液状樹脂供給機構、及び当該液状樹脂供給機構が備わった圧縮成形装置
【課題】 糸引き樹脂を適切に処理することによって、高い再現性で一定量の液状樹脂の金型への供給が可能となる新規な液状樹脂供給機構を提供する。
【解決手段】 液状樹脂供給機構1は、ゲートバルブ5が内蔵されたノズル2から液状樹脂200を下方側に向けて吐出し金型の一方の型に液状樹脂200を供給するものであって、ノズル2の外周には下方側のノズル先端に向けてエアを吹き出す外周エア吹き出し口3が配されており、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5を開いて液状樹脂200を吐出し、そして、液状樹脂200の吐出を終了する際にはゲートバルブ5を閉じるとともに、外周エア吹き出し口3から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度のエアを吹き出す制御を行なう。
【解決手段】 液状樹脂供給機構1は、ゲートバルブ5が内蔵されたノズル2から液状樹脂200を下方側に向けて吐出し金型の一方の型に液状樹脂200を供給するものであって、ノズル2の外周には下方側のノズル先端に向けてエアを吹き出す外周エア吹き出し口3が配されており、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5を開いて液状樹脂200を吐出し、そして、液状樹脂200の吐出を終了する際にはゲートバルブ5を閉じるとともに、外周エア吹き出し口3から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度のエアを吹き出す制御を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置の液状樹脂供給機構と、当該液状樹脂供給機構が備わった圧縮成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金型を用いた樹脂成形としては、射出成形、圧縮成形、ブロー成形等が挙げられる。これらの樹脂成形のうち、射出成形は、閉じた金型を用いて、ノズルから射出された液状樹脂を金型内のスプル、ランナ、ゲートを通じてキャビティに充填し加熱や冷却によって反応固化させて成形する方式である。圧縮成形は、ノズルから液状樹脂を開いた金型の一方の型に向けて定量吐出し金型を閉じて圧縮し金型内でなじませながら加熱や冷却によって反応固化させて成形する方式である。ブロー成形は、金型にセットされた樹脂内に空気を吹き込んで膨らませ反応固化させて成形する方式である。
【0003】
射出成形と圧縮成形は、複雑な内部形状の金型を用いることができ、寸法精度の高い成形部品を製造するのに適している。このうち射出成形は、短時間で大量生産することが可能であるが、スプル、ランナ、ゲートといった余分な材料が出来てしまうことから、その分を回収してリユースするとしても樹脂材料の消費量が大きくなる。他方、圧縮成形は、射出成形と比較して金型の開閉等に時間を要するが、余分な材料となるスプル、ランナ、ゲートが不要であることから、樹脂材料の消費量を極力抑えることができる。
【0004】
射出成形や圧縮成形に用いられる樹脂材料には、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とがある。熱硬化性樹脂とは、加熱すると重合反応し高分子の網目構造を形成して硬化し(固化し)、一旦硬化した後は、加熱しても液状にはならない樹脂のことであり、その使用に際しては、流動性を有するレベルの比較的低分子の液状樹脂を室温で金型内に送液し、金型によって所定の形状とし、その後加熱して硬化させる。 熱可塑性樹脂とは、ガラス転移温度または融点まで加熱することによって軟らかくなって、目的の形に成形できる樹脂のことであり、高温で流動性を有する液状樹脂を高温で金型内に送液し、金型によって所定の形状とし、その後冷却して硬化(固化)させる。
【0005】
熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂は、液状態としてもある程度の粘度を有している。射出成形や圧縮成形では、液状樹脂はノズルから吐出されるが、吐出弁(ゲートバルブ)を閉じても、ノズル先端と下金型に供給された樹脂との間で糸引きが発生し、吐出を終了するのに時間を要する。例えば、その糸引きが、ノズルを金型外部に待避させる間も続けば、下金型のパーティング面(金型同士の合わせ面)に樹脂が付着し、金型の汚損、金型同士が完全に閉じない、型を閉じたときの金型同士の平行度の狂い、等様々な問題を引き起こす。そこで、製造現場では、この糸引きした樹脂をへら、布、スポンジ等で拭き取るなどして除去することがある。
【0006】
ノズルの先端での樹脂の糸引き対策としては、へら、布、スポンジ等で拭き取るか、圧縮エアを吹き付けて糸引きした樹脂を寸断することが考えられる。ここで、既知の特許文献に開示されている方法としては、例えば特許文献1がある。 特許文献1には、容器のキャップやチューブヘッド等の成形において、熱可塑性樹脂を環状に押し出し、次いでこの環状樹脂を押し出しノズルの開口横断面積を徐々に減少させ、かつ、ガスノズルからのガス流によって、押し出しノズルから一塊で分離させ落下させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭64−7850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、熱可塑性樹脂を環状に押し出して、押し出しノズルから一塊で分離させ落下させることから、相当に高い粘度の樹脂を用いており、本願が課題としているノズルの先端で糸引きする現象が生じるような粘度の液状樹脂よりもかなり高い粘度の樹脂を用いている。また、特許文献1記載の方法は、高粘度の樹脂を環状に押し出す方式であるから、容器のキャップやチューブヘッド等の中空の成形品に限定的に適用される方法である。そして、特許文献1記載のような、高粘度の樹脂を環状に押し出して、押し出しノズルから一塊で分離させ落下させる方法では、樹脂の供給量を少なくすることが困難であり、少量で正確な樹脂量を金型内に供給することや複雑な内部形状の金型にて小型の成形品を製造することができない。
【0009】
本願における糸引き現象とは、例えば、粘性油や水飴等に見られる糸引き現象とある種共通しており、このような粘度の液状樹脂をノズルから吐出すると、ゲートバルブを閉じても、ノズル先端と下金型に供給された樹脂との間で糸引きが発生し、ノズル先端には糸引きした樹脂が残り、吐出を終了するのに時間を要する。このノズルの先端での樹脂の糸引き対策としては、へら、布、スポンジ等で拭き取るか、圧縮エアを吹き付けて糸引きした樹脂を寸断することが考えられるが、このような方法では、まだ下金型に供給された樹脂の量がばらつく問題を解決できない。近年、高精度の樹脂成形品を製造する上で、この糸引き樹脂が製造ばらつきの一因となることがわかってきた。つまり、上記の糸引きした樹脂を除去することで、金型への樹脂供給量が低下するなど不安定な状態となり、成形部品の重量ばらつきの要因となる。その一方で、上記の糸引きした樹脂がノズル先端から落下するまで待っていると、吐出を終了するのに長い時間を要し、外気の影響を受けて、成形部品の外観ばらつきや品質劣化の要因ともなり得る。例えば、樹脂製レンズ等の精密部品では、高精度で同一寸法の部品を再現性よく製造しなければならず、高い再現性で一定量の液状樹脂の金型への供給が望まれているが、いまだ効果的な改善方法がないのが実情である。
【0010】
そこで本発明の目的は、ノズルから液状樹脂を下方側に向けて吐出することで、開いた金型の一方の型に樹脂を供給する方式の液状樹脂供給機構において、糸引き樹脂を適切に処理することによって、高い再現性で一定量の液状樹脂の金型への供給が可能となる新規な液状樹脂供給機構、並びに、当該液状樹脂供給機構が備わった圧縮成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液状樹脂供給機構は、制御回路によって制御され、ゲートバルブが内蔵されたノズルから液状樹脂を下方側に向けて吐出し金型の一方の型に液状樹脂を供給する液状樹脂供給機構であって、前記ノズルの外側には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の外周エアを下方側のノズル先端方向に吹き出す外周エア吹き出し口が配されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、前記ノズルの外側には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の外周エアを下方側のノズル先端方向に吹き出す外周エア吹き出し口が配されているので、前記エアを吹き出すことによって、吐出した液状樹脂の液状態を維持させつつ、前記ノズル先端から糸引きした液状樹脂を切り離して下方側に落下させることができる。
【0013】
本発明の液状樹脂供給機構は、制御回路によって制御され、ゲートバルブが内蔵されたノズルから液状樹脂を下方側に向けて吐出し金型の一方の型に液状樹脂を供給する液状樹脂供給機構であって、前記ゲートバルブの軸心には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の軸心エアをその先端から下方側に吹き出す軸心エア吹き出し孔が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、前記ゲートバルブの軸心には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の軸心エアをその先端から下方側に吹き出す軸心エア吹き出し孔が形成されているので、前記エアを吹き出すことによって、吐出した液状樹脂の液状態を維持させつつ、前記ノズル先端から糸引きした液状樹脂を切り離して下方側に落下させることができる。
【0015】
つまり、これら本発明は、前記エアを吹き出すことによって、吐出した液状樹脂の液状態を維持させつつ、前記ノズル先端から糸引きした液状樹脂を切り離して下方側に落下させることを特徴とする。
【0016】
本発明は、前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、当該熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるように前記エア温度が設定されているか、又は、前記樹脂が熱硬化性樹脂であり、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満となるように前記エア温度が設定されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、前記糸引き樹脂を液状態のまま落下させるとともに、既に前記金型の一方の型に吐出された樹脂を前記エアで固化させることを未然に防止し、既に前記金型の一方の型に吐出された樹脂と前記糸引き樹脂とを互いに液状態のまま同化させるので製品品質がより安定する。前記エア温度は、前記ノズルから吐出されるときの液状樹脂の温度と、周囲環境の温度とを考慮して適正な温度に設定され、前記液状樹脂の燃焼温度よりも低い温度に設定される。前記エアのうち前記外周エアと前記軸心エアとは、それらのエア温度を異ならせてもよく、それらのエア温度を同じ温度としてもよい。
【0018】
前記エアとしては、空気、乾燥空気、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスが挙げられる。前記樹脂が一般的な熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の場合には、空気や乾燥空気が適用でき、工場配管から簡易に利用できる。前記樹脂が酸化し易い材料の場合には、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを用いることで、前記樹脂の酸化を抑制することができる。前記エアのうち前記外周エアと前記軸心エアとは、それらのエア成分を異ならせてもよく、それらのエア成分を同じ成分としてもよい。
【0019】
