説明

液状材料成形用射出成形機及びその制御方法

【課題】 成形中断に伴う射出シリンダ内における成形材料の硬化を確実に防止するとともに、高価な成形材料の無駄を最少限に抑えて無用なコスト上昇を回避し、かつ資源節減にも寄与する。また、稼働効率の向上及び作業遅延を来す不具合を回避する。
【解決手段】 予め、スクリュ3が所定の待機位置Xsから所定の移動ストロークLsだけ前進して成形材料Rの排出を行う材料置換動作Scを所定のインターバル時間Ti間隔で繰り返す中断時制御モードを設けるとともに、成形中断時に、少なくとも射出シリンダ2に供給された成形材料Rが硬化する手前で射出ノズル4から排出されるように移動ストロークLs及びインターバル時間Tiの長さを設定して中断時制御モードによる制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二種以上の液状材料を射出シリンダに供給し、スクリュにより混合計量して射出成形を行う液状材料成形用射出成形機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液状樹脂材料(主剤)と液状硬化剤を含む二種以上の液状材料を加えた成形材料を射出シリンダに供給し、スクリュにより成形材料を混合計量して射出成形を行う液状材料成形用射出成形機は知られている。
【0003】
ところで、この種の液状材料成形用射出成形機は、主剤と液状硬化剤を含む液状材料(成形材料)により射出成形を行うため、一般的な熱可塑性樹脂を射出成形する場合とは異なる固有の留意点が必要となる。具体的には、熱可塑性樹脂の場合、熱を加えた状態であれば溶融状態を維持するため、射出シリンダ(加熱筒)内に収容した状態であってもある程度の時間は問題なく放置することができる。これに対して、液状材料を混合した成形材料の場合、その種類によっては数十〔分〕も満たない間に硬化してしまう材料もあり、例えば、オペーレータが成形を短時間中断する場合であっても、万が一、中断が伸びた場合には、成形材料が射出シリンダ内で硬化し、その後始末には大変な作業を強いられるとともに、射出成形機の故障や破損を招いてしまう。
【0004】
したがって、成形中断時には、リスクを回避する観点から成形材料を射出シリンダより全て排出する必要があり、この点を考慮した成形機としては、特許文献1に開示される樹脂注入装置が知られている。この樹脂注入装置は、液状主剤樹脂が収容された主剤容器と液状硬化剤が収容された硬化剤容器と、液状主剤樹脂が主剤バルブを介して接続し、液状主剤樹脂と液状硬化剤を混合しながら自動注入する樹脂混合装置と、この樹脂混合装置内の混合剤を運転終了時に主剤バルブを介した主剤容器からの液状主剤樹脂により外部へ排出させて清掃する清掃手段を備えて構成したものである。
【特許文献1】特開平3−39221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した樹脂注入装置をはじめ、二種以上の液状材料を混合した成形材料を射出成形する液状材料成形用射出成形機は次のような問題点があった。
【0006】
第一に、成形の中断時には、その都度、射出シリンダから成形材料を全て排出する必要があるため、中断時間が比較的短い場合には成形材料の無駄を招いてしまう。特に、液状樹脂材料と液状硬化剤を二種以上使用する液状材料は、一般的な熱可塑性樹脂と比較してもかなり高価であり、成形材料に係わる無用なコスト上昇を招くとともに、資源節減の面からも好ましいものではない。
【0007】
第二に、成形の中断は、成形の再開を前提とするため、成形の再開時には、最初から成形材料の供給を行う必要がある。したがって、時間的なロスの発生により稼働効率の低下や作業遅延を来すのみならず、成形品のバラツキにも微妙に影響するなど、成形品の品質確保の観点からも好ましいものではない。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した液状材料成形用射出成形機及びその制御方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液状材料成形用射出成形機Mは、上述した課題を解決するため、液状樹脂材料Aと液状硬化剤Bを含む二種以上の液状材料を加えた成形材料Rを射出シリンダ2に供給し、スクリュ3により成形材料Rを混合計量して射出成形を行う射出成形機であって、スクリュ3が所定の待機位置Xsから所定の移動ストロークLsだけ前進して成形材料Rの排出を行う材料置換動作Scを所定のインターバル時間Ti間隔で繰り返すとともに、少なくとも射出シリンダ2に供給された成形材料Rが硬化する手前で射出ノズル4から排出されるように移動ストロークLs及びインターバル時間Tiの長さを設定した中断時制御モードにより制御を行う制御手段Fcを備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、射出成形機Mには、中断時制御モードが実行中である旨を表示する表示手段Fdを設けることができる。