液滴吐出装置
【課題】記録媒体とローラが接触するときに生じる記録媒体の搬送遅れによる記録媒体への第1液体の着弾位置ズレを補償する。
【解決手段】液滴吐出装置1が、第1液体を吐出する第1液体吐出ヘッド8a、第1液体吐出ヘッド8aよりも上流側に配置されて第2液体を吐出する第2液体吐出ヘッド8b、第1及び第2液体吐出ヘッド8a,8b間の回転ローラ34(34a)、回転ローラ34(34a)と第1液体吐出ヘッド8aとの間の第1所定位置に記録媒体Mが位置するか否かを検出する第1位置センサ53(53a,53b)、及び第2液体吐出ヘッド8bよりも上流側の第2所定位置に記録媒体Mが位置するか否かを検出する第2位置センサ54を備える。第2液体の吐出タイミングは、記録媒体Mが第2所定位置に到達した時点を基準に決定される。第1液体の吐出タイミングは、記録媒体Mが第1所定位置に到達した時点を基準に決定される。
【解決手段】液滴吐出装置1が、第1液体を吐出する第1液体吐出ヘッド8a、第1液体吐出ヘッド8aよりも上流側に配置されて第2液体を吐出する第2液体吐出ヘッド8b、第1及び第2液体吐出ヘッド8a,8b間の回転ローラ34(34a)、回転ローラ34(34a)と第1液体吐出ヘッド8aとの間の第1所定位置に記録媒体Mが位置するか否かを検出する第1位置センサ53(53a,53b)、及び第2液体吐出ヘッド8bよりも上流側の第2所定位置に記録媒体Mが位置するか否かを検出する第2位置センサ54を備える。第2液体の吐出タイミングは、記録媒体Mが第2所定位置に到達した時点を基準に決定される。第1液体の吐出タイミングは、記録媒体Mが第1所定位置に到達した時点を基準に決定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の第1液体を吐出して記録媒体の記録面に画像を形成する液滴吐出装置に関する。本発明は、特に、第1液体を吐出するよりも前に、第1液体の成分を凝集又は析出させる処理液等の第2液体を記録媒体の記録面に吐出しておくように構成され、且つ、第2液体の吐出後第1液体の吐出前に記録用紙の記録面にローラを当接させるように構成された液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体の性質の違いに関わらず高い印字品質を維持したり画質を向上させたりするために、記録媒体に対し画像を形成するインク等の第1液を吐出する前に、第1液の成分を凝集又は析出させる第2液を第1液が吐出される記録媒体位置に塗布するように構成された液滴吐出装置が知られている。例えば、特許文献1のインクジェット記録装置は、記録媒体に向けてインク組成物を吐出するインク組成物付着手段(インクジェット記録ヘッド)と、記録媒体に向けて反応液を吐出する反応液付着手段(反応液塗布手段としてのインクジェット記録ヘッド)とを備え、記録媒体の反応液の付着位置とインク組成物の印字位置とが一致するように、記録媒体に反応液とインク組成物とを着弾させるように構成されたものである。さらに、上記特許文献1のインクジェット記録装置は、記録媒体に付着した反応液を加圧および加熱する2本のローラを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−37942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のように、記録媒体に付着した第2液体(特許文献1の反応液に対応)をローラで当接させる場合に、記録媒体がローラ間に突入するときに、記録媒体の搬送方向下流側端がローラの周面と当接したり、ローラが記録媒体上で滑って巻き込み不良が生じたりすることにより、記録媒体の搬送遅れが生じる。ところが、第1液体(特許文献1のインクに対応)の吐出タイミングには、上述の搬送遅れが加味されていないので、記録媒体への第1液体の着弾位置にズレが生じ、且つ、第2液体の着弾位置に第1液体を適切に着弾させることも困難となり、記録媒体に形成される画像に乱れが生じる。
【0005】
そこで、本発明では、記録媒体に着弾した第2液体をローラで当接させる構成を備えた液滴吐出装置において、記録媒体がローラ間に突入するときに生じる記録媒体の搬送遅れを加味した第1液体の吐出制御を行うことにより、上述した画像の乱れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液滴吐出装置は、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、画像を形成するための第1液体を搬送される記録媒体の記録面に向けて吐出する第1液体吐出ヘッドと、前記第1液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の上流側に配置され、前記第1液体の成分を凝集又は析出させる第2液体を搬送される記録媒体の前記記録面に向けて吐出する第2液体吐出ヘッドと、前記第1液体吐出ヘッドと前記第2液体吐出ヘッドとの間において、搬送される記録媒体の前記記録面に外周面が当接するように設けられる回転ローラと、前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッドの動作を制御する制御部と、を備えた液滴吐出装置であって、前記回転ローラと前記第1液体吐出ヘッドとの間における第1所定位置に記録媒体が位置するか否かを検出可能な第1位置センサと、前記第2液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の上流側における第2所定位置に記録媒体が位置するか否かを検出する第2位置センサと、を有し、前記制御部は、搬送される記録媒体が前記第2所定位置に到達したことが前記第2位置センサにより検出された時点を基準として、前記第2液体吐出ヘッドより吐出される前記第2液体の吐出タイミングを決定し、かつ、搬送される記録媒体が前記第1所定位置に到達したことが前記第1位置センサにより検出された時点を基準として、前記第1液体吐出ヘッドより吐出される前記第1液体の吐出タイミングを決定することを特徴としている。
【0007】
前記構成によれば、記録媒体は、搬送される過程において、第2所定位置を通過し、第2液体吐出ヘッドより第2液体の吐出を受け、回転ローラの外周面と当接し、第1所定位置を通過し、第1液体吐出ヘッドより第1液体の吐出を受ける。第2液体の吐出タイミングは、記録媒体が直前の第2所定位置に到達した時点を基準として決定されるので、記録面の所望位置に第2液体を着弾させることができる。また、回転ローラと当接して記録媒体が撓んだりすることにより、記録媒体が予定していた時に第1液体ヘッドに到達しない場合であっても、記録媒体が回転ローラを通過して第1所定位置に到達した時点を基準として第1液体の吐出タイミングを決定しているので、記録面の所望の位置に第1液体を正確に着弾させることができるようになる。したがって、第2液体が着弾する位置と第1液体が着弾する位置とを正確に合わせて、記録媒体に形成される画像の乱れを抑制することができるようになる。
【発明の効果】
【0008】
上記のとおり、本発明によれば、記録面の所望の位置に第1液体を正確に着弾させることができ、且つ、第1液体の着弾位置と第2液体の着弾位置とを正確に合わせることができるので、記録媒体に形成される画像の乱れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す給紙機構及び搬送経路を平面上に延ばすようにして示すべく、図1のIIa−IIa矢視図とIIb−IIb矢視図とIIc−IIc矢視図とをこの順で紙面下側から組み合わせてなる図である。IIa−IIa矢視図は、給紙機構の平面図と搬送経路の上流部を搬送方向に沿って平面上に延ばすようにして示す図とを組み合わせて成る図、IIb−IIb矢視図は、搬送経路の直線部の平面図、IIc−IIc矢視図は、搬送経路の下流部を搬送方向に沿って平面上に延ばすようにして示す図である。
【図3】図1に示す搬送経路の直線部の周辺を幅方向に見て示す図である。
【図4】図1に示すインクジェットプリンタの制御部の全体的な構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示す制御部により実行されるインクジェットプリンタのメイン処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】図5に示す初期処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】図5に示す画像形成処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図7に示す搬送・吐出処理の手順の一部(概ね、搬送・吐出処理の開始から処理液の吐出タイミングの決定までの手順)を示すフローチャートである。
【図9】図7に示す搬送・吐出処理の手順の一部(概ね、処理液の吐出タイミングの決定から搬送・吐出処理の終了までの手順)を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係るインクジェットプリンタの搬送経路の直線部の周辺を幅方向に見て示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るインクジェットプリンタの搬送経路の直線部の平面図である。
【図12】図11に示すインクジェットプリンタにより実行される画像形成処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4実施形態に係るインクジェットプリンタの搬送経路の直線部の平面図である。
【図14】図13に示すインクジェットプリンタにより実行される搬送・吐出処理の手順の一部(概ね、処理液の吐出タイミングの決定から搬送・吐出処理の終了までの手順)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。ここでは、本発明に係る液滴吐出装置をインクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」と称す)に適用して説明する。以下では、全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るプリンタ1の全体的な構成を示す概略図である。図1に示すように、プリンタ1は、略直方体状の筐体2を有している。筐体2の外上部には、記録面に画像が形成された用紙Mを貯留しておくための排紙部3が設けられている。筐体2の外面には、ユーザにより操作される操作パネル4が設けられている。
【0012】
筐体2内には、給紙機構5、搬送経路6、搬送機構7、5つのヘッド8及び制御部9が設けられている。給紙機構5は、用紙Mを収納し且つ収納している用紙Mを搬送経路6に送り出す。搬送経路6は、全体として左右が反転したS字に形成され、給紙機構5から上方に延びる上流部6a、上流部6aの終端から水平に直線的に延びる直線部6b及び直線部6bの終端から上方に延びる下流部6cを有し、下流部6cの終端は筐体2の上部に形成された排出口2aを介して排紙部3に繋がっている。搬送機構7は、給紙機構5により送り出された用紙Mを搬送経路6に沿って排紙部3まで搬送する。5つのヘッド8は、画像形成用のインクを吐出する4つの記録ヘッド8aと、画質向上用の処理液を吐出する1つの処理液ヘッド8bとから成る。制御部9は、給紙機構5、搬送機構7及び5つのヘッド8の動作を制御する。それにより、搬送経路6に沿って搬送されている用紙Mの記録面に向けて処理液及びインクが適宜の吐出タイミングで吐出され、当該記録面に画像が形成される。
【0013】
このプリンタ1では、ブラックインクと、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクとの合計4種のインクが使用される。処理液は、インクに先立って用紙Mの記録面に向けて吐出される。処理液の材料には、カチオン性化合物、とりわけ、カチオン系高分子やカチオン性界面活性剤、カルシウム塩、マグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等、インクの性質に応じて適宜選択される。かかる処理液が予め塗布された用紙Mの記録面にインクが着弾すると、多価金属塩等がインクの着色剤である顔料又は染料に作用し、不溶性又は難溶性の金属複合体等が凝集又は析出により形成される。その結果、着弾したインクの用紙M内への浸透度が低下し、インクが用紙Mの記録面上に定着しやすくなるので、画像の濃度が高くなる等して画質が高くなる。なお、顔料インクに対しては顔料を凝集させる処理液が使用されて染料インクに対しては染料を析出させる処理液が使用されてもよく、凝集及び析出の両方の作用を有する処理液が使用されてもよい。
【0014】
以下、図1〜図3を参照して上記プリンタ1の構成について詳細に説明する。図2は、図1のIIa−IIa矢視図、IIb−IIb矢視図及びIIc−IIc矢視図を紙面下側からこの順で組み合わせてなる図である。図2では、上流部6a及び下流部6cの中間が適宜図示省略されている。図3は、図1に示す搬送経路6の直線部6bの周辺を幅方向に見て示す図である。なお、以下の説明における「搬送方向」は、用紙Mが搬送機構7によって搬送されていく方向であって搬送経路6の延在方向に一致し、直線部6bの周辺では水平となる。
【0015】
(ヘッド)
図1に示すように、5つのヘッド8は、搬送方向に間隔をおいて配列されている。そのうち処理液ヘッド8bは、前述のとおりインクに先立って処理液を吐出するために、搬送方向の最も上流側に配置されている。4つの記録ヘッド8aは、互いに異なる種類のインクを吐出するようになっており、吐出するインクの明度が小さい順で搬送方向の上流側から並べられている。すなわち、搬送方向の上流側から、ブラック用、シアン用、マゼンタ用、イエロー用の順で配置されている。
【0016】
各ヘッド8は、同様の構成を有している。このプリンタ1はいわゆるラインプリンタであり、各ヘッド8は、幅方向(搬送方向と直交する方向で、図1の紙面に直交する方向)に長尺な略直方体形状を有している。また、各ヘッド8は、液体を通流させるヘッド本体41を有し、ヘッド本体41の下面は、搬送経路6の直線部6bと所定間隔をおいて対向する吐出面42を成している。吐出面42には複数の吐出口が幅方向に配列され、ヘッド本体41内を通流する液体は、各吐出口を介し、直線部6bに沿って水平に搬送されている用紙Mの記録面に向けて吐出される。ヘッド本体41は、選択された複数の吐出口内の液体に吐出エネルギーを付与するヘッドアクチュエータ61(図4参照)を備え、ヘッドアクチュエータ61の動作により、液体が複数の吐出口より選択的に吐出されるようになっている。なお、このヘッドアクチュエータ61の動作は、制御部9により制御される。ヘッドアクチュエータ61は、具体的には複数の吐出口それぞれに対応するように設けられたピエゾ式アクチュエータやサーマル式の発熱素子などが挙げられる。
【0017】
本実施形態に係るプリンタ1は、搬送方向及び幅方向に600dpiの解像度で画像を形成可能である。このため、用紙Mの記録面には、幅方向及び縦方向に夫々1/600インチ間隔の格子状に区画された複数の単位領域(画素領域)が規定され、また、吐出面42には、プリンタ1が利用可能な最大幅の用紙に規定される幅方向1列分の単位領域数に対応する数の吐出口が、幅方向に1/600インチ間隔で配列される。この微小な間隔での配列を実現するため、複数の吐出口は千鳥配列されていてもよい。すなわち、複数の吐出口の一部が、他の吐出口に対して搬送方向に異なる位置に配置されていてもよい。以下の説明における「吐出タイミング」は、搬送方向の任意の位置にある或る吐出口において、当該吐出口より液体を吐出するタイミングを意味する。「インク吐出位置」及び「処理液吐出位置」は、当該吐出口より吐出されたインク又は処理液が着弾される用紙Mの位置としている。
【0018】
なお、筐体2の内底部には、互いに異なる種類のインクを貯留する4つのインクタンク46と、処理液を貯留する1つの処理液タンク47とが取外し可能に設けられている。各タンク46,47内に貯留される液体は、対応するヘッド8より液体が吐出されると、チューブ(図示せず)を介して対応するヘッド8に適宜補充される。
【0019】
(給紙機構)
図1に示すように、給紙機構5は、給紙トレイ11及び給紙ローラ12を有している。給紙トレイ11は、筐体2内におけるインクタンク46及び処理液タンク47の上方に取外し可能に設けられ、上部に開口を有する箱状に形成されている。給紙トレイ11内には、複数の用紙Mが上下に積層された状態で収納される。
【0020】
図2に示すように、給紙トレイ内11では、用紙Mの縦方向(長方形の用紙において、1辺が長い方向)が給紙トレイ11の長手方向(図1の水平方向)に向けられ、用紙Mの横方向が給紙トレイ11の長手方向に直交する幅方向に向けられる。給紙トレイ11の底部には、一対の用紙ガイド13,14がスライダ15を介して取り付けられている。用紙ガイド13,14は、給紙トレイ11内に底部から突出し、給紙トレイ11の長手方向に延在し、給紙トレイ11の幅方向の中心線から同じ距離をおいて平行に配置されている。用紙ガイド13,14は、スライダ15により、給紙トレイ11の中心線までの距離が互いに等しい状態を維持して、給紙トレイ11の幅方向に移動可能である。用紙Mが収納されるときには、当該用紙Mの幅方向の両辺を用紙ガイド13,14の内面に近接させるようにして用紙ガイド13,14の間隔が調整される。これにより、用紙Mの幅方向の寸法の大小に関わらず、当該用紙Mの幅方向の中心線CMを給紙トレイ11の幅方向の中心線に一致させるよう案内することができる。
【0021】
一対の用紙ガイド13,14が最大限に離隔したときには、そのときの間隔未満であり且つ第1寸法以上の幅を有する第1種の用紙M1が好適に位置合わせされる。一対の用紙ガイド13,14が最大限に近接したときには、そのときの間隔未満である第2寸法以下の幅を有する第2種の用紙M2が好適に位置合わせされる。第1寸法は例えば200mmであり、この場合、第1種用紙M1には、6Pサイズ、A4サイズ、Legalサイズ及びLetterサイズ等の用紙が含まれる。第2寸法は例えば185mmであり、この場合、第2種用紙M2には、Executiveサイズ及びB5サイズ等の用紙が含まれる。このように、プリンタ1は、互いに寸法が異なる複数種類の用紙のうち一種を選択的に搬送してその用紙に画像を形成することができる。ここでは、説明の単純化のため、プリンタ1において利用可能な用紙Mのうち、最大の幅方向の長さを有する用紙Mが第1種用紙M1に含まれるものとし、最小の幅方向の長さを有する用紙Mが第2種用紙M2に含まれるものとする。ただし、最小の幅方向の長さを有する用紙は、上記例示のものより更に小さい幅の用紙(例えばKGサイズ)であってもよいし、最大の幅方向の長さを有する用紙は、上記例示のものより更に大きい幅の用紙(例えばB4サイズ又はA3サイズ)であってもよい。
【0022】
給紙ローラ12は、給紙トレイ11内に収納された用紙のうち最上層の用紙に上側から接触するよう設けられており、給紙モータ62(図4参照)により回転駆動される。給紙ローラ12が回転駆動されると、最上層の1枚の用紙が、給紙トレイ11の上方開口から搬送経路6の上流部6aに送り出される。なお、この給紙モータ62の動作は、制御部9(図1及び図4参照)により制御される。
【0023】