本発明は、前記エア吹き出し口が前記ノズルの外周に配された外筒形状であり、前記ノズル及び前記エア吹き出し口がそれぞれ先細り形状となっていることを特徴とする。
【0020】
本実施形態によれば、前記エア吹き出し口を前記ノズルの外周に配された外筒形状とすることで、前記ノズル先端部の全周に亘り、前記エアが吹き出されるので、前記ノズル先端で糸引きした液状樹脂を、前記ノズルからの液状樹脂の吐出方向に確実に落下させることとなる。そして、前記ノズル及び前記エア吹き出し口がそれぞれ先細り形状となっていることで、前記ノズル先端部の先細り形状にならって前記エアが吹き付けられて前記糸引き樹脂を細くする効果がある。
【0021】
本発明は、前記ノズル先端の吐出面(出口)の形状と前記エア吹き出し口先端の吹き出し面(出口)の形状が、それぞれ対応している形状で同心形状となっていることが好ましい。前記液状樹脂を偏りなく吐出し、前記ゲートバルブを閉じて前記エアを吹き出すことで、前記ノズル先端から糸引きした液状樹脂を偏りなく細くし切り離して下方側に落下させる。前記同心形状としては、例えば、前記ノズル先端の吐出面が円形状で、かつ、前記エア吹き出し口先端の吹き出し面が円環形状となっている構成や、また例えば、前記ノズル先端の吐出面が惰円形状で、かつ、前記エア吹き出し口先端の吹き出し面が惰円環形状となっている構成などが挙げられる。
【0022】
本発明は、前記ゲートバルブの先端が尖っており、液状樹脂の吐出を終了する際には前記ゲートバルブの先端が前記ノズルの先端から突き出ることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、液状樹脂の吐出を終了する際に前記ゲートバルブの尖った先端が前記ノズルの先端から突き出ることで、前記糸引き樹脂の始点の横断面積を極力小さくでき、前記ゲートバルブの尖った先端形状に向かって前記エアが吹き付けられるので、前記ゲートバルブ先端で糸引きした液状樹脂の根元に確実に当たり、前記糸引き樹脂の横断面積の最も小さい始点から落下させることとなる。さらには、前記ゲートバルブが前記ノズルの中への後退と前記ノズルの先端からの突出を繰り返し、その尖った先端形状の表面に倣って液状樹脂が毎回吐出されるので、万一、前記ゲートバルブ先端に樹脂が僅かにでも付着するようなことがあったとしても、液状樹脂の吐出の度、前記ゲートバルブの先端が清浄化(洗浄)されることとなる。前記ゲートバルブの軸心に形成したエア吹き出し孔は、細くなった糸引き樹脂の始点を切り離すためのものであり、前記エア吹き出し孔の内径は小さい孔径で十分であり、この孔径を小さくすることで液状樹脂の孔内への逆流を防止できるのでより好ましい。
【0024】
本発明の液状樹脂供給機構は、樹脂成形装置に適用され、特に、圧縮成形機に用いられる樹脂成形装置に適用される。ここで、樹脂供給装置は、樹脂を可塑化溶融または混合冷却などを行うとともに、そうした樹脂を所定量供給できる装置であればその構成は問わない。例えば、スクリュの回転のみで樹脂の可塑化と所定量の押し出しを行う押出式、その押し出された溶融樹脂を別装置に計量しながら貯留したあと進退部材で押し出すプリプラ式、または、スクリュの回転で可塑化するとともにそのスクリュを後退させて計量したのちスクリュを前進させて押し出すインラインスクリュ式、などが挙げられる。ちなみに、プリプラ式樹脂供給装置は、計量の精度および供給量の再現性が高いことが特徴とされる。本発明の液状樹脂供給機構をプリプラ式樹脂供給装置に適用することで、さらに高い再現性で一定量の樹脂の金型装置への供給を可能とする。本発明が適用される樹脂供給装置は、樹脂を下金型に供給する際に、下金型に対して水平に前後左右あるいは垂直に上下に移動しながら、連続的にまたは間欠的に、下金型の所定位置に自在に樹脂を供給するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の液状樹脂供給機構によれば、液状樹脂の液状態を維持する所定温度のエアを吹き出すことで、前記ノズル先端から糸引きした液状樹脂を切り離して前記金型の一方の型に落下させることができる。本発明によれば、前記樹脂が熱可塑性樹脂である場合には当該熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるように前記エア温度が設定されており、前記樹脂が熱硬化性樹脂である場合には当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満となるように前記エア温度が設定されているので、前記糸引き樹脂を液状態のまま落下させるとともに、既に前記金型の一方の型に吐出された樹脂を前記エアで固化させることを未然に防止し、既に前記金型の一方の型に吐出された樹脂と前記糸引き樹脂とを互いに液状態のまま同化させるので製品の品質がより安定する。また、前記ノズルの外周に配された外筒形状のエア吹き出し口とすることで前記ノズル先端部の全周に亘り、前記ノズル先端部の先細り形状にならって前記エアが吹き付けられるので、前記ノズル先端で糸引きした液状樹脂を、前記ノズルからの液状樹脂の吐出方向に確実に落下させることとなる。そして、液状樹脂の吐出を終了する際に前記ゲートバルブの尖った先端が前記ノズルの先端から突き出ることで、前記糸引き樹脂の始点の横断面積を極力小さくでき、前記ゲートバルブの尖った先端形状に向かって前記エアが吹き付けられるので、前記ゲートバルブ先端で糸引きした液状樹脂の根元に確実に当たり、前記糸引き樹脂の横断面積の最も小さい始点から落下させることとなる。
【0026】
また、本発明によれば、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の軸心エアをその先端から下方側に吹き出す軸心エア吹き出し孔が前記ゲートバルブの軸心に形成されている構成とすることで、細くなった糸引き樹脂の始点をより確実に切り離すこととなる。そして、前記ゲートバルブが前記ノズルの中への後退と前記ノズルの先端からの突出を繰り返し、その尖った先端形状の表面に倣って液状樹脂が毎回吐出されるので、万一、前記ゲートバルブ先端に樹脂が僅かにでも付着するようなことがあったとしても、液状樹脂の吐出の度、前記ゲートバルブの先端が清浄化(洗浄)されることとなる。したがって、これら本発明によって、糸引き樹脂を適切に処理し、高い再現性で一定量の液状樹脂の金型への供給が可能となる新規な液状樹脂供給機構が備わった圧縮成形装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す構造図であり、(a)は側面図であり、(b)は底面図である。
【図2】上記実施形態のノズルを側面側から見た断面図である。
【図3】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、当該ノズルを前進させた状態の図である。
【図4】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、ゲートバルブを開いて当該ノズルから液状樹脂を吐出した状態の図である。
【図5】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、ゲートバルブを閉じてエア吹き出しを開始した状態の図である。
【図6】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、エア吹き出しを修了した状態の図である。
【図7】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、当該ノズルを退避させた状態の図である。
【図8】上記実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す構造図の他の例であり、(a)は側面図であり、(b)は底面図である。
【図9】本発明の実施形態の液状樹脂供給機構を適用した樹脂成形手順を示すフローチャート図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す構造図であり、(a)は側面図であり、(b)は側面側から見た断面図である。
【図11】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、ゲートバルブを開いて当該ノズルから液状樹脂を吐出した状態の図である。
【図12】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、ゲートバルブを閉じて軸心からのエア吹き出しを開始した状態の図である。
【図13】本発明の第3の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す構造図であり、(a)は側面図であり、(b)は側面側から見た断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す構造図であり、(a)は側面図であり、(b)は側面側から見た断面図である。
【図15】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、ゲートバルブを開いて当該ノズルから液状樹脂を吐出した状態の図である。
【図16】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、ゲートバルブを閉じて軸心からのエア吹き出しを開始した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0029】
(第1の実施の形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す側面図であり、図1(b)はその底面図である。図2は、本実施形態のノズルを側面側から見た断面図である。本実施形態の液状樹脂供給機構1は、ゲートバルブ5が内蔵されたノズル2から液状樹脂200を下方側に向けて吐出し金型の一方の型に液状樹脂200を供給する。ノズル2の外周には下方側のノズル先端方向にエア(外周エア)を吹き出す外周エア吹き出し口3が配されており、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5を開いて液状樹脂200を吐出し、そして、液状樹脂200の吐出を終了する際にはゲートバルブ5を閉じるとともに、外周エア吹き出し口3から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の外周エアを吹き出す制御を行なう。
【0030】
本実施形態の液状樹脂供給機構1は、図1(a)(b)に示すように、筒状の送液管29が一体形成された筒状で先細り形状のノズル2となっており、送液管29の外周には温調器4が配されている。温調器4は中空で螺旋状の配管となっており、配管内に水やガス等の媒質を流して冷却したり、配管自体をヒータとして加熱したりすることができる。例えば、樹脂200が熱硬化性樹脂の場合には、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満で結露しない温度以上の適正な温度範囲となるよう温調器4で冷却する。例えば、樹脂200が熱可塑性樹脂の場合には、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、溶融温度以上で燃焼温度未満の適正な温度範囲となるよう温調器4で加熱する。なお、送液管29とノズル2は、図1(a)(b)の形態に限定されず、それぞれを別体で形成し、互いに接続するようにしても良い。また、温調器4は、図1(a)(b)の形態に限定されず、樹脂200が流動性を有するレベルの液状樹脂となるような温度に温調できるものであれば良い。
【0031】
前記ノズル2の外側には下方側のノズル先端(符号53)に向けてエアを吹き出す外周エア吹き出し口3が配されている(図1(a)(b))。外周エア吹き出し口3は、ノズル2の先端部外周に配された外筒形状であり、ノズル先端部の先細り形状にならった先細り形状となっている。外周エア吹き出し口3は、中空の円筒形状であり、エア配管39が接続されている。エア配管39は図示しないエア供給源に配管接続されており、外周エア吹き出し口3の吹き出し面33(出口33)から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度のエアを吹き出す設定となっている。ノズル2の吐出面23(出口23)から吐出される樹脂200が熱硬化性樹脂の場合には、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満で結露しない温度以上の温度範囲となるよう所定温度に設定されたエア(外周エア)を吹き出す。例えば、前記樹脂200が熱可塑性樹脂の場合には、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、溶融温度以上で燃焼温度未満の温度範囲となるよう所定温度に設定された外周エアを吹き出す。
