説明

液滴吐出装置

【課題】液滴吐出部分からの液滴が漏れることのなく、小型化が可能な液滴循環系を構成することを目的とする。
【解決手段】貯留タンク12に貯留されたインクを循環ポンプ18によって吸い上げて循環経路16へ吐出し循環経路16内をインクが循環して貯留タンク12に戻る。また、循環経路16に第1の径の第1循環部16Aと、第1の径より小さい第2の径の第2循環部16Bを設け、第1循環部16Aと記録ヘッドのインク室14のインク流入口14Aを接続し、第2循環部と記録ヘッドのインク室14のインク排出口14Bを接続し、第2循環部16Bでインクの流速を加速することで、記録ヘッドのインク室14のインク排出口14Bを負圧として記録ヘッドのインク室14のインク排出口14Bからインクを循環経路16の第2循環部16Bへ吸い出して第1循環部16Aから記録ヘッドのインク流入口14Aを介してインクを記録ヘッドのインク室14に流入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置にかかり、特に、インクなどの液滴を吐出する液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置としては、例えば、インクを受像紙などの媒体に吐出して画像を形成するインクジェットプリンタが一般的に普及している。
【0003】
液滴を吐出するヘッドから液滴を吐出するためには、吐出するための液体をヘッドに供給する必要がある。
【0004】
ヘッドに液滴を吐出するための循環系としては、例えば、供給タンク、ヘッド、及び戻りタンクを設けて、供給タンク、ヘッド、戻りタンク、供給タンクの順にインクが循環するように接続して、インク循環系の循環ループとし、供給タンクと戻りタンクとの間にバルブを設けて、当該バルブを閉めた状態でポンプにより戻りタンクを負圧にする等の圧力制御を行うことにより、ヘッドからインクを吸い出すことにより供給タンクからインクをヘッドに供給するようにインクを循環させるものなどがある(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、他の方法としては、ポンプによって供給タンクからヘッドにインクを供給するものが提案されている(例えば、特許文献2〜5)。
【0006】
また、ヘッドの上にあるタンクから、水頭差でヘッドにインクを供給し、下側に設けた戻りタンクに水頭差でヘッドからインクを回収するものがある(特許文献6)。
【特許文献1】特許第3387806号公報
【特許文献2】特許第4071156号公報
【特許文献3】特許第3631085号公報
【特許文献4】特許第3523511号公報
【特許文献5】特表2008−513245号公報
【特許文献6】特表2005−502498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ヘッドに設けられた液滴を吐出するノズルから液滴が漏れないようにするためには、ノズルの部分の圧力を大気圧より低い圧力にする必要があるため、供給用のタンクと戻り用のタンクが必要であったり、圧力制御を行うためのバルブ等を複数設ける必要がある。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、液滴吐出部分からの液滴が漏れることのなく、小型化が可能な液滴循環系を構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、液体を貯留すると共に、貯留した液体の送出口及び帰還口を備えた貯留手段と、予め定めた第1の流速で液体が循環する第1循環部と、前記第1の流速よりも速い第2の流速で液体が循環する第2循環部と、を有し、前記貯留手段に貯留された液体を前記送出口から送出して、前記帰還口から前記貯留手段に戻すように液体を循環させるための循環経路と、前記循環経路の液体を循環させる循環手段と、液滴を吐出すると共に、液滴を吐出するための液体の供給口と前記第1循環部とを接続し、液体の排出口と前記第2循環部とを接続した液滴吐出手段と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、貯留手段には、液体が貯留されると共に、貯留された液体の送出口及び帰還口が設けられている。
【0011】
また、循環経路には、予め定めた第1の流速で液体が循環する第1循環部と、第1の流速よりも速い第2の流速で液体が循環する第2循環部と、が設けられており、貯留手段に貯留された液体を送出口から送出して、帰還口から貯留手段に戻るように循環経路によって液体が循環される。