給紙トレイ11の幅方向の中心線は、搬送経路6の幅方向の中心線Rと連続している。上記構成の給紙機構5によると、用紙Mの中心線CMが幅方向の寸法に関わらず給紙トレイ11の中心線に一致するよう案内されるので、搬送経路6に送り出された用紙Mの中心線CMを、その幅方向の寸法に関わらず、搬送経路6の幅方向の中心線Rに沿わせることができる。以下では、この搬送方向に延びる搬送経路6の幅方向の中心線Rを、用紙Mの中心線CMと一致すべき「基準線R」と称して説明する。
【0024】
なお、給紙トレイ11については上述した構成の給紙トレイ11を複数設け、サイズの異なる複数の用紙をそれぞれ格納するとともに、制御部9の制御により給紙すべき用紙が格納された給紙トレイ11を選択し、当該給紙トレイ11から所望のサイズの用紙Mが給紙されるように制御してもよい。さらに、上述した構成ではなく、給紙トレイ11内に用紙サイズに対応する所定の枠などが設けられ、用紙Mの中心線CMが給紙トレイ11の中心線に一致するように用紙Mが格納される構成とし、異なる用紙サイズに対応する当該給紙トレイ11を複数設け、制御部9の制御により給紙すべき用紙が格納された給紙トレイ11を選択し、当該給紙トレイ11から所望のサイズの用紙Mが給紙されるように制御してもよい。
【0025】
(搬送経路)
図1に示すように、搬送経路6の上流部6aは、給紙トレイ11の上方開口から上方に連続して延びる一対の搬送ガイド21及び一対の搬送ガイド22により形成されている。搬送経路6の直線部6bは、給紙トレイ11の上方に配列されたプラテン23a〜23dの上面によって形成されている。プラテン23a〜23dは、搬送ガイド22の上端付近から筐体2の背面側に向けて配列されており、各プラテン23a〜23dの上面は、同一の水平面内に位置する。搬送経路6の下流部6bは、一対の搬送ガイド24及び一対の搬送ガイド25によって形成され、搬送ガイド22の上端は排出口2a付近に位置している。なお、プラテン23b、23dの代わりに搬送ガイドを用いてもよい。
【0026】
(搬送機構)
図1に示すように、搬送機構7は、上流側から順に、送りローラ対31,32、搬送ローラ対33、伸展ローラ対34、搬送ローラ対35〜37、及び送りローラ対,39を有している。
【0027】
送りローラ対31は、搬送ガイド21,22間に介在し、送りローラ対32は、搬送ガイド22の搬送方向下流側に近接して配置されている。また、送りローラ対38は、搬送ガイド24,25間に介在し、送りローラ対39は、搬送ガイド25の搬送方向下流側に近接して配置されている。各送りローラ対31,32,38,39は、搬送経路6に沿って搬送される用紙Mを記録面側及びその裏面側から挟み込むように配置された2つのローラから成り、そのうちの一方が駆動ローラであり、他方が従動ローラである。
【0028】
搬送ローラ対33は、プラテン23aの搬送方向上流側に近接して配置され、伸展ローラ対34は、プラテン23a,23bの間に介在し、搬送ローラ対35は、プラテン23b,23c間に介在し、搬送ローラ対36は、プラテン23c,23d間に介在し、搬送ローラ対37は、プラテン23dの下流側に近接して配置されている。他方、処理液ヘッド8bは、プラテン23aの上方に配置され、4つの記録ヘッド8aは、プラテン23cの上方に配置されている。したがって、搬送ローラ対33は、処理液ヘッド8bよりも上流側に位置する。伸展ローラ34対及び搬送ローラ対35は、処理液ヘッド8bと、4つの記録ヘッド8aのうち最も上流側に配置されるブラック用記録ヘッドとの間に位置する。搬送ローラ対36及び搬送ローラ対37は、4つの記録ヘッド8aのうち最も下流側に配置されるイエロー用記録ヘッドよりも搬送方向下流側に位置する。
【0029】
これらローラ対33〜37は、用紙Mの記録面に上側から接触するよう配置された上部ローラ33a〜37aと、用紙Mの裏面に下側から接触するよう配置された下部ローラ33b〜37bとから成り、上部ローラ33a〜37aの回転軸と、下部ローラ33b〜37bの回転軸とは、幅方向に平行に延び且つ上下に並んでいる。よって、上部ローラと下部ローラの各外周面の接線は、用紙Mと接触し得る位置において、プラテン23a〜23dの上面と同一平面内で水平に延びる。
【0030】
搬送ローラ対33,35〜37に関し、下部ローラ33b,35b〜37bが駆動ローラ、上部ローラ33a,35a〜37aが従動ローラである。搬送ローラ対33と搬送ローラ対36とは、5つのヘッド8を搬送方向に挟むように配置され、各上部ローラが、拍車ローラ33a,36a(歯付ローラとも称される)を成している。拍車ローラ33a,36aは、幅方向に延びる回転軸と、回転軸上に間隔を開けて設けられた複数の歯付ディスクとにより構成される。歯付ディスクは、周面に複数の歯(又は突起)が形成された薄い板状のものであり、この歯の先端で用紙Pの記録面と接触する。拍車ローラ33a,36aは、対応する下部ローラ33b,36bに向けて付勢されている。拍車ローラを採用すれば、用紙Mが上下のローラ間に噛み込みやすくなり、円滑に用紙Mを搬送可能になる。また、用紙Mと拍車ローラとの接触面積が小さいので、ローラに付着した汚れ等が用紙に付着することが回避できる。
【0031】
伸展ローラ対34に関し、下部ローラ34bのみが駆動ローラであり上部ローラ34aが従動ローラであってもよく、両方のローラ34a,34bが駆動ローラであってもよい。伸展ローラ対34の上部ローラ34aは、その回転軸上に設けられた長尺円筒状のローラを有し、ローラの表面は、滑らかに成形され、プリンタ1が許容している用紙の印字範囲と同じ又はそれ以上の幅を有し、その表面は用紙Pの記録面の幅方向の全体に亘って接触する。伸展ローラ対34の上部ローラ34aも、対応する下部ローラ34bに向けて付勢されている。
【0032】
上記ローラ対31〜39の各駆動ローラは、搬送モータ63(図4参照)により回転駆動され、各従動ローラは、これら駆動ローラの回転に連れて回転する。各駆動ローラは、用紙Mを搬送経路6に沿って一定の搬送速度V[m/s]で搬送すべく、自身の半径に応じた適宜の角速度で回転駆動される。なお、この搬送モータ63の動作も、制御部9(図1及び図4参照)により制御される。搬送モータ63は、駆動ローラに個別に設けられていてもよいし、一部の駆動ローラに共通して設けられていてもよい。ここでは、説明の単純化のため、1つの搬送モータ63で各駆動ローラが駆動されるものとしている。
【0033】
給紙の動作とともに各駆動ローラが回転駆動されると、用紙Mが送りローラ対31,32により搬送ガイド21,22に沿って直線部6bまで搬送される。直線部6bまで搬送された用紙Mは、搬送ローラ対33の拍車ローラ33aと下部ローラ33bの間を通り抜け、プラテン23aの上面に沿って搬送される。プラテン23a上には処理液ヘッド8bより処理液の吐出を受ける「処理液吐出位置」があり、当該処理液吐出位置を通過する際に処理液の液滴が記録面に着弾する。
【0034】
次に、用紙Mは、伸展ローラ対34の上部ローラ34a及び下部ローラ34bに当接し、これらローラ34a,34b間を水平に通り抜ける。なお、用紙Mの搬送速度Vは、用紙Mが処理液吐出位置から伸展ローラ対34と当接する「ローラ当接位置」まで搬送される間に処理液が用紙M内に完全に染み込まない程度に高く設定される。このため、用紙M内に浸透せず記録面上に残っている処理液が、下方に付勢されている上部ローラ34aと、この付勢を受ける下部ローラ34bとの間に挟まれて加圧され、それにより処理液の液滴が記録面上で薄く伸ばされて処理液の塗布範囲を広げる。なお、上部ローラ34aを成すローラの表面は、用紙Mへの処理液の付着効率を高めるために非液体吸収性を有しており、例えばポリエチレン等の水不溶性樹脂や、鉄及びニッケル等の金属又はその酸化物や、ステンレス鋼等の合金により形成される。
【0035】
次に、伸展ローラ対34を通り抜けた用紙Mは、プラテン23bの上面に沿って搬送され、搬送ローラ対35の上部ローラ35a及び下部ローラ35bの間を通り抜け、プラテン23cの上面に沿って搬送される。プラテン23c上には、ブラックインクの吐出を受けるインク吐出位置(K)、シアンインクの吐出を受けるインク吐出位置(C)、マゼンタインクの吐出を受けるインク吐出位置(M)及びイエローインクの吐出を受けるインク吐出位置(Y)があり、これらインク吐出位置を順次通過する際にインクの液滴が記録面に着弾する。
【0036】
その後、用紙Mは、搬送ローラ対36の拍車ローラ36a及び下部ローラ36bの間を通り抜け、プラテン23dに沿って搬送され、送りローラ対38,39により搬送ガイド24,25に沿って排紙部3まで搬送される。なお、搬送ローラ対37と搬送ガイド23との間には、用紙Mが搬送ローラ対37の上部ローラ37a又は下部ローラ37bに巻き付くのを防ぐためのガイド板26が設けられている。
【0037】
(伸展ローラ対の周辺)
図3に示すように、伸展ローラ対34と搬送ローラ対35との間には、ガイド板51が設けられている。ガイド板51は、全体として側面視でノの字に形成され、上部ローラ34aの搬送方向の下流側において上部ローラ34aの周面に沿うようにして配置されている。ガイド板51の下端部は、屈曲されて、上部ローラ34aの周面に近接対向している。このようなガイド板51によって、用紙Mの先端は、ローラ当接位置を通過した後に案内ローラ対35の上部ローラ35a及び下部ローラ35b間に噛み込むよう、良好に案内される。つまり、用紙Mの記録面は、ローラ当接位置を通過するときに処理液を介して上部ローラ34aの周面に付着し、それにより用紙Mが上部ローラ34aに巻き付いてプラテン23bから離れる可能性がある。このような状況になっても、用紙Mの先端をガイド板51の下端部に当てて下方に返すことができるようになる。それにより、用紙Mの裏面をプラテン23bの上面に復帰させることができる。
【0038】
なお、上部ローラ34aの中心をローラ当接位置と結ぶ線と、上部ローラ34aの中心をガイド板51の下端と結ぶ線とで成す角度αは、90度よりも小さい角度、好ましくは10度〜45度の間の範囲内の角度である。角度αがこのような値であれば、用紙Mを速やかに下方に返すことができる。また、水平に適正に伸展ローラ対34を通り抜けようとする用紙Mがガイド板51と干渉するのを避けることができる。ガイド板51の先端から搬送ローラ対35の回転中心までの搬送方向の距離X2は、ガイド板51の先端から伸展ローラ対34の回転中心までの搬送方向の距離X1と同一又はそれより長い。これにより、ガイド板51によって下方に返された用紙Mが、より確実に搬送ローラ対35のローラ35a,35b間に噛み込むように案内される。本実施形態では、3つのガイド板51を幅方向に間隔をおいて配置した例を示しているが(図2参照)、幅方向に長尺の単一のガイド板51が設けられていてもよい。また、ガイド板51の下端を上部ローラ34aの周面に当接させてもよく、その場合、ガイド板51は、周面に付着した処理液を掻き落とす機能を有することができる。
【0039】
伸展ローラ対34の上部ローラ34aは、前述したとおり非液体吸収性を有している。また、画像形成のタクトタイムを短縮するには、用紙Mの搬送速度をなるべく高くすることが好ましいので、上部ローラ34aもなるべく高速で回転駆動される。このため、上部ローラ34aが回転するときには、上部ローラ34aの周面に付着した処理液が、搬送方向の下流側に且つ上方に巻き上げられるように飛散する場合がある。そこで、搬送経路6の直線部6bの上方には、処理液の飛沫を吸引するためのダクト52が設けられている。ダクト52の吸引口は、上部ローラ34aよりも搬送方向の下流側であって上方に配置されている。これにより、筐体2内が処理液で汚損するのを良好に抑制することができる。
【0040】
そして、プリンタ1は、用紙Mが第1所定位置に位置しているか否かを検出する第1位置センサ53と、用紙Mが第2所定位置に位置しているか否かを検出する第2位置センサ54とを備えている。第1位置センサ53は、ブラック用記録ヘッド8aよりも搬送方向の上流側且つ伸展ローラ対34よりも搬送方向の下流側に配置され、より詳細には、搬送ローラ対35よりも搬送方向の下流側に配置されている。第1所定位置は、搬送経路6上の位置であって、ブラックインクの吐出を受けるインク吐出位置(K)よりも搬送方向の上流側に距離D1だけ離れて且つローラ当接位置よりも搬送方向の下流側の位置である。なお、第1所定位置は、シアンインクの吐出を受けるインク吐出位置(C)からは距離D2、マゼンタインクの吐出を受けるインク吐出位置(M)からは距離D3、イエローインクの吐出を受けるインク吐出位置(Y)からは距離D4だけ離れている。第2位置センサ54は、処理液ヘッド8bよりも搬送方向の上流側に配置され、より詳細には、搬送ローラ対33よりも搬送方向の下流側に配置されている。第2所定位置は、搬送経路6上の位置であって、処理液吐出位置よりも搬送方向の上流側に距離dだけ離れて且つ用紙Mが搬送ローラ対33と接触する位置よりも搬送方向の下流側の位置である。
【0041】
第1位置センサ53は、透過型フォトインタラプタにより構成され、プラテン23cの上方に配置された投光部55と、プラテン23cの内部に配置された受光部56とを有する。投光部55は、下向きに検査光を射出可能になっており、受光部56はこの検査光を受光可能なように、検査光の光路上である投光部55の真下に設けられている。また、プラテン23cは、プラテン23c内の受光部56がプラテン23c外からの検査光を受光可能とするため、スリット窓57が設けられている。スリット窓57は、プラテン23cを貫通形成されたスリット穴であってもよく、このようなスリット穴を透光性材料で製作された板材で塞いで構成されてもよい。なお、投光部55と受光部56を一体として備え、下向き射出した検査光をプラテン23c又は用紙Mに反射させ、受光部56でその反射光を受光する構成であってもよい。
【0042】
上記構成において、スリット窓57が用紙Mで覆われていなければ、受光部56は、投光部55からの検査光を受光して受光状態となる。用紙Mの先端がスリット窓57に差し掛かると、受光部56は、受光状態から検査光を受光不能な非受光状態に切り替わる。用紙Mがスリット窓57を覆っている間は、受光部56が非受光状態を維持する。搬送されている用紙Mの尾端がスリット窓57を通過すると、受光部56は非受光状態から受光状態に切り替わる。
【0043】
この投光部55は、ダクト52の搬送方向の下流側の端面に、遮蔽部材50を介して支持されている。遮蔽部材50は、板状に形成されており、ダクト52の下流側端面に固定されている。これによりガイド部材51は、遮蔽部材50と伸展ローラ対34との間に配置されることとなる。
【0044】
遮蔽部材50の下端部は、ダクト52の吸引口よりも下方に突出している。このような遮蔽部材50を設けることにより、伸展ローラ対34の上部ローラ34aから飛散した処理液を、遮蔽部材50の搬送方向の上流側の端面のうちダクト52よりも下方に突出した部分に衝突させることができる。これにより、処理液がダクト52よりも搬送方向の下流側に飛散するのを抑制することができ、また、衝突させた処理液をダクト52の吸引口に好適に案内することができる。
【0045】
投光部55は、このような遮蔽部材50の搬送方向の下流側の端面に固定され、この下流側の端面に隣接して配置される。前述のとおり、遮蔽部材50よりも搬送方向の下流側では処理液が飛散するのが抑制されるので、投光部55から射出される検査光が処理液で散乱することを良好に抑制することができる。これにより、受光部56における検査光の検出精度を維持することができる。また、遮蔽部材50は、第1位置センサ53を処理液から保護する機能とともに、第1位置センサ53を取り付けるためのステーとしての機能も有することとなる。このため、第1位置センサ53の支持構造を簡素化することができ、筐体2内において伸展ローラ対34周辺の構造が複雑化するのを良好に抑制することができる。
【0046】
図2に示すように、第1位置センサ53(53a,53b)は対を成している。一対の第1位置センサ53a,53bは、基準線Rを中心にして幅方向に対称に配置されている。このように、各第1位置センサ53a,53bは、基準線Rから互いに同じ距離だけ離れるように配置され、基準線Rに対して幅方向に偏在している。他方、用紙Mは、その中心線CMを基準線Rに一致させるようにして搬送されており、一般に、用紙Mの幅方向の中央部に画像が形成される蓋然性は辺縁部に形成される蓋然性よりも高い。つまり、搬送経路6の幅方向の中央部付近においては、処理液及びインクが吐出される量が多くなりがちで、伸展ローラ対34の搬送方向の上流側では、基準線Rの付近にて処理液の飛沫の濃度が高くなりがちとなる。一対の第1位置センサ53a,53bは、この処理液の飛沫の濃度が高くなる箇所を避けるようにして配置されているので、たとえ処理液の飛沫が遮蔽部材50の下端よりも下方を通過するようなことがあっても、第1位置センサ53がその飛沫によって汚損するのをなるべく抑制することができる。
【0047】
また、一対の第1位置センサ53a,53bは、このプリンタ1において利用可能な用紙Mのうち最も幅方向の寸法が短い用紙M2が搬送されるときに、当該用紙M2の幅方向の一対の縁部が第1所定位置に位置するか否かを検知可能な位置に設けられている。詳細には、一対の第1位置センサ53a,53bは、中心線CMを基準線Rに一致させて直線部6bに沿って搬送される最小幅を有する用紙M2が第1所定位置に位置した場合に、当該用紙M2の記録面法線方向(すなわち上下方向)に見て、当該用紙M2の幅方向の一対の縁部と重なるようにして配置されている。これにより、用紙Mが中心線CMを基準線Rに一致させて搬送され、その先端が第1所定位置に到達したときには、用紙Mの幅方向の寸法に関わらず、各第1位置センサ53a,53bが受光状態から非受光状態に切り替わる。
【0048】
図3に示すように、第2位置センサ54は、プラテン23aに内蔵されたスイッチ58と、スイッチ58を操作する操作片59とを有する。操作片59は、プラテン23a内を幅方向に延びる支軸周りに揺動可能に設けられている。プラテン23aには、第1所定位置の周辺でスリット60が貫通形成され、操作片59は、捩りコイルばね等の付勢部材によってプラテン23aの上面からスリット60を介して上方に突出する突出位置に付勢される。用紙Mがスリット60を覆っていなければ、操作片59が突出位置に位置し、スイッチ58が非操作状態となる。用紙Mが搬送されて案内ローラ対33を通り抜けると、用紙Mの先端が操作片59を搬送方向の下流側に押し、操作片59が倒れてプラテン23a内に収納される。このとき、スイッチ58が操作片59により操作され、スイッチ58が非操作状態から操作状態に切り替わる。用紙Mがスリット60を覆っている間は、スイッチ58は操作状態を維持する。搬送されている用紙Mの尾端がスリット60を通過すると、操作片59が突出位置に復帰する。このとき、スイッチ58が操作状態から非操作状態に切り替わる。なお、単一の第2位置センサ54が基準線R上に配置されているので(図2参照)、搬送されている用紙Mの先端が第2所定位置に到達すれば用紙Mの幅方向の寸法に関わらずスイッチ58が非操作状態から操作状態に切り替わる。
【0049】
制御部9(図1及び図4参照)は、第1位置センサ53から、受光部56が受光状態であるか非受光状態であるかを示す信号を入力し、第2位置センサ54から、スイッチ58が操作状態であるか非操作状態であるかを示す信号を入力する。以下では、受光部56が受光状態であることを示す信号及びスイッチ58が非操作状態であることを示す信号を「オフ」、受光部56が非受光状態であることを示す信号及びスイッチ58が操作状態であることを示す信号を「オン」として説明する。
【0050】
(制御部)
