説明

液滴吐出ヘッドへの液体充填方法、液滴吐出ヘッド固定ホルダー、および液滴吐出ヘッドの洗浄方法

【課題】 本発明は、簡易かつ迅速な工程で、液体貯留部内の液体をノズル孔先端まで充填する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、第1の主面(12)に形成されたノズル孔(26)と、ノズル孔から吐出する液体に加圧するための加圧手段を備えた加圧室(22)と、第1の主面に対向する第2の主面(14)に形成され、前記加圧室と流路(13)により連通された液体貯留部(16)と、を備える液滴吐出ヘッド(10)のノズル孔(26)先端まで液体を充填する方法であって、液体貯留部に液体を供給する第1工程と、液滴吐出ヘッドの第1の主面を外周方向に向けて遠心機に固定し、液体がノズル孔先端に達するまで回転させる第2工程と、を含む液体充填方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドのノズル孔先端まで、吐出する液体を効率よく充填する方法、およびこの充填方法を利用した液滴吐出ヘッドの洗浄方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、核酸やタンパク質等の生体由来物質をプローブとして基板上に固定化したいわゆるマイクロアレイを用い、生体分子間の結合の特異性を利用して、サンプル中の標的物質を検出・測定する方法が広く用いられている。
【0003】
特開平11−187900号公報(特許文献1)には、このようなマイクロアレイの作製方法として、標的物質に対して特異的に結合可能であるプローブを含む液体を、インクジェット法により固相表面に吐出し、該固相表面にプローブを付着させることを特徴とするプローブの固相へのスポッティング方法が開示されている。
【0004】
また、マイクロアレイには、標的物質をハイスループットに検出するため、微小な領域に多種類のプローブ分子を固定する必要がある。このような必要性に応えるものとして、特開2004−160904号公報(特許文献2)には、複数の液体貯留部を有する第1の基板と、前記複数の液体貯留部にそれぞれ独立に連通する複数の流路を有する第2の基板と、前記複数の流路にそれぞれ独立に連通し、液滴を吐出する複数のノズルを有する一または複数のヘッドチップとを備えたインクジェットヘッドが開示されている。このようなインクジェットヘッドによれば、それぞれ異なる試料を搭載した複数の液体貯留部と、マイクロアレイのスポットの配置に対応させた複数のノズル孔とが、それぞれ流路で連通されているので、多数のプローブを微小領域に固定したマイクロアレイを高速に作製することができる。
【特許文献1】特開平11−187900号公報
【特許文献2】特開2004−160904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクジェットヘッドから吐出するのは微小な液滴であり、液体貯留部とノズル孔とを連通させる流路も極めて微細である上に、ノズル孔もその先端で液体がメニスカスを形成する程の細孔である。そのため、液体貯留部に供給された液体は、液体貯留部側から加圧するか、ノズル孔側から吸引しなければ、ノズル孔先端に到達しない。加圧、吸引等を行うためには、液滴吐出装置に、加圧手段や吸引手段等を設ける必要があり、装置の構成が複雑になってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、簡易かつ迅速な工程で、液体貯留部内の液体をノズル孔先端まで充填する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体充填方法は、第1の主面に形成されたノズル孔と、前記ノズル孔から吐出する液体に加圧するための加圧手段を備えた加圧室と、前記第1の主面に対向する第2の主面に形成され、前記加圧室と流路により連通された液体貯留部と、を備える液滴吐出ヘッドのノズル孔先端まで前記液体を充填する方法であって、前記液体貯留部に前記液体を供給する第1工程と、前記液滴吐出ヘッドの第1の主面を外周方向に向けて遠心機に固定し、前記液体がノズル孔先端に達するまで回転させる第2工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
このような方法によれば、液体貯留部が回転軸側に、ノズル孔が外周側に向けられた状態で回転されるので、回転によって見かけ上生じる遠心力により、液体貯留部の液体をノズル孔先端まで、簡易かつ迅速に到達させることができる。
【0009】
