説明

混合撹拌機、混合撹拌方法及び石膏ボード製造方法

本発明は、泡を均一に混合した大流量のスラリーを安定供給することができ、スラリーに供給すべき泡量を低減することができる混合撹拌機及び混合撹拌方法を提供する。混合撹拌機(10)は、筐体(20)、回転盤(32)、スラリー排出口(45)、スラリー給送管(46)及び中空連結部(47)を備える。泡供給口(41)が、円環壁又は中空連結部の所定位置に配置され、スラリー排出口に流入する直前のスラリー又は中空連結部のスラリーに泡を供給する。スラリー及び泡は、スラリー排出口又はその下流側で混合する。泡は、混合撹拌機の撹拌衝撃を実質的に受けず、消失する泡の量は、低減する。泡は、スラリー流量を増大したときであってもスラリーに均一に混合するので、石膏ボードの製造速度を高速にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、スラリー連続流し込み成型法の石膏ボード製造工程に使用される混合撹拌機(Mixer)、混合撹拌方法及び石膏ボード製造方法に関するものである。
【背景技術】
石膏ボードは、防耐火性、遮音性、施工性及び経済性等の優位性から建築用内装材として多彩な建築物に広く使用されており、石膏を主体とする芯を石膏ボード用原紙で被覆してなる板状体として知られている。石膏ボードは、一般に、連続流し込み成型法により製造される。この成型法は、
i)焼石膏、接着助剤、硬化促進剤、軽量化を図るための泡、混和材、添加剤等、及び水を混合撹拌機で混練し、焼石膏スラリー(以下、単に「スラリー」という)を調製する工程、
ii)混合撹拌機で調製したスラリーを石膏ボード用原紙の間に流し込み、板状の連続帯に成形する工程、
iii)硬化後の連続帯状積層体を粗切断し、強制乾燥後に製品寸法に切断する工程を含む。
スラリーを調整するための混合撹拌機として、通常は、薄型の円形混合撹拌機が使用される。この形式の混合撹拌機は、偏平な円形筺体と、筐体内に回転可能に配置された回転盤とを有する。筐体の上板の中心領域には、複数の混練成分供給口が配設され、筐体外周部には、混練物(スラリー)を機外に送出するスラリー排出口が配設される。回転盤には、回転盤を回転させる回転軸が連結される。筺体の上板は、回転盤の近傍まで垂下する複数の上位ピン(静止ピン)を備える。回転盤は、回転盤上に垂直に固定され且つ上板近傍まで延びる下位ピン(移動ピン)を備え、上下のピンは、半径方向に交互に配置される。混練すべき上記複数の成分が各供給口を介して回転盤上に供給され、撹拌混合されつつ、遠心力の作用によって回転盤上を半径方向外方に移動し、外周部に配置されたスラリー排出口から機外に送出される。この構造の混合撹拌機は、ピン型混合撹拌機と呼ばれており、例えば、米国特許(USP)第3,459,620号明細書に開示されている。
混合撹拌機内には、石膏ボードの比重を調整するための泡が供給される。泡を適正にスラリーに混合することは、殊に軽量石膏ボードの製造方法において重要視されてきた事情がある。スラリーに対する効果的な泡の混合を意図した技術として、以下の先行技術が挙げられる。
(1)特開平08−25342号公報「混合撹拌機及び混合撹拌方法」
(2)特表平11−501002号公報「発泡石膏製品を製造する方法」
(3)米国特許第6,494,609号公報「スラリー混合撹拌機排出口(Slurry Mixer Outlet)」
また、比較的大寸法且つ強固な石膏硬化物(粕)が混合撹拌機から石膏ボード原紙上に供給されることがある。これに起因して石膏ボード製造装置の連続運転が中断するのを回避するための技術として、次の先行技術が挙げられる。
(4)特開2000−6137号公報「混合撹拌機及び該混合撹拌機を用いた石膏ボードの製造方法」
(1)上記特開平08−25342号公報には、比重差の大きい異種の石膏スラリーを単独の混合撹拌機によって石膏ボード原紙上等に供給可能にする混合撹拌機及び混合撹拌方法が開示されている。特開平08−25342号に記載された混合撹拌機は、上板外周部から回転盤に近接するレベルまで垂下した境界壁を有し、境界壁は、混合撹拌機内を2つの領域(外周領域及び内方領域)に区画する。石膏ボードコア用スラリー(低比重スラリー)の容積を調整するための泡を供給する泡供給部が、筐体上板の外周領域に配置される。複数のスラリー分取口が、泡供給部の回転方向上流側において筐体の円環壁、或いは、筐体下板の外周領域に配置される。また、スラリー排出口が、泡供給部の回転方向下流側において円環壁、或いは、下板の外周領域に配置される。スラリー分取口及びスラリー排出口は、泡混入量が異なるスラリーを機外に夫々送出することができ、従って、比重が相違する異種スラリーを石膏ボード製造装置の所定部分に夫々供給することができる。特開平08−25342号公報は又、中空連結部を介してスラリー排出口に連結したスラリー給送管(「垂直シュート」又は「キャニスター」ともいう。)の上端部に第2泡供給部(供給管)を配置し、スラリー給送管内のスラリー(コア用スラリー)に泡を供給する構成を開示している。このような装置構成によれば、比重の異なる異種スラリーを単一の混合撹拌機によって更に効率的に調製し、泡剤使用量を削減することができる。
この構成の混合撹拌機によれば、石膏ボードの製造速度(生産速度)を比較的低速に設定し、スラリー流量を増大しない限り、泡を均一に混合した非常に良質のスラリーを石膏ボード原紙上等に供給することが可能となる。しかしながら、石膏ボード製造速度を高速化し、スラリー流量を増大すると、泡とスラリーとが均一に混合しない現象が生じると判明した。即ち、上記特開平08−25342号公報の混合撹拌機では、石膏ボード製造速度を高速化すると、泡及びスラリーの良好な混合状態が得られず、例えば、石膏ボードのコア(芯)と、コアを被覆する石膏ボード用原紙との界面に大きな気泡が抱き込まれる現象(所謂「ふくれ」と呼ばれる不良)が発生し易い。これは、米国特許第6,494,609号公報に記載された如く、スラリー給送管内における渦の効果、遠心作用及び比重差によってスラリー及び泡の分離現象がスラリー給送管内で発生することに起因すると考えられる。
(2)特表平11−501002号公報には、スラリー容積調整用の水性泡沫の注入箇所を適切に位置決めし、混合撹拌時の泡沫の破壊を最少化する混合撹拌機の構造が開示されている。この混合撹拌機では、泡沫注入部が、例えば、焼石膏供給口よりもスラリー排出口に相対的に近い位置において上板又は環状周辺壁に配置され、或いは、スラリー排出口に接続したスラリー排出管に配置される。また、特表平11−501002号公報の混合撹拌機は、スラリー排出口とは別の出口からエッジ用スラリーを分取する構成を備えており、上記特開平08−25342号に開示された混合撹拌機と同様、スラリー容積調整用の泡をコア用スラリーだけに供給することができる。
しかし、特表平11−501002号公報の混合撹拌機は、スラリー給送管に相当する構造を備えておらず、コア用スラリーは、排出管から直に石膏ボード原紙上に吐出される。即ち、特表平11−501002号公報の混合撹拌機は、混合撹拌機の円環壁に取付けた排出管を介して混合撹拌機内のスラリーを直ちにボード原紙上に吐出する構造を備える。このため、排出管又はその近傍の泡供給口から供給した泡は、スラリー流量の増大時にスラリーに十分に混入し且つ分散することができない。従って、この構成の混合撹拌機は、石膏ボード製造速度の高速化に適応し難い。
(3)米国特許第6,494,609号公報に開示された遠心混合撹拌機は、接線方向出口を円環壁に備えており、混合撹拌機の混練領域に開口した接線方向出口と連通する細長いスラリー導管が混合撹拌機に接続される。導管は、石膏ボード成形領域にスラリーを吐出可能な吐出口を備える。背圧を形成する絞りが導管に設けられ、混合撹拌機内のスラリー充満状態が背圧により維持される。減圧器(レジューサ)が導管の吐出口に設けられ、スラリーの吐出圧力が減圧される。このような構成の混合撹拌機によれば、導管内を流動するスラリーは、混合撹拌機のスラリー排出口からスラリー吐出口までのスラリー給送経路において概ね層流状態で流動する。米国特許第6,494,609号公報の混合撹拌機は、次の点を考慮し、キャニスターの使用を要しない石膏スラリー用混合撹拌機を提供しようとするものである。
▲1▼キャニスター(上記「スラリー給送管」に対応する。)を備えた従来の混合撹拌機においてキャニスター内に渦が生じ、キャニスター内に空間が形成される。
▲2▼このような空間の形成により、石膏粕の硬化物がキャニスター内に生成し、これに起因したスラリー供給路の詰まりが発生する。
▲3▼キャニスター内における渦流の形成および遠心力の発生に伴い、スラリーがキャニスター内壁面に押付けられるのに対し、泡はキャニスター中心部に留まる傾向があることから、高密度な一部のスラリーが比較的低密度の泡と分離してしまう不都合が生じる(従って、泡とスラリーの均一な混合を図る観点からみると、キャニスターは、不利な作用をもたらす)。
