説明

液濃度検出装置

【課題】 一対の電極の間に形成される電極間スペースに収容される液体の占有割合が変化する使用環境において、液濃度を適切に検出できる液濃度検出装置を提供する。
【解決手段】 液濃度検出装置1は、異なる周波数帯域(第1周波数帯域(100[kHz])および第2周波数帯域(10[MHz]))におけるそれぞれの静電容量(第1静電容量および第2静電容量)を検出することで、第1静電容量を用いて電極間液体占有割合を特定しつつ、電極間液体占有割合および第2静電容量を用いて液濃度を演算する。これにより、液濃度検出装置1は、電極間液体占有割合が変化した場合であっても、電極間液体占有割合の変化に応じて適切に液濃度を検出することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極を備え、一対の電極の間に形成される電極間スペースの少なくとも一部に配置される液体について、一対の電極間の静電容量を用いて液体に含まれる特定成分の濃度を検出する液濃度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一対の電極を備え、一対の電極の間に形成される電極間スペースに配置される液体について、一対の電極間の静電容量を用いて液体に含まれる特定成分の濃度(液濃度)を検出する液濃度検出装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
そして、特許文献1の請求項2には、液体と電気的に絶縁された少なくとも2つの導電性電極を備え、電極間の静電容量の変化から濃度を検出する液濃度センサが記載されている。また、特許文献1の請求項3には、静電容量変化を積分回路の帰還部に挿入して液濃度を検出する装置が記載されている。
【0004】
なお、この従来の液濃度検出装置は、1対の電極の間に形成される電極間スペース全体に液体が常時配置された状態で有ることを前提として、液濃度を検出するよう構成されている。
【0005】
他方、一対の電極間の静電容量に基づき液体の物理量を検出する装置としては、液濃度を検出する装置の他に、一対の電極間の静電容量に基づき液量(レベル)を計測する装置が、特許文献2に開示されている。そして、特許文献2においては、液量を計測するための電極対(一対の電極)として、少なくとも1組の電極対(液量計測用電極対)を備える装置が開示されている。なお、特許文献2においては、液量計測用電極対とは別に、補正用の電極対(液量補正用電極対)を備える構成が記載されている。
【特許文献1】特開平11−352089号公報(請求項2,3)
【特許文献2】特開平9−152368号公報(請求項2,3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の液濃度検出装置においては、電極間スペース全体に液体が満たされる必要があることから、液体の消費などにより液量が変化して電極間スペース全体に液体が満たされない状態になりうる使用環境においては、液濃度を適切に検出できない虞がある。
【0007】
つまり、液体の消費や液体を収容する容器の振動などの影響により、電極間スペースに液体と大気が混在した状態になると、電極間スペースに配置される物質の誘電率は、液濃度が変化しなくとも、電極間スペース全体に液体が満たされるときの誘電率とは異なる値を示すことになる。このように、電極間スペースに配置される液体の占有割合が変化すると、液濃度を適切に検出することが不可能となる。
【0008】
そこで、本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、一対の電極の間に形成される電極間スペースに収容される液体の占有割合が変化する使用環境において、液濃度を適切に検出できる液濃度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、一対の電極を備え、一対の電極の間に形成される電極間スペースの少なくとも一部に配置される液体について、一対の電極間の静電容量を用いて液体に含まれる特定成分の濃度を検出する液濃度検出装置であって、一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域のうち、特定成分の濃度の変化に依存せず、電極間スペースにおける液体の占有割合に応じて一対の電極間の静電容量が変化する周波数帯域を第1周波数帯域とした場合において、一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域が第1周波数帯域であるときの静電容量を第1静電容量として検出する第1静電容量検出手段と、一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域のうち第1周波数帯域とは異なる周波数帯域を第2周波数帯域とした場合において、一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域が第2周波数帯域であるときの静電容量のうち、少なくとも1点以上の静電容量を第2静電容量として検出する第2静電容量検出手段と、第1静電容量に基づいて電極間スペースにおける液体の占有割合である電極間液体占有割合を演算する電極間液体占有割合演算手段と、電極間液体占有割合および第2静電容量に基づき特定成分の濃度を演算する液濃度演算手段と、を備えることを特徴とする液濃度検出装置である。
【0010】
この液濃度検出装置は、一対の電極間の静電容量として、印加する交流電圧の周波数帯域が異なる少なくとも2点の静電容量(第1静電容量および第2静電容量)を検出し、第1静電容量および第2静電容量を用いて、液体に含まれる特定成分の濃度(以下、液濃度ともいう)を検出することに特徴がある。
【0011】
なお、液濃度が同一であっても、一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域が異なる場合には、一対の電極間の静電容量は、周波数帯域ごとに異なる値を示す。また、一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域のうち特定の周波数帯域においては、特定成分の濃度の変化に依存せず、主に電極間スペースにおける液体の占有割合に応じて一対の電極間の静電容量が変化する。なお、本発明の液濃度検出装置では、このような周波数帯域を第1周波数帯域と定めている。
【0012】
そして、この液濃度検出装置においては、第1周波数帯域であるときの一対の電極間の静電容量である第1静電容量を第1静電容量検出手段が検出し、電極間液体占有割合演算手段が第1静電容量を用いて電極間液体占有割合を演算する。
