説明

深絞り成形用フィルム、深絞り包装体用底材及び深絞り包装体

【課題】 良好な電子レンジ開封性、100℃未満の耐ボイル性及びイージーピール性を有する深絞り成形用フィルムの提供。
【解決手段】 ポリアミド樹脂層と、25℃で1.96〜7.84N/15mm、95℃で0.8〜4.90N/15mmのイージーピール強度であり、かつ凝集破壊性を有するイージーピール層とを少なくとも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として包装体ごと電子レンジで加熱する食品の包装に好適に使用できる深絞り成形用フィルム、深絞り包装体用底材及び深絞り包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子レンジで加熱又は加熱調理される食品用の包装体としては、電子レンジで加熱処理する前に、包装体の一部を開封させ、続いて電子レンジで加熱処理するタイプのものが広く一般に使用されてきた。その理由は、開封しないで電子レンジで加熱処理すると、加熱時に包装体内の内圧が上がり破裂する危険性があるため、その危険性を回避する目的で内圧を包装体外に逃がすためである。しかしながら、従来の包装体の場合、電子レンジで加熱処理する前に包装体の一部を開封する作業に手間がかかることと、加熱時に内圧が外に逃げてしまい、包装体が膨張することがないため、内容物の加熱終了が判りにくい等の問題があった。
【0003】
上記問題を解決するため、最近では、ヒートシール部を工夫した包装体や、ヒートシール強度が弱い箇所を作り、包装体を開封しないまま電子レンジで加熱処理し、内圧が上昇したときに前記ヒートシール強度の弱い箇所を剥離させて内圧を逃がす工夫をした包装体も開発されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、そのような包装体を作るには、包装機のヒートシール部に対応した特殊なフィルムを使用しなければならないといった問題があった。さらに当該包装体には、電子レンジによる加熱のみを想定し、ボイル加熱できないタイプのものも含まれるため、そのような包装体を使用した場合には、加熱調理法が限定されてしまうという問題もあった。
【特許文献1】特開平11−139465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術の上記課題を解決しよとするものであり、本発明の目的は、ヒートシール部に特別な工夫が不要であり、電子レンジ加熱した際に内圧の上昇で破裂せずにイージーピール部が剥がれることにより内圧が抜け、さらに100℃未満のボイル加熱が可能である深絞り成形用フィルムを提供することにある。
【0005】
本発明のもう一つの目的は、本発明の深絞り成形用フィルムからなる深絞り包装体用底材及び深絞り包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、ポリアミド樹脂(以下において「PA」ということがある。)層と、25℃で1.96N/15mm幅以上7.84N/15mm幅以下、95℃で0.8N/15mm幅以上4.90N/15mm幅以下のイージーピール強度を示し、かつ凝集破壊性を有するイージーピール層(以下において「EP層」ということがある。)とを少なくとも有する深絞り成形用フィルムにより達成される。
【0007】
ここで、凝集破壊性を有するとは、深絞り包装体を開封する際に、イージーピール層自身が破壊されて剥離し、イージーピール層は底材側、蓋材側の両方に残ることをいう。
【0008】
前記EP層は、25℃で1.96N/15mm幅以上7.84N/15mm幅以下であり、かつ95℃で0.8N/15mm幅以上4.90N/15mm幅以下のイージーピール強度を示せば、EP層を構成する樹脂は特に限定はされないが、樹脂A及び樹脂Bの混合物より構成され、かつ樹脂A及びBの含有率がそれぞれ40質量%以上80質量%以下及び20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
樹脂A:直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(以下において「LLDPE」ということがある。)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(以下において「EVA」ということがある。)、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(EMMA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体樹脂(EMA)及びこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種