米国特許第6,494,609号公報に開示された混合撹拌機では、スラリー導管中でスラリーを層流化し、この状態のスラリーに泡を混合するので、泡及びスラリーを均一に混合することができる。この点において、米国特許第6,494,609号公報の混合撹拌機は、石膏ボード製造速度の高速化に適応し得るかもしれない。しかしながら、石膏ボードの製造速度を増大し、スラリー導管のスラリー流量が増大すると、この構造の混合撹拌機においても、泡及びスラリーの不安定な混合状態が発生する。また、スラリーの層流化のために細長い導管を使用するので、スラリーが導管内に付着し、石膏の硬化物(粕)が管内に生成し易い。成長した硬化物(粕)は、いずれは、スラリーとともに石膏ボード用原紙上に流出する。このような硬化物(粕)は、ボード用原紙の紙切れの問題を生じさせ、石膏ボード製造工程を中断する必要を生じさせることから、石膏ボード製造装置の連続運転上の障害となる。従って、米国特許第6,494,609号公報に記載された如く、導管内におけるスラリーの付着及び硬化塊の成長を防止すべく、オペレーターが導管及び/又は吐出口を15分程度の間隔で定期的に揉み解す作業が必要となる。
(4)特開2000−6137号公報には、原紙切れの問題を生じさせる大寸法且つ強固な粕が混合撹拌機から機外に排出されるのを規制し、これにより、石膏ボード製造装置の連続運転を中断することなく、石膏ボードを安定生産可能にする混合撹拌機の構造が開示されている。混合撹拌機のスラリー排出口には、選別通し開口部を有するアタッチメントが配置される。選別通し開口部は、開口寸法に比して相対的に寸法が大きい強固な粕をフィルタリングし、このような粕が石膏ボード原紙上に供給されるのを防止する。なお、この混合撹拌機においては、粉体原料、液体(水)及び泡の各供給管は、混合撹拌機筐体の内方領域に位置する上板の部分に接続され、混合撹拌機内に投入された泡は、スラリーとともに混合撹拌機内で十分に撹拌、混合される。
上記特開2000−6137号公報に記載された混合撹拌機は、混合撹拌機の内方領域において泡供給口を上板に配置した構成のものであることから、泡及びスラリーは、混合撹拌機による十分な撹拌作用を受け、泡及びスラリーの均一混合が図られる。しかしながら、この構成では、比較的多量の泡が強い撹拌作用を受けて破壊される結果を招くので、その破泡量に相当する分だけ泡剤を増量しなければならず、泡剤使用量が増大する。この傾向は、石膏ボードの製造速度が高速化するにつれて更に顕著になるので、製造コストを抑制する上で不都合が生じる。
従って、従来の混合撹拌機では、石膏ボード製造ラインを高速化すると、泡の均一な混合、大流量のスラリーの安定供給、そして、泡剤の使用量のいずれかに問題が生じていた。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スラリー連続流し込み成型法の石膏ボード製造ラインの高速化に適応し、泡を均一に混合した大流量のスラリーを安定供給することができ、しかも、スラリーに供給すべき泡の使用量を低減することができる石膏ボード製造用の混合撹拌機及び混合撹拌方法を提供することにある。
本発明は又、泡剤使用量を低減するとともに、製造速度を高速化し、生産性を向上することができるスラリー連続流し込み成型法の石膏ボード製造方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明は、外周に円環壁を備えた扁平且つ円形の筐体と、
該筐体内に配置され、所定の回転方向に回転する回転盤と、
前記筐体内で混練された石膏スラリーを筐体外へ排出するために、前記円環壁に開口したスラリー排出口と、
一方の開口端が前記スラリー排出口に接続し、他方の開口端が実質的に垂直円筒状のスラリー給送管に連結した中空連結部と、
石膏スラリーに泡を供給する泡供給口とを有し、
前記泡供給口は、前記スラリー排出口に流入する直前の石膏スラリーに泡を供給するようにスラリー排出口の回転方向上流側の円環壁に設けられ、又は、前記中空連結部に流入した石膏スラリーに泡を供給するように該中空連結部に設けられたことを特徴とする混合撹拌機を提供する。
スラリーの比重は、混水量の要因を除けば、主に泡の混入量によって決定される。安定した比重を得る前提として、泡を均一にスラリーに混入する必要がある。本発明によれば、泡供給口は、混合撹拌機の回転盤の回転方向においてスラリー排出口の上流側(回転方向後方)で円環壁に開口し、又は中空連結部に開口する。泡供給口は、スラリー排出口の開口の直前において円環壁の壁面からスラリーに泡を供給し、或いは、中空連結部のスラリーに泡を供給する。泡は、従来は、混合撹拌機の上面(上板)から供給されていたが、本発明では、泡は、このように混合撹拌機の周壁又は中空連結部から供給され、スラリーと混合し、更に、その下流側に位置するスラリー給送管で混合する。これにより、スラリー流量を増大した状態で泡をスラリーに均一に混合することができる。しかも、泡は、混合撹拌機の撹拌衝撃を実質的に受けず、消失する泡の量は低減するので、泡剤の使用量をかなり削減することができる。かくして、混合撹拌機は、石膏ボード製造速度の高速化によりスラリー流量が増大した場合であっても、均一に泡を混入したスラリーを連続的に石膏ボード製造装置の所定領域、所定部位又は所定機器等に連続供給することができる。このような混合撹拌機は、スラリー流量を1m/分以上に増大した状態であっても、泡をスラリーに均一に混合することができる。
好ましくは、スラリー給送管の管内領域が円形横断面を有し、中空連結部は、スラリー給送管の管内領域の中心軸線に対して偏心した位置に連結し、スラリーは、管内領域で回転流動する。このような構成によれば、泡は、混合撹拌機の撹拌衝撃の作用による泡消失の効果を実質的に受けずにスラリーに混入し、スラリー及び泡は、中空連結部内を流動する間に整流され、スラリー給送管内に流入する。中空連結部を偏心した位置に連結することによって、スラリー及び泡の回転流又は旋回流が、スラリー給送管内に発生する。スラリー及び泡は、スラリー給送管内を重力で流下しながら、回転流動し、比重差による泡とスラリーの分離は、抑制され、逆に、スラリー及び泡は、回転流動によって均一に混合する。好ましくは、中空連結部は、スラリーを管内領域に接線方向に流入させ、管内領域のスラリーを回転盤の回転方向と逆の方向又は同じ方向に回転流動させる。管内領域のスラリーの回転方向は、回転盤の回転方向とは逆の方向であることが望ましい。なお、スラリー給送管は、通常は、石膏ボード生産ライン上を搬送される石膏ボード用原紙(下紙)の上に石膏スラリーを堆積させるように設計され、スラリーを連続的に下紙上に放出する。所望により、螺旋状の案内板又は絞りがスラリー給送管内に配設される。
好適には、中空連結部は、石膏スラリーを円環壁の接線方向に中空連結部に流入させる。
更に好適には、中空連結部は、スラリー流路を中空連結部内に形成する回転方向上流側及び下流側の壁面(47a,47b)を有し、回転方向上流側の壁面(47a)は、筐体の法線(G)に対して90〜120°の角度に配置される。所望により、上流側及び下流側の壁面(47a,47b)は、平行に配置される。更に好適には、回転方向下流側の壁面(47b)は、円環壁の内周面に対して鋭角に配置され、中空連結部のスラリー流路に流入したスラリーが混練領域の外周帯域(スラリー滞留帯域)に逆流又は還流するのを阻止する。
他の好適な構成として、泡供給口は、スラリー排出口に流入する直前のスラリーに泡を供給するように、スラリー排出口の近傍に配置される。混合手段の一種として、スラリー排出口を通過するスラリーに剪断力を与える複数の羽根が設けられ、羽根は、複数のスリットをスラリー排出口に形成する。好ましくは、水平又は垂直な厚さ1〜5mm(t)の羽根が、等間隔に配置され、スリットを形成する。スリットの羽根間流路寸法(h,w)は、4〜15mmに設定される。混練領域に供給された混練成分は、撹拌混合されながら遠心力の作用により回転盤上を外方に移動し、スラリーは、実質的に混合が完了した状態で混練領域の外周帯域に達する。泡供給口から混合撹拌機内のスラリーに供給された泡は、混合撹拌機の遠心力を受けてスラリーと一緒にスリットを通過する。即ち、泡はスラリー調製の最終段階で外周帯域のスラリーに供給され、スラリー及び泡は、スリットを通過する際に強い剪断力を受け、混合する。スラリー排出口におけるスラリー及び泡の混合の結果、スラリー供給管内では、比重差による泡とスラリーの分離が抑制され、むしろ、スラリー及び泡の混合がスラリー給送管内で更に促進する。なお、スラリー排出口の開口寸法及び形状は、通常は、幅100〜500mm、高さ50〜100mmの方形に設計される。しかしながら、スラリー排出口の数及び形状は、適当に設定することができ、例えば、複数のスラリー排出口を円環壁に配設しても良い。同様に、泡供給口の数及び形状は、適当に設定することができ、例えば、複数の泡供給口を円環壁に配設しても良い。
所望により、羽根(ベーン)及びスリットを備えたアタッチメント、或いは、羽根、スリット及び泡供給口を一体化したアタッチメントが円環壁に着脱可能に取付けられる。望ましくは、スラリー排出口、中空連結部及びスラリー給送管を一体化したアタッチメントが予め用意され、アタッチメントは、円環壁に着脱可能に取付けられる。このようなアタッチメントの使用により、スラリー排出口の清掃又は交換等のメンテナンス時にアタッチメントを取外し又は交換したり、或いは、製造条件変更時や、石膏ボード品種切換時等に他の設計のアタッチメントに交換する必要が生じたときに、アタッチメントを交換し、スラリー排出口の寸法、形状や、泡供給口の位置又は有無等が相違する異種設計のアタッチメントを混合撹拌機に簡単に取付けることができる。