【0013】
また、この液濃度検出装置においては、第1周波数帯域とは異なる第2周波数帯域であるときの一対の電極間の静電容量である第2静電容量を第2静電容量検出手段が検出し、液濃度演算手段が電極間液体占有割合および第2静電容量を用いて特定成分の濃度(液濃度)を演算する。
【0014】
なお、第2周波数帯域は、電極間スペースにおける液体の占有割合が一定であっても、特定成分の濃度の変化に対して一対の電極間の静電容量が変化する周波数帯域である。このため、第2静電容量は、電極間液体占有割合が変化しない場合であっても、液濃度に応じて値が変化する。
【0015】
つまり、この液濃度検出装置は、異なる周波数帯域(第1周波数帯域および第2周波数帯域)におけるそれぞれの静電容量(第1静電容量および第2静電容量)を検出することで、第1静電容量を用いて電極間液体占有割合を特定しつつ、電極間液体占有割合および第2静電容量を用いて液濃度を演算する。これにより、この液濃度検出装置は、電極間液体占有割合が変化した場合であっても、電極間液体占有割合の変化に応じて適切に液濃度を検出することが可能となる。
【0016】
よって、本発明によれば、一対の電極間の静電容量として、単一の静電容量ではなく、周波数帯域の異なる複数の静電容量(第1静電容量および第2静電容量)を検出することで電極間液体占有割合を特定でき、一対の電極の全てが液体に浸漬されない状態であっても、液体における特定成分の濃度を検出できる。
【0017】
次に、上述の発明においては、第1周波数帯域が第2周波数帯域よりも低い周波数帯域であるとよい。
低周波数帯域ほど、液体中の特定成分の濃度に依存せず、電極間スペースにおける液体の占有割合に応じて一対の電極間の静電容量が変化し易い傾向にあるから、第1静電容量を第2周波数帯域よりも低い第1周波数帯域により検出することで、電極間液体占有割合の検出精度を良好なものとすることができる。
【0018】
そして、上述の発明においては、例えば、第1周波数帯域が100[kHz]以下の周波数帯域であり、第2周波数帯域が1[MHz]以上の周波数帯域であるとよい。
つまり、少なくとも100[kHz]以下の周波数帯域においては、特定成分の濃度の変化に対して依存せず、主に電極間液体占有割合に応じて一対の電極間の静電容量が変化する。このため、100[kHz]以下の周波数帯域を第1周波数帯域として設定することで、電極間液体占有割合をより精度良く検出することができる。
【0019】
また、少なくとも1[MHz]以上の周波数帯域における一対の電極間の静電容量は、液体における特定成分の濃度が同一であっても、100[kHz]以下の周波数帯域における静電容量と比べて、周波数の変化に対する静電容量の変化量が大きくなる。また、1[MHz]以上の周波数帯域においては、液体における特定成分の濃度(液濃度)に応じて静電容量が変化する傾向が強くなる。このことから、1[MHz]以上の周波数帯域を第2周波数帯域として設定することで、液濃度の変化に対する第2静電容量の変化量が大きくなり、液濃度の検出精度を向上できる。
【0020】
よって、本発明によれば、電極間液体占有割合の検出精度を向上できるとともに、液濃度の検出精度を向上できる。
なお、第1周波数帯域は、少なくとも1[kHz]以上の周波数帯域に設定することが望ましい。また、第2周波数帯域は、少なくとも20[MHz]以下の周波数帯域に設定することが望ましい。
【0021】
次に、上述の発明においては、一対の電極は、液体のレベルに応じて電極間スペースにおける液体占有割合が変化する状態で配置され、電極間液体占有割合演算手段は、第1静電容量に基づきレベルを演算するとよい。
【0022】
このように、一対の電極の配置状態が液体のレベルに応じて電極間液体占有割合が変化する配置状態となることで、電極間液体占有割合とレベルとの間に相関関係が生じ、ひいては、一対の電極間の静電容量とレベルとの間にも相関関係が生じることとなる。
【0023】
これより、電極間液体占有割合演算手段が第1静電容量を用いて液体のレベルを演算することが可能となり、第1静電容量を検出するための一対の電極とは別に、レベルを検出するための一対の電極を別途備えることなく、レベルを検出することができる。
【0024】
なお、レベル(液量)を検出するための従来の装置としては、上述の特許文献2に記載のように、液量を計測するための電極対(一対の電極)として、少なくとも1組の電極対(液量計測用電極対)を備える装置が知られている。
【0025】
これに対して、本発明は、レベル(液量)および液濃度(液体中における特定成分の濃度)をそれぞれ検出するにあたり、電極対(一対の電極)を1組(換言すれば、電極対を共用化して)備えればよく、電極対を用途ごとにそれぞれ備える必要がない。
【0026】
よって、本発明によれば、複数の電極対を備えることなく、1つの電極対を用いることで、液濃度のみならずレベル(液量)を検出することが可能となる。
ところで、一対の電極間の静電容量と液濃度との相関関係は、液体の温度変化によって変化することがある。このため、液体の温度が一定の用途においては、予め液体温度を測定しておき、その温度条件下における静電容量と液濃度との相関関係に基づき液濃度を検出することで、温度の影響による誤差が生じるのを防止できる。しかし、液体の温度が変化する用途においては、温度変化の影響により静電容量と液濃度との相関関係が変動してしまい、液濃度の検出精度が低下する虞がある。
【0027】
そこで、上述の発明においては、液体の温度を検出する温度検出手段を備え、液濃度演算手段は、電極間液体占有割合、第2静電容量および温度検出手段により検出された液体温度に基づき特定成分の濃度を検出するとよい。
【0028】
このように温度検出手段を備えておき、電極間液体占有割合および第2静電容量に加えて温度検出手段が検出した液体温度を用いて特定成分の濃度を検出することで、液体の温度変化に応じて液濃度を検出することが可能となる。
【0029】
よって、本発明によれば、液体の温度変化による検出誤差の発生を抑えつつ液濃度を検出でき、液濃度の検出精度を向上できる。
次に、上述の発明においては、第2静電容量検出手段は、第2周波数帯域のうち互いに周波数が異なる2点以上の静電容量を第2静電容量として検出し、液濃度演算手段は、少なくとも電極間液体占有割合および2点以上の第2静電容量に基づき特定成分の濃度を検出するとよい。
【0030】
