説明

液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置

【課題】液状版感光性樹脂凸版をスムーズに搬入することができる乾燥装置を提供する。
【解決手段】傾斜ガイドに沿って上方から吊り下げた状態でケーシング内に搬入され、同ケーシングの底面を滑らせながら略水平状態とされた液状版感光性樹脂凸版を、前記ケーシング内に備えられた乾燥手段によって乾燥処理する乾燥装置において、傾斜ガイドの上面には、前記液状版感光性樹脂凸版の搬入方向と略平行に複数本の凸部が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール印刷、フィルム印刷、プレプリント印刷、ラベル印刷などの凸版印刷用の液状版感光性樹脂凸版を製版する際に用いられる乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液状版感光性樹脂凸版の製版において、後露光処理の済んだ液状版感光性樹脂凸版は乾燥装置によって乾燥処理するのが、一般的である(特許文献1)。
【0003】
このような乾燥処理を好適に実施できるように、本出願人は、傾斜ガイドに沿って上方から吊り下げた状態でケーシング内に搬入され、同ケーシングの底面を滑らせながら略水平状態とされた液状版感光性樹脂凸版を、前記ケーシング内に備えられた乾燥手段によって乾燥処理する構成の乾燥装置を開発し販売している。
【0004】
【特許文献1】特開平8−314126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液状版感光性樹脂凸版の製版において、後露光処理は液状版感光性樹脂凸版を液槽内の液体に沈め、ランプによって後露光処理するのが、一般的である。
【0006】
つまり、後露光処理の済んだ液状版感光性樹脂凸版は水で濡れており、前記液状版感光性樹脂凸版を乾燥装置の傾斜ガイドに沿って搬入しようとしても、従来の前記傾斜ガイドは単なる板状部材であるため、摩擦抵抗が大きく、スムーズに搬入することができない。
【0007】
本発明の目的は、液状版感光性樹脂凸版をスムーズに搬入することができる乾燥装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置は、
傾斜ガイドに沿って上方から吊り下げた状態でケーシング内に搬入され、同ケーシングの底面を滑らせながら略水平状態とされた液状版感光性樹脂凸版を、前記ケーシング内に備えられた乾燥手段によって乾燥処理する乾燥装置において、
傾斜ガイドの上面には、前記液状版感光性樹脂凸版の搬入方向と略平行に複数本の凸部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置において、
凸部は樹脂製の棒状部材であって、
前記棒状部材の下端部が台座に接合されており、前記台座が傾斜ガイドの上面に接合されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置において、
棒状部材の上面には、さらに前記棒状部材の長軸方向に凸部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1に記載の液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置において、
傾斜ガイドの上面及びケーシングの底面には、ガイドローラが液状版感光性樹脂凸版の搬入方向と略平行に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載の液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置において、
ガイドローラは、複数のローラが回転可能にフレーム材で支持された構成とされており、前記フレーム材が傾斜ガイドの上面又はケーシングの底面に接合されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5に記載の液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置において、
ローラは偏心させて支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置は、後露光処理によって液状版感光性樹脂凸版が水で濡れていても、前記液状版感光性樹脂凸版と凸部との接触面積が少ないので、前記液状版感光性樹脂凸版を搬入する際の摩擦抵抗が少なく、液状版感光性樹脂凸版をスムーズにケーシング内に搬入することができる。したがって、液状版感光性樹脂凸版が搬入途中に折れ曲がるなどのトラブルが少なく、液状版感光性樹脂凸版の品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
本実施形態の乾燥装置1は、液状版感光性樹脂凸版2を略水平状態に搬入し、且つ乾燥手段(図示は省略)を収納するのに十分な平面積、高さを有する箱型のケーシング3を備えている(図1及び図2を参照)。このケーシング3の背面は、図示を省略したが、ヒンジ機構によって回転可能な構成で前記ケーシング3の上面端縁に連結されており、前記背面を手動又は電動で開いてケーシング3の開口部とされる。
【0017】
ケーシング3の底面には、背面側の端縁に連続するように傾斜ガイド4が連結されている(図2を参照)。この傾斜ガイド4は、液状版感光性樹脂凸版2を前記傾斜ガイド4に沿って滑らせ、ケーシング3内でスムーズに略水平状態に移行させることができるように、ケーシング3の幅寸法と略等しい3枚の板材を円弧状に連結している。
【0018】
ケーシング3内には、液状版感光性樹脂凸版2から後露光処理で付着した水を、除湿及び熱風発生によって乾燥させる乾燥手段が格納されている(図示は省略)。
【0019】
ケーシング3の側面には、乾燥処理が終了した液状版感光性樹脂凸版2を取り出す搬出扉がヒンジ機構によって開閉可能に連結されている(図示は省略)。
【0020】
つまり、上記構成の乾燥装置1は、通例の乾燥装置と同様に、傾斜ガイド4に沿って上方から吊り下げた状態でケーシング3内に搬入され、同ケーシング3の底面を滑らせながら略水平状態とされた液状版感光性樹脂凸版2を、前記ケーシング3内に備えられた乾燥手段によって乾燥処理する構成とされている。特に、傾斜ガイド4の上面には、液状版感光性樹脂凸版2との摩擦を軽減する凸部5が前記液状版感光性樹脂凸版2の搬入方向と略平行に複数本形成されていることを特徴とする(図3を参照)。後露光処理によって液状版感光性樹脂凸版2が水で濡れていても、前記液状版感光性樹脂凸版2と凸部5との接触面積が少ないので、前記液状版感光性樹脂凸版2を搬入する際の摩擦抵抗が少なく、液状版感光性樹脂凸版2をスムーズにケーシング3内に搬入することができる。したがって、液状版感光性樹脂凸版2が搬入途中に折れ曲がるなどのトラブルが少なく、液状版感光性樹脂凸版2の品質を向上させることができる。