樹脂B:ポリプロピレン樹脂(以下において「PP」ということがある。)又はポリブテン樹脂(以下において「PB」ということがある。)
【0009】
本発明のフィルムは、前記PA層の外側及び/又は前記PA層と前記EP層との間に、少なくとも1層のPP層を有することが望ましい。
【0010】
また、本発明のフィルムは、前記PA樹脂層と前記EP層との間又は/及び前記PA層とPP層との間に、少なくとも1層のEVA層又はポリエチレン樹脂(以下において「PE」ということがある。)層を有していることが好ましい。
【0011】
また、本発明のフィルムは、前記PA層と前記EP層との間又は/及び前記PA層とPP層との間に、少なくとも1層の接着樹脂層を有していることが好ましい。
【0012】
また本発明のフィルムは、前記PA層と前記EP層との間又は/及び前記PA層とPP層との間に、少なくとも1層のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(以下において「EVOH」ということがある。)を有していることが好ましい。
【0013】
第二の本発明は、上記の深絞り成形用フィルムにより形成された深絞り包装体用底材である。
【0014】
第三の本発明は、上記の底材を使用した深絞り包装体である。該深絞り包装体は、電子レンジ加熱の用途に供されるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の深絞り用フィルムは、ポリアミド樹脂(PA)層と、25℃で1.96N/15mm幅以上7.84N/15mm幅以下、95℃で0.8N/15mm幅以上4.90N/15mm幅以下のイージーピール強度を示し、かつ凝集破壊性を有するイージーピール層(EP層)とを少なくとも有する。この構成により、本発明であれば、電子レンジ開封性、100℃未満の耐ボイル性及び良好なイージーピール性を有する、深絞り成形に最適なフィルムを得ることができる。
【0016】
本発明のフィルムは、良好な電子レンジ開封性、100℃未満の耐ボイル性及びイージーピール性を有するフィルムであるため、電子レンジ対応の深絞り包装体用のフィルムとして、特に深絞り包装体の底材として好適に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の深絞り成形用フィルム、深絞り包装体用底材及び深絞り包装体についてさらに詳細に説明する。
【0018】
[深絞り成形用フィルム]
本発明のフィルムは、ポリアミド樹脂(PA)層と、25℃で1.96N/15mm幅以上7.84N/15mm幅以下、95℃で0.8N/15mm幅以上4.90N/15mm幅以下のイージーピール強度であり、かつ凝集破壊性を有するイージーピール層(EP層)とを少なくとも有する。
【0019】
(PA層)
本発明のフィルムにおいて、耐ピンホール性と深絞り成形性を付与する目的で、少なくとも1層のPA層を設けることが必要である。
【0020】
PA層を構成する樹脂の種類は、ポリアミド樹脂であれば特に限定されないが、耐ピンホール性の観点からはナイロン系樹脂(Ny)を用いることが好ましい。Nyとしては、例えば、6ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン、MXD6ナイロン等の縮合単位の重合体又はこれら2種以上との共重合体、さらにはこれらの混合物を挙げることができる。中でも6ナイロンや6−66ナイロンを用いることが好ましい。
【0021】
PA層の厚みは5μm以上、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、かつ200μm以下、好ましくは180μm以下、さらに好ましくは150μm以下の範囲であることが望ましい。PA層の厚みの下限値を5μmとすることにより良好な耐ピンホール性が得られ、また上限値を200μmとすることによりフィルムの熱成形性を良好に維持することができる。
【0022】
本発明のフィルムは、PA層を少なくとも1層有すればよく、必要に応じて2層以上形成しても良い。本発明のフィルム中にPA層を2層以上有すれば、耐ピンホール性と防水性をより向上させることができ、またEVOH層の白化防止効果をより向上させることができる。なお、フィルム中に2層以上のPA層を形成する場合、PA層の総厚みは5μm以上200μm以下、好ましくは10μm以上180μm以下の範囲にすることが望ましい。
【0023】
(イージーピール層(EP層))
【0024】
本発明のフィルムは、最内層として25℃で1.96N/15mm幅以上7.84N/15mm幅以下であり、かつ95℃で0.8N/15mm幅以上4.90N/15mm幅以下のイージーピール強度を示し、かつ凝集破壊性を有するEP層を備えることが必要である。
