淡水化装置及び淡水化方法
【課題】システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化装置及び淡水化方法を提供する。
【解決手段】所定の圧力で供給された原水11から塩分を除去する第1の逆浸透膜装置13と、第1の逆浸透膜装置13からの第1の透過水12中の塩分を除去する第2の逆浸透膜装置15と、第1の逆浸透膜装置13からの第1の濃縮水16の流量を調整する第1の流量調整弁17と、第2の逆浸透膜装置15からの第2の濃縮水18の流量を調整する第1の流量調整弁19と、前記原水11の供給温度を温度計20で計測し、原水11の温度が低い冬場の場合においては、第1の流量調節弁17で濃縮水排出量を一定に保つ調整と、第2の流量調節弁19での取り水を低減させる調節とを行い、温度が高い夏場の場合に較べて、第1の逆浸透膜装置13への供給流量を低く調整しつつ、所定の生産水回収率を所定量に維持した運転を行う。
【解決手段】所定の圧力で供給された原水11から塩分を除去する第1の逆浸透膜装置13と、第1の逆浸透膜装置13からの第1の透過水12中の塩分を除去する第2の逆浸透膜装置15と、第1の逆浸透膜装置13からの第1の濃縮水16の流量を調整する第1の流量調整弁17と、第2の逆浸透膜装置15からの第2の濃縮水18の流量を調整する第1の流量調整弁19と、前記原水11の供給温度を温度計20で計測し、原水11の温度が低い冬場の場合においては、第1の流量調節弁17で濃縮水排出量を一定に保つ調整と、第2の流量調節弁19での取り水を低減させる調節とを行い、温度が高い夏場の場合に較べて、第1の逆浸透膜装置13への供給流量を低く調整しつつ、所定の生産水回収率を所定量に維持した運転を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数直列の設けた逆浸透膜装置を円滑且つ効率的に行うことができる淡水化装置及び淡水化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水淡水化設備においては、脱塩処理することにより原水(海水)を淡水化させて上水として使用するための海水淡水化装置(以下、淡水化装置という)が用いられている。
【0003】
このような淡水化装置は、原水である海水中の濁質分を除去するために、砂とアンスラサイトを濾材とする二層濾過を用いた前処理装置が用いられている。また、原水に対しては、一般に殺菌、殺藻や有機物、鉄、マンガン、アンモニアなどを除去する目的で、塩素剤(塩素含有水)を原水に加える塩素処理を行っている。この塩素処理は、例えば液化塩素、次亜塩素酸ソーダ、塩水の電解によって生成する塩素などを用いるようにしている。
【0004】
この塩素処理及び濾過処理したものを、RO膜を備えた逆浸透膜装置で脱塩処理している。この従来の塩素処理及び中和処理を行う淡水化装置の一例を図12に示す。
【0005】
図12に示すように、従来の淡水化装置100は、原水101中の濁質分を濾過する前処理膜103aを有する前処理装置103と、前記前処理装置103からの濾過水104から塩分を除去して透過水105を生産する逆浸透膜(RO膜)106aを有する逆浸透膜装置106とを具備してなり、濁質分の除去と脱塩処理とを行っている。なお、図12中、符号107は濃縮水、Pは送液ポンプを各々図示する。
【0006】
前記淡水化装置100で得られた透過水である生産水105は飲料用、工場プラント用等の各種商業水として、利用されているが、近年、処理水である透過水の水質向上が求められており、本出願人はこのような逆浸透膜装置106を複数直列に連結して、高純度の透過水を得ることを先に提案した(非特許文献1)。
【0007】
図13は、この逆浸透膜装置を複数段設置したプラントの一例を示す図である。
図13に示すように、非特許文献1で提案したプラントにおいては、複数の逆浸透膜装置を直列に設置する場合には、高圧(6〜8MPa)用の第1の逆浸透膜装置103Aを設け、第2段、第3段には低圧(1〜2MPa)用の第2及び第3の逆浸透膜装置103B、103Cを設け、直列で順次脱塩して透過水105A、105Bを得た後、高純度の生産水105Cとしている。なお、図13中、符号107A〜Cは濃縮水、L11〜L13は濃縮水ライン、P1〜P3は送液ポンプを各々図示する。
【0008】
また、第1の逆浸透膜装置103Aと第2の逆浸透膜装置103B及び第3の逆浸透膜装置103Cとが配設された直列の3段プロセス方式においては、第2の逆浸透膜装置103B及び第3の逆浸透膜装置103Cからの濃縮水107B及び107Cは上流側にリサイクルされ、ラインL12、L13により第1の逆浸透膜装置103A及び第2の逆浸透膜装置103Bの入口側に各々戻しており、一度脱塩した透過水を有効利用している。このようなプロセスでは第1段目と第2段目及び第3段目の逆浸透膜装置は別々に制御し、それぞれの回収率は常に一定(第1段回収率:例えば45%、第2段及び第3段回収率:例えば90%)で運転されている(ポンプP1〜P3の下の数値は圧力を示す。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】三菱重工技法Vol.46 No1(2009)「世界初大型3段直列逆浸透(RO)法海水淡水化設備」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、逆浸透膜装置のRO膜の膜性能は温度によって変化し、同じ供給圧力で温度が高くなると生産水量が大きくなるので、温度変化に関わらず常に一定の回収率で運転させるための効率的な運転制御が求められている。
また、プラント全体での省エネ化が要求されているので、システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化方法が要望されている。
【0011】
本発明は、前記問題に鑑み、システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化装置及び淡水化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、所定の圧力で供給された原水から塩分を除去して第1の透過水を生産する第1の逆浸透膜を有する高圧用の第1の逆浸透膜装置と、第1の逆浸透膜装置からの第1の透過水中の塩分を除去して第2の透過水を生産する第2の逆浸透膜を有する低圧用の第2の逆浸透膜装置と、第1の逆浸透膜装置からの第1濃縮水の排出ラインに介装され、第1の濃縮水の流量を調整する第1の流量調整弁と、第2の逆浸透膜装置からの第2濃縮水を第1の逆浸透膜装置の前段側に戻す第1の戻しラインに介装され、第2の濃縮水の流量を調整する第1の流量調整弁と、前記原水の供給温度を温度計で計測し、その計測温度に対応して第1の流量調整弁と第2の流量調整弁とを制御する制御装置とを具備し、計測した原水の温度が設定温度より低い場合には、第1の流量調節弁で濃縮水排出量を一定に保つ調整と、第2の流量調節弁での戻りの第2の濃縮水の流量を低減させる調節とを行い、温度が高い場合に較べて、第1の逆浸透膜装置への供給流量を低く調整しつつ、所定の生産水回収率を維持した運転を行うことを特徴とする淡水化装置にある。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、第2の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻す第2の戻しラインに介装され、第2の濃縮水の流量を調整する第3の流量調整弁を有することを特徴とする淡水化装置にある。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、第2の濃縮水中の塩分を除去して第3の透過水を生産する第3の逆浸透膜を有する第3の逆浸透膜装置と、第3の透過水を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻す第3の戻しラインに介装され、第3の透過水の流量を調整する第4の流量調整弁を有することを特徴とする淡水化装置にある。
【0015】
第4の発明は、第1の発明において、第1の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の後段側にバイパスさせる第1のバイパスに介装され、第1の透過水の流量を調整する第5の流量調整弁を有することを特徴とする淡水化装置にある。
【0016】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、第1の逆浸透膜装置の前段側に設けられ、始動開始初期に手動で流量調整する第1の手動弁と、第2の逆浸透膜装置の前段側に設けられ、始動開始初期に手動で流量調整する第2の手動弁と、第1の逆浸透膜装置と第2の手動弁との間に設けられ、始動開始初期に所定の圧力となるまで排水処理を行う三方弁とを有することを特徴とする淡水化装置にある。