以下、図4を参照してプリンタ1の制御部9の構成について説明する。図4は、図1に示す制御部9の全体的な構成を示すブロック図である。図4に示す制御部9は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行する制御プログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御プログラムは、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、メモリカード等の各種記録媒体に保存されており、これらの記録媒体からEEPROMにインストールされる。そして、この制御プログラムがCPUで実行されることにより、図4に示す制御部9を構成する各機能部が実現される。なお、記録媒体に記録された制御プログラムは、制御部9で直接実行可能なものであってもよいし、EEPROMにインストールすることによって初めて実行可能となるものでもよい。また、暗号化されていたり、圧縮されていてもよい。
【0051】
図4に示すように、制御部9は、記録ヘッド制御部71、処理液ヘッド制御部72、給紙搬送制御部73、表示制御部74、画像データ記憶部75、インク吐出データ作成部76、インク吐出データ記憶部77、処理液吐出データ作成部78、処理液吐出データ記憶部79、位置監視部80及び用紙幅判断部81を有している。
【0052】
給紙搬送制御部73は、用紙Mが搬送経路6に沿って一定の搬送速度Vで搬送されるように、給紙モータ62及び搬送モータ63を制御する。表示制御部74は、表示装置64にユーザにプリンタ1に関連する各種の情報を表示させるべく表示装置64を制御する。表示装置64は、ユーザが視認可能な環境に設けられ、例えばプリンタ1と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ65(以下、単に「PC65」と称す)のモニタであってもよく、操作パネル4に備え付けられたディスプレイであってもよい。
【0053】
位置監視部80は、第1位置センサ53及び第2位置センサ54からの入力を監視し、これらの入力が、オフであるか、オフからオンに切り替わったか、オンであるか、及びオンからオフに切り替わったかを検知する。すなわち、位置監視部80は、第1位置センサ53からの入力に基づいて、用紙Mが第1所定位置に存在しない旨、用紙Mの先端が第1所定位置に到達した旨、用紙Mが第1所定位置に位置している旨及び用紙Mの尾端が第1所定位置を通過した旨を検知することができる。第2位置センサ54からの入力に基づいて、用紙Mが第1所定位置に存在しない旨、用紙Mの先端が第1所定位置に到達した旨、用紙Mが第1所定位置に位置している旨及び用紙Mの尾端が第1所定位置を通過した旨を検知することができる。用紙幅判断部81は、PC65におけるユーザの入力操作指令や、操作パネル4におけるユーザの入力操作指令及び給紙トレイ11に設けられて用紙ガイド13,14の対向間隔を検出するトレイ幅センサ66の検出結果に基づき、搬送されようとしている用紙Mの幅方向の寸法を判断する。なお、給紙トレイ11に格納されている用紙サイズが1つに決められる給紙トレイの場合は、複数の給紙トレイ11から印刷時に要求されたサイズの用紙Mが格納された給紙トレイ11が選択され、用紙Mの幅方向の寸法は印刷指令や記録データなどに含まれる用紙サイズに関するデータから決定されることになる。
【0054】
画像データ記憶部75は、PC65から転送された用紙M上に記録される画像に係る画像データを記憶する。インク吐出データ作成部76は、画像データ記憶部75に記憶された画像データに基づいて、記録ヘッド8aにそれぞれ対応する合計4個のインク吐出データを作成する。インク吐出データ記憶部77は、作成された4個のインク吐出データを記憶する。処理液吐出データ作成部78は、画像データ記憶部75に記憶された画像データ又はインク吐出データ記憶部77に記憶されたインク吐出データに基づいて、処理液吐出データを作成する。処理液吐出データ記憶部79は、作成された処理液吐出データを記憶する。インク吐出データ及び処理液吐出データには、対応するヘッドが用紙Mの記録面上に区画される各単位領域(画素領域)にそれぞれ吐出される液滴量(例えば、ゼロ、小滴、中滴及び大滴の4段階のいずれか)を示すデータが含まれている。なお、インク吐出データ及び処理液吐出データは、PC65等の画像データを制御部9へと転送する装置において作成されてもよく、その場合、インク吐出データ及び処理液吐出データは画像データと共に制御部9に転送される。なお、画像データについてはPC65からではなく、プリンタに接続された取り外し可能な記憶端末(USBメモリーやハードディスク等)から転送されてもよい。
【0055】
記録ヘッド制御部71は、インク吐出データ記憶部77に記憶されているインク吐出データに基づいて、用紙Mの記録面上の各単位領域にインク吐出データにより示される量のインク滴が吐出されるように、記録ヘッド8aのヘッドアクチュエータ61を制御する。処理液ヘッド制御部72は、処理液吐出データ記憶部79に記憶されている処理液吐出データに基づいて、用紙Mの記録面上の各単位領域に処理液吐出データにおいて示される量の処理液滴が吐出されるように、処理液ヘッド8bのヘッドアクチュエータ61を制御する。
【0056】
また、記録ヘッド制御部71は、位置監視部80により第1位置センサ53からの入力がオフからオンに切り替わったと検知されると、すなわち、搬送機構7により搬送されている用紙Mの先端が第1所定位置に到達したことが検知されると、その切り替わった時点(すなわち、到達時点)を基準にして、記録ヘッド8aから各単位領域にインク滴を吐出する吐出タイミングを決定し、決定された吐出タイミングでインク滴が吐出されるようヘッドアクチュエータ61を制御する。
【0057】
ブラック用記録ヘッドを例にとると、前述のとおり、第1所定位置からインク吐出位置(K)までの距離はD1である。他方、用紙Mの搬送速度はV[m/s]である。ここで、用紙Mの先端とインク滴を着弾させるべき任意の或る単位領域との間の搬送方向の距離をΔD[m]、用紙Mの先端が第1所定位置に到達した時点をt1とすれば、当該単位領域に向けてブラックインクを吐出する吐出タイミングは、t1+(D1+ΔD)/Vに決定される。なお、シアン用記録ヘッドに関しては、D1がD2に置き換えられて吐出タイミングが決定され、マゼンタ用記録ヘッドに関しては、D1がD3に置き換えられて吐出タイミングが決定され、イエロー用記録ヘッドに関しては、D1がD4に置き換えられて吐出タイミングが決定される。
【0058】
処理液ヘッド制御部72は、位置監視部80によって第2位置センサ54からの入力がオフからオンに切り替わったことが検知されると、すなわち、搬送機構7により搬送されている用紙Mの先端が第2所定位置に到達したことが検知されると、その切り替わった時点(すなわち、到達時点)を基準にして、処理液ヘッド8bから各単位領域に処理液滴を吐出する吐出タイミングを決定し、決定された吐出タイミングで処理液滴が吐出されるようヘッドアクチュエータ61を制御する。第2所定位置から処理液吐出位置までの距離をd[m]、用紙Mの先端とインク滴を着弾させるべき任意の或る単位領域との間の搬送方向の距離をΔd[m]、用紙Mの搬送速度をV[m/s]、用紙Mの先端が第1所定位置に到達した時点をt2とすれば、当該単位領域に向けてインクを吐出する吐出タイミングは、t2+(d+Δd)/Vに決定される。
【0059】
このように処理液の吐出タイミングは、用紙Mの先端が第2所定位置に到達した時点を基準に決定される。第2所定位置と処理液吐出位置との間には搬送ローラ対がなく、用紙Mはこれら2つの位置間をプラテン23aの上面に沿って搬送される。このため、用紙Mは、給紙搬送制御部73によって制御される搬送速度Vに略等しい実速度で2位置間を搬送することができる。したがって、この制御目標の搬送速度Vに基づく吐出タイミングで処理液滴を吐出することにより、用紙Mの記録面上の所望の位置に処理液を着弾させることができる。
【0060】
さらに、インクの吐出タイミングは、用紙Mの先端が第1所定位置に到達した時点を基準に決定される。第1所定位置とインク吐出位置との間には搬送ローラ対がなく、用紙Mはこれら2位置間をプラテン23cの上面に沿って搬送される。したがって、処理液と同様にして、用紙Mの記録面上の所望の位置にインクを着弾させることができる。これにより、インクの着弾位置を処理液の着弾位置に正確に合わせることができ、インクを処理液に良好に作用させて高画質の画像を形成することができる。
【0061】
特に、処理液が着弾した用紙Mが伸展ローラ対34のローラ34a,34b間に突入するときには、用紙Mの先端がローラ34a,34bの周面と当接したり、ローラ34a,34bが用紙上で滑って巻き込み不良が生じたりすることにより、用紙Mの搬送遅れが生じ、制御目標の搬送速度Vに基づき予定される時に第2所定位置に用紙Mの先端が到達しない可能性がある。本実施形態では、伸展ローラ対34を通り抜けた用紙Mの先端が第1所定位置に到達した時点を基準に吐出タイミングが決まるので、そのような搬送遅れが生じているか否かに関わらず、所望の位置にインクを着弾させることができる。
【0062】
(メイン処理)
次に、図5〜図9を参照してプリンタ1の制御部9により実行される処理の手順を説明する。図5は、図4に示す制御部9により実行されるメイン処理の手順を示すフローチャート、図6は、図5に示す初期処理の手順を示すフローチャート、図7は図5に示す画像形成処理の手順を示すフローチャートである。図5に示すメイン処理は、プリンタ1の主電源がオフからオンに切り替わると開始し、主電源がオンである間繰り返される。プリンタ1の主電源がオンになると、まず、初期処理(S1)が実行される。
【0063】
図6に示すように、初期処理(S1)では、まず、第1位置センサ53及び第2位置センサ54からの入力のうち少なくともいずれか一つがオンであるか否かが判断される(S11)。オン入力があれば(S11:YES)、表示装置64に、筐体2内に用紙が残存している旨の情報を表示させる(S12)。これにより、前回のプリンタ1使用時に用紙Mが筐体2内に残ったまま主電源が落とされ、そのまま主電源がオンに切り替えられたような場合に、その旨をユーザに報知することができ、ユーザに用紙を除去するよう促すことができる。なお、この表示は、第1位置センサ53及び第2位置センサ54からの入力が全てオフとなるまで継続される。入力の全てがオフとなれば(S11:NO)、ヘッド8のメンテナンスが必要であるか否かが判断される(S13)。不要であれば(S13:NO)、メイン処理に戻る。必要であれば(S13:YES)、メンテナンス処理(S4)が実行され、メンテナンス処理の終了後にメイン処理に戻る。
【0064】
図5に戻り、初期処理(S1)が終わると、印刷指令が有るか否かが判断される(S2)。印刷指令が無ければ(S2:NO)、ヘッド8のメンテナンスが必要であるか否かが判断され(S3)、不要であれば(S3:NO)、ステップS2に戻る。必要であれば(S3:YES)、メンテナンス処理(S4)が実行され、メンテナンス処理(S4)の終了後にステップS2に戻る。主電源がオンであって初期処理(S1)を終了した後には、この手順が繰り返されて印刷指令を待機する。印刷指令が有れば(S2:YES)、給紙トレイ11内に収納されている用紙Mに画像を形成するための画像形成処理(S5)を開始する。なお、ここでは、給紙トレイ11内には十分な量の用紙Mが予め収納されているものとして説明する。
【0065】
図7に示すように、画像形成処理(S5)では、まず、PC65等から画像データが読み込まれ(S51)、用紙幅センサ66からの入力、PC65又は操作パネル4における入力操作に基づいて用紙幅が判断され(S52)、インク吐出データ及び処理液吐出データ(以下、これらを「液体吐出データ」と総称する場合もある)が作成される。そして、用紙Mを搬送しながら液体を吐出するための搬送・吐出処理(S100)が開始する。
【0066】
(搬送・吐出処理)
図8及び図9は、図7に示す搬送・吐出処理(S100)の手順の一部を示すフローチャートである。図8は、概ね、搬送・吐出処理の開始から処理液の吐出タイミングの決定までの手順を示し、図9は、概ね、処理液の吐出タイミングの決定から搬送・吐出処理の終了までの手順を示している。
【0067】
図8に示すように、搬送・吐出処理(S100)では、まず、給紙モータ62及び搬送モータ63を駆動し、給紙トレイ11内の用紙Mが給紙されて当該用紙Mの搬送が開始する(S101)。そして、この搬送開始時点から所定時間T1が経過したか否かが判断される(S102)。所定時間T1が経過していなければ(S102:NO)、第2位置センサ54からの入力がオフからオンに切り替わったか否かが判断される(S103)。搬送開始時点では、搬送経路6に用紙Mが存在しないので、第2位置センサ54からの入力はオフである。入力がオフのままであれば(S103:NO)、ステップS102に戻る。なお、所定時間T1は、搬送経路6の始点(すなわち、搬送ガイド21の下端)から第2所定位置に搬送されるまでに要する推定時間よりも僅かに長い時間に設定される。当該推定時間は、給紙搬送制御部73により制御される制御目標の搬送速度Vと、これら2位置間の距離とに基づき演算可能である。
【0068】
所定時間T1を経過しても第2位置センサ54からの入力がオフのままである場合、搬送経路6の上流部6a又は搬送ローラ対33で用紙Mのジャムが不所望に発生したために、用紙Mの先端が第2所定位置まで到達し得なかった蓋然性が高い。そこで、第2位置センサ54からの入力がオフのまま所定時間T1が経過した場合(S102:YES)、搬送が停止し且つ表示装置64に用紙Mのジャムが発生している旨を表す情報が表示される(S104)。当該表示には、ジャムの発生箇所が上流部6a又は搬送ローラ対33の周辺であることを特定する情報が付加されていてもよい。これにより、ユーザに用紙を取り除く作業を迅速に行わせるよう促すことができる。
【0069】
次いで、筐体2を開放する等、ユーザによる用紙Mの除去作業が行われたか否かを判断し(S105)、除去作業が行われていない間(S105:NO)は、当該表示が継続される。用紙Mの除去作業が行われれば(S105:YES)、改めて用紙Mの搬送が開始する(S101)。なお、除去作業の有無は、筐体2が開放されたことを検出するセンサ(図示せず)、筐体2が閉鎖されたことを検出するセンサ(図示せず)、及び第1位置センサ53及び第2位置センサ54からの入力に基づいて判断可能である。
【0070】
所定時間T1が経過する前に第2位置センサ54からの入力がオフからオンに切り替わると(S103:YES)、前述したとおり、この切り替わった時点を基準にして処理液ヘッド8bより処理液を吐出するタイミングが決定される(S106)。吐出タイミングを決定すると、決定されたタイミングで処理液ヘッド8bより処理液が記録面に向けて吐出される。
【0071】
図9に示すように、第1位置センサ53からの入力がオフからオンに切り替わったと判断された後は、その切り替わった時点から所定時間T2が経過したか否かが判断される(S107)。所定時間T2が経過していなければ(S107:NO)、一対の第1位置センサ53a,53bからの入力のうちいずれか一方がオフからオンに切り替わったか否かが判断される(S108)。搬送開始時点では、搬送経路6に用紙Mが存在しないので、第1位置センサ53a,53bからの入力はオフである。このように入力の両方がオフのままであれば(S108:NO)、ステップS107に戻る。ここで、所定時間T2は、用紙Mが第2所定位置から第1所定位置に搬送されるまでに要する推定時間よりも僅かに長い時間に設定される。当該推定時間も、搬送速度Vとこれら2位置間の距離とに基づき演算可能である。
【0072】
ここで、本実施形態に係る搬送機構7は、第1所定位置と第2所定位置との間に伸展ローラ対34又は搬送ローラ対35のみが存在して拍車ローラを有するローラ対は存在しない構成となっている。そのため、所定時間T2を経過しても第1位置センサ53a,53bからの入力が両方ともオフのままである場合、これらローラ対34,35で用紙Mのジャムが不所望に発生したために、用紙Mの先端が第1所定位置まで到達し得なかった蓋然性が高い。そこで、第1位置センサ53a,53bからの入力が両方ともオフのまま所定時間T2が経過した場合(S107:YES)、搬送が停止され、処理液ヘッド8bが処理液を吐出するのを停止し且つ表示装置64に用紙Mのジャムが発生している旨を表す情報が表示される(S109)。特に、第2位置センサ54の入力がオンからオフに切り替わった状態で所定時間T2が経過した場合にはローラ対34,35で用紙Mのジャムが発生している可能性が極めて高い(用紙Mが搬送されているのにもかかわらず、第1所定位置に到達していないため)ので、当該表示には、ジャムの発生箇所が伸展ローラ対34又は搬送ローラ対35の周辺であることを特定する情報が付加されていてもよい。これにより、ユーザに用紙Mを取り除く作業を迅速に行わせるよう促すことができる。
【0073】
次いで、ユーザによる用紙Mの除去作業が行われたか否かが判断され(S110)、除去作業が行われていない間(S110:NO)は、当該表示が継続される。用紙Mの除去作業が行われれば(S110:YES)、改めて用紙Mの搬送が開始する(S101)。
【0074】
所定時間T2が経過する前に、第1位置センサ53からの入力の一方がオフからオンに切り替わると(S108:YES)、この切り替わった時点から所定時間T3が経過したか否かが判断される(S111)。所定時間T3は微小時間に設定される。所定時間T3が経過していなければ(S111:NO)、第1位置センサ53a,53bからの入力の両方がオフからオンに切り替わったか否かが判断される(S112)。入力の他方がオフのままであれば(S112:NO)、ステップS111に戻る。
【0075】
所定時間T3を経過しても入力の一方がオンであるのに入力の他方がオフであるである場合、用紙Mの中心線CMが基準線Rから不所望にずれた状態でプラテン23cの上面まで搬送されてきた蓋然性が高い。このようなときにインクが吐出されると、吐出されたインクが用紙Mの記録面上に適切に着弾せず、場合によっては用紙Mからはみ出してプラテン23c上に着弾する可能性もある。そこで、入力の他方がオフのままで所定時間T3が経過した場合(S111:YES)、搬送を停止し、処理液ヘッド8bより処理液が吐出されるのを停止し且つ表示装置64に用紙Mがずれて搬送された旨又は用紙Mが搬送経路6上で詰まっている旨を表示させる(S113)。このとき、用紙Mの先端部が第1所定位置付近に位置することは明らかであるので、当該表示に、用紙Mが搬送ローラ対35の周辺で詰まっている旨を表す情報が付加されていてもよい。これにより、ユーザに用紙Mの除去作業を迅速に行わせることができる。また、プラテン23cを初めとして筐体2内の部品が液体で汚損するのを未然に防ぐことができる。
【0076】
次いで、ユーザによる用紙Mの除去作業が行われたか否かを判断し(S114)、除去作業が行われていない間(S114:NO)は、当該表示が継続される。用紙Mの除去作業が行われれば(S114:YES)、改めて用紙Mの搬送が開始する(S101)。
【0077】
所定時間T3が経過する前に、第1位置センサ53a,53bからの入力が両方ともオフからオンに切り替わると(S112:YES)、この切り替わった時点若しくは一方の入力がオフからオンに切り替わった時点を基準にして、前述したとおり、各記録ヘッド8aより対応するインクを吐出するタイミングが決定される(S115)。吐出タイミングを決定すると、決定されたタイミングで各記録ヘッド8aよりインクが記録面に向けて吐出される。
【0078】
