説明

混ざり気のない、新しい海洋深層水の取水と活用

【課題】従来、海洋深層水は太陽光が届かない水深約200m(補償深度)以下と定義され、低温安定性、清浄性、富栄養性、熟成性、ミネラル附存の特性がいわれ、取水と利活用の研究が進められてきた。しかし、海洋深層水を効果的に活用するためには、利用目的にあった特性を持つ海水を経済性を踏まえて選定、取水、活用することが必要で、新しい知見に基づき、特許を含めた従来技術、用語を見直すと共に、新しい海洋深層水の定義、新しい海洋深層水の効用と活用法を改めて研究、議論する必要がある。
【解決手段】海水の諸指標の鉛直分布から、特に清浄性と成熟性を有する海洋深層水の位置を特定し、合わせて、その特性を効果的に利用する飲料水製造法、漁業での留意点、食品加工での使い方、医療・健康での使い方などを示した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
海洋深層水の取水と活用の技術分野である。
ただし、従来の海洋深層水と特性の異なる海洋深層水を取水し、その特性を生かし高付加価値製品を製造する、新しい海洋深層水とその活用技術である。
【背景技術】
【0002】
従来の海洋深層水の定義と活用技術
従来、海洋深層水は太陽光が届かない水深約200m(補償深度)以下と定義され、表層水や陸水に比べ、低温安定性、清浄性、富栄養性、熟成性、ミネラル附存の特性がいわれ、取水と利活用の研究が進められてきた。しかし、海洋深層水を効果的に活用するためには水深200m以下の海水を一様に海洋深層水と定義するのは適当ではない。利用目的にあった特性を持つ海水を経済性を踏まえて選定、取水、活用することが効果的である。
近年の研究で、水深200mから600mは表層水と北太平洋中層水の混合域、600mから1,000mは北太平洋中層水と深層水の混合領域であることが解っている。更に、例えば高知県で海洋深層水を利用した漬物などの特許が認められているが、これは既存の取水施設から揚水した海水を海洋深層水とみなし、それを漬物に活用したもので、正しくは主に北太平洋中層水を漬物に活用したものであり、真の海洋深層水の特性を定義し、それを取水し、漬物への適用を述べたものではない。北太平洋中層水を対象にした技術や特許が本物の深層水に適用されるのは適当ではない。新しい知見に基づき、特許を含めた従来技術、用語を見直すと共に、真の海洋深層水の効用と活用法を改めて研究、議論する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
混ざり気のない海洋深層水の選定と特性
海洋深層水の特性は先に述べたように、低温安定性、清浄性、富栄養性、熟成性、ミネラル特性がいわれていた。しかし、熟成性は定量性と効用が曖昧なこと、ミネラル特性は深層水の特性(表層水に対する差)というより元素による違いが大きいことから、近年、海洋深層水の特性として、低温安定性、清浄性、富栄養性のみにする人が多い。しかし、飲料水、漁業における鮮度保持や畜養、食品加工、医療、健康などで、海洋深層水の効用、活用法を考えるとき、熟成性、ミネラル特性は清浄性と相俟って相乗効果を発揮すると考えられる。すなわち、これらの効用を研究し、取水ではこれらの特性が優れた箇所に(平面、深度)こだわる必要がある。
すなわち、取水コストを低減しながらも、海洋深層水の特性を最大限に持ち合わせる取水箇所の選定と、その特性・効用を用いた高付加価値商品を例示することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)清浄性の鉛直特性
海水に溶存又は懸濁する物質の鉛直方向の分布は、その成因や海洋の層構成により、図−1のように想定されている。人間生活に起因するものは川などから海に流入し、表層内で混合する。中層では北太平洋中層水の循環にも影響されるが、表層との混合により人的起源物質の混入が予測されている。一方、深層では中層との混合は生じているが、比較的人的起源物質の混合は少ない。
【0006】
(2)海水中の諸指標の鉛直分布
