説明

混合分散剤、それを利用した導電性ペースト組成物及び分散方法

【課題】金属表面に容易に吸着されて凝集を防止することによって金属粉末の分散効率を改善できる混合分散剤、それを利用した導電性ペースト組成物及び分散方法を提供する。
【解決手段】ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比によって塩基性分散剤及び酸性分散剤を含むことを特徴とする混合分散剤、それを利用した導電性ペースト組成物及び分散方法により、上記課題は解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合分散剤、それを利用した導電性ペースト組成物及び分散方法に係り、具体的には、金属粉末の表面に容易に吸着されて凝集を防止することによって金属粉末の分散効率を改善できる混合分散剤、それを利用した導電性ペースト組成物及び分散方法に関する。本発明はまた、積層セラミックコンデンサ(MLCC:Multi−Layer Ceramic Capacitor)に関する。
【背景技術】
【0002】
MLCCは、複数の誘電体薄層及び複数の内部電極を積層することによって製造される。このような構造を有するMLCCは、小さな体積でも大きい容量を発揮するため、例えば、コンピュータ、移動通信機器のような多様な電子機器に広く使われている。
【0003】
前記MLCCを構成する内部電極の材料としては、銀−パラジウム(Ag−Pd)合金が使われてきた。銀−パラジウム合金は、空気中でも焼結されてMLCCの製造に容易に適用されうるが、コストが高くて経済性が低下するという問題がある。これを解決してMLCCのコストを下げるために、1990年代後半に前記内部電極材料を低コストのニッケルに代替しようとする傾向が発生した。これにより、MLCCの内部電極は、ニッケル電極に代替されており、この場合、前記内部ニッケル電極は、ニッケル金属粉末を含む導電性ペーストから形成される。
【0004】
前記ニッケル金属粉末は、多様な製造方法によって製造され、代表的には、気相法と液相法とによって製造されうる。気相法は、ニッケル金属粉末の形状及び不純物の制御が比較的容易で広く使われているが、粒子の微細化及び量産の側面では不利である。これと違って、液相法は、量産に有利であり、初期投資費及び工程コストが低いという長所を有して多く使われている。このような液相法は、例えば、特許文献1及び2に開示されている。
【特許文献1】米国特許第4,539,041号明細書
【特許文献2】米国特許第6,120,576号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような液相法及び気相法を通じてニッケル金属粉末を製造しても、これを使用して導電性ペースト組成物を製造する場合、ペーストの粘度が過度に高まって多量のニッケル金属粉末を使用できないという問題がある。このために多様な種類の分散剤を使用して、前記ニッケル金属粉末をペースト内で分散させる方法が知られている。一般的に、分散剤の場合、金属粉末の表面に吸着して凝集を抑制することによって分散能を発揮する。このような吸着を容易にするためには、吸着が良好になる作用基を有する分散剤、すなわち、塩基性を有するニッケル金属粉末に対しては、酸性分散剤を使用して吸着させることによってニッケル金属粉末をペースト内で分散させてきた。しかし、十分な分散効率を得て前記ペースト組成物内でニッケル金属粉末の含量を増加させるためには、さらに優秀な分散能を有する分散剤が要求されている実情である。
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、金属表面に容易に吸着されて凝集を防止することによって金属粉末の分散効率を改善できる混合分散剤を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、前記混合分散剤を含む金属ペースト組成物を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとするさらに他の技術的課題は、前記混合分散剤を使用して金属粉末を効率的に分散させる分散方法を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとするさらに他の技術的課題は、前記分散方法によって分散された金属粉末を含むニッケル内部電極を備えたMLCCを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するために本発明は、ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比に応じて塩基性分散剤及び酸性分散剤を含むことを特徴とする混合分散剤を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記混合分散剤における前記塩基性分散剤及び酸性分散剤の含量比は、前記ニッケル金属粉末表面が示す酸価:塩基価の比の±30当量%以内であることが望ましい。