本発明は又、外周に円環壁を備えた扁平且つ円形の筐体と、該筐体内に配置され、所定の回転方向に回転する回転盤と、前記筐体内で混練された石膏スラリーを筐体外へ排出するために、前記円環壁に開口したスラリー排出口と、一方の開口端がスラリー排出口に接続し、他方の開口端が実質的に垂直円筒状のスラリー給送管に連結した中空連結部と、石膏スラリーに泡を供給する泡供給口とを有する石膏スラリーの混合撹拌機を用いた石膏スラリーの混合撹拌方法において、
前記筐体内に供給された粉体及び液体を前記回転盤の回転によって前記筐体内の混練領域で混練して石膏スラリーを調製し、該石膏スラリーを前記スラリー排出口から中空連結部に流出させる第1混合工程と、
前記スラリー排出口に流入する直前の石膏スラリーに泡を供給するように前記泡供給口をスラリー排出口の回転方向上流側の円環壁に配置し、又は、前記中空連結部の石膏スラリーに泡を供給するように前記泡供給口を中空連結部に配置し、この泡供給口から石膏スラリーに泡を供給するとともに、前記スラリー排出口又はその下流側でスラリー及び泡に剪断力を与え、スラリー及び泡を混合する第2混合工程とを有することを特徴とする石膏スラリーの混合撹拌方法を提供する。
本発明の混合撹拌方法は、混練領域のスラリー調製工程(第1混合工程)と、スラリーに対する泡の供給・混合の工程(第2混合工程)とから構成される。泡は、混練領域の外周帯域からスラリー排出口を経てスラリー給送管に至るスラリーの経路でスラリーに供給され、スラリーは、泡の供給直後に剪断力を受け、泡と混合する。泡は、混合撹拌機の撹拌衝撃による泡消失の影響を実質的に受けずに、スラリーに混入し、スラリー排出口又はその下流側で混合する。従って、必要な泡剤使用量を大きく低減することができる。しかも、泡は、第2混合工程でスラリーに均一に混合するので、スラリー流量を増大することができる。
好適には、泡は、スラリー排出口から流出する直前又は直後の石膏スラリーに供給される。円形横断面を有するスラリー給送管の管内領域と偏心したスラリー及び泡の流動体が、管内領域に接線方向に流入し、スラリー及び泡は、管内領域で回転流動する。スラリー及び泡は、回転流動時にスラリーに作用する剪断力によって混合する。
他の好適な構成として、複数のスリットを形成する複数の羽根がスラリー排出口に配置され、スリットを通過する直前のスラリーに泡が供給され、スラリー及び泡は、スリット通過時にスラリーに作用する剪断力によって混合する。
これらの混合過程を同時に用いても良く、この場合、スラリー及び泡は、スリット通過時にスラリーに作用する剪断力によって混合するとともに、回転流動時にスラリーに作用する剪断力によって更に混合する。
本発明は、上記構成の混合撹拌機を使用し、厚さ9.5mm、幅910mmの石膏ボード(JIS A6901)を110m/分以上の製造速度で製造することを特徴とする石膏ボードの製造方法を提供する。この製造速度は、厚さ12.5mm、幅910mm(JIS A6901)の石膏ボードの製造工程においては、約85m/分以上の製造速度に相当する。
本発明は又、上記構成の混合撹拌機を使用し、1m/分以上の流量の石膏スラリーを成型手段通過時の石膏ボード原紙の間に供給することを特徴とする石膏ボードの製造方法を提供する。
本発明の石膏ボードの製造方法によれば、軽量石膏ボードの生産性を大きく向上することができ、軽量石膏ボードの製造において殊に顕著且つ有益な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
図1は、石膏ボードの成型工程を概略的に示す工程説明図である。
図2及び図3は、本発明の第1実施形態を示す混合撹拌機の平面図及び斜視図であり、図4、図5及び図6は、混合撹拌機の内部構造を示す横断面図、縦断面図及び部分破断斜視図である。
図7は、混練領域、中空連結部及びスラリー給送管の構成を幾何学的に示す概略平面図である。
図8は、本発明の第2実施形態を示す混合撹拌機の横断面図及び部分拡大横断面図であり、図9は、混練領域、中空連結部及びスラリー給送管の構成を幾何学的に示す概略平面図である。
図10は、アタッチメントの構造を示す斜視図及び部分拡大縦断面図である。
図11は、図10に示すアタッチメントの変形例を示す斜視図及び部分拡大横断面図である。
図12は、ガイド部材の各種変形例を示すアタッチメントの部分拡大断面図である。
図13は、泡供給管、中空連結部及びスラリー給送管を一体化したアタッチメントを示す斜視図であり、図14は、図13に示すアタッチメントの取付け状態を示す斜視図である。
図15は、アタッチメントの横断面図であり、図16は、アタッチメントの本体部分の構造を示す正面図、横断面図及び背面図である。
図17及び図18は、本発明の第3実施形態を示す混合撹拌機の平面図及び斜視図であり、図19及び図20は、図17及び図18に示す混合撹拌機の内部構造を示す横断面図及び部分破断斜視図である。
図21は、泡供給管、中空連結部及びスラリー給送管を一体化したアタッチメントを示す斜視図及び部分拡大縦断面図である。
図22は、混練領域、中空連結部及びスラリー給送管の構成を幾何学的に示す概略平面図である。
図23は、アタッチメントの構造を示す横断面図、側面図及び斜視図である。
図24は、アタッチメントの構造の変形例を示す横断面図及び側面図である。
図25は、アタッチメントの構造の他の変形例を示す正面図、横断面図及び背面図である
図26は、図17〜図22に示す混合撹拌機の変形例を幾何学的に示す概略平面図である。
図27は、スラリー中の泡の混ざり具合、泡剤の使用量および石膏ボードの製造速度に関する実施例1〜6及び比較例1〜5の試験結果を示す図表である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、石膏ボードの成型工程を部分的且つ概略的に示す工程説明図である。
石膏ボード用原紙の下紙1が、生産ラインに沿って搬送される。混合撹拌機(Mixer)10が、搬送ラインと関連する所定位置、例えば、搬送ラインの上方に配置される。粉体(焼石膏、接着助剤、硬化促進剤、添加剤、混和材等)、泡及び液体(水)が混合撹拌機10に供給される。混合撹拌機10は、これらの原料を混練し、管路12(12a、12b)、14を介してスラリー(焼石膏スラリー)3を下紙1上に供給する。管路14は、下紙1の幅方向中央領域にスラリー3を吐出するように位置決めされる。管路12a、12bは、下紙1の幅方向両端部分(エッジ領域)にスラリー3を夫々吐出するように配管される。
下紙1は、スラリー3とともに移送され、一対の成型ローラ18、18に達する。上紙2が、上位ローラ18の外周を部分的に周回して、搬送方向に転向する。転向した上紙2は、下紙1上のスラリー3に接し、下紙1と実質的に平行に搬送方向に搬送される。下紙1、スラリー3及び上紙2からなる3層構造の連続的な積層体が成型ローラ18、18の下流側に形成される。この積層体は、スラリー硬化反応の進行を伴いながら搬送速度Vで連続走行し、粗切断ローラ19、19に達する。なお、成型ローラ18、18に換えて、押出成型機(Extruder)を用いた成形方法や、矩形開口部を有するゲートに積層体を通す成型方法など、種々の成型方法を用いることができる。
粗切断ローラ19、19は、連続的な積層体を所定長の板体に切断する。これにより、石膏を主体とする芯を石膏ボード用原紙で被覆してなる板状体、即ち、石膏ボードの原板が形成される。粗切断された積層体は更に、乾燥機に通され、強制乾燥される。乾燥後の積層体は、所定の製品長に切断され、かくして、石膏ボード製品が製造される。
図2〜図6には、本発明の混合撹拌機の第1実施形態が示されている。図2及び図3は、混合撹拌機10の全体構成を示す平面図及び斜視図であり、図4、図5及び図6は、混合撹拌機10の内部構造を示す横断面図、縦断面図及び部分破断斜視図である。
図2及び図3に示すように、混合撹拌機10は、偏平な円筒状筐体又はハウジング20(以下、「筐体20」という。)を備える。筐体20は、水平な円盤状上板又は上蓋21(以下、「上板21」という。)と、水平な円盤状下板又は底蓋22(以下、「下板22」という。)と、上板21及び下板22の外周部分に配置された円環壁又は外周壁23(以下、「円環壁23」という。)とから構成される。上板21及び下板22は、上下方向に所定間隔を隔てており、粉体及び液体(水)を混練可能な混練領域を混合撹拌機10内に形成する。上板21の中心部には、円形開口部25が形成される。垂直な回転軸30の拡大下端部31が円形開口部25を貫通する。回転軸30は、回転駆動装置、例えば、電動モータ(図示せず)に連結され、所定の回転方向(本例では、上方から見て時計廻り方向R)に回転する。所望により、変速装置、例えば、変速歯車装置又はベルト式変速機等が、回転軸30と回転駆動装置の出力軸との間に介装される。
