説明

混合物の分離を制御するための方法

本発明は、少なくとも1種の物質の除去によって混合物の粘度が分離プロセスの間変化する、少なくとも2種の物質の混合物の分離を制御するための方法に関する。この目的を達成するために、デバイスが一定の力をかけられながら混合物中を移動する。このデバイスの速度および/または加速度が検出される。その後、このデバイスの速度および/または加速度は既定の目標値と比較される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の物質の単離のために混合物の粘度が分離プロセスの間変化する、少なくとも2種の物質の混合物の分離を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本方法は、固形分/液体分離にとって特に好適である。この関連で用いられる従来の方法は濾過である。この点において、一方では、濾過が行われる装置に固形分と液体との既製の混合物が供給されることが可能である。しかしながら、固形分のみが、例えば結晶化によって、装置中に生成することもさらにまた可能である。
【0003】
例えば(特許文献1)から、懸濁液をスクラバー塔に供給することは公知である。このスクラバー塔はピストン付きのシリンダーからなり、ピストンはその中を移動でき、シール要素を介してシリンダーの内壁に取付けられている。ピストンはフィルターに連結され、フィルターは、シリンダーにおいてフィルターの上側に配置されるチャンバーを画定する。運転中のとき、チャンバーの容積が減少するように、ピストンはチャンバー中へフィルターと一緒に案内される。液体はフィルターを通って流れ出ることができるので、このようにして固形分はこのチャンバー中で濃縮されることになる。ピストンが既定の移動を達成するとすぐに、チャンバー中に配置されているかき板は軸方向にピストン表面から結晶をかき取り始める。この方法の欠点は、固形分の量が元の濃度およびチャンバーにおける他の運転パラメーターの関数として変わり得ることである。有利さが最も少ない場合には、これは、かき板が損傷を受け得るかまたはかき板の移動がもはや可能ではないほどにかき取りプロセスの開始時に既に高い固形分濃度につながる可能性がある。この理由は、かき板が時間制御され、従って、分離されるべき混合物の特性とは無関係に制御されるためである。このように、かき板の移動は、チャンバー中の実際の固形分濃度とは無関係である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
欧州特許第B0 920 894号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分離プロセスの制御を可能にする、かつ、先行技術から公知の欠点が現れない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、少なくとも1種の物質の単離のために混合物の粘度が分離プロセスの間変化する、少なくとも2種の物質の混合物の分離を制御するための方法であって、次の工程:
(a)一定の力をかけながらデバイスを混合物中に移動させる工程、
(b)このデバイスの速度および/または加速度を検出する工程、
(c)この速度および/または加速度を既定の所望の値と比較する工程
を含む方法によって達成される。
【0007】
一定の力をかけながらデバイスを混合物中に移動させることによって、測定される速度または加速度についての値は、デバイスが混合物を通って移動するときに遭遇する抵抗に依存する。この抵抗は粘度に依存する。固形分および液体を含有する混合物において、この抵抗は特に液体中の固形分の濃度に依存する。同じ混合物を使用する場合、実質的に同じ濃度に達するときどの場合でも抵抗は同じであり、そしてこの濃度に達するとき、速度および加速度についての値は既定の力が加えられるときに同じである。このようにして本プロセスのさらなる工程は実質的に同じ混合物組成で常に実施されることが確実にされ得る。「実質的に同じ組成」は本明細書では、混合物中の個々の成分の割合が多くとも±5容積%だけ変わることを意味する。
【0008】
好ましい実施形態では、速度は、一定の力をかけられる、デバイスの移動の一次導関数を形成することによって測定され、加速度は、デバイスの移動の二次導関数を形成することによって測定される。一定の力をかけられるデバイスの移動は、当業者に公知の位置測定法によって例えば測定することができる。好適な位置測定法は例えば、移動センサまたは例えば光電池などの任意の所望のそれ自体公知の光学デバイスを使用する0%および100%間のデバイスの移動距離の検出である。
【0009】
速度および/または加速度は、混合物中一定の力でデバイスが移動する、2つの異なる時間に形成されるデバイスの位置から数値的に測定することができる。通常は、差分法が、例えば、この目的のために用いられる。
