説明

淡水化装置、及び油濁水再利用システム

【課題】冷却源として海水を使用しない淡水化装置と、この淡水化装置を備える油濁水再利用システムを提供することを課題とする。
【解決手段】予熱処理水W4を太陽熱Hで加熱して水蒸気Stを生成する太陽熱濃縮器80を有する水処理部6と、太陽熱Hを熱源とする吸収式冷凍サイクル部1とを含んで構成される淡水化装置100とした。そして、吸収式冷凍サイクル部1に備わる蒸発器40に、水蒸気Stを導入して凝縮し、淡水W6を生成することを特徴とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の淡水化装置と、この淡水化装置を備える油濁水再利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、塩水(海水)から淡水を生成する手段としてRO膜(逆浸透膜)が広く用いられているが、膜の耐久性や淡水の生成量の面で問題がある。このため、海水を加熱して水分を蒸発させ、再度凝縮させることによって淡水を得る蒸留式の淡水化装置がある。このような淡水化装置における熱源として、自然のエネルギである太陽熱が有力な候補である。さらに、効率よく蒸発させるためには、蒸発容器の内部を真空状態に維持することが有効である。
【0003】
そこで、太陽熱パネルと筐体とで真空容器を形成して蒸発容器とし、この内部に海水を循環させて水分を蒸発させ、水蒸気を生成するシステムが提案されている。
例えば、特許文献1には、上部が凸レンズで形成された容器を減圧し、太陽熱を凸レンズで集熱して、海水の水分を蒸発させる淡水化装置が開示されている。また、例えば特許文献2には、集熱ソーラパネルを用いるとともにパネル内を減圧し、パネル内を流通する作動流体である水を太陽熱で蒸発させ、凝縮器で液体に戻すことで、パネル内に水を循環させる高効率低温集熱パネルが開示されている。
【特許文献1】特開2004−160301号公報(請求項1、3、図1参照)
【特許文献2】特開2004−156818号公報(請求項2、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1、2に記載された技術は、自然のエネルギである太陽熱を熱源として海水などの原水を加熱し、生成した水蒸気を凝縮させて淡水を得ることができる。
しかしながら、海水から生成される淡水の需要が大きな地域は、例えば中東地域などのように外気温度が高い地域であることが多く、外気を水蒸気の冷却源に使用する場合には冷却装置が大型化するという問題がある。さらに、外気温度の変動によって淡水の生産量が影響を受けやすく、淡水の生産量が不安定になるという問題がある。
【0005】
また、例えば特許文献1には、海水の淡水化装置における水蒸気の冷却源として、処理前の海水を利用する技術が開示されているが、例えば中東地域などの石油生産地域において、石油生産の際に発生する油濁水を淡水化する淡水化装置は、海岸から離れた内陸部に建設される場合があり、水蒸気の冷却源として海水を利用できないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、冷却源として海水を使用しない淡水化装置と、この淡水化装置を備える油濁水再利用システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、原水から生成される水蒸気を、吸収式冷凍サイクルの蒸発器の被冷却面で凝縮させて淡水を生成する淡水化装置、及びこの淡水化装置を備えた油濁水再利用システムとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、冷却源として海水を使用しない淡水化装置と、この淡水化装置を備える油濁水再利用システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る油濁水再利用システムの構成図である。
本実施形態に係る油濁水再利用システム500は、例えば水攻法など、水圧を用いて石油を生産する石油生産プラントに設置され、石油生産の過程で発生する油濁水に含まれる油濁成分などの固形汚濁物や水溶性有機物などの被除去物を分離、除去して淡水を生成する。そして、生成される淡水を、例えば植物栽培プラントに利用するシステムである。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る油濁水再利用システム500は、石油生産現場における石油生産の過程で発生した油濁水W1に含まれる油濁成分などの固形浮遊物、藻類、菌類、微生物などの固形汚濁物を凝集分離する凝集磁気分離機(処理水生成手段)510と、凝集磁気分離機510によって固形汚濁物が除去された1次浄化水(1次処理水)W2に溶解している水溶性有機物を除去して、化学的酸素要求量(COD:Chemical Oxygen Demand)の値を下げるCOD除去装置(COD除去手段)530と、COD除去装置530によって水溶性有機物が除去されたCOD処理水(2次処理水)W3を、太陽熱を熱源として蒸留し、溶解している塩分を除去して淡水W6を生成する淡水化装置(塩分除去手段)100と、を含んで構成される。
【0012】
そして、生成される淡水W6をバイオ燃料農場などの植物栽培プラントP1に導水し、植物を栽培するための水として利用する。
【0013】
このような油濁水再利用システム500において、石油生産の過程で発生した油濁水W1は、凝集磁気分離機510に注入され、油濁成分などの固形浮遊物、藻類、菌類、微生物などの固形汚濁物が除去される。
凝集磁気分離機510は、磁気を利用した凝集分離によって、油濁水W1から固形汚濁物を除去して1次浄化水W2を生成する。凝集磁気分離機510で生成される1次浄化水W2は、固形汚濁物は除去されているが、水溶性有機物や塩分は溶解した状態で含まれている。
【0014】
なお、凝集磁気分離機510で油濁水W1から除去された固形汚濁物は汚泥として分離され、油濁水再利用システム500に備わる汚泥処理設備560で処理される。