そして、まだ画像を形成すべきページが有るか否かを判断し(S116)、そのようなページが有れば(S116:YES)、連続して印刷すべく次の用紙Mの搬送が開始する(S101)。そのようなページが無ければ(S116:NO)、当該用紙Mを排紙部3まで搬送した後に搬送・吐出処理及び画像形成処理を終了し、メイン処理に戻る。
【0079】
このように第1位置センサ53及び第2位置センサ54からの入力を監視することにより、主電源がオンに切り替わったときに用紙Mが搬送経路6上に残存しているか、画像を形成するときに用紙Mのジャムが発生しているか否か、及び画像を形成するときに用紙Mが基準線Rからずれているか否かを判断することができる。
【0080】
なお、図9に示すステップS107において、所定時間T2を起算する時点は、第2位置センサ54からの入力がオンからオフに切り替わった時点に変更されてもよい。つまり、用紙Mの全体が第2所定位置を通過した時点から所定時間T2が経過したか否かを判断してもよい。
【0081】
また、図9に示す処理の手順は、所定時間T3がゼロとなるような処理が実行されるよう変更されてもよい。この場合、S111の判断処理が削除される。また、S108の判断処理でYESであればS112の判断処理に進むよう変更され且つS112の判断処理でNOであればステップS113に進むよう変更される。
【0082】
また、用紙Mの給紙及び搬送の開始が行われる時点で第1位置センサ53及び第2位置センサ54からの入力がオフである状態を担保するため、搬送・吐出処理S100では、ステップS101に先立ち、初期処理S1のステップS11,S12と同様にして筐体2内に用紙Mが残存しているか否かを判断する処理を実行してもよい。
【0083】
[第2実施形態]
図10は、本発明の第2実施形態に係るプリンタ101の搬送経路6の直線部6bの周辺を幅方向に見て示す図である。本実施形態は、第1実施形態に対し、第1位置センサが接点スイッチ式である点で相違している。
【0084】
図10に示すように、本実施形態に係る第1位置センサ153は、第1実施形態に係る第2位置センサと同様にして構成されている。すなわち、第1位置センサ153は、プラテン23cに内蔵されたスイッチ155と、スイッチ155を操作する操作片156とを有する。操作片156は、プラテン23c内を幅方向に延びる支軸周りに揺動可能に設けられている。プラテン23cには、第1所定位置の周辺でスリット157が貫通形成され、操作片156は、捩りコイルばね等の付勢部材によってプラテン23cの上面からスリット157を介して上方に突出する突出位置に付勢される。用紙Mがスリット157を覆うときには操作片156が倒れてスイッチ155が操作状態となる。本実施形態では、スイッチ155がプラテン23cに内蔵されるので、処理液の飛沫でスイッチ155が汚損するのを良好に防止することができる。これにより、第1実施形態に係る遮蔽部材を省略することも可能となる。ただし、処理液をダクトに案内する作用効果を奏するべく、遮蔽部材が設けられていてもよい。
【0085】
[第3実施形態]
図11は、本発明の第3実施形態に係るプリンタ201の搬送経路6の直線部6bの平面図である。本実施形態は、第1及び第2実施形態に対し、一対の第1位置センサから成るセンサの組が複数設けられている点で相違する。なお、本実施形態では、各第1位置センサ53を、第1実施形態と同様に光学式としているが、第2実施形態のようにスイッチ式としてもよい。
【0086】
図11に示すように、本実施形態では、2組の一対の第1位置センサから成るセンサの組が2組設けられている。第1組の一対の第1位置センサ53A(53a,53b)は、第1実施形態に係る一対の第1位置センサ53a,53bと同様である。つまり、このプリンタ1において利用可能な用紙Mのうち最も幅方向の寸法が短い用紙M2が搬送されるときに、当該用紙M2の幅方向の一対の縁部が第1所定位置に位置するか否かを検知可能な位置に設けられている。詳細には、一対の第1位置センサ53a,53bは、中心線CMを基準線Rに一致させて直線部6bに沿って搬送される最小幅を有する用紙M2が第1所定位置に位置した場合に、当該用紙M2の記録面法線方向(すなわち上下方向)に見て、当該用紙M2の幅方向の一対の縁部と重なるようにして配置されている。
【0087】
第2組の一対の第1位置センサ53B(53c.53d)も、基準線Rを中心にして対称に配置されている。また、第2組の一対の第1位置センサ53c,53dは、このプリンタ1において利用可能な用紙Mのうち最も幅方向の寸法が長い用紙M1が搬送されるときに、当該用紙M1の幅方向の一対の縁部が第1所定位置に位置するか否かを検知可能な位置に設けられている。詳細には、一対の第1位置センサ53c,53dは、中心線CMを基準線Rに一致させて直線部6bに沿って搬送される最大幅を有する用紙M1が第1所定位置に位置した場合に、当該用紙M1の記録面法線方向(すなわち上下方向)に見て、当該用紙M1の幅方向の一対の縁部と重なるようにして配置されている。
【0088】
このように各組の一対の第1位置センサ53A,53Bは、幅方向の寸法が互いに異なる複数の用紙のそれぞれに対応して設けられている。
【0089】
図12は、図11に示すプリンタ1により実行される画像形成処理S5Aの手順を示すフローチャートである。図12に示す画像形成処理S5Aは、図7に示したものと置き換えられる。図12に示すように、本実施形態に係る画像形成処理S5Aでは、まず、第1実施形態と同様にして、画像データが読み込まれ(S51)、用紙幅が読み込まれ(S52)、液体吐出データが作成される(S53)。次に、読み込まれた用紙幅に関する情報に基づいて、当該用紙幅に対応する第1位置センサ53の組を選択する(S54)。この選択処理が行われたうえで、搬送・吐出処理が実行される(S100)。搬送・吐出処理(S100)では、ステップS54で選択された組の一対の第1位置センサからの入力を監視して、ステップS108,S112(図9参照)の処理が実行される。
【0090】
最小幅の用紙に合わせて一対の第1位置センサが配置された場合には、最大幅の用紙が搬送されたときに、用紙の中心線が基準線からずれていても、第1位置センサからの入力が両方ともオンになる可能性がある。本実施形態のように、互いに幅方向の寸法が異なる複数種の用紙に対応して一対の第1位置センサを設けることにより、当該用紙の中心線が基準線からずれているか否かを良好に検出することができるようになる。
【0091】
[第4実施形態]
図13は、本発明の第4実施形態に係るプリンタ301の搬送経路6の直線部6bの平面図である。本実施形態は、第1〜第3実施形態に対し、第1位置センサ53が単一である点で相違する。なお、本実施形態に係る第1位置センサ53を、第1実施形態と同様に光学式としているが、第2実施形態のようにスイッチ式としてもよい。
【0092】
図13に示すように、第4実施形態に係る第1位置センサ53は、第1実施形態に係る一対の第1位置センサから一方が削除され、他方が残された状態となっている。つまり、この単一の第1位置センサ53は、このプリンタ1において利用可能な用紙Mのうち最も幅方向の寸法が短い用紙M2が搬送されるときに、当該用紙M2の幅方向の一方の縁部が第1所定位置に位置するか否かを検知可能な位置に設けられている。詳細には、第1位置センサ53は、中心線CMを基準線Rに一致させて直線部6bに沿って搬送される最小幅を有する用紙M2が第1所定位置に位置した場合に、当該用紙M2の記録面法線方向(すなわち上下方向)に見て、当該用紙M2の幅方向の一方の縁部と重なるようにして配置されている。これにより、処理液の飛沫でセンサが汚損するのをなるべく抑制しつつ、搬送される用紙の幅方向の寸法に関わらず、当該用紙の先端が第1所定位置に到達したか否かを良好に検出することができる。
【0093】
図14は、図13に示すプリンタ301により実行される搬送・吐出処理の手順の一部を示すフローチャートである。図14に示す処理は、図8に示す処理と共に実行されるものであり、図9に示す処理と置き換えられる。図14に示すように、第2位置センサ54からの入力に基づいて処理液の吐出タイミングが決定された後は、第2位置センサ54がオフからオンに切り替わった時点から所定時間T2が経過したか否かが判断される(S157)。この所定時間T2は、第1実施形態に係るステップS107の判断処理において利用される時間T2と同様である。所定時間T2が経過していなければ(S157:NO)、単一の第1位置センサ53からの入力がオフからオンに切り替わったか否かが判断される(S158)。オフのままであれば(S158:NO)、ステップS157に戻る。
【0094】
第1位置センサ53からの入力がオフのまま所定時間T2が経過した場合(S157:YES)、搬送を停止し、処理液ヘッド8bによる処理液の吐出を停止し且つ表示装置64に伸展ローラ対34又は搬送ローラ対35の周辺において用紙Mのジャムが発生している旨を表示させる(S159)。次いで、ユーザによる用紙の除去作業が行われたか否かを判断し(S160)、除去作業が行われていない間は(S160:NO)、当該表示を継続させる。除去作業が行われると、表示を停止するとともに、改めて用紙Mの搬送が開始する(S101)。
【0095】
所定時間T2が経過するまでの間に第1位置センサ53からの入力がオフからオンに切り替わると(S158:YES)、その切り替わった時点を基準にして、記録ヘッド8aよりインクを吐出する吐出タイミングを決定する(S161)。そして、画像を形成すべき次のページが有るか否かを判断し(S161)、そのようなページが有れば(S161:YES)、次の用紙の搬送が開始する(S101)。そのようなページが無ければ(S161:NO)、搬送・吐出処理を終了してメイン処理まで戻る。
【0096】
このように、第1位置センサ53が単一であっても、用紙Mが伸展ローラ対34を通過するのに要した時間に関わらずインクの吐出タイミングを決定することができ、それにより、インクを記録面の所望の位置に着弾させることができるようになる。
【0097】
[他の形態]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能である。
【0098】
例えば、単一の第1位置センサ53を基準線Rと重なるように配置してもよい。第2位置センサが光学式であってもよい。第2位置センサ54は、処理液ヘッド8bの下流側であればどこに配置されてもよい。上記実施形態のように直線部6bに設けると、第2所定位置を処理液吐出位置に好適に近づけることができ、タイミング制御の精度が高くなる。また、プラテン23a〜23dの上面によって形成される直線部6bに設けるほうが、搬送ガイド21,22により形成される上流部6aより、センサの配置自由度が高くなる。なお、一対の第1位置センサを最大幅の用紙の縁部と重なるように配置してもよい。
【0099】
また、伸展ローラ対と第1位置センサの間に設けた搬送ローラ対は適宜省略可能である。逆に、隣り合う2つの記録ヘッド8aの間に形成される3つのスペースの全部又は一部に、搬送ローラ対が設けられていてもよい。また、搬送ローラ対33,35〜37及び伸展ローラ対34の各下部ローラと、プラテン23a〜23dとを省略し、省略された下部ローラ及びプラテンに替えて無端の搬送ベルトが設けられてもよい。この場合、搬送機構には搬送ベルトを周回させるためのローラが設けられる。
【0100】
本発明は、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置にも適用可能である。さらに、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機などにも適用可能である。また、ヘッド制御部が処理液ヘッドのアクチュエータユニットや各記録ヘッドのアクチュエータユニットを駆動するのではなく、処理液ヘッドを各記録ヘッドの発熱素子を駆動することでヘッドから処理液やインクを吐出することとしてもよい。また、インクへの処理液の作用としては、インクと処理液が混ざることで化学反応してインク中の成分(顔料や染料)を凝集又は析出することも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、画像を形成するための第1液体の着弾位置と、第1液体の成分に作用して第1液体を凝集又は析出させる第2液体の着弾位置とを正確に合わせることができ、記録媒体に形成される画像の乱れを抑制することができるという作用効果を奏し、インクジェットプリンタなどの画像を形成するための装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
M 用紙(記録媒体)
CM 中心線
R 基準線
1 インクジェットプリンタ(液滴吐出装置)
7 搬送機構
8a 記録ヘッド(第1液体吐出ヘッド)
8b 処理液ヘッド(第2液体吐出ヘッド)
9 制御部
33,35〜37 搬送ローラ対
33a,36a 拍車ローラ
34 伸展ローラ対
34a 上部ローラ(回転ローラ)
34b 下部ローラ(回転ローラ)
50 遮蔽部材
51 ガイド板(ガイド部材)
53(53a,53b,53c,53d),153 第1位置センサ
54 第2位置センサ
64 表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の第1液体を吐出して記録媒体の記録面に画像を形成する液滴吐出装置に関する。本発明は、特に、第1液体を吐出するよりも前に、第1液体の成分を凝集又は析出させる処理液等の第2液体を記録媒体の記録面に吐出しておくように構成され、且つ、第2液体の吐出後第1液体の吐出前に記録用紙の記録面にローラを当接させるように構成された液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体の性質の違いに関わらず高い印字品質を維持したり画質を向上させたりするために、記録媒体に対し画像を形成するインク等の第1液を吐出する前に、第1液の成分を凝集又は析出させる第2液を第1液が吐出される記録媒体位置に塗布するように構成された液滴吐出装置が知られている。例えば、特許文献1のインクジェット記録装置は、記録媒体に向けてインク組成物を吐出するインク組成物付着手段(インクジェット記録ヘッド)と、記録媒体に向けて反応液を吐出する反応液付着手段(反応液塗布手段としてのインクジェット記録ヘッド)とを備え、記録媒体の反応液の付着位置とインク組成物の印字位置とが一致するように、記録媒体に反応液とインク組成物とを着弾させるように構成されたものである。さらに、上記特許文献1のインクジェット記録装置は、記録媒体に付着した反応液を加圧および加熱する2本のローラを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−37942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のように、記録媒体に付着した第2液体(特許文献1の反応液に対応)をローラで当接させる場合に、記録媒体がローラ間に突入するときに、記録媒体の搬送方向下流側端がローラの周面と当接したり、ローラが記録媒体上で滑って巻き込み不良が生じたりすることにより、記録媒体の搬送遅れが生じる。ところが、第1液体(特許文献1のインクに対応)の吐出タイミングには、上述の搬送遅れが加味されていないので、記録媒体への第1液体の着弾位置にズレが生じ、且つ、第2液体の着弾位置に第1液体を適切に着弾させることも困難となり、記録媒体に形成される画像に乱れが生じる。
【0005】
そこで、本発明では、記録媒体に着弾した第2液体をローラで当接させる構成を備えた液滴吐出装置において、記録媒体がローラ間に突入するときに生じる記録媒体の搬送遅れを加味した第1液体の吐出制御を行うことにより、上述した画像の乱れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液滴吐出装置は、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、画像を形成するための第1液体を搬送される記録媒体の記録面に向けて吐出する第1液体吐出ヘッドと、前記第1液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の上流側に配置され、前記第1液体の成分を凝集又は析出させる第2液体を搬送される記録媒体の前記記録面に向けて吐出する第2液体吐出ヘッドと、前記第1液体吐出ヘッドと前記第2液体吐出ヘッドとの間において、搬送される記録媒体の前記記録面に外周面が当接するように設けられる回転ローラと、前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッドの動作を制御する制御部と、を備えた液滴吐出装置であって、前記回転ローラと前記第1液体吐出ヘッドとの間における第1所定位置に記録媒体が位置するか否かを検出可能な第1位置センサと、前記第2液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の上流側における第2所定位置に記録媒体が位置するか否かを検出する第2位置センサと、を有し、前記制御部は、搬送される記録媒体が前記第2所定位置に到達したことが前記第2位置センサにより検出された時点を基準として、前記第2液体吐出ヘッドより吐出される前記第2液体の吐出タイミングを決定し、かつ、搬送される記録媒体が前記第1所定位置に到達したことが前記第1位置センサにより検出された時点を基準として、前記第1液体吐出ヘッドより吐出される前記第1液体の吐出タイミングを決定することを特徴としている。
【0007】
前記構成によれば、記録媒体は、搬送される過程において、第2所定位置を通過し、第2液体吐出ヘッドより第2液体の吐出を受け、回転ローラの外周面と当接し、第1所定位置を通過し、第1液体吐出ヘッドより第1液体の吐出を受ける。第2液体の吐出タイミングは、記録媒体が直前の第2所定位置に到達した時点を基準として決定されるので、記録面の所望位置に第2液体を着弾させることができる。また、回転ローラと当接して記録媒体が撓んだりすることにより、記録媒体が予定していた時に第1液体ヘッドに到達しない場合であっても、記録媒体が回転ローラを通過して第1所定位置に到達した時点を基準として第1液体の吐出タイミングを決定しているので、記録面の所望の位置に第1液体を正確に着弾させることができるようになる。したがって、第2液体が着弾する位置と第1液体が着弾する位置とを正確に合わせて、記録媒体に形成される画像の乱れを抑制することができるようになる。
【発明の効果】
【0008】
上記のとおり、本発明によれば、記録面の所望の位置に第1液体を正確に着弾させることができ、且つ、第1液体の着弾位置と第2液体の着弾位置とを正確に合わせることができるので、記録媒体に形成される画像の乱れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す給紙機構及び搬送経路を平面上に延ばすようにして示すべく、図1のIIa−IIa矢視図とIIb−IIb矢視図とIIc−IIc矢視図とをこの順で紙面下側から組み合わせてなる図である。IIa−IIa矢視図は、給紙機構の平面図と搬送経路の上流部を搬送方向に沿って平面上に延ばすようにして示す図とを組み合わせて成る図、IIb−IIb矢視図は、搬送経路の直線部の平面図、IIc−IIc矢視図は、搬送経路の下流部を搬送方向に沿って平面上に延ばすようにして示す図である。
【図3】図1に示す搬送経路の直線部の周辺を幅方向に見て示す図である。
