説明

液漏れ検出装置、液漏れ検出方法及び内容物が充填された包装袋の製造方法、包装袋

【課題】パウチの極微量な液漏れに対しても確実に検出できるとともに、検出した後に、連続的に搬送されてくるパウチに対しても対応できる液漏れ検出装置、液漏れ検出方法及び内容物が充填された包装袋の製造方法、包装袋を提供する。
【解決手段】検出ローラ50a,50bによってパウチ3を挟み込み、パウチ3の表面に電極を接触させながら検出を行うため、ピンホール又はシール不良箇所から漏洩する内容物が、通常は絶縁されている電極間に付着して電極を備えた回路を短絡させ、これによって生じる電気的変化により内容物の漏洩を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液漏れ検出装置、液漏れ検出方法及び内容物が充填された包装袋の製造方法、包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内容物が充填された包装袋(以下、パウチという。)のピンホールやシール不良による液漏れを検出するために、包装袋を所定の圧力で押圧し、ピンホール又はシール不良箇所から漏洩する内容物が、異なる極性を有する電極間に付着して電極間で短絡が起きる事によりピンホールの有無又はシール不良を検出する液漏れ検出装置が知られている。
【0003】
上述の液漏れ検出装置として、例えば、特許文献1,2に示すように、パウチを搬送するコンベアに併設して一対の電極が櫛状に配置された電極板を設け、コンベアに対し上部から押圧ローラによりパウチを押し付けることによって、ピンホール又はシール不良箇所から滴下する内容物を電極板で受けて液漏れを検出するものがある。また、特許文献3に示すように、パウチのシール鍔の反りや捩れなどの変形を矯正しながら、カーテン状の電極によって液漏れの有無を検出するものがある。
【特許文献1】特開2001−99744号公報
【特許文献2】特開平6−4656号公報
【特許文献3】特開平10−288564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者の液漏れ検出装置にあっては、内容物がパウチから離れて滴下しない場合には、これを検出することができず、微量の液漏れや、内容物が高粘度の製品にあっては、検出精度が低下してしまうという問題がある。また、内容物を滴下させて検知するため、シール不良箇所を特定することができないという問題がある。さらに、後者の液漏れ検出装置にあっては、カーテン状の電極によってパウチ表面に接触して液漏れを検出するものであるため、このパウチの表面に凹凸があった様な場合には、電極が内容物に触れることができず、液漏れを検出することができないので、検出精度が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、パウチの極微量な液漏れに対しても確実に検出できるとともに、検出した後に、連続的に搬送されてくるパウチに対しても対応できる液漏れ検出装置、液漏れ検出方法及び内容物が充填された包装袋の製造方法、包装袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、内容物が充填された包装袋を所定の圧力で押圧し、ピンホール又はシール不良箇所から漏洩する前記内容物が電極に付着して該電極間で電気的変化が起きる事によりピンホールの有無又はシール不良を検出する液漏れ検出装置において、互いに絶縁された電極を外表面に備えた少なくとも一対の検出ローラを設け、該検出ローラ間に前記包装袋を挟み込み可能に構成したことを特徴とする。
このように構成することで、検出ローラによって包装袋を挟み込み、包装袋の表面に電極を接触させながら検出を行うため、ピンホール又はシール不良箇所から漏洩する内容物が、通常は絶縁されている電極間に付着して電極を備えた回路を短絡させ、これによって生じる電気的変化により内容物の漏洩を検出することができる。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記検出ローラは、絶縁性のあるローラ本体に線材状に形成された電極が一対巻回されたものであることを特徴とする。
このように構成することで、互い違いに異なる極性の電極が交互に配列されることとなり、検出ローラのどの部分に内容物が付着しても、電極を備えた回路が短絡して内容物の漏洩を検出することができる。
【0008】
請求項3に記載した発明は、前記検出ローラは、薄板状の一対の電極板が薄板状の絶縁体を挟んで積層形成されたものであることを特徴とする。
このように構成することで、薄板状の絶縁体を介在させて交互に電極板が配置されるため、検出ローラのどの部分に内容物が付着しても、電極を備えた回路が短絡して内容物の漏洩を検出することができる。また、薄板状の電極を積層形成することにより、検出ローラの表面の凹凸をなくすことができる。