汚泥は、油濁水W1に含まれる重金属や、凝集磁気分離機510で加えられる処理剤(凝集材やマグネタイトなど)を含有していることから、汚泥処理設備560では、これらの重金属や処理剤を分離回収し、再利用可能な成分は再利用するとともに、廃棄する成分は、無毒化などの必要な処理を施して廃棄する。
【0015】
凝集磁気分離機510で生成される1次浄化水W2は、COD除去装置530に注入され、水溶性有機物が除去される。
なお、1次浄化水W2は、周囲環境に与える負荷の大きな固形汚濁物が除去されていることから、その一部を河川等に放流してもよい。
COD除去装置530は、凝集磁気分離機510で生成される1次浄化水W2に溶解している水溶性有機物を、オゾンによる酸化作用を利用して除去して1次浄化水W2のCOD値を下げ、COD処理水W3を生成する。
【0016】
COD除去装置530は、1次浄化水W2の水溶性有機物を除去する装置であるが、1次浄化水W2に塩分が溶解している場合、この塩分を除去することができない。
【0017】
1次浄化水W2に塩分が溶解している場合、その塩分は海水に由来するものであり、油濁水W1に予め含まれているものである。
石油生産現場が海岸沿いにある場合はもちろん、海岸線から数十キロメートルの内陸部にある場合であっても、油濁水W1には1%程度の塩分が含まれていることがある。しかしながら、無機物である塩分はCOD除去装置530で除去されない。したがって、COD除去装置530で生成されるCOD処理水W3には塩分が溶解している場合がある。
【0018】
図1に示すように、油濁水W1を浄化して植物栽培プラントP1における植物栽培用の水として利用する場合、溶解している塩分は植物の栽培に大きな影響を与える。
栽培する植物の種類にもよるが、1%程度の塩分濃度を有すると、植物に致命的な影響を与えることが知られている。このことから、本実施形態に係るCOD除去装置530で生成されるCOD処理水W3は、植物の栽培には利用できない。
【0019】
しかしながら、COD処理水W3は、水溶性有機物が除去されているので、蒸留手段で蒸留して塩分を除去することができる。したがって、本実施形態に係る油濁水再利用システム500においては、淡水化装置100で、COD除去装置530で生成されるCOD処理水W3に溶解する塩分を除去し、淡水W6を生成する。
【0020】
淡水化装置100に注入されたCOD処理水W3は、太陽熱を熱源として蒸留され、淡水W6と濃縮水W9に分離される。
なお、淡水化装置100で分離される濃縮水W9は、例えば塩田等で塩分を析出させ、処理場で処理すればよい。または、周囲環境に影響を与える固形汚濁物が除去されていることから、河川等に放流してもよい。
【0021】
淡水化装置100で生成される淡水W6は、固形汚濁物、水溶性有機物、及び塩分が除去されていることから、様々な用途に利用できる。
本実施形態に係る油濁水再利用システム500においては、淡水化装置100で生成される淡水W6を、例えばバイオ燃料農場等の植物栽培プラントP1に導水し、植物栽培用の水として利用する。
そして、バイオ燃料農場等の植物栽培プラントP1で栽培される、ジャトロファなどのバイオ燃料用植物からは、バイオ燃料を生産できる。
【0022】
このように、本実施形態に係る油濁水再利用システム500によって、油濁水W1を浄化して得られる淡水W6をバイオ燃料の生産に再利用できる。
【0023】
ジャトロファは、その種子から抽出される油分でバイオ燃料を生成できるうえ、食用の植物ではない。したがって、トウモロコシやサトウキビなどとは異なり、食糧の供給に影響を与えることなく、バイオ燃料の生産のためだけに栽培できることから、その栽培量の増加が見込まれる植物である。さらに、栽培に必要な水分の量も比較的少なくてよいことから、例えば石油生産地域である中東地域のような、降水量の少ない乾燥した地域でも比較的栽培しやすい植物である。
また、ジャトロファは、トウモロコシやサトウキビなど食用となる植物を栽培できない地域でも栽培可能な作物であり、トウモロコシやサトウキビなどの作付面積を減少させることなく栽培することができる。したがって、ジャトロファを栽培することで、トウモロコシやサトウキビの供給に影響を与えることなく、バイオ燃料を生産できる。
【0024】
図2は、淡水化装置の構造を示す図である。図2に示すように、淡水化装置100は、太陽熱Hを熱源として冷熱を発生する吸収式冷凍サイクル部1と、太陽熱Hを熱源として原水を加熱し、淡水W6と濃縮水W9を生成する水処理部6と、を含んで構成される。
なお、図2の太線は液体の流通を示し、細線は気体の流通を示す。
【0025】
吸収式冷凍サイクル部1には、冷媒が液体と気体の間で相変化しながら循環している。
液体の冷媒は、真空環境下で気化し、そのときの気化熱で被冷却物を冷却する。気化した冷媒は、吸収液に吸収されて流通し、太陽熱Hで加熱されると吸収液から蒸発する。吸収液から蒸発した、気体の冷媒は、空気などによって冷却され、液体の冷媒に凝縮される。そして液体の冷媒は、真空環境下で気化して被冷却物を冷却する。
一方、太陽熱Hで加熱され、冷媒が蒸発した後の吸収液は、濃縮されて冷媒を吸収しやすい状態になり、真空環境下で気化した冷媒を吸収する。
このように、吸収式冷凍サイクル部1には冷媒が循環し、被冷却物を冷却する。
【0026】
なお、吸収液は、冷媒を吸収する能力の高い溶液で、例えば冷媒として水を使用し、吸収液として臭化リチウム溶液を使用する構成が知られている。
【0027】
水処理部6は、原水を太陽熱Hで加熱して水蒸気を発生し、発生した水蒸気を、被冷却物として吸収式冷凍サイクル部1に導入する。
吸収式冷凍サイクル部1では、導入された水蒸気を、液体の冷媒が気化するときの気化熱で冷却して凝縮させ、淡水W6を生成する。
一方、太陽熱Hで加熱したときに蒸発しなかった原水は濃縮され、濃縮水W9が生成される。
このように、水処理部6では、淡水W6と濃縮水W9が生成される。
【0028】