本発明に係る液体充填方法では、上記第1工程の後、第2の主面に、気体のみ透過させ液体を通さない密着部材を装着して、第2工程を行うことが好ましい。密着部材を装着することによって、液体貯留部の液体が流出することなく、遠心機に固定し回転させることができるが、液体貯留部を密閉してしまうと、回転を停止させた後、ノズル孔から液体貯留部に液体が逆流するおそれがある。気体を透過させ、液体を通さない密着部材を用いることにより、液体がこぼれるのを防ぐとともに、回転停止後の逆流も抑制することが可能となる。
【0010】
気体を透過させ、液体を通さない密着部材としては、気液分離フィルターや、孔を設けた密着部材が挙げられる。後者の場合、液体が流出しないように、孔は、第1および第2工程の間中、液体貯留部中の液体表面より上側に来る位置に設けるとよい。あるいは、液体貯留部の液体がメニスカスを形成して流出しない大きさの微細な孔を設けてもよい。このような構成によれば、孔から液体が流出するのを防ぎつつ、回転停止後の逆流も抑制できる。
【0011】
また、上記第2工程は、第1の主面に形成されたノズル孔に気液分離フィルターを密着させて行うことが好ましい。気液分離フィルターを密着させることによって、第1の主面が汚染されてコンタミネーションが生じたり、液体が浪費されたりするのを防ぐことができる。
【0012】
本発明は、上述した遠心機を用いる液体充填方法を行うために好適な、液滴吐出ヘッド固定ホルダーをも提供する。この液滴吐出ヘッド固定ホルダーは、液滴吐出ヘッドと前記ノズル孔に密着させる気液分離フィルターとを挟持して、該気液分離フィルターが該ノズル孔に密着した状態で保持することが可能な構成となっている。このホルダーを用いることにより、気液分離フィルターとノズル孔との密着性を高め、かつ遠心機を使用して液滴吐出ヘッドを安定に回転させることができる。また、固定ホルダーは、第2の主面に装着する密着部材を固定できるものであることも好ましい。
【0013】
また、本発明は、本発明に係る液体充填方法を利用して、液滴吐出ヘッドを洗浄する方法も提供する。この方法によれば、液体貯留部に洗浄液を注入した液滴吐出ヘッドを遠心機で回転させることにより、洗浄液を流路、加圧室、ノズル孔を通過させ、液滴吐出ヘッドの内部を簡易かつ迅速に洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(液滴吐出ヘッド)
図1は、本発明に係る液体充填方法の各工程を示す説明図であり、図1(A)に断面図が示されたインクジェットヘッド10は、本発明に係る液体充填方法によって液体が充填される液滴吐出ヘッドの一例である。
【0015】
ここで、図9に示されるインクジェットヘッド10の概略斜視図を用いてその構成を説明する。インクジェットヘッド10は、図示しないノズル孔が設けられた第1の主面12と、第1の主面12に対向し、リザーバ(液体貯留部)16が設けられた第2の主面14とを備えている。第1の主面12と第2の主面14との間に位置する4つの側面のうち、図中右側および左側に示される側面には、後述する固定ホルダーに取り付けるための凸状部52aおよび52bが形成されている。
【0016】
本実施形態では、第2の主面14には、リザーバ16が8行×12列で96個設けられている。汎用されるマイクロタイタープレートのウェルの数および配置に従ってリザーバ16を設けることによって、マイクロタイタープレートから分注機等を使用して各リザーバに同一または異なる液体を供給することができる。
【0017】
図1に示されるインクジェットヘッド10の概略断面図は、図9におけるIA−IA線に沿ってインクジェットヘッド10を切断したものである。本実施形態においては、図1(A)に示すように、インクジェットヘッド10は、基板30、40および50を積層して形成されており、第1の主面の中央には、ノズル孔26および加圧室22が形成されたヘッドチップ20が接着されている。基板50に形成されたリザーバ(液滴貯留部)16a〜16lに供給された液体は、流路13を通って加圧室22に到達し、加圧手段によって加圧され、ノズル孔26から吐出される。
【0018】
図2(A)に基板30の平面図を示す。基板30には、基板40を積層することによって流路13を形成する溝13’が96本形成されている。溝13’は、基板30の周縁部から中央に向かって集束し、各溝13’の基板周縁側の末端はリザーバ16のピッチ(形成間隔)と一致していている。一方、各溝13’の基板中央側の末端には、圧力室に接続する貫通孔が設けられている。
【0019】
図2(B)に基板30上に積層される基板40の平面図を示す。基板40には8行×12列で96個の貫通孔42が形成されている。貫通孔42のピッチは、リザーバ16のピッチに一致する。貫通孔42は、流路13とリザーバ16とを連通させる流路となる。
【0020】
図2(C)に、基板50の平面図を示す。基板50には、貫通孔52が96個形成されており、基板50を基板40上に積層することによって、貫通孔52がリザーバ16を形成する。
【0021】