また、移動ストロークLs及び/又はインターバル時間Tiの長さを、成形材料Rの種類に対応して任意に設定可能な制御条件設定手段Fsを設けることができる。さらに、待機位置Xsを、スクリュ3を前進させて成形材料Rを排出した後の排出終了位置又はスクリュ3を回転させて成形材料Rを計量した後の計量終了位置に選択的に設定可能な待機位置設定手段Fpを設けることができる。なお、モード選択手段Fmを設けることにより、射出シリンダ2から成形材料Rを全て排出するパージ制御モードと、中断時制御モードとを選択可能に構成することが望ましい。また、射出成形機Mには、中断時制御モードの実行時に射出ノズル4の前方に遮蔽部材5をセットして射出ノズル4から排出される成形材料Rの飛散を防止し、かつ中断時制御モードの非実行時に遮蔽部材5を射出ノズル4の前方からリリースして当該射出ノズル4の前方を開放する材料飛散防止手段Fxを設けることが望ましい。
【0011】
一方、本発明に係る液状材料成形用射出成形機の制御方法は、上述した課題を解決するため、液状樹脂材料Aと液状硬化剤Bを含む二種以上の液状材料を加えた成形材料Rを射出シリンダ2に供給し、スクリュ3により成形材料Rを混合計量して射出成形を行うに際し、予め、スクリュ3が所定の待機位置Xsから所定の移動ストロークLsだけ前進して成形材料Rの排出を行う材料置換動作Scを所定のインターバル時間Ti間隔で繰り返す中断時制御モードを設けるとともに、成形中断時に、少なくとも射出シリンダ2に供給された成形材料Rが硬化する手前で射出ノズル4から排出されるように移動ストロークLs及びインターバル時間Tiの長さを設定して中断時制御モードによる制御を実行するようにしたことを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、待機位置Xsは、スクリュ3を前進させて成形材料Rを排出した後の排出終了位置に設定することができるとともに、スクリュ3を回転させて成形材料Rを計量した後の計量終了位置に設定することもできる。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係る液状材料成形用射出成形機M及びその制御方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 射出シリンダ2に供給された成形材料Rが硬化する手前で射出ノズル4から排出される中断時制御モードを設けたため、特に、中断時間が比較的短い場合であっても、中断時制御モードの選択により、射出シリンダ2の内部における成形材料Rの硬化を確実に防止できるとともに、成形中断に伴う、高価な成形材料Rの無駄を最少限に抑えることができる。したがって、成形材料Rに係わる無用なコスト上昇を回避できるとともに、資源節減にも寄与できる。
【0015】
(2) 成形を再開する際の射出成形機Mの状態に係わる連続性が担保されるため、中断終了後、直ちに成形動作を再開させることができる。したがって、時間的ロスを排除できるため、稼働効率の向上を図れるとともに、作業遅延を来す不具合も回避できる。しかも、成形品の均質性などにも何ら悪影響を及ぼさないため、良好な成形品質の確保に寄与できる。
【0016】
(3) 好適な態様により、中断時制御モードが実行中である旨を表示する表示手段Fdを設ければ、オペレータは中断時制御モードが実行されていることを確実に確認できるため、成形再開に伴う誤った対応を回避することができる。
【0017】
(4) 好適な態様により、移動ストロークLs及び/又はインターバル時間Tiの長さを成形材料Rの種類に対応して任意に設定可能な制御条件設定手段Fsを設ければ、オペレータは、成形材料Rの無用なコスト上昇を回避し、かつ資源節減を図る観点から最適な設定を行うことができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、待機位置Xsを、スクリュ3を前進させて成形材料Rを排出した後の排出終了位置又はスクリュ3を回転させて成形材料Rを計量した後の計量終了位置に選択的に設定可能な待機位置設定手段Fpを設ければ、オペレータは、成形材料Rの性質や射出成形機Mの状態等に対応した最適な待機位置Xsを選択できる。
【0019】