【0012】
循環経路の液体の循環は循環手段によって行われる。例えば、循環手段は、ポンプ等を適用することができる。
【0013】
また、液滴吐出手段では、液滴が吐出される。液滴吐出手段は、液滴を吐出するための液体の供給口と第1循環部とが接続され、液体の排出口と第2循環部とが接続されている。
【0014】
すなわち、循環手段によって循環経路の液体が循環されると、貯留手段に貯留された液体が送出口から循環経路に送出されて、帰還口から貯留手段に戻ってくる。このとき、循環経路では、第1循環部で第1の流速で循環され、第2循環部では液体の流速が加速されて第1の流速よりも速い第2の流速で液体が循環される。そして、第1循環部には液滴吐出手段の供給口が接続され、第2循環部には液滴吐出手段の排出口が接続されているので、第2循環部の第2の流速によって液滴吐出手段の排出口に負圧が発生し、液滴吐出手段から液滴が吸い出され、これによって第1循環部から液滴吐出手段の供給口に液体が流入する。従って、液滴吐出手段に液滴を吐出するための液体を供給することができる。
【0015】
また、負圧によって液滴吐出手段に液体が供給されるので、液滴吐出手段から液体が漏れ出すことを防止することができる。
【0016】
さらに、第1循環部と第2循環部を循環経路に設けて液滴吐出手段に接続するだけの構成なので、小型化が可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、液体を貯留すると共に、貯留した液体の送出口及び帰還口を備えた貯留手段と、予め定めた第1の流速で液体が循環する第1循環部と、前記第1の流速よりも速い第2の流速で液体が循環する第2循環部と、を有し、前記貯留手段に貯留された液体を前記送出口から送出して、前記帰還口から前記貯留手段に戻すように液体を循環させるための循環経路と、前記循環経路の液体を循環させる循環手段と、液滴を吐出すると共に、液滴を吐出するための液体の供給口と前記送出口とを接続し、液体の排出口と前記第2循環部とを接続した液滴吐出手段と、を備えることを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、貯留手段には、液体が貯留されると共に、貯留された液体の送出口及び帰還口が設けられている。
【0019】
また、循環経路には、予め定めた第1の流速で液体が循環する第1循環部と、第1の流速よりも速い第2の流速で液体が循環する第2循環部と、が設けられており、貯留手段に貯留された液体を送出口から送出して、帰還口から貯留手段に戻るように循環経路によって液体が循環される。
【0020】
循環経路の液体の循環は循環手段によって行われる。例えば、循環手段は、ポンプ等を適用することができる。
【0021】
また、液滴吐出手段では、液滴が吐出される。液滴吐出手段は、液滴を吐出するための液体の供給口と貯留手段の送出口とが接続され、液体の排出口と第2循環部とが接続されている。
【0022】
すなわち、循環手段によって循環経路の液体が循環されると、貯留手段に貯留された液体が送出口から循環経路に送出されて、帰還口から貯留手段に戻ってくる。このとき、循環経路では、第1循環部で第1の流速で循環され、第2循環部では液体の流速が加速されて第1の流速よりも速い第2の流速で液体が循環される。そして、液滴吐出手段の供給口が貯留手段の送出口に接続され、第2循環部には液滴吐出手段の排出口が接続されているので、第2循環部の第2の流速によって液滴吐出手段の排出口に負圧が発生し、液滴吐出手段から液滴が吸い出され、これによって貯留手段の送出口から液滴吐出手段の供給口に液体が流入する。従って、液滴吐出手段に液滴を吐出するための液体を供給することができる。
【0023】
また、負圧によって液滴吐出手段に液体が供給されるので、液滴吐出手段から液体が漏れ出すことを防止することができる。
【0024】
さらに、第1循環部と第2循環部を循環経路に設けて液滴吐出手段に接続するだけの構成なので、小型化が可能となる。
【0025】
なお、請求項2に記載の発明は、請求項3に記載の発明のように、液滴吐出手段の排出口と第2循環部との接続部分に設けられ、第2循環部を流れる液体の圧力によって前記排出口に負圧を発生させる差圧発生器を更に設けるようにしてもよい。
【0026】
また、請求項1〜3の何れか1項に記載の発明における第1循環部及び第2循環部は、請求項4に記載の発明のように、第1循環部が、循環経路中の径を予め定めた第1の径に設定され、第2循環部が、循環経路中の径を第1の径よりも小さい第2の径に設定されることによって、第1循環部での流速を第1の流速とし、第2循環部での流速を第2の流速にすることが可能である。