【0009】
請求項4に記載した発明は、前記一対の検出ローラが前記包装袋の厚さに対応して接近離反可能に設けられていることを特徴とする。
このように構成することで、内容物が充填された包装袋の厚さに対応して検出ローラが常に包装袋の表面に接触しながら内容物の漏洩を検出することができる。
【0010】
請求項5に記載した発明は、前記検出ローラの上下に、該検出ローラに付着した内容物を吸着する拭き取り手段が配置されていることを特徴とする。
このように構成することで、内容物の漏洩を検出した場合に、包装袋の搬送を止めることなく、検出ローラの表面に付着した内容物を、拭き取り手段によって拭き取ることができる。
【0011】
請求項6に記載した発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の液漏れ検出装置の液漏れ検出方法であって、前記包装袋を挟み込んで、該包装袋の表面に接触しながら搬送し、前記包装袋のピンホール又はシール不良箇所から漏洩する前記内容物が電極間に付着することで漏洩を検出するとともに、前記内容物の漏洩を検出した場合に、電極間に付着した前記内容物が拭き取られることを特徴とする。
【0012】
一方、請求項7に記載した発明は、包装袋内に内容物を充填する工程と、前記包装袋を密閉する工程と、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の液漏れ検出装置を用いて前記内容物の漏洩を検査する工程とを有する包装袋の製造方法であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に記載した発明は、請求項7記載の内容物が充填された包装袋の製造方法によって製造された包装袋であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載した発明によれば、検出ローラによって包装袋を挟み込み、包装袋の表面に電極を接触させながら検出を行うことができるため、包装袋の表面を正確に検出することができる。また、検出ローラの配置スペースのみで内容物の漏洩を検出することができるため、装置の小型化を図ることができる。
請求項2に記載した発明によれば、互い違いに異なる極性の電極が交互に配列されることとなり、検出ローラのどの部分に内容物が付着しても、電極を備えた回路が短絡して内容物の漏洩を検出することができるため、検出精度を向上させることができる。
請求項3に記載した発明によれば、検出ローラの表面の凹凸をなくすことができるため、検出ローラと包装袋との接触面積を向上させ、極微量の漏洩に対しても正確に検出することができる。
請求項4に記載した発明によれば、内容物が充填された包装袋の厚さに対応して検出ローラが常に包装袋の表面に接触しながら内容物の漏洩を検出することができるため、検出精度を向上させることができる。
請求項5に記載した発明によれば、包装袋のピンホール又はシール不良箇所から内容物の漏洩を検出した場合に、搬送を止めることなく、検出ローラの表面に付着した内容物を、拭き取り手段によって拭き取ることができるため、連続的に内容物の漏洩を検出することができる。
請求項6に記載した発明によれば、前記包装袋を挟み込んで、該包装袋の表面に接触しながら内容物の漏洩を検出することができるため、包装袋の表面を正確に検出することができる。また、内容物の漏洩を検出した場合に、搬送を止めることなく検出ローラに付着した内容物を拭き取ることができるため、連続的に内容物の漏洩を検出することができる。
請求項7,8に記載した発明によれば、包装袋のピンホールの有無又はシール不良を確実に検査することで、内容物の漏洩のない所望の包装袋を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明においては、パウチ上部の溶着面からの液漏れを検出する場合を例にして説明する。
図1に示すように、液漏れ検出装置1は、パウチ3内に洗剤、シャンプー、リンス等の各種内容物を充填する工程と、熱溶着により密閉する工程とを有するパウチ3の製造ラインのラインエンドに液漏れ検出工程として設けられたものであって、製造されたパウチ3を受け入れて搬送する搬送コンベア2を備えている。
【0016】
搬送コンベア2は、パウチ3を順次搬入側から受け入れるものであって、この搬送コンベア2上の一側にはパウチ3の上部5を突出させた状態とし、他側には底部6を向けた状態で、つまり、搬送コンベア2の搬送方向に直交する方向にパウチ3を配置して搬出側へ搬送するものである。搬送コンベア2の途中には、搬送コンベア2に隣接してフレーム4に支持された液漏れ検出部10が設けられている。
【0017】
