説明

液状シリコーンゴムコーティング剤組成物、カーテンエアーバッグ及びその製造方法

【課題】展開時のインフレーターガスの洩れが抑制され、膨脹時間持続性に優れるカーテンエアーバッグの製造に適する液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)Si原子結合アルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサン、(B)SiH基を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)付加反応触媒、(D)比表面積50m2/g以上の微粉末シリカ、(E)エポキシ基とSi原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物、及び(F)オキシジルコニウム化合物を各々所定量含有してなる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6,6−ナイロン、6−ナイロン、ポリエステル等の繊維布にシリコーンゴムコーティング膜を形成させた車両等のエアーバッグを作製するのに好適な、特に、運転席や助手席に装着されるエアーバッグとは異なり、フロントピラーからルーフサイドに沿って収納され、衝突時や車両の転倒時に頭部の保護や飛び出しを防ぐために一定膨脹時間を維持することが要求されるカーテンエアーバッグを作製するのに好適な液状シリコーンゴムコーティング剤組成物、該組成物の硬化物からなるシリコーンゴムコーティング層を有するカーテンエアーバッグ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維布表面へゴム被膜を形成することを目的としたエアーバッグ用シリコーンゴム組成物としては、以下のものが知られている。例えば、特許文献1には、付加硬化型組成物に無機質充填剤とオルガノポリシロキサンレジンとエポキシ基含有有機ケイ素化合物とを添加してなる、基布に対する接着性に優れるエアーバッグ用液状シリコーンゴムコーティング剤組成物が開示されている。特許文献2には、付加硬化型組成物に無機質充填剤、オルガノポリシロキサンレジン、有機チタン化合物及びアルキルシリケートまたはアルキルポリシリケートを添加してなる、短時間の加熱硬化で基布に対する優れた接着性を発現するエアーバッグ用の液状シリコーンゴムコーティング剤組成物が開示されている。特許文献3には、ビニル基含有オルガノポリシロキサンの粘度を8000センチポイズ以下に限定した薄膜コート性に優れたエアーバッグ用シリコーンゴムコーティング組成物が開示されている。特許文献4には、ゴムコーティング組成物にBET法による比表面積が平均150〜250m2/gで、平均粒径が20μm以下である湿式シリカを添加してなり、粘着感の低減したシリコーンゴムコーティング基布の製造に用いられるコーティング用液状シリコーンゴム組成物が開示されている。
【0003】
しかし、これら組成物は、カーテンエアーバッグ用途に使用した場合には、いずれもエアーバッグ用基布に対する接着性に劣るために、インフレーターガスの洩れを抑えて膨脹時間を満足に持続させうるものではなかった。
【0004】
なお、本発明に関連したジルコニウム化合物を含有した付加硬化型組成物は、特許文献5〜8に開示されている。しかし、これらに例示されているジルコニウム化合物は4配位子化合物であり、本発明のオキシジルコニウム化合物は示されていない。
【0005】
【特許文献1】特開平5−214295号公報
【特許文献2】特開2002−138249号公報
【特許文献3】特開2001−287610号公報
【特許文献4】特開2001−59052号公報
【特許文献5】特開昭62−240361号公報
【特許文献6】特開平4−178461号公報
【特許文献7】特開平4−246466号公報
【特許文献8】特開平8−269337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、エアーバッグ展開時のインフレーターガスの洩れを抑え、膨脹時間の持続性に優れるエアーバッグを与える液状シリコーンゴムコーティング剤組成物、該組成物の硬化物を用いたカーテンエアーバッグ、および該カーテンエアーバッグの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサン、(B)1分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)付加反応触媒、好ましくは(D)比表面積が50m2/g以上の微粉末シリカ、(E)1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物、および(F)オキシジルコニウム化合物を含有してなる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の硬化物を、カーテンエアーバッグのシリコーンゴムコーティング層として使用した場合、インフレーターガスの洩れを抑え、カーテンエアーバッグの膨脹を一定時間維持できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は第一に、
(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 本組成物中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子全体の数が(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個当たり1〜10個となる量、
(C)付加反応触媒: 有効量、
(D)比表面積が50m2/g以上の微粉末シリカ: 0〜50質量部、
(E)1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物: 0.1〜10質量部、
および
(F)オキシジルコニウム化合物: 0.1〜5質量部
を含有してなる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を提供する。
【0009】
本発明は第二に、
繊維布からなる基材と、
上記組成物の硬化物からなり、該基材の少なくとも一方の表面に形成されたシリコーンゴムコーティング層と
を有するカーテンエアーバッグを提供する。
【0010】
本発明は第三に、
繊維布からなる基材の少なくとも一方の表面に上記組成物を塗布し、
該組成物を硬化させることにより、該基材の少なくとも一方の表面に、該組成物の硬化物からなるシリコーンゴムコーティング層を形成させる
ことを含む上記カーテンエアーバッグの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エアーバッグ用基布に対する接着性に優れる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物が得られる。繊維布からなる基材と、該組成物の硬化物からなり、該基材の少なくとも一方の表面に形成されたシリコーンゴムコーティング層とを有するカーテンエアーバッグは、インフレーターガスの洩れを抑えて膨脹時間を満足に持続性させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。なお、本発明において、粘度は回転粘度計により測定した値である。