【0010】
非常に一般的には、次式が速度に関して適用される:
【数1】

式中、vは速度を意味し、dsは移動変化を、dtは時間変化を意味する。速度は、2つの異なる瞬間での位置を測ることによって測定することができる。好ましくは、位置が測定される2つの瞬間は、できるだけ互いにすぐ近くにある。特に、2つの位置測定は多くとも0.1〜0.5秒の間隔で行われることが好ましい。
【0011】
速度は次に差分法によって測定することができる。この目的を達成するために、一方では、2つの瞬間での位置間の差が測定される。この差は、混合物中を移動しているデバイスの移動変動を発生させ、dtは2つの測定間の時間間隔に相当する。従って、次式が速度について得られる:
【数2】

式中、xは第1瞬間でのデバイスの位置であり、xは第2瞬間でのデバイスの位置であり、Δtは、第1位置および第2位置の2つの測定間で経過する時間である。
【0012】
非常に一般的に言えば、加速度は移動の二次導関数であり、非常に大まかに言えば次式が適用される:
【数3】

【0013】
式中、「a」は加速度を意味する。二次導関数は、一次導関数について上記のように数値的に測定することができる。これは、例えば、差分法によって進展する。本明細書では、3つの異なる瞬間でデバイスの位置を測定することが必要である。3つの異なる瞬間は好ましくはできるだけ互いにすぐ近くにある。好ましくは、2つの測定間の間隔は、0.1〜0.5秒の範囲にある。
【0014】
一差分法によれば、加速度は例えば、
【数4】

である。
【0015】
式中、xは第3瞬間でのデバイスの位置であり、xは第2瞬間でのデバイスの位置であり、xは第1瞬間での位置であり、Δtは2つの測定間の時間差である。この場合にデバイスの位置が測定される間隔が各場合に同じものであることが必要である。
【0016】
差分法による導関数の上記の測定に加えて、デバイスの速度および加速度を測定するための一次および二次導関数はまた、当業者に公知の任意の他の方法によって測定されてもよい。
【0017】
速度および加速度を測定することによって、分離を制御するための本方法は、物質系の経験的特性に純粋に基づいて制御することができ、この経験的特性は、それぞれの物質系にかかわりなく、方法または装置のタイプに由来する。これは、例えば、駆動部の酷使を回避することを可能にする。
【0018】
好ましい一実施態様では、一定の力をかけられながら混合物中を移動するデバイスは、ピストンまたは攪拌機である。一般に、並進運動がピストンにかけられ、回転運動が攪拌機にかけられる。従って、混合物中を移動するデバイスがピストンであるとき、並進運動の速度および加速度が測定される。一方、回転子の場合には、測定されるものは回転速度および回転加速度である。
【0019】
使用されるピストンは、本明細書では、当業者に公知の任意の望ましいピストン形状を有することができる。それは、例えば、その断面が装置の断面積に相当するピストン表面を含むことができる。この場合ピストン表面は通常、ピストン上側のチャンバーを密封する。ピストンの移動は、チャンバーをより小さくまたはより大きくする。しかしながら、それがチャンバーを密封することなく混合物中を移動できるようなやり方でピストンを配置構成することもまたさらに可能である。
【0020】
混合物中を移動するデバイスが回転子である場合、当業者に公知の任意の所望の回転子を使用することができる。回転子はいかなる特定の形状にも限定されない。回転子は例えばまた攪拌機であってもよく、混合物を均一に保つために、攪拌機で混合物は分離プロセスの間撹拌される。
【0021】
ピストンまたは攪拌機に加えて、混合物中を移動するデバイスはまた、任意の他の所望の形状をとることができる。このように、例えば、デバイスは混合物中を移動する棒であることが可能である。
【0022】
特に好ましい実施形態では、一定の力をかけられながら混合物中を移動するデバイスは、濾過面を備えている、ピストンである。この濾過面は容器の内部で案内される。液体として存在する混合物の物質は、この濾過面を通って流れることができる。分離プロセスの間、ピストンは、濾過面の上側に置かれたチャンバー中へ移動する。このようにしてチャンバーはより小さくされる。ピストンの移動の結果として、液体が濾過面を通って流れるように、チャンバー中の圧力は増加する。チャンバー内部の固形分含有率は、液体流出の結果として増加する。固形分含有率の増加のために、混合物の粘度もまた増加する。ピストンによって克服されなければならない抵抗は増加する。かけられる力が同じままである場合、ピストンの速度および加速度はその結果として低下する。
【0023】