このように、互いに周波数が異なる第2静電容量を2箇所以上検出することで、より多くの静電容量に基づいて液濃度を演算することができ、液濃度の検出精度をより高めることができる。
【0031】
なお、上述の発明においては、例えば、液体が少なくとも尿素を含む水溶液であり、特定成分の濃度が尿素の濃度であるとよい。
つまり、尿素水溶液においては、尿素の濃度が一定であっても、一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域が変化することによって、一対の電極間の静電容量が変化する。このことから、尿素水溶液における尿素の濃度を検出するにあたり、上記の液濃度検出装置を用いることで、一対の電極の全体が液体に浸漬されていない場合であっても、液濃度を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明の実施形態について、図面と共に説明する。
図1に、実施形態としての液濃度検出装置1の概略構成図を示す。
なお、本実施形態は、少なくとも尿素を含む尿素水溶液における尿素の濃度を検出するための液濃度検出装置である。この液濃度検出装置は、例えば、ディーゼル自動車などに備えられて、排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)の還元に使用される尿素水溶液における尿素濃度を検出するために利用される。
【0033】
図1に示すように、液濃度検出装置1は、収容容器81(タンク81ともいう)に収容される尿素水溶液の尿素濃度を検出するものであり、一対の電極(後述する外筒電極10および内部電極20)を有するセンサ部71と、センサ部71の一対の電極間を通過する電流値を電圧値に変換する電流−電圧変換部73と、尿素水溶液の温度を検出する温度検出部75と、少なくともレベル(水位)および液濃度を演算するための演算処理を行う演算処理部77と、センサ部71の一対の電極間に印加する交流電圧を出力する電圧出力部79と、を備えている。
【0034】
センサ部71は、収容容器81の内部に配置される。このとき、センサ部71に備えられる一対の電極は、収容容器81における尿素水溶液のレベル(水位)に応じて電極間スペースにおける液体占有割合(尿素水溶液の占有割合)が変化する状態で配置される。なお、センサ部71の構造については、後述する。
【0035】
電流−電圧変換部73は、センサ部71の一対の電極間を通過する電流値を電圧値に変換し、変換した電圧値を演算処理部77に対して出力する。
温度検出部75は、尿素水溶液の温度を検出し、検出した温度を演算処理部77に対して出力する。
【0036】
演算処理部77は、マイクロコンピュータ(マイコン)や信号入出力部などを備えており、各種演算処理を実行することにより、液体に含まれる特定成分の濃度(本実施形態では尿素水溶液の尿素濃度)および液体の水位レベル(本実施形態では、尿素水溶液のレベル)を演算する。
【0037】
電圧出力部79は、演算処理部77から指定された周波数の交流電圧をセンサ部71の一対の電極間に印加する。なお、電圧出力部79は、少なくとも3種類の周波数(低周波(100[kHz])、高周波1(5[MHz])、高周波2(10[MHz]))の交流電圧を出力可能に構成されている。
【0038】
ここで、センサ部71としての液濃度センサ72について説明する。なお、図2に、液濃度センサ72の内部構成を表した縦断面図を示す。
図2に示すように、液濃度センサ72は、円筒形状を有する外筒電極10と、その外筒電極10の内部にて、外筒電極10の軸線方向に沿って設けられた内部電極20と、外筒電極10および内部電極20を互いに非接触の状態で支持する基部40と、を備えて構成される。
【0039】
図3に、外筒電極10の斜視図を示す。
外筒電極10は、導電性の金属材料からなり、図3に示すように、長細い円筒形状を有する。液濃度センサ72の先端側(図2における下側)にあたる外筒電極10の先端部11には、後述する内部電極20のブッシュ30(図2参照)の抜け防止のための開口部13が設けられている。そして、開口部13の設けられた位置における外筒電極10の母線(図中一点鎖線Aで示す。)に沿って、細幅のスリット14,15,16が、先端部11側から順に基端部12(液濃度センサ72の基部40側の端部)にわたって、それぞれが独立に形成されている。
【0040】
スリット14,15,16は、それぞれが略同形状で等間隔に1本の母線上に沿って断続的に配置され、各スリット14,15,16間にはスリットが形成されていない筒状形態の補強部17,18を有している。さらに、先端部11および基端部12にも、それぞれの端面から連なって、スリットが形成されていない領域(スリット非形成領域)が設けられている。そして、これら各スリット14,15,16は、開口部13とともに、外筒電極10の外周面上で周方向に等間隔となる3本の母線上に、それぞれ形成されている。また、外筒電極10の基端部12には、スリット14,15,16が形成された各母線とは異なる母線上に、1つの空気抜孔19が形成されている。
【0041】
次に、図2に示すように、外筒電極10は、基端部12が金属製の基部40の電極支持部41の外周に係合した状態で溶接されている。
基部40は、尿素水溶液を収容したタンク81に液濃度センサ72を固定するための台座として機能し、そのための取り付け孔(図示省略)を鍔部42に有する。また、基部40のうち鍔部42を挟んだ電極支持部41の反対側には、一対の電極(外筒電極10および内部電極20)と外部回路(本実施形態では、電流−電圧変換部73)との電気的な接続を行うための中継用の回路基板60などを収容する収容部43が形成されている。
【0042】
なお、回路基板60は、収容部43の内壁面の四隅より突出する基板載置部(図示省略)上に載置されている。
一対の電極(外筒電極10および内部電極20)と外部回路との接続は、カバー45の側部に固定されるコネクタ62を介して行われる。なお、コネクタ62の外部接続端子(図示外)と回路基板60の配線とは、配線ケーブル61を介して接続されている。また、カバー45は、収容部43を覆って保護する状態で鍔部42に固定されている。
【0043】
基部40の電極支持部41には、収容部43の内部に貫通する孔46が形成されており、この孔46の内部に、内部電極20が固定される。本実施形態の内部電極20は、円柱状をした導電性の金属棒であり、外筒電極10の全長とほぽ同じ長さを有する。内部電極20の先端部21側(図2における下側であり、液濃度センサ72の先端側)の端部は面取りされている。この内部電極20の外周面上には、例えばPFAからなる絶縁膜(図示省略)が形成されている。また、基端部22側(図2における上側)には、内部電極20を基部40に固定するため、パイプガイド55とインナーケース50が係合されている。パイプガイド55は、内部電極20の基端部22の端縁寄りに接合された環状のガイド部材である。