【0013】
<液状シリコーンゴムコーティング剤組成物>
本発明の液状シリコーンゴムコーティング剤組成物は、以下の(A)〜(F)成分を含有してなるものであって、室温(25℃を意味する。以下、同じ)で液状のものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0014】
[(A)成分]
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有するものであり、本発明組成物のベースポリマーである。(A)成分のオルガノポリシロキサンは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0015】
(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状が挙げられるが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい(なお、これらのオルガノ基はアルケニル基も包含し得る)。また、(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子構造が直鎖状または分岐鎖状である場合、該オルガノポリシロキサンの分子中においてアルケニル基が結合するケイ素原子の位置は、分子鎖末端及び分子鎖途中(即ち、分子鎖非末端)のどちらか一方でも両方でもよい。特に好ましくは、(A)成分は、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
【0016】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基としては、例えば、互いに同一又は異種の非置換もしくは置換の、通常、炭素原子数2〜8、好ましくは2〜4のものが挙げられる。その具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、特にビニル基であることが好ましい。
【0017】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量は、ケイ素原子に結合した一価の有機基全体に対して0.001〜10モル%であることが好ましく、特に0.01〜5モル%程度であることが好ましい。
【0018】
(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する一価の有機基としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含まない、互いに同一又は異種の非置換もしくは置換の、通常、炭素原子数1〜12、好ましくは炭素原子数1〜10程度の一価炭化水素基が挙げられる。該一価炭化水素基が置換されている場合、その例としては、ハロゲン置換のものが挙げられる。該有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられ、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0019】
(A)成分の25℃における粘度は、100〜500,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に300〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。該粘度がこの範囲内にあると、得られる組成物の取扱い作業性が良好であり、また、得られるシリコーンゴムの物理的特性が良好である。
【0020】
(A)成分の好ましい例としては、下記平均組成式(1)
aSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは互いに同一又は異種の非置換又は置換の炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数であり、ただし、全Rの0.001〜10モル%、好ましくは0.01〜5モル%がアルケニル基である。)
で示されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。Rの具体例としては、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基として上記で具体的に挙げたアルケニル基、および(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する一価有機基として上記で具体的に挙げた有機基が挙げられる。
【0021】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、式:R13SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R13SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:R1SiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:R2SiO1.5で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。
【0022】
上記式中のR1は、脂肪族不飽和結合を含まない、同一又は異種の非置換もしくは置換の、炭素原子数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10の一価炭化水素基であり、その例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。また、上記式中のR2は、互いに同一又は異種の非置換もしくは置換の、炭素原子数が好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4のアルケニル基であり、その例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基などが挙げられる。
【0023】
[(B)成分]
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分とヒドロシリル化付加反応し、架橋剤として作用する。(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。(B)成分の分子構造に特に制限はなく、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状構造(樹脂状)等の、従来製造されている各種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。