【0017】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、第1の濃縮水を排出するラインに圧力を回収するエネルギー回収装置を設けてなることを特徴とする淡水化装置にある。
【0018】
第7の発明は、第1乃至6のいずれか一つの発明において、低圧用の第2の逆浸透膜装置の後段側に低圧用の逆浸透膜装置を更に直列に有することを特徴とする淡水化装置にある。
【0019】
第8の発明は、複数の逆浸透膜装置を直列に設置して、原水から脱塩処理する淡水化方法において、前記原水の供給温度を計測し、計測した原水の温度が、設定値よりも低い場合には、第1の逆浸透膜装置からの濃縮水排出量を一定に保つ調整と、第2の逆浸透膜装置からの第2の濃縮水の流量を低減させる調節とを行い、温度が高い場合に較べて、第1の逆浸透膜装置への供給流量を低く調整しつつ、所定の生産水回収率を維持した運転を行うことを特徴とする淡水化方法にある。
【0020】
第9の発明は、第8の発明において、第2の逆浸透膜装置からの第2の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻し、この第2の濃縮水の戻しの流量を温度差に応じて調整することを特徴とする淡水化方法にある。
【0021】
第10の発明は、第8の発明において、第2の濃縮水中の塩分を除去して第3の透過水を生産する第3の逆浸透膜を有する第3の逆浸透膜装置を有し、第3の透過水を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻し、この第3の濃縮水の戻しの流量を温度差に応じて調整することを特徴とする淡水化方法にある。
【0022】
第11の発明は、第8の発明において、第1の逆浸透膜装置からの第1の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の後段側に送り、この第1の透過水の送りの流量を温度差に応じて調整することを特徴とする淡水化方法にある。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1−1】図1−1は、実施例1に係る淡水化装置の概略図である。
【図1−2】図1−2は、実施例1に係る淡水化装置の夏場と冬場における概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係る淡水化装置の概略図である。
【図3】図3は、実施例3に係る淡水化装置の概略図である。
【図4】図4は、実施例4に係る淡水化装置の概略図である。
【図5】図5は、実施例5に係る淡水化装置の概略図である。
【図6】図6は、実施例6に係る淡水化装置の概略図である。
【図7】図7は、高圧用ポンプ性能曲線の流量と圧力との関係図である。
【図8】図8は、低圧用ポンプ性能曲線の流量と圧力との関係図である。
【図9】図9は、本発明に対する参考例を示す淡水化装置の概略図である。
【図10】図10は、参考例の高圧用ポンプ性能曲線上の夏冬の運転ポイントを示す図である。
【図11】図11は、実施例7に係る淡水化装置の概略図である。
【図12】図12は、従来例に係る淡水化装置の概略図である。
【図13】図13は、従来例に係る他の淡水化装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0026】
本発明に係る実施例1に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図1−1及び1−2は、実施例1に係る淡水化装置の概略図である。図1−1に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Aは、所定の圧力で供給された原水11から塩分を除去して第1の透過水12を生産する第1の逆浸透膜(RO膜)13aを有する第1の逆浸透膜装置13と、第1の逆浸透膜装置13からの第1の透過水12中の塩分を除去して第2の透過水14を生産する第2の逆浸透膜(RO膜)15aを有する第2の逆浸透膜装置15と、第1の逆浸透膜装置13からの第1の濃縮水16の排出ラインL1に介装され、第1の濃縮水16の流量を調整する第1の流量調整弁17と、第2の逆浸透膜装置15からの第2の濃縮水18を第1の逆浸透膜装置13の前段側に戻す第1の戻しラインL2に介装され、第2の濃縮水18の流量を調整する第2の流量調整弁19と、前記原水11の供給温度(T)を温度計20で計測し、その計測温度に対応して第1の流量調整弁17と第2の流量調整弁19とを制御する制御装置(図示せず)とを具備し、温度計20での計測結果、原水11の温度が低い(例えば26℃)冬場の場合においては、第1の流量調節弁17で第1の濃縮水16の排出量を一定に維持する調整と、第2の流量調節弁19で第2の濃縮水18の戻り量を低減させる調節とを行い、温度が高い(例えば32℃)夏場の場合に較べて、第1の逆浸透膜装置13への供給流量を低く調整しつつ、所定の生産水回収率を所定量に維持した運転を行うものである。前記第2の流量調整弁19は、生産水量を定格流量に合わせるために用いている。なお、図1−1中、符号F1〜F2は流量計、P1〜P2は送液ポンプ、M1〜P2は送液ポンプ用モータを各々図示する。
なお、第1の逆浸透膜装置13は、高圧用の逆浸透膜装置であり、例えばパスタ程度の太さで中が空胴の糸状に成型し、外側から内側へ濾過する「中空糸膜」型の逆浸透膜装置や、1枚の濾過膜を、強度を保つため丈夫なメッシュ状のサポートと重ね合わせて袋状に閉じ、これをロールケーキ状に巻いてその断面方向から加圧する「スパイラル膜」型の逆浸透膜装置等のいずれでも良い。
【0027】
図1−2は、実施例1に係る淡水化装置の夏場と冬場における流量(部で示す)の相違を記載した一例を示す概略図である。
図1−2に示すように、夏場(原水11の温度32℃)は、第1の逆浸透膜装置13に供給される原水11の量を供給量100部(原水:95部+戻り水:5部)部に対して、第1段目の第1の逆浸透膜装置13の回収率を50%とすると、RO膜13aが通過する第1の透過水12の通過量は50部となり、第1の濃縮水16は50部となる。
また、第2の逆浸透膜装置15に供給される第1の透過水12の量を供給量50部に対して、第2段目の第2の逆浸透膜装置15の回収率を90%とすると、RO膜15aが通過する第2の透過水14の通過量は45部となり、第2の濃縮水16は5部となる。
この夏場のポンプの性能量は夏場では水が透過し易いので、通常冬場で用いる7.0MPaの高性能のポンプを用いる必要がなく、6.6MPa程度のポンプを用いることが可能となる。
【0028】
そして、原水11温度が低下したことを温度計20で計測し(夏場よりも5℃以下低下している)、冬場の状態であると確認した際には、第1の逆浸透膜装置13に供給される原水11の量を供給量98部(95+3)部となるように、第1段目の逆浸透膜装置13の回収率を下げるように、第1の流量調整弁17を調整して、第1の濃縮水16を一定に保つように制御すると、RO膜13aが通過する第1の透過水12の通過量は48部と低くなり、第1の濃縮水16は50部となる。
また、第2の逆浸透膜装置15に供給される第1の透過水12の量を供給量48部に対して、第2段目の逆浸透膜装置15の回収量を夏と同じ45部を維持するように、第2の流量調整弁19を少し閉めると、RO膜15aが通過する第2の透過水14の通過量は45部となり、第2の濃縮水16は3部となる。
【0029】
このように、夏場(32℃)と冬場(26℃)との運転条件を比較すると、冬場での第2の濃縮水18の戻り量を減らす(5部⇒3部)と、夏場の処理量(95部+5部=100部)に較べて、冬場(95部+3部=98部)の処理量が低下することとなる。
この処理量の低下により、高圧の昇圧ポンプP1のヘッド圧が上昇する。
図7に高圧用ポンプ性能曲線の流量と圧力との関係を示す。
この夏場よりも冬場の圧力が上昇することで、図7に示す高圧用ポンプ性能曲線に合致するので、効率的なポンプ動作を行うことができる。
【0030】
よって、冬場は、RO膜13aを透過する水の透過割合が低下するが、その低下する分は供給量を低減(100部から98部)させることでこれを補うことができる。
また、冬場においては、処理量が低下するので、高圧用ポンプ性能曲線においては圧力が上昇することとなり、夏場の条件で設計したポンプ(ポンプ性能例えば6.6MPa)を用いることで、夏冬年間を通じての使用が可能となる。
【0031】
このような淡水化装置を用いて、淡水化の運転を行うには、先ず、原水11の温度を温度計で計測し、夏場モードか冬場モードかの確認を行う。その後、モードを維持又は変更の制御を行う。
その後、所定の運転条件となるように図示しない制御装置で制御して、第1の逆浸透膜装置13及び第2の逆浸透膜装置15へ供給する通水量を設定値となるように、ラインL1及びラインL2に介装された第1及び第2の流量調節弁17、19で調整する制御を図示しない制御装置により行う。この調整の際、夏冬のいずれかのモードに応じた調整を行い、安定した高品質の生産水を製造する。
【0032】