【0027】
請求項5に記載の発明は、液体を貯留すると共に、貯留した液体の送出口及び帰還口を備えた貯留手段と、前記貯留手段に貯留された液体を前記送出口から送出して、前記帰還口から前記貯留手段に戻すように液体を循環させるための循環経路と、前記循環経路の液体を循環させる循環手段と、液滴を吐出すると共に、液滴を吐出するための液体の供給口と前記送出口とを接続し、液体の排出口と前記循環経路とを接続した液滴吐出手段と、前記排出口と前記循環経路に設けられ、前記循環経路を流れる液体の圧力によって前記排出口に負圧を発生させる差圧発生手段と、を備えることを特徴としている。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、貯留手段には、液体が貯留されると共に、貯留された液体の送出口及び帰還口が設けられている。
【0029】
また、貯留手段に貯留された液体を送出口から送出して、帰還口から貯留手段に戻るように循環経路によって液体が循環される。
【0030】
循環経路の液体の循環は循環手段によって行われる。例えば、循環手段は、ポンプ等を適用することができる。
【0031】
また、液滴吐出手段では、液滴が吐出される。液滴吐出手段は、液滴を吐出するための液体の供給口と貯留手段の送出口とが接続され、液体の排出口と循環経路とが接続されている。
【0032】
そして、排出口と循環経路の接続部に設けられた差圧発生手段では、循環経路を流れる液体の圧力によって排出口に負圧が発生される。
【0033】
すなわち、循環手段によって循環経路の液体が循環されると、貯留手段に貯留された液体が送出口から循環経路に送出されて、帰還口から貯留手段に戻ってくる。このとき、循環経路と液滴吐出手段の排出口の接続部に差圧発生手段が設けられているので、循環経路を流れる液体の圧力によって、液滴吐出手段の排出口に負圧が発生し、液滴吐出手段から液滴が吸い出され、これによって貯留手段の送出口から液滴吐出手段の供給口に液体が流入する。従って、液滴吐出手段に液滴を吐出するための液体を供給することができる。
【0034】
また、負圧によって液滴吐出手段に液体が供給されるので、液滴吐出手段から液体が漏れ出すことを防止することができる。
【0035】
さらに、差圧発生手段を循環経路に設けて液滴吐出手段に接続するだけの構成なので、小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように本発明によれば、液滴吐出部分からの液滴が漏れることのなく、小型化が可能な液滴循環系を構成することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。なお、本実施の形態は、インクジェットプリンタに本発明を適用したものである。
【0038】
本発明の実施の形態に係わるインクジェットプリンタは、インクを吐出する記録ヘッドからインク滴を吐出することによって用紙等の記録媒体に画像を記録するものである。
【0039】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係わるインクジェットプリンタの記録ヘッドへインクを供給するためのインク循環系の構成を示す図である。
【0040】
第1実施形態に係わるインクジェットプリンタのインク循環系10は、図1に示すように、インクを貯留する貯留タンク12を備えており、貯留タンク12には、記録ヘッドへ供給するためのインクが貯留される。貯留されたインクは記録ヘッドに設けられたインク室14へ供給され、インク室14に供給されたインクが記録ヘッドからインク滴として吐出される。
【0041】
貯留タンク12には、インクを送出する送出口12Aと、該送出口12Aから送出されて循環したインクが戻ってくる帰還口12Bが設けられている。貯留タンク12の送出口12Aと帰還口12Bは、インクを循環するための循環経路16が接続されていおり、送出口12Aから貯留タンク12に貯留されたインクが循環経路16へ送出されて、循環経路16を循環した後に貯留タンク12の帰還口12Bにインクが循環する。
【0042】
循環経路16には、貯留タンク12の送出口12Aの近傍に、インクを循環経路16に循環させるための循環ポンプ18が設けられている。循環ポンプ18を駆動することによって、貯留タンク12の送出口12Aからインクが吸い出されて循環経路16へインクが押し出される。そして、インクが循環経路16を循環して貯留タンク12の帰還口12Bから貯留タンク12に戻るようになっている。
【0043】
