説明

清掃具及び清掃装置

【課題】スリットコータのスリット部を清掃する能力を一層向上することができる清掃具及び清掃装置を提供すること。
【解決手段】被塗布面Ka上に塗工液を塗布するスリットコータ1のスリット部24を清掃する清掃具7であって、スリット部24に挿入され、スリット部24を構成する一対の壁部241,241に付着した塗工液を清掃する清掃部材73と、一対の壁部241,241の少なくとも一方に向けて清掃部材73を付勢する付勢部74と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットコータのスリット部を清掃する清掃具及び清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スリットコータのスリット部の清掃装置として、1枚のフィルムをスリット部に挿入することにより、スリット部を清掃することができる清掃装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の清掃装置は、スリット部にフィルムを挿入することにより、挿入したフィルムの厚み分の塗工液をスリット部から除去できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−24772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の清掃装置においては、スリット部へのフィルムの挿入し易さの観点から、フィルムは、スリット部よりも薄く形成されている。そのため、フィルムとスリット部を構成する壁面との間には、隙間が形成される。よって、スリット部にフィルムを挿入してスリット部を清掃すると、スリット部を構成する壁面に付着した塗工液を掻き落とす効果が低いという問題がある。従って、スリットコータのスリット部を清掃する能力を一層向上することができる清掃装置が望まれている。
【0005】
本発明の課題は、スリットコータのスリット部を清掃する能力を一層向上することができる清掃具及び清掃装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0007】
第1の発明は、被塗布面(Ka)上に塗工液を塗布するスリットコータ(1)のスリット部(24)を清掃する清掃具(7)であって、前記スリット部(24)に挿入され、前記スリット部(24)を構成する一対の壁部(241,241)に付着した塗工液を清掃する清掃部材(73)と、前記一対の壁部(241,241)の少なくとも一方に向けて前記清掃部材(73)を付勢する付勢部(74)と、を備える清掃具(7)である。
第2の発明は、第1の発明の清掃具(7)において、前記清掃部材(73)は、前記付勢部(74)により前記一対の壁部(241,241)の少なくとも一方に向けて付勢される少なくとも1つの掻き落とし部材(73)を有する清掃具(7)である。
第3の発明は、第2の発明の清掃具(7)において、前記清掃部材(73)は、前記付勢部(74)により前記一対の壁部(241,241)それぞれに向けて付勢される2つの掻き落とし部材(73,73)を有する清掃具(7)である。
第4の発明は、第2の発明又は第3の発明の清掃具(7)において、前記掻き落とし部材(73)は、板状に形成される清掃具(7)である。
第5の発明は、第1の発明の清掃具(7)において、前記清掃部材及び前記付勢部は、無端ベルト状に一体的に形成され、前記清掃具(7A)は、前記スリット部(24)に挿入する前において前記スリット部(24)の幅よりも大きく、前記スリット部(24)に挿入した後において前記一対の壁部(241,241)に付勢される清掃具(7A)である。
第6の発明は、第1の発明から第5の発明のいずれかの清掃具(7)と、前記スリット部(24)が延びる方向であるスリット方向(S)に前記清掃具(7)を移動させる移動部(83)と、を備える清掃装置(6)である。
第7の発明は、第6の発明の清掃装置(6)において、前記スリット方向(S)に交差する方向に延びる軸(J)を中心に前記清掃具(7)を回転させる回転部(82)を備える清掃装置(6)である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
第1の発明によれば、スリット部に挿入され、スリット部を構成する一対の壁部に付着した塗工液を清掃する清掃部材と、一対の壁部の少なくとも一方に向けて清掃部材を付勢する付勢部と、を備えるので、清掃部材は、付勢部材によりスリット部を構成する一対の壁部の少なくとも一方に向けて付勢される。そのため、清掃具は、スリット部の壁部に付着した塗工液を清掃する能力を一層向上することができる。