基板30、40および50は、ガラス、樹脂等の材料で形成することができ、溝や貫通孔は、エッチング、射出成形等、材料に適した方法によって形成することができる。基板30〜50を積層し、熱溶着、または接着剤等を用いる方法により接着した後、さらに、基板30の中央にヘッドチップ20を接着して、インクジェットヘッド10が完成する。
【0022】
ヘッドチップ20は、電気的に接続するだけで単独で加圧室の加圧手段を作動させ、ノズル孔から液滴を吐出可能な構成となっている。図3に、ヘッドチップ20の一例として静電駆動方式のヘッドチップの拡大断面図を示す。説明の便宜上、基板40および50は省略し、基板30のみ示している。ヘッドチップ20は、電極108が形成された電極基板121、加圧室22を形成する加圧室基板122、およびノズル孔26が形成されたノズル基板123により構成されている。加圧室22に流入した液体は、図示しない共通電極と電極108との間に電圧を加えると、振動板109が弾性変位することによって加圧され、ノズル孔26から吐出される。本実施形態では、電極108と振動板109とが加圧手段に該当する。尚、電極基板121には、図中下側の面から溝が形成され、その天井部に電極108が形成されているため、電極108と振動板109との間にはわずかな空隙(エアギャップ)が形成されている。加圧室基板122、ノズル基板123、電極基板121の材料は特に限定されないが、吐出する液体に生体試料が含まれる場合には、ガラス、シリコン等が適している。
【0023】
ヘッドチップ20を、基板30に接着することにより、電極基板および加圧室基板122に設けられた貫通孔が、基板30の貫通孔に接続し、図示しないリザーバと加圧室22が連通され、インクジェットヘッド10が完成する。
【0024】
図10に、インクジェットヘッド10が装着された液滴吐出装置の一例として、マイクロアレイ製造装置200を示す。マイクロアレイ製造装置200は、ガラス等の基板202上に生体分子を含む試料溶液の液滴を複数配置して作製されるマイクロアレイを製造するためのものであり、複数の基板202を載置可能に構成されたテーブル204と、インクジェットヘッド10をY方向に自在に移動させるためのY方向駆動軸216と、テーブル204をX方向に自在に移動させるためのX方向駆動軸214と、を備える。また、インクジェットヘッド10を固定するための固定手段212と、固定手段212をZ方向に自在に移動させるためのZ方向駆動軸218と、をも備えている。同図には、固定手段212にインクジェットヘッド10を装着した状態が示されている。
(液体充填方法)
次に、本発明に係る液体充填方法を用いて、インクジェットヘッド10に液体を充填する工程を説明する。図1(A)は、インクジェットヘッド10の断面図であり、図9のIA−IA線に沿って切断した断面図である。
【0025】
本発明に係る液体充填方法では、図1(A)に示すように、まず、液体貯留部であるリザーバ16に、吐出すべき液体を供給する。液体の供給方法は特に限定されず、分注機等を使用して公知の方法で、各リザーバ16に同一の、または異なる液体を注入することができる。
【0026】
このとき、基板30および40の貫通孔や溝によって形成される流路は、極めて微細なため、リザーバ16に液体を供給しても、そのままではノズル先端まで液体が到達しない。また、気泡が流路の内壁に付着するなどの状況によっても、液体が流路を通過しにくくなり、加圧室まで液体が流入せず、そのままでは液体を連続して吐出することができない。
【0027】
続いて、図1(B)に示すように、インクジェットヘッド10に、遠心機に固定するための固定ホルダー80aおよび80bを装着する。本実施形態において、固定ホルダーは、気液分離フィルター70をインクジェットヘッド10のノズル孔26に密着固定することが可能な固定ホルダー80aと、密着部材60をインクジェットヘッド10の第2の主面14に密着固定することが可能な固定ホルダー80bとの2つの部材からなり、遠心機内にインクジェットヘッド10を安定に固定することができる。
【0028】
本実施形態においては、密着部材60も気液分離フィルターにより構成され、密着部材を第2の主面14に密着させることにより、遠心機に固定するためにインクジェットヘッド10の角度を変えても、リザーバ16内の液体が流出するのを防ぐことができる。また、密着部材60は、気体は透過させるので、遠心機での回転を停止させた後、リザーバ16内の圧力が低下して液体がリザーバ16内に逆流するのを抑制することができる。
【0029】