吸収式冷凍サイクル部1は、太陽熱再生器(再生器)10と、空冷凝縮器(凝縮器)20と、蒸発器40と、空冷吸収器(吸収器)30と、溶液熱交換器50と、処理水予熱器(予熱器)70と、を含んで構成される。
太陽熱再生器10と空冷吸収器30は配管を介して連結され、吸収液が循環するように構成される。そして、吸収液を循環させるための循環ポンプ35が備わる。
【0029】
また、太陽熱再生器10、空冷凝縮器20、蒸発器40、及び処理水予熱器70は、配管を介して連結され、冷媒が気体と液体の間を相変化しながら循環する。
さらに、空冷吸収器30は、蒸発器40に、互いの内部空間が連通するように接続され、連通した内部空間を冷媒が流通するように構成される。
以下、気体の冷媒を冷媒蒸気、液体の冷媒を冷媒液と称する。
【0030】
そして、これらの各機器の内部、及び各機器を連結する配管内部は真空状態に構成されている。
さらに、空冷吸収器30の内部、及び蒸発器40の内部は、太陽熱再生器10の内部、空冷凝縮器20の内部、及び処理水予熱器70の内部より高い真空度に構成されることが好適である。
この構成によって、蒸発器40の内部では、より低温で冷媒液を蒸発させることができる。
【0031】
太陽熱再生器10は、空冷吸収器30から溶液熱交換器50を経由して導入される、冷媒を吸収して低濃度になった吸収液(希溶液L2)を太陽熱Hで加熱する。太陽熱再生器10の内部は真空状態に構成されて冷媒の蒸発温度が低いことから、加熱された希溶液L2に含まれる冷媒が蒸発し、高温の冷媒蒸気C1として分離する。一方、希溶液L2は、冷媒蒸気C1が分離したことで濃縮され、高濃度の吸収液(濃溶液L1)が生成される。
吸収液が冷媒を吸収した状態の希溶液L2は、冷媒を吸収する能力が低下しているが、太陽熱再生器10で生成される濃溶液L1は、冷媒を吸収する能力が高くなっている。
【0032】
希溶液L2から分離した、高温の冷媒蒸気C1は2系統に分岐し、一方は空冷凝縮器20に導入され、他方は処理水予熱器70に導入される。
空冷凝縮器20に導入された冷媒蒸気C1は、空気Airによって冷却されて凝縮され、冷媒液C2が生成される。
なお、空冷凝縮器20で冷媒蒸気C1を冷却した空気Airは、空冷凝縮器20に備わる冷却ファン27で淡水化装置100の外部に排気される。
【0033】
空冷凝縮器20で生成される冷媒液C2は、オリフィス等の絞り26を経由して蒸発器40に導入される。
前記したように、蒸発器40の内部の真空度は空冷凝縮器20の内部の真空度より高いことから、空冷凝縮器20と蒸発器40の間に絞り26を配設し、空冷凝縮器20と蒸発器40の間の圧力差を維持する。
蒸発器40には、導入された冷却液C2を、内部に配管される蒸発伝熱管44の表面に滴下する冷媒滴下装置43が備わり、蒸発器40に導入された冷媒液C2は、冷媒滴下装置43によって蒸発伝熱管44の表面に滴下される。
【0034】
空冷吸収器30には、循環ポンプ35によって、太陽熱再生器10で生成される濃溶液L1が導入され、濃溶液L1は空冷吸収器30の内部で空気Airによって冷却される。
そして、温度が低くなった濃溶液L1は、空冷吸収器30に導入された冷媒蒸気C3をよく吸収し、希溶液L2が生成される。
なお、空冷吸収器30で濃溶液L1を冷却した空気Airは、空冷吸収器30に備わる冷却ファン37によって淡水化装置100の外部に排気される。
【0035】
また、冷媒蒸気C3が、空冷吸収器30で濃溶液L1に吸収されることから、空冷吸収器30の内部と連通する蒸発器40の内部の圧力が減圧されて高い真空度を維持することができ、蒸発器40の内部の蒸発温度を低く維持できる。
【0036】
空冷吸収器30で生成される希溶液L2は、循環ポンプ35によって、溶液熱交換器50を経由して太陽熱再生器10に導入される。
溶液熱交換器50では、空冷吸収器30で冷却された低温の希溶液L2と、太陽熱再生器10で加熱された高温の濃溶液L1とで熱交換をして、希溶液L2の温度を上げる一方で濃溶液L1の温度を下げる。このことによって、太陽熱再生器10の希溶液L2に対する加熱負荷、及び空冷吸収器30の濃溶液L1に対する冷却負荷を共に軽減することができる。したがって、太陽熱再生器10及び空冷吸収器30を小型化することができ、淡水化装置100を小型化できる。
【0037】
次に、水処理部6の動作を説明する。
水処理部6は、太陽熱濃縮器(加熱濃縮器)80と、濃縮水ポンプ85と、処理水熱交換器81と、淡水ポンプ46と、吸収式冷凍サイクル部1に備わる蒸発器40の内部に配管される蒸発伝熱管44と、を含んで構成される。
【0038】
COD除去装置530(図1参照)から淡水化装置100に注入されたCOD処理水W3は、吸収式冷凍サイクル部1に備わる処理水予熱器70に導入される。
【0039】
処理水予熱器70は、内部に配管される冷却管70aを流通するCOD処理水W3と、吸収式冷凍サイクル部1の太陽熱再生器10で生成される冷媒蒸気C1とで熱交換し、COD処理水W3の温度を上げて、高温の予熱処理水W4を生成する。この予熱処理水W4が原水になる。
なお、処理水予熱器70では、COD処理水W3と熱交換をして冷却された冷媒蒸気C1が凝縮されて冷媒液C4が生成される。そして、冷媒液C4は、絞り26の上流で冷媒液C2と合流し、絞り26を経由して蒸発器40に導入される。
【0040】
処理水予熱器70で生成される予熱処理水W4は、処理水熱交換器81において、太陽熱濃縮器80から排出される高温の濃縮水W9と熱交換して温度がさらに上昇し、太陽熱濃縮器80に導入される。このように、太陽熱濃縮器80に導入される前に予熱処理水W4の温度を上げることで、太陽熱濃縮器80の予熱処理水W4に対する加熱負荷を軽減できる。
【0041】
太陽熱濃縮器80に導入された予熱処理水W4は、太陽熱Hによってさらに加熱され、その一部が蒸発して気化し、水蒸気Stが生成される。また、気化しなかった残りの予熱処理水W4は、濃縮された濃縮水W9となって、濃縮ポンプ85によって大気圧以上に加圧され、処理水熱交換器81を経由して淡水化装置100の外部に排出される。
【0042】