第2の発明によれば、清掃部材が少なくとも1つの掻き落とし部材を有するため、簡易な構成により、スリット部の壁部に付着した塗工液を、効果的に掻き落とすことができる。
第3の発明によれば、清掃部材が2つの掻き落とし部材を有するため、簡易な構成により、スリット部を構成する一対の壁部それぞれに付着した塗工液を、一層効果的に掻き落とすことができる。
第4の発明によれば、掻き落とし部材が板状に形成されるため、壁部に付着した塗工液と壁部との間に入り込んで、壁部に付着した塗工液を、すくうようにして掻き落とすことができる。これにより、壁部に付着した塗工液を一層効果的に掻き落とすことができる。
第5の発明によれば、清掃部材及び付勢部が無端ベルト状に一体的に形成されるため、簡易な構成で、壁部に付着した塗工液を、効果的に掻き落とすことができる。
第6の発明によれば、移動部により清掃具をスリット方向に移動させることができるため、スリット部をスリット方向に沿って清掃することができる。これにより、スリット部をスリット方向の全域にわたって清掃することができる。従って、スリット部の清掃後において、スリットコータにより塗工液を被塗布面上に塗布する際のスリット方向における塗工液の塗布のムラを低減することができる。
第7の発明によれば、回転部により清掃具をスリット方向に交差する方向に延びる軸を中心に回転することができるため、清掃具を、回転させながら、スリット方向に移動させることができる。これにより、壁部に付着した塗工液を、一層効果的に掻き落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態の清掃装置6をスリット方向Sに見た場合を示す断面図である。
【図2】第1実施形態の清掃装置6を塗工方向T1に見た場合を示す断面図である。
【図3】第1実施形態の清掃装置6をスリットコータ1に装着する前の構成を説明する図であって、(a)は清掃部本体7を第2方向D2に見た図であり、(b)は清掃部本体7を第1方向D1に見た図である。
【図4】第1実施形態の清掃部本体7をスリットコータ1のスリット部24に装着する過程を説明する図であって、(a)は清掃部本体7をスリット部24に挿入する状態を示す図であり、(b)は清掃部本体7を回転させてスリット部24に装着した状態を示す図である。
【図5】第2実施形態の清掃部本体7Aを示す斜視図である。
【図6】第2実施形態の清掃部本体7Aをスリットコータ1のスリット部24に装着する過程を説明する図であって、(a)は清掃部本体7Aを挿入する状態を示す図であり、(b)は清掃部本体7Aを回転させてスリット部24に装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の清掃装置6をスリット方向Sに見た場合を示す断面図である。図2は、第1実施形態の清掃装置6を塗工方向T1に見た場合を示す断面図である。図3は、第1実施形態の清掃装置6をスリットコータ1に装着する前の構成を説明する図であって、(a)は清掃部本体7を第2方向D2に見た図であり、(b)は清掃部本体7を第1方向D1に見た図である。図4は、第1実施形態の清掃部本体7をスリットコータ1のスリット部24に装着する過程を説明する図であって、(a)は清掃部本体7をスリット部24に挿入する状態を示す図であり、(b)は清掃部本体7を回転させてスリット部24に装着した状態を示す図である。
【0011】
なお、以下の説明及び図面において、図1に示すように、塗工ステージ5に基体Kを載置した状態において、基体Kの法線が上側を向くように配置した状態での鉛直方向を鉛直方向Zとし、また、ダイヘッド2が塗工時に移動する方向を塗工方向T1とし、塗工方向T1及び鉛直方向Zに直交する方向を基体幅方向T2とする。また、基体幅方向T2と一致する方向であって、ダイヘッド2のスリット部24が延びる方向を「スリット方向S」という。
【0012】
清掃装置6は、スリットコータ1のスリット部24を清掃するための装置である。
まず、スリットコータ1について説明する。
スリットコータ1は、塗工ステージ5上に載置される平板状の基体Kの表面(被塗布面)Ka上に、非接触で塗工液を塗布する装置である。スリットコータ1は、ダイヘッド2のリップ部26の先端からスリット部24を介して塗工液をカーテン状に吐出する。これにより、例えば、スリットコータ1は、基体Kとしての液晶表示装置用のガラス基板の表面Kaに、反射防止膜を形成する。スリットコータ1は、ダイコータ、カーテンコータ等と呼ばれる場合もある。また、ダイヘッド2は、ダイ、Tダイ、スリットダイ等と呼ばれる場合もある。