分離装置への損傷を防ぐために、第1実施形態では、分離プロセスは、速度および/または加速度について所望の値に達した場合に終了させられる。混合物が分離された個々の物質は次に、例えば、装置から取り出すことができる。
【0024】
濾過面を備えており、かつ、分離装置において上向きに移動するピストンによって分離が達成される場合、分離プロセスは、ピストン運動を打ち切ることによって終了させられる。固形分は次に一般に、ピストンが移動したチャンバー中にあり、ピストン運動の終了後に装置から取り出すことができる。
【0025】
濾過面が閉塞されてしまうのを防ぐために、例えば、分離プロセスの終了後に、濾過面上にあるフィルターケーキを除去するために、圧力下の液体を濾過面に押し通すことが可能である。あるいはまた、例えば、フィルターを通して液体の代わりにガスを流すこともまた可能である。
【0026】
分離プロセスの終了に加えて、既定の所望の値に達したときにさらなる方法工程が開始されることもまた可能である。このように、例えば、所望の値に達するとすぐに、フィルターおよび壁上に堆積してしまった沈澱固形分をかき取るかき板を装置に備え付けることが可能である。これは、装置が固形分で固められ、くっつかれてしまうことを防ぎ、さらなるピストン運動によって固形分から液体のさらなる分離を可能にする。実質的に連続の運転がこうして可能である。この場合、例えば、分離プロセスがそのとき終了させられる、第2の所望の値を提供することが可能である。あるいはまた、この場合、ピストンが既定の距離を移動してしまった、または終了位置、すなわち、上死点にあるときに分離プロセスを終了させることもまた可能である。
【0027】
本発明による方法は、固形分/液体混合物を分離するための方法にとって特に好適である。この点において、本方法は、任意の所望の固形分/液体分離に適用することができる。
【0028】
好ましい一実施態様では、固形分は、結晶化によって混合物中に生成する。この場合、混合物の分離もまた行われる同じ装置で、結晶化が行われることが一方で可能である。しかしながら、代替的には、結晶化が第1装置で行われることも可能である。液体中に懸濁する、結晶化中に生成した結晶を含有する混合物が、分離のための装置に供給される。
【0029】
本方法が固形分/液体混合物を分離するために用いられる場合、分離が行われる装置の直径に対する混合物中に含有される固形分粒子の粒径の比は最高でも0.05になることが好ましい。
【0030】
特に好ましい実施形態では、本発明による方法は、分離されるべき混合物が例えば連続結晶化中に生成する場合に用いられる。この場合、固形分/液体分離もまた連続的にかまたは少なくとも実質的に連続的に行われることが必要である。固形分/液体分離を行うことができる好適な装置は、例えば欧州特許出願公開第A 0 920 894号明細書に開示されている。この特許では、レセプタクルにおいて上方チャンバーを画定し、かつ、密封するピストン表面を含むピストンが円筒形レセプタクル内で案内される。ピストン表面は、濾過面の形態をとる。
【0031】
分離されるべき混合物でレセプタクルを満たすために、ピストンは先ず下向きに移動し、そのようにしてチャンバーを大きくする。このようにして、チャンバー中の圧力は低下し、分離されるべき混合物がチャンバー中へ吸い込まれる。ピストンの移動は、ピストン下死点に達するまで続行される。ピストン上方の空間は次に、分離されるべき混合物で完全に満たされる。空間が満たされ、ピストンが下死点に達するや否や、上向きにピストンの移動が始まる。このようにして混合物はチャンバー中で圧縮される。混合物中に含有される液体は濾過面を押し通される。このようにして混合物中に含有される固形分は濃縮される。フィルターケーキが得られ、それは、レセプタクルの上方部でピストンに対面するかき板に押し付けられる。かき板は例えば、複数の分割ナイフを備えているプレートからなる。プレートの回転運動によって、圧縮されたフィルターケーキは圧縮床からかき取られ、かき板の上方にある装置のヘッドスペースへ搬送される。かき取られた固形分は、例えば洗浄サイクルによって取り出すことができる。
【0032】
ピストンは通常不連続的に移動するので、しかし連続結晶化装置と連動した混合物からの固形分の固形分/液体分離は連続的にかまたは少なくとも実質的に連続的に進行しなければならないので、全体設備の定常状態運転が確保されるべきである場合には、かき板を周期的に運転することが同様に必要である。
【0033】