一方、太陽熱濃縮器80で生成される水蒸気Stは、吸収式冷凍サイクル部1の蒸発器40に備わる蒸気ヘッダ41を経由して蒸発伝熱管44に導入される。
図2に示す蒸発器40には、1つの蒸発伝熱管44が示されているが、蒸発器40には複数の蒸発伝熱管44が配管される構成であってもよい。
この構成のとき、蒸気ヘッダ41は、水蒸気Stを複数の蒸発伝熱管44に配分する機能を有する。
【0043】
前記したように、蒸発器40の内部には冷媒滴下装置43が備わり、冷媒液C2(C4)が蒸発伝熱管44の表面に滴下される。
蒸発器40の内部は真空状態に構成され、水の蒸発温度が5℃〜15℃程度になるように真空環境が形成されている。したがって、冷媒として水を使用する場合、蒸発伝熱管44の内部を流通する水蒸気Stの凝縮温度より、蒸発器40の内部における冷媒液C2の蒸発温度を低くできる。この構成によって、水蒸気Stが蒸発伝熱管44に導入されたときに、蒸発伝熱管44の表面温度が、水蒸気Stの温度に上昇していると、蒸発伝熱管44の表面に滴下された冷媒液C2の一部は蒸発して気化し、冷媒蒸気C3が発生する。そして、蒸発伝熱管44の表面は、冷媒液C2の気化熱で冷却される。このことから、蒸発伝熱管44の表面は、被冷却面となる。
【0044】
蒸発伝熱管44の表面が冷媒液C2(C4)の気化熱で冷却されると、蒸発伝熱管44に導入された水蒸気Stは、蒸発伝熱管44によって冷却されて凝縮され、淡水W6が生成される。
このとき蒸発器40で発生した冷媒蒸気C3は、蒸発器40の内部と連通する空冷吸収器30の内部に導かれる。
一方、蒸発器40で気化しなかった残りの冷媒液C2は、蒸発器ポンプ45によって冷媒滴下装置43に再度導入され、蒸発伝熱管44の表面に滴下される。
【0045】
蒸発器40で生成される淡水W6は、蒸発器40に備わる淡水ヘッダ42を経由し、淡水ポンプ46によって大気圧以上に加圧され、淡水化装置100の外部に排出される。
蒸発器40に複数の蒸発伝熱管44が配管される構成の場合、淡水ヘッダ42は、それぞれの蒸発伝熱管44で生成される淡水W6を集める機能を有する。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る淡水化装置100は、太陽熱Hを熱源としてCOD処理水W3を蒸留し、淡水W6を生成できる。
【0047】
図3は、吸収式冷凍サイクル部における作動温度サイクルを示す図であり、吸収式冷凍サイクル部1を構成する太陽熱再生器10(図2参照)、空冷凝縮器20(図2参照)、空冷吸収器30(図2参照)、及び蒸発器40(図2参照)をデューリング線図上に示したもので、縦軸に凝縮温度、横軸に溶液温度を示したものある。
なお、処理水予熱器70(図2参照)は、太陽熱再生器10及び空冷凝縮器20と連結して備わり、冷媒蒸気C1がCOD処理水W3によって冷却されて凝縮されることから、作動温度サイクルから見た動作点は、空冷凝縮器20に一致する。
【0048】
以下、図3を参照して吸収式冷凍サイクル部1の作動温度サイクルを説明する(適宜、図1、2参照)。
図3に示す温度TEは、蒸発器40における冷媒液C2(C4)の蒸発温度であり、冷媒として水を使用する場合、太陽熱濃縮器80で生成される水蒸気Stの凝縮温度とほぼ等しい。
温度TAは、空冷凝縮器20及び空冷吸収器30の動作環境の温度(外気温度)であり、外気を直接冷却源とした場合の水蒸気Stの凝縮温度に相当する。そして、温度TEと温度TAの温度差をΔTとする。
【0049】
また、凝縮温度TSは、蒸発器40及び空冷吸収器30における冷媒の凝縮温度であり、冷媒は、蒸発器40及び空冷吸収器30において凝縮温度TS以上になると気化する。すなわち、蒸発器40における冷媒液C2(C4)の蒸発温度である温度TEと等しい。
凝縮温度TSは、太陽熱再生器10及び空冷凝縮器20における冷媒の凝縮温度であり、冷媒は、太陽熱再生器10及び空冷凝縮器20において凝縮温度TS以上になると気化する。
【0050】
前記したように、蒸発器40の内部、及び空冷吸収器30の内部の真空度は、太陽熱再生器10の内部、及び空冷凝縮器20の内部の真空度より高いことから、蒸発器40、及び空冷吸収器30の凝縮温度TSは、太陽熱再生器10、及び空冷凝縮器20の凝縮温度TSより低くなる。
【0051】
本実施形態に係る淡水化装置100において、凝縮温度TSは、温度TA(外気温度)と略等しい。この構成により、空冷凝縮器20で冷媒蒸気C1を空気Airで冷却して凝縮させ、冷媒液C2を生成できる。
【0052】
太陽熱再生器10で加熱された希溶液L2から蒸発する冷媒蒸気C1は、太陽熱Hによって温度T1に加熱され、空冷凝縮器20に導入される。
空冷凝縮器20に導入された冷媒蒸気C1は、空気Airによって外気温度TAに冷却されて凝縮され、冷媒液C2が生成される。そして、冷媒液C2は蒸発器40に導入される。
【0053】
蒸発器40は、空冷凝縮器20より真空度が高く、凝縮温度が低いことから、蒸発器40に導入された冷媒液C2は、周囲から気化熱を奪って気化し、冷媒蒸気C3が発生する。
このとき冷媒蒸気C3の温度は、外気温度TAより温度差ΔTだけ低い温度TEになる。そして、冷媒蒸気C3は、蒸発器40と連結する空冷吸収器30に導かれて、空気Airによって外気温度TAに冷却されている濃溶液L1に吸収される。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る淡水化装置100は、太陽熱濃縮器80で生成される水蒸気Stを、吸収式冷凍サイクル部1の被冷却面である蒸発伝熱管44に直接導いて冷却する構成であり、外気温度TAより温度差ΔTだけ低い温度TEで水蒸気Stを凝縮できる。
【0055】
したがって、本実施形態に係る油濁水再利用システム500(図1参照)を、例えば中東地域など外気温度の高い地域で使用する場合であっても、水蒸気Stを低い温度で凝縮させることができ、太陽熱濃縮器80(図2参照)で生成される水蒸気Stを効率よく凝縮できる。
このことによって、淡水W6を効率よく安定して生成できるという優れた効果を奏する。