【0024】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個(通常、2〜300個程度)、好ましくは3個以上(通常、3〜200個、好ましくは3〜100個程度)のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、ヒドロシリル基またはSiH)を有する。(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが直鎖状構造を有する場合、これらのSiH基は、分子鎖末端及び分子鎖途中(即ち、分子鎖非末端)のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0025】
(B)成分の1分子中のケイ素原子の数(重合度)は、好ましくは2〜300個、より好ましくは3〜200個、更により好ましくは4〜150個程度である。更に、(B)成分は室温(25℃)で液状であることが好ましく、(B)成分の25℃における粘度は、好ましくは0.1〜1,000mPa・s、より好ましくは0.5〜500mPa・s程度である。
【0026】
(B)成分としては、例えば、下記平均組成式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。
3bcSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R3は、脂肪族不飽和結合を含まない、同一又は異種の非置換もしくは置換の、炭素原子数が好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8の、ケイ素原子に結合した一価炭化水素基であり、bおよびcは、好ましくは0.7≦b≦2.1、0.001≦c≦1.0、かつ0.8≦b+c≦3.0を、より好ましくは1.0≦b≦2.0、0.01≦c≦1.0、かつ1.5≦b+c≦2.5を満足する正数である。)
【0027】
上記R3としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基中の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、臭素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換した基、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等が挙げられる。R3は、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0028】
(B)成分の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、これらの各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換されたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、式:R33SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R32HSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R32HSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R3HSiOで示されるシロキサン単位と式:R3SiO1.5で示されるシロキサン単位および式:HSiO1.5で示されるシロキサン単位のどちらか一方または両方とからなるオルガノシロキサン共重合体、及び、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。上記式中のR3は、前記と同様である。
【0029】
(B)成分の配合量は、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して本組成物中のケイ素原子結合水素原子の数が、通常、1〜10個、特に好ましくは1〜5個の範囲内となる量である。該配合量が、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して本組成物中のケイ素原子結合水素原子が1個未満となる量であると、得られる組成物は十分に硬化しない場合がある。また、該配合量が、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して本組成物中のケイ素原子結合水素原子が10個を超える量であると、得られるシリコーンゴムの耐熱性が極端に劣ったものとなりやすい。
【0030】
本発明の組成物に含ませる後述する(E)成分もケイ素原子に結合した水素原子を任意的に有することができる。さらに、本発明の組成物には、(B)成分及び(E)成分以外のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを任意成分として配合することができるものである。この場合には、(B)成分、(E)成分並びに該(B)成分及び(E)成分以外のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを合計した全オルガノハイドロジェンポリシロキサンに含まれるSiH基の数が(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して1〜10個、特に1〜5個となることが好ましく、また上記全体のSiH基数に対する(B)成分中のSiH基数のモル比は0.5〜1、特に0.7〜1程度となることが望ましい。(B)成分以外にオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含まない場合には、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の数が1〜10個、好ましくは1〜5個である。
【0031】
[(C)成分]
(C)成分の付加反応触媒としては、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基と(B)成分中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するものであればいかなる触媒を使用してもよい。(C)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。(C)成分としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属や塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物が挙げられるが、特に好ましくは白金化合物である。
【0032】
(C)成分の配合量は、付加反応触媒としての有効量でよく、好ましくは(A)および(B)成分の合計質量に対して触媒金属元素の質量換算で1〜500ppmの範囲であり、より好ましくは10〜100ppmの範囲である。該配合量がこの範囲内にあると、付加反応が十分に促進されやすく、また、硬化が十分となりやすく、更に、該配合量の増加に応じて付加反応の速度が向上しやすいので、経済的にも有利となりやすい。
【0033】
[(D)成分]