混練すべき粉体成分を供給する粉体供給管15が上板21に接続される。混練用水を供給する給水管16が上板21に接続される。所望により、混合撹拌機10の過大な内圧上昇を規制可能な内圧調整装置等(図示せず)が上板21に接続される。
泡供給管40が、円環壁23に接続される。泡供給管40の泡供給口41が、円環壁23の内周壁面に開口する。泡供給管40は、スラリーの容積を調整するための泡を混合撹拌機10内の混練成分に供給する。スラリー排出口45が円環壁23に形成される。スラリー排出口45は、泡供給口41の回転方向下流側に位置決めされる。スラリー排出口45は、泡供給口41の近傍で円環壁23の内周面に開口する。
中空連結部47の拡大開口端が、スラリー排出口45の開口縁部に接続される。中空連結部47は、円環壁23の外方に延びる。中空連結部47の縮小開口端がスラリー給送管46の上端部に連結される。
スラリー給送管46の反対側では、分取口48a、48bが円環壁23に配設される。配管12a、12bが、分取口48a、48bに夫々連結される。分取口48a、48bは、所定の角度間隔αを隔てて配置される。粉体供給管15及び給水管16の各供給口は、角度間隔αの範囲内において、上板21の中央領域に開口する。
図4に示す如く、スラリー排出口45は、回転方向Rの方向に分取口48aから所定の角度間隔βを隔てて円環壁23に配置される。泡供給管40は、角度βの角度範囲内で円環壁23に接続される。泡供給口41は、スラリー排出口45の上流側に配置され、スラリー排出口45に近接した位置に位置決めされる。泡供給管40は、スラリー排出口45から流出しようとするスラリーに対して、その直前に所定量の泡を供給する。
図7は、円環壁23、スラリー給送管46及び中空連結部47の幾何学的構成を示す概略平面図である。図7には、回転円盤32の中心軸線10bから延びる法線G、Kが仮想線で示されている。
中空連結部47は、上流側の垂直側壁47a、下流側の垂直側壁47b、水平な頂壁47c(図3)および水平な底壁47dによって形成される。垂直側壁47aは、混合撹拌機10の法線Gに対して所定角度θをなして傾斜する。中空連結部47は、垂直側壁47aの傾斜によって、混合撹拌機10の混練領域10aに向かって拡開する。中空連結部47は、混練領域10aのスラリーを概ね接線方向に受入れ、スラリー給送管46に案内する。
スラリー排出口45の回転方向上流側の縁部(垂直側壁53)は、垂直側壁47aと連続し、スラリー排出口45の回転方向下流側の縁部(垂直側壁54)は、垂直側壁47bと連続する。垂直側壁53は、概ね円環壁23の接線方向に配向され、垂直側壁54及び垂直側壁47bは、概ね直径方向に配向される。垂直側壁47aの延長線と法線Gとは、交点Fで交差し、交点Fの交差角度θ(=180°−γ+θ−θ)は、90〜180度の角度範囲内に設定される。好ましくは、角度θは、90〜105度の範囲内に設定される。交差角度θは、90度(直角)に好ましく設定することができ、この場合、垂直側壁47aは、円環壁23の接線方向に延びる。
泡供給口41の中心と垂直側壁53の内端Jとの角度間隔θは、0〜90度の範囲内に設定される。角度間隔θは、好ましくは、0〜30度の範囲内、更に好ましくは、0〜15度の範囲内に設定され、泡供給口41は、垂直側壁53に近接する。泡供給管40は、法線Kに対して角度θをなして円環壁23に接続される。角度θは、0〜90度の角度範囲内、好ましくは、0〜60度の角度範囲内、更に好ましくは、0〜30度の角度範囲内に設定される。なお、本発明の目的を損なわない限り、例えば−30〜0度の範囲内に角度θを設定し、回転方向Rの流体と対向するように泡供給口41を向けた状態で、泡供給管40を円環壁23に接続しても良い。
図4〜図6に示すように、筐体20内には、回転円盤32が回転可能に配置される。回転円盤32の中心部が、回転軸30の拡大下端部31の下端面に固定される。回転円盤32の中心軸線10bは、回転軸30の回転軸線と一致する。回転円盤32は、回転軸30の回転により、矢印Rで示す方向(時計廻り方向)に回転する。
筐体20の内部領域10aは、仮想の境界26によって、内方領域と外周領域とに区分することができる。所望により、上板21の下面から垂下する環状隔壁26’(図5及び図6に仮想線で示す)を境界26に沿って筐体20内に設けても良い。この場合、環状隔壁26’は、円環壁23と実質的に同心に配置され、内部領域10aは、耐磨耗性リング23aの近傍に位置する外周領域と、筐体20の半径方向内方に位置する内方領域とに明確に区画される。なお、耐磨耗性リング23aは、円環壁23の内壁面に固定される。
多数の下位ピン(移動ピン)38が、概ね半径方向に延びる複数列の形態で、回転円盤32上に配列される。下位ピン38は、内方領域に位置する回転円盤32の上面に垂直に固定される。多数の歯形部37が回転円盤32の外周領域に形成される。各歯形部37は回転方向且つ外方に被混練流体(スラリー)を押圧ないし付勢する。各歯形部37上にも又、複数のピン36が垂直に固定される。
図5及び図6に示す如く、多数の上位ピン(静止ピン)28が、上板21に固定される。上位ピン(静止ピン)28は、、内部領域10aに垂下する。上下のピン28、38は、回転円盤32の半径方向に交互に配置され、円盤の回転時に相対移動し、筐体20内に供給された石膏ボードの原料を混合撹拌する。図4〜図6には、真円形断面のピン28、36、38が示されているが、ピン28、36、38は、特開2000−262882号公報に記載される如く、多角形断面又は楕円形断面のピンであっても良い。
図8〜図10には、本発明の混合撹拌機の第2実施形態が示されている。図8は、混合撹拌機10の内部構造を示す横断面図及び部分拡大断面図であり、図9は、図8に示す円環壁23、スラリー給送管46及び中空連結部47の幾何学的構成を示す概略平面図である。また、図10(A)は、スラリー排出口45の構造を示す部分斜視図であり、図10(B)は、スラリー排出口45のスリット構造を示す拡大縦断面図である。
図8及び図10に示す如く、アタッチメント50がスラリー排出口45の拡大開口端に着脱可能に取付けられる。アタッチメント50は、複数の水平ガイド部材51を備える。アタッチメント50の取付け手段として、嵌合構造、接着、溶接、或いは、クランプ又はボルト等の締付け具又は係止具による固定、締付け又は係止などの慣用的な取付け手段を採用することができる。
中空連結部47の拡大開口端(幅W、高さH)は、円環壁23に接続され、中空連結部47の縮小開口端は、スラリー給送管46に接続される。中空連結部47の側壁47a、47b、頂壁47c及び底壁47dは、スラリー給送管46に向かって縮小する方形断面のスラリー流路をスラリー排出口45及びスラリー給送管46の間に形成する。
図10(A)に示す如く、水平ガイド部材51は、スラリー排出口45の全幅に亘って延びる。各ガイド部材51の両端部は、アタッチメント50の左右の縦枠(垂直側壁53、54)に固定される。ガイド部材51は、等間隔(間隔P)に配列される。
ガイド部材51は、図10(B)に示すように、方形断面の金属製帯板又は樹脂製帯板からなる。ガイド部材51の断面寸法は、厚さt=1〜5mm、奥行D=5〜50mm(好ましくは、奥行D=10〜20mm)に設定される。ガイド部材51は、周方向に延びる複数の水平羽根をスラリー排出口45に形成する。ガイド部材51の間には、高さh(h=P−t)、幅w(w=W−アタッチメントの縦枠の幅)、奥行d(d=D)の水平スリット52がスラリー流路として形成される。高さhは、4〜15mmの範囲内に設定される。
スラリー排出口45は、ガイド部材51によって複数のスリット52に分割される。混合撹拌機10の混練領域10aは、各スリット52を介して中空連結部47内のスラリー流路47eと連通する。
好ましくは、各ガイド部材51の端部を嵌込み可能な複数の溝(図示せず)が、左右の縦枠(垂直側壁53、54)に上下方向に所定間隔を隔てて整列配置される。このようなアタッチメント50によれば、運転条件又はスラリー配合の変更等に伴ってスリット寸法等を変更する必要が生じた場合、ガイド部材51及びアタッチメント50を適切な組合せ又は組付け状態のものに変更し、スリット寸法を最適化することができる。また、このような構造のアタッチメント50の採用により、ガイド部材51のみを新規なものに適宜交換し、或いは、適切な形状又は材質のガイド部材51に適宜交換することができる。他の手段として、多種のスリット寸法又はスリット形状を備えた多種のアタッチメント50を予め用意し、運転条件又はスラリー配合の変更等に応じてアタッチメント50全体を交換するようにしても良い。
次に、第1及び第2実施形態に関し、混合撹拌機10の作動を説明する。
回転駆動装置の作動により、回転円盤32は、矢印R方向に回転駆動されるとともに、混合撹拌機10で混練すべき成分(粉体)及び混練用水が、粉体供給管15及び給水管16を介して混合撹拌機10内に供給される。混練成分及び給水は、混合撹拌機10の内方領域に導入され、撹拌混合されつつ、遠心力の作用により、回転円盤32上を径方向外方に移動し、境界26を超えて外周領域に移動する。歯形部37上のピン36は、耐磨耗性リング23aの内周面に付着したスラリーを掻き落とし、或いは、削り落とす。