図2,3に示すように、この液漏れ検出部10は、メインフレーム11を備えている。メインフレーム11は、縦フレーム12と横フレーム13とによりL字状に形成されたもので、この縦フレーム12の外壁14には、駆動モータ15が取り付けられている。この駆動モータ15には、縦フレーム12を搬送コンベア2の反対側から貫通してモータシャフト17が挿通され、モータシャフト17には、ギア18が固定されている。
【0018】
一方、横フレーム13には、高さ調整ボルト21が下側から挿通され、ストッパとなるナット22が螺合されている。この高さ調整ボルト21は、後述する下部ローラホルダ30の下面31に当接して下部ローラホルダ30を位置調整可能にするものである。また、横フレーム13には、高さ調整ボルト21を間に挟んで両側方に、支持ブラケット23,23が取り付けられている。この支持ブラケット23,23には、上部に向けて各々スライドポスト24,24が支持されている。
【0019】
各スライドポスト24には、下部ローラホルダ30が上下方向摺動可能に嵌入されている。下部ローラホルダ30は、下面31に前述した高さ調整ボルト21の先端が当接した状態で位置調整可能に支持されている。また、下部ローラホルダ30の両側壁上部には、後述する間隔調整ボルト42を支持するボルト当接部32が設けられている。
【0020】
また、下部ローラホルダ30の下面31には、横フレーム13と平行であって、駆動モータ15側に延出する延出部材33が設けられている。延出部材33の先端には、下部ローラブラケット34が上方に向けて固定されている。下部ローラブラケット34の上部には、後述するローラシャフト36aの端部を受け入れる下部軸受部35が形成されている。
【0021】
ここで、下部ローラホルダ30には、スライドポスト24と直交する方向にローラシャフト36aが回転可能に支持されている。このローラシャフト36aは、一端にパウチ3の液漏れを検出するローラ本体60aを備え、他端側、つまり下部ローラホルダ30を挟んでローラ本体60aの反対側に、ギア51aが固定されている。このギア51aは、駆動モータ15のギア18に噛合して駆動モータ15の駆動力が伝達されるものである。さらに、ローラシャフト36aの他端には、カラー52aが外装され、下部軸受部35に支持されている。
【0022】
また、下部ローラホルダ30の上方には、下部ローラホルダ30と対をなす上部ローラホルダ40が、各スライドポスト24に上下方向摺動可能に嵌入されている。上部ローラホルダ40の下部両側壁には、ネジ孔を備えたボルト支持部41が設けられている。そして、このボルト支持部41に間隔調整ボルト42が螺合され、ストッパとなるナット43により突出量を調整可能に挿通されている。上部ローラホルダ40は、間隔調整ボルト42の先端が下部ローラホルダ30のボルト当接部32の上面に当接した状態で上部ローラホルダ40を下部ローラホルダ30に対して接近離反可能に支持している。
【0023】
また、上部ローラホルダ40の上面44には、横フレーム13と平行であって、駆動モータ15側に延出する延出部材45が設けられ、延出部材45の先端には、上部ローラブラケット47が下方に向けて固定されている。上部ローラブラケット47の下部には、後述するローラシャフト36bの端部を受け入れる、上部軸受部48が形成されている。
【0024】
ここで、上部ローラホルダ40には、スライドポスト24と直交する方向にローラシャフト36bが回転可能に支持されている。このローラシャフト36bは、一端にパウチ3の液漏れを検出するローラ本体60bを備え、他端側、つまり上部ローラホルダ40を挟んでローラ本体60bの反対側に、ギア51bが固定されている。さらに、ローラシャフト36bの他端には、カラー52bが外装され、上部軸受部48に支持されている。
そして、各ローラ本体60a,60b、ローラシャフト36a,36b、ギア51a,51b、カラー52a,52bにより一対の検出ローラ50a,50bが構成されている。
【0025】
各ローラシャフト36a,36bのギア51a,51bは噛合しており、前述した駆動モータ15の駆動力が、ギア18からローラシャフト36aのギア51aに伝達され、さらにギア51aからギア51bに伝達されるものである。スライドポスト24,24の上端には、スライドポスト24,24を上端で固定する平板状の支持板53が取り付けられている。
ここで、この液漏れ検出部10の検出ローラ50a,50bは、図示しないブラシ電極により閉回路を形成可能に構成されている。
【0026】
次に、図4、図5に基づいて、上述したローラ本体60a,60bを説明する。尚、ローラ本体60a,60bは、同一部材であるため、以下の説明ではローラ本体60として説明する。
【0027】