【0013】
スリットコータ1は、ダイヘッド2と、塗工液供給部3とを備える。
ダイヘッド2は、塗工液を塗工ステージ5上に載置される基体Kの表面Kaに向けて吐出する。ダイヘッド2は、図2に示すように、塗工方向T1に見た場合に、基体幅方向T2に長く形成される。
【0014】
ダイヘッド2は、図1に示すように、基体幅方向T2に見た場合に、塗工液が供給される側に形成される供給側部25と、塗工液が吐出される側に形成されるリップ部26と、ダイヘッド2を鉛直方向Zに貫通する貫通部21とを有する。
【0015】
供給側部25は、図1に示すように、基体幅方向T2に見た場合に、略方形状に形成される。リップ部26は、供給側部25の鉛直方向Zの下方側に連続して形成され、塗工液を吐出する側に向かうにしたがって塗工方向T1の長さが短くなるように形成される。リップ部26の先端は、基体Kの表面Kaに対して平行な面状に形成される。
【0016】
貫通部21は、ダイヘッド2に供給された塗工液をリップ部26側へ導く。貫通部21は、図1に示すように、基体幅方向T2に見た場合に、ダイヘッド2における塗工方向T1の略中央部において、鉛直方向Zに延びるように、ダイヘッド2を貫通している。貫通部21は、導入部22と、マニホールド部23と、スリット部24とを有する。導入部22、マニホールド部23及びスリット部24は、塗工液が供給される供給側部25側から塗工液が吐出されるリップ部26側に向けて、導入部22、マニホールド部23、スリット部24の順に形成され、互いに接続される。
【0017】
導入部22は、図1に示すように、基体幅方向T2に見た場合に、ダイヘッド2の鉛直方向Zの上端に形成される。導入部22は、鉛直方向Zに延びる円柱状の空間により形成されている。導入部22は、図2に示すように、塗工方向T1に見た場合に、ダイヘッド2の基体幅方向T2の略中央部に配置される。
【0018】
マニホールド部23は、図1に示すように、基体幅方向T2に見た場合に、ダイヘッド2の鉛直方向Zの中央部よりもダイヘッド2の供給側部25側に形成される。マニホールド部23は、塗工液タンク4aから供給された塗工液を一時的に溜める液溜まり部として機能する。
【0019】
マニホールド部23は、基体幅方向T2に延びる略円柱状の空間により形成されている。マニホールド部23は、塗工方向T1に見た場合に、略円形状に形成される。マニホールド部23は、図2に示すように、塗工方向T1に見た場合に、基体幅方向T2の全域にわたって延びている。マニホールド部23は、基体幅方向T2の中央部において、導入部22が接続される。マニホールド部23は、導入部22により導入された塗工液を一時的に溜めることにより、塗工液を基体幅方向T2の全域に行きわたらせる。
【0020】
スリット部24は、基体K側に向けて塗工液を吐出する。スリット部24は、リップ部26の内部において、マニホールド部23の下方側に接続される。スリット部24は、ダイヘッド2が延びる基体幅方向T2に延びている。ここで、本実施形態においては、基体幅方向T2とスリット部24が延びる方向であるスリット方向Sとは、一致する。
【0021】
スリット部24は、一対の対向する壁面(壁部)241,241により構成される。一対の対向する壁面241,241は、平面状に形成され、鉛直方向Zに所定長さで、かつ、スリット方向S(基体幅方向T2)に延びている。一対の対向する壁面241,241は、互いに平行に形成される。スリット部24における対向する一対の壁面241,241の間の塗工方向T1の距離をスリット幅ともいう。本実施形態においては、例えば、スリット部24のスリット幅は、40μmから50μm程度に設定されている。
【0022】
また、スリットコータ1は、ダイヘッド2を塗工方向T1に移動させる不図示のダイヘッド移動部を有する。ダイヘッド2は、ダイヘッド移動部(不図示)により塗工方向T1に移動される。
【0023】
塗工液供給部3は、図1に示すように、ダイヘッド2の導入部22に接続される接続パイプLaと、塗工液を貯留する塗工液タンク31と、塗工液タンク31と接続パイプLaとを接続する第1流路L1と、塗工液をダイヘッド2へ供給する塗工液ポンプ32とを備える。