循環ポンプ18から貯留タンク12の帰還口12Bへインクが循環する循環経路16には、予め定めた第1の径とされた第1循環部16Aと、第1の径より小さい第2の径とされた第2循環部16Bと、が設けられている。すなわち、第1循環部16Aは、第1の径に応じた予め定めた第1の流速でインクが循環し、第2循環部16Bでは、第1の流速よりも速い、第2の径に応じた第2の流速でインクが循環する。
【0044】
また、第1循環部16Aは、記録ヘッドのインク室14のインク流入口14Aに接続され、第2循環部16Bは、記録ヘッドのインク室14のインク排出口14Bに接続されている。
【0045】
なお、循環ポンプの吐出性能、第1循環部16Aの第1の径、第2循環部16Bの第2の径、記録ヘッドのインク流入口14Aの経、及び記録ヘッドのインク排出口14Bの経は、循環ポンプ18によって押し出されたインクが第1循環部16Aから第2循環部16Bを循環して貯留タンク12へ流れ、かつ、第2循環部16Bの第2の流速によって記録ヘッドの排出口14Bが負圧となることによって、第1循環部16Aから記録ヘッドのインク流入口14Aへインクが流入可能な関係に設定されている。
【0046】
また、図1に示すインク循環系10は、記録ヘッドに全て搭載するようにしてもよいし、循環経路16の一部及びインク室14のみを記録ヘッドに搭載するようにしてもよい。
【0047】
続いて、上述のように構成された本発明の第1実施形態に係わるインクジェットプリンタのインク循環系10の作用について説明する。
【0048】
インクジェットプリンタの電源がオンされたり、インクジェットプリンタを制御する制御部(図示省略)によってインク供給が指示された場合、循環ポンプ18が駆動開始される。
【0049】
循環ポンプ18が駆動開始されると、貯留タンク12に貯留されたインクが循環ポンプ18によって吸い上げられて循環経路16へ吐出され、循環経路16内をインクが循環する。
【0050】
循環ポンプ18によって循環経路16へ流されたインクは、図1矢印に沿って循環経路16を循環して貯留タンク12に戻る。
【0051】
このとき、循環経路16の第1循環部16Aでは予め定めた第1の径の中をインクが循環し、続いて、第1の径よりも小さい第2循環部16Bの第2の径の中をインクが循環する。すなわち、第1循環部16Aでは第1の流速でインクが循環され、その後、第2循環部16Bでは、第1の流速よりも速い第2の流速でインクが循環される。ここで、第1循環部16Aが記録ヘッドのインク室14のインク流入口14Aに接続され、第2循環部16Bが記録ヘッドのインク室14のインク排出口14Bに接続されているので、第2循環部16Bでインクの流速が加速されることにより、記録ヘッドのインク室14のインク排出口14Bが負圧となる。これによって記録ヘッドのインク室14のインク排出口14Bからインクが循環経路16の第2循環部16Bへ吸い出される。そして、インク室14のインク排出口14Bからインクが吸い出されることによって、第1循環部16Aから記録ヘッドのインク流入口14Aを介してインクが記録ヘッドのインク室14に流入する。従って、循環経路16中を流れるインクが記録ヘッドのインク室14内にも流れ、記録ヘッドにインクを供給することができる。
【0052】
また、記録ヘッドのインク排出口14Bが負圧になることによって、記録ヘッドのインク流入口14Aからインク室14にインクが流入するので、記録ヘッドのインク室14も結果として負圧となる。従って、記録ヘッド内を大気よりも低い圧力にすることができるので、記録ヘッドからインクが漏れ出してしまうことを防止することができる。
【0053】
このように本実施形態では、循環経路16中に第1循環部16Aと第2循環部16Bを設けると共に、第1循環部16Aと記録ヘッドのインク室14を接続し、第2循環部16Bと記録ヘッドのインク室14を接続して循環ポンプ18で循環経路16中にインクを循環させるだけで、記録ヘッドにインクを供給することができるので、簡単な構成で記録ヘッドへのインク供給が可能となる。また、循環経路16中に第1循環部16Aと第2循環部16Bを設けるだけなので、インク循環系10の構成を小型化することができる。
【0054】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態に係わるインクジェットプリンタについて説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係わるインクジェットプリンタの記録ヘッドへインクを供給するためのインク循環系の構成を示す図である。なお、第1実施形態と同一部分については同一符号を付して説明する。