また、本実施形態に係る油濁水再利用システム500は、水蒸気Stの冷却に海水を使用しないことから、海岸線から離れた内陸部でも使用することができる。
【0056】
さらに、図2に示すように、本実施形態に係る油濁水再利用システム500(図1参照)の淡水化装置100には、処理水予熱器70を備え、COD除去装置530(図1参照)で生成されるCOD処理水W3を予熱しているので、COD処理水W3を加熱濃縮する太陽熱濃縮器80の加熱負荷を軽減できる。
したがって、太陽熱濃縮器80を小型化することができる。
さらに、処理水予熱器70の伝熱形態は、冷媒蒸気Stの側が凝縮熱伝導、COD処理水W3の側が強制対流熱伝導であり、太陽熱濃縮器80に比べて熱伝達率が高い。したがって、例えば処理水予熱器70の小型化を図ることができることから、油濁水再利用システム500を小型化することができ、設置面積を小さくできる。
【0057】
また、図2に示すように、処理水予熱器70では、吸収式冷凍サイクル部1の太陽熱再生器10で発生した冷媒蒸気C1を凝縮させて冷媒液C4を生成している。したがって、COD処理水W3の温度が大気温度TAより低い場合には、冷媒蒸気C1の圧力を低減し、太陽熱再生器10における冷媒蒸気C1の発生量を増大させて、吸収式冷凍サイクル部1の冷却能力と淡水W6の生成量を増大させることができる。
【0058】
また、図2に示す淡水化装置100においては、濃縮水ポンプ85で圧縮された高温の濃縮水W9を処理水熱交換器81に導入し、太陽熱濃縮器80に導入される前の、処理水予熱器70で予熱された予熱処理水W4の温度をさらに上げる構成とした。この構成によって、太陽熱濃縮器80における加熱負荷をさらに軽減することができ、例えば太陽熱濃縮器80を小型化することができる。
【0059】
なお、本実施形態に係る淡水化装置100は、図2に示すように、濃縮水ポンプ85で圧縮された濃縮水W9を処理水熱交換器81に導入する構成であるが、例えば複数の太陽熱濃縮器80を直列に備える構成とし、最も下流に備わる太陽熱濃縮器80で生成される、最も濃度の高い濃縮水W9と、最も上流に備わる太陽熱濃縮器80に供給される予熱処理水W4とで熱交換する構成としてもよい。
【0060】
石油生産の過程で発生する油濁水を浄化して淡水を生成する場合、油濁水に塩分が含まれているときには、最終段階で蒸留して塩分を除去する。
この場合、蒸留時に生成される水蒸気の凝縮手段として、外気や海水による冷却が広く用いられるが、例えば主な石油生産地域である中東地域では外気温度が高く、充分に冷却できない。また、内陸部では海水の使用が困難である。
【0061】
本実施形態に係る油濁水再利用システムは、太陽熱を熱源とした吸収式冷凍サイクルを使用し、蒸発器の被冷却面に水蒸気を直接導いて、大気温度より低い温度で効率よく水蒸気を凝縮させることを特徴とした。
したがって、外気や海水による冷却を必要とせず、例えば大気温度が高く、且つ海水の入手が困難な中東地域の内陸部においても効率よく淡水を生成できるという優れた効果を奏する。
【0062】
以上、本実施形態に係る油濁水再利用システム500(図1参照)に備わる、淡水化装置100(図2参照)について説明したが、油濁水再利用システム500に備わる淡水化装置は、例えば、二重効用に低圧濃縮器が配置される二重効用型であってもよい。
図4は、二重効用型の淡水化装置の構成例を示す図である。
なお、図4に示す淡水化装置100aの吸収式冷凍サイクル部1の構成は、図2に示す淡水化装置100の吸収式冷凍サイクル部1と同じ構成であり、詳細な図示及び説明は省略する。
また、図4に示す淡水化装置100aの水処理部6aで、図1に示す淡水化装置100の水処理部6と同じ構成については同じ符号を付し、説明は適宜省略する。
さらに、図4の太線は液体の流通を示し、細線は気体の流通を示す。
【0063】
図4に示すように、二重効用型の淡水化装置100aの水処理部6aは、太陽熱濃縮器80と蒸発伝熱管44の間に、低圧濃縮器60が備わって構成される。
低圧濃縮器60の内部は真空状態に維持されるとともに、太陽熱濃縮器80で生成される水蒸気(以下、第1水蒸気S1と称する)が流通する伝熱管64が配管され、低圧濃縮器60に導入される予熱処理水W4を、低圧濃縮器60の内部に滴下する滴下装置60aが備わる。
なお、図4の低圧濃縮器60には、1つの伝熱管64が示されているが、複数の伝熱管64が備わり、蒸気ヘッダ60cが第1水蒸気S1を複数の伝熱管64に配分する構成であってもよい。
【0064】
また、滴下装置60aから滴下された予熱処理水W4の一部が蒸発して気化した水蒸気(以下、第2水蒸気S2と称する)を蒸発伝熱管44に導く配管と、低圧濃縮器60の内部に溜った中間濃縮水W8を太陽熱濃縮器80に導入するための中間濃縮水ポンプ65を備える。
中間濃縮水W8は、滴下装置60aから滴下された予熱処理水W4の一部が蒸発しないで、濃縮されて生成される。
【0065】
このように構成される淡水化装置100aにおいては、COD除去装置530(図1参照)から処理水予熱器70に導入されたCOD処理水W3が、処理水予熱器70で加熱されて予熱処理水W4が生成される。この予熱処理水W4が原水になる。
【0066】
予熱処理水W4は、処理水熱交換器81における濃縮水W9との熱交換でさらに加熱された後、低圧濃縮器60の滴下装置60aに導入される。予熱処理水W4は滴下装置60aによって低圧濃縮器60の内部に滴下され、伝熱管64を流通する第1水蒸気S1との熱交換で加熱されて一部が蒸発して気化し、第2水蒸気S2が生成される。このとき、伝熱管64を流通する第1水蒸気S1は、予熱処理水W4の気化熱で凝縮され、淡水W6aが生成される。
そして、気化しなかった予熱処理水W4は濃縮されて、中間濃縮水W8が生成される。
【0067】
低圧濃縮器60で生成される第2水蒸気S2は、吸収式冷凍サイクル部1の蒸発器40に配管される蒸発伝熱管44に導入され、蒸発器40の内部を滴下する冷媒液C2の気化熱で冷却されて凝縮されて淡水W6bが生成される。