(6) 好適な態様により、モード選択手段Fmを設けることにより、射出シリンダ2から成形材料Rを全て排出するパージ制御モードと、中断時制御モードとを選択可能にすれば、オペレータは中断時間に対応してより有利なモードを選択することができる。
【0020】
(7) 好適な態様により、中断時制御モードの実行時に射出ノズル4の前方に遮蔽部材5をセットして射出ノズル4から排出される成形材料Rの飛散を防止し、かつ中断時制御モードの非実行時に遮蔽部材5を射出ノズル4の前方からリリースして当該射出ノズル4の前方を開放する材料飛散防止手段Fxを設ければ、特に飛散性の高い液状材料(成形材料R)であっても、中断によるオペレータの不在中に射出ノズル4から排出された成形材料Rが飛散し、他の部位に付着して硬化する不具合を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る液状材料成形用射出成形機Mの構成について、図2及び図3を参照して説明する。
【0023】
図2中、仮想線で示すMは液状材料成形用射出成形機の概略構成であり、機台Mbと、この機台Mb上に設置された射出装置Mi及び型締装置Mcを備える。型締装置Mcは可動型及び固定型から構成する金型11を支持する。一方、射出装置Miは射出シリンダ2を備え、この射出シリンダ2の前端には射出ノズル4(図3)を有するとともに、射出シリンダ2の後部には材料供給部12を接続する。また、射出シリンダ2には、図3に示すスクリュ3を内蔵するとともに、射出シリンダ2の後端側にはスクリュ駆動部13を配設する。スクリュ駆動部13は、少なくとも、回転駆動機構によりスクリュ3を回転させて成形材料Rに対する計量を行うとともに、進退駆動機構によりスクリュ3を前進させて成形材料Rを射出ノズル4から排出(射出)する機能を備える。さらに、機台Mb上にはディスプレイ14を配設する。このディスプレイ14は、タッチパネル式により各種設定を行うことができる設定部15を兼ねている。16は材料貯留部であり、この材料貯留部16は材料供給ライン17を介して材料供給部12に接続する。
【0024】
図3に、材料供給部12及び材料貯留部16の構成(系統)を抽出して示す。材料供給部12は、液状樹脂材料(主剤)Aを供給する供給シリンダ21aと液状硬化剤Bを供給する供給シリンダ21bを備える。各供給シリンダ21a,21bは、内外に貫通する吐出プランジャ22a,22bをそれぞれ備え、各吐出プランジャ22a,22bの外端は連結プレート23に結合する。この連結プレート23には吐出シリンダ(エアシリンダ)24のラム24rを結合する。また、各供給シリンダ21a,21bはそれぞれ吐出口と給入口を備え、各吐出口は、それぞれ吐出ストップ弁26a,26bを介して合流部27に接続する。そして、合流部27は供給圧センサ28と材料シャット弁29の直列回路を介して射出シリンダ2の後部に設けた供給口2iに接続する。他方、材料貯留部16は、主剤Aを貯留する貯留タンク30aと液状硬化剤Bを貯留する貯留タンク30bを備える。各貯留タンク30a,30bには、それぞれ送出ポンプ31a,31bを付設し、各送出ポンプ31a,31bは給入ストップ弁32a,32bを介して供給シリンダ21a,21bの給入口にそれぞれ接続する。したがって、送出ポンプ31a,31bと給入ストップ弁32a,32bを接続するラインは、上述した材料供給ライン17を構成する。
【0025】
このような構成(系統)により、主剤Aは貯留タンク30aから送出ポンプ31aにより供給シリンダ21aに送られるとともに、液状硬化剤Bは貯留タンク30bから送出ポンプ31bにより供給シリンダ21bに送られる。また、供給シリンダ21aの主剤A及び供給シリンダ21bの液状硬化剤Bは、吐出シリンダ24により合流部27に送られる。したがって、主剤Aと液状硬化剤Bは、合流部27により合流し、射出シリンダ2の供給口2iから成形材料Rとして射出シリンダ2の内部に供給される。射出シリンダ2の内部ではスクリュ3の回転により成形材料Rが混合計量されるとともに、スクリュ3の前進により成形材料Rが射出ノズル4から射出(排出)される。
【0026】