第1流路L1の一端部は、塗工液タンク31の内部に配置される。第1流路L1の他端部は、接続パイプLaに接続される。塗工液ポンプ32は、第1流路L1の分岐部Pよりも塗工液タンク31側に設けられる。第1流路L1及び後述する第2流路L2は、接続パイプLaから分岐部Pまでの流路において共通する。
【0024】
このようにスリットコータ1が構成されることにより、ダイヘッド2のスリット部24から塗工液を吐出させながら、スリット方向S(基体幅方向T2)の全域にわたって形成されるスリット部24の長さで、ダイヘッド2を塗工方向T1に移動させるとことにより、基体Kの表面Ka上には、塗工液が塗布される。ここで、スリット部24の壁面241には、塗工液が付着して残存し、時間経過した後に固着することがある。
【0025】
次に、清掃装置6について説明する。
なお、以下の清掃装置6の清掃部本体(清掃具)7の説明において、図3に示すように、掻き落とし部材73が延びる上下方向を鉛直方向Zとし、一対の掻き落とし部材73,73が離間する方向を第1方向D1とし、鉛直方向Z及び第1方向D1に直交する方向を第2方向D2とする。
【0026】
清掃装置6は、図1に示すように、清掃部本体(清掃具)7と、洗浄液供給部4と、駆動機構部8とを備える。
清掃部本体7は、図3に示すように、一対の掻き落とし部材73,73と、軸部材71と、一対の支持棒721、722と、複数のバネ部材74とを備える。
【0027】
一対の掻き落とし部材73,73は、図3(a)に示すように、第1方向D1に離間して配置される。一対の掻き落とし部材73,73は、平面形状で板状に形成される。詳細には、掻き落とし部材73は、第2方向D2に見た場合(図3(a)参照)の第1方向D1の長さが、第1方向D1に見た場合(図3(b)参照)の第2方向D2の長さよりも小さく形成される。つまり、掻き落とし部材73は、第1方向D1に所定の厚さを有し、かつ、第2方向D2に所定の長さを有する薄板状に形成される。
【0028】
一対の掻き落とし部材73,73は、互いに対向しており、平行に配置される。掻き落とし部材73は、鉛直方向Zに延びている。掻き落とし部材73の鉛直方向Zの長さは、図4(a)及び(b)に示すように、スリット部24の鉛直方向Zの長さよりも長く形成される。
【0029】
掻き落とし部材73は、図4(a)に示すように、第1方向D1に見た場合の幅が、スリット部24のスリット幅よりも小さく形成される。
【0030】
一対の掻き落とし部材73,73は、図3(a)に示すように、第2方向D2に見た場合に、清掃部本体7の外側に向く押圧面731,731を有する。押圧面731,731は、一対の掻き落とし部材73,73における一対の掻き落とし部材73,73同士が対向する面と反対側の面である。一対の掻き落とし部材73,73は、一方の掻き落とし部材73の押圧面731から他方の掻き落とし部材73の押圧面731までの第1方向D1の距離が、一対の掻き落とし部材73,73がスリット部24に挿入される前において、スリット部24のスリット幅よりも長くなるように配置される。押圧面731,731は、図4(b)に示すように、一対の掻き落とし部材73,73が離間する第1方向D1が塗工方向T1に沿った状態でスリット部24に装着された場合に、後述するバネ部材74に付勢されて、少なくとも一部がスリット部24の壁面241に押圧される。
【0031】
掻き落とし部材73は、可撓性を有する材料により形成される。掻き落とし部材73の材質としては、スリット部24の壁面241に傷をつけることを防止するため、スリット部24の壁面241よりも硬度の低いものが好ましい。掻き落とし部材73は、例えば、可撓性を有する金属材料、樹脂材料等により形成される。
【0032】
軸部材71は、図3(a)及び(b)に示すように、一対の掻き落とし部材73,73の間に配置される。軸部材71は、スリット部24のスリット幅よりも小さい径の円柱状に形成される。軸部材71は、鉛直方向Zに直線状に延びている。軸部材71は、回転軸Jを中心に、回転可能に構成される。回転軸Jは、鉛直方向Zに延びる軸であり、スリット方向Sに交差する方向に延びる軸でもある。
【0033】
一対の支持棒721、722は、軸部材71の鉛直方向Zの上端部側及び下方側に、離間して配置される。一対の支持棒721,722は、互いに平行に第1方向D1に延びている。一対の支持棒721、722は、第1方向D1の略中央部において、軸部材の上端部及び下方側に取り付けられる。支持棒72は、スリット部24のスリット幅よりも小さい径の円柱状に形成される。
【0034】