【0025】
EP層の25℃におけるイージーピール強度は1.96N/15mm幅以上、好ましくは2.45N/15mm幅以上、さらに好ましくは2.94N/15mm幅以上であり、7.84N/15mm幅以下、好ましくは7.35N/15mm幅以下、さらに好ましくは6.86N/15mm幅以下とすることが望ましい。
【0026】
EP層の25℃におけるイージーピール強度を1.96N/15mm幅以上とすることにより、輸送中の耐破袋性を得ることができ、また7.84N/15mm幅以下とすることにより良好な開封性を得ることができる。EP層の95℃におけるイージーピール強度は0.8N/15mm幅以上、好ましくは0.98N/15mm幅以上、さらに好ましくは1.47N/15mm幅以上であり、4.90N/15mm幅以下、好ましくは4.41N/15mm幅以下、さらに好ましくは3.92N/15mm幅以下とすることが望ましい。
【0027】
またEP層の95℃におけるイージーピール強度を0.8N/15mm幅以上とすることにより、100℃未満のボイル加熱に耐えることができ、4.90N/15mm幅以下にすることにより、電子レンジ加熱時に包装体が破裂することなく、内圧でスムーズに開封できる。
【0028】
EP層を構成する樹脂は、25℃で1.96N/15mm幅以上7.84N/15mm幅以下、95℃で0.8N/15mm幅以上4.90N/15mm幅以下のイージーピール強度であり、かつ凝集破壊性を有する樹脂であれば特に限定されない。EP層は、例えば、種類の異なる次の樹脂A及び樹脂Bより構成することができる。
【0029】
すなわち、樹脂Aとしては、主成分が融点90℃以上、好ましくは融点95℃以上、さらに好ましくは融点100℃以上、最も好ましくは融点120℃以上の
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、
低密度ポリエチレン(LDPE)、
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、
エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、
エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、
エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、
エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、
エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)
及びこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。耐熱性の観点からは、融点が100℃以上であり、かつ密度が0.915g/cm以上0.945g/cm以下である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)を好適に用いることができる。さらに耐熱性と低温シール性の観点からは、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)との混合樹脂を好適に用いることができる。
【0030】
一方、樹脂Bとしては、
ポリプロピレン(PP)、又は
ポリブテン(PB)
を用いることができる。樹脂BのPPは、ランダムコポリマー(メタロセン触媒により得られるランダムコポリマーを含む)、ホモポリマー、ブロックコポリマー等のいずれも使用でき、中でもランダムコポリマーを好適に用いることができる。また、ポリブテン(PB)としては、1−ポリブテンと2−ポリブテンが挙げられ、特に1−ポリブテンを好適に用いることができる。
【0031】
EP層を構成する樹脂中の樹脂Aの含有率は、40質量%以上、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上であり、かつ80質量%以下、好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下であることが望ましい。またEP層を構成する樹脂中の樹脂Bの含有率は、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、35質量%以上であり、かつ60質量%以下、好ましくは50質量%以下、45質量%以下であることが望ましい。樹脂A及び樹脂Bの含有率を上記範囲にすることによって、25℃、及び95℃におけるイージーピール強度を本発明の規定する所定の範囲内におさめることが可能となる。
【0032】