一方、射出成形機Mには、図2に示す成形機コントローラ41を内蔵する。成形機コントローラ41は、各種制御処理及び演算処理等を実行するCPUや各種データを記憶可能なメモリ等を内蔵するコンピュータ機能を有するコントローラ本体42を備える。成形機コントローラ41は、射出成形機Mにおける全体の制御を司るとともに、後述する本実施形態に係る制御方法における中断時制御モードを実現する制御プログラム43を格納することにより制御手段Fcを構成する。この成形機コントローラ41には、中断時制御モードに関連して成形材料Rの種類毎の硬化時間を含むデータベース44及びタイマ機能部45が付属する。また、コントローラ本体42には、中断時制御モードが実行中である旨を表示するアラームランプ46(表示手段Fd)を接続するとともに、上述したスクリュ駆動部13及びディスプレイ14を接続する。ディスプレイ14には、設定部15が設定画面により表示され、この設定部15には、射出シリンダ2から成形材料Rを全て排出するパージ制御モードと、中断時制御モードとを選択するモード選択部47(モード選択手段Fm)を有するとともに、各種条件設定を行う条件設定部48を有する。この条件設定部48には、移動ストロークLs及びインターバル時間Tiの長さを成形材料Rの種類に対応して任意に設定可能な制御条件設定部481(制御条件設定手段Fs)が含まれるとともに、待機位置Xsを、スクリュ3を前進させて成形材料Rを排出した後の排出終了位置又はスクリュ3を回転させて成形材料Rを計量した後の計量終了位置に選択的に設定可能な待機位置設定部482(待機位置設定手段Fp)が含まれる。
【0027】
次に、本実施形態に係る液状材料成形用射出成形機の制御方法について、図2〜図5を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0028】
まず、予め、成形機コントローラ41には中断時制御モードを設ける。中断時制御モードは、成形を中断する際に使用するモードであり、基本的には、スクリュ3が所定の待機位置Xsから所定の移動ストロークLsだけ前進して成形材料Rの排出を行う材料置換動作Scを所定のインターバル時間Ti間隔で繰り返す制御を行う。したがって、移動ストロークLsとインターバル時間Tiの長さを設定すれば、少なくとも射出シリンダ2に供給された成形材料Rが硬化する手前で射出ノズル4から排出させることができる。
【0029】
例えば、エポキシ樹脂の場合、硬化時間は概ね30〔分〕となるため、射出シリンダ2内の容積が500〔cc〕であれば、移動ストロークLsを50〔cc〕(容積で設定)に、インターバル時間Tiを2.5〔分〕にそれぞれ設定することにより、射出シリンダ2に供給された成形材料Rを25〔分〕で射出ノズル4から排出させることができる。したがって、成形材料Rが硬化する手前で射出ノズル4から排出される条件を満たすことになる。また、液状シリコンゴム(LSR)の場合、硬化時間は50〔時間〕以上となるため、射出シリンダ2内の容積が500〔cc〕であれば、移動ストロークLsを10〔cc〕(容積で設定)に、インターバル時間Tiを1〔時間〕にそれぞれ設定することにより、射出シリンダ2に供給された成形材料Rを50〔時間〕で射出ノズル4から排出させることができる。したがって、成形材料Rが硬化する手前で射出ノズル4から排出される条件を満たすことになる。このような情報は、予めデータベース44に登録するため、成形材料Rの種類を選択するのみで最適な移動ストロークLsとインターバル時間Tiの長さを容易に設定できる。
【0030】
次に、成形中断時における中断時制御モードの制御について説明する。今、オペレータが、手動モードにより成形を行っている際に、成形を中断しなければならない事由が発生した場合を想定する。なお、手動モードとは、オペレータの操作により一回のショット(成形)が行われるモードである。
【0031】
最初に、オペレータは、ディスプレイ14に設定部15を設定画面により表示する。設定部15にはモード選択部47を有するため、所定の選択キーにより中断時制御モードを選択する(ステップS1)。この場合、モード選択部47には、少なくともパージ制御モードと中断時制御モードが選択可能に表示される。パージ制御モードは運転終了時に実行するモードであり、射出シリンダ2から成形材料Rを全て排出する。成形を中断する場合、常に中断時制御モードを選択する必要はなく、成形材料Rの硬化時間が短く、かつ中断時間が長くなる場合、パージ制御モードを実行したほうが材料消費の面で有利になるため、この場合には、パージ制御モードを選択すればよい。このように、パージ制御モードと、中断時制御モードとを選択可能にすれば、オペレータは中断時間に対応して、より有利なモードを選択することができる。
【0032】
次いで、設定部15に有する条件設定部48により各種の条件設定を行う。まず、制御条件設定部481(制御条件設定手段Fs)により、移動ストロークLsとインターバル時間Tiの長さを成形材料Rの種類に対応して設定する(ステップS2)。この場合、移動ストロークLsとインターバル時間Tiは、予め、成形材料Rの種類毎にデータベース44として登録されているため、設定時には、成形材料Rを選択すれば自動で設定される。もちろんオペレータが任意の数値を設定できるように構成してもよい。このように、移動ストロークLsとインターバル時間Tiの長さを成形材料Rの種類に対応して任意に設定可能な制御条件設定部481を設ければ、オペレータは、成形材料Rの無用なコスト上昇を回避し、かつ資源節減を図る観点から最適な設定を行うことができる。