海洋中の温度、塩分濃度、溶存酸素量などの鉛直分布の概要は近年明らかにされつつある。日本近海北太平洋の諸指標の鉛直分布のイメージは図−2のようになる。これらから、清浄性や熟成性が必要なとき、それらが直接測定できないときでも、温度、塩分濃度、溶存酸素量などにより、最も適当な位置(平面、深度)を選定することが出来る。
すなわち、北太平洋中層水はその上下に比べ塩分濃度が低いため、表層水とその混合領域が解り、深層水との混合も塩分濃度の上昇で想定できる。かつ、ここで考える深層水の特性は清浄であることと海中における年代が最大になっていることである。そこでは溶存酸素量が最小になっている。上下の分布からは中層の溶存酸素量は大きいため、深さ方向には極小値を示す。
このような箇所は日本近海では1,000〜1,500mに存在する可能性が大きく、地形などにより1,000m付近で現れる。
【発明の効果】
【0007】
従来の取水深度による海洋深層水は清浄性、成熟性などで不十分であり、飲料水、漁業、食品加工、医療・健康などへ海洋深層水を利用する場合、本技術により海洋深層水の効用を最大限に発揮することが可能となる。
また、従来の水深300m前後は表層水の混合が激しい領域で、それぞれの機関で公表はされていないが特性の日々の変化が小さくなく、海洋深層水による高付加価値製品を製造する場合、品質管理が難しかったはずである。水深1,000mに至り、時間変動のない安定した特性となり、利活用においても安定した品質を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)求められる特性を最大限に発揮する海洋深層水の選定と取水
先に述べたように、清浄性や熟成性の特性は、当該海域の温度調査、塩分濃度調査、溶存酸素量調査により北太平洋中層水と本来の海洋深層水をその混合域も含め見分けることができる。
なお、取水コストの低減方法については特願2005−63040「海洋深層水の低コスト取水技術」などに示した。
【0009】
(2)混ざり気のない海洋深層水の活用
飲料水、漁業、食品加工、医療・健康などへ海洋深層水を利用する場合、海洋深層水の効用を最大限に発揮できる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
A.ミネラルウォーターの製造
(1)従来の海洋深層水による飲料水製造技術
従来、海洋深層水を用い飲料水を製造する方法は逆浸透(RO)を用い脱塩し、ミネラル分を調整するために、原水、電気透析(ED)水、或いはにがりを添加して製造されてきた。
海水は特に塩分が卓越するため、ミネラル分を多くしたいと考えると原水を加えたときは塩分が強くなり限界がある。加えて、原水を用いる場合は精密濾過していないため、不純物も含まれることになるなど問題が残る。EDによる方法では一価のイオンを選択的に除去することもでき、主に2価イオンのミネラルが豊富な飲料水を製造できる。しかし、1価のイオンが抜けることと、一般にコストが高いなどの問題がある。また、にがりを用いる方法ではにがりの成分が安定しないことが多く、飲料水として安定した成分を作りづらいなどの問題があった。
【0010】
(2)新しい海洋深層水を活用した新しい飲料水製造技術
1)原水の混入
まず、原水を混入する場合、新しい海洋深層水は特に清浄性に優れるものであるが、ここでは念を入れ、MF膜で濾過、加熱殺菌などをすることが望ましい。
【0010】
2)軟水器の活用
軟水器は従来硬水からミネラルを除去し軟水を得るために用いられてきた。ミネラルを除去するイオン交換樹脂が一杯になったときは、Na水溶液で再生処理し、再利用されてきた。海水を軟水器にかけた場合の再生過程における排水は、イオン交換樹脂に吸着したミネラル分がNa+で置き換わり、ミネラル分がイオン化して出てくることになる。
また、再生処理水としてNacl水溶液の他、Cacl2、Kclなどにより、更に成分調整が可能となる。
【0011】
3)配合
更に、このミネラル豊富な再生水を直接用いる方法や更にこれをEDによりNaなどを選択的に除去したものなどにより、ミネラル成分の異なった濃縮液を得ることが出来る。すなわち、これら複数のミネラル濃縮液を適度の割合で配合することにより、比較的低コストで目的とするミネラルバランスの飲料水を製造することができる。