混練領域10aに生成したスラリーは、歯形部37によって外方且つ回転方向前方に押圧され、スラリー排出口45から中空連結部47に流出する。スラリーは更に、中空連結部47からスラリー給送管46内に流入する。泡供給管40の泡供給口41は、スラリー排出口45から流出する直前のスラリーに所要量の泡を供給し、泡は、外周領域の混練成分に混入する。
第1実施形態(図2〜図7)の混合撹拌機10において、泡供給口41は、スラリー排出口45から流出する直前のスラリーに泡を外周面から供給する。スラリー流量を増大した状態であっても、泡は、スラリーに均一に混合する。泡は、混合撹拌機の撹拌衝撃を実質的に受けず、消失する泡の量は低減する。
第2実施形態(図8〜図10)の混合撹拌機10(ガイド部材51を備える)においては、スラリーは、泡の供給を受けた直後に速やかにスリット52内に流入する。混合撹拌機10の遠心力によってスリット52に流入したスラリー及び泡は、ガイド部材51の表面に沿って流動する際に、強い剪断力を受け、混合する。
泡を混入したスラリーは、中空連結部47を介してスラリー給送管46に流入し、スラリー給送管46内で回転力及び剪断力を受け、更に均一に混合した後、管路14(図1)を介して、下紙1の幅方向中央領域に吐出する。スラリー給送管46は、機外撹拌領域を構成する。
外周領域のスラリーは又、泡供給口41及び中空連結部47の上流(回転方向後方)に配置された分取口48a、48bを介して、配管12a、12bに流入する。配管12a、12bのスラリーは、下紙1(図1)のエッジ領域に吐出する。分取口48付近のスラリーは、泡供給口41に達する前のスラリー、即ち、泡が供給される前のスラリーである。従って、分取口48を介してエッジ領域に給送されるスラリーは、比較的比重が高い。
混合撹拌機10は、スラリー給送管46及び管路14を介して比較的低比重のスラリーを下紙1の中央領域に供給し、分取口48及び管路12を介して比較的高比重のスラリーを下紙1の各エッジ領域に供給する。このような混合撹拌機10によれば、単独の混合撹拌機によって低比重のスラリー及び高比重のスラリーをそれぞれ調製し、石膏ボード生産ラインの所望の部位に各比重のスラリーをそれぞれ供給することができる。所望の部位としては、石膏ボード原紙に予め高比重のスラリーを塗布し、被膜を形成するためのロールコータや、石膏ボード原紙のエッジ領域に供給されるスラリーに水や各種添加剤を配合混合するための副ミキサー等、当業者に周知の各種のものが例示される。石膏ボード生産ライン(図1)によって乾燥機に搬送される石膏ボード原材料は、比較的軽比重のスラリーを中央領域に含み、比較的重比重のスラリーをエッジ領域に含む。このような石膏ボード原材料は、搬送ライン下流側の乾燥機において均一に乾燥される。
本発明者は、次の運転状態を比較した。
(1)混合撹拌機10の中央領域のスラリーにだけ泡を混入し、硬化後の石膏ボードのボードコアの比重を0.65〜0.70g/cmに設定した運転状態
(2)本発明に従って、泡供給管40の泡供給口41からスラリーに泡を投入し、同じく、硬化後の石膏ボードのボードコアの比重を0.65〜0.70g/cmに設定した運転状態
泡供給口41から泡を投入した後者の運転状態(本発明)では、泡剤使用量を約35%削減することが可能であった。
図11(A)は、図10に示すアタッチメントの変形例を示す混合撹拌機の部分斜視図であり、図11(B)は、図11(A)に示すスラリー排出口45のスリット構造を示す拡大横断面図である。
図11に示す実施形態では、アタッチメント50は、円環壁23の内周壁面に沿って等間隔(間隔P)に配置された複数の垂直ガイド部材51を備える。各ガイド部材51の上端部は、アタッチメント50の上枠に固定され、各ガイド部材51の下端部は、アタッチメント50の下枠に固定される。ガイド部材51は、多数の垂直羽根を形成し、羽根間流路寸法wの垂直スリット52が、スラリー排出口45に形成される。各スリット52は、各ガイド部材51の間隔P及び奥行Dに相応する流路断面及び流路長のスラリー流路(幅w、高さh、奥行d)を形成する。かくして、スラリー排出口45は、ガイド部材51により、複数のスリット52に分割され、混合撹拌機10の混練領域10aは、各スリット52を介して中空連結部47のスラリー流路47eと連通する。
図12は、ガイド部材51の各種変形例を示すアタッチメントの部分拡大断面図である。
図12に示す如く、ガイド部材51は、スラリーを円滑に流出するように回転方向Rの方向に傾斜しても良い(図12(A))。ガイド部材51の断面は、必ずしも方形断面に限定されず、例えば、スラリー流出方向に縮小する断面(図12(B)、図12(D))、或いは、スラリーの流動形態に相応して湾曲した弧状断面(図12(C))に成形しても良い。また、図12(E)に示す如く、回転軸51aを中心にガイド部材51を回動可能にアタッチメント50の枠体に支持しても良い。この場合、角度調節機構(図示せず)によって、回転方向R又は水平面に対する各ガイド部材51の傾斜角度ηを可変設定することができる。傾斜角度ηの調節により、スラリーに対する羽根の作用を調節し、スラリーに作用する剪断力を調節することができる。
図13は、泡供給管40、泡供給口41、中空連結部47及びスラリー給送管46を一体化したアタッチメント50を示す斜視図であり、図14は、図13に示すアタッチメント50を混合撹拌機10の円環壁23に取付けた状態を示す斜視図である。また、図15は、図13及び図14に示すアタッチメントの本体部分57及びブラケット60の構造を示す横断面図であり、図16は、本体部分57の構造を示す正面図、横断面図及び背面図である。
図13〜図16に示すアタッチメント50は、泡供給口41、スラリー排出口45及びスリット52を備えた本体部分57と、本体部分57を円環壁23に取付けるための弧状ブラケット60とを備える。図13に示すように、本体部分57及びブラケット60は、一体的に連結される。ブラケット60には、スラリー排出口45と整合する開口部61が形成される。本体部分57は、比較的厚い弧状の板材からなり、法線G(図15、16)に対して角度θの方向に延びる垂直側壁53と、垂直側壁53と同様な方向に傾斜した垂直側壁54とを有する。これらの垂直側壁53、54、水平頂壁55及び水平底壁56(図16)は、スラリー排出口45を本体部分57の中央部に形成する。複数の水平ガイド部材(水平羽根)51が、垂直側壁53、54に支持され、複数の水平スリット52が、スラリー排出口45に形成される。図16に示すように、ボルト孔59が、本体部分57の両端部に穿設され、本体部分57は、図15に示す如く、ブラケット60を貫通してボルト孔59に螺入するボルト62によって、ブラケット60に固定される。
図13に示すように、中空連結部47の拡大開口端がブラケット60に一体的に連結され、中空連結部47の縮小開口端がスラリー給送管46の上端部に一体的に連結される。このように一体化した本体部分57、ブラケット60、中空連結部47及びスラリー給送管46によって、円環壁23の開口部49に嵌込み可能な一体構造のアタッチメント50が形成される。
本体部分57には、泡供給口41が形成される。泡供給管40の先端部がブラケット60を貫通し、泡供給口41に連結される。泡供給口41は、垂直側壁53の縁53a(図15)に近接した位置に配置される。
図13及び図14に示すように、アタッチメント50は、開口部49に取付けられ、ボルト63によって円環壁23に固定される。これにより、中空連結部47及びスラリー給送管46を含む一連のスラリー供給系流路が混合撹拌機10に形成される。
このようなアタッチメント50によれば、アタッチメント50をボルト63により円環壁23に固定することにより、一連のスラリー供給系流路を混合撹拌機10に形成することができる。ボルト63を解放してアタッチメント50を円環壁23から取外すことにより、一連のスラリー供給系流路を一括して混合撹拌機10から取外すことができる。これにより、アタッチメント50の清掃又は補修、或いは、部品交換等の維持管理を容易に行うことができ、或いは、他の設計又は仕様の各部寸法、構造又は材質を有する別のアタッチメントにアタッチメント50を比較的簡単に交換することができる。
図17〜図26には、本発明の混合撹拌機の第3実施形態が示されている。図17及び図18は、第3実施形態の混合撹拌機の構成を示す平面図及び斜視図であり、図19、図20及び図21は、図17及び図18に示す混合撹拌機の内部構造を示す横断面図、縦断面図、部分破断斜視図及び部分拡大断面図である。図17〜図21において、図1〜図16に示す構成要素と実質的に同じ構成要素については、同一の参照符号が付されている。
前述の各実施形態では、中空連結部47は、円環壁23に向かって拡開した構造を備えるが、本実施形態では、中空連結部47は、概ね均等な断面を有し、円環壁23の概ね接線方向に延びる。また、前述の実施形態では、スラリー排出口45は、ガイド部材51及びスリット52を備えるが、本実施形態では、スラリー排出口45は、スリット52及びガイド部材51を備えておらず、完全に開放している。
