性塗料等である。
【0032】
次に、図3(b)のアライメント工程では、吸収材eを介して、第1基板10Aと第2基板20Aとを重ね合わせるとともに、両基板10A,20Aの接合の位置の位置決めを行う。
【0033】
次に、図3(c)の第1接合工程では、常温下において、付着された吸収材eに向けてレーザー光Lを照射し、吸収材eが付着された領域において第1基板10Aと第2基板20Aとを接合する。具体的には、図4に示したレーザー光照射装置100を用いて、レンズホルダー102からレーザー光Lを吸収材eに向けて照射する。このとき、吸収材eが付着した部分にレーザー光Lが集光するように、適宜、3軸コントロール装置103を制御する。また、本実施形態では、YAGレーザーを用い、第1基板10A側から第2基板20Aに向けてレーザー光Lを照射する。すなわち、レーザー光Lが透過するガラス基材10側から照射する。
【0034】
照射されたレーザー光Lは、吸収材eに吸収され、このときの吸収熱によって、第1基板10Aと第2基板20Aの界面が溶融し、第1基板10Aと第2基板20Aとが接合される。ここで、レーザー光Lの照射は、常温下で行われるため、第1基板10Aや第2基板20Aが受ける熱的影響が少ない。従って、第1基板10A(ガラス基材10)及び第2基板20A(シリコン基材20)の熱膨張を低減できる。さらに、レーザー光Lは、ガラス基材10またはシリコン基材20が形成された機能部形成領域F以外の領域Nに付着された吸収材eに向けて照射される。つまり、電極部11や振動部21等の機能部には、レーザー光Lが照射されないので、レーザー光Lの照射による電極部11等の損傷を防止することができる。また、機能部形成領域F以外の領域Nは、液滴吐出ヘッド1としては最終的に機能しない不要領域であるため、レーザー光Lの照射精度を高く求める必要がない。つまり、工程管理が容易となる。
【0035】
なお、本第1接合工程では、領域Nにおける接合、つまり、第1及び第2基板10A,20Aの外周部のみの接合である。すなわち、部分的に接合した仮接合である。そこで、機能部形成領域Fにおける接合を行うため、第1接合工程の後に、陽極接合を行う。
【0036】
図3(d)の第2接合工程では、陽極接合により、第1基板10Aと第2基板20Aとを接合する。すなわち、第1接合工程の仮接合の後に、本接合が行われる。陽極接合では、仮接合された第1基板10Aと第2基板20Aとを温度360℃で約30分間加熱した後に、第1基板10Aを陰極とし、第2基板20Aを陽極として800Vの電圧を5分間印加する。こうして、第1基板10Aと第2基板20Aとが接合される。
【0037】
次いで、図3(e)に示すように、第2基板20Aにノズル基材30を複数含む第3基板30Aを接合する。なお、第3基板におけるノズル基材30には、あらかじめ複数のノズル部31とオリフィス23を構成することとなる凹部23aが形成されている。そして、第2基板20Aと第3基板30Aとをエポキシ樹脂等の熱硬化型樹脂を用いて接着する。
【0038】
次いで、積層された第1〜第3基板10A,20A,30Aを機能部形成領域Fa毎に切断する。これにより、一の液滴吐出ヘッド1が形成される。その後、発振回路50等を接続する実装工程が行われる。
【0039】
(液滴吐出装置の構成)
次に、液滴吐出装置の構成について説明する。図5は、液滴吐出装置の構成を示す概略図である。
【0040】
図5に示すように、液滴吐出装置400は、記録紙401等を搬送するための送りローラー402,405と、送りローラー402,405に対向配置された記録紙401を押さえる押さえローラー403,404と、液滴吐出ヘッド1と、液体供給管410と、液体タンク部材409とで構成されている。
【0041】
液滴吐出ヘッド1は、ノズル面が記録紙401の印字面と所定の間隔で平行となるようにベース部材430を介してキャリッジ406に固定されている。また、液滴吐出ヘッド1のガラス基材10の面に液体タンク部材409に繋がった液体供給管410が接合されている。
【0042】
液滴吐出ヘッド1を移動させるキャリッジ406は、キャリッジ軸408に軸支され、図示しない駆動機構と連結してキャリッジ406を移動させるベルト407を有している。
【0043】
液滴吐出装置400は、フェイスインクジェット方式の液滴吐出ヘッド1を搭載しており、液滴吐出ヘッド1のガラス基材10に接合された液体供給管410を通じて液体タンク部材409からインクが供給される。すなわち、インク供給方向Kと液滴吐出方向Lが同一方向となるように構成されている。従って、液滴吐出ヘッド1が駆動すると、液滴Dがノズル面と平行に位置した記録紙401に吐出され、キャリッジ406の走査と記録紙401の送りによって印刷される。
【0044】
従って、本実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0045】