図4,5に示すように、前述した検出ローラ60は、円筒形状のローラ本体60を備えている。このローラ本体60は、絶縁性を有するMCナイロン等の樹脂からなり、このローラ本体60の外周面には二条のらせん溝65が形成されている。また、ローラ本体60の一端の上部表面には、中心軸C方向に向けて貫通孔63が形成され、この貫通孔63は、ローラ本体60の側面に連通するように形成されている。同様に、ローラ本体60の一端の下部表面には、中心軸C方向に向けて貫通孔64が形成され、この貫通孔64は、ローラ本体60の側面に連通するように形成されている。この貫通孔63,64は、中心軸Cの周囲であって、異なる円周上に配置されている。
【0028】
ローラ本体60の表面に形成されたらせん溝65には、各々異なる極性を備えた第一配線66と第二配線67が交互に巻回され、所定間隔をおいて互いに絶縁された状態で配置されている。第一配線66の一端は、貫通孔63に挿入され、ローラ本体60の側端面に露出されている。一方、第二配線67の一端は、ローラ本体60の貫通孔64に挿入され、ローラ本体60の側端面に露出されている。
【0029】
ローラ本体60の側端面には、中心軸Cの周囲であって、貫通孔63,64が開口形成された円周上にリング状の第一接続端子61と、その内側にリング状の第二接続端子62が配置されている。この第一接続端子61と第一配線66が接続され、第二接続端子62と第二配線67とが各々接続されている。そして、これら接続端子61,62に、液漏れ検出部10に設けられた図示しないブラシ電極が摺接することにより、ローラ本体60の各配線66,67に電圧が印加されるようになっている。
【0030】
図2に示すように、前述した液漏れ検出部10の両側方には、一対のポスト70,70が設けられている。このポスト70は、上部と下部に各々、上下方向に沿って一対のガイド72a,72bが形成されている。ガイド72a,72bには、各々シャフト73a,73bが上下動可能に挿通されている。
【0031】
各シャフト73a,73bの一端には、上下一対の吹き取りローラ80a,80bが設けられ、他端は、モータユニット81a,81bに連結されている。拭き取りローラ80a,80bは、モータユニット81a,81bの駆動によって回転可能に設けられている。そして、モータユニット81a,81bは、図示しないエアシリンダを介して上下動可能に設けられている。なお、エアシリンダとモータユニット81a,81bは、パウチ3の液漏れを検出した際に、前述したコントローラを介して駆動するものである。
【0032】
各拭き取りローラ80a間には、拭き取りシート83aが一定のテンションを持って巻回され、これら拭き取りローラ80aと拭き取りシート83aとにより拭き取り手段84aが構成されている。また、下部の各拭き取りローラ80b間にも同様に、拭き取りシート83bが一定のテンションを持って巻回され,これら拭き取りローラ80bと拭き取りシート83bとにより拭き取り手段84bが構成されている。これら拭き取りシート83a,83bの材質としては、フェルト又は、高分子吸収シート等の不織布のような吸水性と乾燥性が良好な材質であることが望ましいが、織布等、様々な材質が採用可能である。
【0033】
(液漏れ検出方法)
次に、図1に基づいて、この液漏れ検出装置1における、液漏れ検出方法を説明する。まず、液漏れ検出部10の前段において、図示しない押圧ローラによりパウチ3に所定の押圧力を作用させた後に、液漏れ検出装置1の搬送コンベア2搬入側に供給することとする。
ここで、液漏れ検出装置1においては、予めパウチ3に対応して間隔調整ボルト42を調整し、検出ローラ50a,50b間に接触しない程度の間隔を設けておく。この間隔は、パウチ3の上部5溶着面のピンホール又はシール不良箇所を測定する場合には、例えば、0.27〜0.28mmである。
【0034】
次に、液漏れ検出装置1を作動させると、搬送コンベア2が駆動するとともに、液漏れ検出部10の駆動モータ15が駆動する。
駆動モータ15が回転すると、ギア18に噛合されたギア51aを介して検出ローラ50aが回転する。さらに、この検出ローラ50aのギア51aに噛合されたギア51bを介して検出ローラ50bが検出ローラ50aとは逆回りに回転する。
【0035】
次に、液体を含有する内容物が充填されたパウチ3は、搬送コンベア2上を搬送され、搬送コンベア2に隣接した液漏れ検出部10まで搬送される。液漏れ検出部10に搬送されたパウチ3は、一対の検出ローラ50a,50bに挟み込みまれ、パウチ3表面と検出ローラ50a,50bのローラ本体60a,60b表面が接触しながら搬出側へ搬送される。
【0036】
この時、検出ローラ50a,50bを支持する各ローラホルダ30,40間は間隔調整ボルト42のみによって両検出ローラ50a,50bの間隔が狭くなって接触しないように支持されているにすぎない。そのため、検出ローラ50bは、自重によってパウチ3の表面に沿ってスライドポスト24上を接近離反可能に摺動する。ところで、パウチ3の上部5溶着面は非常に薄く形成されているため、検出ローラ50b間の上下動の変位は、各ギア18,51a,51bのクリアランス内で収まるものであり、各ギア18,51a,51bの噛合が解除されることはない。