【図4】図1に示すインクジェットプリンタの制御部の全体的な構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示す制御部により実行されるインクジェットプリンタのメイン処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】図5に示す初期処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】図5に示す画像形成処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図7に示す搬送・吐出処理の手順の一部(概ね、搬送・吐出処理の開始から処理液の吐出タイミングの決定までの手順)を示すフローチャートである。
【図9】図7に示す搬送・吐出処理の手順の一部(概ね、処理液の吐出タイミングの決定から搬送・吐出処理の終了までの手順)を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係るインクジェットプリンタの搬送経路の直線部の周辺を幅方向に見て示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るインクジェットプリンタの搬送経路の直線部の平面図である。
【図12】図11に示すインクジェットプリンタにより実行される画像形成処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4実施形態に係るインクジェットプリンタの搬送経路の直線部の平面図である。
【図14】図13に示すインクジェットプリンタにより実行される搬送・吐出処理の手順の一部(概ね、処理液の吐出タイミングの決定から搬送・吐出処理の終了までの手順)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。ここでは、本発明に係る液滴吐出装置をインクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」と称す)に適用して説明する。以下では、全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るプリンタ1の全体的な構成を示す概略図である。図1に示すように、プリンタ1は、略直方体状の筐体2を有している。筐体2の外上部には、記録面に画像が形成された用紙Mを貯留しておくための排紙部3が設けられている。筐体2の外面には、ユーザにより操作される操作パネル4が設けられている。
【0012】
筐体2内には、給紙機構5、搬送経路6、搬送機構7、5つのヘッド8及び制御部9が設けられている。給紙機構5は、用紙Mを収納し且つ収納している用紙Mを搬送経路6に送り出す。搬送経路6は、全体として左右が反転したS字に形成され、給紙機構5から上方に延びる上流部6a、上流部6aの終端から水平に直線的に延びる直線部6b及び直線部6bの終端から上方に延びる下流部6cを有し、下流部6cの終端は筐体2の上部に形成された排出口2aを介して排紙部3に繋がっている。搬送機構7は、給紙機構5により送り出された用紙Mを搬送経路6に沿って排紙部3まで搬送する。5つのヘッド8は、画像形成用のインクを吐出する4つの記録ヘッド8aと、画質向上用の処理液を吐出する1つの処理液ヘッド8bとから成る。制御部9は、給紙機構5、搬送機構7及び5つのヘッド8の動作を制御する。それにより、搬送経路6に沿って搬送されている用紙Mの記録面に向けて処理液及びインクが適宜の吐出タイミングで吐出され、当該記録面に画像が形成される。
【0013】
このプリンタ1では、ブラックインクと、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクとの合計4種のインクが使用される。処理液は、インクに先立って用紙Mの記録面に向けて吐出される。処理液の材料には、カチオン性化合物、とりわけ、カチオン系高分子やカチオン性界面活性剤、カルシウム塩、マグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等、インクの性質に応じて適宜選択される。かかる処理液が予め塗布された用紙Mの記録面にインクが着弾すると、多価金属塩等がインクの着色剤である顔料又は染料に作用し、不溶性又は難溶性の金属複合体等が凝集又は析出により形成される。その結果、着弾したインクの用紙M内への浸透度が低下し、インクが用紙Mの記録面上に定着しやすくなるので、画像の濃度が高くなる等して画質が高くなる。なお、顔料インクに対しては顔料を凝集させる処理液が使用されて染料インクに対しては染料を析出させる処理液が使用されてもよく、凝集及び析出の両方の作用を有する処理液が使用されてもよい。
【0014】
以下、図1〜図3を参照して上記プリンタ1の構成について詳細に説明する。図2は、図1のIIa−IIa矢視図、IIb−IIb矢視図及びIIc−IIc矢視図を紙面下側からこの順で組み合わせてなる図である。図2では、上流部6a及び下流部6cの中間が適宜図示省略されている。図3は、図1に示す搬送経路6の直線部6bの周辺を幅方向に見て示す図である。なお、以下の説明における「搬送方向」は、用紙Mが搬送機構7によって搬送されていく方向であって搬送経路6の延在方向に一致し、直線部6bの周辺では水平となる。
【0015】
(ヘッド)
図1に示すように、5つのヘッド8は、搬送方向に間隔をおいて配列されている。そのうち処理液ヘッド8bは、前述のとおりインクに先立って処理液を吐出するために、搬送方向の最も上流側に配置されている。4つの記録ヘッド8aは、互いに異なる種類のインクを吐出するようになっており、吐出するインクの明度が小さい順で搬送方向の上流側から並べられている。すなわち、搬送方向の上流側から、ブラック用、シアン用、マゼンタ用、イエロー用の順で配置されている。
【0016】
各ヘッド8は、同様の構成を有している。このプリンタ1はいわゆるラインプリンタであり、各ヘッド8は、幅方向(搬送方向と直交する方向で、図1の紙面に直交する方向)に長尺な略直方体形状を有している。また、各ヘッド8は、液体を通流させるヘッド本体41を有し、ヘッド本体41の下面は、搬送経路6の直線部6bと所定間隔をおいて対向する吐出面42を成している。吐出面42には複数の吐出口が幅方向に配列され、ヘッド本体41内を通流する液体は、各吐出口を介し、直線部6bに沿って水平に搬送されている用紙Mの記録面に向けて吐出される。ヘッド本体41は、選択された複数の吐出口内の液体に吐出エネルギーを付与するヘッドアクチュエータ61(図4参照)を備え、ヘッドアクチュエータ61の動作により、液体が複数の吐出口より選択的に吐出されるようになっている。なお、このヘッドアクチュエータ61の動作は、制御部9により制御される。ヘッドアクチュエータ61は、具体的には複数の吐出口それぞれに対応するように設けられたピエゾ式アクチュエータやサーマル式の発熱素子などが挙げられる。
【0017】
本実施形態に係るプリンタ1は、搬送方向及び幅方向に600dpiの解像度で画像を形成可能である。このため、用紙Mの記録面には、幅方向及び縦方向に夫々1/600インチ間隔の格子状に区画された複数の単位領域(画素領域)が規定され、また、吐出面42には、プリンタ1が利用可能な最大幅の用紙に規定される幅方向1列分の単位領域数に対応する数の吐出口が、幅方向に1/600インチ間隔で配列される。この微小な間隔での配列を実現するため、複数の吐出口は千鳥配列されていてもよい。すなわち、複数の吐出口の一部が、他の吐出口に対して搬送方向に異なる位置に配置されていてもよい。以下の説明における「吐出タイミング」は、搬送方向の任意の位置にある或る吐出口において、当該吐出口より液体を吐出するタイミングを意味する。「インク吐出位置」及び「処理液吐出位置」は、当該吐出口より吐出されたインク又は処理液が着弾される用紙Mの位置としている。
【0018】
なお、筐体2の内底部には、互いに異なる種類のインクを貯留する4つのインクタンク46と、処理液を貯留する1つの処理液タンク47とが取外し可能に設けられている。各タンク46,47内に貯留される液体は、対応するヘッド8より液体が吐出されると、チューブ(図示せず)を介して対応するヘッド8に適宜補充される。
【0019】
(給紙機構)
図1に示すように、給紙機構5は、給紙トレイ11及び給紙ローラ12を有している。給紙トレイ11は、筐体2内におけるインクタンク46及び処理液タンク47の上方に取外し可能に設けられ、上部に開口を有する箱状に形成されている。給紙トレイ11内には、複数の用紙Mが上下に積層された状態で収納される。
【0020】
図2に示すように、給紙トレイ内11では、用紙Mの縦方向(長方形の用紙において、1辺が長い方向)が給紙トレイ11の長手方向(図1の水平方向)に向けられ、用紙Mの横方向が給紙トレイ11の長手方向に直交する幅方向に向けられる。給紙トレイ11の底部には、一対の用紙ガイド13,14がスライダ15を介して取り付けられている。用紙ガイド13,14は、給紙トレイ11内に底部から突出し、給紙トレイ11の長手方向に延在し、給紙トレイ11の幅方向の中心線から同じ距離をおいて平行に配置されている。用紙ガイド13,14は、スライダ15により、給紙トレイ11の中心線までの距離が互いに等しい状態を維持して、給紙トレイ11の幅方向に移動可能である。用紙Mが収納されるときには、当該用紙Mの幅方向の両辺を用紙ガイド13,14の内面に近接させるようにして用紙ガイド13,14の間隔が調整される。これにより、用紙Mの幅方向の寸法の大小に関わらず、当該用紙Mの幅方向の中心線CMを給紙トレイ11の幅方向の中心線に一致させるよう案内することができる。
【0021】
一対の用紙ガイド13,14が最大限に離隔したときには、そのときの間隔未満であり且つ第1寸法以上の幅を有する第1種の用紙M1が好適に位置合わせされる。一対の用紙ガイド13,14が最大限に近接したときには、そのときの間隔未満である第2寸法以下の幅を有する第2種の用紙M2が好適に位置合わせされる。第1寸法は例えば200mmであり、この場合、第1種用紙M1には、6Pサイズ、A4サイズ、Legalサイズ及びLetterサイズ等の用紙が含まれる。第2寸法は例えば185mmであり、この場合、第2種用紙M2には、Executiveサイズ及びB5サイズ等の用紙が含まれる。このように、プリンタ1は、互いに寸法が異なる複数種類の用紙のうち一種を選択的に搬送してその用紙に画像を形成することができる。ここでは、説明の単純化のため、プリンタ1において利用可能な用紙Mのうち、最大の幅方向の長さを有する用紙Mが第1種用紙M1に含まれるものとし、最小の幅方向の長さを有する用紙Mが第2種用紙M2に含まれるものとする。ただし、最小の幅方向の長さを有する用紙は、上記例示のものより更に小さい幅の用紙(例えばKGサイズ)であってもよいし、最大の幅方向の長さを有する用紙は、上記例示のものより更に大きい幅の用紙(例えばB4サイズ又はA3サイズ)であってもよい。
【0022】
給紙ローラ12は、給紙トレイ11内に収納された用紙のうち最上層の用紙に上側から接触するよう設けられており、給紙モータ62(図4参照)により回転駆動される。給紙ローラ12が回転駆動されると、最上層の1枚の用紙が、給紙トレイ11の上方開口から搬送経路6の上流部6aに送り出される。なお、この給紙モータ62の動作は、制御部9(図1及び図4参照)により制御される。
【0023】
給紙トレイ11の幅方向の中心線は、搬送経路6の幅方向の中心線Rと連続している。上記構成の給紙機構5によると、用紙Mの中心線CMが幅方向の寸法に関わらず給紙トレイ11の中心線に一致するよう案内されるので、搬送経路6に送り出された用紙Mの中心線CMを、その幅方向の寸法に関わらず、搬送経路6の幅方向の中心線Rに沿わせることができる。以下では、この搬送方向に延びる搬送経路6の幅方向の中心線Rを、用紙Mの中心線CMと一致すべき「基準線R」と称して説明する。
【0024】
なお、給紙トレイ11については上述した構成の給紙トレイ11を複数設け、サイズの異なる複数の用紙をそれぞれ格納するとともに、制御部9の制御により給紙すべき用紙が格納された給紙トレイ11を選択し、当該給紙トレイ11から所望のサイズの用紙Mが給紙されるように制御してもよい。さらに、上述した構成ではなく、給紙トレイ11内に用紙サイズに対応する所定の枠などが設けられ、用紙Mの中心線CMが給紙トレイ11の中心線に一致するように用紙Mが格納される構成とし、異なる用紙サイズに対応する当該給紙トレイ11を複数設け、制御部9の制御により給紙すべき用紙が格納された給紙トレイ11を選択し、当該給紙トレイ11から所望のサイズの用紙Mが給紙されるように制御してもよい。
【0025】
(搬送経路)
図1に示すように、搬送経路6の上流部6aは、給紙トレイ11の上方開口から上方に連続して延びる一対の搬送ガイド21及び一対の搬送ガイド22により形成されている。搬送経路6の直線部6bは、給紙トレイ11の上方に配列されたプラテン23a〜23dの上面によって形成されている。プラテン23a〜23dは、搬送ガイド22の上端付近から筐体2の背面側に向けて配列されており、各プラテン23a〜23dの上面は、同一の水平面内に位置する。搬送経路6の下流部6bは、一対の搬送ガイド24及び一対の搬送ガイド25によって形成され、搬送ガイド22の上端は排出口2a付近に位置している。なお、プラテン23b、23dの代わりに搬送ガイドを用いてもよい。
【0026】
(搬送機構)
図1に示すように、搬送機構7は、上流側から順に、送りローラ対31,32、搬送ローラ対33、伸展ローラ対34、搬送ローラ対35〜37、及び送りローラ対,39を有している。
【0027】
送りローラ対31は、搬送ガイド21,22間に介在し、送りローラ対32は、搬送ガイド22の搬送方向下流側に近接して配置されている。また、送りローラ対38は、搬送ガイド24,25間に介在し、送りローラ対39は、搬送ガイド25の搬送方向下流側に近接して配置されている。各送りローラ対31,32,38,39は、搬送経路6に沿って搬送される用紙Mを記録面側及びその裏面側から挟み込むように配置された2つのローラから成り、そのうちの一方が駆動ローラであり、他方が従動ローラである。
【0028】
搬送ローラ対33は、プラテン23aの搬送方向上流側に近接して配置され、伸展ローラ対34は、プラテン23a,23bの間に介在し、搬送ローラ対35は、プラテン23b,23c間に介在し、搬送ローラ対36は、プラテン23c,23d間に介在し、搬送ローラ対37は、プラテン23dの下流側に近接して配置されている。他方、処理液ヘッド8bは、プラテン23aの上方に配置され、4つの記録ヘッド8aは、プラテン23cの上方に配置されている。したがって、搬送ローラ対33は、処理液ヘッド8bよりも上流側に位置する。伸展ローラ34対及び搬送ローラ対35は、処理液ヘッド8bと、4つの記録ヘッド8aのうち最も上流側に配置されるブラック用記録ヘッドとの間に位置する。搬送ローラ対36及び搬送ローラ対37は、4つの記録ヘッド8aのうち最も下流側に配置されるイエロー用記録ヘッドよりも搬送方向下流側に位置する。
【0029】
これらローラ対33〜37は、用紙Mの記録面に上側から接触するよう配置された上部ローラ33a〜37aと、用紙Mの裏面に下側から接触するよう配置された下部ローラ33b〜37bとから成り、上部ローラ33a〜37aの回転軸と、下部ローラ33b〜37bの回転軸とは、幅方向に平行に延び且つ上下に並んでいる。よって、上部ローラと下部ローラの各外周面の接線は、用紙Mと接触し得る位置において、プラテン23a〜23dの上面と同一平面内で水平に延びる。
【0030】
搬送ローラ対33,35〜37に関し、下部ローラ33b,35b〜37bが駆動ローラ、上部ローラ33a,35a〜37aが従動ローラである。搬送ローラ対33と搬送ローラ対36とは、5つのヘッド8を搬送方向に挟むように配置され、各上部ローラが、拍車ローラ33a,36a(歯付ローラとも称される)を成している。拍車ローラ33a,36aは、幅方向に延びる回転軸と、回転軸上に間隔を開けて設けられた複数の歯付ディスクとにより構成される。歯付ディスクは、周面に複数の歯(又は突起)が形成された薄い板状のものであり、この歯の先端で用紙Pの記録面と接触する。拍車ローラ33a,36aは、対応する下部ローラ33b,36bに向けて付勢されている。拍車ローラを採用すれば、用紙Mが上下のローラ間に噛み込みやすくなり、円滑に用紙Mを搬送可能になる。また、用紙Mと拍車ローラとの接触面積が小さいので、ローラに付着した汚れ等が用紙に付着することが回避できる。
【0031】
伸展ローラ対34に関し、下部ローラ34bのみが駆動ローラであり上部ローラ34aが従動ローラであってもよく、両方のローラ34a,34bが駆動ローラであってもよい。伸展ローラ対34の上部ローラ34aは、その回転軸上に設けられた長尺円筒状のローラを有し、ローラの表面は、滑らかに成形され、プリンタ1が許容している用紙の印字範囲と同じ又はそれ以上の幅を有し、その表面は用紙Pの記録面の幅方向の全体に亘って接触する。伸展ローラ対34の上部ローラ34aも、対応する下部ローラ34bに向けて付勢されている。
【0032】
上記ローラ対31〜39の各駆動ローラは、搬送モータ63(図4参照)により回転駆動され、各従動ローラは、これら駆動ローラの回転に連れて回転する。各駆動ローラは、用紙Mを搬送経路6に沿って一定の搬送速度V[m/s]で搬送すべく、自身の半径に応じた適宜の角速度で回転駆動される。なお、この搬送モータ63の動作も、制御部9(図1及び図4参照)により制御される。搬送モータ63は、駆動ローラに個別に設けられていてもよいし、一部の駆動ローラに共通して設けられていてもよい。ここでは、説明の単純化のため、1つの搬送モータ63で各駆動ローラが駆動されるものとしている。
【0033】
給紙の動作とともに各駆動ローラが回転駆動されると、用紙Mが送りローラ対31,32により搬送ガイド21,22に沿って直線部6bまで搬送される。直線部6bまで搬送された用紙Mは、搬送ローラ対33の拍車ローラ33aと下部ローラ33bの間を通り抜け、プラテン23aの上面に沿って搬送される。プラテン23a上には処理液ヘッド8bより処理液の吐出を受ける「処理液吐出位置」があり、当該処理液吐出位置を通過する際に処理液の液滴が記録面に着弾する。
【0034】
次に、用紙Mは、伸展ローラ対34の上部ローラ34a及び下部ローラ34bに当接し、これらローラ34a,34b間を水平に通り抜ける。なお、用紙Mの搬送速度Vは、用紙Mが処理液吐出位置から伸展ローラ対34と当接する「ローラ当接位置」まで搬送される間に処理液が用紙M内に完全に染み込まない程度に高く設定される。このため、用紙M内に浸透せず記録面上に残っている処理液が、下方に付勢されている上部ローラ34aと、この付勢を受ける下部ローラ34bとの間に挟まれて加圧され、それにより処理液の液滴が記録面上で薄く伸ばされて処理液の塗布範囲を広げる。なお、上部ローラ34aを成すローラの表面は、用紙Mへの処理液の付着効率を高めるために非液体吸収性を有しており、例えばポリエチレン等の水不溶性樹脂や、鉄及びニッケル等の金属又はその酸化物や、ステンレス鋼等の合金により形成される。
【0035】
次に、伸展ローラ対34を通り抜けた用紙Mは、プラテン23bの上面に沿って搬送され、搬送ローラ対35の上部ローラ35a及び下部ローラ35bの間を通り抜け、プラテン23cの上面に沿って搬送される。プラテン23c上には、ブラックインクの吐出を受けるインク吐出位置(K)、シアンインクの吐出を受けるインク吐出位置(C)、マゼンタインクの吐出を受けるインク吐出位置(M)及びイエローインクの吐出を受けるインク吐出位置(Y)があり、これらインク吐出位置を順次通過する際にインクの液滴が記録面に着弾する。
【0036】