25℃のイージーピール強度は、樹脂Aと樹脂Bの含有率を変更することにより調整できる。例えば、25℃のイージーピール強度を増加させたい場合には、樹脂Aの含有率を増加することにより達成でき、一方、25℃のイージーピール強度を減少させたい場合には、樹脂Aの含有率を減少させることにより達成できる。
【0033】
また95℃のイージーピール強度は、樹脂Aの融点と密度を変更することにより調整できる。例えば、95℃のイージーピール強度を増加させたい場合には、比較的融点の高い樹脂Aを使用するか、あるいは密度の高い樹脂Aを使用することにより達成できる。一方、95℃のイージーピール強度を減少させたい場合には、比較的融点の低い(但し融点90度以上)樹脂Aを使用するか、あるいは密度の低い樹脂Aを使用することにより達成できる。
【0034】
上記EP層の厚みは、製膜性及び剥離外観性の観点から3μm以上、好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、かつ20μm以下、好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下の範囲とすることが望ましい。EP層の厚みを3μm以上とすることにより、安定した製膜性が得られる。一方、EP層の厚みを20μm以下にすることにより剥離時に毛羽立ちや膜残りが発生し難くすることができ、良好な剥離外観が得られる。
【0035】
(中間層及び外層)
本発明のフィルムは、PA層とEP層との間に中間層を設けることができ、PA層の外側に外層を設けることができる。ここで、中間層とは、PA層とEP層との間に設けられた一層あるいは二層以上の複数層からなる層をいい、外層とはPA層の外側に設けられた一層あるいは二層以上の複数層からなる層をいう。以下に、中間層及び外層を構成する各層について説明する。
【0036】
−EVA層及びPE層−
上記中間層及び外層としては、柔軟性を付与する目的でエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)層又はポリエチレン樹脂(PE)層を設けることもできる。EVAのエチレン含有率は特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から1モル%以上、好ましくは1.5モル%以上であり、20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下であることが望ましい。また、EVA層を設ける場合、製膜性の観点からEVA層の厚みは10μm以上、好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上であり、かつ100μm以下、好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下とすることが望ましい。
【0037】
市販されているEVAとしては、例えば、日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックEVA」などが挙げられる。
【0038】
中間層及び外層にPE層を設ける場合、PE層で使用されるPEは特に限定されはない。例えば、PE層としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)又はそれらをブレンドしたものを使用することができる。ブレンド比率は所望の柔軟性を付与する目的で適宜決定することができ、例えば、LDPEとHDPEの配合比を質量比で40〜80:60〜20、好ましくは50〜80:50〜20、さらに好ましくは60〜80:40〜20とすることができる。
【0039】
LDPE又はLLDPEは、密度が0.90g/cm以上のものが好ましく、HDPEは、密度0.94g/cm以上のものが好適に使用される。密度の高いものを使用することにより、PE層に柔軟性を維持しつつ、適度の硬さを付与できる。PE層の厚みは10μm以上、好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上であり、かつ100μm以下、好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは60μm以下である。
【0040】
市販されているPEとしては、例えば、出光石油化学製、商品名「モアテック」などが挙げられる。
【0041】
−PP層−
また、外層及び/又は中間層に硬さを付与する目的でポリプロピレン樹脂(PP)層を設けることもできる。PPの種類は特に限定されるわけではなく、例えば、ランダムコポリマー(メタロセン触媒により得られるランダムコポリマーを含む)、ブロックコポリマー、ホモポリマー又はそれらをブレンドしたものを使用することができる。特に好ましくはランダムコポリマーを使用することができる。市販されているPPを例示すれば、例えば、日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP」、グランドポリマー社製、商品名「ノーブレン」などが挙げられる。