(1)第1基板10Aと第2基板20Aの機能部形成領域F以外の領域N(付着領域S1)にレーザー光Lを吸収する吸収材eを付着させ、当該吸収材eに向けてレーザー光Lを照射し、吸収材eのレーザー光照射による吸収熱により、第1基板10Aと第2基板20Aを仮接合した。その後、陽極接合により、第1基板10Aと第2基板20Aとを本接合した。ここで、レーザー光Lの照射は、常温下で行われるため、ガラス基材10やシリコン基材20が受ける熱的影響が少ない。従って、ガラス基材10及びシリコン基材20の熱膨張の影響を最小限に抑えて仮接合することにより、精度良くガラス基材10及びシリコン基材20の接合を行うことができる。
【0046】
(2)また、レーザー光Lは、機能部形成領域F以外の領域Nに付着された吸収材eに向けて照射される。従って、電極部11や振動部21等が形成されれた個々の機能部形成領域Faには、レーザー光Lが照射されないので、レーザー光Lの照射による電極部11等の損傷を防止することができる。
【0047】
なお、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0048】
(変形例1)上記実施形態の吸収材付着工程では、機能部形成領域F以外の領域Nの全域を付着領域S1として吸収材eを付着し、第1接合工程では、付着領域S1全体にレーザー光Lを照射して、第1基板10Aと第2基板20Aとを接合したが、これに限定されない。例えば、図6に示すように、機能部形成領域F以外の領域Nのうち一部(付着領域S2)に吸収材eを付着し、第1接合工程では、付着領域S2にレーザー光Lを照射して、第1基板10Aと第2基板20Aとを接合してもよい。このようにすれば、レーザー光Lの照射時間が短くなるので、加工工数を低減させることができる。
【0049】
(変形例2)上記実施形態の吸収材付着工程では、機能部形成領域F以外の領域Nの全域を付着領域S1として吸収材eを付着し、第1接合工程では、付着領域S1全体にレーザー光Lを照射して、第1基板10Aと第2基板20Aとを接合したが、これに限定されない。例えば、隣接する機能部形成領域Faの間、すなわち、切断領域(ダイシングライン)を付着領域として吸収材eを付着し、第1接合工程では、付着領域にレーザー光Lを照射して、第1基板10Aと第2基板20Aとを接合してもよい。このようにしても、レーザー光Lの照射による電極部11等の損傷を防止しながら、第1基板10Aと第2基板20Aとを接合することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…液滴吐出ヘッド、10…ガラス基材、20…シリコン基材、30…ノズル基材、10A…第1基板、20A…第2基板、30A…第3基板、11…電極部、21…振動部、22…液体室、31…ノズル部、100…レーザー光照射装置、400…液滴吐出装置、A…静電アクチュエーター、F…機能部形成領域、Fa…個々の機能部形成領域、N…機能部形成領域以外の領域、S1,S2…付着領域、e…吸収材、L…レーザー光、D…液滴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極部を有するガラス基材と、振動部を有するシリコン基材と、ノズル部を有するノズル基材と、を備えた液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
前記ガラス基材と前記シリコン基材のうち少なくとも一方の面に、レーザー光を吸収する吸収材を付着する吸収材付着工程と、
前記吸収材を介して、前記ガラス基材とシリコン基材とを重ね合わせ、位置決めを行うアライメント工程と、
常温下において、前記吸収材に向けてレーザー光を照射して、前記ガラス基材と前記シリコン基材とを接合する第1接合工程と、を含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、
前記吸収材付着工程では、
前記ガラス基材を複数含む第1基板と前記シリコン基材を複数含む第2基板のうち少なくとも一方の面であって、前記ガラス基材または前記シリコン基材が形成された機能部形成領域以外の領域に前記吸収材を付着し、
前記アライメント工程では、
前記吸収材を介して、前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせ、位置決めを行い、
前記第1接合工程では、
付着された前記吸収材に向けてレーザー光を照射し、
前記第1接合工程の後に、
陽極接合により前記第1基板と前記第2基板とを接合する第2接合工程を有することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、
前記第1接合工程では、
前記ガラス基材側から前記シリコン基材側に向けて前記レーザー光を照射することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法によって製造された液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−73152(P2011−73152A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223926(P2009−223926)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】