必要に応じて任意的に本発明に用いられる(D)成分の微粉末シリカは、補強剤として作用する。即ち、本発明組成物の硬化物に対して高引裂き強度を付与するものである。(D)成分の微粉末シリカを補強剤として使用することにより、優れた引裂き強度特性を有するコーティング膜を形成することができる。(D)成分の微粉末シリカは、比表面積が、通常、50m2/g以上、好ましくは50〜400m2/g、特に好ましくは100〜300m2/gである。該比表面積がこの範囲内にあると、得られる硬化物に優れた引裂き強度特性を付与しやすい。比表面積はBET法により測定される。(D)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0034】
(D)成分の微粉末シリカとしては、比表面積が上記範囲内である限り、従来からシリコーンゴムの補強性充填剤として使用されている公知のものを用いることができ、例えば、煙霧質シリカ、沈降シリカなどが挙げられる。
【0035】
これらの微粉末シリカはそのまま使用してもよいが、本発明組成物に対してより良好な流動性を付与させやすくするため、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のメチルクロロシラン類;ジメチルポリシロキサン;ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のヘキサオルガノジシラザンなどの有機ケイ素化合物で表面疎水化処理することにより、疎水性微粉末シリカとして使用することが好ましい。
【0036】
(D)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して50質量部以下(即ち、0〜50質量部)である。該配合量が50質量部を超えると、組成物の流動性が低下しやすく、コーティング作業性が悪くなりやすい。該配合量は、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは1〜50質量部であり、特に好ましくは5〜40質量部である。該配合量がこの範囲内にあると、本発明組成物の硬化物に対して特に良好な高引裂き強度を付与しやすい。
【0037】
[(E)成分]
(E)成分としては、1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基(例えば、トリアルコキシシリル基、オルガノジアルコキシシリル基、ジオルガノアルコキシシリル基等のアルコキシシリル基などとして)とを有する有機ケイ素化合物であれば、いかなる有機ケイ素化合物でも使用できるが、接着発現性の観点からは、少なくとも1個のエポキシ基と少なくとも2個のケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物、例えば、少なくとも1個のエポキシ基と少なくとも2個のケイ素原子結合アルコキシ基とを有するシラン、またはケイ素原子数が2〜30個、好ましくは4〜20個程度であり、少なくとも1個のエポキシ基と少なくとも2個のケイ素原子結合アルコキシ基とを有する環状もしくは直鎖状のシロキサンであることが好ましい。(E)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0038】
エポキシ基は、例えば、グリシドキシプロピル基等のグリシドキシアルキル基;2,3−エポキシシクロヘキシルエチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基等のエポキシ含有シクロヘキシルアルキル基等の形で、ケイ素原子に結合していることが好ましい。ケイ素原子結合アルコキシ基はケイ素原子と結合して、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基等のアルキルジアルコキシシリル基等を形成していることが好ましい。
【0039】
また、(E)成分は、1分子中にエポキシ基およびケイ素原子結合アルコキシ基以外の官能性基として、例えば、ビニル基等のアルケニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、およびヒドロシリル基(SiH基)からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するものであってもよい。
【0040】
(E)成分の有機ケイ素化合物としては、例えば、下記の化学式で示される有機ケイ素化合物、これらの2種以上の混合物、あるいはこれらの1種もしくは2種以上の部分加水分解縮合物等が挙げられる。
【0041】
【化1】


(式中、nは1〜10の整数、mは0〜100の整数、好ましくは0〜20の整数、pは1〜100の整数、好ましくは1〜20の整数、qは1〜10の整数である。)
【0042】
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部である。該配合量が0.1質量部未満であると、得られる組成物が十分な自己接着性を示さないことがある。該配合量が10質量部を超えると、得られる硬化物の物性が低下しやすい。
【0043】
[(F)成分]
(F)成分は、オキシジルコニウム化合物であり、接着促進のための縮合助触媒として作用するとともに気密性にも大きく影響するものである。(F)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。(F)成分のオキシジルコニウム化合物としては、例えば、下記化学式で表される、分子中に同一又は異種の1価オルガノオキシ基を2個有するオキシジルコニウムや該オルガノオキシ基の一部がオルガノシロキサン残基で置換された化合物などが挙げられる。
ZrO(OR
ZrO(OC(=O)R
ZrO(OC(R)=CHC(=O)R
【0044】
上記式中、Rは、脂肪族不飽和結合を含まない、同一又は異種の非置換もしくは置換の、炭素原子数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10の一価炭化水素基であり、Rは、脂肪族不飽和結合を含まない、同一又は異種の非置換もしくは置換の、炭素原子数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10の一価炭化水素基又はその内部に通常、1〜2個のエーテル性酸素を有していてもよい炭化水素オキシ基である。
【0045】
上記RおよびRで表される炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基が挙げられ、;これらの炭化水素基中の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、臭素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換した基、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