欧州特許出願公開第A 0 920 894号明細書から公知の装置の場合、かき板は厳密に既定された時間に準拠して制御される。この厳密に既定された時間が経過するとすぐに、固形分をかき取るためにかき板が開始される。しかしながら、固形分濃度の変動の場合に、これは、かき取りプロセスの開始時でさえ固形分濃度が多分余りにも高い可能性があり、かき板の駆動部がそれによって損傷される可能性があるという結果をもたらす。かき板運転の途絶および機能停止が起こり、装置はこうしてさらなる運転ができない。加えて、かかる途絶は結晶化段階に伝播する可能性があり、そのことで閉塞または結晶含有率の永続的変化につながる。これは、全体結晶化設備の完全な破損につながる可能性がある。
【0034】
その一方で、固形分濃度が十分に高くなる前にかき板がスイッチを入れられる場合、許容できない量の液体が固形分中に依然として存在するので、既定の固形分純度が達成されるべきであるときに特に、固形分の品質特性の途絶が起こる可能性がある。本発明によれば、かき板はそれ故、ピストンの速度および/または加速度が既定の所望の値に達するや否や作動させられる。既定の力がピストンにかけられるとき、ピストンの速度および/または加速度は混合物の組成に依存する。これは、出発混合物の組成に関係なく実質的に同じ混合物組成で各場合にプロセス指向のおよびプロセスに満足のいくやり方でかき板が開始されることを確実にする。固形分の一様な製品品質を達成することができる。これは、混合物中の固形分濃度が上がるにつれて、ピストンを一様な速度で移動させるためにより大きい力をかけなければならないという事実に起因する。反対に考えると、この力が同じままである場合、混合物中の固形分濃度が上がるにつれてピストンの速度は低下する。この結果は、一定の力がかけられ、かつ、混合物組成が同じものであるとき、ピストンは実質的に一様な速度を有するということである。
【0035】
特に好ましい実施形態では、速度および加速度の両方が測定される。
【0036】
ピストンがレセプタクル中を移動し、ピストンがピストン壁に関連してチャンバーを密封し、かつ、液体がそれを通って流れるフィルタープレートをピストンが備えている、固形分/液体分離のためのデバイスで本発明による方法が用いられる場合、一定の力で駆動される装置のピストンが下向きに移動し、そのようにしてピストン上方のチャンバーを大きくする第1段階中に、固形分と液体との混合物が装置に吸い込まれる。この目的を達成するために、入口バルブは開かれ、それを通って混合物が流れ込むことができる。ピストンが下死点に達する、すなわち、ピストン上方のチャンバーの容積が最大膨張を受け、こうして装置が最大量の混合物で満たされるや否や、入口バルブは閉じられる。次の段階でピストンはその上向き移動を始める。このようにしてピストン上方のチャンバーはより小さくされる。上向き移動中に、時間および位置座標が移動センサを用いて測定され、当業者に公知の従来型プロセス制御システムへフィードされ、そこで処理される。
【0037】
このプロセス制御システムでピストン移動の一次および/または二次導関数が数値アルゴリズムを用いて形成される。ピストン移動は、移動センサを用いて測定される位置座標から得られる。
【0038】
ピストンの上向き移動中に、液体は連続的に収縮するチャンバーから追い出され、そのようにして固形分濃度が上がる。液体は、濾過面を備えたピストンを通って流れ出る。
【0039】
混合物中の固形分濃度の上昇のせいで、液体は、個々の固体粒子間のさらにより狭い隙間から追い出されなければならない。これは力の増加を必要とする。ピストンの駆動力が同じままである場合、これは、ピストンが減速することを意味する。速度を表す、ピストン移動の一次導関数はより小さくなる。加速度を表す、ピストン移動の二次導関数は、ピストン移動の下死点から負の値をとる。これらの負の値の量は、ピストンの減速の結果として着実に増加する。
【0040】
ピストン移動の一次導関数および/または二次導関数が既定のシステム依存閾値に達するや否や、固形分床の上方に置かれたかき板は、例えばスイッチを入れられる。かき板は、圧縮された固形分床をかき取り、圧縮空間としての機能を果たすチャンバーからこれを外へ搬送する。閾値は、少数の試験によって測定することができる。かき板がスイッチを入れられるべき固形分濃度は、閾値の大きさを用いて固定することができる。固形分はチャンバーから外へ搬送されるので、一定の力で駆動されるピストンは、固形分床をそれ以上圧縮しない。固形分の所望の密度は遵守され、同時に一定に保たれる。従って、例えば、既定の固形分純度は遵守される可能性がある。固形分の純度はまた、例えば固形分中の液体の割合によりもたらされる。
【0041】
ピストンは、例えば、線形駆動またはピストン付き空気圧シリンダーもしくは水圧シリンダーによって駆動することができる。
【0042】
かき板がスイッチを入れられ、固形分がチャンバーから取り出されるとすぐに、固形分はそれ以上の濃縮を受けないので、かき板は、運転中に起こる途絶なしに、損なわずにおよび一定の速度で固形分床をかき取ることができる。
【0043】