本実施例では、夏を32℃、冬を26℃として、温度差を6℃として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、所定の温度差(例えば3〜5℃以上)において、運転モードを変化する制御を制御装置で行うようにしてもよい。
なお、本発明では、仮に1℃の温度差であっても、システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化処理を行うことができる。
【0033】
[参考例]
図9は、本発明に対する参考例を示す淡水化装置の概略図である。
図9に示すように、参考例に係る淡水化装置200は、実施例1に係る淡水化装置に較べて、第1の逆浸透膜装置13の入口側に圧力調整用の圧力調整弁(PCV)201を設置している点が異なる。
参考例では、第1の逆浸透膜装置13のRO膜13aの膜性能は温度によって変化し、同じ供給圧力で温度が高くなると生産水量が大きくなるので、温度変化に関わらず常に一定の回収率(90%)で運転させるために、圧力制御弁を設置したものである。なお、図9中、符号F11〜F12は流量計を図示する。
【0034】
この際、一般的に最も温度が低い冬場の場合に、圧力調整弁(PCV)201が全開で要求水量が達成できるような高性能な昇圧ポンプを用意し、温度が高い夏場の場合には圧力調整弁(PCV)201をやや閉めて圧力を低下させる調整し、一定回収率運転を実現する。
図10は高圧用ポンプ性能曲線上の夏冬の運転ポイントを示す図である。この参考例では、図10に示すように、ポンプを通過する流量を一定とする場合は、冬場と夏場との運転の調整は、圧力を制御することで行い、夏場は冬場より低い圧力で運転することとなる。
【0035】
しかしながら、圧力調整弁(PCV)201を設置すると、低温温度時では全開時の圧力損失(約0.3MPa)は免れず、例えば設計値が7.0MPaの圧力が必要である場合には、昇圧ポンプとして7.3MPaの高性能ポンプが必要となる。
また、夏場の高温時にはさらに圧力調整弁(PCV)201を閉めるため、その圧力損失はより大きくなる。
【0036】
このような圧力調整弁(PCV)201の開閉動作による圧力損失は脱塩に寄与することのないエネルギーとなり無駄になり、脱塩プラントのシステム効率の低下になるという、問題が発生する。
また、第1の逆浸透膜装置13での入口側の圧力を調整して小さくすると、濃縮水16の圧力も小さくなり、この濃縮水ラインに圧力回収するために例えばエネルギー回収装置を設置するような場合には、そのエネルギー回収量も小さくなる、という問題がある。
【0037】
このように、参考例に係る淡水化装置200では、先ず条件が悪い冬場における流量を決定して、その流量に応じたポンプ性能(7MPa)を固定しているが、本発明においては、夏場におけるポンプ性能(例えば6.6MPa)において、冬場における運転が可能となる。
この結果、本発明では、参考例に係る淡水化装置200のように、圧力調整弁(PCV)201を設置する際に、定格以上の性能(7MPaのときに、7.3MPa)のポンプを設けることが無いので、設置時におけるポンプも安価なものとなり、イニシャルコストの低減も図ることができる。
【0038】
(参考図との比較)
また、本発明によれば、圧力調節弁(PCV)が不要となると共に、圧力調整弁(PCV)を設置する場合のように、流量を固定して制御するする必要がなくなる。
この結果、圧力調整弁(PCV)を用いる提案のような圧力損失のためのエネルギー損失が無くなり、エネルギー効率の良好な淡水化プラント運転が可能となる。
【0039】
また、本発明では、第1の濃縮水16を一定に維持するように調整しているので、圧力変動もほとんど少なく、圧力回収するために例えばエネルギー回収装置(図示せず)を設置しても安定したエネルギー回収が可能となる。
エネルギー回収装置としては、例えばPeltonWheel型エネルギー回収装置、Turbochager型エネルギー回収装置、PX(Pressure Exchanger)型エネルギー回収装置、DWEER(Dual Work Energy Exchanger)型エネルギー回収装置等の公知のものを用いることができる。
【実施例2】
【0040】
本発明に係る実施例2に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図2は、実施例2に係る淡水化装置の概略図である。なお、実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図2に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Bは、実施例1の装置において、第2の逆浸透膜装置15の第2の透過水14の一部を上流側へ戻す戻しラインL3を設けており、この戻しラインL3に第3の流量調節弁21を設けたものである。
この戻しラインL3を設置し、第2の透過水14を夏場は冬場よりも15%程度上流側に戻すようにしている。
【0041】
これは、低圧の昇圧ポンプP2の低圧ポンプ特性は差がないので、夏場例えば30%(15%)、冬場例えば15%(0%)とすることで、冬場は夏場よりも流量が少ないものとなり、低圧の昇圧ポンプP2のヘッド圧が上昇する。
図8は低圧用ポンプ性能曲線の流量と圧力との関係図である。図8に示すように、冬場においては圧力が上昇するので、低圧用ポンプ性能曲線に合致した運転が可能となり、確実な安定した海水淡水化処理を行うことができる。
【0042】
また、第2の透過水14を再度第2の逆浸透膜装置15で脱塩処理するので、生産水の水質の向上を図ることができる。
【実施例3】
【0043】
本発明に係る実施例3に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図3は、実施例3に係る淡水化装置の概略図である。なお、実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図3に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Cは、実施例1の装置において、第2の逆浸透膜装置15の第2の濃縮水18中の塩分を除去して第3の透過水22を生産する第3の逆浸透膜(RO膜)23aを有する第3の逆浸透膜装置23を設け、この第3の透過水22を上流側へ戻す戻しラインL4を設けており、この戻しラインL4に第4の流量調節弁24を設けたものである。
この戻しラインL4を設置することで、第3の透過水22を夏場は冬場よりも15%程度上流側に戻すようにしている。
これにより、実施例2と同様に確実で安定した海水淡水化処理を行うことができる。
【実施例4】
【0044】
本発明に係る実施例4に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図4は、実施例4に係る淡水化装置の概略図である。なお、実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図4に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Dは、実施例1の装置において、第1の逆浸透膜装置13の第1の透過水12の一部を第2の逆浸透膜装置15を迂回するバイパスラインL5を設け、このバイパスラインL5に第5の流量調整弁25を介装している。
そして、冬場においては、このバイパスラインL5を用いて、第1の透過水12の一部をバイパスさせている。
ここで、第2の逆浸透膜装置15をバイパスさせる際の分岐のさせ方は、配管で分けても良いし、ベッセルの2つの透過水の出口(上流側と下流側)を使って分けるようにしても良い。
流量の制御は、原水の温度を温度計20で計測し、夏冬を切り替える。そして、バイパスさせる際には、バイパスラインL5に設置した第5の流量調節弁25でそのバイパス流量を制御するようにしている。
【実施例5】
【0045】
本発明に係る実施例5に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図5は、実施例5に係る淡水化装置の概略図である。なお、実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図5に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Eは、実施例1において、第2の逆浸透膜装置15の第2の濃縮水18の流量を測定する流量計F3を設け、この流量計F3の測定結果を、流量制御部26により、第2の流量調整弁19の制御を行うようにしている。
【0046】
実施例1においては、第2の濃縮水18の流量は制御しないため、成り行きの運転となっており、流量がプラントの設計範囲を逸脱するような場合がある。特に第2の濃縮水18の流量が小さくなると、第2の逆浸透膜装置15での回収率が大きくなり、スケール析出のおそれがある。このような場合に、第2の濃縮水18の流量を流量計F3により測定し、設計の範囲外とならないように第2の濃縮水18の流量を調整することでスケールの析出のない、安定した脱塩処理を行うようにしている。