【0032】
本実施形態では、図1(b)に示すように、ノズル先端の吐出面23の形状と外周エア吹き出し口3の先端吹き出し面33の形状が、それぞれ対応している形状で同心形状となっている。すなわち、ノズル先端の吐出面23が円形状で、かつ、外周エア吹き出し口先端の吹き出し面33が円環形状となっており、同心円形状となっている。
【0033】
本実施の形態は、ピン形状でその先端が尖ったゲートバルブ5が、ノズル2に内蔵されている(図2)。ゲートバルブ5は、図示しない駆動源に機械接続されており、制御回路9からの制御信号によって制御され、油圧や空気圧、モータ等の駆動力でゲートバルブ5が前進後退動作する(図2では上下に動作する)。つまり、液状樹脂200を吐出する際にはゲートバルブ5を後退させて(図4の例では上に上げて)、ノズル先端の吐出面23を開く。そして、液状樹脂200の吐出を終了する際にはゲートバルブ5を前進させて(図6の例では下に上げて)、ノズル先端の吐出面23を閉じる。本実施形態では、液状樹脂200の吐出を終了する際にはゲートバルブ5の先端53がノズル先端の吐出面23から突き出る(図2、図3、図6等)。
【0034】
(本発明による樹脂成形手順)
本発明の実施形態の液状樹脂供給機構1を適用した圧縮成形機における樹脂成形手順を示すフローチャートを図9(a)と図9(b)に示す。また、上記第1の実施形態の液状樹脂供給機構1のノズル2の一連の動作を示す断面図を図3から図7に示す。ここでは、前記樹脂200が熱可塑性樹脂であるとして、図9(a)に示すフローチャートにしたがって、本発明の液状樹脂供給機構1を適用した製造方法による樹脂成形手順を以下に説明する。
【0035】
先ず、金型50の上金型51と下金型52とを開き、液状樹脂供給機構1のノズル2を前進させ、或いは前後左右や上下に移動させて、キャビティ521の真上で停止させる(符号S1、図3)。温調器4はヒータとして作用し、熱可塑性樹脂200が、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、溶融温度以上で燃焼温度未満の適正な温度範囲となるよう加熱している。また、このとき、ゲートバルブ5が下がって、その先端53がノズル先端の吐出面23から突き出ており、ノズル先端の吐出面23を閉じている(ゲートバルブ5が閉じている)。下金型52は、熱可塑性樹脂200が、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、下金型52に内蔵されたヒータによって適正温度に加熱されている。また、上金型51についても、下金型52に内蔵されたヒータによって適正温度に加熱されている。
【0036】
前記金型50を開き、ノズル2を所定位置まで前進させると(符号S1)、次に、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5が上がってゲートバルブを開き、液状樹脂200を下方側のキャビティ521に向けて吐出する(符号S2、図4)。ノズル2の先端部は先細り形状となっており、液状樹脂200が所定方向に吐出される。キャビティ521の大きさや形状によっては、液状樹脂供給機構1のノズル2を前後左右あるいは上下に移動させて、キャビティ521の底面に液状樹脂200を行き渡らせるように動作させてもよい。
【0037】
前記ゲートバルブ5を開き、液状樹脂200を下方側のキャビティ521に定量吐出すると(符号S2)、次に、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5が下がって、その先端53がノズル先端の吐出面23から突き出ることで、ノズル先端の吐出面23を閉じて(符号S3)、ゲートバルブ5が閉じられた直後に、外周エア吹き出し口3の吹き出し面33(出口33)から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度のエア(外周エア)を吹き出す(符号S4、図5)。図5中の矢印302は、外周エアの流れを示している。外周エア吹き出し口3から吹き出された外周エア302は、熱可塑性樹脂200が、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、溶融温度以上で燃焼温度未満の適正な温度範囲となるよう加熱されたエアである。
【0038】
本実施形態によれば、液状樹脂200の吐出を終了する際にゲートバルブ5の尖った先端53がノズル先端の吐出面23から突き出ることで、糸引き樹脂202の始点の横断面積を極力小さくできる(図5)。そして、ゲートバルブ5の尖った先端形状53に向かって加熱された外周エア302が吹き付けられるので、ゲートバルブ先端53で糸引きした液状樹脂202の根元に確実に当たり、糸引き樹脂202の横断面積の最も小さい始点から落下させることとなる。また、ノズル2先端部の糸引き樹脂202は、周囲温度の影響で固化しようとするが、本実施形態によれば、前記ノズル2先端部の全周に亘り、前記ノズル2先端部の先細り形状にならって前記外周エア302が吹き付けられるので、加熱した外周エア302によって、糸引きした液状樹脂202を液状態を維持したまま、若しくは液状態となるように再溶融させて下に押し出すこととなり、前記ゲートバルブ5の尖った先端53で糸引きした液状樹脂202を、前記ノズル2からの液状樹脂の吐出方向に確実に落下させる(図6)。
【0039】
また、本実施形態では、前記ノズル2先端の吐出面23(出口23)の形状と前記外周エア吹き出し口3先端の吹き出し面33(出口33)の形状が、それぞれ対応している同心円形状となっているので(図1(b))、前記液状樹脂200を偏りなく吐出し、前記ゲートバルブ5を閉じて外周エア302を吹き出すことで、前記ゲートバルブ5の尖った先端53に糸引きした液状樹脂202を偏りなく細くし切り離して下方側に落下させる。そして、前記糸引き樹脂202を液状態のまま落下させるとともに、既に下金型52のキャビティ521内に吐出された樹脂200を外周エア302で固化させることを未然に防止し、既にキャビティ521内に吐出された樹脂200と糸引き樹脂202とを互いに液状態のまま同化させることとなり(図6)、製品の品質がより安定する。なお、外周エア吹き出し口3から外周エア302を吹き付けるタイミングは、液状樹脂202の供給が終了しゲートバルブ5が閉じられた直後に外周エア302を吹き付けることが好ましいが、ゲートバルブ5が閉じると同時に外周エア302を吹き付ける場合もあり、ゲートバルブ5が閉じる直前に外周エア302を吹き付ける場合もあり、つまり、液状樹脂202の性質や周囲環境温度等の諸条件に応じて前記制御回路9からの制御信号の送出タイミングを適宜調整可能としている。
【0040】
前記ゲートバルブ5を閉じ、外周エア吹き出し口3から加熱された外周エア302を吹き出して(符号S4)、液状樹脂200のキャビティ521への供給を完了すると、外周エア302の吹き出しを停止し(符号S5)、ノズル2を退避させて金型50を閉じる(符号S61、図7)。そして、金型50内で樹脂200を、例えば、加熱圧縮して冷却し反応固化させて成形し(符号S62)、成形後に金型50を開いて成形樹脂を取り出す(符号S63)。
【0041】
上述の樹脂成形手順では、前記樹脂200が熱可塑性樹脂であるとして説明したが、前記樹脂200は熱硬化性樹脂としても支障なく、この場合は、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満で結露しない温度以上の適正な温度範囲となるよう温調器4で冷却する。そして、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満で結露しない温度以上の温度範囲となるよう所定温度に設定された外周エア302を吹き出すこととなる。
【0042】
前記外周エア吹き出し口3から吹き出す外周エア302としては、空気、乾燥空気、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスが挙げられる。前記樹脂200が一般的な熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の場合には、空気や乾燥空気が適用でき、工場配管から簡易に利用できる。前記樹脂200が酸化し易い材料の場合には、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを用いることで、前記樹脂200の酸化を抑制することができる。
【0043】
上記第1の実施形態の液状樹脂供給機構1の他の例のノズルを示す側面図を図8(a)に示し、その断面図を図8(b)に示す。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。本実施形態の液状樹脂供給機構1は、ノズル2の外側には下方側のノズル先端に向けてノズル2から吐出した液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の外周エアを吹き出す外周エア吹き出し口3が配されている。本実施形態の外周エア吹き出し口3は、ノズル2の先端部外周に配された外筒形状であり、ノズル先端部の先細り形状にならった先細り形状となっている。外周エア吹き出し口3は、中空の円筒形状であり、その背面側に円筒形状のエア配管39が接続されている。エア配管39は、液状樹脂200の送液管29の外周を囲むように配されており、エア配管39の外周を囲むように温調器4が配されている。本実施形態によれば、前記ノズル2先端部の全周に亘り、前記ノズル2先端部の先細り形状にならって前記外周エア302がより均等な圧力で吹き付けられることとなる。また、ノズル2から液状樹脂200を吐出する方向は、下方側であればよく、図8(a)(b)に示すように、真下から30度から45度程度の傾斜をつけて液状樹脂200を吐出することもできる。
【0044】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す側面図を図10(a)に示し、その断面図を図10(b)に示す。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。本実施形態の液状樹脂供給機構1は、上述の第1の実施形態に加えて、ノズル2から吐出した液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の軸心エアをその先端(符号53)から下方側に吹き出す軸心エア吹き出し孔が形成されている構成となっている。そして、軸心エア吹き出し孔35は図示しないエア供給源に配管接続されており、ゲートバルブ5の軸心の先端53から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度のエアを吹き出す設定となっている。
【0045】
本実施形態では、ノズル2の吐出面23(出口23)から吐出される樹脂200が熱硬化性樹脂の場合には、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満で結露しない温度以上の温度範囲となるよう所定温度に設定された外周エア及び軸心エアを吹き出す。例えば、前記樹脂200が熱可塑性樹脂の場合には、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、溶融温度以上で燃焼温度未満の温度範囲となるよう所定温度に設定された外周エア及び軸心エアを吹き出す。ここで、前記ゲートバルブ5の軸心に形成されたエア吹き出し孔35は、細くなった糸引き樹脂202の始点を切り離すためのものであり、エア吹き出し孔35の内径は小さい孔径で十分であり、この孔径を小さくすることで液状樹脂200の孔内への逆流を防止する効果もある。軸心エア吹き出し孔35の孔径は、液状樹脂202の性質に応じて適宜設定される。例えば、液粘度が高い液状樹脂202の場合には前記軸心エア吹き出し孔35の孔径を大きくし、液粘度が小さい液状樹脂202の場合には前記軸心エア吹き出し孔35の孔径を小さくするなど、適宜設定される。例えば、軸心エア吹き出し孔35の孔径は、0.2mmから1.0mmの範囲内で設定される。