中空連結部47の一端は、円環壁23に接続され、中空連結部47の他端は、スラリー給送管46に接続される。中空連結部47を形成する垂直側壁47a、47b、水平頂壁47c及び水平底壁47dは、均一な方形断面のスラリー流路47eをスラリー排出口45及びスラリー給送管46の間に形成する。
図21に示すように、スラリー排出口45の上流側の縁は、垂直側壁47aと連続する垂直側壁53を形成し、スラリー排出口45の下流側の縁は、垂直側壁47bと連続する垂直側壁54を形成する。垂直側壁54は、比較的鋭利な垂直縦枠58を形成する。回転方向上流側に差し向けられた鋭角θの縦枠58は、混練領域10aのスラリーをスラリー排出口45内に案内するとともに、スラリー排出口45内に流入したスラリーが破線(図21(C))で示す如く混練領域10aに逆流又は還流するのを阻止する。このような縦枠58の形態は、円環壁23の内周壁のほぼ接線方向にスラリーを機外導出する上で重要である。
垂直側壁47a、47b、53、54は、法線Gに対して所定角度θ方向に延びる。角度θは、90〜180度、好ましくは90〜105度の範囲内に設定される。更に好ましくは、角度θは、90度(直角)に設定され、垂直側壁47aは、円環壁23の接線方向に延びる。スラリー排出口45及び中空連結部47は、混合撹拌機10の混練領域10aに向かって開口し、混練領域10aのスラリーを円環壁23の内周壁の概ね接線方向から受入れ、スラリー給送管46に導出する。
図22は、混練領域10a、中空連結部47及びスラリー給送管46の幾何学的位置関係を示す概略平面図である。
混合撹拌機10の混練領域10aは、回転円盤32の回転中心10bを中心とする半径r1の真円形横断面を有する。スラリー給送管46の管内領域46aは、垂直な中心軸線46bを中心とした半径r2の真円形横断面を有する。中空連結部47は、スラリー給送管46に対して片側(本例では円環壁23の側)に偏心した状態で接続される。このため、スラリー流路47eは、片側に偏心した位置で管内領域46aに開口する。
混練領域10aからスラリー流路47e内に流出するスラリーは、流路中心47fを中心にスラリー流路47eを流動し、円形横断面を有する管内領域46aにほぼ接線方向に流入する。管内領域46aに流入したスラリーには、管内領域46a及びスラリー流路47eの偏心により、旋回力又は回転力が与えられ、この結果、スラリーは、管内領域46aの内周壁面に沿って回転流動する。スラリーの旋回方向は、回転円盤32の回転方向Rと逆方向(反時計廻り方向)であり、スラリーは、その回転流動により、混合・撹拌作用を受ける。
図22には、スラリー流路47eを全体的にスラリー給送管46の片側半部に接続した状態が示されているが、スラリー流路47eの一部がスラリー給送管46の他方の側の半部に部分的に開口するようにスラリー流路47eをスラリー給送管46に接続しても良い。
泡供給口41は、スラリー流路47eに流出する直前のスラリーに泡を供給するようにスラリー排出口45に近接して円環壁23の内周壁面に開口する。変形例として、泡供給口41は、図22に破線で示すように、スラリー流路47e内のスラリーに泡を供給するように垂直側壁47aに開口しても良い。
次に、図17〜図22に示す混合撹拌機10の作動について説明する。
回転駆動装置の作動により、回転円盤32が矢印R方向に回転駆動されるとともに、混合撹拌機10で混練すべき成分(粉体)及び混練用水が、粉体供給管15及び給水管16を介して混合撹拌機10内に供給される。混練成分及び給水は、混合撹拌機10の内方領域に導入され、撹拌混合されつつ、遠心力の作用により、回転円盤32上を外方に移動し、境界26を超えて外周領域に流動する。歯形部37上のピン36は、耐磨耗性リング23aの内周面に付着したスラリーを掻き落とし、或いは、削り落とす。
混練領域10aに生成したスラリーは、歯形部37によって外方且つ回転方向前方に押圧され、概ね接線方向にスラリー排出口45から流出し、中空連結部47を介してスラリー給送管46内に流入する。泡供給管40は、スラリー排出口45から流出する直前のスラリーに対して、所要量の泡を供給し、泡は、外周領域のスラリーに混入する。スラリーは、泡の供給を受けた直後に速やかにスラリー排出口45から接線方向に中空連結部47に流出する。スラリー及び泡は、実質的に均一な断面のスラリー流路47e内で整流され、層流状態のスラリー流として、スラリー流路47eからスラリー給送管46の管内領域46aに流入する。なお、泡供給口41を垂直側壁47aに配置した場合、泡は、スラリー排出口45内に流入したスラリーに混入し、その直後にスラリー流路47eからスラリー給送管46内に流入する。
管内領域46aに流入したスラリー及び泡は、スラリー給送管46の中心軸線46bを中心に旋回し、管内領域46aの内周壁面に沿って回転流動する。管内領域46aにおけるスラリーの旋回運動又は回転運動により、スラリー及び泡は剪断力を受けて混合し、泡はスラリーに均一に分散する。スラリー給送管46内のスラリーは、重力下に管内領域46aを流下し、管路14(図1)を介して、下紙1の幅方向中央領域に吐出する。
外周領域のスラリーは又、泡供給口41及びスラリー排出口45の上流(回転方向後方)に配置された分取口48a、48bを介して、配管12a、12bに導入され、配管12a、12bを介して、下紙1(図1)のエッジ領域に吐出する。分取口48付近のスラリーは、泡供給口41に達する前のスラリー、即ち、泡が供給される前のスラリーである。従って、分取口48を介してエッジ領域に給送されるスラリーは、比較的比重が高い。
かくして、混合撹拌機10は、スラリー給送管46及び管路14を介して比較的低比重のスラリーを下紙1の中央領域に供給し、分取口48及び管路12を介して比較的高比重のスラリーを下紙1の各エッジ領域に供給する。このような混合撹拌機10によれば、単独の混合撹拌機によって低比重のスラリー及び高比重のスラリーを夫々調整し、石膏ボード生産ラインの所望の部位に各比重のスラリーを夫々供給することができる。石膏ボード生産ライン(図1)により乾燥機に搬送される石膏ボード原板は、比較的軽比重のスラリーを中央領域に含み、比較的重比重のスラリーをエッジ領域に含むので、搬送ライン下流側の強制乾燥機において均一に乾燥される。
前述の実施形態と同様、この構成の混合撹拌機10によってボードコア比重0.65〜0.70の石膏ボードを製造した場合、泡剤使用量を約35%削減することが可能であると判明した。
図23は、スラリー排出口45、中空連結部47及び泡供給管40を一体化したアタッチメント50の構成を示す横断面図、側面図及び斜視図である。
図23に示すアタッチメント50は、円弧状の本体部分57にスラリー排出口45を形成するとともに、中空連結部47及び泡供給管40を本体部分57に一体的に組付けた構成を有する。本体部分57を円環壁23に取付けるための弧状ブラケット60が、本体部分57の外側面に固定される。ブラケット60には、スラリー排出口45と整合する開口部61が形成される。中空連結部47の上流端がブラケット60に一体的に連結され、中空連結部47の下流端がスラリー給送管46の上端部に一体的に連結される。円環壁23には、本体部分57に相応する開口部が形成される。ブラケット60は、図23(D)に示す如く、ボルト等の係止具62によって円環壁23に取付けられ、本体部分57の内周壁面57aが、円環壁23の一部を構成する。
このようなアタッチメント50によれば、アタッチメント50を円環壁23から取外すことにより、その清掃又は補修、或いは、部品交換等の維持管理を容易に行うことができ、所望により、他の設計又は仕様の各部寸法、構造又は材質を有する別のアタッチメントにアタッチメント50を比較的簡単に交換することができる。
図24は、アタッチメント50の変形例を示す横断面図及び側面図である。
図24に示すアタッチメント50’は、図23に示すアタッチメントと同様、スラリー排出口45、スラリー給送管46、中空連結部47及び泡供給管40を一体化した構成を有する。しかしながら、泡供給管40は、中空連結部47に接続される。泡供給口41は、中空連結部47の上流側の垂直側壁47aに開口し、垂直側壁47aからスラリー流路47eのスラリーに泡を導入する。このような泡供給口41の配置によれば、スラリー及び泡の混合・撹拌は、管内領域46aにおけるスラリーの旋回運動又は回転運動に実質的に完全に依存する。
図25は、アタッチメント50の他の変形例に係るアタッチメント50”構成を示す正面図、横断面図及び背面図である。
図25に示すアタッチメント50”は、円環壁23の内周壁面に沿って周方向に延びる複数の水平ガイド部材51を備え、各ガイド部材51の両端部は、アタッチメント50”の左右の垂直側壁53、54に固定される。破線で示す垂直側壁47a、47bは、垂直側壁53、54と同じ角度(θ)で垂直側壁53、54に連接する。スリット52に流入したスラリー及び泡は、ガイド部材51の表層に沿って流動する際に、強い剪断力を受け、混合する。スラリー及び泡は更に、スラリー給送管46の内周壁面に沿って回転流動し、旋回又は回転運動時に作用する剪断力により、更に均一に混合する。なお、ガイド部材51及びスリット52の構造及び作用は、図15及び図16に示すアタッチメントと実質的に同じであるので、更なる詳細な説明は省略する。