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記混合分散剤は、10ないし70当量%の塩基性分散剤及び30ないし90当量%の酸性分散剤を含むことが望ましく、20ないし60当量%の塩基性分散剤及び40ないし80当量%の酸性分散剤を含むことがさらに望ましく、30ないし50当量%の塩基性分散剤及び50ないし70当量%の酸性分散剤を含むことが最も望ましい。
【0013】
前記塩基性分散剤としては、末端にアミノ基を有する炭素数6ないし28の有機塩基、例えば、カプリルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、またはオレイルアミンが望ましい。
【0014】
前記酸性分散剤としては、末端にカルボキシル基を有する炭素数6ないし28の脂肪酸、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ステアリドン酸、リノレン酸などが望ましい。
【0015】
前記他の課題を達成するために本発明は、ニッケル金属粉末、有機バインダー、有機溶媒及び混合分散剤を含み、前記混合分散剤がニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比によって塩基性分散剤及び酸性分散剤を含む導電性ペースト組成物を提供する。
【0016】
前記混合分散剤の含量は、前記ニッケル金属粉末100質量部に対して0.001ないし1.0質量部であることが望ましい。
【0017】
さらに他の課題を達成するために本発明は、ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比によって塩基性分散剤および酸性分散剤を含む混合分散剤を調製するステップと、前記混合分散剤を使用してニッケル金属粉末を分散させるステップとを含むニッケル金属粉末の分散方法を提供する。
【0018】
前記さらに他の課題を達成するために本発明は、前記分散方法によって分散されたニッケル金属粉末を含むニッケル内部電極を備えるMLCCを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明による混合分散剤は、ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比に応じた含量で塩基性分散剤及び酸性分散剤を含むことによって最適な分散効率を達成できる。このように分散効率が改善されることによって、ニッケル金属粉末を含む導電性ペースト組成物を製造する際の、ニッケル金属粉末の凝集を抑制でき、前記ペースト組成物に使用できるニッケル金属粉末の含量を高めることができる。このようにニッケル金属粉末の含量を高めることによって、MLCCの製造時に電気的特性及び機械的特性がさらに改善された内部ニッケル電極を製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
【0021】
一般的に、ニッケル金属粉末の表面は、全体的に塩基性であるが、酸性の部位と塩基性の部位とが共に存在する。本発明は、ニッケル金属粉末表面の酸性部位も共に考慮して混合分散剤を使用することによって分散能の改善を達成できる。
【0022】
本発明の混合分散剤は、ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比に応じて塩基性分散剤及び酸性分散剤を含む。すなわち、ニッケル金属粉末の表面の酸価:塩基価の比に応じて、塩基性官能基を有する塩基性分散剤及び酸性官能基を有する酸性分散剤を所定割合で混合して使用することによって、酸性分散剤のみを単独に使用した場合と比較して、さらに優秀な分散能を発揮する。
【0023】