【0046】
上記第2の実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図を図11と図12に示す。図11は、ゲートバルブ5を開いてノズル2から液状樹脂200を吐出した状態の図である。図12は、ゲートバルブ5を閉じて軸心からのエア吹き出しを開始した状態の図である。ここでは、前記樹脂200が熱可塑性樹脂であるとして、図9(a)に示すフローチャートにしたがって、本発明の液状樹脂供給機構1を適用した製造方法による樹脂成形手順を以下に説明する。なおここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。前記金型50を開き、ノズル2を所定位置まで前進させると(符号S1)、次に、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5が上がってゲートバルブを開き、液状樹脂200を下方側のキャビティ521に向けて吐出する(符号S2、図11)。液状樹脂200を下方側のキャビティ521に定量吐出すると(符号S2)、次に、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5が下がって、その先端53がノズル先端の吐出面23から突き出て、ノズル先端の吐出面23を閉じて(ゲートバルブ5を閉じて)、前記外周エア吹き出し口3の吹き出し面33(出口33)から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の外周エア(符号302)を吹き出し、それと同時に、ゲートバルブ5の軸心の先端53から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の軸心エア(符号352)を吹き出す(符号S3、図12)。又は、前記外周エア吹き出し口3の吹き出し面33(出口33)から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の外周エア(符号302)を吹き出して、暫くしてから、ゲートバルブ5の軸心の先端53から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の軸心エア(符号352)をさらに吹き出すようにしても良い。本実施形態によれば、細くなった糸引き樹脂202の始点をより確実に切り離すこととなる。なおここで、前記ゲートバルブ5の軸心に形成した軸心エア吹き出し孔35からのエア圧力は、前記外周エア吹き出し口3からのエア圧力に対して小さい圧力で十分な場合もあり、それは、前記外周エア吹き出し口3からの外周エア302によって十分細くなった糸引き樹脂202の始点を切り離せばよいからである。なお、前記外周エア302と前記軸心エア352とは、それらのエア温度を異ならせてもよく、それらのエア温度を同じ温度としてもよい。また、前記外周エア302と前記軸心エア352とは、それらのエア成分を異ならせてもよく、それらのエア成分を同じ成分としてもよい。
【0047】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す側面図を図13(a)に示し、その断面図を図13(b)に示す。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。本実施形態の液状樹脂供給機構1は、上述の第2の実施形態に付設されていた外周エア吹き出し口3を省いた構成となっている。液状樹脂202の性質によっては、ゲートバルブ5の軸心の先端53から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度のエアを吹き出す構成のみでも足りるからである。本実施形態によれば、ノズル2のスリム化が図れ、エア配管も簡易なものとなる。
【0048】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す側面図を図14(a)に示し、その断面図を図14(b)に示す。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。本実施形態の液状樹脂供給機構1は、上述の第2の実施形態における外周エア吹き出し口3を前記ノズルの外周に配された外筒形状としつつ、前記エア吹き出し口をストレート形状としており、外周エア吹き出し口3から吹き出す外周エア302が、吐出された液状樹脂200をエアカーテンで囲むようにしてその液状態を維持する構成となっている。なお、前記エア吹き出し口3は、下方に広がるラッパ形状としても良い。
【0049】
上記第4の実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図を図15と図16に示す。図15は、ゲートバルブ5を開いてノズル2から液状樹脂200を吐出した状態の図である。図16は、ゲートバルブ5を閉じて軸心からのエア吹き出しを開始した状態の図である。ここでは、前記樹脂200が熱可塑性樹脂であるとして、図9(b)に示すフローチャートにしたがって、本発明の液状樹脂供給機構1を適用した製造方法による樹脂成形手順を以下に説明する。なおここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。前記金型50を開き、ノズル2を所定位置まで前進させると(符号S1)、次に、制御回路9からの制御信号によって、外周エア吹き出し口3から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の外周エア302を吹き出す(符号S4、図15)。ここでは、外周エア302を吹き付ける強さを、液状樹脂202の供給中は弱いエアを吹き出すことで、吐出された液状樹脂200をエアカーテンで囲むようにしてその液状態を維持している。外周エア吹き出し口3から外周エア302を吹き出している状態で(符号S4)、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5が上がってゲートバルブを開き、液状樹脂200を下方側のキャビティ521に向けて吐出する(符号S12、図15)。なお、前記外周エア302を吹き出すと同時にゲートバルブ5を開いても良いし、前記ゲートバルブ5を開いてから、外周エア302を吹き出しても良い。
【0050】
そして、前記液状樹脂200を下方側のキャビティ521に定量吐出すると(符号S12)、次に、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5が下がって、その先端53がノズル先端の吐出面23から突き出て、ノズル先端の吐出面23を閉じて(ゲートバルブ5を閉じて)、前記外周エア(符号302)を吹き出すことに加えて、さらに、ゲートバルブ5の軸心の先端53から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の軸心エア(符号352)を吹き出す(符号S4、図16)。又は、前記外周エア(符号302)の吹き出しを停止して、暫くしてから、ゲートバルブ5の軸心の先端53から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の軸心エア(符号352)を吹き出すようにしても良い。本実施形態によれば、吐出された液状樹脂200をエアカーテンで囲むようにしてその液状態を維持し、液状樹脂200の吐出が終了すると、細くなった糸引き樹脂202の始点をより確実に切り離すこととなる。
【0051】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。前記外周エア吹き出し口3から外周エア302を吹き付ける強さを、液状樹脂202の供給中は弱いエアを吹き出すことで、吐出された液状樹脂200をエアカーテンで囲むようにしてその液状態や吐出される方向を一定に維持しつつ、ゲートバルブ5が閉じられた直後に強めの外周エア302を吹き付けて糸引き樹脂を切り離す制御をすることができる。また、ノズル2の先端部外周に形成した外周エア吹き出し口3から吹き出す外周エア(符号302)や、ゲートバルブ5に形成した軸心エア吹き出し孔35から吹き出すエア(符号352)は、1回の糸引き樹脂を切り離す制御の中で、連続的に吹き出すように制御することもできるし、間欠的に吹き出すように制御することもできる。また、図示省略されるが、加熱器や冷却器等のエアの温調手段や、開閉弁等のエア流路開閉手段や、流量制御弁等のエアの流量調節手段は、必要に応じて適宜備えられ、それらがエア供給源に備えてあってもよいし、エア配管等のエア流路の途中に別途備えてあっても良い。また、ゲートバルブ5の軸心に形成した軸心エア吹き出し孔35には、その軸心エア吹き出し孔35の吹き出し側の開口を開閉するゲートバルブ(図示省略)を別途備えて、液状樹脂200の逆流を防止する構成としてもよい。また、既存の圧縮成形機に配備された液状樹脂供給機構のノズルに、外周エア吹き出し口3を後付して、既存の制御回路を援用しその制御プログラムを一部見直して運用してもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 液状樹脂供給機構、
2 ノズル、
3 外周エア吹き出し口、
35 軸心エア吹き出し孔、
4 温調器(加熱器、冷却器)、
5 ゲートバルブ、
9 制御回路、
50 金型、
200 樹脂(液状樹脂)、
202 樹脂(糸引き樹脂)、
302 外周エア(所定温度のエア)、
352 軸心エア(所定温度のエア)
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置の液状樹脂供給機構と、当該液状樹脂供給機構が備わった圧縮成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金型を用いた樹脂成形としては、射出成形、圧縮成形、ブロー成形等が挙げられる。これらの樹脂成形のうち、射出成形は、閉じた金型を用いて、ノズルから射出された液状樹脂を金型内のスプル、ランナ、ゲートを通じてキャビティに充填し加熱や冷却によって反応固化させて成形する方式である。圧縮成形は、ノズルから液状樹脂を開いた金型の一方の型に向けて定量吐出し金型を閉じて圧縮し金型内でなじませながら加熱や冷却によって反応固化させて成形する方式である。ブロー成形は、金型にセットされた樹脂内に空気を吹き込んで膨らませ反応固化させて成形する方式である。
【0003】
射出成形と圧縮成形は、複雑な内部形状の金型を用いることができ、寸法精度の高い成形部品を製造するのに適している。このうち射出成形は、短時間で大量生産することが可能であるが、スプル、ランナ、ゲートといった余分な材料が出来てしまうことから、その分を回収してリユースするとしても樹脂材料の消費量が大きくなる。他方、圧縮成形は、射出成形と比較して金型の開閉等に時間を要するが、余分な材料となるスプル、ランナ、ゲートが不要であることから、樹脂材料の消費量を極力抑えることができる。
【0004】
射出成形や圧縮成形に用いられる樹脂材料には、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とがある。熱硬化性樹脂とは、加熱すると重合反応し高分子の網目構造を形成して硬化し(固化し)、一旦硬化した後は、加熱しても液状にはならない樹脂のことであり、その使用に際しては、流動性を有するレベルの比較的低分子の液状樹脂を室温で金型内に送液し、金型によって所定の形状とし、その後加熱して硬化させる。 熱可塑性樹脂とは、ガラス転移温度または融点まで加熱することによって軟らかくなって、目的の形に成形できる樹脂のことであり、高温で流動性を有する液状樹脂を高温で金型内に送液し、金型によって所定の形状とし、その後冷却して硬化(固化)させる。
【0005】
熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂は、液状態としてもある程度の粘度を有している。射出成形や圧縮成形では、液状樹脂はノズルから吐出されるが、吐出弁(ゲートバルブ)を閉じても、ノズル先端と下金型に供給された樹脂との間で糸引きが発生し、吐出を終了するのに時間を要する。例えば、その糸引きが、ノズルを金型外部に待避させる間も続けば、下金型のパーティング面(金型同士の合わせ面)に樹脂が付着し、金型の汚損、金型同士が完全に閉じない、型を閉じたときの金型同士の平行度の狂い、等様々な問題を引き起こす。そこで、製造現場では、この糸引きした樹脂をへら、布、スポンジ等で拭き取るなどして除去することがある。
【0006】
ノズルの先端での樹脂の糸引き対策としては、へら、布、スポンジ等で拭き取るか、圧縮エアを吹き付けて糸引きした樹脂を寸断することが考えられる。ここで、既知の特許文献に開示されている方法としては、例えば特許文献1がある。 特許文献1には、容器のキャップやチューブヘッド等の成形において、熱可塑性樹脂を環状に押し出し、次いでこの環状樹脂を押し出しノズルの開口横断面積を徐々に減少させ、かつ、ガスノズルからのガス流によって、押し出しノズルから一塊で分離させ落下させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭64−7850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、熱可塑性樹脂を環状に押し出して、押し出しノズルから一塊で分離させ落下させることから、相当に高い粘度の樹脂を用いており、本願が課題としているノズルの先端で糸引きする現象が生じるような粘度の液状樹脂よりもかなり高い粘度の樹脂を用いている。また、特許文献1記載の方法は、高粘度の樹脂を環状に押し出す方式であるから、容器のキャップやチューブヘッド等の中空の成形品に限定的に適用される方法である。そして、特許文献1記載のような、高粘度の樹脂を環状に押し出して、押し出しノズルから一塊で分離させ落下させる方法では、樹脂の供給量を少なくすることが困難であり、少量で正確な樹脂量を金型内に供給することや複雑な内部形状の金型にて小型の成形品を製造することができない。
【0009】
本願における糸引き現象とは、例えば、粘性油や水飴等に見られる糸引き現象とある種共通しており、このような粘度の液状樹脂をノズルから吐出すると、ゲートバルブを閉じても、ノズル先端と下金型に供給された樹脂との間で糸引きが発生し、ノズル先端には糸引きした樹脂が残り、吐出を終了するのに時間を要する。このノズルの先端での樹脂の糸引き対策としては、へら、布、スポンジ等で拭き取るか、圧縮エアを吹き付けて糸引きした樹脂を寸断することが考えられるが、このような方法では、まだ下金型に供給された樹脂の量がばらつく問題を解決できない。近年、高精度の樹脂成形品を製造する上で、この糸引き樹脂が製造ばらつきの一因となることがわかってきた。つまり、上記の糸引きした樹脂を除去することで、金型への樹脂供給量が低下するなど不安定な状態となり、成形部品の重量ばらつきの要因となる。その一方で、上記の糸引きした樹脂がノズル先端から落下するまで待っていると、吐出を終了するのに長い時間を要し、外気の影響を受けて、成形部品の外観ばらつきや品質劣化の要因ともなり得る。例えば、樹脂製レンズ等の精密部品では、高精度で同一寸法の部品を再現性よく製造しなければならず、高い再現性で一定量の液状樹脂の金型への供給が望まれているが、いまだ効果的な改善方法がないのが実情である。
【0010】
そこで本発明の目的は、ノズルから液状樹脂を下方側に向けて吐出することで、開いた金型の一方の型に樹脂を供給する方式の液状樹脂供給機構において、糸引き樹脂を適切に処理することによって、高い再現性で一定量の液状樹脂の金型への供給が可能となる新規な液状樹脂供給機構、並びに、当該液状樹脂供給機構が備わった圧縮成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液状樹脂供給機構は、制御回路によって制御され、ゲートバルブが内蔵されたノズルから液状樹脂を下方側に向けて吐出し金型の一方の型に液状樹脂を供給する液状樹脂供給機構であって、前記ノズルの外側には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の外周エアを下方側のノズル先端方向に吹き出す外周エア吹き出し口が配されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、前記ノズルの外側には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の外周エアを下方側のノズル先端方向に吹き出す外周エア吹き出し口が配されているので、前記エアを吹き出すことによって、吐出した液状樹脂の液状態を維持させつつ、前記ノズル先端から糸引きした液状樹脂を切り離して下方側に落下させることができる。
【0013】
本発明の液状樹脂供給機構は、制御回路によって制御され、ゲートバルブが内蔵されたノズルから液状樹脂を下方側に向けて吐出し金型の一方の型に液状樹脂を供給する液状樹脂供給機構であって、前記ゲートバルブの軸心には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の軸心エアをその先端から下方側に吹き出す軸心エア吹き出し孔が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、前記ゲートバルブの軸心には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の軸心エアをその先端から下方側に吹き出す軸心エア吹き出し孔が形成されているので、前記エアを吹き出すことによって、吐出した液状樹脂の液状態を維持させつつ、前記ノズル先端から糸引きした液状樹脂を切り離して下方側に落下させることができる。
【0015】
つまり、これら本発明は、前記エアを吹き出すことによって、吐出した液状樹脂の液状態を維持させつつ、前記ノズル先端から糸引きした液状樹脂を切り離して下方側に落下させることを特徴とする。
【0016】
本発明は、前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、当該熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるように前記エア温度が設定されているか、又は、前記樹脂が熱硬化性樹脂であり、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満となるように前記エア温度が設定されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、前記糸引き樹脂を液状態のまま落下させるとともに、既に前記金型の一方の型に吐出された樹脂を前記エアで固化させることを未然に防止し、既に前記金型の一方の型に吐出された樹脂と前記糸引き樹脂とを互いに液状態のまま同化させるので製品品質がより安定する。前記エア温度は、前記ノズルから吐出されるときの液状樹脂の温度と、周囲環境の温度とを考慮して適正な温度に設定され、前記液状樹脂の燃焼温度よりも低い温度に設定される。前記エアのうち前記外周エアと前記軸心エアとは、それらのエア温度を異ならせてもよく、それらのエア温度を同じ温度としてもよい。
【0018】
前記エアとしては、空気、乾燥空気、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスが挙げられる。前記樹脂が一般的な熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の場合には、空気や乾燥空気が適用でき、工場配管から簡易に利用できる。前記樹脂が酸化し易い材料の場合には、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを用いることで、前記樹脂の酸化を抑制することができる。前記エアのうち前記外周エアと前記軸心エアとは、それらのエア成分を異ならせてもよく、それらのエア成分を同じ成分としてもよい。
【0019】
本発明は、前記エア吹き出し口が前記ノズルの外周に配された外筒形状であり、前記ノズル及び前記エア吹き出し口がそれぞれ先細り形状となっていることを特徴とする。
【0020】
本実施形態によれば、前記エア吹き出し口を前記ノズルの外周に配された外筒形状とすることで、前記ノズル先端部の全周に亘り、前記エアが吹き出されるので、前記ノズル先端で糸引きした液状樹脂を、前記ノズルからの液状樹脂の吐出方向に確実に落下させることとなる。そして、前記ノズル及び前記エア吹き出し口がそれぞれ先細り形状となっていることで、前記ノズル先端部の先細り形状にならって前記エアが吹き付けられて前記糸引き樹脂を細くする効果がある。
【0021】
本発明は、前記ノズル先端の吐出面(出口)の形状と前記エア吹き出し口先端の吹き出し面(出口)の形状が、それぞれ対応している形状で同心形状となっていることが好ましい。前記液状樹脂を偏りなく吐出し、前記ゲートバルブを閉じて前記エアを吹き出すことで、前記ノズル先端から糸引きした液状樹脂を偏りなく細くし切り離して下方側に落下させる。前記同心形状としては、例えば、前記ノズル先端の吐出面が円形状で、かつ、前記エア吹き出し口先端の吹き出し面が円環形状となっている構成や、また例えば、前記ノズル先端の吐出面が惰円形状で、かつ、前記エア吹き出し口先端の吹き出し面が惰円環形状となっている構成などが挙げられる。
【0022】
本発明は、前記ゲートバルブの先端が尖っており、液状樹脂の吐出を終了する際には前記ゲートバルブの先端が前記ノズルの先端から突き出ることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、液状樹脂の吐出を終了する際に前記ゲートバルブの尖った先端が前記ノズルの先端から突き出ることで、前記糸引き樹脂の始点の横断面積を極力小さくでき、前記ゲートバルブの尖った先端形状に向かって前記エアが吹き付けられるので、前記ゲートバルブ先端で糸引きした液状樹脂の根元に確実に当たり、前記糸引き樹脂の横断面積の最も小さい始点から落下させることとなる。さらには、前記ゲートバルブが前記ノズルの中への後退と前記ノズルの先端からの突出を繰り返し、その尖った先端形状の表面に倣って液状樹脂が毎回吐出されるので、万一、前記ゲートバルブ先端に樹脂が僅かにでも付着するようなことがあったとしても、液状樹脂の吐出の度、前記ゲートバルブの先端が清浄化(洗浄)されることとなる。前記ゲートバルブの軸心に形成したエア吹き出し孔は、細くなった糸引き樹脂の始点を切り離すためのものであり、前記エア吹き出し孔の内径は小さい孔径で十分であり、この孔径を小さくすることで液状樹脂の孔内への逆流を防止できるのでより好ましい。
【0024】
本発明の液状樹脂供給機構は、樹脂成形装置に適用され、特に、圧縮成形機に用いられる樹脂成形装置に適用される。ここで、樹脂供給装置は、樹脂を可塑化溶融または混合冷却などを行うとともに、そうした樹脂を所定量供給できる装置であればその構成は問わない。例えば、スクリュの回転のみで樹脂の可塑化と所定量の押し出しを行う押出式、その押し出された溶融樹脂を別装置に計量しながら貯留したあと進退部材で押し出すプリプラ式、または、スクリュの回転で可塑化するとともにそのスクリュを後退させて計量したのちスクリュを前進させて押し出すインラインスクリュ式、などが挙げられる。ちなみに、プリプラ式樹脂供給装置は、計量の精度および供給量の再現性が高いことが特徴とされる。本発明の液状樹脂供給機構をプリプラ式樹脂供給装置に適用することで、さらに高い再現性で一定量の樹脂の金型装置への供給を可能とする。本発明が適用される樹脂供給装置は、樹脂を下金型に供給する際に、下金型に対して水平に前後左右あるいは垂直に上下に移動しながら、連続的にまたは間欠的に、下金型の所定位置に自在に樹脂を供給するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の液状樹脂供給機構によれば、液状樹脂の液状態を維持する所定温度のエアを吹き出すことで、前記ノズル先端から糸引きした液状樹脂を切り離して前記金型の一方の型に落下させることができる。本発明によれば、前記樹脂が熱可塑性樹脂である場合には当該熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるように前記エア温度が設定されており、前記樹脂が熱硬化性樹脂である場合には当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満となるように前記エア温度が設定されているので、前記糸引き樹脂を液状態のまま落下させるとともに、既に前記金型の一方の型に吐出された樹脂を前記エアで固化させることを未然に防止し、既に前記金型の一方の型に吐出された樹脂と前記糸引き樹脂とを互いに液状態のまま同化させるので製品の品質がより安定する。また、前記ノズルの外周に配された外筒形状のエア吹き出し口とすることで前記ノズル先端部の全周に亘り、前記ノズル先端部の先細り形状にならって前記エアが吹き付けられるので、前記ノズル先端で糸引きした液状樹脂を、前記ノズルからの液状樹脂の吐出方向に確実に落下させることとなる。そして、液状樹脂の吐出を終了する際に前記ゲートバルブの尖った先端が前記ノズルの先端から突き出ることで、前記糸引き樹脂の始点の横断面積を極力小さくでき、前記ゲートバルブの尖った先端形状に向かって前記エアが吹き付けられるので、前記ゲートバルブ先端で糸引きした液状樹脂の根元に確実に当たり、前記糸引き樹脂の横断面積の最も小さい始点から落下させることとなる。