【0037】
ここで、搬送されるパウチ3にピンホールやシール不良箇所が存在し、そこから液漏れが発生していると、漏れ出た内容物が検出ローラ50a,50bのローラ本体60の表面に付着する。つまり、絶縁性のあるローラ本体60の表面に互いに絶縁された状態で巻回された配線66,67(図4,5参照)間に内容物が付着し、これにより配線66,67間が導通する。配線66,67間が導通すると、回路を流れている電流が配線66,67間に通電して回路内の電流値が変化する。この電流値の変化を、センサを介して図示しないコントローラで検出することによりパウチ3のピンホールの有無又はシール不良を判断する。
【0038】
ここで、上側のローラ本体60bがこれを検出した場合には、パウチ3の上面にピンホールがあることが確認でき、下側のローラ本体60aがこれを検出した場合には、パウチ3の裏面にピンホールがあることが確認できる。そして、パウチ3の液漏れを検出すると、コントローラを介して、対応するモータユニット81a,81bにより液漏れ検出部10の上下に配置された拭き取り手段84a,84bの拭き取りシート83a,83bが検出ローラ50a,50bに接触する位置まで移動する。また、モータユニット81a,81bが駆動して、拭き取り手段84a,84bは、検出ローラ50a,50bの回転方向と各々逆回りに回転しながらローラ本体60a,60bの表面に付着した内容物を吸着する。
【0039】
以上の工程において、パウチ3のピンホールの有無又はシール不良を確認することで、液漏れのない所望のパウチ3を製造することができる。
【0040】
(液漏れ検出装置の精度試験)
次に、本実施形態の検出ローラ50a,50bによってパウチ3の液漏れを検出する液漏れ検出装置1(以下、実施例という)と、従来の搬送コンベアの下部に電極板が設けられ、滴下する内容物を電極板で受けて液漏れを検出する液漏れ検出装置(以下、比較例という)との液漏れ検出精度の比較を行った。
【0041】
図8に示すように、本精度試験による比較方法は、粘度の異なる製品Aと製品Bにおいてパウチの上部溶着面の近傍に、径の異なるピンホール300(0.28mm〜2.0mm)を穿設し、そのピンホール300からの液漏れの検出の可否を比較する。本精度試験においては、液漏れ検出装置の前段で図示しない押圧ローラによりパウチ3表面に所定の押圧力を40kgf作用させた後に、液漏れ検出装置1により検出するものとする。
以上の方法により試験を行った結果、以下のような結果が得られた。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示すように、この精度試験によれば、実施例では製品A,製品Bの双方において、最も厳しい条件である0.28mmのピンホールからの液漏れを検出することができた。一方、比較例では、粘度の低い製品Bは、0.71mmのピンホール、粘度の高い製品Aにおいては1.6mmのピンホールまでしか検出できなかった。なお、表1中「○」は検出できたことを、「×」は検出できなかったことを示す。
【0044】
したがって、本実施形態によれば、搬送されるパウチ3を、回転する検出ローラ50a,50bのローラ本体60a,60bによって挟み込み、配線66,67を接触させながら検出が行われるため、パウチ3のピンホール又はシール不良箇所からの液漏れを、検出ローラ50a,50bのどの部分に内容物が付着しても、配線間66,67間の電流値の変化によって正確に検出することができる。また、パウチ3を一対のローラ本体60a,60bで挟み込むことで、液漏れした内容物がローラ本体60の表面に広がり易くなるため、パウチ3のピンホールやシール不良箇所からの極微量な液漏れを確実に検出することができる。さらに、検出ローラ50a,50bの配置スペースのみでパウチ3の液漏れを検出することができるため、装置の小型化を図ることができる。
【0045】
また、一対の検出ローラ50a,50b間はローラホルダ30,40に設けられた間隔調整ボルト42に支持され、互いに接近離反可能に設けられているため、検出ローラ50a,50bの間隔を維持して検出ローラ50a,50bの接触を防止するとともに、表面が柔軟なパウチ3表面に確実に接触しながら液漏れを検出することができる。さらに、高さ調整ボルト21と間隔調整ボルト42を調整することで様々なパウチ、搬送コンベアに対応可能である。
【0046】
さらに、パウチ3の液漏れを検出した時には、拭き取り手段84a,84bの拭き取りシート83a,83bにより、検出ローラ50の表面に付着した内容物が拭き取られるため、パウチ3の搬送を止めることなく連続的に検出を行うことができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図1〜3を援用し、図6,7に基づいて説明する。なお、本実施形態においては、第1実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