本発明による方法の結果として、装置および従って全体の連続結晶化法は、連続的におよび自動的に、かつ、技術的混乱なしに高い固形分品質で運転することができる。装置の運転段階を決定する関連信号は、本発明によればプロセスから直接におよび物質系に特有のやり方で得られる。
【0044】
個々の段階の分離のための正確な値は、様々な方法パラメーターに依存する。これらは、本発明による方法と相当するデバイスとで当業者により実施される少数の簡単な運転試験によって測定し、再現性のある結果を達成するためにさらなる運転について前もって決定することができる。閾値が依存するパラメーターは、例えば、物質系のタイプ、固形分結晶のサイズおよびターゲット製品の所望の純度である。
【0045】
このようにして少数の試験によって測定できる一定セットのパラメーターであって、手順のコースおよび個々の分離段階を正確に決めるパラメーターは、各物質系およびその相当する出発組成およびターゲット組成について決定することができる。
【0046】
本発明による方法の結果として、固形分/液体分離用の装置を性能の限界で途絶なしに運転し、かつ、このようにして空間時間収率を高めることが可能である。加えて、単離された固形分の品質は、所望の純度要件に適合することができる。
【0047】
本発明による方法は、p−ジクロロベンゼン/m−ジクロロベンゼン母液からのp−ジクロロベンゼン結晶の固形分/液体分離にとって特に好適であり、前記結晶は、2つの異性体の分離のための連続結晶化から生じる。
【0048】
p−ジクロロベンゼン/m−ジクロロベンゼンの分離に加えて、本発明による方法はまた、しかしながら、任意の他の固形分/液体分離のために用いることができる。
【0049】
上記の装置に加えて、本方法はさらにまた、固形分/液体分離を実施することができる任意の他の装置にとっても好適である。移動要素は装置の運転のために最初は全く必要ではないが、任意の所望の移動要素、例えば攪拌機または混合物中を移動する棒を使用することによって、本発明による方法を適用することは可能である。
【0050】
固形分/液体分離に加えて、分離されるべき液体が異なる粘度を有する場合には、本発明による方法を多段液液分離のために用いることもまた可能である。異なる粘度の結果して、混合物の粘度は分離の間変化する。かけられる一定の力の場合には、混合物中の移動要素の速度および/または加速度は従ってまた変化する。従って、この場合にもまた、既定の所望の値が達成されるとき、分離を終わらせることができるか、または所望の結果を達成するために必要である他の手段を講じることができる。
【0051】
本発明の一実施態様が図面に例示され、以下の記載でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明による方法にとって好適な装置の略図である。
【図2】時間の関数としての一次および二次導関数のプロフィールを例として示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、本発明による方法にとって好適な装置の略図である。
【0054】
本発明による方法を実施するために好適である装置1は、ハウジング軸に対して軸方向に移動できるようにピストン3を収容しているレセプタクル2を含む。ピストン3は、濾過面として役立つスクリーンプレート5で覆われている。固体相および液体相の2相混合物を分離するために、スクリーンプレート5の網目サイズは、固形分が保持され、かつ、液体のみがスクリーンプレート5を通過できるように好ましくは選択される。液体が流れ去ることができるように、少なくとも1個の導管7がピストン3中に形成される。しかしながら、好ましくは、ピストン3は2個以上の導管7を含有する。
【0055】
分離されるべき混合物は、供給ライン9を通って装置に供給される。供給ライン9は、入口バルブ11で閉じることができる。
【0056】
分離されるべき混合物は、供給ライン9を通ってレセプタクル2に供給される。混合物は、ピストン3上方のチャンバー13へ流れ込む。分離されるべき混合物でチャンバー13が満たされるや否や、入口バルブ11は閉じられる。これは、チャンバー13へのピストン3の移動およびそれに関連する混合物の圧縮時に混合物の幾らかが供給ライン9を通って逆流するのを防ぐ。分離プロセスは、ピストン3をチャンバー13へ移動させることによって開始される。これは、例えば、本明細書に示されるように、ピストン3に連結され、本明細書に示されていない空気圧または電気線形駆動によって駆動させられるピストン棒15を用いて進行する。ピストン3を移動させることができる当業者に公知の任意の他の駆動もまた好適である。
【0057】