【0033】
次いで、待機位置設定部482(待機位置設定手段Fp)により、待機位置Xsを設定する(ステップS3)。待機位置Xsは二つの態様から選択することができる。即ち、スクリュ3を前進させて成形材料Rを排出した後の排出終了位置を待機位置Xsとして設定する図4に示す態様と、スクリュ3を回転させて成形材料Rを計量した後の計量終了位置を待機位置Xsとして設定する図5に示す態様を選択できる。したがって、オペレータは、成形材料Rの性質や射出成形機Mの状態等に対応した最適な待機位置Xsを選択できる。図1のフローチャートは、図4に示す排出終了位置を待機位置Xsに選択した場合を示している。
【0034】
そして、以上の設定が終了したならモード開始キーをONにする(ステップS4)。なお、手動モードによる成形中、モード開始キーをONにする直前のスクリュ3は、図4に示す計量終了位置Xhにある。モード開始キーのONによりスクリュ3は、計量終了位置Xhから前進する(ステップS5)。そして、移動ストロークLsだけ前進したならスクリュ3は停止して待機状態Siとなる(ステップS6,S7)。この際、スクリュ3の前進中は、射出ノズル4から成形材料Rが排出される。したがって、移動ストロークLs分の前進が材料置換動作Scとなり、前進終了位置、即ち、排出終了位置が待機位置Xsとなる。なお、スクリュ3の前進速度には、射出速度よりも低速となるパージ速度(例えば、13〜15〔mm/s〕程度)を設定することが望ましい。
【0035】
また、スクリュ3が排出終了位置(待機位置Xs)に停止したなら直ちにタイマ機能部45による計時が行われる(ステップS7)。そして、インターバル時間Tiが経過すれば、スクリュ3は、再度、待機位置Xsから前進し、次の待機位置Xsにおいて待機状態Siとなる中断時制御モードに基づく制御が繰返される(ステップSS9,S5〜S9)。この際、スクリュ3の待機位置Xsが、予め設定された前進限位置Xeまで前進した場合には、インターバル時間Tiの経過後、計量動作に移行する(ステップS10,S11)。したがって、計量動作によりスクリュ3が後退し、計量終了位置Xhに達したなら計量動作を終了させるとともに、直ちにスクリュ3を前進させ、材料置換動作Scを行う中断時制御モードに基づく制御が繰返される(ステップS12,S5…)。
【0036】
さらに、中断時制御モードの実行中は、アラームランプ46が点灯し、中断時制御モードが実行中である旨が表示される。この場合、アラームランプ46を点灯させる態様は、中断時制御モードの期間中、単純な点灯を継続する態様であってもよいし、材料置換動作Scと待機状態Siの一方を点滅させ、他方を点灯させるなどの点灯態様であってもよい。また、アラームランプ46は別途のランプを配設してもよいし、ディスプレイ14に表示させてもよい。このような表示手段Fdを設けることにより、オペレータは、中断時制御モードが実行されていることを確実に確認できるため、成形再開に伴う誤った対応を回避することができる。そして、中断時制御モードの実行中に、モード終了キーがONされた場合には、中断時制御モードが解除される(ステップS8)。
【0037】
以上は、図4に示す排出終了位置を待機位置Xsに設定(選択)した場合の制御となるが、図5に示す計量終了位置Xhを待機位置Xsに選択した場合の制御は次のようになる。まず、モード開始キーのONにより、計量終了位置Xhにあるスクリュ3が前進する。スクリュ3が移動ストロークLsだけ前進したなら、スクリュ3が停止するとともに、直ちに計量動作が行われる。そして、計量動作によりスクリュ3が後退し、計量終了位置Xhに達したなら計量が終了するとともに、計量終了位置Xh(待機位置Xs)に停止して待機状態Siとなる。この後、インターバル時間Tiが経過すれば、待機位置Xsから前進する中断時制御モードに基づく制御が繰返される。なお、図5において、図4と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にした。
【0038】