【実施例6】
【0047】
本発明に係る実施例6に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図6は、実施例6に係る淡水化装置の概略図である。なお、実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図6に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Fは、実施例1の装置において、第1の逆浸透膜装置13の前段側に設けられ、始動開始初期に手動で流量調整する第1の手動弁31と、第2の逆浸透膜装置15の前段側に設けられ、始動開始初期に手動で流量調整する第2の手動弁32と、第1の逆浸透膜装置13と第2の手動弁32との間に設けられ、始動開始初期に所定の圧力となるまで排水処理を行う三方弁33とを有するものである。
【0048】
第1の手動弁31及び第2の手動弁32の設置により、徐々にバルブを開放して、全開とするので、プラントの起動停止がしやすくなる。
また、三方弁33を用いて、第1の透過水12を排水して、低圧の昇圧ポンプP2の所定の入口圧力となるまで待機し、その後第2の透過水12が低圧の昇圧ポンプP2の入口圧近傍に達したことを確認してから、三方弁33を閉じつつ、第2の逆浸透膜装置15側に第1の透過水12を全量供給するようにしている。
これにより、中間タンクを設置せずとも安定して、起動初期の圧力変動を回避し、常に安定した立ち上げ運転とすることが可能となる。
【実施例7】
【0049】
本発明に係る実施例7に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図11は、実施例7に係る淡水化装置の概略図である。なお、実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図11に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Gは、実施例1の装置において、2台の低圧用の第2の逆浸透膜装置15A、15Aを直列に設け、直列の3段の除塩処理システムとしたものである。なお、第2の濃縮水ラインL2A、L2Bにより直列に設けた第2の逆浸透膜装置15A、15Aからの第2の濃縮水18A、18Bを上流側に戻している。
【0050】
第1の逆浸透膜装置13は高圧用であるので、実施例1と同様に、夏場のモードと冬場のモードの切り替えは同様に行う。
具体的には、原水11の温度が低下したことを温度計で計測し(夏場よりも5℃以下低下している)、冬場の状態であると確認した際には、第1の逆浸透膜装置13に供給される原水11の量を供給量98部(95+3)部となるように、第1段目の逆浸透膜装置13の回収率を下げるように、第1の流量調整弁17を調整して、第1の濃縮水16を一定に保つように制御すると、RO膜13aが通過する第1の透過水12の通過量は48部と低くなり、第1の濃縮水16は50部とする。
【0051】
また、2台の第2段目の逆浸透膜装置15A、第3段目の逆浸透膜装置15Bは低圧用であるので、実施例1と同様に、夏場のモードと冬場のモードの切り替えは同様に行う。
第2の逆浸透膜装置15Aに供給される第1の透過水12の量を供給量に対して、第2段目の逆浸透膜装置15Aの回収量を夏と同じ49部を維持するように、第2の流量調整弁19Aを少し閉めると、RO膜15aが通過する第2の透過水14Aの通過量は各々49部となり、第2の濃縮水18Aは低減(5部⇒3部)する。
また、第3段目の逆浸透膜装置15Bに供給される第2の透過水14Aの量を供給量49部に対して、第3段目の逆浸透膜装置15Bの回収量を夏と同じ45部を維持すると、RO膜15aが通過する第2の透過水14Bの通過量は各々45部となり、第2の濃縮水18Bは同等(4部)となる。
【0052】
このように、夏場(例えば32℃)と冬場(例えば26℃)との運転条件を比較すると、冬場での第2の濃縮水18Aの戻り量を減らす(5部⇒3部)と、夏場の処理量に較べて、冬場の処理量が低下することとなる。
この処理量の低下により、高圧の昇圧ポンプP1のヘッド圧が上昇する。
【0053】
また、第3段目の逆浸透膜装置15Bの前流側に、例えば圧力調整弁を設置して、この第3段目の逆浸透膜装置15Bへ供給する第2の透過水14Aの供給量を調整するようにして、システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化処理を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明に係る淡水化装置によれば、システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
10A〜10G 淡水化装置
11 原水
12 第1の透過水
13a、15a RO膜
13 第1の逆浸透膜装置
14 第2の透過水
15 第2の逆浸透膜装置
16 第1の濃縮水
17 第1の流量調整弁
18 第2の濃縮水
19 第2の流量調整弁
20 温度計
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数直列の設けた逆浸透膜装置を円滑且つ効率的に行うことができる淡水化装置及び淡水化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水淡水化設備においては、脱塩処理することにより原水(海水)を淡水化させて上水として使用するための海水淡水化装置(以下、淡水化装置という)が用いられている。
【0003】
このような淡水化装置は、原水である海水中の濁質分を除去するために、砂とアンスラサイトを濾材とする二層濾過を用いた前処理装置が用いられている。また、原水に対しては、一般に殺菌、殺藻や有機物、鉄、マンガン、アンモニアなどを除去する目的で、塩素剤(塩素含有水)を原水に加える塩素処理を行っている。この塩素処理は、例えば液化塩素、次亜塩素酸ソーダ、塩水の電解によって生成する塩素などを用いるようにしている。
【0004】
この塩素処理及び濾過処理したものを、RO膜を備えた逆浸透膜装置で脱塩処理している。この従来の塩素処理及び中和処理を行う淡水化装置の一例を図12に示す。
【0005】
図12に示すように、従来の淡水化装置100は、原水101中の濁質分を濾過する前処理膜103aを有する前処理装置103と、前記前処理装置103からの濾過水104から塩分を除去して透過水105を生産する逆浸透膜(RO膜)106aを有する逆浸透膜装置106とを具備してなり、濁質分の除去と脱塩処理とを行っている。なお、図12中、符号107は濃縮水、Pは送液ポンプを各々図示する。
【0006】
前記淡水化装置100で得られた透過水である生産水105は飲料用、工場プラント用等の各種商業水として、利用されているが、近年、処理水である透過水の水質向上が求められており、本出願人はこのような逆浸透膜装置106を複数直列に連結して、高純度の透過水を得ることを先に提案した(非特許文献1)。
【0007】
図13は、この逆浸透膜装置を複数段設置したプラントの一例を示す図である。
図13に示すように、非特許文献1で提案したプラントにおいては、複数の逆浸透膜装置を直列に設置する場合には、高圧(6〜8MPa)用の第1の逆浸透膜装置103Aを設け、第2段、第3段には低圧(1〜2MPa)用の第2及び第3の逆浸透膜装置103B、103Cを設け、直列で順次脱塩して透過水105A、105Bを得た後、高純度の生産水105Cとしている。なお、図13中、符号107A〜Cは濃縮水、L11〜L13は濃縮水ライン、P1〜P3は送液ポンプを各々図示する。
【0008】
また、第1の逆浸透膜装置103Aと第2の逆浸透膜装置103B及び第3の逆浸透膜装置103Cとが配設された直列の3段プロセス方式においては、第2の逆浸透膜装置103B及び第3の逆浸透膜装置103Cからの濃縮水107B及び107Cは上流側にリサイクルされ、ラインL12、L13により第1の逆浸透膜装置103A及び第2の逆浸透膜装置103Bの入口側に各々戻しており、一度脱塩した透過水を有効利用している。このようなプロセスでは第1段目と第2段目及び第3段目の逆浸透膜装置は別々に制御し、それぞれの回収率は常に一定(第1段回収率:例えば45%、第2段及び第3段回収率:例えば90%)で運転されている(ポンプP1〜P3の下の数値は圧力を示す。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】三菱重工技法Vol.46 No1(2009)「世界初大型3段直列逆浸透(RO)法海水淡水化設備」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、逆浸透膜装置のRO膜の膜性能は温度によって変化し、同じ供給圧力で温度が高くなると生産水量が大きくなるので、温度変化に関わらず常に一定の回収率で運転させるための効率的な運転制御が求められている。
また、プラント全体での省エネ化が要求されているので、システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化方法が要望されている。