密着部材は、図4または図6に示される密着部材60bまたは60cのような構成のものを使用することもできる。図4に示す密着部材60bは気体および液体を透過させない材料で構成されているが、各リザーバ16に対応して、貫通孔62が形成されている。貫通孔62は、各リザーバ16の開口部の中央に位置させるのではなく、いずれかの方向にずらして配置されるが、貫通孔62とリザーバ16の開口部との相対的な位置は、すべてのリザーバ16について同一とする。図4に示す例では、貫通孔62は、リザーバ16の開口部の中心から図中右手方向にずらして形成されている。密着部材60bの平面図を図5に示す。点線で示されたリザーバ16の位置に対して、図中右側にずれた位置に貫通孔62が形成されている。このように貫通孔62を配置することにより、図4(B)に示すように、インクジェットヘッド10を所定の方向に倒しても、常に貫通孔62が液体表面より上側に位置することになって、リザーバ16内の液体は流出しないので、遠心機内に好適に固定することができる。
【0030】
また、図6に示す密着部材60cも気体および液体を透過させない材料で構成されているが、貫通孔64が形成されている。密着部材60cの平面図を図7に示す。点線で示されるリザーバ16のそれぞれに貫通孔64が形成されている。密着部材60cでは、貫通孔64が十分に微細なため、液体は貫通孔64の出口でメニスカスを形成し、外部に流出しない。図7では、貫通孔64がリザーバ16の略中央に配置されているが、貫通孔64の位置は特に限定されない。
【0031】
図1(B)に示すように、固定ホルダー80aによって、インクジェットヘッド10のノズル孔26に密着するよう固定された、気液分離フィルター70は、市販のものを利用することができ、例えば、孔径3μm、厚さ75μmのPTFEメンブレンフィルター(ADVANTEC東洋株式会社製)を用いることができる。気液分離フィルター70をノズル孔26に密着させることによって、ノズル孔から流出した液体によって第1の主面12が汚染されたり、液体が浪費されたりするのを防ぐことができる。
【0032】
続いて、図1(C)に示すように、固定ホルダー80aおよび80bと共に、インクジェットヘッド10を図示しない遠心機に固定し、回転軸lを中心として、ノズル孔26を外周方向に向けて図中の矢印の方向にインクジェットヘッド10を回転させる。このとき、液体貯留部15に収容された液体の密度をρとし、回転半径をr、各速度をωとすると、液体にかかる遠心力PはP=ρrω2と表される。例えば、r=0.3m、ρ=103kg/m3、ω=800rpm=83.7rad/sとすると、P=2.1MPaと求められ、大気圧の20倍を超え、ノズル先端まで液体を充填するのに十分な圧力が得られることになる。
【0033】
こうして、ノズル先端まで液体が充填されたインクジェットヘッド10は、遠心機から取り出し、固定ホルダー80aおよび80b、密着部材60、および気液分離フィルター70を取り外して、マイクロアレイ製造装置200等の液滴吐出装置に装着し、直ちにマイクロアレイの製造等に使用することができる。
(洗浄方法)
次に、本発明に係る液体充填方法を利用して、液滴吐出ヘッドを洗浄する方法について説明する。タンパク質や核酸などの生体試料は、インクジェットヘッドの内壁に付着しやすく、残留すると、次に別の試料吐出する際にコンタミネーションが生じ、作製したマイクロアレイを使用した測定結果の信頼性が低下する。そのため、特に生体試料を使用した後は、インクジェットヘッド内部を十分に洗浄する必要がある。
【0034】
図8は、本発明に係る洗浄方法の工程を示す説明図である。
【0035】
まず、図8(A)に示すように、リザーバ16に洗浄液を供給する。洗浄液は、吐出した液体の洗浄に適した洗浄剤を含むものであってもよいし、純水であってもよい。
【0036】
洗浄液をリザーバに供給した後、インクジェットヘッド10に、遠心機に固定するための固定ホルダー80cおよび80dを装着する。固定ホルダー80dは、基板50の凸状部52aと密着部材60とを挟持、固定するのにも利用される。尚、洗浄の際は、ノズル孔に気液分離フィルターは固定しない。密着部材については、上述した液体充填方法と同様のものを使用できるため、ここでは説明を省略する。
【0037】
続いて、図8(C)に示すように、固定ホルダー80cおよび80dを装着したインクジェットヘッド10を、図示しない遠心機に固定し、回転させる。回転によって、見かけ上液体にかかる遠心力は上述の通りであり、この遠心力によって、液体は流路13を介して加圧室22に流入し、さらにノズル孔26から排出される。
【0038】
尚、洗浄剤を含む洗浄液を使用した場合は、その後、純水をリザーバに供給して、同様に遠心機で回転させ、ノズル孔から排出させて、リンス工程を行うこともできる。
【0039】