バネ部材74は、掻き落とし部材73と、支持棒721,722とを接続する。バネ部材74は、上方側バネ74aと、下方側バネ74bとから構成される。
上方側バネ74aは、掻き落とし部材73の上端と、上方側の支持棒721の端部721aとを連結する。下方側バネ74bは、掻き落とし部材73の下端と、下方側の支持棒722の端部722aとを連結する。
このように構成されることで、バネ部材74は、掻き落とし部材73が軸部材71側に押圧された場合に、掻き落とし部材73を軸部材71から離れる側に向けて付勢する。
【0035】
洗浄液供給部4は、図1に示すように、ダイヘッド2の導入部22に接続される接続パイプLaと、洗浄液を貯留する洗浄液タンク41と、洗浄液タンク41と接続パイプLaとを接続する第2流路L2と、洗浄液をダイヘッド2へ移動させる洗浄液ポンプ42とを備える。
第2流路L2は、接続パイプLaから分岐部Pまでの流路において、スリットコータ1の第1流路L1と共用される。第2流路L2の一端部は、洗浄液タンク41の内部に配置される。第2流路L2の他端部は、接続パイプLaに接続される。洗浄液ポンプ42は、第2流路L2の分岐部Pよりも洗浄液タンク41側に設けられる。
【0036】
以上のように構成される清掃部本体7は、図4(a)に示すように、掻き落とし部材73,73が離間する第1方向D1がスリット方向Sに沿う状態で、清掃部本体7の下方側から、スリット部24に挿入される。そして、清掃部本体7が回転軸Jを中心に90度回転されることで、図4(b)に示すように、掻き落とし部材73,73は、掻き落とし部材73の押圧面731がバネ部材74に付勢されて、スリット部24の壁面241に向けて付勢される。
【0037】
掻き落とし部材73は、スリット部24の壁面241に沿って撓んだ状態で、スリット部24の壁面241に付勢されている。そのため、一対の掻き落とし部材73,73は、スリット部24を構成する一対の壁面241に付着した塗工液を掻き落とす(清掃する)ことができる。これにより、清掃部本体7は、スリット部24の壁面241に付着した塗工液を掻き落とす(清掃する)能力を一層向上することができる。
また、清掃部本体7は、2つの掻き落とし部材73,73を有する。そのため、簡易な構成により、スリット部24を構成する壁面241に付着した塗工液を、一層効果的に掻き落とすことができる。
【0038】
駆動機構部8は、図2に示すように、昇降機構部81と、回転機構部(回転部)82と、スライド機構部(移動部)83と、を有する。
【0039】
スライド機構部83は、底板833と、底板833の両端部に設けられる一対の側板834,834と、側板834,834に支持されるスリット方向Sに延びるレール832と、清掃部本体7を支持すると共にスリット方向Sに移動可能にレール832に取り付けられる支持部831と、支持部831に連結されるスライド用モータ835と、を備える。スライド用モータ835が駆動することにより、支持部831は、レール832に沿って移動する。これにより、スライド機構部83は、支持部831に支持された清掃部本体7をスリット方向Sに移動させる。
【0040】
昇降機構部81は、スライド機構部83を昇降させることで、清掃部本体7を昇降させる。昇降機構部81は、スライド機構部83の底板833の下方に配置された2つの偏心カム811と、偏心カム811に連結される昇降用モータ813とを備える。偏心カム811の偏心周面は、スライド機構部83の底板833に下方側から当接する。
【0041】
各偏心カム811は、図2に示すように、塗工方向T1に延びる軸部812を備えると共に、回転軸が偏在するカムで構成される。偏心カム811は、昇降用モータ813が駆動することにより、軸部812を中心に回転される。偏心カム811が回転することにより、清掃部本体7は、鉛直方向Zに昇降される。これにより、清掃部本体7は、下方側から上昇されることで、スリット部24の内部に挿入される。
【0042】
回転機構部(回転部)82は、清掃部本体7を、回転軸Jを中心に回転させる。回転機構部82は、清掃部本体7の軸部材71に連結される回転用モータ821を備える。軸部材71を90度回転することにより、清掃部本体7は、回転軸Jを中心に90度回転する。
【0043】
これにより、掻き落とし部材73がスリット部24の壁面241を付勢しない状態で、清掃部本体7をスリット部24に挿入した後に、清掃部本体7を回転軸Jを中心に回転させることで、掻き落とし部材73をスリット部24の壁面241に付勢させることができる。従って、簡易な構成で、掻き落とし部材73をスリット部24の壁面241に向けて付勢させることができる。