又、Rで表されるその内部にエーテル性酸素を有していてもよい炭化水素オキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基などが挙げられる。Rは、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基である。Rは、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、メトキシ基、エトキシ基である。
およびRは、炭素原子に結合した水素原子の一部が、通常、ケイ素原子数1〜20個、好ましくは2〜10個程度の直鎖状、環状又は分岐状の1価のオルガノポリシロキサン残基で置換されていてもよい。
【0046】
また、−OR4、−OC(=O)R4、−OC(R4)=CHC(=O)R5等で示される1価オルガノオキシ基の一部がシロキサン残基で置換された化合物とは、上記各化学式において、分子中の1個又は2個のR基、OR基、OC(=O)R基又はRの炭素原子に結合した水素原子の一部が、通常、ケイ素原子数1〜20個、好ましくは2〜10個程度の直鎖状、環状又は分岐状のオルガノポリシロキサン構造で置換されたものなどが挙げられる。これら(F)成分の具体例としては実施例で使用した化合物A、Bの他に、下記の化合物等が挙げられる。

【0047】
(F)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜2質量部の範囲である。該配合量が0.1質量部未満であると、得られる組成物の接着性や得られるエアーバッグの気密性が低下しやすい。該配合量が5質量部を超えると、得られる硬化物の耐熱性が低下しやすい。
【0048】
[その他の成分]
本発明の組成物には、前記(A)〜(F)成分以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の任意の成分を配合することができる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのその他の成分は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0049】
・反応制御剤
反応制御剤は、上記(C)成分の付加反応触媒に対して硬化抑制効果を有する化合物であれば特に限定されず、従来から公知のものを用いることもできる。その具体例としては、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物;硫黄含有化合物;アセチレンアルコール類等のアセチレン系化合物;アルケニル基を2個以上含む化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体などが挙げられる。
【0050】
反応制御剤による硬化抑制効果の度合は、その反応制御剤の化学構造によって異なるため、反応制御剤の添加量は、使用する反応制御剤の各々について、最適な量に調整することが好ましい。最適な量の反応制御剤を添加することにより、組成物は室温での長期貯蔵安定性および硬化性に優れたものとなる。
【0051】
・無機充填剤
無機充填剤としては、例えば、結晶性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機充填剤;これらの無機充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面疎水化処理した充填剤;シリコーンゴムパウダー;シリコーンレジンパウダーなどが挙げられる。
【0052】
・その他の成分
その他にも、例えば、1分子中に1個のケイ素原子結合水素原子を含有し他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサン、1分子中に1個のケイ素原子結合アルケニル基を含有し他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサン、ケイ素原子結合水素原子もケイ素原子結合アルケニル基も他の官能性基も含有しない無官能性のオルガノポリシロキサン、有機溶剤、クリープハードニング防止剤、可塑剤、チクソ性付与剤、顔料、染料、防かび剤などを配合することができる。
【0053】
[調製方法]
本発明の液状シリコーンゴムコーティング剤組成物は、上記各成分を常法に準じて混合することにより調製することができる。
【0054】
[エアーバッグ]
このようにして得られる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物は、フロントピラーからルーフサイドに沿って収納され、衝突時や車両の転倒時に頭部の保護や飛び出しを防ぐために一定膨脹時間を維持することが要求されるカーテンエアーバッグを作製するのに好適なものである。
【0055】
本発明において、上記組成物の硬化物からなるシリコーンゴムコーティング層が形成されるエアーバッグ、特にカーテンエアーバッグとしては、公知の構成のものが用いられ、その具体例としては、6,6−ナイロン、6−ナイロン、ポリエステル繊維、アラミド繊維、各種ポリアミド繊維、各種ポリエステル繊維などの各種合成繊維の織布を基布とし、内面がゴムコーティングされた2枚の平織り布の外周部同士を接着剤で張り合わせ、かつその接着剤層を縫い合わせて作製されるタイプ(以後、平織りタイプと略す)のエアーバッグ、前記織生地を基布とし、織りにより袋部を形成した袋織りタイプのエアーバッグが挙げられる。
【0056】
上記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を、繊維布からなる基材の少なくとも一方の表面、特には一方の表面に塗布し、例えば、熱風乾燥炉に入れて加熱して硬化させることにより、該表面にシリコーンゴムコーティング層を形成させることができる。このようにして得たカーテンエアーバッグ用シリコーンゴムコーティング基布を用いて、カーテンエアーバッグを製造することができる。
【0057】
ここで、繊維布からなる基材としては、上述した各種合成繊維の織生地を基布とする基材が挙げられる。また、上記組成物により該基材をコーティングする方法としては、常法を採用することができるが、コーティング層の厚さ(又は表面塗布量)は、好ましくは10〜150g/m2、より好ましくは15〜80g/m2、更により好ましくは20〜60g/m2程度である。
【0058】
本発明のコーティング剤組成物は、公知の硬化条件下で公知の硬化方法により硬化させることができる。具体的には、例えば、120〜180℃において1〜10分、加熱することにより、該組成物を硬化させることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0060】
[実施例1]
<組成物の調製>