アタッチメント50”を備えた混合撹拌機10は、図8〜図16に示す実施形態の効果(スリット52の効果)と、図17〜図24に示す実施形態の効果(スラリー給送管46における回転流動の効果)とを同時に発揮する。
図26は、図17〜図22に示す実施形態の変形例を示す概略平面図である。図25には、混練領域10a、中空連結部47及びスラリー給送管46の位置関係が幾何学的に示されている。
前述の実施形態では、中空連結部47は、円環壁23の側に偏心した状態でスラリー給送管46に接続されるが、図26に示す実施形態では、中空連結部47は、混合撹拌機10の径方向外方(円環壁23と反対の側)に偏心した状態でスラリー給送管46に接続される。このため、管内領域46aに流入するスラリーには、前述の実施形態と反対方向の旋回力又は回転力が与えられ、スラリーは、混合撹拌機10内のスラリーと同様、時計廻り方向に回転流動し、混合・撹拌作用を受ける。
本発明者は、実施例1として、第1実施形態の混合撹拌機(図2〜図7)を使用し、実施例2及び3として、第2実施形態の混合撹拌機(図8〜図10)を使用し、実施例4、5及び6として、第3実施形態の混合撹拌機(図17〜26)を使用し、厚さ9.5mm、幅910mm、ボードコアの比重約0.65の軽量石膏ボードを製造した(実施例1〜6)。本発明者は又、比較例1〜5として、従来構造の混合撹拌機を使用し、厚さ9.5mm、幅910mm、ボードコアの比重約0.65の軽量石膏ボードを製造した(比較例1〜5)。スラリー中の泡の混ざり具合、泡剤の使用量および石膏ボードの製造速度(下紙1、スラリー3及び上紙2の走行速度V(図1))に関し、実施例1〜5及び比較例1〜5の試験結果を図27の図表に示す。なお、泡の混ざり具合の良否は、コア観察結果として、図27に示されている。混ざり具合の良否判定においては、製造した石膏ボードにおけるコア及びボード原紙の界面の破断面が、目視観察と、電子顕微鏡による写真観察とによって評価され、スラリー中の泡の混ざり具合の良否が判定された。また、泡剤使用量の低減効果は、全試験中で最も泡剤使用量が少ないものに関し、その泡剤低減量を基準(達成率100)に設定し、これとの対比で泡剤低減量を数値換算したものであり、図27に記載した数値は、数値が低いほど、泡剤低減量が少ない(泡剤を多量に使用する)ことを意味する。
実施例1(第1実施形態の混合撹拌機)
図2〜図7に示す混合撹拌機10を用意し、この混合攪拌機10によって焼石膏スラリーを調製し、泡供給管40によってスラリー排出口45の直前でスラリーに泡を混入した。スラリー流量は、1m/分に設定した。ここに、スラリー流量は、成型ローラ18(図1)の部分を通過するスラリー容積/分として定義し、測定した(以下の実施例、比較例におけるスラリー流量は、同義である。)。なお、スラリーは、スラリー給送管46から成型ローラ18(図1)に至る間に脱泡するとともに若干乾燥するので、成型ローラ18の部分を通過するスラリーのスラリー量/分は、スラリー給送管46のスラリーの量/分に比べて約2割程度低減する。例えば、成型ローラ18の部分におけるスラリー流量=1m/分は、スラリー給送管46におけるスラリーの流量≒1.2m/分に相当する
実施例2(第2実施形態の混合撹拌機)
実施例1の混合撹拌機10のスラリー排出口46にアタッチメント50(図8〜図10)を取付け、この混合攪拌機10によって焼石膏スラリーを調製し、泡供給管40によってスラリー排出口45の直前でスラリーに泡を混入した。
実施例3(第2実施形態の混合撹拌機)
実施例2と同じ混合撹拌機10を使用して、焼石膏スラリーを調製し、泡供給管40によってスラリー排出口45の直前でスラリーに泡を混入した。スラリー流量は、1.5m/分に設定した。
実施例4(第3実施形態の混合撹拌機)
図23に示すアタッチメント50を取付けた混合撹拌機10を用意し、焼石膏スラリーを調製した。泡は、スラリー排出口45から流出する直前のスラリーに対して、泡供給管40から供給した。泡を混入したスラリーは、中空連結部47内で層流化し、スラリー給送管46内に流入し、スラリー給送管46内で回転流動した。
実施例5(第3実施形態の混合撹拌機)
図24に示すアタッチメント50’を取付けた混合撹拌機10を用意し、焼石膏スラリーを調製し、泡供給管40によりスラリー流路47eのスラリーに泡を混入した。スラリー流量は、1.0m/分に設定された。
実施例6(第3実施形態の混合撹拌機)
図25に示すアタッチメント50”を取付けた混合撹拌機10を用意し、焼石膏スラリーを調製し、泡供給管40によって混練領域10aのスラリーに泡を混入した。スラリー流量は、1.5m/分に設定された。
比較例1
比較例1の混合撹拌機として、泡供給口を上板の中央部(内方領域)に配置し、実施例2、3と同様なアタッチメント(スリットを備える)をスラリー排出口に取付け、中空連結部を介してスラリー排出口をスラリー給送管の上端部に接続した構造の混合撹拌機を使用した。実施例1〜5では、泡供給管40によって泡をスラリー排出口45の直前でスラリーに混入したのに対し、比較例1では、混合撹拌機の中央領域に泡を投入しながらスラリーを調整し、泡を混入したスラリーをスラリー排出口のスリットから中空連結部に導出し、中空連結部のスラリー流路からスラリー給送管の中央部に導入した。スラリー流量は、1.0m/分に設定された。
比較例2
比較例1の混合撹拌機に関し、泡供給口の位置を上板の外周領域に変更するとともに、比較例1のアタッチメントを取外した混合撹拌機を用意し、混合撹拌機の外周領域に泡を投入しながらスラリーを調整した。
完全に開放したスラリー排出口からスラリー及び泡を中空連結部に導出し、スラリー及び泡を中空連結部のスラリー流路からスラリー給送管の中央部に導入した。スラリー流量は、1.0m/分に設定された。
比較例3
比較例2の混合撹拌機に関し、泡供給口の位置をスラリー給送管に変更し、混合撹拌機の混練領域では、泡を混入せずにスラリーを調整した。泡混入前のスラリーは、完全に開放したスラリー排出口から中空連結部に流出し、比較例1及び2と同様、スラリー給送管の中央部に流入した。泡は、スラリー給送管内のスラリーに投入された。スラリー流量は、1.0m/分に設定された。
比較例4
比較例3の混合撹拌機と同じ混合撹拌機を使用してスラリーを調整した。比較例3と同じく、泡は、スラリー給送管内でのみ、スラリーに投入された。スラリー流量は、0.8m/分に設定された。
比較例5
比較例3の混合撹拌機と同じ混合撹拌機を使用してスラリーを調整した。比較例3と同じく、泡は、スラリー給送管内でのみ、スラリーに投入された。スラリー流量は、0.6m/分に設定された。
図27に示す試験結果から明らかなとおり、比較例1、2、3の混合撹拌機を使用した場合、スラリー流量を1m/分に設定すると、撹拌混合の影響により比較的多量の泡が混練領域で消泡するため、泡剤使用量を所望の如く低減することができず(比較例1、2)、或いは、泡が均一にスラリーに混入せず、石膏ボードにふくれ不良が発生した(比較例3)。後者の問題は、比較例4、5の如く、スラリー流量を0.8m/分又は0.6m/分に低下することにより解消したが、この場合、石膏ボードの製造速度が、約90m/分又は70m/分に低下した(比較例4、5)。このような試験結果より、次の事項が判明した。
(i)スリットを有するアタッチメントをスラリー排出口に取付けた状態であっても、混合撹拌機の内方領域に泡を投入する方法では、泡剤の使用量を十分に低減することができない(比較例1)。
(ii)スラリー排出口を完全に開放した状態であって、スラリー給送管46の回転流動を用いていない状態では、外周領域に泡を投入したとしても、泡剤の使用量を十分に低減することができない(比較例2)。
(iii)スラリー給送管に泡を投入する方法を採用した場合、スラリー流量を低下することによって、泡剤の使用量を低減できるかもしれないが、これだけでは、多量の流量(1m/分以上)のスラリーを調製する必要がある高速の石膏ボード製造方法には、適応できない(比較例3、4、5)。
これに対し、本願発明の混合撹拌機10によれば、スラリー流量を1m/分以上に設定した場合であっても、泡剤使用量を十分に低減することができる。しかも、コア観察結果は、良好である。即ち、泡を良好に撹拌混合したスラリーを安定供給することが可能である。加えて、本発明の混合撹拌機10によれば、石膏ボードの製造速度を約115m/分以上の高速に設定することができる。従って、本発明の混合撹拌機10は、泡剤使用量の低減を達成し得るだけではなく、従来の混合撹拌機では適応し得なかった高速の石膏ボード製造方法に適応し、石膏ボードの生産性向上に寄与する。
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態又は実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
例えば、本発明の混合撹拌機の構成は、ピン型混合撹拌機以外の形式の混合撹拌機(例えば、羽根型混合撹拌機等のピンレス混合撹拌機)や、歯形部を外周に備えない回転円盤を有する混合撹拌機にも同様に適用することができる。