図6(a)に示すように、この第2実施形態では、第1実施形態におけるローラ本体60a,60bを異なる構成としたものである。具体的にはロータ本体99a,99b(以下ローラ本体99という)は異なる電極を有する薄板リング状の第一電極板90,96…と第二電極板91,97…とが交互に配置され、両者間に絶縁性のある薄板リング状の絶縁板95…を介在させて積層された円筒形状のものである。
【0048】
図6(b)、図7に示すように、ローラ本体99は一端部(図6(b)中左側端)に絶縁板95を配置し、次に第一電極板90、絶縁板95、第二電極板91と順に積層され、その後は絶縁板95、第1電極板96、絶縁板95、第二電極板97を複数組積層し、最後に他端部(図6(b)中右側端)に絶縁板95’が積層されている。
第一電極板90は積層面にローラ本体99の他端部に至る範囲、具体的には絶縁板95’を貫く位置までローラ本体99を貫通する第一ロッド100を備えている。
【0049】
一方、第二電極板91は、第一ロッド100を遊挿する大径の孔85を備え、この大径の孔85の直径方向で中心の反対側に第二ロッド101を備えている。この第二ロッド101も第1ロッド100と同様に絶縁板95’を貫く位置までローラ本体99を貫通するものである。
そして、これら第一電極板90からローラ本体99の他端部に至る部位に存在する絶縁板95には、第一ロッド100と第二ロッド101を貫く小径の孔94が形成されている。
【0050】
また、第一電極板96には第一ロッド100を挿通する小径の孔94と、第二ロッド101を遊挿する大径の孔85が形成されている。
第二電極板97には、第一ロッド100を遊挿する大径の孔85と、第二ロッド101を遊挿する小径の孔94が形成されている。
尚、ローラ本体99の一端側で第一ロッド100に貫通される絶縁板95には小径の孔94のみが形成されている。
【0051】
ここで、小径の孔94は挿通される第一ロッド100あるいは第二ロッド101に導通するもので、大径の孔85は挿通される第一ロッド100あるいは第二ロッド101には導通しないものである。
【0052】
そして、ローラ本体99の他端部には、中心軸Cの周囲の異なる円周上の外側には第二ロッド101に接続するように、リング状の第二接続端子68が配置され、内側には第一ロッド100に接続するようにリング状の第一接続端子69が配置されている。各接続端子68,69に、液漏れ検出部10に設けられた図示しないブラシ電極が摺接することにより、回転する検出ローラの電極にも電圧が印加されるようになっている。
【0053】
したがって、本実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、薄板の電極板90,91,96,97を用いるため、第1実施形態のような絶縁性を有するローラ本体60に線材状の配線66,67が巻回された場合と比べて、電極間の距離を密にして検出精度を向上させるとともに、検出ローラの耐久性を向上させることができる。したがって、液漏れの検出精度を向上させることができる。
【0054】
また、薄板状の電極板90,91,96,97を積層することで、ローラ本体99表面に凹凸が形成されないため、ローラ本体99とパウチ3との接触面積を確保することができる。さらに、薄板円盤状の電極板90,91,96,97を、絶縁板95,95’を間に挟んで積層形成するため、電極がローラ本体99の中心軸Cに対して垂直に配置され、パウチ3と電極板90,91,96,97とを直交させて接触させることができる。したがって、液漏れの検出精度を向上させることができる。
さらに、電極板90,91,96,97と絶縁板95の積層枚数を変更するだけでローラ本体99の長さを任意に変えられるため、設計の自由度が高い。
【0055】
尚、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、例えば以下のような態様が採用可能である。
まず、上記実施形態では、パウチの上部の溶着面のみを検出しているため、検出ローラが一対設けられた場合について説明したが、複数の検出ローラを用いてパウチ表面全体の液漏れを検出するような構成にしてもよい。また、上記実施形態では、パウチに押圧力を付与する手段として液漏れ検出部の前段であって、搬送コンベアの搬入側に設けられた押圧ローラによって押圧力を付与する場合について説明したが、検出ローラからパウチに所定の押圧力を付与させ、パウチを挟み込みながら押圧力を作用させる構成としてもよい。
【0056】