【0012】
(3)還元性の付与
1)従来の海洋深層水飲料
ガスを溶かした飲料水では二酸化炭素が主流で、或いは日本人の酸素好きを捉え、酸素をとけ込ませた飲料水もある。学会などで活性水素の効用がいわれると、還元水や活性水素水なども売られたりした。しかし、単なる水素の効用を認め、適量の水素を混入させた飲料はなかった。また、海洋深層水飲料はそれ自体酸化還元電位が低いこともあり、特に酸化還元電位を下げる工程は取られてこなかった。
【0013】
2)マイクロ(ナノ)バブルによる水素の混合
水素は水に溶けにくい気体であるが、一方ではその溶解量が温度により殆ど変化しないなどの特性を有する。すなわち、一旦注入・溶解した水素は加熱殺菌などの製造工程の影響を受けないため、低コストで還元水を製造することが可能になる。
【0014】
B.畜養、鮮度保持などでの活用
混ざり気のない海洋深層水の清浄性と溶存酸素量が少ないことはそのまま鮮度保持に有効と考えられるが、一方、畜養の場合、溶存酸素量が少ないことから、長期間魚介類が生存することは適当でない。すなわち、海中の生物を活性化させるにはマイクロナノバブルで酸素を溶解させるとよい。
【0015】
C.食品加工分野
海洋深層水を用いた豆腐、パン、干物などが美味しいことは知られている。その原因はミネラル特性にあると考えるが、これは清浄性と相俟って効果が発揮されると考えられる。本海洋深層水の清浄性、ミネラル特性、更に溶存酸素量が小さいことなどはこれら食品加工分野で効果を発揮することが期待できる。
【0016】
D.医療健康
従来、アトピーなどに海洋深層水の清浄性やミネラル特性が効果があることはいわれてきた。しかし、アトピー症状自体が非常に複雑な要因を持つ上、全てのアトピー症状に効果があるわけでもないことから、半数以上の人に改善効果が認められるにもかかわらず、薬事法との関係もあってか、公に語られることはなかった。
従来は表層水と北太平洋中層水の混合域で取水していたことを踏まえると、今回提案する海洋深層水の清浄性、ミネラル特性などは十分期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】海水中の溶存、浮遊する物質の層ごとの附損量を推定したものである。
【図2】海水の諸指標の鉛直分布をイメージしたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋深層水の利活用を進める上で、特に清浄性や熟成性に注目し、それらの特性が極大値になる箇所を特定し、取水し、飲料水等を製造、その特性が従来の海洋深層水と違うことを謳い、販売すること
【請求項2】
魚介類を対象に前項の海洋深層水に酸素を注入し、前記深層水の特性を謳い、取水、販売すること
【請求項3】
海洋深層水のミネラル分を軟水器で吸着、再生する工程で得られるミネラル濃縮水を用いてミネラルを抽出する方法
【請求項4】
前記軟水器を再生させる際、再生処理水としてK、Ca溶液を用い、必要に応じK、Ca塩化物を沈殿させ、再生水(ミネラル濃縮水)のミネラルバランスを調整する方法
【請求項5】
海洋深層水原水、前記再生水(ミネラル濃縮水)、再生水のナトリウム分を電気透析などで更に除去したもの、ED処理水、にがりなどを適宜混合し、求められるミネラルバランスに調整する方法
【請求項6】
還元性を持たせる主旨で海洋深層水飲料に、マイクロ(ナノ)バブルを溶解させる方法

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−66461(P2009−66461A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364008(P2005−364008)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(500206674)ほつま工房株式会社 (3)
【Fターム(参考)】