【0011】
本発明は、前記問題に鑑み、システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化装置及び淡水化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、所定の圧力で供給された原水から塩分を除去して第1の透過水を生産する第1の逆浸透膜を有する高圧用の第1の逆浸透膜装置と、第1の逆浸透膜装置からの第1の透過水中の塩分を除去して第2の透過水を生産する第2の逆浸透膜を有する低圧用の第2の逆浸透膜装置と、第1の逆浸透膜装置からの第1濃縮水の排出ラインに介装され、第1の濃縮水の流量を調整する第1の流量調整弁と、第2の逆浸透膜装置からの第2濃縮水を第1の逆浸透膜装置の前段側に戻す第1の戻しラインに介装され、第2の濃縮水の流量を調整する第1の流量調整弁と、前記原水の供給温度を温度計で計測し、その計測温度に対応して第1の流量調整弁と第2の流量調整弁とを制御する制御装置とを具備し、計測した原水の温度が設定温度より低い場合には、第1の流量調節弁で濃縮水排出量を一定に保つ調整と、第2の流量調節弁での戻りの第2の濃縮水の流量を低減させる調節とを行い、温度が高い場合に較べて、第1の逆浸透膜装置への供給流量を低く調整しつつ、所定の生産水回収率を維持した運転を行うことを特徴とする淡水化装置にある。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、第2の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻す第2の戻しラインに介装され、第2の濃縮水の流量を調整する第3の流量調整弁を有することを特徴とする淡水化装置にある。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、第2の濃縮水中の塩分を除去して第3の透過水を生産する第3の逆浸透膜を有する第3の逆浸透膜装置と、第3の透過水を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻す第3の戻しラインに介装され、第3の透過水の流量を調整する第4の流量調整弁を有することを特徴とする淡水化装置にある。
【0015】
第4の発明は、第1の発明において、第1の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の後段側にバイパスさせる第1のバイパスに介装され、第1の透過水の流量を調整する第5の流量調整弁を有することを特徴とする淡水化装置にある。
【0016】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、第1の逆浸透膜装置の前段側に設けられ、始動開始初期に手動で流量調整する第1の手動弁と、第2の逆浸透膜装置の前段側に設けられ、始動開始初期に手動で流量調整する第2の手動弁と、第1の逆浸透膜装置と第2の手動弁との間に設けられ、始動開始初期に所定の圧力となるまで排水処理を行う三方弁とを有することを特徴とする淡水化装置にある。
【0017】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、第1の濃縮水を排出するラインに圧力を回収するエネルギー回収装置を設けてなることを特徴とする淡水化装置にある。
【0018】
第7の発明は、第1乃至6のいずれか一つの発明において、低圧用の第2の逆浸透膜装置の後段側に低圧用の逆浸透膜装置を更に直列に有することを特徴とする淡水化装置にある。
【0019】
第8の発明は、複数の逆浸透膜装置を直列に設置して、原水から脱塩処理する淡水化方法において、前記原水の供給温度を計測し、計測した原水の温度が、設定値よりも低い場合には、第1の逆浸透膜装置からの濃縮水排出量を一定に保つ調整と、第2の逆浸透膜装置からの第2の濃縮水の流量を低減させる調節とを行い、温度が高い場合に較べて、第1の逆浸透膜装置への供給流量を低く調整しつつ、所定の生産水回収率を維持した運転を行うことを特徴とする淡水化方法にある。
【0020】
第9の発明は、第8の発明において、第2の逆浸透膜装置からの第2の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻し、この第2の濃縮水の戻しの流量を温度差に応じて調整することを特徴とする淡水化方法にある。
【0021】
第10の発明は、第8の発明において、第2の濃縮水中の塩分を除去して第3の透過水を生産する第3の逆浸透膜を有する第3の逆浸透膜装置を有し、第3の透過水を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻し、この第3の濃縮水の戻しの流量を温度差に応じて調整することを特徴とする淡水化方法にある。
【0022】
第11の発明は、第8の発明において、第1の逆浸透膜装置からの第1の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の後段側に送り、この第1の透過水の送りの流量を温度差に応じて調整することを特徴とする淡水化方法にある。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1−1】図1−1は、実施例1に係る淡水化装置の概略図である。
【図1−2】図1−2は、実施例1に係る淡水化装置の夏場と冬場における概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係る淡水化装置の概略図である。
【図3】図3は、実施例3に係る淡水化装置の概略図である。
【図4】図4は、実施例4に係る淡水化装置の概略図である。
【図5】図5は、実施例5に係る淡水化装置の概略図である。
【図6】図6は、実施例6に係る淡水化装置の概略図である。
【図7】図7は、高圧用ポンプ性能曲線の流量と圧力との関係図である。
【図8】図8は、低圧用ポンプ性能曲線の流量と圧力との関係図である。
【図9】図9は、本発明に対する参考例を示す淡水化装置の概略図である。
【図10】図10は、参考例の高圧用ポンプ性能曲線上の夏冬の運転ポイントを示す図である。
【図11】図11は、実施例7に係る淡水化装置の概略図である。
【図12】図12は、従来例に係る淡水化装置の概略図である。
【図13】図13は、従来例に係る他の淡水化装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0026】
本発明に係る実施例1に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図1−1及び1−2は、実施例1に係る淡水化装置の概略図である。図1−1に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Aは、所定の圧力で供給された原水11から塩分を除去して第1の透過水12を生産する第1の逆浸透膜(RO膜)13aを有する第1の逆浸透膜装置13と、第1の逆浸透膜装置13からの第1の透過水12中の塩分を除去して第2の透過水14を生産する第2の逆浸透膜(RO膜)15aを有する第2の逆浸透膜装置15と、第1の逆浸透膜装置13からの第1の濃縮水16の排出ラインL1に介装され、第1の濃縮水16の流量を調整する第1の流量調整弁17と、第2の逆浸透膜装置15からの第2の濃縮水18を第1の逆浸透膜装置13の前段側に戻す第1の戻しラインL2に介装され、第2の濃縮水18の流量を調整する第2の流量調整弁19と、前記原水11の供給温度(T)を温度計20で計測し、その計測温度に対応して第1の流量調整弁17と第2の流量調整弁19とを制御する制御装置(図示せず)とを具備し、温度計20での計測結果、原水11の温度が低い(例えば26℃)冬場の場合においては、第1の流量調節弁17で第1の濃縮水16の排出量を一定に維持する調整と、第2の流量調節弁19で第2の濃縮水18の戻り量を低減させる調節とを行い、温度が高い(例えば32℃)夏場の場合に較べて、第1の逆浸透膜装置13への供給流量を低く調整しつつ、所定の生産水回収率を所定量に維持した運転を行うものである。前記第2の流量調整弁19は、生産水量を定格流量に合わせるために用いている。なお、図1−1中、符号F1〜F2は流量計、P1〜P2は送液ポンプ、M1〜P2は送液ポンプ用モータを各々図示する。
なお、第1の逆浸透膜装置13は、高圧用の逆浸透膜装置であり、例えばパスタ程度の太さで中が空胴の糸状に成型し、外側から内側へ濾過する「中空糸膜」型の逆浸透膜装置や、1枚の濾過膜を、強度を保つため丈夫なメッシュ状のサポートと重ね合わせて袋状に閉じ、これをロールケーキ状に巻いてその断面方向から加圧する「スパイラル膜」型の逆浸透膜装置等のいずれでも良い。
【0027】
図1−2は、実施例1に係る淡水化装置の夏場と冬場における流量(部で示す)の相違を記載した一例を示す概略図である。