圧縮の結果として、液体はスクリーンプレート5を通って流れるが、固形分はチャンバー13中に保持される。液体はスクリーンプレート5および導管7を通って収集空間17へ流れる。同時に、混合物中に含有される固形分からなる固体層19がスクリーンプレート5上に堆積する。分離されるべき混合物が例えば結晶化装置からの母液/結晶混合物である場合、固体層19は例えば結晶床の形態で存在する。
【0058】
固形分がスクリーンプレート5を通って流れるのを防ぐために、対応して小さい粒子の場合には、フィルタープレートをスクリーンプレートの代わりに使用することが可能である。フィルタープレートがスクリーンプレート5上に置かれることもまた可能である。フィルターの細孔径は本明細書では、孔が混合物中に含有される最小の固形分粒子より小さいように選択される。
【0059】
かき板デバイス21は、レセプタクル2のピストン3とは反対端に配置される。かき板デバイス21は、例えば、本明細書に示されるように、かき板基板部材23を含み、ピストン3に対面するその端面中へかき板刃25がセットされる。かき板刃25はいずれの場合も、かき板基板部材23を介して間隙27を開放したままにする。間隙27は、チャンバー13から固形分収集空間29への連結を生み出す。例えばレセプタクル2の内壁から固形分をかき板デバイス21でかき取ることができるために、後者はシャフト31を介して駆動部33に連結される。
【0060】
分離サイクルの開始時に、ピストン3はその上死点に置かれている。チャンバー13は従って最小容積のものである。次にチャンバー13を満たすために、入口バルブ11が開けられる。ピストンはその下死点の方向に移動する。これはチャンバー13を大きくし、分離されるべき混合物が供給ライン9を通って、入口バルブ11を通ってチャンバー13へ流れ込む。ピストン3がその下死点に達するや否や、入口バルブ11は閉じられる。チャンバー13はそのときその最大限にある。早ければ充填プロセス中に、第1固形分粒子は、沈降過程によってスクリーンプレート5上に堆積する。
【0061】
ピストン3の下死点に達するとすぐに、移動は逆にされる。ピストン3はチャンバー13へ逆行する。このようにしてチャンバーに含有される混合物は圧縮される。より高い圧力の結果として、液体は、スクリーンプレート5上に集まった固体層19およびスクリーンプレート5および導管7を通って収集空間17へ流れる。
【0062】
ピストン3のスクリーンプレート5上に蓄積した固体層19がかき板デバイス21に達するや否や、後者はスイッチを入れられ、固形分は固体層19からかき取られ、間隙27を通って固形分収集空間29へ搬送される。固形分は、固形分収集空間29からすすぎ出すことができる。
【0063】
固形分が、高度に純粋な状態で得られるべきである、所望の製品を構成する場合、固形分収集空間29からの固形分のすすぎ出しは、例えば融解した固形分物質で達成される。これは、さらなる物質が固形分中へ導入されるのを防ぐ。
【0064】
固形分を固形分収集空間29からすすぎ出すことができるために、第2入口バルブ37で閉じることができる、すすぎ剤供給ライン35が固形分収集空間に通じている。
【0065】
すすぎ剤に溶解されているか、すすぎ剤中に固形分として分散されているかのどちらかである、固形分がその中に含有されたすすぎ剤は、すすぎ剤出口39を通って固形分収集空間29から取り出すことができる。すすぎ剤出口39は、出口バルブ41で閉じることができる。
【0066】
固形分を固形分収集空間29から取り出すために、先ず第一に、第2入口バルブ37が開けられる。すすぎ剤は固形分収集空間29へ流れ込むことができる。同時に、出口バルブ41がすすぎ剤出口39で開けられる。このようにして、すすぎ剤は、すすぎ剤出口39を通って固形分と共に再び固形分収集空間29から流れ出ることができる。固形分が固形分収集空間29からすすぎ出されるや否や、第2入口バルブ37および出口バルブ41は再び閉じられる。固形分は再び固形分収集空間29に集めることができる。固形分収集空間29が再び既定の充填レベルに達するや否や、固形分は再び固形分収集空間29からすすぎ出される。あるいはまた、固形分収集空間29からの固形分のすすぎ出しはまた、かき板デバイス21が運転されるならば、連続的に進行することができる。この場合、第2入口バルブ37および出口バルブ41は、かき板デバイス21が運転にセットされるや否や開けられる。この時点から、すすぎ剤は固形分収集空間29を通って流れる。第2入口バルブ37でのすすぎ剤供給ライン35の閉鎖および出口バルブ41でのすすぎ剤出口39の閉鎖は、かき板デバイス21の作動が再び終了させられるときにのみ進行する。
【0067】