また、スラリー給送管の管内流路の横断面は、必ずしも真円形に限定されるものではなく、楕円形又は長円形であっても良い。
更には、本発明の混合撹拌機の使用目的は、石膏ボード製造用混合撹拌機に限定されるものではなく、他の分野における粉体等の固形物、液体及び泡の混合撹拌機としても使用し得るものである。
【産業上の利用可能性】
本発明は、混合撹拌機及び混合撹拌方法、殊に、石膏ボードの製造工程に使用される混合撹拌機及び混合撹拌方法に適用される。本発明の混合撹拌機及び混合撹拌方法は、石膏ボードの製造工程における泡剤使用量の低減を可能にするとともに、石膏ボード製造ラインの高速化に適応するので、製造速度を高速化した石膏ボード製造方法に好ましく適用される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図6】

【図5】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に円環壁を備えた扁平且つ円形の筐体と、
該筐体内に配置され、所定の回転方向に回転する回転盤と、
前記筐体内で混練された石膏スラリーを筐体外へ排出するために、前記円環壁に開口したスラリー排出口と、
一方の開口端が前記スラリー排出口に接続し、他方の開口端が実質的に垂直円筒状のスラリー給送管に連結した中空連結部と、
石膏スラリーに泡を供給する泡供給口とを有し、
前記泡供給口は、前記スラリー排出口に流入する直前の石膏スラリーに泡を供給するようにスラリー排出口の回転方向上流側の円環壁に設けられ、又は、前記中空連結部に流入した石膏スラリーに泡を供給するように該中空連結部に設けられたことを特徴とする混合撹拌機。
【請求項2】
前記スラリー給送管の管内領域が円形横断面を有し、前記中空連結管部がスラリー給送管の中心軸線に対して偏心した位置でスラリー給送管に連結し、石膏スラリーが前記管内領域で回転流動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の混合撹拌機。
【請求項3】
前記スラリー排出口を通過する石膏スラリーに剪断力を与える複数の羽根がスラリー排出口に設けられ、前記羽根は、複数のスリットをスラリー排出口に形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の混合撹拌機。
【請求項4】
前記スラリー排出口は、石膏スラリーを前記円環壁の接線方向に前記中空連結部に流入させることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の混合撹拌機。
【請求項5】
前記スリットは、等間隔に配置された厚さ1〜5mm(t)の前記羽根により形成され、前記スリットの羽根間流路寸法(h,w)は、4〜15mmに設定されることを特徴とする請求項3に記載の混合撹拌機。
【請求項6】
前記羽根は、水平又は垂直に配置されることを特徴とする請求項3又は5に記載の混合撹拌機。
【請求項7】
前記中空連結部は、スラリー流路を中空連結部内に形成する回転方向上流側及び下流側の壁面(47a,47b)を有し、回転方向上流側の前記壁面(47a)は、前記筐体の法線(G)に対して90〜120°の角度に配置されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の混合撹拌機。
【請求項8】
前記泡供給口が、前記回転方向上流側の前記壁面(47a)に設けられたことを特徴とする請求項7に記載の混合攪拌機。
【請求項9】
前記上流側及び下流側の壁面(47a,47b)は、平行であることを特徴とする請求項7又は8に記載の混合撹拌機。
【請求項10】
回転方向下流側の前記壁面(47b)は、前記円環壁の内周面に対して鋭角に配置され、前記中空連結部のスラリー流路に流入した石膏スラリーが前記筐体内に逆流又は還流するのを阻止することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の混合撹拌機。
【請求項11】
前記中空連結部は、石膏スラリーを前記管内領域の接線方向に流入させるように前記スラリー給送管に接続されることを特徴とする請求項2に記載の混合撹拌機。
【請求項12】
前記中空連結部は、前記管内領域の石膏スラリーが前記回転盤の回転方向と逆の方向に回転流動するように前記スラリー給送管の中心軸線に対して偏心した位置でスラリー給送管に連結することを特徴とする請求項2又は11に記載の混合撹拌機。
【請求項13】
前記中空連結部は、前記管内領域の石膏スラリーが前記回転盤の回転方向と同じ方向に回転流動するように前記スラリー給送管の中心軸線に対して偏心した位置でスラリー給送管に連結することを特徴とする請求項2又は11に記載の混合撹拌機。
【請求項14】
前記スラリー排出口、中空連結部及びスラリー給送管を有する一体的アタッチメントが、前記円環壁に着脱可能に取付けられたことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の混合撹拌機。
【請求項15】
外周に円環壁を備えた扁平且つ円形の筐体と、該筐体内に配置され、所定の回転方向に回転する回転盤と、前記筐体内で混練された石膏スラリーを筐体外へ排出するために、前記円環壁に開口したスラリー排出口と、一方の開口端がスラリー排出口に接続し、他方の開口端が実質的に垂直円筒状のスラリー給送管に連結した中空連結部と、石膏スラリーに泡を供給する泡供給口とを有する石膏スラリーの混合撹拌機を用いた石膏スラリーの混合撹拌方法において、
前記筐体内に供給された粉体及び液体を前記回転盤の回転によって前記筐体内の混練領域で混練して石膏スラリーを調製し、該石膏スラリーを前記スラリー排出口から中空連結部に流出させる第1混合工程と、
前記スラリー排出口に流入する直前の石膏スラリーに泡を供給するように前記泡供給口をスラリー排出口の回転方向上流側の円環壁に配置し、又は、前記中空連結部の石膏スラリーに泡を供給するように前記泡供給口を中空連結部に配置し、この泡供給口から石膏スラリーに泡を供給するとともに、前記スラリー排出口又はその下流側でスラリー及び泡に剪断力を与え、スラリー及び泡を混合する第2混合工程とを有することを特徴とする石膏スラリーの混合撹拌方法。
【請求項16】
前記スラリー排出口から流出する直前又は直後の石膏スラリーに泡を供給し、円形横断面を有する前記スラリー給送管の管内領域と偏心したスラリー及び泡の流動体を該管内領域に接線方向に流入させ、スラリー及び泡を該管内領域で回転流動させ、回転流動時にスラリーに作用する剪断力によってスラリー及び泡を混合することを特徴とする請求項15に記載の石膏スラリーの混合撹拌方法。
【請求項17】
複数のスリットを形成する複数の羽根を前記スラリー排出口に配置し、前記スリットを通過する直前のスラリーに泡を供給し、スリット通過時にスラリーに作用する剪断力によってスラリー及び泡を混合することを特徴とする請求項15に記載の石膏スラリーの混合撹拌方法。
【請求項18】
複数のスリットを形成する複数の羽根を前記スラリー排出口に配置し、前記スリットを通過する直前の石膏スラリーに泡を供給し、スリット通過時にスラリーに作用する剪断力によってスラリー及び泡を混合するとともに、円形横断面を有する前記スラリー給送管の管内領域と偏心したスラリー及び泡の流動体を該管内領域に接線方向に流入させ、スラリー給送管の管内領域でスラリー及び泡を回転流動させ、回転流動時にスラリーに作用する剪断力によってスラリー及び泡を更に混合することを特徴とする請求項15に記載の石膏スラリーの混合撹拌方法。
【請求項19】
前記混練領域の外周帯域の石膏スラリーを前記円環壁の接線方向に前記スラリー排出口から前記中空連結部に流入させることを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1項に記載の石膏スラリーの混合撹拌方法。
【請求項20】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の混合撹拌機を使用し、厚さ9.5mm、幅910mmの石膏ボードを110m/分以上の製造速度で製造することを特徴とする石膏ボードの製造方法。
【請求項21】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の混合撹拌機を使用し、1m/分以上の流量の石膏スラリーを成型手段通過時の石膏ボード原紙の間に供給することを特徴とする石膏ボードの製造方法。

【国際公開番号】WO2004/103663
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506424(P2005−506424)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007323
【国際出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(000160359)吉野石膏株式会社 (48)
【Fターム(参考)】