ところで、本実施形態に係る液状材料成形用射出成形機Mは、図6及び図7に示す材料飛散防止機構51(材料飛散防止手段Fx)を備えている。材料飛散防止機構51は、機台Mb上に設置した主支持部52及びこの主支持部52に取付けた補助支持部53を備え、この補助支持部53によりエアシリンダ54及び一対のリニアガイド55,56を支持する。なお、リニアガイド55,56はエアシリンダ54の両側にそれぞれ配される。リニアガイド55,56にはスライドシャフト55s,56sがスライド自在に支持されるため、スライドシャフト55s,56sの先端及びエアシリンダ54のラムロッド54rに、矩形のプレート材を用いた遮蔽部材5の裏面を取付ける。このように構成する材料飛散防止機構51は、中断時制御モードの実行時に遮蔽部材5を射出ノズル4の前方にセットして射出ノズル4から排出される成形材料Rの飛散を防止し、かつ中断時制御モードの非実行時に遮蔽部材5を射出ノズル4の前方からリリースして当該射出ノズル4の前方を開放する機能を有している。図中、仮想線で示すXuがラムロッド54rの前進により射出ノズル4の前方、即ち、射出ノズル4の先端と型締装置Mc側の固定盤11c(ロケート孔)間にセットされた遮蔽部材5の位置となるとともに、実線で示すXrがラムロッド54rの後退により射出ノズル4の前方からリリースされた遮蔽部材5の位置となる。。
【0039】
したがって、このような材料飛散防止手段Fx(材料飛散防止機構51)を設ければ、特に飛散性の高い液状材料(成形材料R)であっても、中断によるオペレータの不在中に射出ノズル4から排出された成形材料Rが飛散し、他の部位に付着して硬化する不具合を回避できる。なお、61は排出された成形材料Rを回収するボックス状の回収容器であり、ステー部材62により支持されることにより、射出ノズル4の前方にセットされた遮蔽部材5の下方に配される。この場合、回収容器61を支持皿とし、この支持皿に別途の回収容器を載置してもよい。
【0040】
よって、このような本実施形態に係る液状材料成形用射出成形機M及びその制御方法によれば、射出シリンダ2に供給された成形材料Rが硬化する手前で射出ノズル4から排出される中断時制御モードを設けたため、特に、中断時間が比較的短い場合であっても、中断時制御モードの選択により、射出シリンダ2の内部における成形材料Rの硬化を確実に防止できるとともに、成形中断に伴う、高価な成形材料Rの無駄を最少限に抑えることができる。したがって、成形材料Rに係わる無用なコスト上昇を回避できるとともに、資源節減にも寄与できる。また、成形を再開する際の射出成形機Mの状態に係わる連続性が担保されるため、中断終了後、直ちに成形動作を再開させることができる。したがって、時間的ロスを排除できるため、稼働効率の向上を図れるとともに、作業遅延を来す不具合も回避できる。しかも、成形品の均質性などにも何ら悪影響を及ぼさないため、良好な成形品質の確保に寄与できる。
【0041】
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値.手法(手順)等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、成形材料Rは、液状樹脂材料(主剤)Aと液状硬化剤Bの二種混合の場合を示したが、三種以上の液状材料を加えた成形材料Rであってもよい。また、例示は移動ストロークLsとインターバル時間Tiの双方の長さを設定する場合について説明したが、一方を固定し、他方のみを設定(変更)できるようにしてもよい。さらに、移動ストロークLsは容積で示したが、距離(長さ)により示してもよく、容積から距離(長さ)へは容易に置換することができる。なお、射出シリンダ2に供給された成形材料Rが硬化する手前で射出ノズル4から排出されることが条件となるが、この場合の硬化する手前は、硬化する直前が成形材料Rを節約する観点から最も大きい効果を得ることができるが、成形材料Rの性質等を考慮し、硬化する直前のタイミングに対して任意に調整したタイミングを設定できる。本発明に係る液状材料成形用射出成形機Mには、各種タイプの射出成形機Mを適用できる。例えば、トグル式型締装置を備える射出成形機Mであってもよいし、直圧式型締装置を備える射出成形機Mであってもよい。また、電動式の射出成形機Mであってもよいし、油圧式の射出成形機Mであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る液状材料成形用射出成形機の制御方法の処理手順を示すフローチャート、
【図2】同液状材料成形用射出成形機に備える成形機コントローラを明示する全体の構成図、
【図3】同液状材料成形用射出成形機における材料供給部及び材料貯留部を抽出して示す系統図、
【図4】同液状材料成形用射出成形機の制御方法を実施する際における待機位置を排出終了位置に設定した場合の動作説明図、
【図5】同液状材料成形用射出成形機の制御方法を実施する際における待機位置を計量終了位置に設定した場合の動作説明図、