以上のように本発明に係る液体の充填方法を用いれば、既存の遠心機を利用して、吸引手段や加圧手段を用いることなく、短時間かつ簡易にインクジェットヘッドのノズル先端まで液体を充填することが可能となるとともに、インクジェットヘッド内部の洗浄も行うことができる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々に変更して実施することが可能である。例えば、液滴吐出ヘッドの構成は、第1の主面に形成されたノズルと、ノズルから吐出する液体に加圧するための加圧手段と、第1の主面に対向する第2の主面に形成され、加圧室と連通した液体貯留部と、を備えている限り、特に限定されず、基板30、40、50を積層するのではなく、射出成型等によって、一体的に形成されたものであってもよい。また、液体貯留部の数や配置も限定されず、目的に応じて変更できる。加圧手段は、静電駆動方式、圧電駆動方式のいずれであってもよい。
【0041】
さらに、上述の実施形態では、気液分離フィルター70は、図1(B)に示すように、基板50の凸状部52b、基板30および基板40とともに、固定ホルダー80aによって、挟持、固定される態様を用いて説明したが、固定ホルダーや気液分離フィルター形状や固定の様式はこれらに限定されるものではない。また、密着部材60も、図1(B)に示すように、基板50の凸状部52aとともに、固定ホルダー80bによって挟持、固定される態様を例示して説明したが、固定ホルダーや密着部材60の材料や形状、固定の様式はこれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明にかかる液体充填方法の工程を示す説明図である。
【図2】積層して液滴吐出ヘッドを構成する基板の平面図である。
【図3】ヘッドチップの構成を示す概略断面図である。
【図4】密着部材の応用例を示す概略断面図である。
【図5】密着部材の応用例を示す平面図である。
【図6】密着部材の応用例を示す概略断面図である。
【図7】密着部材の応用例を示す平面図である。
【図8】本発明に係る液滴吐出ヘッドの洗浄方法の工程を示す説明図である。
【図9】液滴吐出ヘッドを示す概略斜視図である。
【図10】液滴吐出ヘッドを示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
10…液滴吐出ヘッド、12…第1の主面、13…流路、14…第2の主面、16…リザーバ(液体貯留部)、20…ヘッドチップ、22…加圧室、26…ノズル孔、30、40、50…基板、52a、52b…凸状部、60…密着部材、62、64…貫通孔、70…気液分離フィルター、80a〜80d…固定ホルダー、108…電極、109…振動板、121、122、123…基板、200…液滴吐出装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面に形成されたノズル孔と、
前記ノズル孔から吐出する液体に加圧するための加圧手段を備えた加圧室と、
前記第1の主面に対向する第2の主面に形成され、前記加圧室と流路により連通された液体貯留部と、を備える液滴吐出ヘッドのノズル孔先端まで前記液体を充填する方法であって、
前記液体貯留部に前記液体を供給する第1工程と、
前記液滴吐出ヘッドの第1の主面を外周方向に向けて遠心機に固定し、前記液体がノズル孔先端に達するまで回転させる第2工程と、を含む液体充填方法。
【請求項2】
前記第1工程の後、前記第2の主面に、気体のみ透過させ液体を通さない密着部材を装着して第2工程を行う、請求項1に記載の液体充填方法。
【請求項3】
前記密着部材は、気液分離フィルターである、請求項2に記載の液体充填方法。
【請求項4】
前記密着部材には、前記第2工程を行う際、前記液体の液面より常に上側となる位置に孔が設けられている、請求項2に記載の液体充填方法。
【請求項5】
前記密着部材には、前記液体貯留部の液体がメニスカスを形成して流出しない大きさの
孔が設けられている、請求項2に記載の液体充填方法。
【請求項6】
前記第2工程は、前記第1の主面に形成された前記ノズル孔に、気液分離フィルターを密着させて行う、請求項1から5のいずれか1項に記載の液体充填方法。
【請求項7】
請求項6に記載の液体充填方法に用いられる、液滴吐出ヘッドを遠心機に固定するための固定ホルダーであって、
前記液滴吐出ヘッドと前記ノズル孔に密着させる気液分離フィルターとを挟持して、該気液分離フィルターが該ノズル孔に密着した状態で保持することが可能な、固定ホルダー。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の液体充填方法を用いる液滴吐出ヘッドの洗浄方法であって、
前記吐出する液体として洗浄液を用い、
前記第2工程の後、前記洗浄液がすべてノズル孔から排出されるまで回転を継続する、洗浄方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−337149(P2006−337149A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161559(P2005−161559)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】