前記ニッケル金属粉末の粒子の表面のうち、主に酸性部位(酸性官能基を有する部位)に対して、例えば−NHなどを有する塩基性有機物が相互作用して吸着し、一方、主に塩基性部位(塩基性官能基を有する部位)に対して、例えば−COOHなどを有する酸性有機物が相互作用して吸着する。したがって、前記ニッケル金属粉末の表面を酸塩基滴定法によって分析すると、一定の酸価:塩基価の比を示す。ここで、酸価は、ニッケル金属粉末の粒子表面に吸着する塩基性有機物の量を表し、塩基価は、ニッケル金属粉末の粒子表面に吸着する酸性有機物の量を表す。このようなニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比によって塩基性分散剤及び酸性分散剤を混合して混合分散剤として使用すれば、塩基性分散剤は、前記ニッケル金属粉末表面の酸性部位に作用し、酸性分散剤は、前記ニッケル金属粉末表面の塩基性部位に作用して容易に吸着をなすので、前記ニッケル金属粉末粒子の凝集を抑制する。このような凝集の抑制を通じて最適の分散効率を達成できる。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、上記の本発明による混合分散剤で塩基性分散剤及び酸性分散剤の含量比は、前記ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比を基準として±30当量%の範囲、望ましくは、±20当量%の範囲、最も望ましくは、±10当量%の範囲であることが望ましい。例えば、前記ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比が40:60であれば、本発明による混合分散剤において塩基性分散剤は、10ないし70当量%の範囲、望ましくは、20ないし60当量%、最も望ましくは、30ないし50当量%が良く、酸性分散剤は、30ないし90当量%の範囲が望ましく、40ないし80当量%がさらに望ましく、50ないし70当量%が最も望ましい。なお、前記ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比は40:60に制限されず、用いるニッケル金属粉末に応じて適宜変更されうる。前記塩基性分散剤及び前記酸性分散剤の含量は、合わせて前記範囲内で流動的に変わりうるが、この二つの合計含量は、100当量%に設定されうる。前記範囲を外れる場合、最適の分散効率を達成できないという問題がある。
【0025】
本発明の混合分散剤内に含まれる構成成分である酸性分散剤と塩基性分散剤の含量比を表す単位である「当量%」は、混合分散剤の構成成分である酸性分散剤と塩基性分散剤との含量関係を表すものであって、前記二つの成分の当量比を百分率に変換して表したものである。すなわち、1価の酸性官能基を有する酸性分散剤と、1価の塩基性官能基を有する塩基性分散剤をそれぞれ0.6モル及び0.4モルの含量に混合した場合、その当量%は、60当量%及び40当量%となる。
【0026】
本発明で使用可能な塩基性分散剤としては、当該技術分野で使われるものならば、特に制限されないが、末端にアミノ基を有する炭素数6ないし28の有機塩基が望ましく、例えば、カプリルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、またはオレイルアミンが望ましい。
【0027】
本発明で使用可能な酸性分散剤としては、当該技術分野で使われるものならば、特に制限されないが、末端にカルボキシル基を有する炭素数6ないし28の脂肪酸、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ステアリドン酸、リノレン酸が望ましい。
【0028】
前述したような本発明による混合分散剤は、ニッケル金属粉末の分散能を改善してこれら粒子の凝集を抑制でき、導電性ペースト組成物に有用である。本発明による導電性ペースト組成物は、ニッケル金属粉末、有機バインダー及び有機溶媒を含み、ここに前記混合分散剤が添加される。前記混合分散剤は、上述したように、ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比によって塩基性分散剤及び酸性分散剤を含む。
【0029】
本発明による導電性ペースト組成物は、MLCCのニッケル内部電極を作製するために、従来の公知の成分をそのまま使用でき、但し、添加される分散剤として本発明による混合分散剤を使用する。
【0030】
前記導電性ペースト組成物として使われるニッケル金属粉末は、公知の多様な方法で製造でき、液相法あるいは気相法の何れも可能である。その粉末のサイズにおいても制限はない。前記導電性ペースト組成物に使用するのに適した有機バインダーとしては、特に制限されないが、例えば、エチルセルロースが使われ、前記有機溶媒としては、特に制限されないが、テルピネオール、ジヒドロキシテルピネオール(DHT:Dihydroxy Terpineol)、1−オクタノールケロセンなどを使用できる。
【0031】