【0055】
第2実施形態に係わるインクジェットプリンタのインク循環系11も第1実施形態と同様に、図2に示すように、インクを貯留する貯留タンク12を備えており、貯留タンク12には、記録ヘッドへ供給するためのインクが貯留される。貯留されたインクは記録ヘッドに設けられたインク室14へ供給され、インク室14に供給されたインクが記録ヘッドからインク滴として吐出される。
【0056】
貯留タンク12には、インクを送出する送出口12Aと、該送出口12Aから送出されて循環したインクが戻ってくる帰還口12Bが設けられている。貯留タンク12の送出口12Aと帰還口12Bは、インクを循環するための循環経路16が接続されていおり、送出口12Aから貯留タンク12に貯留されたインクが循環経路16へ送出されて、循環経路16を循環した後に貯留タンク12の帰還口12Bにインクが循環する。
【0057】
循環経路16には、貯留タンク12の送出口12Aの近傍に、インクを循環経路16に循環させるための循環ポンプ18が設けられている。循環ポンプ18を駆動することによって、貯留タンク12の送出口12Aからインクが吸い出されて循環経路16へ押し出される。そして、循環経路16を循環してインクが貯留タンク12の帰還口12Bから貯留タンク12に戻るようになっている。
【0058】
循環ポンプ18から貯留タンク12の帰還口12Bへインクが循環する循環経路16には、第1実施形態と同様に、予め定めた第1の径とされた第1循環部16Aと、第1の径より小さい第2の径とされた第2循環部16Bと、が設けられている。すなわち、第1循環部16Aは、第1の径に応じた予め定めた第1の流速でインクが循環し、第2循環部16Bでは、第1の流速よりも速い、第2の径に応じた第2の流速でインクが循環する。
【0059】
また、貯留タンク12の送出口12Aの近傍、かつ該送出口12Aと循環ポンプ18との間には、記録ヘッドのインク室14に設けられたインク流入口14Aに接続された流入路15が接続されている。
【0060】
記録ヘッドのインク室14のインク排出口14Bには、循環経路16の第2循環部16Bが接続されている。
【0061】
なお、循環ポンプ18の吐出性能、第1循環部16Aの第1の径、第2循環部16Bの第2の径、記録ヘッドのインク流入口14Aの経、及び記録ヘッドのインク排出口14Bの経は、循環ポンプ18によって押し出されたインクが第1循環部16Aから第2循環部16Bを循環して貯留タンク12へ流れ、かつ、第2循環部16Bの第2の流速によって記録ヘッドのインク排出口14Bが負圧となることによって、貯留タンク12から記録ヘッドのインク流入口14Aへインクが流入可能な関係に設定されている。
【0062】
また、図2に示すインク循環系11は、記録ヘッドに全て搭載するようにしてもよいし、循環経路16の一部及びインク室12のみを記録ヘッドに搭載するようにしてもよい。
【0063】
続いて、上述のように構成された本発明の第2実施形態に係わるインクジェットプリンタのインク循環系11の作用について説明する。
【0064】
インクジェットプリンタの電源がオンされたり、インクジェットプリンタを制御する制御部(図示省略)によってインク供給が指示された場合、循環ポンプ18が駆動開始される。
【0065】
循環ポンプ18が駆動開始されると、貯留タンク12に貯留されたインクが循環ポンプ18によって吸い上げられて循環経路16へ吐出され、循環経路16内をインクが循環する。
【0066】
循環ポンプ18によって循環経路16へ流されたインクは、図2矢印に沿って循環経路16を循環して貯留タンク12に戻る。
【0067】
このとき、第1実施形態と同様に、循環経路16の第1循環部16Aでは予め定めた第1の径の中をインクが循環し、続いて、第1の径よりも小さい第2循環部16Bの第2の径の中をインクが循環する。すなわち、第1循環部16Aでは第1の流速でインクが循環され、その後、第2循環部16Bでは、第1の流速よりも速い第2の流速でインクが循環され、第2循環部16Bでインクの流速が加速されるので、第2循環部16Bに接続された記録ヘッドのインク室14のインク排出口14Bが負圧となる。これによって記録ヘッドのインク室14のインク排出口14Bからインクが循環経路16に吸い出される。そして、インク室14からインクがインク排出口14Bへ吸い出されることによって、貯留タンク12から流入路15及び記録ヘッドのインク流入口14Aを介してインクが記録ヘッドのインク室14に流入する。従って、貯留タンク12に貯留されたインクが記録ヘッドのインク室14内にも流れ、記録ヘッドにインクを供給することができる。