【0044】
なお、インナーケース50は、内部電極20と外筒電極10とが確実に絶縁されるように内部電極20を位置決め支持する筒状の樹脂製部材であり、先端側が基部40の電極支持部41の孔46に係合する。
【0045】
インナーケース50には径方向外側に向かって突出する鍔部51が形成されており、インナーケース50は、収容部43側から電極支持部41の内周に挿通されることで電極支持部41に係合される。そして、鍔部51が収容部43内の底面に当接することで、電極支持部41の内周をインナーケース50が通り抜けることが防止される。
【0046】
また、内部電極20は、収容部43側からインナーケース50の内側に挿入されるが、パイプガイド55が鍔部51に当接することで、インナーケース50からの脱落が防止される。
【0047】
さらに、インナーケース50の外周と内周とには、それぞれ、Oリング53とOリング54とが設けられている。Oリング53は、インナーケース50の外周と基部40の孔46との間の隙間を密閉し、Oリング54は、インナーケース50の内周と内部電極20の基端部22の外周との間の隙間を密閉している。これにより、液濃度センサ72がタンク81に取り付けられた際に、タンク81の内部と外部とが収容部43を介して連通しないようにその気密性が保たれている。なお、基部40の鍔部42において液濃度センサ72の先端側の面には板状のゴム部材(図示省略)が嵌められ、Oリング53,54と同様に、タンクヘの取り付け時に、タンクの内外の気密性が保たれる。
【0048】
そして、内部電極20の基部40への組み付けの際には、2枚の押さえ板56,57によって、パイプガイド55がインナーケース50の鍔部51に対して押圧される。押さえ板57は、パイプガイド55との間に押さえ板56を挟み、パイプガイド55を押圧した状態で、ネジ58によって収容部43内に固定される。これにより、パイプガイド55に接合された内部電極20が電極支持部41に固定されることとなる。
【0049】
また、押さえ板56,57には中央に孔が設けてあり、内部電極20の電極取りだし用リード線59が挿通され、回路基板60に接合されている。回路基板60のグランド側の電極(図示省略)が基部40に接続されており、これにより、外筒電極10がグランド側に電気的に接続される。なお、基部40は、導電性材料で構成されている。
【0050】
また、基部40の電極支持部41にて支持された内部電極20は、その先端部21が、外筒電極10の先端部11と非接触の状態となるようにゴム製のブッシュ30により、保持されている。図2に示すように、ブッシュ30は、外径が外筒電極10の内周と略一致する円筒形状の胴部32の一端側に、テーパ状の先端部31が形成されている。先端部31は、胴部32側の端が胴部32の外径よりも大きく構成された鍔部34として形成されており、外筒電極10に胴部32が嵌められた際のストッパーとして機能する。
【0051】
ブッシュ30の胴部32の内周には、内部電極20の先端部21を位置決め保持するためのリブ36が複数本周方向に対して分散して列設されている。そして、先端部31には、胴部32の内周側に接続する孔33が開ロされており、胴部32の内周で内部電極20が保持された状態でも、リブ36の隙間を介してブッシュ30の内側と外側とが連通するように構成されている。これにより、孔33を介してタンクに収容された尿素水が外筒電極10と内部電極20との間に形成されるギャップ(電極間スペース)に入り込むことが可能となる。また、胴部32の外周には、外筒電極10の開口部13に係合して、ブッシュ30の抜け防止として機能する突起部35が設けられている。このようなブッシュ30に保持される内部電極20は、外筒電極10との接触が防止される。
【0052】
次に、液濃度検出装置1にて実行される液状態測定処理の処理内容について説明する。
なお、図5は、液状態測定処理の処理内容を表すフローチャートである。
まず、液状態測定処理が開始されると、S110(Sはステップを表す)では、装置内の各部(演算処理部77、電圧出力部79など)の初期化処理が実行される。具体的には、メモリや信号入出力部などのリセット処理が実行される。
【0053】
次のS120では、水位レベル測定処理が実行される。図6に、水位レベル測定処理の処理内容を表すフローチャートを示す。
水位レベル測定処理が開始されると、S210では、液濃度センサ72に印加する交流電圧の周波数を低周波数帯域(100[kHz])に切り替える処理が実行される。具体的には、演算処理部77が電圧出力部79に対して低周波指令信号を出力することで、電圧出力部79から液濃度センサ72に対して出力される周波数帯域を切り替える。
【0054】
次のS220では、液濃度センサ72に印加する交流電圧の波形を作成する処理が実行される。具体的には、電圧出力部79が、液濃度センサ72に対して出力する交流電圧の波形を生成すると共に、液濃度センサ72に対して電圧を印加する。このとき、交流電圧の周波数は、100[kHz]である。
【0055】
次のS230では、液濃度センサ72を介して出力される電圧を測定する処理が実行される。具体的には、電流−電圧変換部73が、液濃度センサ72の一対の電極(外筒電極10および内部電極20)を通過した電流値を電圧値に変換しており、演算処理部77が、電流−電圧変換部73からの出力電圧を検出(入力)する。
【0056】
次のS240では、演算処理部77の内部において、液濃度センサ72の出力電圧波形を解析する処理を行い、出力電圧波形の振幅を算出する。
次のS250では、一対の電極(外筒電極10および内部電極20)における静電容量を演算する処理が実行される。具体的には、演算処理部77が、液濃度センサ72の出力電圧波形の振幅に基づき一対の電極(外筒電極10および内部電極20)における静電容量(第1静電容量)を演算する。
【0057】
次にS260では、タンク81の内部における水位レベル(以下、単に、レベルともいう)および一対の電極の隙間空間における液体の占有割合(電極間液体占有割合)を検出する処理が実行される。具体的には、演算処理部77が、第1静電容量に基づき水位レベルおよび電極間液体占有割合を検出する処理を実行する。
【0058】
演算処理部77は、水位レベル、電極間液体占有割合および静電容量の相関関係に関するマップあるいは計算式を予め記憶しており、そのマップあるいは計算式を用いて、第1静電容量に基づき水位レベルおよび電極間液体占有割合を演算する。