【図6】同液状材料成形用射出成形機に備える材料飛散防止機構の平面構成図、
【図7】同材料飛散防止機構の型締装置側からの見た正面構成図、
【符号の説明】
【0043】
2:射出シリンダ,3:スクリュ,4:射出ノズル,5:遮蔽部材,M:液状材料成形用射出成形機,A:液状樹脂材料,B:液状硬化剤,R:成形材料,Xs:待機位置,Ls:移動ストローク,Ti:インターバル時間,Fc:制御手段,Fd:表示手段,Fs:制御条件設定手段,Fp:待機位置設定手段,Fx:材料飛散防止手段,Fm:モード選択手段,Sc:材料置換動作

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状樹脂材料と液状硬化剤を含む二種以上の液状材料を加えた成形材料を射出シリンダに供給し、スクリュにより前記成形材料を混合計量して射出成形を行う液状材料成形用射出成形機であって、前記スクリュが所定の待機位置から所定の移動ストロークだけ前進して前記成形材料の排出を行う材料置換動作を所定のインターバル時間間隔で繰り返すとともに、少なくとも前記射出シリンダに供給された前記成形材料が硬化する手前で射出ノズルから排出されるように前記移動ストローク及び前記インターバル時間の長さを設定した中断時制御モードにより制御を行う制御手段を備えることを特徴とする液状材料成形用射出成形機。
【請求項2】
前記中断時制御モードが実行中である旨を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1記載の液状材料成形用射出成形機。
【請求項3】
前記移動ストローク及び/又は前記インターバル時間の長さを、前記成形材料の種類に対応して任意に設定可能な制御条件設定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の液状材料成形用射出成形機。
【請求項4】
前記待機位置を、前記スクリュを前進させて前記成形材料を排出した後の排出終了位置又は前記スクリュを回転させて前記成形材料を計量した後の計量終了位置に選択的に設定可能な待機位置設定手段を備えることを特徴とする請求項1,2又は3記載の液状材料成形用射出成形機。
【請求項5】
前記射出シリンダから成形材料を全て排出するパージ制御モードと、前記中断時制御モードとを選択可能なモード選択手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液状材料成形用射出成形機。
【請求項6】
前記中断時制御モードの実行時に前記射出ノズルの前方に遮蔽部材をセットして前記射出ノズルから排出される成形材料の飛散を防止し、かつ前記中断時制御モードの非実行時に前記遮蔽部材を前記射出ノズルの前方からリリースして当該射出ノズルの前方を開放する材料飛散防止手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液状材料成形用射出成形機。
【請求項7】
液状樹脂材料と液状硬化剤を含む二種以上の液状材料を加えた成形材料を射出シリンダに供給し、スクリュにより前記成形材料を混合計量して射出成形を行う液状材料成形用射出成形機の制御方法において、予め、前記スクリュが所定の待機位置から所定の移動ストロークだけ前進して前記成形材料の排出を行う材料置換動作を所定のインターバル時間間隔で繰り返す中断時制御モードを設けるとともに、成形中断時に、少なくとも前記射出シリンダに供給された成形材料が硬化する手前で射出ノズルから排出されるように前記移動ストローク及び前記インターバル時間の長さを設定して前記中断時制御モードによる制御を実行することを特徴とする液状材料成形用射出成形機の制御方法。
【請求項8】
前記待機位置は、前記スクリュを前進させて前記成形材料を排出した後の排出終了位置に設定することを特徴とする請求項7記載の液状材料成形用射出成形機の制御方法。
【請求項9】
前記待機位置は、前記スクリュを回転させて前記成形材料を計量した後の計量終了位置に設定することを特徴とする請求項7記載の液状材料成形用射出成形機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−111007(P2010−111007A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285421(P2008−285421)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000227054)日精樹脂工業株式会社 (293)
【Fターム(参考)】