また、回転機構部82により清掃部本体7を回転させることにより、掻き落とし部材73をスリット部24の壁面241に付勢する状態と、掻き落とし部材73をスリット部24の壁面241に付勢しない状態とに変化させながら、清掃部本体7をスリット方向Sに移動させることもできる。
【0044】
次に、第1実施形態の清掃装置6の清掃動作について説明する。
清掃装置6は、スリットコータ1により基体Kに塗工液が塗布された後において、所定のタイミングにおいて、スリット部24の清掃動作を行う。スリットコータ1による基体Kへの塗工液の塗布の後においては、スリット部24の壁面241に塗工液が付着し、又は、計時変化によりスリット部24の壁面241に付着した塗工液が固まる可能性があるためである。
【0045】
まず、図4(a)に示すように、一対の掻き落とし部材73,73が離間する第1方向D1がスリット方向Sに沿う状態で、清掃部本体7を、スリット部24の下方側からスリット部24に挿入する。
具体的には、ダイヘッド2を、基体Kへの塗工動作が終了した位置から、更に塗工方向T1に移動させた清掃位置(図1参照)において、一対の掻き落とし部材73,73が離間する第1方向D1がスリット方向Sに沿う状態で、昇降機構部81の昇降用モータ813を駆動させて、清掃部本体7を上昇させる。これにより、図4(a)に示すように、一対の掻き落とし部材73,73が離間する第1方向D1がスリット方向Sに沿う状態で、清掃部本体7は、スリット部24の下方側からスリット部24に挿入される。
【0046】
次に、清掃部本体7をスリット部24に挿入した後に、回転機構部82により清掃部本体7を回転軸Jを中心に90度回転させる。これにより、図4(b)に示すように、掻き落とし部材73は、バネ部材74によりスリット部24の壁面241に付勢される。そして、掻き落とし部材73の押圧面731は、掻き落とし部材73がスリット部24の壁面241に沿って変形した状態で、スリット部24の壁面241に押し付けられる。
【0047】
次に、掻き落とし部材73をスリット方向Sに移動させる。これにより、掻き落とし部材73は、スリット部24の壁面241に付着した塗工液を掻き落とす。本実施形態においては、掻き落とし部材73は、スリット方向Sに幅を有する板状に形成される。そのため、掻き落とし部材73は、掻き落とし部材73の幅の分だけスリット部24の壁面241に付着した塗工液と壁面241との間に入り込んで、壁面241に付着した塗工液をスリット方向Sに連続的にすくうようにして掻き落とすことができる。これにより、壁面241に付着した塗工液を一層効果的に掻き落とすことができる。
【0048】
また、スリット部24をスリット方向Sの全域にわたって清掃することができる。これにより、スリットコータ1により基体Kの表面Kaに塗工液を塗布する際に、スリット方向Sの塗工液の塗布のムラを低減することができる。
【0049】
次に、スリット部24を洗浄液により洗浄する。具体的には、洗浄液ポンプ3bを駆動することにより、第2流路L2を介してダイヘッド2に洗浄液を供給して、スリット部24を洗浄する。これにより、スリット部24の壁面241から掻き落とされた塗工液を洗い流すことができる。従って、スリット部24を一層効果的に清掃することができる。
【0050】
なお、スリット部24の吐出側に、不図示の廃液ポンプを接続することもできる。これにより、スリット部24の洗浄と同時に、廃液ポンプ(不図示)を用いてスリット部24を負圧にして、スリット部24の壁面241から掻き落とされた塗工液を、洗浄液と共にスリット部24の外部に確実に排出することができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図5は、第2実施形態の清掃部本体7Aを示す斜視図である。図6は、第2実施形態の清掃部本体7Aをスリットコータ1のスリット部24に装着する過程を説明する図であって、(a)は清掃部本体7Aを挿入する状態を示す図であり、(b)は清掃部本体7Aを回転させてスリット部24に装着した状態を示す図である。
【0052】
第2実施形態における清掃部本体7Aは、図5に示すように、掻き落とし環状シート75と、軸部材76とを備える。掻き落とし環状シート75は、清掃部材及び付勢部材が、無端ベルト状に一体的に形成される。掻き落とし環状シート75は、スリット部24に挿入する前においてスリット部24の幅よりも大きく、スリット部24に挿入した後に、スリット部24の一対の壁面241に付勢される。