図1−2に示すように、夏場(原水11の温度32℃)は、第1の逆浸透膜装置13に供給される原水11の量を供給量100部(原水:95部+戻り水:5部)部に対して、第1段目の第1の逆浸透膜装置13の回収率を50%とすると、RO膜13aが通過する第1の透過水12の通過量は50部となり、第1の濃縮水16は50部となる。
また、第2の逆浸透膜装置15に供給される第1の透過水12の量を供給量50部に対して、第2段目の第2の逆浸透膜装置15の回収率を90%とすると、RO膜15aが通過する第2の透過水14の通過量は45部となり、第2の濃縮水16は5部となる。
この夏場のポンプの性能量は夏場では水が透過し易いので、通常冬場で用いる7.0MPaの高性能のポンプを用いる必要がなく、6.6MPa程度のポンプを用いることが可能となる。
【0028】
そして、原水11温度が低下したことを温度計20で計測し(夏場よりも5℃以下低下している)、冬場の状態であると確認した際には、第1の逆浸透膜装置13に供給される原水11の量を供給量98部(95+3)部となるように、第1段目の逆浸透膜装置13の回収率を下げるように、第1の流量調整弁17を調整して、第1の濃縮水16を一定に保つように制御すると、RO膜13aが通過する第1の透過水12の通過量は48部と低くなり、第1の濃縮水16は50部となる。
また、第2の逆浸透膜装置15に供給される第1の透過水12の量を供給量48部に対して、第2段目の逆浸透膜装置15の回収量を夏と同じ45部を維持するように、第2の流量調整弁19を少し閉めると、RO膜15aが通過する第2の透過水14の通過量は45部となり、第2の濃縮水16は3部となる。
【0029】
このように、夏場(32℃)と冬場(26℃)との運転条件を比較すると、冬場での第2の濃縮水18の戻り量を減らす(5部⇒3部)と、夏場の処理量(95部+5部=100部)に較べて、冬場(95部+3部=98部)の処理量が低下することとなる。
この処理量の低下により、高圧の昇圧ポンプP1のヘッド圧が上昇する。
図7に高圧用ポンプ性能曲線の流量と圧力との関係を示す。
この夏場よりも冬場の圧力が上昇することで、図7に示す高圧用ポンプ性能曲線に合致するので、効率的なポンプ動作を行うことができる。
【0030】
よって、冬場は、RO膜13aを透過する水の透過割合が低下するが、その低下する分は供給量を低減(100部から98部)させることでこれを補うことができる。
また、冬場においては、処理量が低下するので、高圧用ポンプ性能曲線においては圧力が上昇することとなり、夏場の条件で設計したポンプ(ポンプ性能例えば6.6MPa)を用いることで、夏冬年間を通じての使用が可能となる。
【0031】
このような淡水化装置を用いて、淡水化の運転を行うには、先ず、原水11の温度を温度計で計測し、夏場モードか冬場モードかの確認を行う。その後、モードを維持又は変更の制御を行う。
その後、所定の運転条件となるように図示しない制御装置で制御して、第1の逆浸透膜装置13及び第2の逆浸透膜装置15へ供給する通水量を設定値となるように、ラインL1及びラインL2に介装された第1及び第2の流量調節弁17、19で調整する制御を図示しない制御装置により行う。この調整の際、夏冬のいずれかのモードに応じた調整を行い、安定した高品質の生産水を製造する。
【0032】
本実施例では、夏を32℃、冬を26℃として、温度差を6℃として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、所定の温度差(例えば3〜5℃以上)において、運転モードを変化する制御を制御装置で行うようにしてもよい。
なお、本発明では、仮に1℃の温度差であっても、システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化処理を行うことができる。
【0033】
[参考例]
図9は、本発明に対する参考例を示す淡水化装置の概略図である。
図9に示すように、参考例に係る淡水化装置200は、実施例1に係る淡水化装置に較べて、第1の逆浸透膜装置13の入口側に圧力調整用の圧力調整弁(PCV)201を設置している点が異なる。
参考例では、第1の逆浸透膜装置13のRO膜13aの膜性能は温度によって変化し、同じ供給圧力で温度が高くなると生産水量が大きくなるので、温度変化に関わらず常に一定の回収率(90%)で運転させるために、圧力制御弁を設置したものである。なお、図9中、符号F11〜F12は流量計を図示する。
【0034】
この際、一般的に最も温度が低い冬場の場合に、圧力調整弁(PCV)201が全開で要求水量が達成できるような高性能な昇圧ポンプを用意し、温度が高い夏場の場合には圧力調整弁(PCV)201をやや閉めて圧力を低下させる調整し、一定回収率運転を実現する。
図10は高圧用ポンプ性能曲線上の夏冬の運転ポイントを示す図である。この参考例では、図10に示すように、ポンプを通過する流量を一定とする場合は、冬場と夏場との運転の調整は、圧力を制御することで行い、夏場は冬場より低い圧力で運転することとなる。
【0035】
しかしながら、圧力調整弁(PCV)201を設置すると、低温温度時では全開時の圧力損失(約0.3MPa)は免れず、例えば設計値が7.0MPaの圧力が必要である場合には、昇圧ポンプとして7.3MPaの高性能ポンプが必要となる。
また、夏場の高温時にはさらに圧力調整弁(PCV)201を閉めるため、その圧力損失はより大きくなる。
【0036】
このような圧力調整弁(PCV)201の開閉動作による圧力損失は脱塩に寄与することのないエネルギーとなり無駄になり、脱塩プラントのシステム効率の低下になるという、問題が発生する。
また、第1の逆浸透膜装置13での入口側の圧力を調整して小さくすると、濃縮水16の圧力も小さくなり、この濃縮水ラインに圧力回収するために例えばエネルギー回収装置を設置するような場合には、そのエネルギー回収量も小さくなる、という問題がある。
【0037】
このように、参考例に係る淡水化装置200では、先ず条件が悪い冬場における流量を決定して、その流量に応じたポンプ性能(7MPa)を固定しているが、本発明においては、夏場におけるポンプ性能(例えば6.6MPa)において、冬場における運転が可能となる。
この結果、本発明では、参考例に係る淡水化装置200のように、圧力調整弁(PCV)201を設置する際に、定格以上の性能(7MPaのときに、7.3MPa)のポンプを設けることが無いので、設置時におけるポンプも安価なものとなり、イニシャルコストの低減も図ることができる。
【0038】
(参考図との比較)
また、本発明によれば、圧力調節弁(PCV)が不要となると共に、圧力調整弁(PCV)を設置する場合のように、流量を固定して制御するする必要がなくなる。
この結果、圧力調整弁(PCV)を用いる提案のような圧力損失のためのエネルギー損失が無くなり、エネルギー効率の良好な淡水化プラント運転が可能となる。
【0039】
また、本発明では、第1の濃縮水16を一定に維持するように調整しているので、圧力変動もほとんど少なく、圧力回収するために例えばエネルギー回収装置(図示せず)を設置しても安定したエネルギー回収が可能となる。
エネルギー回収装置としては、例えばPeltonWheel型エネルギー回収装置、Turbochager型エネルギー回収装置、PX(Pressure Exchanger)型エネルギー回収装置、DWEER(Dual Work Energy Exchanger)型エネルギー回収装置等の公知のものを用いることができる。
【実施例2】
【0040】
本発明に係る実施例2に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図2は、実施例2に係る淡水化装置の概略図である。なお、実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図2に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Bは、実施例1の装置において、第2の逆浸透膜装置15の第2の透過水14の一部を上流側へ戻す戻しラインL3を設けており、この戻しラインL3に第3の流量調節弁21を設けたものである。
この戻しラインL3を設置し、第2の透過水14を夏場は冬場よりも15%程度上流側に戻すようにしている。
【0041】
これは、低圧の昇圧ポンプP2の低圧ポンプ特性は差がないので、夏場例えば30%(15%)、冬場例えば15%(0%)とすることで、冬場は夏場よりも流量が少ないものとなり、低圧の昇圧ポンプP2のヘッド圧が上昇する。
図8は低圧用ポンプ性能曲線の流量と圧力との関係図である。図8に示すように、冬場においては圧力が上昇するので、低圧用ポンプ性能曲線に合致した運転が可能となり、確実な安定した海水淡水化処理を行うことができる。
【0042】
また、第2の透過水14を再度第2の逆浸透膜装置15で脱塩処理するので、生産水の水質の向上を図ることができる。
【実施例3】
【0043】