淡水W6bは、蒸発器40に備わる淡水ヘッダ42を経由して、淡水ポンプ46によって大気圧以上に加圧される。
【0068】
一方、低圧濃縮器60で生成される中間濃縮水W8は、中間濃縮水ポンプ65によって太陽熱濃縮器80に導入される。
太陽熱濃縮器80に導入された中間濃縮水W8は太陽熱Hによって加熱され、その一部が蒸発して気化し、第1水蒸気S1が生成される。また、気化しなかった残りの中間濃縮水W8は、さらに濃縮された濃縮水W9となって、濃縮ポンプ85によって大気圧以上に加圧され、処理水熱交換器81を経由して淡水化装置100aの外部に排出される。
【0069】
太陽熱濃縮器80で生成される第1水蒸気S1は、蒸気ヘッダ60cを経由して、低圧濃縮器60の内部に配管される伝熱管64に導入され、低圧濃縮器60の内部に滴下される予熱処理水W4の一部が気化するときの気化熱で凝縮され、淡水W6aが生成される。
【0070】
前記したように、低圧濃縮器60の内部は真空状態に維持され、蒸発温度が低くなっていることから、第1水蒸気S1が導入された伝熱管64に予熱処理水W4が接触すると、予熱処理水W4の一部は蒸発して気化する。そして、伝熱管64に導入された第1水蒸気S1から気化熱を奪って第1水蒸気S1を冷却し、凝縮させる。
【0071】
低圧濃縮器60で生成される淡水W6aは、低圧濃縮器60に備わる淡水ヘッダ60bを経由して淡水ポンプ66によって大気圧以上に加圧され、淡水ポンプ46で加圧された淡水W6bと合流して淡水W6となり、淡水化装置100aの外部に排出される。
【0072】
このように、二重効用型の淡水化装置100a(図4参照)は、原水(予熱処理水W4)の濃縮、及び水蒸気(第1水蒸気S1、第2水蒸気S2)と淡水(W6a、W6b)の生成を二段階で実行する。
二重効用型の淡水化装置100aを採用することによって、淡水W6の生成量を増量することができ、効率よく淡水W6を得ることができる。
【0073】
また、例えば図2に示す淡水化装置100と同量の淡水W6を得る場合、二重効用型の淡水化装置100aにおいては、設置面積の多くを占有する太陽熱濃縮器80(図4参照)の受熱面(太陽熱を受ける面)の面積を小さくすることができる。
例えば、二重効用型の淡水化装置100a(図4参照)は、図2に示す淡水化装置100に備わる太陽熱濃縮器80の受熱面の面積の半分で、同量の淡水W6を生成することができる。
したがって、二重効用型の淡水化装置100aが備わる油濁水再利用システム500(図1参照)全体を小型化することができ、油濁水再利用システム500の設置面積を小さくできるという優れた効果を奏する。
【0074】
なお、蒸発及び濃縮操作を多重効用とする技術は、特に化学プラントの分野では常套手段であり広く公知の技術であるが、多重効用の効果を最大限に発揮するためには、最下段における凝縮温度及び圧力を充分に低くする必要がある。したがって、主な石油生産地域である、外気温度の高い中東地域において、外気による直接冷却方式にすると、冷却装置の大型化や、最も上段に位置する太陽熱濃縮器の高温化に伴ってシステム全体が大型化してしまい、多重効用方式を採用することによる弊害が発生する。
【0075】
これに対し、本実施形態に係る淡水化装置100a(図4参照)は、最下段の冷却に吸収冷凍サイクル方式を採用していることから、図3に示すように、第1水蒸気S1は、外気温度TAより温度差ΔTだけ低い温度TEで凝縮され、外気温度の高い中東地域であっても多重効用の効果を最大限に発揮できる。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る、二重効用型の淡水化装置100a(図4参照)の特徴は、吸収式冷凍サイクル方式を採用することで、予熱処理水W4(図4参照)の濃縮、すなわち、淡水W6(図4参照)の生成における多重効用(二重効用)の効果を最大限に発揮できる点にある。
【0077】
なお、本実施形態に係る油濁水再利用システム500(図1参照)においては、二重効用型の淡水化装置100a(図4参照)のほか、三重効用に低圧濃縮器が配置される三重効用型、四重効用に低圧濃縮器が配置される四重効用型の淡水化装置備える構成も可能である。
図5は、四重効用型の淡水化装置の構成例を示す図である。
図5に示す、四重効用型の淡水化装置100bの吸収式冷凍サイクル部1の構成は、図2に示す淡水化装置100の吸収式冷凍サイクル部1と同じ構成であり、詳細な図示及び説明は省略する。
また、四重効用型の淡水化装置100bの水処理部6bで、図4に示す二重効用型の淡水化装置100aの水処理部6aと同じ構成については同じ符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
さらに、図5の太線は液体の流通を示し、細線は気体の流通を示す。
【0078】
図5に示すように、四重効用型の淡水化装置100bの水処理部6bは、太陽熱濃縮器80と蒸発伝熱管44の間に中間濃縮部90が備わって構成され、中間濃縮部90は、1台の上段低圧濃縮器91と、1台の中段低圧濃縮器92と、1台の下段低圧濃縮器93を含んでなる。
なお、上段低圧濃縮器91の内部、中段低圧濃縮器92の内部、及び下段低圧濃縮器93の内部は、それぞれ真空状態に維持され、上段低圧濃縮器91、中段低圧濃縮器92、及び下段低圧濃縮器93は、低圧濃縮器である構成が好ましい。
【0079】
上段低圧濃縮器91の内部には、少なくとも1つの伝熱管91cが配管され、伝熱管91cには、太陽熱濃縮器80で生成される第1水蒸気S1が、蒸気ヘッダ91bを経由して導入される。
さらに、後段に配置される中段低圧濃縮器92から導入される中間濃縮水W8が伝熱管91cの表面に滴下され、中間濃縮水W8の一部は気化して第3水蒸気S3が生成される。
そして、伝熱管91cを流通する第1水蒸気S1は、中間濃縮水W8の気化熱で凝縮されて、淡水W6cが生成される。
【0080】
これは、上段低圧濃縮器91の内部が真空状態に維持されていることによる。