【0053】
具体的には、掻き落とし環状シート75は、図5に示すように、帯状のフィルムのシートを環状に形成することにより、中空状に形成される。掻き落とし環状シート75は、スリットコータ1のスリット部24のスリット幅よりも小さい幅の帯状のフィルムのシートにより、フィルムの外面が外側に配置されるような環状に形成される。掻き落とし環状シート75は、鉛直方向Zに長い環状に形成される。掻き落とし環状シート75を構成するフィルムのシートは、弾力性を有する材料により形成される。
【0054】
掻き落とし環状シート75は、第1方向D1に離間して対向する一対の平面シート部751,751と、一対の平面シート部751,751同士をつなぐ上下に設けられる一対の曲面シート部752,752と、軸部材76と、を有する。
【0055】
一対の平面シート部751,751は、軸部材76を挟んで第1方向D1に離間して、略平行に配置された状態で対向している。一対の平面シート部751,751は、軸部材76側に押圧された場合に、掻き落とし環状シート75が有する弾性力(付勢力)により、軸部材76から離れる側に向けて付勢される(清掃部本体7Aにおける第1方向D1の外側に向けて付勢される)。
【0056】
一対の平面シート部751,751は、清掃部本体7Aの外側に向く押圧面751a,751aを有する。一方の平面シート部751の押圧面751aから他方の平面シート部751の押圧面751aまでの第1方向D1の距離は、掻き落とし環状シート75がスリット部24に挿入される前において、スリット部24のスリット幅よりも長く形成される。
押圧面751a,751aは、図6(a)に示すように、一対の平面シート部751,751が離間する第1方向D1が塗工方向T1に沿った状態でスリット部24に装着された場合に、掻き落とし環状シート75が有する付勢力(弾性力)により、少なくとも一部がスリット部24の壁面241に押圧される。
【0057】
軸部材76は、一対の平面シート部751,751の間に配置される。軸部材76は、鉛直方向Zに直線状に延びており、一対の曲面シート部752,752を鉛直方向Zに貫通する。軸部材76の上方側及び下方側において、一対の曲面シート部752,752は、軸部材76に取り付けられる。軸部材76及び掻き落とし環状シート75は、鉛直方向Zに延びる回転軸J1を中心に一体的に回転可能に構成される。
【0058】
次に、第2実施形態の清掃部本体7Aを用いた清掃動作について簡単に説明する。
まず、図6(a)に示すように、一対の平面シート部751,751が離間する第1方向D1がスリット方向Sに沿う状態で、清掃部本体7Aを、スリット部24の下方側からスリット部24に挿入する。
【0059】
次に、清掃部本体7Aを、回転軸Jを中心に90度回転させる。これにより、掻き落とし環状シート75の一対の平面シート部751,751の押圧面751a,751aは、スリット部24の一対の壁面241,241に付勢される。そして、平面シート部751の押圧面751a,751aは、平面シート部751がスリット部24の壁面241,241に沿って変形した状態で、スリット部24の壁面241,241に押し付けられる。
【0060】
次に、第1実施形態と同様に、スライド機構部83により、清掃部本体7Aをスリット方向Sに移動させる。これにより、清掃部本体7Aは、スリット部24の壁面241,241に付勢されているため、スリット方向Sに移動しながら、スリット部24の壁面241,241に付着した塗工液を掻き落とすことができる。
【0061】
また、掻き落とし環状シート75がフィルムにより形成されるため、薄いフィルムが壁面241と壁面241に付着した塗工液との間に入り込んで、スリット部24の壁面241に付着した塗工液を、すくうようにして掻き落とすことができる。これにより、スリット部24の壁面241に付着した塗工液を一層掻き落とすことができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0063】
(変形形態)
(1)前述の第1実施形態において、掻き落とし部材73を薄板状の部材により形成したが、これに制限されない。例えば、掻き落とし部材73を、糸状の部材により形成してもよいし、断面が正方形の部材や、断面が五角形以上の部材により形成してもよい。