【0059】
上述したように、センサ部71における一対の電極が尿素水溶液のレベルに応じて電極間液体占有割合(尿素水溶液の占有割合)が変化する状態で備えられることから、電極間液体占有割合とレベルとの間に相関関係が生じる。そして、電極間の静電容量と電極間液体占有割合との間に相関関係があることから、レベルと静電容量との間にも相関関係が生じることとなり、その相関関係に基づいて、マップあるいは計算式が定められている。
【0060】
なお、水位レベルと電極間液体占有割合との間に相関関係が有る場合においては、第1静電容量に基づきいずれか一方の値を演算した後、水位レベルと電極間液体占有割合との相関関係に基づき他方の値を演算することで、水位レベルおよび電極間液体占有割合を演算するように構成することもできる。
【0061】
ここで、本実施形態の液濃度検出装置1により、電極間液体占有割合および液体の水位レベルを検出する原理について説明する。図4は、液濃度センサ72における外筒電極10と内部電極20との間(電極間スペース)に満たされた尿素水の水面近傍の拡大断面図である。
【0062】
液濃度センサ72は、尿索水を収容したタンク81において、外筒電極10および内部電極20の軸線方向が尿素水の水位の高低方向に対して平行となる状態で組み付けられる。つまり、一対の電極(外筒電極10および内部電極20)は、タンク81における尿素水溶液のレベルに応じて外筒電極10および内部電極20の電極間スペースにおける液体占有割合(尿素水溶液の占有割合)が変化する状態で配置される。
【0063】
そして、一対の電極間(外筒電極10と内部電極20との間)の静電容量を測定することで、両者間に存在する尿素水が、外筒電極10の軸線方向にどれだけの水位レベルまで存在しているかを検出することができる。これは、周知のように、径方向の電位の異なる2点間において、静電容量の大きさが、その径の差が小さいほど大きくなることに基づく。
【0064】
すなわち、図4に示すように、尿素水で満たされていない部分においては、ギャップ間で電位差の生じる部位の距離は、両者間の空気層と絶縁膜23との合計の厚み分の距離(距離Bで示す)となる。一方、尿素水が満たされた部位においては、ギャップ間で電位差の生じる部位の距離は、尿索水が導電性のために外筒電極10と尿素水との電位が等しくなることから、絶縁膜23の厚み分の距離(距離Cで示す)となる。
【0065】
つまり、尿索水が満たされている部位は、満たされていない部位よりも電位差の生じる部位聞の距離がより近いため、静電容量が大きい。このことから、ギャップ間に電圧を印加した場合、尿素水が満たされている部分が多くなるに従って、静電容量がより大きくなる部分(距離Cである部分)の割合が増える。
【0066】
そして、周知のように、静電容量の大きさが互いに対向する電位の異なる部位の面積に比例することから、液濃度センサ72の全体として検出される静電容量は、尿素水の水位レベルが高くなるに従って大きくなる。
【0067】
次に、図8に、尿素濃度の異なる2種類(0[wt%]、32.5[wt%])の尿素水溶液における水位と静電容量との相関関係を表した波形の一例を示す。なお、図8では、尿素水溶液の水温が24[℃]であるときの相関関係を示しており、一対の電極(外筒電極10および内部電極20)に対する印加電圧の周波数は低周波数(100[kHz])である。
【0068】
つまり、演算処理部77に記憶されるマップまたは計算式は、このような相関関係に基づき予め定められており、例えば、図8に示す相関関係に基づき定められたマップにおいては、静電容量が約160[pF]であるときの水位レベルの演算結果は、約40[cm]である。
【0069】
また、図9に、尿素濃度の異なる2種類(0wt%、32.5wt%)の尿素水溶液について、印加電圧の周波数が高周波数(10[MHz])であるときの水位と静電容量との相関関係を表した波形の一例を示す。なお、この相関関係は、尿素水溶液の水温が24[℃]であるときの相関関係である。
【0070】
これによれば、印加電圧の周波数が高周波数(10[MHz])であるときの水位レベル(あるいは、電極間液体占有割合)と静電容量との相関関係は、低周波数(100[kHz])の場合と比べて、尿素濃度ごとに異なる相関関係となることが判る。つまり、印加電圧の周波数が低周波数(100[kHz])に設定されたときの静電容量に基づき水位レベル(電極間液体占有割合)を検出する場合には、尿素濃度の変化による影響を受けることなく、水位レベル(電極間液体占有割合)を検出することができる。
【0071】
S260での処理が完了するとともにS120での処理が完了すると、次のS130では、尿素水溶液の温度(水温)を検出する処理が実行される。具体的には、温度検出部75が水温を検出するとともに、検出した水温データを演算処理部77に対して出力する。
【0072】
次のS140では、液濃度測定処理が実行される。図7に、液濃度測定処理の処理内容を表すフローチャートを示す。
液濃度測定処理が開始されると、S310では、液濃度センサ72に印加する交流電圧の周波数を高周波数帯域(10[MHz])に切り替える処理が実行される。具体的には、演算処理部77が電圧出力部79に対して高周波指令信号を出力することで、電圧出力部79から液濃度センサ72に対して出力される周波数帯域を切り替える。
【0073】
次のS320では、液濃度センサ72に印加する交流電圧の波形を作製する処理が実行される。具体的には、電圧出力部79が、液濃度センサ72に対して出力する交流電圧の波形を生成すると共に、液濃度センサ72に対して電圧を印加する。このとき、交流電圧の周波数は、10[MHz]である。
【0074】
次のS330では、液濃度センサ72を介して出力される電圧を測定する処理が実行される。具体的には、電流−電圧変換部73が、液濃度センサ72の一対の電極(外筒電極10および内部電極20)を通過した電流値を電圧値に変換しており、演算処理部77が、電流−電圧変換部73からの出力電圧を検出(入力)する。
【0075】
次のS340では、演算処理部77の内部において、液濃度センサ72の出力電圧波形を解析する処理を行い、出力電圧波形の振幅を算出する。
次のS350では、一対の電極(外筒電極10および内部電極20)における静電容量を演算する処理が実行される。具体的には、演算処理部77が、液濃度センサ72の出力電圧波形の振幅に基づき一対の電極(外筒電極10および内部電極20)における静電容量(第2静電容量)を演算する。
【0076】