【0026】
また、本発明によれば、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の軸心エアをその先端から下方側に吹き出す軸心エア吹き出し孔が前記ゲートバルブの軸心に形成されている構成とすることで、細くなった糸引き樹脂の始点をより確実に切り離すこととなる。そして、前記ゲートバルブが前記ノズルの中への後退と前記ノズルの先端からの突出を繰り返し、その尖った先端形状の表面に倣って液状樹脂が毎回吐出されるので、万一、前記ゲートバルブ先端に樹脂が僅かにでも付着するようなことがあったとしても、液状樹脂の吐出の度、前記ゲートバルブの先端が清浄化(洗浄)されることとなる。したがって、これら本発明によって、糸引き樹脂を適切に処理し、高い再現性で一定量の液状樹脂の金型への供給が可能となる新規な液状樹脂供給機構が備わった圧縮成形装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す構造図であり、(a)は側面図であり、(b)は底面図である。
【図2】上記実施形態のノズルを側面側から見た断面図である。
【図3】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、当該ノズルを前進させた状態の図である。
【図4】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、ゲートバルブを開いて当該ノズルから液状樹脂を吐出した状態の図である。
【図5】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、ゲートバルブを閉じてエア吹き出しを開始した状態の図である。
【図6】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、エア吹き出しを修了した状態の図である。
【図7】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、当該ノズルを退避させた状態の図である。
【図8】上記実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す構造図の他の例であり、(a)は側面図であり、(b)は底面図である。
【図9】本発明の実施形態の液状樹脂供給機構を適用した樹脂成形手順を示すフローチャート図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す構造図であり、(a)は側面図であり、(b)は側面側から見た断面図である。
【図11】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、ゲートバルブを開いて当該ノズルから液状樹脂を吐出した状態の図である。
【図12】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、ゲートバルブを閉じて軸心からのエア吹き出しを開始した状態の図である。
【図13】本発明の第3の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す構造図であり、(a)は側面図であり、(b)は側面側から見た断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す構造図であり、(a)は側面図であり、(b)は側面側から見た断面図である。
【図15】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、ゲートバルブを開いて当該ノズルから液状樹脂を吐出した状態の図である。
【図16】上記実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図であり、ゲートバルブを閉じて軸心からのエア吹き出しを開始した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0029】
(第1の実施の形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す側面図であり、図1(b)はその底面図である。図2は、本実施形態のノズルを側面側から見た断面図である。本実施形態の液状樹脂供給機構1は、ゲートバルブ5が内蔵されたノズル2から液状樹脂200を下方側に向けて吐出し金型の一方の型に液状樹脂200を供給する。ノズル2の外周には下方側のノズル先端方向にエア(外周エア)を吹き出す外周エア吹き出し口3が配されており、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5を開いて液状樹脂200を吐出し、そして、液状樹脂200の吐出を終了する際にはゲートバルブ5を閉じるとともに、外周エア吹き出し口3から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の外周エアを吹き出す制御を行なう。
【0030】
本実施形態の液状樹脂供給機構1は、図1(a)(b)に示すように、筒状の送液管29が一体形成された筒状で先細り形状のノズル2となっており、送液管29の外周には温調器4が配されている。温調器4は中空で螺旋状の配管となっており、配管内に水やガス等の媒質を流して冷却したり、配管自体をヒータとして加熱したりすることができる。例えば、樹脂200が熱硬化性樹脂の場合には、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満で結露しない温度以上の適正な温度範囲となるよう温調器4で冷却する。例えば、樹脂200が熱可塑性樹脂の場合には、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、溶融温度以上で燃焼温度未満の適正な温度範囲となるよう温調器4で加熱する。なお、送液管29とノズル2は、図1(a)(b)の形態に限定されず、それぞれを別体で形成し、互いに接続するようにしても良い。また、温調器4は、図1(a)(b)の形態に限定されず、樹脂200が流動性を有するレベルの液状樹脂となるような温度に温調できるものであれば良い。
【0031】
前記ノズル2の外側には下方側のノズル先端(符号53)に向けてエアを吹き出す外周エア吹き出し口3が配されている(図1(a)(b))。外周エア吹き出し口3は、ノズル2の先端部外周に配された外筒形状であり、ノズル先端部の先細り形状にならった先細り形状となっている。外周エア吹き出し口3は、中空の円筒形状であり、エア配管39が接続されている。エア配管39は図示しないエア供給源に配管接続されており、外周エア吹き出し口3の吹き出し面33(出口33)から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度のエアを吹き出す設定となっている。ノズル2の吐出面23(出口23)から吐出される樹脂200が熱硬化性樹脂の場合には、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満で結露しない温度以上の温度範囲となるよう所定温度に設定されたエア(外周エア)を吹き出す。例えば、前記樹脂200が熱可塑性樹脂の場合には、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、溶融温度以上で燃焼温度未満の温度範囲となるよう所定温度に設定された外周エアを吹き出す。
【0032】
本実施形態では、図1(b)に示すように、ノズル先端の吐出面23の形状と外周エア吹き出し口3の先端吹き出し面33の形状が、それぞれ対応している形状で同心形状となっている。すなわち、ノズル先端の吐出面23が円形状で、かつ、外周エア吹き出し口先端の吹き出し面33が円環形状となっており、同心円形状となっている。
【0033】
本実施の形態は、ピン形状でその先端が尖ったゲートバルブ5が、ノズル2に内蔵されている(図2)。ゲートバルブ5は、図示しない駆動源に機械接続されており、制御回路9からの制御信号によって制御され、油圧や空気圧、モータ等の駆動力でゲートバルブ5が前進後退動作する(図2では上下に動作する)。つまり、液状樹脂200を吐出する際にはゲートバルブ5を後退させて(図4の例では上に上げて)、ノズル先端の吐出面23を開く。そして、液状樹脂200の吐出を終了する際にはゲートバルブ5を前進させて(図6の例では下に上げて)、ノズル先端の吐出面23を閉じる。本実施形態では、液状樹脂200の吐出を終了する際にはゲートバルブ5の先端53がノズル先端の吐出面23から突き出る(図2、図3、図6等)。
【0034】
(本発明による樹脂成形手順)
本発明の実施形態の液状樹脂供給機構1を適用した圧縮成形機における樹脂成形手順を示すフローチャートを図9(a)と図9(b)に示す。また、上記第1の実施形態の液状樹脂供給機構1のノズル2の一連の動作を示す断面図を図3から図7に示す。ここでは、前記樹脂200が熱可塑性樹脂であるとして、図9(a)に示すフローチャートにしたがって、本発明の液状樹脂供給機構1を適用した製造方法による樹脂成形手順を以下に説明する。
【0035】
先ず、金型50の上金型51と下金型52とを開き、液状樹脂供給機構1のノズル2を前進させ、或いは前後左右や上下に移動させて、キャビティ521の真上で停止させる(符号S1、図3)。温調器4はヒータとして作用し、熱可塑性樹脂200が、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、溶融温度以上で燃焼温度未満の適正な温度範囲となるよう加熱している。また、このとき、ゲートバルブ5が下がって、その先端53がノズル先端の吐出面23から突き出ており、ノズル先端の吐出面23を閉じている(ゲートバルブ5が閉じている)。下金型52は、熱可塑性樹脂200が、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、下金型52に内蔵されたヒータによって適正温度に加熱されている。また、上金型51についても、下金型52に内蔵されたヒータによって適正温度に加熱されている。
【0036】
前記金型50を開き、ノズル2を所定位置まで前進させると(符号S1)、次に、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5が上がってゲートバルブを開き、液状樹脂200を下方側のキャビティ521に向けて吐出する(符号S2、図4)。ノズル2の先端部は先細り形状となっており、液状樹脂200が所定方向に吐出される。キャビティ521の大きさや形状によっては、液状樹脂供給機構1のノズル2を前後左右あるいは上下に移動させて、キャビティ521の底面に液状樹脂200を行き渡らせるように動作させてもよい。
【0037】