(2)前述の第2実施形態において、清掃部本体7Aの掻き落とし環状シート75を無端ベルト状のフィルムにより形成したが、これに制限されない。例えば、清掃部本体7Aを、スリット部24に挿入する前においてスリット部24のスリット幅よりも幅が広く、且つ、スリット部24への装着時において、弾性力によりスリット部24の壁面241,241に付勢されるスポンジ部材により形成してもよい。
【0064】
(3)前述の第1実施形態において、掻き落とし部材73を2つにより構成したが、これに制限されない。例えば、掻き落とし部材73は、1つ、又は3つ以上であってもよい。
【0065】
(4)前述の第1実施形態において、清掃装置6は、清掃部本体7をスライド機構部83によりスライド用モータ835によりスリット方向Sに移動させるように構成しているが、これに制限されない。例えば、人の手により、清掃部本体7をスリット部24に挿入して、清掃部本体7を90度回転した上で、清掃部本体7をスリット方向Sに動かすことにより、スリット部24を清掃してもよい。
【0066】
(5)前述の第1実施形態において、清掃部本体7を回転させずに、スリット方向Sに移動させているが、これに制限されない。清掃部本体7をスリット方向Sに移動させると同時に、清掃部本体7を回転軸Jを中心に回転させながらスリット方向Sに移動させてもよい。この場合には、清掃部本体7を回転することにより、掻き落とし部材73をスリット部24の壁面241に付勢する状態と、掻き落とし部材73をスリット部24の壁面241に付勢しない状態とに変化させながら、清掃部本体7をスリット方向Sに移動させることができる。従って、スリット部24の壁部241に付着した塗工液を、一層効果的に掻き落とすことができる。
【0067】
(6)前述の第1実施形態において、清掃装置6をスリットコータ1とは別の装置として構成したが、これに制限されず、清掃装置6とスリットコータ1とを一体的に、例えば塗工装置として構成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 スリットコータ
6 清掃装置
7,7A 清掃部本体(清掃具)
24 スリット部
241 壁面(壁部)
74 バネ部材(付勢部)
75 掻き落とし環状シート(清掃部材、付勢部)
73 掻き落とし部材(清掃部材)
82 回転機構部(回転部)
83 スリット機構部(移動部)
Ka 表面(被塗布面)
S スリット方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布面上に塗工液を塗布するスリットコータのスリット部を清掃する清掃具であって、
前記スリット部に挿入され、前記スリット部を構成する一対の壁部に付着した塗工液を清掃する清掃部材と、
前記一対の壁部の少なくとも一方に向けて前記清掃部材を付勢する付勢部と、
を備える清掃具。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃具において、
前記清掃部材は、前記付勢部により前記一対の壁部の少なくとも一方に向けて付勢される少なくとも1つの掻き落とし部材を有する
清掃具。
【請求項3】
請求項2に記載の清掃具において、
前記清掃部材は、前記付勢部により前記一対の壁部それぞれに向けて付勢される2つの掻き落とし部材を有する
清掃具。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の清掃具において、
前記掻き落とし部材は、板状に形成される
清掃具。
【請求項5】
請求項1に記載の清掃具において、
前記清掃部材及び前記付勢部は、無端ベルト状に一体的に形成され、
前記清掃具は、前記スリット部に挿入する前において前記スリット部の幅よりも大きく、前記スリット部に挿入した後において前記一対の壁部に付勢される
清掃具。
【請求項6】
前記請求項1から5のいずれか1項に記載の清掃具と、
前記スリット部が延びる方向であるスリット方向に前記清掃具を移動させる移動部と、を備える清掃装置。
【請求項7】
請求項6に記載の清掃装置において、
前記スリット方向に交差する方向に延びる軸を中心に前記清掃具を回転させる回転部
を備える清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66826(P2013−66826A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205784(P2011−205784)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】