本発明による導電性ペースト組成物において、前記ニッケル金属粉末の含量は、前記導電性ペースト組成物に対して約30ないし80質量%、前記有機バインダーの含量は、約0.5ないし20質量%、及び前記有機溶媒の含量は、10ないし50質量%ほどでありうる。ここに、前記ニッケル金属粉末100質量部に対して本発明による混合分散剤が0.001ないし1.0質量部の割合で添加される。前記混合分散剤の含量が0.001質量部未満であれば、十分な分散を達成できず、1.0質量部を超過する場合には、前記混合分散剤内の酸性分散剤と塩基性分散剤とが相互に結合して中和反応を起こし、望ましくない。その他の物質の含量関係において、前記有機バインダーの含量が0.5質量%未満であれば、バインダーとしての役割が不十分になり、20質量%を超えれば、粘度が高まって望ましくない。前記有機溶媒の含量が10質量%未満であれば、粘度が高まり、50質量%を超えれば、導電性が低下する恐れがある。
【0032】
しかし、このような組成は、望ましい一範囲に過ぎず、使用しようとする用途によって多様な組成を有しうるということは、当業者には公知のものである。特に、本発明による混合分散剤を使用する場合、分散効率が改善され、粘度が大きく増加することなくさらに多くの含量のニッケル金属粉末を使用できるという長所がある。
【0033】
また、本発明による導電性ペースト組成物は、例えば、可塑剤、増粘防止剤、その他の分散剤などの添加剤をさらに含みうる。本発明の導電性ペーストを製造する方法は、公知の多様な方法が使用されうる。
【0034】
本発明のさらに他の態様において、本発明は、前記混合分散剤を使用してニッケル金属粉末を分散させる分散方法を提供する。このような分散方法は、ニッケル金属粉末を有機バインダーと共に有機溶媒内で分散させるため、前述したような本発明による混合分散剤を使用することによって達成されうる。このような方法によれば、ニッケル金属粉末の凝集が最大限抑制されるので、粘度の上昇がなく、多量のニッケル金属粉末を使用できるという長所を有する。
【0035】
本発明のさらに他の態様において、本発明は、前述した分散方法によって分散されたニッケル金属粉末を含むニッケル内部電極を備えるMLCCを提供する。前記ニッケル内部電極は、電極の特性上、密な構造の電極ほど電気的特性や機械的特性に優れるため、可能な限り多量のニッケル金属粉末が使われるほど好ましい。本発明による混合分散剤を使用する分散方法によって分散されたニッケル金属粉末を含むニッケル内部電極は、従来の方法に比べて、より多くの含量のニッケル金属粉末が同じ含量の有機溶媒及び有機バインダーを含む導電性ペーストに粘度の上昇なしに高濃度で含まれるため、前記導電性ペーストを塗布した後、焼成によって得られる前記ニッケル内部電極の品質も改善される。すなわち、電極を形成するニッケル金属粉末の充填度が高まるにつれて電極の断絶や、電気抵抗値の減少を抑制でき、外部からの衝撃による破損も防止できて望ましい。
【0036】
本発明によるMLCCの一具現例を図1に示した。図1のMLCCは、内部電極10及び誘電層20からなる積層体30並びに端子電極40で構成される。前記内部電極10は、何れか一側の端子電極に接触させるために、その先端部が積層体30の一側面に露出するように形成される。
【0037】
本発明のMLCCを製造する方法の一例は、次の通りである。すなわち、誘電材料を含む誘電層形成用ペーストと本発明による導電性ペーストとを交互に印刷する。このように得られた積層物を焼成する。焼成された積層体30の断面に露出した内部電極10の先端部と電気的及び機械的に接続されるように、導電性ペーストを積層体30の断面に塗布した後に焼成することによって端子電極40が形成される。
【0038】
本発明によるMLCCは、図1の具現例に限定されず、多様な形状、寸法、積層数、回路構成を有しうる。
【実施例】
【0039】
以下では、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明の技術的思想は、下記の実施例に制限されない。
【0040】
<酸塩基滴定による酸価および塩基価の測定>
ニッケル金属粉末(平均粒径:300nm、購入先:(株)SHOEI、製品名:Ni670S)の表面について、酸塩基滴定を通じて酸価及び塩基価を測定して図2に示した。酸価(mgKOH/g)は0.117(6.552mmol/gNi)であり、塩基価(mgKOH/g)は0.181(10.136mmol/gNi)であった。すなわち、酸価:塩基価の比は、約40:60当量%であった。
【0041】
<実験例1>
投入するニッケル金属粉末の100質量部に対して0.025質量部のオレイン酸及び0.025質量部のオレイルアミンを加えて混合分散剤を形成した後、DHT 18.16gにニッケル金属粉末(平均粒径:300nm、購入先:(株)SHOEI、製品名:Ni670S)58.4gを配合した。次いで、ボールミルを用いて前記ニッケル金属粉末を分散させて分散液を製造した。