【0068】
また、記録ヘッドのインク排出口14Bが負圧になることによって、記録ヘッドのインク流入口14Aからインク室14にインクが流入するので、記録ヘッドのインク室14も結果として負圧となる。従って、記録ヘッド内を大気よりも低い圧力にすることができるので、記録ヘッドからインクが漏れ出してしまうことを防止することができる。
【0069】
このように構成しても第1実施形態と同様に、簡単な構成で記録ヘッドへのインク供給が可能となると共に、インク循環系11の構成を小型化することができる。
【0070】
(第3実施形態)
続いて、本発明の第3実施形態に係わるインクジェットプリンタについて説明する。第3実施形態は、第2実施形態の変形例である。
【0071】
本実施形態では、第2実施形態に係わるインクジェットプリンタのインク循環系11に対して、バスポンプ等で使用される差圧発生器を備えている。
【0072】
図3は、本発明の第3実施形態に係わるインクジェットプリンタのインク循環系に適用する差圧発生器の一例を示す図である。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一構成については同一符号を付して説明する。
【0073】
第3実施形態に適用する差圧発生器20は、バスポンプ等のように負圧によって水を吸い上げる構成を応用したものであり、本実施形態では、第2実施形態における第2循環部11と記録ヘッドのインク室14のインク排出口14Bとの接続部に差圧発生器20を適用するものである。
【0074】
差圧発生器20は、図3に示すように、第2循環部16Aと、貯留タンク12の帰還口12Bに接続された循環経路16とを異なる径として、第2循環部16Bが貯留タンク12の帰還口12Bに接続された循環経路16内に挿入された形状とされている。
【0075】
また、記録ヘッドのインク排出口14Bと第2循環部16Bとの接続部分には、インクが所定量溜まるようなチャンバー形状部22を有している。
【0076】
このように、差圧発生器20を構成することによって第2循環部16Bでインクが加速されたインクが、貯留タンク12の帰還口12Bに接続された循環経路16へ勢いよく吐出されることによって、チャンバー形状部22に負圧が発生し、記録ヘッドのインク排出口14Bから貯留タンク12の帰還口12Bに接続された循環経路16へインクが吸い出される。従って、第2実施形態と同様に、インク室14からインクがインク排出口14Bへ吸い出され、これによって、貯留タンク12から流入路15及び記録ヘッドのインク流入口14Aを介して記録ヘッドのインク室14にインクが流入される。従って、貯留タンク12に貯留されたインクが記録ヘッドのインク室14内にも流れ、記録ヘッドにインクを供給することができる。
【0077】
また、記録ヘッドのインク排出口14Bが負圧になることによって、記録ヘッドのインク流入口14Aからインク室14にインクが流入するので、記録ヘッドのインク室14も結果として負圧となる。従って、記録ヘッド内を大気よりも低い圧力にすることができるので、記録ヘッドからインクが漏れ出してしまうことを防止することができる。
【0078】
なお、第3実施形態では、第2実施形態に対して差圧発生器20を設ける構成として、第1循環部16Aと第2循環部16Bによって液体を加速させるようにしたが、これに限るものではなく、例えば、図4に示すように、第1循環部16A及び第2循環部16Bを省略する構成としてもよい。
【0079】
また、上記の第1実施形態では、第1循環部16Aの液体循環方向下流側に第2循環部16Bを配置した例を説明したが、これに限るものではなく、例えば、図5に示すように、第2循環部16Bの液体循環方向下流側に第1循環部16Aを設けて、記録ヘッドのインク流入口14Aと第1循環部16Aを接続し、記録ヘッドのインク排出口14Bと第2循環部16Bを接続するようにしてもよいし、或いは、第1循環部16Aと第2循環部16Bを並列に接続して、記録ヘッドのインク流入口14Aと第1循環部16Aを接続し、記録ヘッドのインク排出口14Bと第2循環部16Bを接続するようにしてもよい。
【0080】