その後、用紙Mは、搬送ローラ対36の拍車ローラ36a及び下部ローラ36bの間を通り抜け、プラテン23dに沿って搬送され、送りローラ対38,39により搬送ガイド24,25に沿って排紙部3まで搬送される。なお、搬送ローラ対37と搬送ガイド23との間には、用紙Mが搬送ローラ対37の上部ローラ37a又は下部ローラ37bに巻き付くのを防ぐためのガイド板26が設けられている。
【0037】
(伸展ローラ対の周辺)
図3に示すように、伸展ローラ対34と搬送ローラ対35との間には、ガイド板51が設けられている。ガイド板51は、全体として側面視でノの字に形成され、上部ローラ34aの搬送方向の下流側において上部ローラ34aの周面に沿うようにして配置されている。ガイド板51の下端部は、屈曲されて、上部ローラ34aの周面に近接対向している。このようなガイド板51によって、用紙Mの先端は、ローラ当接位置を通過した後に案内ローラ対35の上部ローラ35a及び下部ローラ35b間に噛み込むよう、良好に案内される。つまり、用紙Mの記録面は、ローラ当接位置を通過するときに処理液を介して上部ローラ34aの周面に付着し、それにより用紙Mが上部ローラ34aに巻き付いてプラテン23bから離れる可能性がある。このような状況になっても、用紙Mの先端をガイド板51の下端部に当てて下方に返すことができるようになる。それにより、用紙Mの裏面をプラテン23bの上面に復帰させることができる。
【0038】
なお、上部ローラ34aの中心をローラ当接位置と結ぶ線と、上部ローラ34aの中心をガイド板51の下端と結ぶ線とで成す角度αは、90度よりも小さい角度、好ましくは10度〜45度の間の範囲内の角度である。角度αがこのような値であれば、用紙Mを速やかに下方に返すことができる。また、水平に適正に伸展ローラ対34を通り抜けようとする用紙Mがガイド板51と干渉するのを避けることができる。ガイド板51の先端から搬送ローラ対35の回転中心までの搬送方向の距離X2は、ガイド板51の先端から伸展ローラ対34の回転中心までの搬送方向の距離X1と同一又はそれより長い。これにより、ガイド板51によって下方に返された用紙Mが、より確実に搬送ローラ対35のローラ35a,35b間に噛み込むように案内される。本実施形態では、3つのガイド板51を幅方向に間隔をおいて配置した例を示しているが(図2参照)、幅方向に長尺の単一のガイド板51が設けられていてもよい。また、ガイド板51の下端を上部ローラ34aの周面に当接させてもよく、その場合、ガイド板51は、周面に付着した処理液を掻き落とす機能を有することができる。
【0039】
伸展ローラ対34の上部ローラ34aは、前述したとおり非液体吸収性を有している。また、画像形成のタクトタイムを短縮するには、用紙Mの搬送速度をなるべく高くすることが好ましいので、上部ローラ34aもなるべく高速で回転駆動される。このため、上部ローラ34aが回転するときには、上部ローラ34aの周面に付着した処理液が、搬送方向の下流側に且つ上方に巻き上げられるように飛散する場合がある。そこで、搬送経路6の直線部6bの上方には、処理液の飛沫を吸引するためのダクト52が設けられている。ダクト52の吸引口は、上部ローラ34aよりも搬送方向の下流側であって上方に配置されている。これにより、筐体2内が処理液で汚損するのを良好に抑制することができる。
【0040】
そして、プリンタ1は、用紙Mが第1所定位置に位置しているか否かを検出する第1位置センサ53と、用紙Mが第2所定位置に位置しているか否かを検出する第2位置センサ54とを備えている。第1位置センサ53は、ブラック用記録ヘッド8aよりも搬送方向の上流側且つ伸展ローラ対34よりも搬送方向の下流側に配置され、より詳細には、搬送ローラ対35よりも搬送方向の下流側に配置されている。第1所定位置は、搬送経路6上の位置であって、ブラックインクの吐出を受けるインク吐出位置(K)よりも搬送方向の上流側に距離D1だけ離れて且つローラ当接位置よりも搬送方向の下流側の位置である。なお、第1所定位置は、シアンインクの吐出を受けるインク吐出位置(C)からは距離D2、マゼンタインクの吐出を受けるインク吐出位置(M)からは距離D3、イエローインクの吐出を受けるインク吐出位置(Y)からは距離D4だけ離れている。第2位置センサ54は、処理液ヘッド8bよりも搬送方向の上流側に配置され、より詳細には、搬送ローラ対33よりも搬送方向の下流側に配置されている。第2所定位置は、搬送経路6上の位置であって、処理液吐出位置よりも搬送方向の上流側に距離dだけ離れて且つ用紙Mが搬送ローラ対33と接触する位置よりも搬送方向の下流側の位置である。
【0041】
第1位置センサ53は、透過型フォトインタラプタにより構成され、プラテン23cの上方に配置された投光部55と、プラテン23cの内部に配置された受光部56とを有する。投光部55は、下向きに検査光を射出可能になっており、受光部56はこの検査光を受光可能なように、検査光の光路上である投光部55の真下に設けられている。また、プラテン23cは、プラテン23c内の受光部56がプラテン23c外からの検査光を受光可能とするため、スリット窓57が設けられている。スリット窓57は、プラテン23cを貫通形成されたスリット穴であってもよく、このようなスリット穴を透光性材料で製作された板材で塞いで構成されてもよい。なお、投光部55と受光部56を一体として備え、下向き射出した検査光をプラテン23c又は用紙Mに反射させ、受光部56でその反射光を受光する構成であってもよい。
【0042】
上記構成において、スリット窓57が用紙Mで覆われていなければ、受光部56は、投光部55からの検査光を受光して受光状態となる。用紙Mの先端がスリット窓57に差し掛かると、受光部56は、受光状態から検査光を受光不能な非受光状態に切り替わる。用紙Mがスリット窓57を覆っている間は、受光部56が非受光状態を維持する。搬送されている用紙Mの尾端がスリット窓57を通過すると、受光部56は非受光状態から受光状態に切り替わる。
【0043】
この投光部55は、ダクト52の搬送方向の下流側の端面に、遮蔽部材50を介して支持されている。遮蔽部材50は、板状に形成されており、ダクト52の下流側端面に固定されている。これによりガイド部材51は、遮蔽部材50と伸展ローラ対34との間に配置されることとなる。
【0044】
遮蔽部材50の下端部は、ダクト52の吸引口よりも下方に突出している。このような遮蔽部材50を設けることにより、伸展ローラ対34の上部ローラ34aから飛散した処理液を、遮蔽部材50の搬送方向の上流側の端面のうちダクト52よりも下方に突出した部分に衝突させることができる。これにより、処理液がダクト52よりも搬送方向の下流側に飛散するのを抑制することができ、また、衝突させた処理液をダクト52の吸引口に好適に案内することができる。
【0045】
投光部55は、このような遮蔽部材50の搬送方向の下流側の端面に固定され、この下流側の端面に隣接して配置される。前述のとおり、遮蔽部材50よりも搬送方向の下流側では処理液が飛散するのが抑制されるので、投光部55から射出される検査光が処理液で散乱することを良好に抑制することができる。これにより、受光部56における検査光の検出精度を維持することができる。また、遮蔽部材50は、第1位置センサ53を処理液から保護する機能とともに、第1位置センサ53を取り付けるためのステーとしての機能も有することとなる。このため、第1位置センサ53の支持構造を簡素化することができ、筐体2内において伸展ローラ対34周辺の構造が複雑化するのを良好に抑制することができる。
【0046】
図2に示すように、第1位置センサ53(53a,53b)は対を成している。一対の第1位置センサ53a,53bは、基準線Rを中心にして幅方向に対称に配置されている。このように、各第1位置センサ53a,53bは、基準線Rから互いに同じ距離だけ離れるように配置され、基準線Rに対して幅方向に偏在している。他方、用紙Mは、その中心線CMを基準線Rに一致させるようにして搬送されており、一般に、用紙Mの幅方向の中央部に画像が形成される蓋然性は辺縁部に形成される蓋然性よりも高い。つまり、搬送経路6の幅方向の中央部付近においては、処理液及びインクが吐出される量が多くなりがちで、伸展ローラ対34の搬送方向の上流側では、基準線Rの付近にて処理液の飛沫の濃度が高くなりがちとなる。一対の第1位置センサ53a,53bは、この処理液の飛沫の濃度が高くなる箇所を避けるようにして配置されているので、たとえ処理液の飛沫が遮蔽部材50の下端よりも下方を通過するようなことがあっても、第1位置センサ53がその飛沫によって汚損するのをなるべく抑制することができる。
【0047】
また、一対の第1位置センサ53a,53bは、このプリンタ1において利用可能な用紙Mのうち最も幅方向の寸法が短い用紙M2が搬送されるときに、当該用紙M2の幅方向の一対の縁部が第1所定位置に位置するか否かを検知可能な位置に設けられている。詳細には、一対の第1位置センサ53a,53bは、中心線CMを基準線Rに一致させて直線部6bに沿って搬送される最小幅を有する用紙M2が第1所定位置に位置した場合に、当該用紙M2の記録面法線方向(すなわち上下方向)に見て、当該用紙M2の幅方向の一対の縁部と重なるようにして配置されている。これにより、用紙Mが中心線CMを基準線Rに一致させて搬送され、その先端が第1所定位置に到達したときには、用紙Mの幅方向の寸法に関わらず、各第1位置センサ53a,53bが受光状態から非受光状態に切り替わる。
【0048】
図3に示すように、第2位置センサ54は、プラテン23aに内蔵されたスイッチ58と、スイッチ58を操作する操作片59とを有する。操作片59は、プラテン23a内を幅方向に延びる支軸周りに揺動可能に設けられている。プラテン23aには、第1所定位置の周辺でスリット60が貫通形成され、操作片59は、捩りコイルばね等の付勢部材によってプラテン23aの上面からスリット60を介して上方に突出する突出位置に付勢される。用紙Mがスリット60を覆っていなければ、操作片59が突出位置に位置し、スイッチ58が非操作状態となる。用紙Mが搬送されて案内ローラ対33を通り抜けると、用紙Mの先端が操作片59を搬送方向の下流側に押し、操作片59が倒れてプラテン23a内に収納される。このとき、スイッチ58が操作片59により操作され、スイッチ58が非操作状態から操作状態に切り替わる。用紙Mがスリット60を覆っている間は、スイッチ58は操作状態を維持する。搬送されている用紙Mの尾端がスリット60を通過すると、操作片59が突出位置に復帰する。このとき、スイッチ58が操作状態から非操作状態に切り替わる。なお、単一の第2位置センサ54が基準線R上に配置されているので(図2参照)、搬送されている用紙Mの先端が第2所定位置に到達すれば用紙Mの幅方向の寸法に関わらずスイッチ58が非操作状態から操作状態に切り替わる。
【0049】
制御部9(図1及び図4参照)は、第1位置センサ53から、受光部56が受光状態であるか非受光状態であるかを示す信号を入力し、第2位置センサ54から、スイッチ58が操作状態であるか非操作状態であるかを示す信号を入力する。以下では、受光部56が受光状態であることを示す信号及びスイッチ58が非操作状態であることを示す信号を「オフ」、受光部56が非受光状態であることを示す信号及びスイッチ58が操作状態であることを示す信号を「オン」として説明する。
【0050】
(制御部)
以下、図4を参照してプリンタ1の制御部9の構成について説明する。図4は、図1に示す制御部9の全体的な構成を示すブロック図である。図4に示す制御部9は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行する制御プログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御プログラムは、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、メモリカード等の各種記録媒体に保存されており、これらの記録媒体からEEPROMにインストールされる。そして、この制御プログラムがCPUで実行されることにより、図4に示す制御部9を構成する各機能部が実現される。なお、記録媒体に記録された制御プログラムは、制御部9で直接実行可能なものであってもよいし、EEPROMにインストールすることによって初めて実行可能となるものでもよい。また、暗号化されていたり、圧縮されていてもよい。
【0051】
図4に示すように、制御部9は、記録ヘッド制御部71、処理液ヘッド制御部72、給紙搬送制御部73、表示制御部74、画像データ記憶部75、インク吐出データ作成部76、インク吐出データ記憶部77、処理液吐出データ作成部78、処理液吐出データ記憶部79、位置監視部80及び用紙幅判断部81を有している。
【0052】
給紙搬送制御部73は、用紙Mが搬送経路6に沿って一定の搬送速度Vで搬送されるように、給紙モータ62及び搬送モータ63を制御する。表示制御部74は、表示装置64にユーザにプリンタ1に関連する各種の情報を表示させるべく表示装置64を制御する。表示装置64は、ユーザが視認可能な環境に設けられ、例えばプリンタ1と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ65(以下、単に「PC65」と称す)のモニタであってもよく、操作パネル4に備え付けられたディスプレイであってもよい。
【0053】
位置監視部80は、第1位置センサ53及び第2位置センサ54からの入力を監視し、これらの入力が、オフであるか、オフからオンに切り替わったか、オンであるか、及びオンからオフに切り替わったかを検知する。すなわち、位置監視部80は、第1位置センサ53からの入力に基づいて、用紙Mが第1所定位置に存在しない旨、用紙Mの先端が第1所定位置に到達した旨、用紙Mが第1所定位置に位置している旨及び用紙Mの尾端が第1所定位置を通過した旨を検知することができる。第2位置センサ54からの入力に基づいて、用紙Mが第1所定位置に存在しない旨、用紙Mの先端が第1所定位置に到達した旨、用紙Mが第1所定位置に位置している旨及び用紙Mの尾端が第1所定位置を通過した旨を検知することができる。用紙幅判断部81は、PC65におけるユーザの入力操作指令や、操作パネル4におけるユーザの入力操作指令及び給紙トレイ11に設けられて用紙ガイド13,14の対向間隔を検出するトレイ幅センサ66の検出結果に基づき、搬送されようとしている用紙Mの幅方向の寸法を判断する。なお、給紙トレイ11に格納されている用紙サイズが1つに決められる給紙トレイの場合は、複数の給紙トレイ11から印刷時に要求されたサイズの用紙Mが格納された給紙トレイ11が選択され、用紙Mの幅方向の寸法は印刷指令や記録データなどに含まれる用紙サイズに関するデータから決定されることになる。
【0054】
画像データ記憶部75は、PC65から転送された用紙M上に記録される画像に係る画像データを記憶する。インク吐出データ作成部76は、画像データ記憶部75に記憶された画像データに基づいて、記録ヘッド8aにそれぞれ対応する合計4個のインク吐出データを作成する。インク吐出データ記憶部77は、作成された4個のインク吐出データを記憶する。処理液吐出データ作成部78は、画像データ記憶部75に記憶された画像データ又はインク吐出データ記憶部77に記憶されたインク吐出データに基づいて、処理液吐出データを作成する。処理液吐出データ記憶部79は、作成された処理液吐出データを記憶する。インク吐出データ及び処理液吐出データには、対応するヘッドが用紙Mの記録面上に区画される各単位領域(画素領域)にそれぞれ吐出される液滴量(例えば、ゼロ、小滴、中滴及び大滴の4段階のいずれか)を示すデータが含まれている。なお、インク吐出データ及び処理液吐出データは、PC65等の画像データを制御部9へと転送する装置において作成されてもよく、その場合、インク吐出データ及び処理液吐出データは画像データと共に制御部9に転送される。なお、画像データについてはPC65からではなく、プリンタに接続された取り外し可能な記憶端末(USBメモリーやハードディスク等)から転送されてもよい。
【0055】
記録ヘッド制御部71は、インク吐出データ記憶部77に記憶されているインク吐出データに基づいて、用紙Mの記録面上の各単位領域にインク吐出データにより示される量のインク滴が吐出されるように、記録ヘッド8aのヘッドアクチュエータ61を制御する。処理液ヘッド制御部72は、処理液吐出データ記憶部79に記憶されている処理液吐出データに基づいて、用紙Mの記録面上の各単位領域に処理液吐出データにおいて示される量の処理液滴が吐出されるように、処理液ヘッド8bのヘッドアクチュエータ61を制御する。
【0056】
また、記録ヘッド制御部71は、位置監視部80により第1位置センサ53からの入力がオフからオンに切り替わったと検知されると、すなわち、搬送機構7により搬送されている用紙Mの先端が第1所定位置に到達したことが検知されると、その切り替わった時点(すなわち、到達時点)を基準にして、記録ヘッド8aから各単位領域にインク滴を吐出する吐出タイミングを決定し、決定された吐出タイミングでインク滴が吐出されるようヘッドアクチュエータ61を制御する。
【0057】
ブラック用記録ヘッドを例にとると、前述のとおり、第1所定位置からインク吐出位置(K)までの距離はD1である。他方、用紙Mの搬送速度はV[m/s]である。ここで、用紙Mの先端とインク滴を着弾させるべき任意の或る単位領域との間の搬送方向の距離をΔD[m]、用紙Mの先端が第1所定位置に到達した時点をt1とすれば、当該単位領域に向けてブラックインクを吐出する吐出タイミングは、t1+(D1+ΔD)/Vに決定される。なお、シアン用記録ヘッドに関しては、D1がD2に置き換えられて吐出タイミングが決定され、マゼンタ用記録ヘッドに関しては、D1がD3に置き換えられて吐出タイミングが決定され、イエロー用記録ヘッドに関しては、D1がD4に置き換えられて吐出タイミングが決定される。
【0058】
処理液ヘッド制御部72は、位置監視部80によって第2位置センサ54からの入力がオフからオンに切り替わったことが検知されると、すなわち、搬送機構7により搬送されている用紙Mの先端が第2所定位置に到達したことが検知されると、その切り替わった時点(すなわち、到達時点)を基準にして、処理液ヘッド8bから各単位領域に処理液滴を吐出する吐出タイミングを決定し、決定された吐出タイミングで処理液滴が吐出されるようヘッドアクチュエータ61を制御する。第2所定位置から処理液吐出位置までの距離をd[m]、用紙Mの先端とインク滴を着弾させるべき任意の或る単位領域との間の搬送方向の距離をΔd[m]、用紙Mの搬送速度をV[m/s]、用紙Mの先端が第1所定位置に到達した時点をt2とすれば、当該単位領域に向けてインクを吐出する吐出タイミングは、t2+(d+Δd)/Vに決定される。
【0059】
このように処理液の吐出タイミングは、用紙Mの先端が第2所定位置に到達した時点を基準に決定される。第2所定位置と処理液吐出位置との間には搬送ローラ対がなく、用紙Mはこれら2つの位置間をプラテン23aの上面に沿って搬送される。このため、用紙Mは、給紙搬送制御部73によって制御される搬送速度Vに略等しい実速度で2位置間を搬送することができる。したがって、この制御目標の搬送速度Vに基づく吐出タイミングで処理液滴を吐出することにより、用紙Mの記録面上の所望の位置に処理液を着弾させることができる。
【0060】
さらに、インクの吐出タイミングは、用紙Mの先端が第1所定位置に到達した時点を基準に決定される。第1所定位置とインク吐出位置との間には搬送ローラ対がなく、用紙Mはこれら2位置間をプラテン23cの上面に沿って搬送される。したがって、処理液と同様にして、用紙Mの記録面上の所望の位置にインクを着弾させることができる。これにより、インクの着弾位置を処理液の着弾位置に正確に合わせることができ、インクを処理液に良好に作用させて高画質の画像を形成することができる。