【0042】
<実験例2>
投入する混合分散剤の量をニッケル金属粉末100質量部に対して0.05質量部であるとき、オレイン酸:オレイルアミンの含量比をそれぞれ100:0、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、0:100(単位:当量%)に設定したことを除いては、前記実験例1と同じ過程を行って分散液を製造した。
【0043】
<実験例3>
オレイン酸及びオレイルアミンを含む混合分散剤の含量をニッケル金属粉末100質量部に対して0.1質量部に設定したことを除いては、前記実験例2と同じ過程を行って分散液を製造した。
【0044】
<実験例4>
DHT 15g及びEC(エチルセルロース)1.6gを混合した有機溶液に、投入するニッケル金属粉末の100質量部に対して0.025質量のオレイン酸及び0.025質量のオレイルアミンを加えて混合液を形成した後、ニッケル金属粉末(平均粒径:300nm、購入先:(株)SHOEI、製品名:Ni670S)27.93gを配合した。次いで、ボールミルを用いて前記ニッケル金属粉末を分散させて導電性ペースト組成物を製造した。
【0045】
<比較例1>
分散剤を全く使用していないことを除いては、前記実験例1と同じ過程を行って分散液を製造した。
【0046】
<比較例2>
ニッケル金属粉末100質量部に対して分散剤としてオレイン酸0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.0及び3.0質量部をそれぞれ使用したことを除いては、前記実験例1と同じ過程を行って分散液を製造した。
【0047】
<比較例3>
ニッケル金属粉末100質量部に対して分散剤としてオレイルアミン0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.0及び3.0質量部をそれぞれ使用したことを除いては、前記実験例1と同じ過程を行って分散液を製造した。
【0048】
<比較例4>
ニッケル金属粉末100質量部に対して分散剤としてオレイルアルコール0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.0及び3.0質量部をそれぞれ使用したことを除いては、前記実験例1と同じ過程を行って分散液を製造した。
【0049】
<比較例5>
ニッケル金属粉末100質量部に対してオレイン酸及びオレイルアミンを含む混合分散剤の含量を1質量部に設定したことを除いては、前記実験例2と同じ過程を行って分散液を製造した。
【0050】
<比較例6>
DHT 15g及びEC 1.6gを混合した有機溶液に、投入するニッケル金属粉末の100質量部に対して0.05質量部のオレイン酸を加えて混合液を形成した後、ニッケル金属粉末(平均粒径:300nm、購入先:(株)SHOEI、製品名:Ni670S)27.93gを配合した。次いで、ボールミルを用いて前記ニッケル金属粉末を分散させて導電性ペースト組成物を製造した。
【0051】
<評価1>
前記比較例2ないし4で得られた分散剤に対して、分散剤の含量による分散性を評価するために粘度を測定して図3に示した。使用した粘度計は、ブルークフィールド社のモデルRVIIを使用した。使用したスピンドルは、シリンダー型14番であった。温度は、25℃であった。
【0052】
図3に示したように、中性であるオレイルアルコールとは対照的にオレイン酸及びオレイルアミンの場合、少量の添加のみで分散効果が現れ、その含量が0.1質量部を超える場合、分散効果にほとんど差がないということが分かる。
【0053】
<評価2>
実験例1(オレイン酸0.025質量部及びオレイルアミン0.025質量部)、比較例1(分散剤なし)、比較例2(オレイン酸0.05質量部)、比較例3(オレイルアミン0.05質量部)の分散液に対して、剪断速度による粘度を測定して図4に示した。図4に示したように、酸性分散剤及び塩基性分散剤を単独に使用した場合より、これらを混合して使用した実験例1の場合が、粘度が最も低くて分散が改善されるということが分かる。
【0054】
<評価3>
前記実験例2で得られた各分散液に対して粘度を測定した結果を図5に示した。図5の結果から本発明による混合分散剤が単独分散剤と比較して分散効率に優れるということが分かり、特に、塩基性分散剤であるオレイルアミンの含量をニッケル金属粉末表面の酸価である40当量%とし、酸性分散剤であるオレイン酸の含量をニッケル金属粉末表面の塩基価である60当量%としてを使用した場合の粘度が最も低くて分散が最も優秀であるということが分かる。
【0055】
<評価4>