本発明に係る実施例3に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図3は、実施例3に係る淡水化装置の概略図である。なお、実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図3に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Cは、実施例1の装置において、第2の逆浸透膜装置15の第2の濃縮水18中の塩分を除去して第3の透過水22を生産する第3の逆浸透膜(RO膜)23aを有する第3の逆浸透膜装置23を設け、この第3の透過水22を上流側へ戻す戻しラインL4を設けており、この戻しラインL4に第4の流量調節弁24を設けたものである。
この戻しラインL4を設置することで、第3の透過水22を夏場は冬場よりも15%程度上流側に戻すようにしている。
これにより、実施例2と同様に確実で安定した海水淡水化処理を行うことができる。
【実施例4】
【0044】
本発明に係る実施例4に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図4は、実施例4に係る淡水化装置の概略図である。なお、実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図4に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Dは、実施例1の装置において、第1の逆浸透膜装置13の第1の透過水12の一部を第2の逆浸透膜装置15を迂回するバイパスラインL5を設け、このバイパスラインL5に第5の流量調整弁25を介装している。
そして、冬場においては、このバイパスラインL5を用いて、第1の透過水12の一部をバイパスさせている。
ここで、第2の逆浸透膜装置15をバイパスさせる際の分岐のさせ方は、配管で分けても良いし、ベッセルの2つの透過水の出口(上流側と下流側)を使って分けるようにしても良い。
流量の制御は、原水の温度を温度計20で計測し、夏冬を切り替える。そして、バイパスさせる際には、バイパスラインL5に設置した第5の流量調節弁25でそのバイパス流量を制御するようにしている。
【実施例5】
【0045】
本発明に係る実施例5に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図5は、実施例5に係る淡水化装置の概略図である。なお、実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図5に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Eは、実施例1において、第2の逆浸透膜装置15の第2の濃縮水18の流量を測定する流量計F3を設け、この流量計F3の測定結果を、流量制御部26により、第2の流量調整弁19の制御を行うようにしている。
【0046】
実施例1においては、第2の濃縮水18の流量は制御しないため、成り行きの運転となっており、流量がプラントの設計範囲を逸脱するような場合がある。特に第2の濃縮水18の流量が小さくなると、第2の逆浸透膜装置15での回収率が大きくなり、スケール析出のおそれがある。このような場合に、第2の濃縮水18の流量を流量計F3により測定し、設計の範囲外とならないように第2の濃縮水18の流量を調整することでスケールの析出のない、安定した脱塩処理を行うようにしている。
【実施例6】
【0047】
本発明に係る実施例6に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図6は、実施例6に係る淡水化装置の概略図である。なお、実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図6に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Fは、実施例1の装置において、第1の逆浸透膜装置13の前段側に設けられ、始動開始初期に手動で流量調整する第1の手動弁31と、第2の逆浸透膜装置15の前段側に設けられ、始動開始初期に手動で流量調整する第2の手動弁32と、第1の逆浸透膜装置13と第2の手動弁32との間に設けられ、始動開始初期に所定の圧力となるまで排水処理を行う三方弁33とを有するものである。
【0048】
第1の手動弁31及び第2の手動弁32の設置により、徐々にバルブを開放して、全開とするので、プラントの起動停止がしやすくなる。
また、三方弁33を用いて、第1の透過水12を排水して、低圧の昇圧ポンプP2の所定の入口圧力となるまで待機し、その後第2の透過水12が低圧の昇圧ポンプP2の入口圧近傍に達したことを確認してから、三方弁33を閉じつつ、第2の逆浸透膜装置15側に第1の透過水12を全量供給するようにしている。
これにより、中間タンクを設置せずとも安定して、起動初期の圧力変動を回避し、常に安定した立ち上げ運転とすることが可能となる。
【実施例7】
【0049】
本発明に係る実施例7に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図11は、実施例7に係る淡水化装置の概略図である。なお、実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図11に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Gは、実施例1の装置において、2台の低圧用の第2の逆浸透膜装置15A、15Aを直列に設け、直列の3段の除塩処理システムとしたものである。なお、第2の濃縮水ラインL2A、L2Bにより直列に設けた第2の逆浸透膜装置15A、15Aからの第2の濃縮水18A、18Bを上流側に戻している。
【0050】
第1の逆浸透膜装置13は高圧用であるので、実施例1と同様に、夏場のモードと冬場のモードの切り替えは同様に行う。
具体的には、原水11の温度が低下したことを温度計で計測し(夏場よりも5℃以下低下している)、冬場の状態であると確認した際には、第1の逆浸透膜装置13に供給される原水11の量を供給量98部(95+3)部となるように、第1段目の逆浸透膜装置13の回収率を下げるように、第1の流量調整弁17を調整して、第1の濃縮水16を一定に保つように制御すると、RO膜13aが通過する第1の透過水12の通過量は48部と低くなり、第1の濃縮水16は50部とする。
【0051】
また、2台の第2段目の逆浸透膜装置15A、第3段目の逆浸透膜装置15Bは低圧用であるので、実施例1と同様に、夏場のモードと冬場のモードの切り替えは同様に行う。
第2の逆浸透膜装置15Aに供給される第1の透過水12の量を供給量に対して、第2段目の逆浸透膜装置15Aの回収量を夏と同じ49部を維持するように、第2の流量調整弁19Aを少し閉めると、RO膜15aが通過する第2の透過水14Aの通過量は各々49部となり、第2の濃縮水18Aは低減(5部⇒3部)する。
また、第3段目の逆浸透膜装置15Bに供給される第2の透過水14Aの量を供給量49部に対して、第3段目の逆浸透膜装置15Bの回収量を夏と同じ45部を維持すると、RO膜15aが通過する第2の透過水14Bの通過量は各々45部となり、第2の濃縮水18Bは同等(4部)となる。
【0052】
このように、夏場(例えば32℃)と冬場(例えば26℃)との運転条件を比較すると、冬場での第2の濃縮水18Aの戻り量を減らす(5部⇒3部)と、夏場の処理量に較べて、冬場の処理量が低下することとなる。
この処理量の低下により、高圧の昇圧ポンプP1のヘッド圧が上昇する。
【0053】
また、第3段目の逆浸透膜装置15Bの前流側に、例えば圧力調整弁を設置して、この第3段目の逆浸透膜装置15Bへ供給する第2の透過水14Aの供給量を調整するようにして、システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化処理を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明に係る淡水化装置によれば、システム効率及びエネルギー効率の向上化を図った淡水化処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
10A〜10G 淡水化装置
11 原水
12 第1の透過水
13a、15a RO膜
13 第1の逆浸透膜装置
14 第2の透過水
15 第2の逆浸透膜装置
16 第1の濃縮水
17 第1の流量調整弁
18 第2の濃縮水
19 第2の流量調整弁
20 温度計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の圧力で供給された原水から塩分を除去して第1の透過水を生産する第1の逆浸透膜を有する高圧用の第1の逆浸透膜装置と、
第1の逆浸透膜装置からの第1の透過水中の塩分を除去して第2の透過水を生産する第2の逆浸透膜を有する低圧用の第2の逆浸透膜装置と、
第1の逆浸透膜装置からの第1の濃縮水の排出ラインに介装され、第1の濃縮水の流量を調整する第1の流量調整弁と、
第2の逆浸透膜装置からの第2の濃縮水を第1の逆浸透膜装置の前段側に戻す第1の戻しラインに介装され、第2の濃縮水の流量を調整する第1の流量調整弁と、