【0061】
特に、処理液が着弾した用紙Mが伸展ローラ対34のローラ34a,34b間に突入するときには、用紙Mの先端がローラ34a,34bの周面と当接したり、ローラ34a,34bが用紙上で滑って巻き込み不良が生じたりすることにより、用紙Mの搬送遅れが生じ、制御目標の搬送速度Vに基づき予定される時に第2所定位置に用紙Mの先端が到達しない可能性がある。本実施形態では、伸展ローラ対34を通り抜けた用紙Mの先端が第1所定位置に到達した時点を基準に吐出タイミングが決まるので、そのような搬送遅れが生じているか否かに関わらず、所望の位置にインクを着弾させることができる。
【0062】
(メイン処理)
次に、図5〜図9を参照してプリンタ1の制御部9により実行される処理の手順を説明する。図5は、図4に示す制御部9により実行されるメイン処理の手順を示すフローチャート、図6は、図5に示す初期処理の手順を示すフローチャート、図7は図5に示す画像形成処理の手順を示すフローチャートである。図5に示すメイン処理は、プリンタ1の主電源がオフからオンに切り替わると開始し、主電源がオンである間繰り返される。プリンタ1の主電源がオンになると、まず、初期処理(S1)が実行される。
【0063】
図6に示すように、初期処理(S1)では、まず、第1位置センサ53及び第2位置センサ54からの入力のうち少なくともいずれか一つがオンであるか否かが判断される(S11)。オン入力があれば(S11:YES)、表示装置64に、筐体2内に用紙が残存している旨の情報を表示させる(S12)。これにより、前回のプリンタ1使用時に用紙Mが筐体2内に残ったまま主電源が落とされ、そのまま主電源がオンに切り替えられたような場合に、その旨をユーザに報知することができ、ユーザに用紙を除去するよう促すことができる。なお、この表示は、第1位置センサ53及び第2位置センサ54からの入力が全てオフとなるまで継続される。入力の全てがオフとなれば(S11:NO)、ヘッド8のメンテナンスが必要であるか否かが判断される(S13)。不要であれば(S13:NO)、メイン処理に戻る。必要であれば(S13:YES)、メンテナンス処理(S4)が実行され、メンテナンス処理の終了後にメイン処理に戻る。
【0064】
図5に戻り、初期処理(S1)が終わると、印刷指令が有るか否かが判断される(S2)。印刷指令が無ければ(S2:NO)、ヘッド8のメンテナンスが必要であるか否かが判断され(S3)、不要であれば(S3:NO)、ステップS2に戻る。必要であれば(S3:YES)、メンテナンス処理(S4)が実行され、メンテナンス処理(S4)の終了後にステップS2に戻る。主電源がオンであって初期処理(S1)を終了した後には、この手順が繰り返されて印刷指令を待機する。印刷指令が有れば(S2:YES)、給紙トレイ11内に収納されている用紙Mに画像を形成するための画像形成処理(S5)を開始する。なお、ここでは、給紙トレイ11内には十分な量の用紙Mが予め収納されているものとして説明する。
【0065】
図7に示すように、画像形成処理(S5)では、まず、PC65等から画像データが読み込まれ(S51)、用紙幅センサ66からの入力、PC65又は操作パネル4における入力操作に基づいて用紙幅が判断され(S52)、インク吐出データ及び処理液吐出データ(以下、これらを「液体吐出データ」と総称する場合もある)が作成される。そして、用紙Mを搬送しながら液体を吐出するための搬送・吐出処理(S100)が開始する。
【0066】
(搬送・吐出処理)
図8及び図9は、図7に示す搬送・吐出処理(S100)の手順の一部を示すフローチャートである。図8は、概ね、搬送・吐出処理の開始から処理液の吐出タイミングの決定までの手順を示し、図9は、概ね、処理液の吐出タイミングの決定から搬送・吐出処理の終了までの手順を示している。
【0067】
図8に示すように、搬送・吐出処理(S100)では、まず、給紙モータ62及び搬送モータ63を駆動し、給紙トレイ11内の用紙Mが給紙されて当該用紙Mの搬送が開始する(S101)。そして、この搬送開始時点から所定時間T1が経過したか否かが判断される(S102)。所定時間T1が経過していなければ(S102:NO)、第2位置センサ54からの入力がオフからオンに切り替わったか否かが判断される(S103)。搬送開始時点では、搬送経路6に用紙Mが存在しないので、第2位置センサ54からの入力はオフである。入力がオフのままであれば(S103:NO)、ステップS102に戻る。なお、所定時間T1は、搬送経路6の始点(すなわち、搬送ガイド21の下端)から第2所定位置に搬送されるまでに要する推定時間よりも僅かに長い時間に設定される。当該推定時間は、給紙搬送制御部73により制御される制御目標の搬送速度Vと、これら2位置間の距離とに基づき演算可能である。
【0068】
所定時間T1を経過しても第2位置センサ54からの入力がオフのままである場合、搬送経路6の上流部6a又は搬送ローラ対33で用紙Mのジャムが不所望に発生したために、用紙Mの先端が第2所定位置まで到達し得なかった蓋然性が高い。そこで、第2位置センサ54からの入力がオフのまま所定時間T1が経過した場合(S102:YES)、搬送が停止し且つ表示装置64に用紙Mのジャムが発生している旨を表す情報が表示される(S104)。当該表示には、ジャムの発生箇所が上流部6a又は搬送ローラ対33の周辺であることを特定する情報が付加されていてもよい。これにより、ユーザに用紙を取り除く作業を迅速に行わせるよう促すことができる。
【0069】
次いで、筐体2を開放する等、ユーザによる用紙Mの除去作業が行われたか否かを判断し(S105)、除去作業が行われていない間(S105:NO)は、当該表示が継続される。用紙Mの除去作業が行われれば(S105:YES)、改めて用紙Mの搬送が開始する(S101)。なお、除去作業の有無は、筐体2が開放されたことを検出するセンサ(図示せず)、筐体2が閉鎖されたことを検出するセンサ(図示せず)、及び第1位置センサ53及び第2位置センサ54からの入力に基づいて判断可能である。
【0070】
所定時間T1が経過する前に第2位置センサ54からの入力がオフからオンに切り替わると(S103:YES)、前述したとおり、この切り替わった時点を基準にして処理液ヘッド8bより処理液を吐出するタイミングが決定される(S106)。吐出タイミングを決定すると、決定されたタイミングで処理液ヘッド8bより処理液が記録面に向けて吐出される。
【0071】
図9に示すように、第1位置センサ53からの入力がオフからオンに切り替わったと判断された後は、その切り替わった時点から所定時間T2が経過したか否かが判断される(S107)。所定時間T2が経過していなければ(S107:NO)、一対の第1位置センサ53a,53bからの入力のうちいずれか一方がオフからオンに切り替わったか否かが判断される(S108)。搬送開始時点では、搬送経路6に用紙Mが存在しないので、第1位置センサ53a,53bからの入力はオフである。このように入力の両方がオフのままであれば(S108:NO)、ステップS107に戻る。ここで、所定時間T2は、用紙Mが第2所定位置から第1所定位置に搬送されるまでに要する推定時間よりも僅かに長い時間に設定される。当該推定時間も、搬送速度Vとこれら2位置間の距離とに基づき演算可能である。
【0072】
ここで、本実施形態に係る搬送機構7は、第1所定位置と第2所定位置との間に伸展ローラ対34又は搬送ローラ対35のみが存在して拍車ローラを有するローラ対は存在しない構成となっている。そのため、所定時間T2を経過しても第1位置センサ53a,53bからの入力が両方ともオフのままである場合、これらローラ対34,35で用紙Mのジャムが不所望に発生したために、用紙Mの先端が第1所定位置まで到達し得なかった蓋然性が高い。そこで、第1位置センサ53a,53bからの入力が両方ともオフのまま所定時間T2が経過した場合(S107:YES)、搬送が停止され、処理液ヘッド8bが処理液を吐出するのを停止し且つ表示装置64に用紙Mのジャムが発生している旨を表す情報が表示される(S109)。特に、第2位置センサ54の入力がオンからオフに切り替わった状態で所定時間T2が経過した場合にはローラ対34,35で用紙Mのジャムが発生している可能性が極めて高い(用紙Mが搬送されているのにもかかわらず、第1所定位置に到達していないため)ので、当該表示には、ジャムの発生箇所が伸展ローラ対34又は搬送ローラ対35の周辺であることを特定する情報が付加されていてもよい。これにより、ユーザに用紙Mを取り除く作業を迅速に行わせるよう促すことができる。
【0073】
次いで、ユーザによる用紙Mの除去作業が行われたか否かが判断され(S110)、除去作業が行われていない間(S110:NO)は、当該表示が継続される。用紙Mの除去作業が行われれば(S110:YES)、改めて用紙Mの搬送が開始する(S101)。
【0074】
所定時間T2が経過する前に、第1位置センサ53からの入力の一方がオフからオンに切り替わると(S108:YES)、この切り替わった時点から所定時間T3が経過したか否かが判断される(S111)。所定時間T3は微小時間に設定される。所定時間T3が経過していなければ(S111:NO)、第1位置センサ53a,53bからの入力の両方がオフからオンに切り替わったか否かが判断される(S112)。入力の他方がオフのままであれば(S112:NO)、ステップS111に戻る。
【0075】
所定時間T3を経過しても入力の一方がオンであるのに入力の他方がオフであるである場合、用紙Mの中心線CMが基準線Rから不所望にずれた状態でプラテン23cの上面まで搬送されてきた蓋然性が高い。このようなときにインクが吐出されると、吐出されたインクが用紙Mの記録面上に適切に着弾せず、場合によっては用紙Mからはみ出してプラテン23c上に着弾する可能性もある。そこで、入力の他方がオフのままで所定時間T3が経過した場合(S111:YES)、搬送を停止し、処理液ヘッド8bより処理液が吐出されるのを停止し且つ表示装置64に用紙Mがずれて搬送された旨又は用紙Mが搬送経路6上で詰まっている旨を表示させる(S113)。このとき、用紙Mの先端部が第1所定位置付近に位置することは明らかであるので、当該表示に、用紙Mが搬送ローラ対35の周辺で詰まっている旨を表す情報が付加されていてもよい。これにより、ユーザに用紙Mの除去作業を迅速に行わせることができる。また、プラテン23cを初めとして筐体2内の部品が液体で汚損するのを未然に防ぐことができる。
【0076】
次いで、ユーザによる用紙Mの除去作業が行われたか否かを判断し(S114)、除去作業が行われていない間(S114:NO)は、当該表示が継続される。用紙Mの除去作業が行われれば(S114:YES)、改めて用紙Mの搬送が開始する(S101)。
【0077】
所定時間T3が経過する前に、第1位置センサ53a,53bからの入力が両方ともオフからオンに切り替わると(S112:YES)、この切り替わった時点若しくは一方の入力がオフからオンに切り替わった時点を基準にして、前述したとおり、各記録ヘッド8aより対応するインクを吐出するタイミングが決定される(S115)。吐出タイミングを決定すると、決定されたタイミングで各記録ヘッド8aよりインクが記録面に向けて吐出される。
【0078】
そして、まだ画像を形成すべきページが有るか否かを判断し(S116)、そのようなページが有れば(S116:YES)、連続して印刷すべく次の用紙Mの搬送が開始する(S101)。そのようなページが無ければ(S116:NO)、当該用紙Mを排紙部3まで搬送した後に搬送・吐出処理及び画像形成処理を終了し、メイン処理に戻る。
【0079】
このように第1位置センサ53及び第2位置センサ54からの入力を監視することにより、主電源がオンに切り替わったときに用紙Mが搬送経路6上に残存しているか、画像を形成するときに用紙Mのジャムが発生しているか否か、及び画像を形成するときに用紙Mが基準線Rからずれているか否かを判断することができる。
【0080】
なお、図9に示すステップS107において、所定時間T2を起算する時点は、第2位置センサ54からの入力がオンからオフに切り替わった時点に変更されてもよい。つまり、用紙Mの全体が第2所定位置を通過した時点から所定時間T2が経過したか否かを判断してもよい。
【0081】
また、図9に示す処理の手順は、所定時間T3がゼロとなるような処理が実行されるよう変更されてもよい。この場合、S111の判断処理が削除される。また、S108の判断処理でYESであればS112の判断処理に進むよう変更され且つS112の判断処理でNOであればステップS113に進むよう変更される。
【0082】
また、用紙Mの給紙及び搬送の開始が行われる時点で第1位置センサ53及び第2位置センサ54からの入力がオフである状態を担保するため、搬送・吐出処理S100では、ステップS101に先立ち、初期処理S1のステップS11,S12と同様にして筐体2内に用紙Mが残存しているか否かを判断する処理を実行してもよい。
【0083】
[第2実施形態]
図10は、本発明の第2実施形態に係るプリンタ101の搬送経路6の直線部6bの周辺を幅方向に見て示す図である。本実施形態は、第1実施形態に対し、第1位置センサが接点スイッチ式である点で相違している。
【0084】
図10に示すように、本実施形態に係る第1位置センサ153は、第1実施形態に係る第2位置センサと同様にして構成されている。すなわち、第1位置センサ153は、プラテン23cに内蔵されたスイッチ155と、スイッチ155を操作する操作片156とを有する。操作片156は、プラテン23c内を幅方向に延びる支軸周りに揺動可能に設けられている。プラテン23cには、第1所定位置の周辺でスリット157が貫通形成され、操作片156は、捩りコイルばね等の付勢部材によってプラテン23cの上面からスリット157を介して上方に突出する突出位置に付勢される。用紙Mがスリット157を覆うときには操作片156が倒れてスイッチ155が操作状態となる。本実施形態では、スイッチ155がプラテン23cに内蔵されるので、処理液の飛沫でスイッチ155が汚損するのを良好に防止することができる。これにより、第1実施形態に係る遮蔽部材を省略することも可能となる。ただし、処理液をダクトに案内する作用効果を奏するべく、遮蔽部材が設けられていてもよい。
【0085】
[第3実施形態]
図11は、本発明の第3実施形態に係るプリンタ201の搬送経路6の直線部6bの平面図である。本実施形態は、第1及び第2実施形態に対し、一対の第1位置センサから成るセンサの組が複数設けられている点で相違する。なお、本実施形態では、各第1位置センサ53を、第1実施形態と同様に光学式としているが、第2実施形態のようにスイッチ式としてもよい。
【0086】
図11に示すように、本実施形態では、2組の一対の第1位置センサから成るセンサの組が2組設けられている。第1組の一対の第1位置センサ53A(53a,53b)は、第1実施形態に係る一対の第1位置センサ53a,53bと同様である。つまり、このプリンタ1において利用可能な用紙Mのうち最も幅方向の寸法が短い用紙M2が搬送されるときに、当該用紙M2の幅方向の一対の縁部が第1所定位置に位置するか否かを検知可能な位置に設けられている。詳細には、一対の第1位置センサ53a,53bは、中心線CMを基準線Rに一致させて直線部6bに沿って搬送される最小幅を有する用紙M2が第1所定位置に位置した場合に、当該用紙M2の記録面法線方向(すなわち上下方向)に見て、当該用紙M2の幅方向の一対の縁部と重なるようにして配置されている。
【0087】
第2組の一対の第1位置センサ53B(53c.53d)も、基準線Rを中心にして対称に配置されている。また、第2組の一対の第1位置センサ53c,53dは、このプリンタ1において利用可能な用紙Mのうち最も幅方向の寸法が長い用紙M1が搬送されるときに、当該用紙M1の幅方向の一対の縁部が第1所定位置に位置するか否かを検知可能な位置に設けられている。詳細には、一対の第1位置センサ53c,53dは、中心線CMを基準線Rに一致させて直線部6bに沿って搬送される最大幅を有する用紙M1が第1所定位置に位置した場合に、当該用紙M1の記録面法線方向(すなわち上下方向)に見て、当該用紙M1の幅方向の一対の縁部と重なるようにして配置されている。
【0088】
このように各組の一対の第1位置センサ53A,53Bは、幅方向の寸法が互いに異なる複数の用紙のそれぞれに対応して設けられている。
【0089】
図12は、図11に示すプリンタ1により実行される画像形成処理S5Aの手順を示すフローチャートである。図12に示す画像形成処理S5Aは、図7に示したものと置き換えられる。図12に示すように、本実施形態に係る画像形成処理S5Aでは、まず、第1実施形態と同様にして、画像データが読み込まれ(S51)、用紙幅が読み込まれ(S52)、液体吐出データが作成される(S53)。次に、読み込まれた用紙幅に関する情報に基づいて、当該用紙幅に対応する第1位置センサ53の組を選択する(S54)。この選択処理が行われたうえで、搬送・吐出処理が実行される(S100)。搬送・吐出処理(S100)では、ステップS54で選択された組の一対の第1位置センサからの入力を監視して、ステップS108,S112(図9参照)の処理が実行される。
【0090】
最小幅の用紙に合わせて一対の第1位置センサが配置された場合には、最大幅の用紙が搬送されたときに、用紙の中心線が基準線からずれていても、第1位置センサからの入力が両方ともオンになる可能性がある。本実施形態のように、互いに幅方向の寸法が異なる複数種の用紙に対応して一対の第1位置センサを設けることにより、当該用紙の中心線が基準線からずれているか否かを良好に検出することができるようになる。
【0091】
[第4実施形態]
図13は、本発明の第4実施形態に係るプリンタ301の搬送経路6の直線部6bの平面図である。本実施形態は、第1〜第3実施形態に対し、第1位置センサ53が単一である点で相違する。なお、本実施形態に係る第1位置センサ53を、第1実施形態と同様に光学式としているが、第2実施形態のようにスイッチ式としてもよい。
【0092】
図13に示すように、第4実施形態に係る第1位置センサ53は、第1実施形態に係る一対の第1位置センサから一方が削除され、他方が残された状態となっている。つまり、この単一の第1位置センサ53は、このプリンタ1において利用可能な用紙Mのうち最も幅方向の寸法が短い用紙M2が搬送されるときに、当該用紙M2の幅方向の一方の縁部が第1所定位置に位置するか否かを検知可能な位置に設けられている。詳細には、第1位置センサ53は、中心線CMを基準線Rに一致させて直線部6bに沿って搬送される最小幅を有する用紙M2が第1所定位置に位置した場合に、当該用紙M2の記録面法線方向(すなわち上下方向)に見て、当該用紙M2の幅方向の一方の縁部と重なるようにして配置されている。これにより、処理液の飛沫でセンサが汚損するのをなるべく抑制しつつ、搬送される用紙の幅方向の寸法に関わらず、当該用紙の先端が第1所定位置に到達したか否かを良好に検出することができる。
【0093】
図14は、図13に示すプリンタ301により実行される搬送・吐出処理の手順の一部を示すフローチャートである。図14に示す処理は、図8に示す処理と共に実行されるものであり、図9に示す処理と置き換えられる。図14に示すように、第2位置センサ54からの入力に基づいて処理液の吐出タイミングが決定された後は、第2位置センサ54がオフからオンに切り替わった時点から所定時間T2が経過したか否かが判断される(S157)。この所定時間T2は、第1実施形態に係るステップS107の判断処理において利用される時間T2と同様である。所定時間T2が経過していなければ(S157:NO)、単一の第1位置センサ53からの入力がオフからオンに切り替わったか否かが判断される(S158)。オフのままであれば(S158:NO)、ステップS157に戻る。