前記実験例3で得られた各分散液に対して粘度を測定した結果を図6に示した。図6の結果から本発明による混合分散剤の含量が0.1質量%である場合、ある程度分散効率の改善はあるが、単独の分散剤と比較して、大きい差を示していないということが分かる。分散剤の量が十分であるときには、混合分散剤の効果が大きく現れないということが分かる。
【0056】
<評価5>
前記比較例5で得られた各分散液に対して粘度を測定した結果を図7に示した。図7の結果から本発明による混合分散剤の含量が1質量%である場合、単独の分散剤を使用した場合よりも分散効率が低下したということが分かる。このような分散効率の低下は、混合分散剤を過量に使用したとき、混合分散剤内の塩基性分散剤と酸性分散剤とが相互中和されて結合することによって、ニッケル金属粉末の表面に作用できなくなるためであると見なされる。
【0057】
これを確認するために混合分散剤の含量によるNMR結果を図8に示した。
【0058】
図8は、オレイン酸及びオレイルアミンを60当量%及び40当量%に含有する混合分散剤を0.1質量%、1質量%及び10質量%で使用した場合の分散液に対するNMR結果を表す。このようなNMR結果から本発明による含量が0.1質量%を超過して1質量%及び10質量%である場合、オレイン酸及びオレイルアミンが相互に結合してオレイルアミンのgピーク及びオレイン酸のfピークの位置が移動し、これは、g及びf位置の炭素周囲で反応が起こったということを示す。
【0059】
<評価6>
混合分散剤の各構成成分の塩基性分散剤及び酸性分散剤の投入順序による分散効果を測定するために0.05質量%のオレイン酸及び0.05質量%のオレイルアミンに対して、(1)オレイン酸を先に加え、オレイルアミンを後で加えて分散させた場合、(2)オレイルアミンを先に加え、オレイン酸を後で加えて分散させた場合、(3)オレイルアミンとオレイン酸とを同時に加えて分散させた場合、及び(4)分散剤を全く加えない場合に分けて、剪断速度による粘度を測定して図9に示した。図9に示したように、各構成成分の添加順序による分散効果の差は、ほとんど無いということが分かる。
【0060】
<評価7>
実験例4及び比較例6で得られた導電性ペースト組成物に対して、前記評価1と同じ方法で粘度を測定してその結果を図10に示した。図10の結果から分かるように、本発明による混合分散剤を使用した場合が、粘度が低くて分散に優れるということが分かる。
【0061】
本発明は、図面に示された実施形態を参考として説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるということが分かるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のMLCCは、コンピュータ、移動通信機器のような多様な電子機器に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】MLCCの一具現例を示す概略図である。
【図2】ニッケル金属粉末表面に対する酸塩基滴定の結果を示すグラフである。
【図3】比較例2ないし4で分散剤含量によるニッケル粉末の剪断速度が1である時の粘度変化を示すグラフである。
【図4】本発明による実験例1、及び比較例1ないし3で剪断速度による粘度変化を示すグラフである。
【図5】本発明の実験例2による0.05質量%の混合分散剤内の各酸性及び塩基性成分の含量を変化させた場合の粘度変化を示すグラフである。
【図6】本発明による実験例3で0.1質量%の混合分散剤内の各酸性及び塩基性成分の含量を変化させた場合の粘度変化を示すグラフである。
【図7】本発明の比較例5で1質量%の混合分散剤内の各酸性及び塩基性成分の含量を変化させた場合の粘度変化を示すグラフである。
【図8】混合分散剤の含量による効果を調べるためのNMR結果のグラフである。
【図9】混合分散剤の各成分の添加順序による差を調べるための粘度グラフである。
【図10】本発明の実験例4及び比較例6による導電性ペースト組成物の粘度を測定したグラフである。
【符号の説明】
【0064】
10 内部電極、
20 誘電層、
30 積層体、
40 端子電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比によって塩基性分散剤及び酸性分散剤を含むことを特徴とする混合分散剤。
【請求項2】
前記塩基性分散剤及び前記酸性分散剤の含量比が前記ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比を基準として±30当量%であることを特徴とする請求項1に記載の混合分散剤。
【請求項3】