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が約30,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン60質量部、ヘキサメチルジシロキサン8質量部、水2質量部、BET法で測定した比表面積が約300m2/gであるヒュームドシリカ(Aerosil(登録商標)300、日本アエロジル社製)40質量部を室温でニーダー中に投入し、1時間混合して、混合物を得た。この混合物を150℃に加熱し、引き続き2時間混合した。この混合物を室温まで冷却し、この混合物に、分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が約30,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン24質量部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、主鎖のジオルガノシロキサン単位中にビニルメチルシロキサン基単位を5モル%含有し、25℃での粘度が約700mPa・sであるジメチルポリシロキサン5質量部を添加し、均一になるまで混合して、ベースコンパウンド(I)を得た。
【0061】
ベースコンパウンド(I)64質量部に、分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、主鎖のジオルガノシロキサン単位中にビニルメチルシロキサン基単位を0.18モル%含有し、25℃での粘度が約30,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン8質量部、分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が約30,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン23質量部、分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が約100,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン35質量部、25℃における粘度が10mPa・sであり、分子鎖側鎖にケイ素原子結合水素原子を有する分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.82質量%)3質量部、1−エチニルシクロヘキサノール0.02質量部、塩化白金酸/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するジメチルポリシロキサン溶液0.25質量部、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン0.14質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.7質量部、下記のオキシジルコニウム化合物A 0.32質量部を混合して、組成物Aを調製した。
【0062】
<気密性試験>
この組成物を、コーターで塗りむらなく均一にコーティング可能な最小量となるように、袋織りエアーバッグ基布にコーティングし(80g/m2)、オーブン中で170℃にて1分間加熱して硬化させて、袋織りエアーバッグを作製した。このエアーバッグを用いて、気密性試験を行った。気密性試験は、エアーバッグを140kPaの圧力で膨張させ、30秒後の残存圧力を測定することにより行い、測定された残存圧力の値により気密性を評価した。結果を表1に示す。
【0063】
<スコットもみ試験>
スコットもみ試験はスコットもみ試験機を使用して行なった。上記の袋織りエアーバッグに対して、押圧力4kgfで300回のもみ試験を行なった後、シリコーンゴムコーティング薄膜の基布からの剥離状態を肉眼で確認した。評価は下記の基準で行なった。結果を表1に示す。
合格:基布からのコーティング膜の剥離がない場合を合格とした。
不合格:基布からのコーティング膜の剥離がある場合を不合格とした。
【0064】
[実施例2]
実施例1においてオキシジルコニウム化合物A 0.32質量部の代わりに、下記のオキシジルコニウム化合物B 0.25質量部を使用した以外は実施例1と同様にして、組成物Bを調製し、気密性試験、スコットもみ試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0065】
[比較例1]
実施例1においてオキシジルコニウム化合物A 0.32質量部の代わりに、下記のジルコニウムテトラアセチルアセトネート化合物C 0.4質量部を使用した以外は実施例1と同様にして、組成物Cを調製し、気密性試験、スコットもみ試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0066】
[比較例2]
実施例1においてオキシジルコニウム化合物A0.32質量部の代わりに、下記のジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)化合物D 0.4質量部を使用した以外は実施例1と同様にして、組成物Dを調製し、気密性試験、スコットもみ試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0067】
化合物A:
【0068】
【化2】


化合物B:
【0069】
【化3】


化合物C:
【0070】
【化4】


化合物D:
【0071】
【化5】

【0072】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 本組成物中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子全体の数が(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個当たり1〜10個となる量、
(C)付加反応触媒: 有効量、
(D)比表面積が50m2/g以上の微粉末シリカ: 0〜50質量部、
(E)1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物: 0.1〜10質量部、
および
(F)オキシジルコニウム化合物: 0.1〜5質量部
を含有してなる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物。
【請求項2】
(B)成分の含有量が、(B)成分中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個当り1〜10個となる量である請求項1に係る組成物。
【請求項3】
カーテンエアーバッグ用である請求項1に係る組成物。
【請求項4】
繊維布からなる基材と、
請求項1または2に記載の組成物の硬化物からなり、該基材の少なくとも一方の表面に形成されたシリコーンゴムコーティング層と
を有するカーテンエアーバッグ。
【請求項5】
繊維布からなる基材の少なくとも一方の表面に請求項1または2に記載の組成物を塗布し、
該組成物を硬化させることにより、該基材の少なくとも一方の表面に、該組成物の硬化物からなるシリコーンゴムコーティング層を形成させる
ことを含む請求項3に記載のカーテンエアーバッグの製造方法。

【公開番号】特開2008−255334(P2008−255334A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41754(P2008−41754)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】