収集空間17に集まった液体は、ピストン3の上向き移動中に出口43を通して収集空間17から取り出される。出口43は第2出口バルブ45で閉じることができる。第2出口バルブ45が開けられるや否や、液体は出口43を通って収集空間17から流れ出ることができる。本方法の好ましい変形では、第2出口バルブ45は、ピストン3が下向きに移動し、そしてチャンバー13が再充填されるときに開けられる。ピストン3の下向き移動によって、後者は収集空間17へ移動する。収集空間17の容積は減少し、その中の液体は圧縮される。このようにして、第2出口バルブ45が開いているとき、収集空間17に含有される液体は出口43を通って搬出される。ピストン3がその下死点に達するや否や、第2出口バルブ45は閉じられる。
【0068】
移動センサ47を使用すると、レセプタクル2の内側を往復運動するピストン3の位置が時間の関数として各瞬間に測定される。当業者に公知の任意の所望の機械的または電気的移動センサが移動センサ47として好適である。移動センサ47を用いて、時間関数49は装置の各運転瞬間に生成する。時間関数49は、時間の関数としてピストン3の移動を表す。時間関数49は、制御装置51用の入力量である。制御装置51は例えばプロセスコンピューターである。
【0069】
時間関数49から、ピストン3の速度および加速度が制御装置51で本発明に従って測定される。速度は本明細書では時間関数59の一次導関数であり、加速度は二次導関数である。一次または二次導関数は、本明細書では当業者に公知の通常の数値的方法によって形成される。速度または加速度が既定の閾値を下回るや否や、かき板デバイス21の駆動部33はスイッチを入れられる。この閾値は、例えば少数の実験によってそれぞれの物質系について測定することができる。
【0070】
それぞれ一次または二次導関数として生成するピストン速度またはピストン加速度の関数はそれぞれの物質系とは無関係であり、かつ、匹敵する組成の混合物の各場合に同じく動力を用いた場合、ピストン3の加速度値および速度値は同じであることが見いだされたので、固形分床の正確に規定された密度でおよび既定の圧縮で、従ってまた固形分の既定の純度で各場合にかき板デバイス21はスイッチが入れられる。このように、固形分は再現性のある品質で混合物から単離することができる。
【0071】
各場合に同じ速度および加速度値が混合物中の同じ固形分濃度でピストンについて確立されるので、デバイスは、混合物中の元の固形分濃度とは無関係に運転することができる。出発混合物中のより低い固形分濃度の場合には、かき板デバイス21はより遅くスイッチが入れられるが、元の混合物中の固形分のより高い初期濃度の場合には、同様に、相当する固形分濃度により早く達するので、それはより早くスイッチが入れられる。ピストンが移動した移動距離でかき板デバイスが制御される場合とは違って、デバイスへの損傷はそれによって防がれる。
【0072】
図2は、複数のサイクルにわたって時間の関数としての一次および二次導関数のプロフィールを例として示す。
【0073】
図2に示される線図中で、時間tはx軸53上にプロットされ、ピストン移動関数57および速度関数59は時間tの関数としてy軸55上にプロットされる。
【0074】
分離されるべき混合物でチャンバー13を満たすために、ピストン3は、上死点61から下死点63まで移動する。ピストン3が上死点61にある場合、速度はゼロである。ピストンが上死点61から下死点63まで移動する間、速度関数59は偏位65を下向きに示す。速度の量は本明細書で最高速度67まで増加し、次に下死点63に達するまで再び減少する。次に移動は逆転し、速度は、それが上方最高69に達するまで増加する。固形分濃度の増加のために、ピストン3の速度は、それが実質的にゼロになるまで低下する。かき板デバイス21が始動する。かき板デバイス21が始動する時間71で、ピストンの速度は再び増加する。これは、固形分がチャンバー13から除去されつつあるという事実に起因する。速度の増加はピーク73で明らかにされる。ピストンは、それが再び上死点61に達するまで移動する。ピストンが上死点61に達するや否や、それは再び停止し、速度はゼロである。
【0075】
ピストンが上向きに移動し始めており、この瞬間に閾値を超えている間はかき板デバイス21の運転を開始しないために、ピストンの加速度がさらなる量として考慮されることが好ましい。圧縮プロセスの開始時に加速度の値は正であるが、速度が再びゼロに近づく、圧縮プロセスの終了時には、ピストンが減速中であるので、それは負である。このように、固形分をチャンバー13から固形分収集空間29中へかき取るためにかき板デバイス21が開始されるべきである瞬間を正確に決定することは可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 装置
2 レセプタクル
3 ピストン
5 スクリーンプレート
7 導管
9 供給ライン
11 入口バルブ
13 チャンバー
15 ピストン棒
17 収集空間
19 固体層