【0094】
第1位置センサ53からの入力がオフのまま所定時間T2が経過した場合(S157:YES)、搬送を停止し、処理液ヘッド8bによる処理液の吐出を停止し且つ表示装置64に伸展ローラ対34又は搬送ローラ対35の周辺において用紙Mのジャムが発生している旨を表示させる(S159)。次いで、ユーザによる用紙の除去作業が行われたか否かを判断し(S160)、除去作業が行われていない間は(S160:NO)、当該表示を継続させる。除去作業が行われると、表示を停止するとともに、改めて用紙Mの搬送が開始する(S101)。
【0095】
所定時間T2が経過するまでの間に第1位置センサ53からの入力がオフからオンに切り替わると(S158:YES)、その切り替わった時点を基準にして、記録ヘッド8aよりインクを吐出する吐出タイミングを決定する(S161)。そして、画像を形成すべき次のページが有るか否かを判断し(S161)、そのようなページが有れば(S161:YES)、次の用紙の搬送が開始する(S101)。そのようなページが無ければ(S161:NO)、搬送・吐出処理を終了してメイン処理まで戻る。
【0096】
このように、第1位置センサ53が単一であっても、用紙Mが伸展ローラ対34を通過するのに要した時間に関わらずインクの吐出タイミングを決定することができ、それにより、インクを記録面の所望の位置に着弾させることができるようになる。
【0097】
[他の形態]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能である。
【0098】
例えば、単一の第1位置センサ53を基準線Rと重なるように配置してもよい。第2位置センサが光学式であってもよい。第2位置センサ54は、処理液ヘッド8bの下流側であればどこに配置されてもよい。上記実施形態のように直線部6bに設けると、第2所定位置を処理液吐出位置に好適に近づけることができ、タイミング制御の精度が高くなる。また、プラテン23a〜23dの上面によって形成される直線部6bに設けるほうが、搬送ガイド21,22により形成される上流部6aより、センサの配置自由度が高くなる。なお、一対の第1位置センサを最大幅の用紙の縁部と重なるように配置してもよい。
【0099】
また、伸展ローラ対と第1位置センサの間に設けた搬送ローラ対は適宜省略可能である。逆に、隣り合う2つの記録ヘッド8aの間に形成される3つのスペースの全部又は一部に、搬送ローラ対が設けられていてもよい。また、搬送ローラ対33,35〜37及び伸展ローラ対34の各下部ローラと、プラテン23a〜23dとを省略し、省略された下部ローラ及びプラテンに替えて無端の搬送ベルトが設けられてもよい。この場合、搬送機構には搬送ベルトを周回させるためのローラが設けられる。
【0100】
本発明は、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置にも適用可能である。さらに、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機などにも適用可能である。また、ヘッド制御部が処理液ヘッドのアクチュエータユニットや各記録ヘッドのアクチュエータユニットを駆動するのではなく、処理液ヘッドを各記録ヘッドの発熱素子を駆動することでヘッドから処理液やインクを吐出することとしてもよい。また、インクへの処理液の作用としては、インクと処理液が混ざることで化学反応してインク中の成分(顔料や染料)を凝集又は析出することも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、画像を形成するための第1液体の着弾位置と、第1液体の成分に作用して第1液体を凝集又は析出させる第2液体の着弾位置とを正確に合わせることができ、記録媒体に形成される画像の乱れを抑制することができるという作用効果を奏し、インクジェットプリンタなどの画像を形成するための装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
M 用紙(記録媒体)
CM 中心線
R 基準線
1 インクジェットプリンタ(液滴吐出装置)
7 搬送機構
8a 記録ヘッド(第1液体吐出ヘッド)
8b 処理液ヘッド(第2液体吐出ヘッド)
9 制御部
33,35〜37 搬送ローラ対
33a,36a 拍車ローラ
34 伸展ローラ対
34a 上部ローラ(回転ローラ)
34b 下部ローラ(回転ローラ)
50 遮蔽部材
51 ガイド板(ガイド部材)
53(53a,53b,53c,53d),153 第1位置センサ
54 第2位置センサ
64 表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
画像を形成するための第1液体を搬送される記録媒体の記録面に向けて吐出する第1液体吐出ヘッドと、
前記第1液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の上流側に配置され、前記第1液体の成分を凝集又は析出させる第2液体を搬送される記録媒体の前記記録面に向けて吐出する第2液体吐出ヘッドと、
前記第1液体吐出ヘッドと前記第2液体吐出ヘッドとの間において、搬送される記録媒体の前記記録面に外周面が当接するように設けられる回転ローラと、
前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッドの動作を制御する制御部と、を備えた液滴吐出装置であって、
前記回転ローラと前記第1液体吐出ヘッドとの間における第1所定位置に記録媒体が位置するか否かを検出可能な第1位置センサと、
前記第2液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の上流側における第2所定位置に記録媒体が位置するか否かを検出する第2位置センサと、を有し、
前記制御部は、搬送される記録媒体が前記第2所定位置に到達したことが前記第2位置センサにより検出された時点を基準として、前記第2液体吐出ヘッドより吐出される前記第2液体の吐出タイミングを決定し、かつ、搬送される記録媒体が前記第1所定位置に到達したことが前記第1位置センサにより検出された時点を基準として、前記第1液体吐出ヘッドより吐出される前記第1液体の吐出タイミングを決定することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記回転ローラと記録媒体が当接する位置と、前記第1液体吐出ヘッドとの間に設けられ、前記回転ローラの回転により飛散した前記第2液体が衝突する遮蔽部材を更に備え、
前記第1位置センサが、前記遮蔽部材と前記第1液体吐出ヘッドとの間に配設されている請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記第1位置センサが、前記遮蔽部材の搬送方向の下流側の端面に隣接するように配設されている、請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記搬送方向において、前記回転ローラと記録媒体とが当接する位置と、前記遮蔽部材との間に設けられるガイド部材を更に備え、
前記ガイド部材は、前記回転ローラの表面に近接対向する端部を有し、前記回転ローラの表面に沿って回転する記録媒体を前記搬送方向へと案内する請求項2又は3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記制御部は、搬送される記録媒体が前記第2所定位置に到達又は通過したことが前記第2位置センサにより検出された時点から所定期間が経過する間に、前記第1位置センサによって当該記録媒体が前記第1所定位置に到達したことが検出されないときには、前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッドを停止させる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
ユーザが視認可能な表示装置を備え、
前記制御部は、搬送される記録媒体が前記第2所定位置に到達又は通過したことが前記第2位置センサにより検出された時点から所定期間が経過する間に、前記第1位置センサによって当該記録媒体が前記第1所定位置に到達したことが検出されないときには、前記表示装置に記録媒体のジャムが発生している旨を表示させる、請求項5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記搬送機構は、記録媒体を複数の拍車ローラにより搬送する機構であり、
前記第2位置センサの前記搬送方向の上流側と前記第1位置センサの前記搬送方向の下流側に前記拍車ローラが配置され、
前記制御部は、前記第2位置センサが前記第2所定位置における記録媒体の通過を検知し、且つ、前記所定期間が経過する間に記録媒体が前記第1所定位置に到達したことが前記第1位置センサにより検出されないときには、前記表示装置に記録媒体のジャムが前記回転ローラにおいて発生している旨を表示させる、請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記制御部は、電源がオフからオンに切り替わると、前記第1位置センサ及び前記第2位置センサのうち少なくとも一つからの入力を監視し、前記入力に基づき記録媒体が前記第1所定位置及び前記第2所定位置の少なくとも一つに位置していると判断すると、前記表示装置に記録媒体が残存している旨を表示させる、請求項6又は7に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記搬送機構は、前記記録媒体の幅方向の中心線が前記搬送方向に延びる仮想基準線に沿うようにして前記記録媒体を搬送し、
前記第1位置センサが、前記仮想基準線に対して前記搬送方向と直交する方向に偏在している、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記搬送機構は、互いに寸法が異なる複数種類の記録媒体を選択的に搬送可能に構成され、
前記搬送機構により搬送されうる記録媒体の内で最も幅方向の長さが短い記録媒体が前記搬送機構で搬送されるときに当該記録媒体の幅方向の縁部を検知可能な位置に前記第1位置センサが配置されていることを特徴とする請求項9に記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
前記第1位置センサが対を成しており、当該一対の第1位置センサが、前記仮想基準線を中心にして前記搬送方向と直交する方向に対称に配置されており、
前記中心線を前記仮想基準線と一致させて前記第1所定位置を通過する記録媒体の前記記録面の法線方向に見て、前記一対の第1位置センサが、当該記録媒体の幅方向の一対の縁部とそれぞれ重なるように配置されている、請求項9又は10に記載の液滴吐出装置。
【請求項12】
前記搬送機構は、互いに寸法が異なる複数種類の記録媒体を選択的に搬送可能に構成され、
前記一対の第1位置センサから成るセンサの組が、前記搬送機構により搬送されうる記録媒体の種類に対応して、複数組設けられている、請求項11に記載の液滴吐出装置。
【請求項13】
前記制御部は、搬送される記録媒体が前記第2所定位置に到達又は通過したことが前記第2位置センサにより検出された時点から所定期間が経過する間に、前記一対の第1位置センサのうち、前記一対の第1位置センサの両方によって当該記録媒体が前記第1所定位置に到達したことが検出されないときには、前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッドを停止させる、請求項11又は12に記載の液滴吐出装置。
【請求項1】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
画像を形成するための第1液体を搬送される記録媒体の記録面に向けて吐出する第1液体吐出ヘッドと、
前記第1液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の上流側に配置され、前記第1液体の成分を凝集又は析出させる第2液体を搬送される記録媒体の前記記録面に向けて吐出する第2液体吐出ヘッドと、
前記第1液体吐出ヘッドと前記第2液体吐出ヘッドとの間において、搬送される記録媒体の前記記録面に外周面が当接するように設けられる回転ローラと、
前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッドの動作を制御する制御部と、を備えた液滴吐出装置であって、
前記回転ローラと前記第1液体吐出ヘッドとの間における第1所定位置に記録媒体が位置するか否かを検出可能な第1位置センサと、
前記第2液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の上流側における第2所定位置に記録媒体が位置するか否かを検出する第2位置センサと、を有し、
前記制御部は、搬送される記録媒体が前記第2所定位置に到達したことが前記第2位置センサにより検出された時点を基準として、前記第2液体吐出ヘッドより吐出される前記第2液体の吐出タイミングを決定し、かつ、搬送される記録媒体が前記第1所定位置に到達したことが前記第1位置センサにより検出された時点を基準として、前記第1液体吐出ヘッドより吐出される前記第1液体の吐出タイミングを決定することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記回転ローラと記録媒体が当接する位置と、前記第1液体吐出ヘッドとの間に設けられ、前記回転ローラの回転により飛散した前記第2液体が衝突する遮蔽部材を更に備え、
前記第1位置センサが、前記遮蔽部材と前記第1液体吐出ヘッドとの間に配設されている請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記第1位置センサが、前記遮蔽部材の搬送方向の下流側の端面に隣接するように配設されている、請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記搬送方向において、前記回転ローラと記録媒体とが当接する位置と、前記遮蔽部材との間に設けられるガイド部材を更に備え、
前記ガイド部材は、前記回転ローラの表面に近接対向する端部を有し、前記回転ローラの表面に沿って回転する記録媒体を前記搬送方向へと案内する請求項2又は3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記制御部は、搬送される記録媒体が前記第2所定位置に到達又は通過したことが前記第2位置センサにより検出された時点から所定期間が経過する間に、前記第1位置センサによって当該記録媒体が前記第1所定位置に到達したことが検出されないときには、前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッドを停止させる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
ユーザが視認可能な表示装置を備え、
前記制御部は、搬送される記録媒体が前記第2所定位置に到達又は通過したことが前記第2位置センサにより検出された時点から所定期間が経過する間に、前記第1位置センサによって当該記録媒体が前記第1所定位置に到達したことが検出されないときには、前記表示装置に記録媒体のジャムが発生している旨を表示させる、請求項5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記搬送機構は、記録媒体を複数の拍車ローラにより搬送する機構であり、
前記第2位置センサの前記搬送方向の上流側と前記第1位置センサの前記搬送方向の下流側に前記拍車ローラが配置され、
前記制御部は、前記第2位置センサが前記第2所定位置における記録媒体の通過を検知し、且つ、前記所定期間が経過する間に記録媒体が前記第1所定位置に到達したことが前記第1位置センサにより検出されないときには、前記表示装置に記録媒体のジャムが前記回転ローラにおいて発生している旨を表示させる、請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記制御部は、電源がオフからオンに切り替わると、前記第1位置センサ及び前記第2位置センサのうち少なくとも一つからの入力を監視し、前記入力に基づき記録媒体が前記第1所定位置及び前記第2所定位置の少なくとも一つに位置していると判断すると、前記表示装置に記録媒体が残存している旨を表示させる、請求項6又は7に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記搬送機構は、前記記録媒体の幅方向の中心線が前記搬送方向に延びる仮想基準線に沿うようにして前記記録媒体を搬送し、
前記第1位置センサが、前記仮想基準線に対して前記搬送方向と直交する方向に偏在している、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記搬送機構は、互いに寸法が異なる複数種類の記録媒体を選択的に搬送可能に構成され、
前記搬送機構により搬送されうる記録媒体の内で最も幅方向の長さが短い記録媒体が前記搬送機構で搬送されるときに当該記録媒体の幅方向の縁部を検知可能な位置に前記第1位置センサが配置されていることを特徴とする請求項9に記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
前記第1位置センサが対を成しており、当該一対の第1位置センサが、前記仮想基準線を中心にして前記搬送方向と直交する方向に対称に配置されており、
前記中心線を前記仮想基準線と一致させて前記第1所定位置を通過する記録媒体の前記記録面の法線方向に見て、前記一対の第1位置センサが、当該記録媒体の幅方向の一対の縁部とそれぞれ重なるように配置されている、請求項9又は10に記載の液滴吐出装置。
【請求項12】
前記搬送機構は、互いに寸法が異なる複数種類の記録媒体を選択的に搬送可能に構成され、
前記一対の第1位置センサから成るセンサの組が、前記搬送機構により搬送されうる記録媒体の種類に対応して、複数組設けられている、請求項11に記載の液滴吐出装置。
【請求項13】
前記制御部は、搬送される記録媒体が前記第2所定位置に到達又は通過したことが前記第2位置センサにより検出された時点から所定期間が経過する間に、前記一対の第1位置センサのうち、前記一対の第1位置センサの両方によって当該記録媒体が前記第1所定位置に到達したことが検出されないときには、前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッドを停止させる、請求項11又は12に記載の液滴吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−91392(P2012−91392A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240456(P2010−240456)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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