すなわち、上段低圧濃縮器91の内部は蒸発温度が低くなっていることから、太陽熱Hで加熱された高温の第1水蒸気S1が流通する伝熱管91cに中間濃縮水W8が接触すると、中間濃縮水W8の一部は蒸発して気化する。そして、伝熱管91cに導入された第1水蒸気S1から気化熱を奪って、第1水蒸気S1を冷却する。
【0081】
上段低圧濃縮器91で生成される淡水W6cは、淡水ヘッダ91aを経由して淡水ポンプ91dによって、大気圧以上に加圧される。
【0082】
中段低圧濃縮器92の内部には、少なくとも1つの伝熱管92cが配管され、伝熱管92cには、前段に配置される上段低圧濃縮器91で生成される第3水蒸気S3が、蒸気ヘッダ92bを経由して導入される。
さらに、後段に配置される下段低圧濃縮器93から導入される中間濃縮水W8が伝熱管92cの表面に滴下され、中間濃縮水W8の一部は気化して第4水蒸気S4が生成される。
そして、伝熱管92cを流通する第3水蒸気S3は、中間濃縮水W8の気化熱で凝縮されて、淡水W6dが生成される。
【0083】
これは、中段低圧濃縮器92の内部が真空状態に維持されていることによる。
すなわち、中段低圧濃縮器92の内部は蒸発温度が低くなっていることから、第3水蒸気S3が流通する伝熱管92cに中間濃縮水W8が接触すると、第3水蒸気S3の熱で中間濃縮水W8の一部は蒸発して気化する。そして、伝熱管92cに導入された第3水蒸気S3から気化熱を奪って、第3水蒸気S3を冷却する。
【0084】
中段低圧濃縮器92で生成される淡水W6dは、淡水ヘッダ92aを経由して淡水ポンプ92dによって、大気圧以上に加圧される。
一方、蒸発しないで中段低圧濃縮器92の内部に溜まった中間濃縮水W8は、中間濃縮水ポンプ65によって、前段に配置される上段低圧濃縮器91に導入される。
【0085】
下段低圧濃縮器93の内部には、少なくとも1つの伝熱管93cが配管され、伝熱管93cには、中段低圧濃縮器92で生成される第4水蒸気S4が、蒸気ヘッダ93bを経由して導入される。
さらに、予熱処理水W4が伝熱管93cの表面に滴下され、予熱処理水W4の一部は気化して第2水蒸気S2が生成される。
そして、伝熱管93cを流通する第4水蒸気S4は、予熱処理水W4の気化熱で凝縮されて、淡水W6eが生成される。
【0086】
これは、下段低圧濃縮器93の内部が真空状態に維持されていることによる。
すなわち、下段低圧濃縮器93の内部は蒸発温度が低くなっていることから、第4水蒸気S4が流通する伝熱管93cに予熱処理水W4が接触すると、第4水蒸気S4の熱で予熱処理水W4の一部は蒸発して気化する。そして、伝熱管93cに導入された第4水蒸気S4から気化熱を奪って、第4水蒸気S4を冷却する。
【0087】
下段低圧濃縮器93で生成される淡水W6eは、淡水ヘッダ93aを経由して淡水ポンプ93dによって、大気圧以上に加圧される。
一方、蒸発しないで下段低圧濃縮器93に溜まった予熱処理水W4は、濃縮された中間濃縮水W8になって、中間濃縮水ポンプ65で、前段に配置される中段低圧濃縮器92に導入される。
【0088】
下段低圧濃縮器93で生成される第2水蒸気S2は、吸収式冷凍サイクル部1の蒸発器40に配管される蒸発伝熱管44に、蒸気ヘッダ41を経由して導入される。そして、蒸発器40の内部で、冷媒液C2の気化熱で冷却されて凝縮され、淡水W6bが生成される。
淡水W6bは、蒸発器40に備わる淡水ヘッダ42を経由して、淡水ポンプ46によって大気圧以上に加圧される。
【0089】
中間濃縮部90で生成される淡水W6c、W6d、及びW6eは、蒸発器40で生成される淡水W6bと合流して淡水W6となり、淡水化装置100bの外部に排出される。
【0090】
また、上段低圧濃縮器91に溜まっている中間濃縮水W8は、中間濃縮水ポンプ65によって太陽熱濃縮器80に導入される。
太陽熱濃縮器80に導入された中間濃縮水W8は太陽熱Hによって加熱され、その一部が蒸発して気化し、第1水蒸気S1が生成される。一方、気化しなかった残りの中間濃縮水W8は、さらに濃縮された濃縮水W9となって、濃縮ポンプ85によって大気圧以上に加圧され、処理水熱交換器81を経由して淡水化装置100bの外部に排出される。
【0091】
図5に示すように、四重効用型の淡水化装置100bは、淡水(W6b、W6c、W6d、W6e)を4段階で生成することができ、淡水W6の生成量を増量することができる。したがって、効率よく淡水W6を得ることができる。
【0092】
また、例えば図2に示す淡水化装置100と同量の淡水W6を得る場合、太陽熱濃縮器80(図5参照)の受熱面の面積を、図4に示す二重効用型の淡水化装置100aの場合よりさらに小さくでき、油濁水再利用システム500(図1参照)全体をさらに小型化することができる。したがって、油濁水再利用システム500の設置面積をさらに小さくできるという優れた効果を奏する。
【0093】
なお、図5に示す中間濃縮部90において、中段低圧濃縮器92を備えない場合(三重効用型)、下段低圧濃縮器93では、予熱処理水W4の一部が気化する気化熱で、上段低圧濃縮器91で生成される第3水蒸気S3が凝縮され、淡水W6eが生成される。
また、図示はしないが、下段低圧濃縮器93と中段低圧濃縮器92の間に、例えば1台の、後段の中段低圧濃縮器を備える場合(五重効用型)、下段低圧濃縮器93と中段低圧濃縮器92の間に備わる後段の中段低圧濃縮器では、下段低圧濃縮器93で生成される中間濃縮水W8の一部が気化する気化熱で、中段低圧濃縮器92(前段の中段低圧濃縮器)で生成される第4水蒸気S4が凝縮され、淡水が生成される。
【0094】
このように、中間濃縮部90に備わる中段低圧濃縮器92の台数を変更することによって、多重効用型の淡水化装置を自由に構成できる。そして、多重効用型の淡水化装置を備えることで、淡水W6の生成量を増量することができ、油濁水再利用システム500(図1参照)における淡水W6の生成効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態に係る油濁水再利用システムの構成図である。
【図2】淡水化装置の構造を示す図である。