また、上記の各実施形態では、インクを吐出するインクジェットプリンタの記録ヘッドのインク循環系を例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、例えば、高分子フィルム上に着色インクを吐出して行うディスプレイ用のカラーフィルターの作製、有機EL溶液を基板上に吐出させて行うELディスプレイパネルの形成、プリント基板等の作成時に溶液を吐出してエッチング処理を行うなど、様々な工業的用途を対象とした液滴吐出装置一般に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1実施形態に係わるインクジェットプリンタの記録ヘッドへインクを供給するためのインク循環系の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係わるインクジェットプリンタの記録ヘッドへインクを供給するためのインク循環系の構成を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係わるインクジェットプリンタのインク循環系に適用する差圧発生器の一例を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係わるインクジェットプリンタのインク循環系の変形例を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるインクジェットプリンタの記録ヘッドへインクを供給するためのインク循環系において、第1循環部と第2循環部を逆の位置に配置した場合の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
10 インク循環系
12 貯留タンク
12A 送出口
12B 帰還口
14 インク室
14A インク流入口
14B インク排出口
16 循環経路
16A 第1循環部
16B 第2循環部
18 循環ポンプ
20 差圧発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留すると共に、貯留した液体の送出口及び帰還口を備えた貯留手段と、
予め定めた第1の流速で液体が循環する第1循環部と、前記第1の流速よりも速い第2の流速で液体が循環する第2循環部と、を有し、前記貯留手段に貯留された液体を前記送出口から送出して、前記帰還口から前記貯留手段に戻すように液体を循環させるための循環経路と、
前記循環経路の液体を循環させる循環手段と、
液滴を吐出すると共に、液滴を吐出するための液体の供給口と前記第1循環部とを接続し、液体の排出口と前記第2循環部とを接続した液滴吐出手段と、
を備えた液滴吐出装置。
【請求項2】
液体を貯留すると共に、貯留した液体の送出口及び帰還口を備えた貯留手段と、
予め定めた第1の流速で液体が循環する第1循環部と、前記第1の流速よりも速い第2の流速で液体が循環する第2循環部と、を有し、前記貯留手段に貯留された液体を前記送出口から送出して、前記帰還口から前記貯留手段に戻すように液体を循環させるための循環経路と、
前記循環経路の液体を循環させる循環手段と、
液滴を吐出すると共に、液滴を吐出するための液体の供給口と前記送出口とを接続し、液体の排出口と前記第2循環部とを接続した液滴吐出手段と、
を備えた液滴吐出装置。
【請求項3】
前記排出口と前記第2循環部との接続部分に設けられ、前記第2循環部を流れる液体の圧力によって前記排出口に負圧を発生させる差圧発生器を更に設けた請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記第1循環部は、前記循環経路中の径を予め定めた第1の径に設定し、前記第2循環部は、前記循環経路を前記第1の径よりも小さい第2の径に設定した請求項1〜3の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
液体を貯留すると共に、貯留した液体の送出口及び帰還口を備えた貯留手段と、
前記貯留手段に貯留された液体を前記送出口から送出して、前記帰還口から前記貯留手段に戻すように液体を循環させるための循環経路と、
前記循環経路の液体を循環させる循環手段と、
液滴を吐出すると共に、液滴を吐出するための液体の供給口と前記送出口とを接続し、液体の排出口と前記循環経路とを接続した液滴吐出手段と、
前記排出口と前記循環経路との接続部分に設けられ、前記循環経路を流れる液体の圧力によって前記排出口に負圧を発生させる差圧発生手段と、
を備えた液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−69669(P2010−69669A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238061(P2008−238061)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】