前記ゲートバルブ5を開き、液状樹脂200を下方側のキャビティ521に定量吐出すると(符号S2)、次に、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5が下がって、その先端53がノズル先端の吐出面23から突き出ることで、ノズル先端の吐出面23を閉じて(符号S3)、ゲートバルブ5が閉じられた直後に、外周エア吹き出し口3の吹き出し面33(出口33)から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度のエア(外周エア)を吹き出す(符号S4、図5)。図5中の矢印302は、外周エアの流れを示している。外周エア吹き出し口3から吹き出された外周エア302は、熱可塑性樹脂200が、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、溶融温度以上で燃焼温度未満の適正な温度範囲となるよう加熱されたエアである。
【0038】
本実施形態によれば、液状樹脂200の吐出を終了する際にゲートバルブ5の尖った先端53がノズル先端の吐出面23から突き出ることで、糸引き樹脂202の始点の横断面積を極力小さくできる(図5)。そして、ゲートバルブ5の尖った先端形状53に向かって加熱された外周エア302が吹き付けられるので、ゲートバルブ先端53で糸引きした液状樹脂202の根元に確実に当たり、糸引き樹脂202の横断面積の最も小さい始点から落下させることとなる。また、ノズル2先端部の糸引き樹脂202は、周囲温度の影響で固化しようとするが、本実施形態によれば、前記ノズル2先端部の全周に亘り、前記ノズル2先端部の先細り形状にならって前記外周エア302が吹き付けられるので、加熱した外周エア302によって、糸引きした液状樹脂202を液状態を維持したまま、若しくは液状態となるように再溶融させて下に押し出すこととなり、前記ゲートバルブ5の尖った先端53で糸引きした液状樹脂202を、前記ノズル2からの液状樹脂の吐出方向に確実に落下させる(図6)。
【0039】
また、本実施形態では、前記ノズル2先端の吐出面23(出口23)の形状と前記外周エア吹き出し口3先端の吹き出し面33(出口33)の形状が、それぞれ対応している同心円形状となっているので(図1(b))、前記液状樹脂200を偏りなく吐出し、前記ゲートバルブ5を閉じて外周エア302を吹き出すことで、前記ゲートバルブ5の尖った先端53に糸引きした液状樹脂202を偏りなく細くし切り離して下方側に落下させる。そして、前記糸引き樹脂202を液状態のまま落下させるとともに、既に下金型52のキャビティ521内に吐出された樹脂200を外周エア302で固化させることを未然に防止し、既にキャビティ521内に吐出された樹脂200と糸引き樹脂202とを互いに液状態のまま同化させることとなり(図6)、製品の品質がより安定する。なお、外周エア吹き出し口3から外周エア302を吹き付けるタイミングは、液状樹脂202の供給が終了しゲートバルブ5が閉じられた直後に外周エア302を吹き付けることが好ましいが、ゲートバルブ5が閉じると同時に外周エア302を吹き付ける場合もあり、ゲートバルブ5が閉じる直前に外周エア302を吹き付ける場合もあり、つまり、液状樹脂202の性質や周囲環境温度等の諸条件に応じて前記制御回路9からの制御信号の送出タイミングを適宜調整可能としている。
【0040】
前記ゲートバルブ5を閉じ、外周エア吹き出し口3から加熱された外周エア302を吹き出して(符号S4)、液状樹脂200のキャビティ521への供給を完了すると、外周エア302の吹き出しを停止し(符号S5)、ノズル2を退避させて金型50を閉じる(符号S61、図7)。そして、金型50内で樹脂200を、例えば、加熱圧縮して冷却し反応固化させて成形し(符号S62)、成形後に金型50を開いて成形樹脂を取り出す(符号S63)。
【0041】
上述の樹脂成形手順では、前記樹脂200が熱可塑性樹脂であるとして説明したが、前記樹脂200は熱硬化性樹脂としても支障なく、この場合は、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満で結露しない温度以上の適正な温度範囲となるよう温調器4で冷却する。そして、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満で結露しない温度以上の温度範囲となるよう所定温度に設定された外周エア302を吹き出すこととなる。
【0042】
前記外周エア吹き出し口3から吹き出す外周エア302としては、空気、乾燥空気、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスが挙げられる。前記樹脂200が一般的な熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の場合には、空気や乾燥空気が適用でき、工場配管から簡易に利用できる。前記樹脂200が酸化し易い材料の場合には、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを用いることで、前記樹脂200の酸化を抑制することができる。
【0043】
上記第1の実施形態の液状樹脂供給機構1の他の例のノズルを示す側面図を図8(a)に示し、その断面図を図8(b)に示す。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。本実施形態の液状樹脂供給機構1は、ノズル2の外側には下方側のノズル先端に向けてノズル2から吐出した液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の外周エアを吹き出す外周エア吹き出し口3が配されている。本実施形態の外周エア吹き出し口3は、ノズル2の先端部外周に配された外筒形状であり、ノズル先端部の先細り形状にならった先細り形状となっている。外周エア吹き出し口3は、中空の円筒形状であり、その背面側に円筒形状のエア配管39が接続されている。エア配管39は、液状樹脂200の送液管29の外周を囲むように配されており、エア配管39の外周を囲むように温調器4が配されている。本実施形態によれば、前記ノズル2先端部の全周に亘り、前記ノズル2先端部の先細り形状にならって前記外周エア302がより均等な圧力で吹き付けられることとなる。また、ノズル2から液状樹脂200を吐出する方向は、下方側であればよく、図8(a)(b)に示すように、真下から30度から45度程度の傾斜をつけて液状樹脂200を吐出することもできる。
【0044】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す側面図を図10(a)に示し、その断面図を図10(b)に示す。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。本実施形態の液状樹脂供給機構1は、上述の第1の実施形態に加えて、ノズル2から吐出した液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の軸心エアをその先端(符号53)から下方側に吹き出す軸心エア吹き出し孔が形成されている構成となっている。そして、軸心エア吹き出し孔35は図示しないエア供給源に配管接続されており、ゲートバルブ5の軸心の先端53から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度のエアを吹き出す設定となっている。
【0045】
本実施形態では、ノズル2の吐出面23(出口23)から吐出される樹脂200が熱硬化性樹脂の場合には、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満で結露しない温度以上の温度範囲となるよう所定温度に設定された外周エア及び軸心エアを吹き出す。例えば、前記樹脂200が熱可塑性樹脂の場合には、流動性を有するレベルの液状樹脂となるようにするため、溶融温度以上で燃焼温度未満の温度範囲となるよう所定温度に設定された外周エア及び軸心エアを吹き出す。ここで、前記ゲートバルブ5の軸心に形成されたエア吹き出し孔35は、細くなった糸引き樹脂202の始点を切り離すためのものであり、エア吹き出し孔35の内径は小さい孔径で十分であり、この孔径を小さくすることで液状樹脂200の孔内への逆流を防止する効果もある。軸心エア吹き出し孔35の孔径は、液状樹脂202の性質に応じて適宜設定される。例えば、液粘度が高い液状樹脂202の場合には前記軸心エア吹き出し孔35の孔径を大きくし、液粘度が小さい液状樹脂202の場合には前記軸心エア吹き出し孔35の孔径を小さくするなど、適宜設定される。例えば、軸心エア吹き出し孔35の孔径は、0.2mmから1.0mmの範囲内で設定される。
【0046】
上記第2の実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図を図11と図12に示す。図11は、ゲートバルブ5を開いてノズル2から液状樹脂200を吐出した状態の図である。図12は、ゲートバルブ5を閉じて軸心からのエア吹き出しを開始した状態の図である。ここでは、前記樹脂200が熱可塑性樹脂であるとして、図9(a)に示すフローチャートにしたがって、本発明の液状樹脂供給機構1を適用した製造方法による樹脂成形手順を以下に説明する。なおここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。前記金型50を開き、ノズル2を所定位置まで前進させると(符号S1)、次に、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5が上がってゲートバルブを開き、液状樹脂200を下方側のキャビティ521に向けて吐出する(符号S2、図11)。液状樹脂200を下方側のキャビティ521に定量吐出すると(符号S2)、次に、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5が下がって、その先端53がノズル先端の吐出面23から突き出て、ノズル先端の吐出面23を閉じて(ゲートバルブ5を閉じて)、前記外周エア吹き出し口3の吹き出し面33(出口33)から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の外周エア(符号302)を吹き出し、それと同時に、ゲートバルブ5の軸心の先端53から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の軸心エア(符号352)を吹き出す(符号S3、図12)。又は、前記外周エア吹き出し口3の吹き出し面33(出口33)から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の外周エア(符号302)を吹き出して、暫くしてから、ゲートバルブ5の軸心の先端53から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の軸心エア(符号352)をさらに吹き出すようにしても良い。本実施形態によれば、細くなった糸引き樹脂202の始点をより確実に切り離すこととなる。なおここで、前記ゲートバルブ5の軸心に形成した軸心エア吹き出し孔35からのエア圧力は、前記外周エア吹き出し口3からのエア圧力に対して小さい圧力で十分な場合もあり、それは、前記外周エア吹き出し口3からの外周エア302によって十分細くなった糸引き樹脂202の始点を切り離せばよいからである。なお、前記外周エア302と前記軸心エア352とは、それらのエア温度を異ならせてもよく、それらのエア温度を同じ温度としてもよい。また、前記外周エア302と前記軸心エア352とは、それらのエア成分を異ならせてもよく、それらのエア成分を同じ成分としてもよい。
【0047】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す側面図を図13(a)に示し、その断面図を図13(b)に示す。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。本実施形態の液状樹脂供給機構1は、上述の第2の実施形態に付設されていた外周エア吹き出し口3を省いた構成となっている。液状樹脂202の性質によっては、ゲートバルブ5の軸心の先端53から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度のエアを吹き出す構成のみでも足りるからである。本実施形態によれば、ノズル2のスリム化が図れ、エア配管も簡易なものとなる。