【図3】吸収式冷凍サイクル部における作動温度サイクルを示す図である。
【図4】二重効用型の淡水化装置の構成例を示す図である。
【図5】四重効用型の淡水化装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1 吸収式冷凍サイクル部
6、6a、6b 水処理部
10 太陽熱再生器(再生器)
20 空冷凝縮器(凝縮器)
30 空冷吸収器(吸収器)
40 蒸発器
44 蒸発伝熱管(被冷却面)
60 低圧濃縮器
70 処理水予熱器(予熱器)
80 太陽熱濃縮器(加熱濃縮器)
90 中間濃縮部
91 上段低圧濃縮器(低圧濃縮器)
92 中段低圧濃縮器(低圧濃縮器)
93 下段低圧濃縮器(低圧濃縮器)
100 淡水化装置(塩分除去手段)
500 油濁水再利用システム
510 凝集磁気分離機(処理水生成手段)
530 COD除去装置(COD除去手段)
St 水蒸気
S1 第1水蒸気
S2 第2水蒸気
S3 第3水蒸気
S4 第4水蒸気
W2 1次浄化水(1次処理水)
W3 COD処理水(2次処理水)
W4 予熱処理水(原水)
W6 淡水
W8 中間濃縮水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生器、凝縮器、吸収器、及び蒸発器を含んで構成され、冷媒が循環する吸収式冷凍サイクル部と、
原水を加熱して濃縮する加熱濃縮器で生成される水蒸気を前記蒸発器に導入して前記冷媒と熱交換させる水処理部と、を備え、
前記蒸発器は、前記凝縮器で凝縮された前記冷媒が気化するときの気化熱で冷却される被冷却面で、前記水蒸気を冷却して凝縮させて淡水を生成することを特徴とする淡水化装置。
【請求項2】
再生器、凝縮器、吸収器、及び蒸発器を含んで構成され、冷媒が循環する吸収式冷凍サイクル部と、
原水を濃縮して中間濃縮水を生成するときに生成される第2水蒸気を、前記蒸発器に導入して前記冷媒と熱交換させる水処理部と、を備え、
前記蒸発器は、前記凝縮器で凝縮された前記冷媒が気化するときの気化熱で冷却される被冷却面で、前記第2水蒸気を冷却して凝縮させて淡水を生成する淡水化装置であって、
前記水処理部は、
前記中間濃縮水を加熱して第1水蒸気を生成し、前記中間濃縮水をさらに濃縮する加熱濃縮器と、
前記原水を濃縮して前記第2水蒸気と前記中間濃縮水を生成し、前記第2水蒸気が生成するときの気化熱で前記第1水蒸気を凝縮させて淡水を生成する低圧濃縮器と、を有することを特徴とする淡水化装置。
【請求項3】
再生器、凝縮器、吸収器、及び蒸発器を含んで構成され、冷媒が循環する吸収式冷凍サイクル部と、
原水を濃縮して中間濃縮水を生成するときに生成される第2水蒸気を前記蒸発器に導入して前記冷媒と熱交換させるとともに、前記中間濃縮水をn回(nは2以上の整数)濃縮する水処理部と、を備え、
前記蒸発器は、前記凝縮器で凝縮された前記冷媒が気化するときの気化熱で冷却される被冷却面で、前記第2水蒸気を冷却して凝縮させて淡水を生成する淡水化装置において、
前記水処理部は、
n−1回濃縮された前記中間濃縮水を加熱して第1水蒸気を生成し、前記中間濃縮水をさらに濃縮する加熱濃縮器と、
前記加熱濃縮器の後段に配置されるn台の低圧濃縮器を多重効用に配置し、前記中間濃縮水をn−1回濃縮する中間濃縮部と、を含んで構成され、
前記低圧濃縮器は、
最前段に配置される1台の上段低圧濃縮器と、最後段に配置される1台の下段低圧濃縮器と、前記上段低圧濃縮器と前記下段低圧濃縮器の間に配置されるn−2台の中段低圧濃縮器と、からなり、
前記上段低圧濃縮器は、後段に配置される前記低圧濃縮器から導入される前記中間濃縮水をさらに濃縮するとともに第3水蒸気を生成して、前記第3水蒸気が生成するときの気化熱で、前記加熱濃縮器から導入される前記第1水蒸気を凝縮させて淡水を生成し、
前記中段低圧濃縮器は、後段に配置される前記低圧濃縮器から導入される前記中間濃縮水をさらに濃縮するとともに第4水蒸気を生成して、前記第4水蒸気が生成するときの気化熱で、前段に配置される低圧濃縮器から導入される前記第3水蒸気又は前記第4水蒸気を凝縮させて淡水を生成し、
前記下段低圧濃縮器は、前記原水を濃縮して前記中間濃縮水を生成するとともに前記第2水蒸気を生成して、前記第2水蒸気が生成するときの気化熱で、前段に配置される前記低圧濃縮器から導入される前記第3水蒸気又は前記第4水蒸気を凝縮させて淡水を生成すること、を特徴とする淡水化装置。
【請求項4】
前記加熱濃縮器は、太陽熱を熱源とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の淡水化装置。
【請求項5】
前記再生器は、気化した前記冷媒を吸収している吸収液を加熱して、前記吸収液から前記冷媒を分離し、
前記水処理部は、濃縮される前の前記原水を、前記吸収液から分離された前記冷媒で加熱するための予熱器を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の淡水化装置。
【請求項6】
前記再生器は、太陽熱を熱源とすることを特徴とする請求項5に記載の淡水化装置。
【請求項7】
石油生産の際に発生する油濁水から被除去物である油濁成分を除去した1次処理水を生成する処理水生成手段と、
前記1次処理水から被除去物である水溶性有機物を除去して2次処理水を生成するCOD除去手段と、
前記2次処理水に含まれる塩分を除去して淡水を生成する塩分除去手段と、を含んで構成され、
前記塩分除去手段は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の淡水化装置であることを特徴とする油濁水再利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−36174(P2010−36174A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205846(P2008−205846)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】