【0042】
−EVOH層−
中間層には酸素バリアー性を付与する目的で、EVOH層を設けることができる。EVOH層で用いられるEVOHのエチレン含有率は特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から32モル%以上、好ましくは38モル%以上であり、かつ47モル%以下好ましくは44モル%以下であることが望ましい。また、EVOHのケン化度は90%以上、好ましくは95モル%以上のものが望ましい。EVOHのエチレン含有量及びケン化度を上記範囲に保つことにより、本発明のフィルムの共押出性、フィルムの強度を良好なものとすることができる。市販されているEVOHを例示すれば、例えば、クラレ社製、商品名「エバール」、日本合成化学社製、商品名「ソアノール」などが挙げられる。
【0043】
EVOH層を設ける場合、EVOH層の厚みは5μm以上、好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、かつ30μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下であることが望ましい。EVOH層の厚みの下限値を5μmとすることにより十分な酸素バリアー性が得られ、また上限値を30μmとすることによりフィルムの共押出性を悪化することもなく、かつ良好なフィルム強度を保持できる。
【0044】
−接着樹脂層−
また、中間層や外層においては、各層を接着するために接着樹脂層を設けることができる。接着樹脂層で使用される接着樹脂は、PA層、PE層、PP層を必要な強度に接着することができれば特に限定されないが、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。また接着樹脂として、前記不飽和カルボン酸のエステルや無水物も用いることができ、さらに誘導体としてアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等を用いることができる。また市販の接着樹脂としては、例えば、三井化学(株)製、商品名「アドマー」、三菱化学(株)社製、商品名「モディック」が挙げられ、これらを好適に使用することができる。
【0045】
接着樹脂層は、上記PA層と上記の中間層及び外層の間に少なくとも1層設けることができる。さらに、層間接着強度をより高める観点からは中間層のPE層とPA層の間、又はPA層と外層PPとの間に設けることが好ましい。
【0046】
本発明のフィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて各層に添加剤を含有させることができる。含有させることのできる添加剤としては、結晶核剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、耐候安定剤、スリップ剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等を挙げることができる。結晶核剤は、特に制限されるものではなく、公知の結晶核剤を使用することができる。例えば、ソルビトール類や、ジ−(パラ−t−ブチル安息香酸アルミニウム)、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム等の金属塩類、シリカ、タルク等の無機系結晶核剤等が挙げられる。中でも、ソルビトール類および金属塩類の結晶核剤が好ましい。結晶核剤は、樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上1.00質量部以下で配合することが好ましい。さらには、0.05質量部以上0.50質量部以下であることが好ましい。ここで、結晶核剤の配合量が少なすぎると、透明性の改良効果が十分ではない場合がある。一方、結晶核剤の配合量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなく、逆に透明性が悪化する場合がある。
【0047】
<フィルムの層構成>
本発明のフィルムの層構成は、ポリアミド樹脂(PA)層と、25℃で1.96N/15mm幅以上7.84N/15mm幅以下、95℃で0.8N/15mm幅以上4.90N/15mm幅以下のイージーピール強度であり、かつ凝集破壊性を有するイージーピール層(EP層)とを少なくとも有しておれば、その他の層の層構成は特に制限されない。例えば、PA層(A)、PE層(B)、EVA層(C)、PP層(D)、イージーピール層(E)、接着樹脂(F)及びEVOH層(H)で表した場合、以下の層構成を形成することができる。中でも好ましい層構成は、下記(2)、(4)、(8)、(12)又は(15)であり、さらに好ましい層構成は(8)又は(15)である。