次のS360では、タンク81の内部に収容されている尿素水溶液の尿素濃度を検出する処理が実行される。具体的には、演算処理部77が、S120で検出した水位レベル(あるいは電極間液体占有割合)、S130で検出した水温および第2静電容量に基づき尿素水溶液の尿素濃度を検出する処理を実行する。
【0077】
なお、演算処理部77は、水位レベル(あるいは電極間液体占有割合)、水温、尿素濃度および静電容量の相関関係に関するマップあるいは計算式を予め記憶しており、そのマップあるいは計算式を用いて、S120で検出した水位レベル(あるいは電極間液体占有割合)、S130で検出した水温および第2静電容量に基づき尿素濃度を演算する。
【0078】
図10に、尿素濃度の異なる4種類(0[wt%]、16.3[wt%]、32.5[wt%]、40.0[wt%])の尿素水溶液における周波数と静電容量との相関関係を表した波形の一例を示す。また、図11に、周波数が異なる3種類(100[kHz]、5[MHz]、10[MHz])の場合について、尿素水溶液における濃度と静電容量との相関関係を表した波形の一例を示す。
【0079】
なお、図10および図11では、尿素水溶液の水温が24[℃]で、水位レベルが40[cm]であるときの相関関係を示している。
つまり、演算処理部77に記憶されるマップまたは計算式は、このような相関関係に基づき予め定められており、例えば、図11に示す相関関係のうち周波数が10[MHz]であるときの波形に基づき定められたマップにおいては、静電容量が約125[pF]であるときの尿素濃度の演算結果は、約16.3[wt%]である。
【0080】
なお、高周波数帯域における尿素水溶液における周波数と静電容量との相関関係は、水位レベル(あるいは電極間液体占有割合)ごとおよび尿素水溶液の水温ごとに異なるため、高周波数帯域におけるマップまたは計算式は、水位レベル(あるいは電極間液体占有割合)ごとおよび尿素水溶液の水温ごとに予め定められている。
【0081】
ここで、図12に、尿素濃度が0[wt%]である尿素水溶液について、水温の異なる3種類(24[℃]、50[℃]、70[℃])の尿素水溶液における周波数と静電容量との相関関係を表した波形の一例を示す。なお、図12では、水位レベルが40[cm]であるときの相関関係を示している。
【0082】
また、図13に、尿素濃度が32.5[wt%]である尿素水溶液について、水温の異なる3種類(24[℃]、50[℃]、70[℃])の尿素水溶液における周波数と静電容量との相関関係を表した波形の一例を示す。なお、図13では、水位レベルが40[cm]であるときの相関関係を示している。
【0083】
図12および図13によれば、低周波数領域(例えば、100[kHz]以下の帯域)では、周波数と静電容量との相関関係が水温に依存することなく、高周波数領域(例えば、1[MHz]以上の帯域)では、周波数と静電容量との相関関係が水温に依存しており、水温毎に異なる波形を示すことが判る。
【0084】
よって、S360での処理において、演算処理部77は、まず、S120で検出した水位レベル(あるいは電極間液体占有割合)およびS130で検出した水温を用いて、これらの水位レベル(あるいは電極間液体占有割合)および水温に対応するマップあるいは計算式(静電容量と尿素濃度との相関関係に関するマップあるいは計算式)を選択し、そのマップあるいは計算式を用いて第2静電容量に対応する尿素濃度を検出する処理を行う。
【0085】
S360での処理が完了するとともにS140での処理が完了すると、次のS150では、水位レベルおよび尿素濃度に関する検出データを外部機器に出力する処理が実行される。具体的には、演算処理部77が、演算結果である水位レベルおよび尿素濃度を、外部機器(例えば、ディーゼル自動車の中央処理装置など)に対して出力する。
【0086】
S150は、検出データを出力した後、予め定められた待機時間が経過すると、処理を完了する。
そして、S150での処理が完了すると、再びS120に移行し、その後、S120からS150までの処理が繰り返し実行される。このようにして、本実施形態の液濃度検出装置1は、一定周期ごとに水位レベルおよび尿素濃度を検出するための処理を繰り返し実行する。
【0087】
以上説明したように、本実施形態の液濃度検出装置1は、電極対(一対の電極)を複数備えるのではなく、単一の電極対を備える構成であり、その一対の電極間の静電容量として、印加する交流電圧の周波数帯域が異なる2点の静電容量(第1静電容量および第2静電容量)を検出する。
【0088】
そして、液濃度検出装置1は、低周波数帯域(100[kHz])における第1静電容量を用いて電極間液体占有割合および水位レベルを演算する。なお、一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域のうち100[kHz]の帯域は、尿素濃度の変化に対して依存せず、主に電極間スペースにおける尿素水溶液の占有割合(電極間液体占有割合)に応じて一対の電極間の静電容量が変化する周波数帯域である。
【0089】
また、液濃度検出装置1は、検出した水位レベル(あるいは電極間液体占有割合)、検出した水温、高周波数帯域(10[MHz])における第2静電容量を用いて、尿素濃度を演算する。なお、一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域のうち10[MHz]の帯域は、電極間液体占有割合が一定であっても、尿素濃度の変化に対して一対の電極間の静電容量が変化する周波数帯域である。
【0090】
つまり、液濃度検出装置1は、異なる周波数帯域(第1周波数帯域(100[kHz])および第2周波数帯域(10[MHz]))におけるそれぞれの静電容量(第1静電容量および第2静電容量)を検出することで、第1静電容量を用いて電極間液体占有割合を特定しつつ、電極間液体占有割合および第2静電容量を用いて液濃度を演算する。これにより、液濃度検出装置1は、尿素水溶液の消費や車両(タンク81)の振動などによって電極間液体占有割合が変化した場合であっても、適切に液濃度を検出することが可能となる。
【0091】
よって、本実施形態によれば、一対の電極(外筒電極10および内部電極20)間の静電容量として、単一の静電容量ではなく、周波数帯域の異なる第1静電容量および第2静電容量を検出することで電極間液体占有割合(水位レベル)を特定でき、一対の電極の全てを常時液体に浸漬させた状態にしなくとも、尿素濃度を検出できる。
【0092】