さらに、パウチの上部が搬送コンベアの搬出側に向く方向、つまり、パウチが搬送コンベアの搬送方向と平行になるように配置してパウチの上部から下部まで、表面を沿うように液漏れを検出してもよい。また、検出ローラ表面に付着した内容物を拭き取る、拭き取り手段として上部と下部の各々一対の拭き取りローラ間に拭き取りシートを巻回させた場合について説明したが、1つの拭き取りローラの表面に吸水性のある材質を巻着して構成してもよい。また、下部ローラホルダと上部ローラホルダ間に付勢手段を介在させてローラホルダ間の間隔を調整してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態における液漏れ検出装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における液漏れ検出部の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における液漏れ検出部の側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるローラ本体の説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態における図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】(a),(b)は、本発明の第2実施形態におけるローラ本体の説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態における図6のB−B線に沿う断面図である。
【図8】本発明の実施形態における液漏れ検出装置の精度試験の測定位置説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1…液漏れ検出装置
3…パウチ(包装袋)
50…検出ローラ
66…第一配線
67…第二配線
84…拭き取り手段
90,96…第一電極板
91,97…第二電極板
95,95’…絶縁板(絶縁体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填された包装袋を所定の圧力で押圧し、ピンホール又はシール不良箇所から漏洩する前記内容物が電極に付着して該電極間で電気的変化が起きる事によりピンホールの有無又はシール不良を検出する液漏れ検出装置において、
互いに絶縁された電極を外表面に備えた少なくとも一対の検出ローラを設け、該検出ローラ間に前記包装袋を挟み込み可能に構成したことを特徴とする液漏れ検出装置。
【請求項2】
前記検出ローラは、絶縁性のあるローラ本体に線材状に形成された電極が一対巻回されたものであることを特徴とする請求項1記載の液漏れ検出装置。
【請求項3】
前記検出ローラは、薄板状の一対の電極板が薄板状の絶縁体を挟んで積層形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の液漏れ検出装置。
【請求項4】
前記一対の検出ローラが前記包装袋の厚さに対応して接近離反可能に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3記載の液漏れ検出装置。
【請求項5】
前記検出ローラの上下に、該検出ローラに付着した内容物を吸着する拭き取り手段が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の液漏れ検出装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の液漏れ検出装置の液漏れ検出方法であって、
前記包装袋を挟み込んで、該包装袋の表面に接触しながら搬送し、前記包装袋のピンホール又はシール不良箇所から漏洩する前記内容物が電極間に付着することで漏洩を検出するとともに、前記内容物の漏洩を検出した場合に、電極間に付着した前記内容物が拭き取られることを特徴とする液漏れ検出方法。
【請求項7】
包装袋内に内容物を充填する工程と、前記包装袋を密閉する工程と、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の液漏れ検出装置を用いて前記内容物の漏洩を検査する工程とを有することを特徴とする内容物が充填された包装袋の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の内容物が充填された包装袋の製造方法によって製造されたことを特徴とする包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−128828(P2008−128828A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314400(P2006−314400)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【出願人】(502152023)有限会社有里企画 (1)
【Fターム(参考)】