(1)A/F/E (以下において「層構成(1)」という。)
(2)A/F/B/E (以下において「層構成(2)」という。)
(3)A/F/C/E (以下において「層構成(3)」という。)
(4)A/F/D/E (以下において「層構成(4)」という。)
(5)D/F/A/F/E (以下において「層構成(5)」という。)
(6)D/F/A/F/B/E (以下において「層構成(6)」という。)
(7)D/F/A/F/C/E (以下において「層構成(7)」という。)
(8)D/F/A/F/D/E (以下において「層構成(8)」という。)
(9)A/F/A/F/E (以下において「層構成(9)」という。)
(10)A/F/A/F/B/E (以下において「層構成(10)」という。)
(11)A/F/A/F/C/E (以下において「層構成(11)」という。)
(12)A/F/A/F/D/E (以下において「層構成(12)」という。)
(13)D/F/H/A/F/B/E (以下において「層構成(13)」という。)
(14)D/F/H/A/F/C/E (以下において「層構成(14)」という。)
(15)D/F/H/A/F/D/E (以下において「層構成(15)」という。)
(16)B/F/H/A/F/B/E (以下において「層構成(16)」という。)
【0048】
<深絞り成形用フィルムの製造方法>
本発明の深絞り成形用フィルムは、PA層と、EP層と、その中間に形成される中間層及び外側に形成される外層とを同時又は逐次的に積層して作製することができる。
【0049】
本発明のフィルムは、Tダイ法、チューブラ法など既存の方法により、ダイを備えた押出機を用いて共押出しすることにより、PA層、EP層、中間層及び外層を同時に作製することができる。また、前記深絞り成形用フィルムは、各層を構成する樹脂を別々にシート化した後にプレス法やロールニップ法などを用いて積層して逐次的に作製することもできる。
【0050】
[深絞り包装体用底材及び深絞り包装体]
本発明のフィルムは、深絞り成型後、ハンバーグ等の内容物を充填し、その上に蓋材フィルムを被せてヒートシールすることにより深絞り包装体に用いることができる。特に本発明のフィルムを深絞り包装体の底材として用いる場合、良好な深絞り包装体を得ることができる。具体的には、本発明のフィルムは、深絞り包装機により、深絞り包装体の底材に成形される。
【0051】
図1は、接合前の包装体を示す説明図である。底材20の凹部30内にパスタ等の内容物40が収容されている。図2は、蓋材と底材の接合後の包装体を示す説明図である。底材20のフランジ部25上面と蓋材10下面周囲の部分がヒートシールされ、ヒートシール部50(図で陰影が付されている)が形成されている。
【0052】
本発明の深絞り包装体の蓋材は、本発明の複合フィルムヒートシール可能で、25℃で1.96N/15mm幅以上7.84N/15mm幅以下、95℃で0.8N/15mm幅以上4.90N/15mm幅以下のイージーピール強度が得られれば特に制限はない。例えば、外層が二軸延伸ナイロン、中間層がシリカ蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、シール層がポリエチレン又はポリプロピレンが挙げられる。
【0053】
本発明の包装体は、上記の蓋材と、本発明の底材とを、ヒートシール等の接着手段により接着することにより作製することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
全層共押出により層構成(2)のフィルムを得て、実施例1とした。
Ny1(40μm)/接着樹脂(10μm)/LLDPE1(40μm)/EP1(10μm)
Ny1:三菱エンジニアリングプラスチック製「ノバミッド6Ny」
接着樹脂:三井化学製「アドマー」
LLDPE1:出光石油化学製「モアテック」
EP1:LLDPE2(60%)とポリブテン(40%)のブレンド
LLDPE2:出光石油化学製「モアテック」(密度0.916g/cm)融点119℃
ポリブテン:三井化学製「タフマー」
【0056】
(実施例2)
全層共押出により層構成(15)のフィルムを得て、実施例2とした。
PP1(30μm)/接着樹脂(10μm)/EVOH(10μm)/Ny2(30μm)/接着樹脂(10μm)/PP1(20μm)/EP2(10μm)
Ny2:三菱エンジニアリングプラスチック製「ノバミッド6−66Ny」Ny比率15%の6−66共重合Ny