なお、尿素濃度の変化に依存せず、主に電極間液体占有割合に応じて一対の電極間の静電容量が変化する周波数帯域は、上述した100[kHz]の周波数帯域に限られず、10[MHz]よりも高い周波数帯域(例えば、100[MHz]以上)にも存在する。このため、このような周波数帯域(100[MHz]以上の周波数帯域)における静電容量を、第1静電容量として用いることも可能である。
【0093】
ここで、本実施形態においては、電極間液体占有割合の検出に用いる第1静電容量を検出する際には、一対の電極に印加する交流電圧の周波数帯域が第1周波数帯域(100[kHz])である。また、液濃度の検出に用いる第2静電容量を検出する際には、一対の電極に印加する交流電圧の周波数帯域が第2周波数帯域(10[MHz])である。
【0094】
つまり、第1周波数帯域(100[kHz])は、第2周波数帯域(10[MHz])よりも低い周波数帯域に設定されている。
ところで、図10によれば、少なくとも100[kHz]以下の周波数帯域においては、特定成分の濃度(尿素濃度)の変化に対して一対の電極間の静電容量が依存し難いことが判る。また、図8によれば、特定成分の濃度(尿素濃度)の差異にかかわらず、水位レベル(換言すれば、電極間液体占有割合)に応じて一対の電極間の静電容量が変化することが判る。このため、100[kHz]以下の周波数帯域を第1周波数帯域として設定することで、電極間液体占有割合をより精度良く検出することができる。
【0095】
なお、第1周波数帯域は、少なくとも1[kHz]以上の周波数帯域に設定することが望ましい。
また、図10によれば、液体における特定成分の濃度(尿素濃度)が同一であっても、少なくとも1[MHz]以上の周波数帯域における一対の電極間の静電容量は、100[kHz]以下の周波数帯域における静電容量に比べて、周波数の変化に対する静電容量の変化量が大きくなる。また、1[MHz]以上の周波数帯域においては、液体における特定成分の濃度(液濃度)に応じて静電容量が変化する傾向が強くなる。
【0096】
そして、本実施形態では、周波数帯域が10[MHz]である時の静電容量を第2静電容量として検出しており、液濃度の検出に用いる第2静電容量の検出時の周波数帯域(第2周波数帯域)が1[MHz]以上の周波数帯域に設定されていることから、液濃度(尿素濃度)の変化に対する第2静電容量の変化量が大きくなり、液濃度の検出精度を向上できる。
【0097】
なお、第2周波数帯域は、少なくとも20[MHz]以下の周波数帯域に設定することが望ましい。
また、本実施形態においては、一対の電極の配置状態が尿素水溶液のレベルに応じて電極間液体占有割合が変化する状態であることから、電極間液体占有割合のみならずレベルを演算することが可能である。
【0098】
つまり、本実施形態の液濃度検出装置1は、液量を計測するための電極対(一対の電極)を備えることなく、1つの電極対を用いることで、液濃度のみならずレベル(液量)を検出することが可能となる。
【0099】
このことから、液濃度検出装置1は、電極対の設置スペースを新たに確保することなく、レベル(水位レベル)を検出できるという利点がある。
また、本実施形態においては、尿素水溶液の温度(水温)を検出し、その水温を尿素濃度の検出処理に用いることから、水温が変化する環境下であっても、水温変化に応じて液濃度を検出することができる。これにより、液濃度検出装置1は、尿素水溶液の温度変化による検出誤差の発生を抑えつつ液濃度を検出でき、液濃度の検出精度を向上できる。
【0100】
なお、上記実施形態においては、外筒電極10および内部電極20が特許請求の範囲における一対の電極に相当し、演算処理部77におけるS250での処理が第1静電容量検出手段に相当し、S350での処理が第2静電容量検出手段に相当し、S260での処理が電極間液体占有割合演算手段に相当し、S360での処理が液濃度演算手段に相当し、温度検出部75が温度検出手段に相当している。
【0101】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施形態においては、液体の温度(水温)を検出して、その水温を液濃度の演算に用いているが、水温が一定温度となる用途においては、水温の検出を行わず、その一定温度における電極間液体占有割合、静電容量および特定成分の濃度の相関関係に関するマップあるいは計算式を予め用意しておき、液濃度を検出することができる。
【0102】
また、上記実施形態は、液濃度の検出に用いる第2静電容量として1点の静電容量を検出する構成であるが、互いに周波数が異なる2点以上の静電容量を第2静電容量として検出し、その複数の第2静電容量を用いて、液濃度を検出しても良い。つまり、電極間スペースにおける液体の占有割合が一定であっても特定成分の濃度の変化に対して一対の電極間の静電容量が変化する周波数帯域(第2周波数帯域)において、互いに周波数が異なる2点以上の第2静電容量を検出するのである。
【0103】
例えば、上記実施形態における電圧出力部79は、出力する交流電圧の周波数として、低周波(100[kHz])および高周波2(10[MHz])の他に、高周波1(5[MHz])を設定可能に構成されており、周波数帯域が5[MHz]であるときの静電容量についても第2静電容量として検出できる。そして、5[MHz]および10[MHz]であるときの2つの静電容量を第2静電容量として、マップあるいは計算式に基づき、2つの第2静電容量に対応する液濃度を検出するのである。
【0104】
このように、互いに周波数が異なる第2静電容量を2箇所以上検出することで、より多くの静電容量に基づいて液濃度を演算することができ、液濃度の検出精度をより高めることができる。
【0105】
なお、互いに周波数が異なる第2静電容量を2箇所以上検出する場合には、マップまたは計算式として、2点の第2静電容量の傾きと液濃度との相関関係に関するマップまたは計算式に基づき、2点の第2静電容量の傾きに対応する液濃度を演算してもよい。ここで、2点の第2静電容量の傾きとは、周波数の変化量に対する第2静電容量の変化量の割合を意味する。
【0106】
また、液濃度に加えて水位レベルを検出する際の電極対(一対の電極)の配置状態については、上述したような、一対の電極(外筒電極10および内部電極20)の軸線方向が尿素水の水位の高低方向に対して平行となる状態に限られることはなく、一対の軸線方向が水位の高低方向に対して斜めになる状態であってもよい。つまり、一対の軸線方向が水位の高低方向に対して斜めになる状態であっても、レベルに応じて電極間スペースにおける液体占有割合が変化する状態であればよい。
【0107】