前記原水の供給温度を温度計で計測し、その計測温度に対応して第1の流量調整弁と第2の流量調整弁とを制御する制御装置とを具備し、
計測した原水の温度が設定温度より低い場合には、
第1の流量調節弁で濃縮水排出量を一定に保つ調整と、第2の流量調節弁での戻りの第2の濃縮水の流量を低減させる調節とを行い、
温度が高い場合に較べて、第1の逆浸透膜装置への供給流量を低く調整しつつ、所定の生産水回収率を維持した運転を行うことを特徴とする淡水化装置。
【請求項2】
請求項1において、
第2の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻す第2の戻しラインに介装され、第2の濃縮水の流量を調整する第3の流量調整弁を有することを特徴とする淡水化装置。
【請求項3】
請求項1において、
第2の濃縮水中の塩分を除去して第3の透過水を生産する第3の逆浸透膜を有する第3の逆浸透膜装置と、
第3の透過水を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻す第3の戻しラインに介装され、第3の透過水の流量を調整する第4の流量調整弁を有することを特徴とする淡水化装置。
【請求項4】
請求項1において、
第1の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の後段側にバイパスさせる第1のバイパスに介装され、第1の透過水の流量を調整する第5の流量調整弁を有することを特徴とする淡水化装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
第1の逆浸透膜装置の前段側に設けられ、始動開始初期に手動で流量調整する第1の手動弁と、
第2の逆浸透膜装置の前段側に設けられ、始動開始初期に手動で流量調整する第2の手動弁と、
第1の逆浸透膜装置と第2の手動弁との間に設けられ、始動開始初期に所定の圧力となるまで排水処理を行う三方弁とを有することを特徴とする淡水化装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
第1の濃縮水を排出するラインに圧力を回収するエネルギー回収装置を設けてなることを特徴とする淡水化装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つにおいて、
低圧用の第2の逆浸透膜装置の後段側に低圧用の逆浸透膜装置を直列に有することを特徴とする淡水化装置。
【請求項8】
複数の逆浸透膜装置を直列に設置して、原水から脱塩処理する淡水化方法において、
前記原水の供給温度を計測し、
計測した原水の温度が、設定値よりも低い場合には、
第1の逆浸透膜装置からの濃縮水排出量を一定に保つ調整と、
第2の逆浸透膜装置からの第2の濃縮水の流量を低減させる調節とを行い、
温度が高い場合に較べて、第1の逆浸透膜装置への供給流量を低く調整しつつ、所定の生産水回収率を維持した運転を行うことを特徴とする淡水化方法。
【請求項9】
請求項8において、
第2の逆浸透膜装置からの第2の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻し、この第2の濃縮水の戻しの流量を温度差に応じて調整することを特徴とする淡水化方法。
【請求項10】
請求項8において、
第2の濃縮水中の塩分を除去して第3の透過水を生産する第3の逆浸透膜を有する第3の逆浸透膜装置を有し、
第3の透過水を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻し、
この第3の濃縮水の戻しの流量を温度差に応じて調整することを特徴とする淡水化方法。
【請求項11】
請求項8において、
第1の逆浸透膜装置からの第1の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の後段側に送り、この第1の透過水の送りの流量を温度差に応じて調整することを特徴とする淡水化方法。
【請求項1】
所定の圧力で供給された原水から塩分を除去して第1の透過水を生産する第1の逆浸透膜を有する高圧用の第1の逆浸透膜装置と、
第1の逆浸透膜装置からの第1の透過水中の塩分を除去して第2の透過水を生産する第2の逆浸透膜を有する低圧用の第2の逆浸透膜装置と、
第1の逆浸透膜装置からの第1の濃縮水の排出ラインに介装され、第1の濃縮水の流量を調整する第1の流量調整弁と、
第2の逆浸透膜装置からの第2の濃縮水を第1の逆浸透膜装置の前段側に戻す第1の戻しラインに介装され、第2の濃縮水の流量を調整する第1の流量調整弁と、
前記原水の供給温度を温度計で計測し、その計測温度に対応して第1の流量調整弁と第2の流量調整弁とを制御する制御装置とを具備し、
計測した原水の温度が設定温度より低い場合には、
第1の流量調節弁で濃縮水排出量を一定に保つ調整と、第2の流量調節弁での戻りの第2の濃縮水の流量を低減させる調節とを行い、
温度が高い場合に較べて、第1の逆浸透膜装置への供給流量を低く調整しつつ、所定の生産水回収率を維持した運転を行うことを特徴とする淡水化装置。
【請求項2】
請求項1において、
第2の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻す第2の戻しラインに介装され、第2の濃縮水の流量を調整する第3の流量調整弁を有することを特徴とする淡水化装置。
【請求項3】
請求項1において、
第2の濃縮水中の塩分を除去して第3の透過水を生産する第3の逆浸透膜を有する第3の逆浸透膜装置と、
第3の透過水を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻す第3の戻しラインに介装され、第3の透過水の流量を調整する第4の流量調整弁を有することを特徴とする淡水化装置。
【請求項4】
請求項1において、
第1の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の後段側にバイパスさせる第1のバイパスに介装され、第1の透過水の流量を調整する第5の流量調整弁を有することを特徴とする淡水化装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
第1の逆浸透膜装置の前段側に設けられ、始動開始初期に手動で流量調整する第1の手動弁と、
第2の逆浸透膜装置の前段側に設けられ、始動開始初期に手動で流量調整する第2の手動弁と、
第1の逆浸透膜装置と第2の手動弁との間に設けられ、始動開始初期に所定の圧力となるまで排水処理を行う三方弁とを有することを特徴とする淡水化装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
第1の濃縮水を排出するラインに圧力を回収するエネルギー回収装置を設けてなることを特徴とする淡水化装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つにおいて、
低圧用の第2の逆浸透膜装置の後段側に低圧用の逆浸透膜装置を直列に有することを特徴とする淡水化装置。
【請求項8】
複数の逆浸透膜装置を直列に設置して、原水から脱塩処理する淡水化方法において、
前記原水の供給温度を計測し、
計測した原水の温度が、設定値よりも低い場合には、
第1の逆浸透膜装置からの濃縮水排出量を一定に保つ調整と、
第2の逆浸透膜装置からの第2の濃縮水の流量を低減させる調節とを行い、
温度が高い場合に較べて、第1の逆浸透膜装置への供給流量を低く調整しつつ、所定の生産水回収率を維持した運転を行うことを特徴とする淡水化方法。
【請求項9】
請求項8において、
第2の逆浸透膜装置からの第2の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻し、この第2の濃縮水の戻しの流量を温度差に応じて調整することを特徴とする淡水化方法。
【請求項10】
請求項8において、
第2の濃縮水中の塩分を除去して第3の透過水を生産する第3の逆浸透膜を有する第3の逆浸透膜装置を有し、
第3の透過水を、第2の逆浸透膜装置の前段側に戻し、
この第3の濃縮水の戻しの流量を温度差に応じて調整することを特徴とする淡水化方法。
【請求項11】
請求項8において、
第1の逆浸透膜装置からの第1の透過水の一部を、第2の逆浸透膜装置の後段側に送り、この第1の透過水の送りの流量を温度差に応じて調整することを特徴とする淡水化方法。
【図1−1】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−120988(P2011−120988A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279685(P2009−279685)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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