EVOH:クラレ製「エバール」(44molタイプ)
EP2:LDPE(50%)とPP1(50%)とのブレンド
LDPE:日本ポリエチレン製「ノバテックPE」(密度0.924g/cm3)融点112℃
PP1:日本ポリプロ製「ノバテックPP」(ランダムコポリマー)
【0057】
(実施例3)
全層共押出により層構成(3)のフィルムを得て、実施例3とした。
Ny1(40μm)/接着樹脂(10μm)/EVA1(40μm)/EP3(10μm)
Ny1:三菱エンジニアリングプラスチック製「ノバミッド6Ny」
接着樹脂:三井化学製「アドマー」
PP1:日本ポリプロ製「ノバテックPP」(ランダムコポリマー)
EP3:酢酸ビニル含有率5質量%のEVA1(75%)とポリブテン(25%)のブレンド
EVA1:日本ポリエチレン製「ノバテックEVA」 融点:108℃
【0058】
(実施例4)
全層共押出により層構成(4)のフィルムを得て、実施例4とした。
Ny1(40μm)/接着樹脂(10μm)/PP1(40μm)/EP4(10μm)
Ny1:三菱エンジニアリングプラスチック製「ノバミッド6Ny」
接着樹脂:三井化学製「アドマー」
PP1:日本ポリプロ製「ノバテックPP」(ランダムコポリマー)
EP4:アイオノマー(70%)とPP1(30%)のブレンド
アイオノマー:三井デュポンポリケミカル製「ハイミラン」融点97℃
【0059】
(実施例5)
全層共押出により層構成(16)のフィルムを得て、実施例5とした。
LLDPE1(30μm)/接着樹脂(10μm)/EVOH(10μm)/Ny2(30μm)/接着樹脂(10μm)/LLDPE1(20μm)/EP2(10μm)
LLDPE1:出光石油化学製「モアテック」
接着樹脂:三井化学製「アドマー」
EVOH:クラレ製「エバール」(44molタイプ)
Ny2:三菱エンジニアリングプラスチック製「ノバミッド6−66Ny」Ny比率15%の6−66共重合Ny
EP2:LDPE(50%)とPP1(50%)とのブレンド
【0060】
(実施例6)
全層共押出により層構成(13)のフィルムを得て、実施例6とした。
PP1(30μm)/接着樹脂(10μm)/EVOH(10μm)/Ny2(30μm)/接着樹脂(10μm)/LLDPE1(20μm)/EP2(10μm)
PP1:日本ポリプロ製「ノバテックPP」(ランダムコポリマー)
接着樹脂:三井化学製「アドマー」
EVOH:クラレ製「エバール」(44molタイプ)
Ny2:三菱エンジニアリングプラスチック製「ノバミッド6−66Ny」Ny比率15%の6−66共重合Ny
EP2:LDPE(50%)とPP1(50%)とのブレンド
【0061】
(比較例1)
全層共押出により層構成(2)のフィルムを得て、比較例1とした。
Ny1(40μm)/接着樹脂(10μm)/LLDPE1(40μm)/EP3(10μm)
EP3:LLDPE2(35%)とポリブテン(65%)のブレンド
【0062】
(比較例2)
全層共押出により層構成(2)のフィルムを得て、比較例2とした。
Ny(40μm)/接着樹脂(10μm)/LLDPE1(40μm)/EP4(10μm)
EP4:LLDPE2(85%)とポリブテン(15%)のブレンド
【0063】
(比較例3)
全層共押出により層構成(15)のフィルムを得て、比較例3とした。
PP1(30μm)/接着樹脂(10μm)/EVOH(10μm)/Ny2(30μm)/接着樹脂(10μm)/PP1(20μm)/EP5(10μm)
EP5:酢酸ビニル含有量20%のEVA2(60%)とポリブテン(40%)のブレンド
EVA2:日本ポリエチレン製「ノバテックEVA」融点:89℃
【0064】
[パックサンプルの作製]
深絞り包装機(大森機械工業社製FV6300)によって、縦160mm、横120mm、絞り深さ25mmの形状に深絞り成型し、パスタ(ミートソース)250gを入れて蓋材を被せて枠シールした。
【0065】
なお、蓋材は下記のものを使用した。
(実施例1、比較例1〜3の蓋材)
下記の構成でドライラミネート法により作製した。以下において層間に「//」と表記して、ドライラミネートを表す。
ONy(15μm)//LLDPE(70μm)
ONy:サントニールSNR−XT(三菱樹脂製二軸延伸品)
LLDPE:L−6102(東洋紡績社製)
【0066】
(実施例2〜6の蓋材)
下記の構成でドライラミネート法により作製した。
バリアーNy(15μm)//CPP(70μm)
バリアーNy:スーパーニールS−PR XT(三菱樹脂製二軸延伸品)
CPP:P1153(東洋紡績社製)
【0067】
[評価方法]
<イージーピール強度>
パック品のシール部をフィルム流れ方向に対して15mm幅の短冊状に切断し、25℃又は95℃の雰囲気下で引張試験機を用いて200mm/minの速度で蓋材と底材を剥離したときの最大荷重をイージーピール強度とした。