【0021】
凸部5は、傾斜ガイド4の各板材に収まる長さで、載置された液状版感光性樹脂凸版2が傾斜ガイド4に接触しない高さ(例えば、50mm程度)に成形された樹脂製の棒状部材である。本実施形態では傾斜ガイド4の上段の板材に接合される棒状部材6aと、中段及び下段の板材に接合される棒状部材6bとを用意した。
【0022】
棒状部材6aは、接着剤などの接合手段で上段の板材に、載置された液状版感光性樹脂凸版2が前記板材に接触しないように設定された間隔(例えば、100mm程度)を開けて接合されている。この棒状部材6aの上端角部は、搬入する液状版感光性樹脂凸版2が引っ掛からないように面取りされている(図3を参照)。
【0023】
棒状部材6bは、下端部が接着剤などの接合手段によって、例えば木製の台座7に接合されている(図4を参照)。ちなみに、本実施形態の棒状部材6bには、さらに前記棒状部材6bの長軸方向に、前記棒状部材6bと等しい長さで、載置された液状版感光性樹脂凸版2が前記棒状部材6bの上面に接触しない高さ(例えば、15mm〜20mm程度)の凸部8が一体的に形成されており、より液状版感光性樹脂凸版2との接触面積を減らし、摩擦抵抗の低減を図っている(請求項3記載の発明)。
【0024】
この棒状部材6bは、傾斜ガイド4の中段及び下段の板材に、やはり載置された液状版感光性樹脂凸版2が前記板材に接触しないように設定された間隔(例えば、100mm程度)を開けて台座7を介してボルトなどの接合手段によって接合されている(図3を参照、請求項2記載の発明)。
【0025】
本実施形態の乾燥装置1は、傾斜ガイド4(図示例では中段と下段の板材)の上面及びケーシング3の底面に、前記ケーシング3内に液状版感光性樹脂凸版2を滑走させながら搬入できるように、ガイドローラ9が前記液状版感光性樹脂凸版2の搬入方向と略平行に設けられている(図1及び図3を参照、請求項4記載の発明)。
【0026】
ガイドローラ9は、複数のローラ10が回転可能にフレーム材11で支持された構成とされている。つまり、ローラ10の外周上端が上記棒状部材6bの凸部8の上面と略等しい高さ位置に配置されるように前記ローラ10の回転軸の両側がL型のフレーム材11の垂直片に接合されており、前記フレーム材11の水平片が傾斜ガイド4の上面又はケーシング3の底面にボルトなどの接合手段によって接合されている(請求項5記載の発明)。
【0027】
なお、ローラ10は偏心させて支持されていることが好ましい(請求項6記載の発明)。前記ローラ10が回転する際に生じる振動で前記ローラ10に液状版感光性樹脂凸版2が密着して前記ローラ10の回転力が前記液状版感光性樹脂凸版2に伝わりやすく、確実に前記液状版感光性樹脂凸版2をケーシング3内に搬入することができる。このとき、前記ローラ10は短径側の外周上端が上記棒状部材6bの凸部8の上面と略等しい高さ位置に配置される。
【0028】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施し得る。例えば、上記実施形態では、傾斜ガイドを3枚の板材で構成したが、一枚の板材を湾曲させて構成しても良い。また、中段と下段の板材に接合した棒状部材のみに、さらに凸部を形成したが、上段の板材に接合した棒状部材にも凸部を形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の乾燥装置は、段ボール印刷、フィルム印刷、プレプリント印刷、ラベル印刷などの凸版印刷用の感光性樹脂凸版を製版する際に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置の概略斜視図である。
【図2】本発明に係る液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置の概略側面図である。
【図3】傾斜ガイド近傍を拡大して示した図である。
【図4】棒状部材を拡大して示した図である。
【符号の説明】
【0031】
1 乾燥装置
2 液状版感光性樹脂凸版
3 ケーシング
4 傾斜ガイド
5 凸部
6a、6b 棒状部材
7 台座
8 凸部
9 ガイドローラ
10 ローラ
11 フレーム材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜ガイドに沿って上方から吊り下げた状態でケーシング内に搬入され、同ケーシングの底面を滑らせながら略水平状態とされた液状版感光性樹脂凸版を、前記ケーシング内に備えられた乾燥手段によって乾燥処理する乾燥装置において、
傾斜ガイドの上面には、前記液状版感光性樹脂凸版の搬入方向と略平行に複数本の凸部が形成されていることを特徴とする、液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置。
【請求項2】
凸部は樹脂製の棒状部材であって、
前記棒状部材の下端部が台座に接合されており、前記台座が傾斜ガイドの上面に接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置。
【請求項3】
棒状部材の上面には、さらに前記棒状部材の長軸方向に凸部が形成されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置。
【請求項4】
傾斜ガイドの上面及びケーシングの底面には、ガイドローラが液状版感光性樹脂凸版の搬入方向と略平行に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置。
【請求項5】
ガイドローラは、複数のローラが回転可能にフレーム材で支持された構成とされており、前記フレーム材が傾斜ガイドの上面又はケーシングの底面に接合されていることを特徴とする、請求項4に記載の液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置。
【請求項6】
ローラは偏心させて支持されていることを特徴とする、請求項5に記載の液状版感光性樹脂凸版の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−310122(P2008−310122A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158616(P2007−158616)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】