なお、一対の電極が平板状の電極で構成される場合には、一対の電極の隙間間隔方向がレベル方向に対して平行ではない状態であれば、レベルに応じて電極間スペースにおける液体占有割合が変化する状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】液濃度検出装置の概略構成図である。
【図2】液濃度センサの内部構成を表した縦断面図である。
【図3】外筒電極の斜視図である。
【図4】液濃度センサにおける外筒電極と内部電極との間に満たされた尿素水の水面近傍の拡大断面図である。
【図5】液状態測定処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図6】水位レベル測定処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図7】液濃度測定処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図8】尿素濃度の異なる2種類(0[wt%]、32.5[wt%])の尿素水溶液における水位と静電容量との相関関係を表した波形の一例である。
【図9】尿素濃度の異なる2種類(0wt%、32.5wt%)の尿素水溶液について、印加電圧の周波数が高周波数(10[MHz])であるときの水位と静電容量との相関関係を表した波形の一例である。
【図10】尿素濃度の異なる4種類(0[wt%]、16.3[wt%]、32.5[wt%]、40.0[wt%])の尿素水溶液における周波数と静電容量との相関関係を表した波形の一例である。
【図11】周波数が異なる3種類(100[kHz]、5[MHz]、10[MHz])の場合について、尿素水溶液における濃度と静電容量との相関関係を表した波形の一例である。
【図12】尿素濃度が0[wt%]である尿素水溶液について、水温の異なる3種類(24[℃]、50[℃]、70[℃])の尿素水溶液における周波数と静電容量との相関関係を表した波形の一例である。
【図13】尿素濃度が32.5[wt%]である尿素水溶液について、水温の異なる3種類(24[℃]、50[℃]、70[℃])の尿素水溶液における周波数と静電容量との相関関係を表した波形の一例である。
【符号の説明】
【0109】
1…液濃度検出装置、10…外筒電極、20…内部電極、23…絶縁膜、71…センサ部、72…液濃度センサ、73…静電容量検出部、75…温度検出部、77…演算処理部、79…電圧出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を備え、前記一対の電極の間に形成される電極間スペースの少なくとも一部に配置される液体について、前記一対の電極間の静電容量を用いて前記液体に含まれる特定成分の濃度を検出する液濃度検出装置であって、
前記一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域のうち、前記特定成分の濃度の変化に依存せず、前記電極間スペースにおける前記液体の占有割合に応じて前記一対の電極間の静電容量が変化する周波数帯域を第1周波数帯域とした場合において、前記一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域が前記第1周波数帯域であるときの前記静電容量を第1静電容量として検出する第1静電容量検出手段と、
前記一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域のうち前記第1周波数帯域とは異なる周波数帯域を第2周波数帯域とした場合において、前記一対の電極間に印加する交流電圧の周波数帯域が前記第2周波数帯域であるときの前記静電容量のうち、少なくとも1点以上の前記静電容量を第2静電容量として検出する第2静電容量検出手段と、
前記第1静電容量に基づいて前記電極間スペースにおける前記液体の占有割合である電極間液体占有割合を演算する電極間液体占有割合演算手段と、
前記電極間液体占有割合および前記第2静電容量に基づき前記特定成分の濃度を演算する液濃度演算手段と、
を備えることを特徴とする液濃度検出装置。
【請求項2】
前記第1周波数帯域は、前記第2周波数帯域よりも低い周波数帯域であること、
を特徴とする請求項1に記載の液濃度検出装置。
【請求項3】
前記第1周波数帯域が100[kHz]以下の周波数帯域であり、前記第2周波数帯域が1[MHz]以上の周波数帯域であること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の液濃度検出装置。
【請求項4】
前記一対の電極は、前記液体のレベルに応じて前記電極間スペースにおける前記電極間液体占有割合が変化する状態で配置され、
前記電極間液体占有割合演算手段は、前記第1静電容量に基づき前記レベルを演算すること、
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の液濃度検出装置。
【請求項5】
前記液体の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記液濃度演算手段は、前記電極間液体占有割合、前記第2静電容量および前記温度検出手段により検出された液体温度に基づき前記特定成分の濃度を検出すること、
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の液濃度検出装置。
【請求項6】
前記第2静電容量検出手段は、前記第2周波数帯域のうち互いに周波数が異なる2点以上の前記静電容量を、前記第2静電容量として検出し、
前記液濃度演算手段は、少なくとも前記電極間液体占有割合および前記2点以上の前記第2静電容量に基づき前記特定成分の濃度を検出すること、
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の液濃度検出装置。
【請求項7】
前記液体は、少なくとも尿素を含む水溶液であり、
前記特定成分の濃度は、尿素の濃度であること、
を特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の液濃度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−208234(P2006−208234A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21723(P2005−21723)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】