【0068】
<剥離性>
パック品を手で剥離したときに開封性がよいものを○、重くて開封しにくいものを×とした。
【0069】
<耐破袋性>
包装体を10個作成し、5段重ね、2列でダンボールケースに包装し、冷凍(−18℃)の条件で1.5mの高さより、コンクリート面に5回底面落下させた際に、破袋がないものを○、破袋があったものを×とした。
【0070】
<耐ボイル性>
包装体を95℃で30分間ボイルした際に、破袋のないものを○、破袋したものを×とした。
【0071】
<電子レンジ適正>
包装体を電子レンジ(500W)にかけて、内圧でスムーズに開封できたものを○、破裂して内容物の飛散が確認できたものを×とした。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例1から6は、開封性が良く、落下テスト及びボイルでも破袋せず、且つ電子レンジでも破裂することなく、内圧によりスムーズに開封できた。
【0074】
これに対し、比較例1は25℃でのイージーピール強度が弱かったため、落下テストによって、ヒートシール部より破袋するものがあった。比較例2は25℃でのイージーピール強度が強いため、剥離性が悪く開封しにくい。また、95℃でのイージーピール強度も強いため、電子レンジにかけた際に内圧が上がりすぎて、破裂して内容物が飛散する場合があった。比較例3は、95℃でのイージーピール強度が弱いため、ボイル時にヒートシール部より破袋するものがあった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】接合前の包装体を示す説明図である。
【図2】蓋材と底材の接合後の包装体を示す説明図である。
【符号の説明】
【0076】
10 蓋材
20 底材
30 凹部
40 パスタ等の内容物
50 ヒートシール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(PA)層と、25℃で1.96N/15mm幅以上7.84N/15mm幅以下、95℃で0.8N/15mm幅以上4.90N/15mm幅以下のイージーピール強度を示し、かつ凝集破壊性を有するイージーピール層とを少なくとも有することを特徴とする深絞り成形用フィルム。
【請求項2】
前記イージーピール層が下記の樹脂A及び樹脂Bの混合物より構成され、かつ樹脂A及びBの含有率がそれぞれ40質量%以上80質量%以下及び20質量%以上60質量%以下である請求項1に記載の深絞り成形用フィルム。
樹脂A:融点が90℃以上である、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)及びこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種
樹脂B:ポリプロピレン(PP)又はポリブテン(PB)
【請求項3】
前記PA層の外側及び/又は内側に少なくとも1層のポリプロピレン樹脂(PP)層を有する請求項1又は2に記載の深絞り成形用フィルム。
【請求項4】
前記PA層の外側及び/又は内側に少なくとも1層のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)層又はポリエチレン樹脂(PE)層を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の深絞り成形用フィルム。
【請求項5】
前記PA層の外側及び/又は内側に少なくとも1層のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)層を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の深絞り成形用フィルム。
【請求項6】
前記PA層と、該PA層の外側及び/又は内側に形成される層との間に少なくとも1層の接着樹脂層を有する請求項3乃至5のいずれかに記載の深絞り成形用フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の深絞り成形用フィルムにより形成された深絞り包装体用底材。
【請求項8】
請求項7に記載の底材を使用した深絞り包装体。
【請求項9】
用途が電子レンジ加熱用である請求項8に記載の深絞り包装体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−8046(P2007−8046A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192590(P2005−192590)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】