21 かき板デバイス
23 かき板基板部材
25 かき板刃
27 間隙
29 固形分収集空間
31 シャフト
33 駆動部
35 すすぎ剤供給ライン
37 第2入口バルブ
39 すすぎ剤出口
41 出口バルブ
42 出口
45 第2出口バルブ
47 移動センサ
49 時間関数
51 制御デバイス
53 x軸
55 y軸
57 ピストン移動関数
59 速度関数
61 上死点
63 下死点
65 下向き偏位
67 最高速度
69 上方最高
71 かき板デバイスの始動
73 ピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の物質の単離のために混合物の粘度が分離プロセスの間変化する、少なくとも2種の物質の混合物の分離を制御するための方法であって、次の工程:
(a)一定の力をかけながらデバイスを前記混合物中に移動させる工程、
(b)前記デバイスの速度および/または加速度を検出する工程、
(c)前記速度および/または加速度を既定の所望の値と比較する工程
を含む方法。
【請求項2】
速度が前記デバイスの移動の一次導関数を形成することによって測定され、加速度が前記デバイスの移動の二次導関数を形成することによって測定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一定の力で移動する前記デバイスがピストン(3)または攪拌機であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種の物質が固形分として存在し、少なくとも1種の物質が液体として存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
一定の力で移動する前記デバイスがピストン(3)であり、ピストン(3)は濾過表面(5)を備え、レセプタクル(2)の内部を案内され、かつ、液体として存在する前記物質がピストン(3)を通って流れうる、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
速度および/または加速度についての所望の値に達すると、前記分離プロセスが終了することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ピストン(3)の移動の停止によって前記分離プロセスが終了することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
速度および/または加速度についての所望の値に達すると、沈澱し堆積した固形分がかき板デバイス(21)でかき取られることを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項9】
前記かき板デバイス(21)での前記堆積固形分のかき取りの間、前記ピストン(3)がさらに移動することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
分離されるべき前記混合物における結晶化によって前記固形分が生成することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物からの前記固形分の結晶化および単離が同じ装置で実施されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
結晶化が別の装置で行われ、そして結晶を含有する液体からなる懸濁液が、前記混合物の分離が実施される装置に供給されるようにすることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
分離が行われる前記装置の直径に対する前記混合物中に含有される前記固形分粒子の粒径の比が最大で0.05になることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記結晶が、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンおよびp−ジクロロベンゼンを含有する溶液から結晶化される、p−ジクロロベンゼン結晶であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−536568(P2010−536568A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522249(P2010−522249)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007035
【国際公開番号】WO2009/030421
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】