【0048】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施形態の液状樹脂供給機構のノズルを示す側面図を図14(a)に示し、その断面図を図14(b)に示す。ここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。本実施形態の液状樹脂供給機構1は、上述の第2の実施形態における外周エア吹き出し口3を前記ノズルの外周に配された外筒形状としつつ、前記エア吹き出し口をストレート形状としており、外周エア吹き出し口3から吹き出す外周エア302が、吐出された液状樹脂200をエアカーテンで囲むようにしてその液状態を維持する構成となっている。なお、前記エア吹き出し口3は、下方に広がるラッパ形状としても良い。
【0049】
上記第4の実施形態のノズルの動作を側面側から見た断面図を図15と図16に示す。図15は、ゲートバルブ5を開いてノズル2から液状樹脂200を吐出した状態の図である。図16は、ゲートバルブ5を閉じて軸心からのエア吹き出しを開始した状態の図である。ここでは、前記樹脂200が熱可塑性樹脂であるとして、図9(b)に示すフローチャートにしたがって、本発明の液状樹脂供給機構1を適用した製造方法による樹脂成形手順を以下に説明する。なおここで、同一の符号は同じ機能を表しており、その説明を適宜省略する。前記金型50を開き、ノズル2を所定位置まで前進させると(符号S1)、次に、制御回路9からの制御信号によって、外周エア吹き出し口3から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の外周エア302を吹き出す(符号S4、図15)。ここでは、外周エア302を吹き付ける強さを、液状樹脂202の供給中は弱いエアを吹き出すことで、吐出された液状樹脂200をエアカーテンで囲むようにしてその液状態を維持している。外周エア吹き出し口3から外周エア302を吹き出している状態で(符号S4)、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5が上がってゲートバルブを開き、液状樹脂200を下方側のキャビティ521に向けて吐出する(符号S12、図15)。なお、前記外周エア302を吹き出すと同時にゲートバルブ5を開いても良いし、前記ゲートバルブ5を開いてから、外周エア302を吹き出しても良い。
【0050】
そして、前記液状樹脂200を下方側のキャビティ521に定量吐出すると(符号S12)、次に、制御回路9からの制御信号によって、ゲートバルブ5が下がって、その先端53がノズル先端の吐出面23から突き出て、ノズル先端の吐出面23を閉じて(ゲートバルブ5を閉じて)、前記外周エア(符号302)を吹き出すことに加えて、さらに、ゲートバルブ5の軸心の先端53から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の軸心エア(符号352)を吹き出す(符号S4、図16)。又は、前記外周エア(符号302)の吹き出しを停止して、暫くしてから、ゲートバルブ5の軸心の先端53から液状樹脂200の液状態を維持する所定温度の軸心エア(符号352)を吹き出すようにしても良い。本実施形態によれば、吐出された液状樹脂200をエアカーテンで囲むようにしてその液状態を維持し、液状樹脂200の吐出が終了すると、細くなった糸引き樹脂202の始点をより確実に切り離すこととなる。
【0051】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。前記外周エア吹き出し口3から外周エア302を吹き付ける強さを、液状樹脂202の供給中は弱いエアを吹き出すことで、吐出された液状樹脂200をエアカーテンで囲むようにしてその液状態や吐出される方向を一定に維持しつつ、ゲートバルブ5が閉じられた直後に強めの外周エア302を吹き付けて糸引き樹脂を切り離す制御をすることができる。また、ノズル2の先端部外周に形成した外周エア吹き出し口3から吹き出す外周エア(符号302)や、ゲートバルブ5に形成した軸心エア吹き出し孔35から吹き出すエア(符号352)は、1回の糸引き樹脂を切り離す制御の中で、連続的に吹き出すように制御することもできるし、間欠的に吹き出すように制御することもできる。また、図示省略されるが、加熱器や冷却器等のエアの温調手段や、開閉弁等のエア流路開閉手段や、流量制御弁等のエアの流量調節手段は、必要に応じて適宜備えられ、それらがエア供給源に備えてあってもよいし、エア配管等のエア流路の途中に別途備えてあっても良い。また、ゲートバルブ5の軸心に形成した軸心エア吹き出し孔35には、その軸心エア吹き出し孔35の吹き出し側の開口を開閉するゲートバルブ(図示省略)を別途備えて、液状樹脂200の逆流を防止する構成としてもよい。また、既存の圧縮成形機に配備された液状樹脂供給機構のノズルに、外周エア吹き出し口3を後付して、既存の制御回路を援用しその制御プログラムを一部見直して運用してもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 液状樹脂供給機構、
2 ノズル、
3 外周エア吹き出し口、
35 軸心エア吹き出し孔、
4 温調器(加熱器、冷却器)、
5 ゲートバルブ、
9 制御回路、
50 金型、
200 樹脂(液状樹脂)、
202 樹脂(糸引き樹脂)、
302 外周エア(所定温度のエア)、
352 軸心エア(所定温度のエア)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御回路によって制御され、ゲートバルブが内蔵されたノズルから液状樹脂を下方側に向けて吐出し金型の一方の型に液状樹脂を供給する液状樹脂供給機構であって、前記ノズルの外側には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の外周エアを下方側のノズル先端方向に吹き出す外周エア吹き出し口が配されていることを特徴とする液状樹脂供給機構。
【請求項2】
前記エア吹き出し口が前記ノズルの外周に配された外筒形状であり、前記ノズル及び前記エア吹き出し口がそれぞれ先細り形状となっていることを特徴とする請求項1記載の液状樹脂供給機構。
【請求項3】
前記ゲートバルブの先端が尖っており、液状樹脂の吐出を終了する際には前記ゲートバルブの先端が前記ノズルの先端から突き出ることを特徴とする請求項1または2記載の液状樹脂供給機構。
【請求項4】
前記ゲートバルブの軸心には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の軸心エアをその先端から下方側に吹き出す軸心エア吹き出し孔が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の液状樹脂供給機構。
【請求項5】
制御回路によって制御され、ゲートバルブが内蔵されたノズルから液状樹脂を下方側に向けて吐出し金型の一方の型に液状樹脂を供給する液状樹脂供給機構であって、前記ゲートバルブの軸心には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の軸心エアをその先端から下方側に吹き出す軸心エア吹き出し孔が形成されていることを特徴とする液状樹脂供給機構。
【請求項6】
前記ゲートバルブの先端が尖っており、液状樹脂の吐出を終了する際には前記ゲートバルブの先端が前記ノズルの先端から突き出ることを特徴とする請求項5記載の液状樹脂供給機構。
【請求項7】
前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、当該熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるように前記エア温度が設定されているか、又は、前記樹脂が熱硬化性樹脂であり、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満となるように前記エア温度が設定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の液状樹脂供給機構。
【請求項8】
前記ノズル先端から糸引き樹脂を切り離して、当該切り離した液状樹脂の液状態を維持させながら前記金型の一方の型に落下させることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の液状樹脂供給機構。
【請求項9】
前記請求項1から8のいずれか一項記載の液状樹脂供給機構が備わった圧縮成形機。
【請求項1】
制御回路によって制御され、ゲートバルブが内蔵されたノズルから液状樹脂を下方側に向けて吐出し金型の一方の型に液状樹脂を供給する液状樹脂供給機構であって、前記ノズルの外側には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の外周エアを下方側のノズル先端方向に吹き出す外周エア吹き出し口が配されていることを特徴とする液状樹脂供給機構。
【請求項2】
前記エア吹き出し口が前記ノズルの外周に配された外筒形状であり、前記ノズル及び前記エア吹き出し口がそれぞれ先細り形状となっていることを特徴とする請求項1記載の液状樹脂供給機構。
【請求項3】
前記ゲートバルブの先端が尖っており、液状樹脂の吐出を終了する際には前記ゲートバルブの先端が前記ノズルの先端から突き出ることを特徴とする請求項1または2記載の液状樹脂供給機構。
【請求項4】
前記ゲートバルブの軸心には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の軸心エアをその先端から下方側に吹き出す軸心エア吹き出し孔が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の液状樹脂供給機構。
【請求項5】
制御回路によって制御され、ゲートバルブが内蔵されたノズルから液状樹脂を下方側に向けて吐出し金型の一方の型に液状樹脂を供給する液状樹脂供給機構であって、前記ゲートバルブの軸心には、吐出した液状樹脂の液状態を維持する所定温度の軸心エアをその先端から下方側に吹き出す軸心エア吹き出し孔が形成されていることを特徴とする液状樹脂供給機構。
【請求項6】
前記ゲートバルブの先端が尖っており、液状樹脂の吐出を終了する際には前記ゲートバルブの先端が前記ノズルの先端から突き出ることを特徴とする請求項5記載の液状樹脂供給機構。
【請求項7】
前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、当該熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるように前記エア温度が設定されているか、又は、前記樹脂が熱硬化性樹脂であり、当該熱硬化性樹脂の加熱重合温度未満となるように前記エア温度が設定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の液状樹脂供給機構。
【請求項8】
前記ノズル先端から糸引き樹脂を切り離して、当該切り離した液状樹脂の液状態を維持させながら前記金型の一方の型に落下させることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の液状樹脂供給機構。
【請求項9】
前記請求項1から8のいずれか一項記載の液状樹脂供給機構が備わった圧縮成形機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−232437(P2012−232437A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101188(P2011−101188)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000132725)株式会社ソディック (197)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000132725)株式会社ソディック (197)
【Fターム(参考)】
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