前記塩基性分散剤及び前記酸性分散剤の含量比が前記ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比を基準として±20当量%であることを特徴とする請求項1に記載の混合分散剤。
【請求項4】
前記塩基性分散剤及び前記酸性分散剤の含量比がそれぞれ前記ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比を基準として±10当量%であることを特徴とする請求項1に記載の混合分散剤。
【請求項5】
前記混合分散剤における含量比が、前記塩基性分散剤が10ないし70当量%、及び前記酸性分散剤が30ないし90当量%であることを特徴とする請求項1に記載の混合分散剤。
【請求項6】
前記塩基性分散剤が末端にアミノ基を有する炭素数6ないし28の有機塩基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の混合分散剤。
【請求項7】
前記酸性分散剤が末端にカルボキシル基を有する炭素数6ないし28の脂肪酸であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の混合分散剤。
【請求項8】
ニッケル金属粉末、有機バインダー、有機溶媒及び混合分散剤を含み、前記混合分散剤がニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比によって塩基性分散剤及び酸性分散剤を含むことを特徴とする導電性ペースト組成物。
【請求項9】
前記混合分散剤の含量が前記ニッケル金属粉末100質量部に対して0.001ないし1.0質量部であることを特徴とする請求項8に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項10】
前記塩基性分散剤及び前記酸性分散剤の含量比がそれぞれ前記ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比を基準として±30当量%であることを特徴とする請求項8に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項11】
前記混合分散剤の含量比が、前記塩基性分散剤が10ないし70当量%、及び前記酸性分散剤が30ないし90当量%であることを特徴とする請求項8に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項12】
前記塩基性分散剤が末端にアミノ基を有する炭素数6ないし28の有機塩基であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項13】
前記酸性分散剤が末端にカルボキシル基有する炭素数6ないし28の脂肪酸であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項14】
ニッケル金属粉末表面の酸価及び塩基価によって塩基性分散剤及び酸性分散剤を含む混合分散剤を調製するステップと、
前記混合分散剤を使用してニッケル金属粉末を分散させるステップと、を含むことを特徴とするニッケル金属粉末の分散方法。
【請求項15】
前記塩基性分散剤及び前記酸性分散剤の含量比が前記ニッケル金属粉末表面の酸価:塩基価の比を基準として±30当量%であることを特徴とする請求項14に記載の分散方法。
【請求項16】
前記混合分散剤の含量比が、前記塩基性分散剤が10ないし70当量%、及び前記酸性分散剤が30ないし90当量%であることを特徴とする請求項14に記載の分散方法。
【請求項17】
前記塩基性分散剤が末端にアミノ基を有する炭素数6ないし28の有機塩基であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の分散方法。
【請求項18】
前記酸性分散剤が末端にカルボキシル基を有する炭素数6ないし28の脂肪酸であることを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項に記載の分散方法。
【請求項19】
請求項14ないし18のうちいずれか1項に記載の分散方法によって分散されたニッケル金属粉末を含むニッケル内部電極を備えることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−27081(P2007−27081A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380112(P2005−380112)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】